活性水素溶存水の生成方法、生成器および生成用の石こう供給部材、並びに活性水素の生成性物質とその製造方法
【課題】 活性水素溶存水中の活性水素の濃度を高め、その活性水素生成の持続性を向上させる。
【解決手段】 活性水素溶存水の生成器10は、例えばペットボトルのような容器11と、マグネシウム金属が充填された第1のケース12と、石こうの充填された第2のケース13とを有する。そして、第1のケース12と第2のケース13と共に飲料水15を容器11内に入れて保管し活性水素溶存水を生成する。硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムとマグネシウム金属粒とを飲料水15に添加することにより、豊富な活性水素が溶存する活性水素溶存水が生成できる。
【解決手段】 活性水素溶存水の生成器10は、例えばペットボトルのような容器11と、マグネシウム金属が充填された第1のケース12と、石こうの充填された第2のケース13とを有する。そして、第1のケース12と第2のケース13と共に飲料水15を容器11内に入れて保管し活性水素溶存水を生成する。硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムとマグネシウム金属粒とを飲料水15に添加することにより、豊富な活性水素が溶存する活性水素溶存水が生成できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性水素溶存水に関するものであり、人体/動物体内の活性酸素の消去に有効な活性水素溶存水を生成する方法、活性水素溶存水の生成器および生成用の石こう供給部材、並びに活性水素の生成性物質とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、活性酸素は、人体内あるいは動物体内においてその強力な酸化作用のために種々の病気を引き起こすものではないかと考えられるようになってきている。例えば、アレルギー性疾患、糖尿病、高血圧、癌、ウィルスによる感染病等の主原因は、この活性酸素ではないかと言われるようになっている。そして、天然水あるいは水道水(飲料水という)に比べて多くの活性水素(原子状水素)を含む活性水素溶存水が、上記活性酸素の消去に有効であるという学説が医学界において発表され、注目されている。
【0003】
この活性水素を多く含み人工的に生成される飲料水は、従来から電解還元水あるいはアルカリ電解水として知られており、飲料水の電気分解を利用することによって得られる(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この電気分解を利用する方法に用いられる装置は、電解槽、電源、種々の配水管等を必要とし、その構造が複雑なものになる。このために、消費者に簡単かつ安価に上記活性水素溶存水を供給することができないとして、上記電気分解に比較して極めて簡便な活性水素溶存水の生成方法が提案されている。その方法は、飲料水と金属マグネシウム(粒)とを反応させて水素ガスを発生させ、上記飲料水を、水素を豊富に含む水素豊富水に変えるものである(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−77672号公報
【特許文献2】特開2004−041949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電気分解を利用する方法においては、その専用の生成装置は、医療用具として市販されているものの個人で購入するには極めて高価なものである。
また、上記装置により生成した活性水素溶存水は、その保存できる期間が極めて短い。通常、活性水素溶存水の効力は2〜3時間程度(ただし、残存活性水素量が0.005ppmに低減する時間)で消滅する。これは、電気分解により生成した活性水素溶存水中の活性水素の量が、保存時間と共に指数関数的に低減するからである。このために、上記専用の生成装置により活性水素溶存水を一度に多量に生成し、それを保管して安価に利用する方法も難しいものとなっている。
上述したような理由から、例えば、人体の医薬用あるいは動物体用の活性水素溶存水の広い普及は、現状では難しいという問題があった。
【0005】
一方、上記金属マグネシウムと飲料水との反応を用いる特許文献2に開示の方法は、次式の化学反応を利用している。
【0006】
【化1】
【0007】
しかし、上記化学反応では、水に難溶な水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)が上記金属マグネシウム粒の表面に形成される。そして、この水酸化マグネシウム膜の形成は、金属マグネシウム粒表面と水との化学反応を抑制する。このために、活性水素の生成が時間と共に大きく低下するようになる。そこで、所定時間の使用後において、金属マグネシウム粒を食用酢に浸漬し、表面に形成された上記水酸化マグネシウム膜を定期的に溶解させ除去することが必須になっている。
このように、特許文献2の方法においては、活性水素生成の持続性に問題があり、その要因である水酸化マグネシウム膜の定期的な除去作業が必須になるという煩雑さがあった。また、上記水酸化マグネシウム膜を除去する際に、食用酢により金属マグネシウム粒表面も溶解しエッチング除去されるために、金属マグネシウム粒が無駄に消耗されるという問題があった。そしてまた、活性水素溶存水中での活性水素濃度を高くしその効力を高めることが難しいという問題もあった。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、活性水素溶存水中での活性水素濃度を高め、その効力の保持時間を長くすると共に、活性水素生成の持続性を高め、長寿命の活性水素溶存水を実現することを目的とする。
そして、他の目的は、簡便な方法でもって高効力の活性水素溶存水を供給できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、水中のミネラル成分であるカルシウム、マグネシウムのようなアルカリ土類金属から成る水和イオンが、水中の活性水素生成に及ぼす効果について詳細に調べてきた。そして、上記水和イオンが水中の活性水素濃度を効果的に高めることを初めて見出した。また、上記金属マグネシウム表面における水酸化マグネシウム膜の形成は、水中に硫酸カルシウム(石こう)あるいは硫酸マグネシウム等に起因する硫酸イオンを添加することにより大幅に抑制されることを見出した。本発明は、上記のような新知見に基づいてなされたものである。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の活性水素溶存水の生成方法は、いわゆる飲料水のような水に、マグネシウム金属と、石こうあるいは硫酸マグネシウムとを入れて、活性水素を含む水を生成する構成になっている。
【0011】
あるいは、本発明の活性水素溶存水の生成方法は、水に、マグネシウム金属と石こうとの混合物を入れて、活性水素を含む水を生成する構成になっている。
上記発明において、前記石こうは、半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうである。
【0012】
上記構成にすることで、活性水素溶存水中の活性水素は、硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムが溶解し解離して生成したカルシウム水和イオンあるいはマグネシウム水和イオンに結合し、活性水素の濃度が高くなる。
そして、活性水素溶存水の効力が増大する。
【0013】
また、水に浸漬されるマグネシウム金属の表面には、水酸化マグネシウムが形成されるが、この水酸化マグネシウムは、硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムが溶解し解離して生成する硫酸イオンにより、易溶解性のマグネシウムイオンとして溶解除去される。このために、マグネシウム金属と上記水との反応により活性水素が常時に生成されるようになり、従来の技術において必須になっていた、マグネシウム金属を定期的に食用酢に浸漬し、上記水酸化マグネシウムを溶解し除去する作業は不要になる。
【0014】
そして、本発明の活性水素溶存水の生成器は、水を入れる容器と、前記容器に収納するマグネシウム金属の充填された部材と、前記容器に収納する石こうの充填された部材と、を備えた構成になっている。
【0015】
あるいは、本発明の活性水素溶存水の生成器は、水を入れる容器と、前記容器に収納するマグネシウム金属および石こうの充填された部材と、を備えた構成になっている。
【0016】
あるいは、本発明の活性水素溶存水の生成器は、水を入れる容器と、
前記容器に収納する、マグネシウム金属と石こうとの混合物が充填された部材と、を備えた構成になっている。
【0017】
あるいは、本発明の活性水素溶存水の生成器は、水を入れる容器と、
前記容器に収納するマグネシウム金属の充填された部材と、前記容器に収納する硫酸マグネシウムの充填された部材と、を備えた構成になっている。
【0018】
上記発明において、好適な一態様では、前記部材の表面に光遮蔽層が形成され、前記充填された石こうに光が照射しないようになっている。
【0019】
上記構成にすることで、極めて簡便に活性水素溶存水を生成することができ、安価な活性水素溶存水を広く供給することができるようになる。
【0020】
上記発明において、硫酸カルシウムを供給する石こう供給部材は、内部に水が入るようにしたケースと、前記ケース内に充填された、石こう、あるいはマグネシウム金属と石こうとの混合物と、を備えた構成になっている。そして、前記充填された石こうに対する光照射を防ぐための光遮蔽層が前記ケースの表面に形成されている。あるいは、光遮蔽層を形成する代わりにケース材料として光遮蔽性材料を使用することにより充填された石こうに対する光照射を防ぐこともできる。
【0021】
そして、本発明の活性水素の生成物質は、石こうにマグネシウム金属粉末が混合した固形物であって、水に添加されて活性水素を生成するものである。ここで、前記マグネシウム金属粉末の粒径が0.05mm〜0.15mmの範囲にある。また、前記石こうは、半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうである。
【0022】
そして、本発明の活性水素の生成物質の製造方法は、第1の温度において、石こう、マグネシウム金属粉末および水を混合して泥状の混合物を形成する工程と、前記第1の温度より高い第2の温度において、前記泥状の混合物を固化させる工程と、を有する構成になっている。
【0023】
上記発明において、好適な一態様では、前記石こうは粉末状である。そして、前記第1の温度は10〜18℃の範囲であり、前記第2の温度は室温である。
【0024】
上記発明において、好適な一態様では、前記水のpH値が10〜13の範囲にある。そして、前記水に水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化カリウムが溶解している。あるいは、前記水は一度沸騰したものである。
【0025】
上記構成にすることで、前記活性水素の生成物質は、石こうにマグネシウム金属粉末が略均一に分散した固形の混合物になる。また、この混合物は緻密な構造になり、活性水素溶存水を生成するために、水に投入する場合、上記石こうおよびマグネシウム金属粉末がその混合物の周縁から溶出する。このために、活性水素生成の持続性が高くなり、しかも高濃度の活性水素が安定して生成されるようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、溶存活性水素濃度が高くなり活性水素溶存水の効力の保持時間が長くなる。また、金属マグネシウム粒表面における水酸化マグネシウム膜の形成が抑制され、活性水素生成の持続性が高くなる。そして、簡便な方法により活性水素溶存水が生成でき、安価な活性水素溶存水を広く供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態のいくつかを図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の活性水素溶存水の生成方法を説明するための一例となる活性水素溶存水の生成器の概略構成図である。
【0028】
図1に示すように、活性水素溶存水の生成器10は、例えばペットボトルのような容器11と、マグネシウム金属が充填された第1のケース12と、石こうが充填された第2のケース13とを有している。そして、第1のケース12と第2のケース13とを共に飲料水15を容器11内に入れて保管する。
【0029】
好適な一態様では、図2(a)、(b)に示すようなスティック状の第1のケース12が、活性水素の発生部材として用いられる。図2(a)は第1のケース12の側面図であり、図2(b)は、図2(a)のA1−A1矢視断面図となっている。
図2に示すように、第1のケース12は、横断面形状が例えば円形の細長い筒状のプラスチックにより構成され、その側壁にはケース内に液体を出入りさせるための穴14が穿設され、この穴14を通して第1のケース12の内部がその外部にある飲料水15と連通するようになっている。そして、マグネシウム粒16は、不織布などの透水性の素材から成る袋体17に充填され、その袋体17は、第1のケース12の中に収納される。
【0030】
そして、石こうの供給部材として用いられる第2のケース13は、図3,4に示すような構造になっている。ここで、図3は第2のケース13の側面図であり、図4(a)は、図3のB1−B1矢視の横断面図であり、図4(b)は、そのB2−B2矢視の横断面図であり、図4(c)は、B3−B3矢視の横断面図である。また、図4(d)は、図4(c)のB4−B4矢視の縦断面図である。
図3に示すように、例えば円筒状の塩化ビニール等により構成され、石こう18が収納される充填室19と、充填室19を上下両側から挟むように設けられた一対の第1の通水コマ20および第2の通水コマ21を有している。
ここで、図4(a)に示すように、斜線で示す石こう18は、充填室19内部に収納される。また、図4(b)のように、第1の通水コマ20内には円柱状にくり抜かれた孔22が形成され、図4(c)のように、第2のジグザグ通水コマ21には、その上下中心領域に窪み部24,25が形成され、コマ周縁の4カ所に流路23が設けられている。この構成において、飲料水15は、孔22を通り、窪み部24、流路23、及び窪み部25を通って図3に示す石こう充填室19に達するようになる。
【0031】
次に、上述した構成の生成器において、活性水素溶存水の生成方法およびその生成機構について説明する。図1に示すように、容器11内に第1のケース12および第2のケース13と共に常温あるいは冷却した飲料水15を入れると、飲料水15は第1のケース12内の上述したマグネシウム粒16と反応し、次の化学式1によって第1のケース12内より活性水素が発生する。
【0032】
【化1】
【0033】
同時に、充填室19に収納した石こうの表面部が、孔22を通り浸水した飲料水15に溶解する。そして、硫酸カルシウム(CaSO4)である石こうは解離し、平均6.2個の水分子が配位結合したカルシウム水和イオン(Ca(H2O)6.2)2+と硫酸イオン(SO42−)とになり、充填室19に多量に貯留するようになる。そして、上記水和イオンの一部が孔22を通り容器11内に拡散し、飲料水15に適度に供給される。
【0034】
このようにして、上記溶解し解離したカルシウム水和イオンが、飲料水15内において、第1のケース12で生じる活性水素の濃度を高くする。そして、高濃度の活性溶存水素水が生成されるようになる。
【0035】
次に、上記水和イオンにより飲料水15中の活性水素濃度が高くなる効果について以下に詳細に説明する。本発明者は、硫酸カルシウムおよび硫酸マグネシウム(MgSO4)を秤量し水道水に溶解させて電気分解を行い、陰極水中の活性水素量の時間変化について試行実験を行った。
上記実験において、水道水に添加する硫酸カルシウムおよび硫酸マグネシウムの量を変えて電気分解を行い、その後の陰極水中の溶存水素(H2、H*)量の時間変化を調べた。上記投入により、硫酸カルシウムは、上記カルシウム水和イオンと硫酸イオンとして陰極水に溶解し、同様に、硫酸マグネシウムは、6個の水分子が配位結合したマグネシウム水和イオン(Mg(H2O)6)2+と硫酸イオンとして溶解する。
ここで、溶存水素は、共栄電子研究所製の溶存水素計KM2100DH型により計測した。なお、上記溶存水素計は、上記水素分子(H2)あるいは活性水素(H*)の総計を計測するものである。
【0036】
図5は、水道水に半水石こうを投入し、水道水に硫酸カルシウムを2.1×10−3mol(モル)/l(リットル)、すなわち炭酸カルシウム換算で210mg/l溶解させ(水質硬度210)、電気分解した場合の一例を示す。ここで、縦軸には上記溶存水素量を示し、横軸には陰極水の保存期間をとっている。図中の白丸印に示すように、陰極水中の溶存水素量は、2つの異なる時定数でもって指数関数的に低減することを示す。すなわち、図中の斜線を施したI領域の時間帯において、活性水素(H*)が減衰し、図中のII領域の時間帯において、水素分子(H2)が、活性水素(H*)よりも大きな時定数で緩やかに減衰する。
【0037】
図5の上記斜線を施した領域は、上記II領域をI領域まで外挿した場合の、上記溶存水素の減衰における水素分子量分を除いた差分を示し、ほぼ正味の活性水素の時間的な減衰を表しているものと考えられる。そこで、上記差分を活性水素H*量の変化として同図に示した。図より、I領域の活性水素H*減衰時定数は10〜11時間で急速に減衰することを表している。このH*量の変化の確認は、上記陰極水に酸化タングステンを浸漬し、酸化タングステン表面の着色変化時間を測定する方法によっても併せて行った。この方法においても、定性的には上記差分から求めたH*量の変化と同じであった。
そこで、上記水道水に溶解させる半水石こう量、あるいは硫酸マグネシウムの投入量を変化させて図5と同様なグラフを求め、それぞれの場合の上記差分から求めたH*量の変化について調べた。
【0038】
図6は、上記投入量を変化させて、上記水和イオン添加の効果について示している。ここで、縦軸には上記差分から求めたH*量の存続時間を示し、横軸には上記投入量を示す。但し、図6において、H*量の存続時間は、残存H*量が100質量ppbまでに低減する時間とした。
図6から、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムの両方とも活性水素の存続時間増大の効果を有しており、その投入量が増加すると共に上記効果が高くなることが判る。また、上記存続時間増大の効果は、硫酸カルシウムの方が硫酸マグネシウムよりも大きくなることも判る。例えば、全く投入しない場合は、活性水素の上記存続時間が約1Hrになるのに対して、硫酸カルシウムを2.1×10−3mol/l溶解させると、その存続時間は6倍以上の6.5Hr程度に増大する。また、硫酸マグネシウムを4×10−3mol/l溶解させることによって、その存続時間は6Hr程度に増大する。
【0039】
更に、本発明者は、半水石こうを秤量し金属マグネシウム片と共に水道水に溶解させ、48時間後に上記金属マグネシウム片を水道水から取り出し、その後の溶存活性水素H*量の経時変化を図5で説明したのと同様な方法により調べた。その結果が図7に示される。
図7は、横軸に上記金属マグネシウム片を取り出してからの水道水の保存期間(時間)をとり、縦軸にH*量をとっている。ここで、縦軸の単位量1mg/lが1質量ppmに相当している。また、パラメータとして硫酸カルシウムの溶解量をとっている。
図7より、この場合においても、上記陰極水の場合と同様に、水道水中のH*量は指数関数的に減衰することが判る。そして、硫酸マグネシウムの溶解量が増えると共に、すなわち、溶解量(パラメータ)が7×10−4、1.4×10−3、2.1×10−3mol/lと増加するに従い、水道水中のH*量が増加することが明らかである。
【0040】
実施の形態1では、金属マグネシウム粒を充填した第1のケース12と石こうを充填した第2のケース13を飲料水15内に浸漬させることで、飲料水15に添加した硫酸カルシウムが溶解すると共に化学式1により活性水素が生成する。このために、図5〜図7で説明したのと同様に活性水素濃度の高い活性水素溶存水が簡便に生成できるようになる。
上記アルカリ土類金属の水和イオンが活性水素量を増加させる機構は、未だ明らかにできていない。現在、発明者は、通常の状態にあっては水中で極めて短時間に水素分子(H2)になり消滅する活性水素が、水和イオンと結合することでその寿命が比較的に長い例えば水和イオン結合体になっているのではないかと考えている。そして、この水和イオン結合体の量は、飲料水に添加する硫酸カルシウムの量が多くなると共に増加し、結果、上述した効果が生じるものと考えている。
【0041】
そして、実施の形態1では、飲料水15中には、化学式1による活性水素生成の持続性が向上する。このため、例えば上記水和イオンと結合した活性水素が、図7で説明したように時間的に減衰しても、新たな活性水素が生成されることから、飲料水15には一定量の活性水素が持続的に溶存するようになる。
【0042】
実施の形態1においては、上記石こうが溶解し解離して生成される硫酸イオンが、次の化学式2により、上記マグネシウム粒16表面に形成される水酸化マグネシウムを溶解させる。
【0043】
【化2】
【0044】
表1に示すように、マグネシウム金属と石こうを飲料水内に投入すると、硫酸カルシウムが水酸化マグネシウムを溶解し、飲料水中のマグネシウム(Mg)水和イオン濃度の増加することが確認されている。表1には、上記投入し1日経過した後に、水酸化マグネシウム沈殿法により測定した値が示してある。硫酸カルシウムの投入がない場合には、Mg水和イオン濃度は4×10−5mol/lであるが、硫酸カルシウムの投入が5×10−4mol/lの場合には、その濃度は2×10−4mol/lと大きく増加し、水酸化マグネシウムの溶解が生じ易くなっていることが判る。
【0045】
【表1】
【0046】
このように、実施の形態1では、第1のケース12に充填されたマグネシウム粒16の表面には、水酸化マグネシウムが形成され難くなり、水酸化マグネシウムの形成のために化学式1の反応が時間と共に低下するという問題は大幅に軽減される。
【0047】
上記効果について、図8を参照して説明する。図8は、水道水に金属マグネシウム片を浸漬して活性水素溶存水を生成する特許文献2の従来技術の場合と、上記実施の形態1のように水道水に半水石こうを溶解させて活性水素溶存水を生成する場合とを比較して示す。図8では、活性水素溶存水中の溶存水素(水素分子と活性水素の総計)の経時変化が示されている。ここで、上記溶存水素は、溶存水素計KM2100DH型により計測した。横軸は、上記活性水素溶存水の使用期間として日数をとり、縦軸に上記溶存水素量をとっている。
【0048】
図8の実線は、水道水に半水石こうを1.4×10−3mol/l(硬度140)溶解させ、金属マグネシウム粒を浸漬させた一例である。そして点線は、水道水に金属マグネシウム粒のみを浸漬した従来技術の一例である。
従来技術の場合、使用期間が10日内において、溶存水素量の減少が顕著である。これは、水酸化マグネシウム膜の成長が上記期間で大きく、化学式1による水素生成が大きく低下することを示している。しかし、それ以後は溶存水素量の減少は緩やかで略一定の割合で低下している。
これに対して、石こうを溶解させると、従来技術の場合に比べて全体に溶存水素量が高く、しかも使用期間が10日内においてその減少の割合は小さくなる。そして、使用期間が20日以後になると、溶存水素量の減少の割合は従来技術の場合と略同じになる。しかし、溶存水素量は、使用期間が30日においても従来技術の使用期間10日の場合と同程度である。
【0049】
このことから、実施の形態1においては、活性水素生成の持続性が大きく向上することが判る。そして、従来の技術において必須になっていた、第1のケース12の所定時間の使用後において(例えば2回/週の頻度で)、マグネシウム粒16を食用酢に浸漬し、上記水酸化マグネシウムを溶解し除去する作業は全く不要になる。
【0050】
上記実施の形態1においては、石こうの溶解する量を制御することが好ましい。石こうの溶解は飲料水をいわゆる硬水に変えていくために、溶解する量が多くなると飲料水としての味が低下するからである。通常、石こうは、極めて容易に水に溶解し、例えば二水石こうの場合には、室内照明下において1日経過後に、7×10−3mol/l(硬度700)程度の硫酸カルシウムが室温(20℃程度)の飲料水に溶解し、最終的にはその溶解の飽和量は、室温において1.4×10−2mol/l近くに達する。
【0051】
図1で説明した活性溶存水の生成において、図3,4で説明した構造の第2のケース13を使用することにより、飲料水15内に溶出する硫酸カルシウムの量が容易に制御できるようになる。図3において、石こうの溶出した硫酸カルシウムは充填室19内において水和Ca2+とSO42−に解離するが、ジグザグ通水コマ21が孔22を通して外部につながる構造になっているために、解離した上記イオンは充填室19内に貯留され、ジグザグ通水コマ22内において局所的に濃度が高くなり、これにより石こうの溶出速度が抑制できるようになる。
また、図3に示した第2のケース13の充填室19に光が入射しないように、その領域の表面に遮蔽層を形成することで、上記溶出速度を低減させることができる。
【0052】
このようにして、例えば無水石こうあるいは二水石こうを上記第2のケース13に充填し、それを飲料水に浸漬してから1週間後において、その溶解量を2×10−3mol/l(硬度200)以下に制御することが可能になる。なお、国内での飲料水の水質基準では、水質硬度300程度までは問題はないとされている。
【0053】
次に、石こうを飲料水に供給する部材である上記第2のケース13の使用方法および活性水素溶存水の生成について好適な一態様で説明する。
【0054】
容器11として容積が1.5リットル〜2リットルのペットボトルに、上記マグネシウム粒16を充填した第1のケース12と、石こうあるいは二水石こうのような石こう18を充填した第2のケース13とを入れ、このペットボトルに水道水を入れて満たす。ここで、水道水は例えば市販の簡易浄水器により塩素を取り除くことが好ましい。そして、半日程度、直射日光を避けた室内あるいは冷蔵庫内に保管した後には、充分に美味しい活性水素溶存水が生成される。その後は、この活性水素溶存水を飲料水として使用する。そして、ペットボトル内の活性水素溶存水がなくなれば、ペットボトルに水道水を補充してその使用を続けることができる。但し、上記第1のケース12、第2のケース13および水道水をペットボトルに入れた後の3日目には、残存する活性水素溶存水を全部捨てて、新水道水で詰め替えることが好ましい。3日以上に経過すると、溶解するカルシウム量が1×10−3mol/l(硬度100)を超えて味が低下してくるからである。
【0055】
このようにして、石こうを充填した第2のケース13は、通常では2〜2.5ヶ月間にわたり連続して使用することができる。また、マグネシウム粒を充填した第1のケース12は、1ヶ月程度の間にわたり継続して使用することができる。この使用の間に、従来のように第1のケース12を食用酢により定期的に洗浄する必要は全くない。そして、上記第2のケース13中に石こう18がなくなると、その部材は廃棄するか、もしくは不足する石こう等を補充して再使用する。
【0056】
(実施の形態2)
図9は、本発明の活性水素溶存水の生成方法を説明するための一例となる別の活性水素溶存水の生成器の概略構成図である。実施の形態2の特徴は、石こうと金属マグネシウム粒との混合固形物を使用するところにある。
【0057】
図9に示すように、活性水素溶存水の生成器10aは、例えばペットボトルのような容器11と、後述する石こうとマグネシウム粒の混合物から成る水素生成固形物が充填された共用ケース31と、を有する。そして、上記共用ケース31と飲料水15を容器11内に入れて保管する。
【0058】
上記構成の生成器10aにおいて、活性水素溶存水の生成方法および生成機構は、基本的には実施の形態1で説明したのと同じである。すなわち、図9に示すように、容器11内に共用ケース31と共に常温あるいは冷却した飲料水15を入れると、飲料水15は水素生成固形物と反応し、隣接する領域において、硫酸カルシウムの溶解と活性水素の生成とが生じる。
そして、この実施の形態2では、硫酸カルシウムが解離して生成したカルシウム水和イオンと硫酸イオンの近傍において、活性水素が生成することになる。このために、生成した活性水素は効率的に上記水和イオンに結合する。また、マグネシウム粒の近傍に生成する硫酸イオンにより、マグネシウム粒表面に形成される水酸化マグネシウムが効率的に除去される。このようにして、高濃度の活性溶存水素水が持続的に生成できるようになる。
【0059】
次に、上記水素生成固形物32について図10,11を参照して説明する。図10(a)は水素生成固形物32の側面図であり、図10(b)は、図10(a)のC1−C1矢視断面図である。この円柱状の水素生成固形物32は、例えば70gの固形の石こう33に対して粉末状のマグネシウム粒34が全体で約1g程度含まれる。ここで、マグネシウム粒34は、その粒径が0.05mm〜0.15mmの範囲が好適であり、石こう内に略均一に分散するように混合される。
このような構造にすることにより、活性水素溶存水の生成において、水素生成固形物32が、その表面から一様に飲料水15中に溶出するようになる。すなわち、石こうの溶解とマグネシウム粒の反応消費とが略同じ速度でバランスよく起る。このために、水素生成固形物32の石こうのみが溶け、マグネシウム粒が残存したり、逆に石こうが溶け難くなりマグネシウム粒が飲料水15と反応しなくなるということはない。
【0060】
次に、上記水素生成固形物32の製造方法について図11を参照して説明する。図11は、その製法を説明するための流れ図である。
図11に示すように、水、パウダー状の石こう、粉末状のマグネシウム粒をそれぞれに計量し、ステップS1の混合調製の工程において、泥状の混合物質を調製する。ここで、水は一度沸騰させ、その後に例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化カリウムを添加しアルカリ性にしたものを使用するのがよい。そして、そのpH値が10〜13程度になるように調整すると好適である。また、石こうは例えば半水石こうを用いればよい。そして、上述したように、マグネシウム粒の粒径は0.05mm〜0.15mmのものを分級し配合すると好適である。また、石こうの量が70gに対して、マグネシウム粉末の量は0.9g〜1.2g程度になるように調合し、水の量はその粘度に合わせて、例えば2〜5質量%を加えて、上記泥状の混合物質を調製する。第1の温度であるこの調製温度は、10〜18℃になるように制御する。特に15℃程度が好適な温度である。
【0061】
次に、ステップS2の固形化の工程において、上記泥状の混合物質を第2の温度である室温(20〜25℃)で固める。さらに粘土状に固化した時点で5〜20g/cm2の圧力を加えて、発生する水素ガスを抜くことが好ましい。この固形化における第2の温度は、上記調製における第1の温度よりも高くなる。このようにして、上記水素生成固形物32が作製される。ここで、水素生成固形物32としては、円柱状以外にも種々の形状のものを使用することができる。角柱状でもよいし円筒状でもよい。
【0062】
図11で説明したように水素生成固形物32を作製することで、石こうとマグネシウム粒の緻密な混合物が得られる。この混合物の作製においては、第1の温度を第2の温度よりも低くして、作製中の水素の生成を抑えることが最も重要になる。
【0063】
次に、図12,13を参照して、好適な一態様における、斜線で示す上記水素生成固形物32を収納する共用ケース31について説明する。ここで、図12は共用ケース31の側面図である。図13(a)は、図12のD1−D1矢視の横断面図であり、図13(b)は、D2−D2矢視図であり、図13(c)は、D3−D3矢視の横断面図である。また、図13(d)は、図12のD4−D4矢視の横断面図であり、図13(e)は、D5−D5矢視図である。
【0064】
図12に示すように、共用ケース31は、例えば円筒状であって水素生成固形物32が収納される第1の円筒管35と、第2の円筒管36とを有する。そして、第1の円筒管35の下部には、第1の部材37および第2の部材38が取り付けられる。同様に、第1の円筒管35の上部には第3の部材39の一端部が着脱自在に取り付けられる。また、第2の円筒管36の下部には、上記第3の部材39の他端部が取り付けられ、第2の円筒管36の上部には、第2の部材38および第4の部材40が取り付けられる。ここで、上記各円筒管および各部材は、例えば塩化ビニール製で可視光を遮蔽する材料で構成される。
【0065】
第1の部材37には、図12および図13(a)に示すように、流水路となる孔41が設けられている。第2の部材38には、図12および図13(b)に示すように、その中心領域に窪み部42が形成され、その周縁の3箇所に流路43が設けられている。この構成において、飲料水15は、孔41を通り窪み部42および流路43を通って、図12および図13(c)に示す水素生成固形物32に達するようになる。
【0066】
また、第3の部材39は、図12および図13(d)に示すように、円筒状になっている。そして、第4の部材40には、図12および図13(e)に示すように、その中心領域に突起部44が形成され、その突起部44から外れた3箇所にガス抜き孔45が設けられている。
【0067】
次に、実施の形態2の生成器10aにおける上記共用ケース31の使用方法および活性水素溶存水の生成について、図9,12,13を参照して説明する。
【0068】
図9に示すように、第1の部材37を下側にして共用ケース31をペットボトルの容器11内に立てて入れ、この容器11に水道水を入れて満たす。ここで、水道水は例えば市販の簡易浄水器により塩素を取り除くことが好ましい。そして、半日程度、直射日光を避けた室内あるいは冷蔵庫内に保管した後には、充分に美味しい活性水素溶存水が生成される。その後は、この活性水素溶存水を飲料水として使用する。そして、ペットボトル内の活性水素溶存水がなくなれば、ペットボトルに水道水を補充してその使用を続けることができる。
【0069】
活性水素溶存水の生成では、上記容器11内において、共用ケース31内には飲料水15が入り込み、水素生成固形物32と反応する。そして、その表面から徐々に、石こう33が溶解すると共にマグネシウム粒34が一様に反応消費される。ここで、化学式1により活性水素が生成し、その一部が直近位置で溶解し解離したカルシウム水和イオンに結合し、上記飲料水15に溶存する。しかし、多くの活性水素は化学式1に示すように水素分子になり、水素ガスとして第3の部材39を通り上部へ上昇する。そして、この水素ガスは、第2の部材38の窪み部42、ガス流路43を通り、ガス溜まり46に達する。ここで、このガス溜まり46は、第2の部材38と第4の部材40との間隙にできる空間である。
ここで、化学式1の反応が進み、ガス溜まり46に貯まる水素ガスは、その圧力が上がると、共用ケース31内にあり高濃度の活性水素を含んでいる飲料水を押し下げ、孔41を通して共用ケース31外に流出させる。そして、更に水素ガス圧力が高くなり、所定の臨界値を越えると、水素ガスは細孔45から一気にガス抜きされる。このときに、容器11の飲料水15が孔41から共用ケース31内に逆流して入り込む。そして再び、上述した機構により高濃度の活性水素を含んだ飲料水が生成される。この繰り返しにより、共用ケース31で生成される活性水素溶存水が容器11内に充満するようになる。
【0070】
実施の形態2の場合、共用ケース31と飲料水15を容器11に2日間入れて保管しても、飲料水15の水質硬度は80以下である。また、飲料水のpH値は7.5程度である。このように、生成器10aを用いて生成した活性水素溶存水は充分に美味しい水である。
【0071】
更に、図14を参照して実施の形態2の場合に生じる効果について説明する。図14は、市販の水道水に金属マグネシウム片のみを浸漬する従来技術の場合と、上記実施の形態2の場合を比較して示す。図14では、図8で説明したのと同様に活性水素溶存水中の溶存水素(水素分子と活性水素の総計)の経時変化が示される。
【0072】
図14の実線は、上記石こうとマグネシウム粒の混合物である水素生成固形物32を浸漬させ溶解させた一例である。この場合の硫酸カルシウムの溶解した量は図7の7×10−4mol/lに相当し、溶解後の水質硬度は70程度である。そして点線は、市販の水道水に金属マグネシウム粒のみを浸漬した従来技術の一例である。
従来技術の場合、図8で説明したように、使用期間が10日内において、水素発生の減少が顕著である。これに対して、水素生成固形物32を溶解させる場合には、溶存水素量の減少の割合は一定で小さく、化学式1の反応の持続性が高いことが判る。この場合の溶存水素量の減少は、水素生成固形物32の表面が使用期間と共に溶出し、その表面積が減少するために生じるものである。使用中の水素生成固形物32の表面の顕微鏡観察では、マグネシウム粒34表面の化学式2による水酸化マグネシウムの形成は略皆無であった。
【0073】
このように、実施の形態2においては、活性水素生成の持続性が実施の形態1の場合よりも更に向上する。この場合も、従来の技術において必須になっていた、第1のケース12の所定時間の使用後において、マグネシウム粒16を食用酢に浸漬し、上記水酸化マグネシウムを溶解し除去する作業は全く不要となる。また、この場合、活性水素溶存水中の活性水素量は、図7で説明しているのと全く同じで従来技術の場合よりも高濃度になる。
上記実施の形態2で使用する共用ケース31は、複数個の部材で組み立てる構造になっている。このため、上記水素生成固形物32がなくなれば、上記共用ケース31に新たな水素生成固形物32を充填して使用することができる。
【0074】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について図15を参照して説明する。この実施の形態は、上記活性水素生成のマグネシウム金属と石こうとを混合させないで別々に共用ケース51に封入する場合である。
【0075】
上記共用ケース51は、細長い筒状の例えばプラスチックにより構成され、図15に示すように、マグネシウム金属47と、石こう33とが交互に配置した構造を有している。
【0076】
実施の形態3では、活性水素溶存水の生成において、図9において飲料水15が入れられた容器11に共用ケース51が収納される。そして、上記穴41を通り入り進入した飲料水15は、封入室35内のマグネシウム金属47と化学式1の反応を起こして活性水素を生成する。また、穴41を通り入り込んだ飲料水15は、封入室35内の二水石こう33を溶解し、解離したカルシウム水和イオンを生成する。そして、このカルシウム水和イオンが上記活性水素を捕獲するようになる。
【0077】
この場合には、活性水素の生成領域とカルシウム水和イオンの生成領域が極めて近接している。このために、生成した活性水素はカルシウム水和イオンに効率的に捕獲され、多くの活性水素が活性水素吸着イオンと結合するようになる。そして、生成した活性水素溶存水の効力の保持期間が長くなる。但し、この場合には、マグネシウム金属47の封入量と、石こう33の封入量とを調整し、その使用期限がほぼ同じになるようにする必要がある。
【0078】
実施の形態3において、石こう33としては二水石こうあるいは無水石こうを使用することができる。
【0079】
以上、この発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述した実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
【0080】
例えば、上記実施の形態1の石こうの供給において、第2のケース13を用いる代わりに、容器11内に第1のケース12を入れ一定量の水道水を満たし、この水道水に一定量の石こう、例えば一定量の半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうを添加し溶解させるようにする。例えば、2リットルの水道水に200mgの硫酸カルシウムを溶解させる。このように、一定量の硫酸カルシウムを調合し所定時間(例えば半日)保管してから活性水素溶存水とし飲料水として使用してもよい。この場合では、容器11内の活性水素溶存水は、そのままなくなるまで使用される。そして、なくなれば新たに調合して活性水素溶存水を調製することになる。この場合、硫酸カルシウムの代わりに硫酸マグネシウムを用いてもよい。
このように、一定量の硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムを調合し溶解させて活性水素溶存水を生成する方法では、硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムの錠剤を用いると好適である。
【0081】
また、実施の形態2において、共用ケース31を使用しないで、例えば錠剤状の上記水素生成固形物を直接に飲料水に一定量添加し、所定時間(例えば半日)保管してから活性水素溶存水とし飲料水として使用してもよい。この場合、マグネシウム金属粉末を混合させる石こうとしては、半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうを使用することができる。
【0082】
上記実施の形態において、石こうに代えて固形の硫酸マグネシウムを用い、その溶解し解離したマグネシウム水和イオンを使用するようにしてもよい。この場合には、上記第2のケース13あるいは共用ケース31、51に硫酸マグネシウムの固形物、あるいは硫酸マグネシウムとマグネシウム金属粉末の混合物固形物を充填する。あるいは、硫酸カルシウムの固形物と硫酸マグネシウムの固形物とを混合したものを上記ケースに充填するようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態に使用する石こう供給部材の形状は、種々の形態が可能である。実施の形態では細長い筒状のものを示しているが、これに限定されるものでなく、例えば外形が平板状のケースに石こうを充填する構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態1における活性水素溶存水の生成器の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における活性水素の発生部材を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1における石こうの供給部材を示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における石こうの供給部材を示す横断面図である。
【図5】本発明の効果を説明するための活性水素溶存水中の溶存水素量の経時変化を示す一例のグラフである。
【図6】本発明における硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムの添加の効果を示すグラフである。
【図7】本発明の効果を説明するための活性水素溶存水中の活性水素量の経時変化を示す一例のグラフである。
【図8】本発明の実施の形態1の効果を説明するための活性水素溶存水中の溶存水素量の経時変化を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態2における活性水素溶存水の生成器の概略構成図である。
【図10】本発明の実施の形態2における水素生成固形物を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2における水素生成固形物の製造方法を示す流れ図である。
【図12】本発明の実施の形態2における水素生成固形物の供給部材を示す側面図である。
【図13】本発明の実施の形態2における水素生成固形物の供給部材を示す横断面図である。
【図14】本発明の実施の形態2の効果を説明するための活性水素溶存水中の溶存水素量の経時変化を示すグラフである。
【図15】本発明の実施の形態3における石こうの供給部材を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
10,10a…活性水素溶存水の生成器,11…容器,12…第1のケース,13…第2のケース,14…穴,15…飲料水,16,34…マグネシウム粒,17…袋体,18,33…石こう,19…充填室,20…第1の通水コマ,21…第2の通水コマ,23,43…流路,22,41…孔,24…第1の窪み部,25…第2の窪み部,31,51…共用ケース,32…水素生成固形物,35…第1の円筒管,36…第2の円筒管,37…第1の部材,38…第2の部材,39…第3の部材,40…第4の部材,42…窪み部,44…突起部,45…ガス抜き孔,46…ガス溜まり,47…マグネシウム金属
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性水素溶存水に関するものであり、人体/動物体内の活性酸素の消去に有効な活性水素溶存水を生成する方法、活性水素溶存水の生成器および生成用の石こう供給部材、並びに活性水素の生成性物質とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、活性酸素は、人体内あるいは動物体内においてその強力な酸化作用のために種々の病気を引き起こすものではないかと考えられるようになってきている。例えば、アレルギー性疾患、糖尿病、高血圧、癌、ウィルスによる感染病等の主原因は、この活性酸素ではないかと言われるようになっている。そして、天然水あるいは水道水(飲料水という)に比べて多くの活性水素(原子状水素)を含む活性水素溶存水が、上記活性酸素の消去に有効であるという学説が医学界において発表され、注目されている。
【0003】
この活性水素を多く含み人工的に生成される飲料水は、従来から電解還元水あるいはアルカリ電解水として知られており、飲料水の電気分解を利用することによって得られる(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この電気分解を利用する方法に用いられる装置は、電解槽、電源、種々の配水管等を必要とし、その構造が複雑なものになる。このために、消費者に簡単かつ安価に上記活性水素溶存水を供給することができないとして、上記電気分解に比較して極めて簡便な活性水素溶存水の生成方法が提案されている。その方法は、飲料水と金属マグネシウム(粒)とを反応させて水素ガスを発生させ、上記飲料水を、水素を豊富に含む水素豊富水に変えるものである(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−77672号公報
【特許文献2】特開2004−041949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電気分解を利用する方法においては、その専用の生成装置は、医療用具として市販されているものの個人で購入するには極めて高価なものである。
また、上記装置により生成した活性水素溶存水は、その保存できる期間が極めて短い。通常、活性水素溶存水の効力は2〜3時間程度(ただし、残存活性水素量が0.005ppmに低減する時間)で消滅する。これは、電気分解により生成した活性水素溶存水中の活性水素の量が、保存時間と共に指数関数的に低減するからである。このために、上記専用の生成装置により活性水素溶存水を一度に多量に生成し、それを保管して安価に利用する方法も難しいものとなっている。
上述したような理由から、例えば、人体の医薬用あるいは動物体用の活性水素溶存水の広い普及は、現状では難しいという問題があった。
【0005】
一方、上記金属マグネシウムと飲料水との反応を用いる特許文献2に開示の方法は、次式の化学反応を利用している。
【0006】
【化1】
【0007】
しかし、上記化学反応では、水に難溶な水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)が上記金属マグネシウム粒の表面に形成される。そして、この水酸化マグネシウム膜の形成は、金属マグネシウム粒表面と水との化学反応を抑制する。このために、活性水素の生成が時間と共に大きく低下するようになる。そこで、所定時間の使用後において、金属マグネシウム粒を食用酢に浸漬し、表面に形成された上記水酸化マグネシウム膜を定期的に溶解させ除去することが必須になっている。
このように、特許文献2の方法においては、活性水素生成の持続性に問題があり、その要因である水酸化マグネシウム膜の定期的な除去作業が必須になるという煩雑さがあった。また、上記水酸化マグネシウム膜を除去する際に、食用酢により金属マグネシウム粒表面も溶解しエッチング除去されるために、金属マグネシウム粒が無駄に消耗されるという問題があった。そしてまた、活性水素溶存水中での活性水素濃度を高くしその効力を高めることが難しいという問題もあった。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、活性水素溶存水中での活性水素濃度を高め、その効力の保持時間を長くすると共に、活性水素生成の持続性を高め、長寿命の活性水素溶存水を実現することを目的とする。
そして、他の目的は、簡便な方法でもって高効力の活性水素溶存水を供給できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、水中のミネラル成分であるカルシウム、マグネシウムのようなアルカリ土類金属から成る水和イオンが、水中の活性水素生成に及ぼす効果について詳細に調べてきた。そして、上記水和イオンが水中の活性水素濃度を効果的に高めることを初めて見出した。また、上記金属マグネシウム表面における水酸化マグネシウム膜の形成は、水中に硫酸カルシウム(石こう)あるいは硫酸マグネシウム等に起因する硫酸イオンを添加することにより大幅に抑制されることを見出した。本発明は、上記のような新知見に基づいてなされたものである。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の活性水素溶存水の生成方法は、いわゆる飲料水のような水に、マグネシウム金属と、石こうあるいは硫酸マグネシウムとを入れて、活性水素を含む水を生成する構成になっている。
【0011】
あるいは、本発明の活性水素溶存水の生成方法は、水に、マグネシウム金属と石こうとの混合物を入れて、活性水素を含む水を生成する構成になっている。
上記発明において、前記石こうは、半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうである。
【0012】
上記構成にすることで、活性水素溶存水中の活性水素は、硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムが溶解し解離して生成したカルシウム水和イオンあるいはマグネシウム水和イオンに結合し、活性水素の濃度が高くなる。
そして、活性水素溶存水の効力が増大する。
【0013】
また、水に浸漬されるマグネシウム金属の表面には、水酸化マグネシウムが形成されるが、この水酸化マグネシウムは、硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムが溶解し解離して生成する硫酸イオンにより、易溶解性のマグネシウムイオンとして溶解除去される。このために、マグネシウム金属と上記水との反応により活性水素が常時に生成されるようになり、従来の技術において必須になっていた、マグネシウム金属を定期的に食用酢に浸漬し、上記水酸化マグネシウムを溶解し除去する作業は不要になる。
【0014】
そして、本発明の活性水素溶存水の生成器は、水を入れる容器と、前記容器に収納するマグネシウム金属の充填された部材と、前記容器に収納する石こうの充填された部材と、を備えた構成になっている。
【0015】
あるいは、本発明の活性水素溶存水の生成器は、水を入れる容器と、前記容器に収納するマグネシウム金属および石こうの充填された部材と、を備えた構成になっている。
【0016】
あるいは、本発明の活性水素溶存水の生成器は、水を入れる容器と、
前記容器に収納する、マグネシウム金属と石こうとの混合物が充填された部材と、を備えた構成になっている。
【0017】
あるいは、本発明の活性水素溶存水の生成器は、水を入れる容器と、
前記容器に収納するマグネシウム金属の充填された部材と、前記容器に収納する硫酸マグネシウムの充填された部材と、を備えた構成になっている。
【0018】
上記発明において、好適な一態様では、前記部材の表面に光遮蔽層が形成され、前記充填された石こうに光が照射しないようになっている。
【0019】
上記構成にすることで、極めて簡便に活性水素溶存水を生成することができ、安価な活性水素溶存水を広く供給することができるようになる。
【0020】
上記発明において、硫酸カルシウムを供給する石こう供給部材は、内部に水が入るようにしたケースと、前記ケース内に充填された、石こう、あるいはマグネシウム金属と石こうとの混合物と、を備えた構成になっている。そして、前記充填された石こうに対する光照射を防ぐための光遮蔽層が前記ケースの表面に形成されている。あるいは、光遮蔽層を形成する代わりにケース材料として光遮蔽性材料を使用することにより充填された石こうに対する光照射を防ぐこともできる。
【0021】
そして、本発明の活性水素の生成物質は、石こうにマグネシウム金属粉末が混合した固形物であって、水に添加されて活性水素を生成するものである。ここで、前記マグネシウム金属粉末の粒径が0.05mm〜0.15mmの範囲にある。また、前記石こうは、半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうである。
【0022】
そして、本発明の活性水素の生成物質の製造方法は、第1の温度において、石こう、マグネシウム金属粉末および水を混合して泥状の混合物を形成する工程と、前記第1の温度より高い第2の温度において、前記泥状の混合物を固化させる工程と、を有する構成になっている。
【0023】
上記発明において、好適な一態様では、前記石こうは粉末状である。そして、前記第1の温度は10〜18℃の範囲であり、前記第2の温度は室温である。
【0024】
上記発明において、好適な一態様では、前記水のpH値が10〜13の範囲にある。そして、前記水に水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化カリウムが溶解している。あるいは、前記水は一度沸騰したものである。
【0025】
上記構成にすることで、前記活性水素の生成物質は、石こうにマグネシウム金属粉末が略均一に分散した固形の混合物になる。また、この混合物は緻密な構造になり、活性水素溶存水を生成するために、水に投入する場合、上記石こうおよびマグネシウム金属粉末がその混合物の周縁から溶出する。このために、活性水素生成の持続性が高くなり、しかも高濃度の活性水素が安定して生成されるようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、溶存活性水素濃度が高くなり活性水素溶存水の効力の保持時間が長くなる。また、金属マグネシウム粒表面における水酸化マグネシウム膜の形成が抑制され、活性水素生成の持続性が高くなる。そして、簡便な方法により活性水素溶存水が生成でき、安価な活性水素溶存水を広く供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態のいくつかを図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の活性水素溶存水の生成方法を説明するための一例となる活性水素溶存水の生成器の概略構成図である。
【0028】
図1に示すように、活性水素溶存水の生成器10は、例えばペットボトルのような容器11と、マグネシウム金属が充填された第1のケース12と、石こうが充填された第2のケース13とを有している。そして、第1のケース12と第2のケース13とを共に飲料水15を容器11内に入れて保管する。
【0029】
好適な一態様では、図2(a)、(b)に示すようなスティック状の第1のケース12が、活性水素の発生部材として用いられる。図2(a)は第1のケース12の側面図であり、図2(b)は、図2(a)のA1−A1矢視断面図となっている。
図2に示すように、第1のケース12は、横断面形状が例えば円形の細長い筒状のプラスチックにより構成され、その側壁にはケース内に液体を出入りさせるための穴14が穿設され、この穴14を通して第1のケース12の内部がその外部にある飲料水15と連通するようになっている。そして、マグネシウム粒16は、不織布などの透水性の素材から成る袋体17に充填され、その袋体17は、第1のケース12の中に収納される。
【0030】
そして、石こうの供給部材として用いられる第2のケース13は、図3,4に示すような構造になっている。ここで、図3は第2のケース13の側面図であり、図4(a)は、図3のB1−B1矢視の横断面図であり、図4(b)は、そのB2−B2矢視の横断面図であり、図4(c)は、B3−B3矢視の横断面図である。また、図4(d)は、図4(c)のB4−B4矢視の縦断面図である。
図3に示すように、例えば円筒状の塩化ビニール等により構成され、石こう18が収納される充填室19と、充填室19を上下両側から挟むように設けられた一対の第1の通水コマ20および第2の通水コマ21を有している。
ここで、図4(a)に示すように、斜線で示す石こう18は、充填室19内部に収納される。また、図4(b)のように、第1の通水コマ20内には円柱状にくり抜かれた孔22が形成され、図4(c)のように、第2のジグザグ通水コマ21には、その上下中心領域に窪み部24,25が形成され、コマ周縁の4カ所に流路23が設けられている。この構成において、飲料水15は、孔22を通り、窪み部24、流路23、及び窪み部25を通って図3に示す石こう充填室19に達するようになる。
【0031】
次に、上述した構成の生成器において、活性水素溶存水の生成方法およびその生成機構について説明する。図1に示すように、容器11内に第1のケース12および第2のケース13と共に常温あるいは冷却した飲料水15を入れると、飲料水15は第1のケース12内の上述したマグネシウム粒16と反応し、次の化学式1によって第1のケース12内より活性水素が発生する。
【0032】
【化1】
【0033】
同時に、充填室19に収納した石こうの表面部が、孔22を通り浸水した飲料水15に溶解する。そして、硫酸カルシウム(CaSO4)である石こうは解離し、平均6.2個の水分子が配位結合したカルシウム水和イオン(Ca(H2O)6.2)2+と硫酸イオン(SO42−)とになり、充填室19に多量に貯留するようになる。そして、上記水和イオンの一部が孔22を通り容器11内に拡散し、飲料水15に適度に供給される。
【0034】
このようにして、上記溶解し解離したカルシウム水和イオンが、飲料水15内において、第1のケース12で生じる活性水素の濃度を高くする。そして、高濃度の活性溶存水素水が生成されるようになる。
【0035】
次に、上記水和イオンにより飲料水15中の活性水素濃度が高くなる効果について以下に詳細に説明する。本発明者は、硫酸カルシウムおよび硫酸マグネシウム(MgSO4)を秤量し水道水に溶解させて電気分解を行い、陰極水中の活性水素量の時間変化について試行実験を行った。
上記実験において、水道水に添加する硫酸カルシウムおよび硫酸マグネシウムの量を変えて電気分解を行い、その後の陰極水中の溶存水素(H2、H*)量の時間変化を調べた。上記投入により、硫酸カルシウムは、上記カルシウム水和イオンと硫酸イオンとして陰極水に溶解し、同様に、硫酸マグネシウムは、6個の水分子が配位結合したマグネシウム水和イオン(Mg(H2O)6)2+と硫酸イオンとして溶解する。
ここで、溶存水素は、共栄電子研究所製の溶存水素計KM2100DH型により計測した。なお、上記溶存水素計は、上記水素分子(H2)あるいは活性水素(H*)の総計を計測するものである。
【0036】
図5は、水道水に半水石こうを投入し、水道水に硫酸カルシウムを2.1×10−3mol(モル)/l(リットル)、すなわち炭酸カルシウム換算で210mg/l溶解させ(水質硬度210)、電気分解した場合の一例を示す。ここで、縦軸には上記溶存水素量を示し、横軸には陰極水の保存期間をとっている。図中の白丸印に示すように、陰極水中の溶存水素量は、2つの異なる時定数でもって指数関数的に低減することを示す。すなわち、図中の斜線を施したI領域の時間帯において、活性水素(H*)が減衰し、図中のII領域の時間帯において、水素分子(H2)が、活性水素(H*)よりも大きな時定数で緩やかに減衰する。
【0037】
図5の上記斜線を施した領域は、上記II領域をI領域まで外挿した場合の、上記溶存水素の減衰における水素分子量分を除いた差分を示し、ほぼ正味の活性水素の時間的な減衰を表しているものと考えられる。そこで、上記差分を活性水素H*量の変化として同図に示した。図より、I領域の活性水素H*減衰時定数は10〜11時間で急速に減衰することを表している。このH*量の変化の確認は、上記陰極水に酸化タングステンを浸漬し、酸化タングステン表面の着色変化時間を測定する方法によっても併せて行った。この方法においても、定性的には上記差分から求めたH*量の変化と同じであった。
そこで、上記水道水に溶解させる半水石こう量、あるいは硫酸マグネシウムの投入量を変化させて図5と同様なグラフを求め、それぞれの場合の上記差分から求めたH*量の変化について調べた。
【0038】
図6は、上記投入量を変化させて、上記水和イオン添加の効果について示している。ここで、縦軸には上記差分から求めたH*量の存続時間を示し、横軸には上記投入量を示す。但し、図6において、H*量の存続時間は、残存H*量が100質量ppbまでに低減する時間とした。
図6から、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムの両方とも活性水素の存続時間増大の効果を有しており、その投入量が増加すると共に上記効果が高くなることが判る。また、上記存続時間増大の効果は、硫酸カルシウムの方が硫酸マグネシウムよりも大きくなることも判る。例えば、全く投入しない場合は、活性水素の上記存続時間が約1Hrになるのに対して、硫酸カルシウムを2.1×10−3mol/l溶解させると、その存続時間は6倍以上の6.5Hr程度に増大する。また、硫酸マグネシウムを4×10−3mol/l溶解させることによって、その存続時間は6Hr程度に増大する。
【0039】
更に、本発明者は、半水石こうを秤量し金属マグネシウム片と共に水道水に溶解させ、48時間後に上記金属マグネシウム片を水道水から取り出し、その後の溶存活性水素H*量の経時変化を図5で説明したのと同様な方法により調べた。その結果が図7に示される。
図7は、横軸に上記金属マグネシウム片を取り出してからの水道水の保存期間(時間)をとり、縦軸にH*量をとっている。ここで、縦軸の単位量1mg/lが1質量ppmに相当している。また、パラメータとして硫酸カルシウムの溶解量をとっている。
図7より、この場合においても、上記陰極水の場合と同様に、水道水中のH*量は指数関数的に減衰することが判る。そして、硫酸マグネシウムの溶解量が増えると共に、すなわち、溶解量(パラメータ)が7×10−4、1.4×10−3、2.1×10−3mol/lと増加するに従い、水道水中のH*量が増加することが明らかである。
【0040】
実施の形態1では、金属マグネシウム粒を充填した第1のケース12と石こうを充填した第2のケース13を飲料水15内に浸漬させることで、飲料水15に添加した硫酸カルシウムが溶解すると共に化学式1により活性水素が生成する。このために、図5〜図7で説明したのと同様に活性水素濃度の高い活性水素溶存水が簡便に生成できるようになる。
上記アルカリ土類金属の水和イオンが活性水素量を増加させる機構は、未だ明らかにできていない。現在、発明者は、通常の状態にあっては水中で極めて短時間に水素分子(H2)になり消滅する活性水素が、水和イオンと結合することでその寿命が比較的に長い例えば水和イオン結合体になっているのではないかと考えている。そして、この水和イオン結合体の量は、飲料水に添加する硫酸カルシウムの量が多くなると共に増加し、結果、上述した効果が生じるものと考えている。
【0041】
そして、実施の形態1では、飲料水15中には、化学式1による活性水素生成の持続性が向上する。このため、例えば上記水和イオンと結合した活性水素が、図7で説明したように時間的に減衰しても、新たな活性水素が生成されることから、飲料水15には一定量の活性水素が持続的に溶存するようになる。
【0042】
実施の形態1においては、上記石こうが溶解し解離して生成される硫酸イオンが、次の化学式2により、上記マグネシウム粒16表面に形成される水酸化マグネシウムを溶解させる。
【0043】
【化2】
【0044】
表1に示すように、マグネシウム金属と石こうを飲料水内に投入すると、硫酸カルシウムが水酸化マグネシウムを溶解し、飲料水中のマグネシウム(Mg)水和イオン濃度の増加することが確認されている。表1には、上記投入し1日経過した後に、水酸化マグネシウム沈殿法により測定した値が示してある。硫酸カルシウムの投入がない場合には、Mg水和イオン濃度は4×10−5mol/lであるが、硫酸カルシウムの投入が5×10−4mol/lの場合には、その濃度は2×10−4mol/lと大きく増加し、水酸化マグネシウムの溶解が生じ易くなっていることが判る。
【0045】
【表1】
【0046】
このように、実施の形態1では、第1のケース12に充填されたマグネシウム粒16の表面には、水酸化マグネシウムが形成され難くなり、水酸化マグネシウムの形成のために化学式1の反応が時間と共に低下するという問題は大幅に軽減される。
【0047】
上記効果について、図8を参照して説明する。図8は、水道水に金属マグネシウム片を浸漬して活性水素溶存水を生成する特許文献2の従来技術の場合と、上記実施の形態1のように水道水に半水石こうを溶解させて活性水素溶存水を生成する場合とを比較して示す。図8では、活性水素溶存水中の溶存水素(水素分子と活性水素の総計)の経時変化が示されている。ここで、上記溶存水素は、溶存水素計KM2100DH型により計測した。横軸は、上記活性水素溶存水の使用期間として日数をとり、縦軸に上記溶存水素量をとっている。
【0048】
図8の実線は、水道水に半水石こうを1.4×10−3mol/l(硬度140)溶解させ、金属マグネシウム粒を浸漬させた一例である。そして点線は、水道水に金属マグネシウム粒のみを浸漬した従来技術の一例である。
従来技術の場合、使用期間が10日内において、溶存水素量の減少が顕著である。これは、水酸化マグネシウム膜の成長が上記期間で大きく、化学式1による水素生成が大きく低下することを示している。しかし、それ以後は溶存水素量の減少は緩やかで略一定の割合で低下している。
これに対して、石こうを溶解させると、従来技術の場合に比べて全体に溶存水素量が高く、しかも使用期間が10日内においてその減少の割合は小さくなる。そして、使用期間が20日以後になると、溶存水素量の減少の割合は従来技術の場合と略同じになる。しかし、溶存水素量は、使用期間が30日においても従来技術の使用期間10日の場合と同程度である。
【0049】
このことから、実施の形態1においては、活性水素生成の持続性が大きく向上することが判る。そして、従来の技術において必須になっていた、第1のケース12の所定時間の使用後において(例えば2回/週の頻度で)、マグネシウム粒16を食用酢に浸漬し、上記水酸化マグネシウムを溶解し除去する作業は全く不要になる。
【0050】
上記実施の形態1においては、石こうの溶解する量を制御することが好ましい。石こうの溶解は飲料水をいわゆる硬水に変えていくために、溶解する量が多くなると飲料水としての味が低下するからである。通常、石こうは、極めて容易に水に溶解し、例えば二水石こうの場合には、室内照明下において1日経過後に、7×10−3mol/l(硬度700)程度の硫酸カルシウムが室温(20℃程度)の飲料水に溶解し、最終的にはその溶解の飽和量は、室温において1.4×10−2mol/l近くに達する。
【0051】
図1で説明した活性溶存水の生成において、図3,4で説明した構造の第2のケース13を使用することにより、飲料水15内に溶出する硫酸カルシウムの量が容易に制御できるようになる。図3において、石こうの溶出した硫酸カルシウムは充填室19内において水和Ca2+とSO42−に解離するが、ジグザグ通水コマ21が孔22を通して外部につながる構造になっているために、解離した上記イオンは充填室19内に貯留され、ジグザグ通水コマ22内において局所的に濃度が高くなり、これにより石こうの溶出速度が抑制できるようになる。
また、図3に示した第2のケース13の充填室19に光が入射しないように、その領域の表面に遮蔽層を形成することで、上記溶出速度を低減させることができる。
【0052】
このようにして、例えば無水石こうあるいは二水石こうを上記第2のケース13に充填し、それを飲料水に浸漬してから1週間後において、その溶解量を2×10−3mol/l(硬度200)以下に制御することが可能になる。なお、国内での飲料水の水質基準では、水質硬度300程度までは問題はないとされている。
【0053】
次に、石こうを飲料水に供給する部材である上記第2のケース13の使用方法および活性水素溶存水の生成について好適な一態様で説明する。
【0054】
容器11として容積が1.5リットル〜2リットルのペットボトルに、上記マグネシウム粒16を充填した第1のケース12と、石こうあるいは二水石こうのような石こう18を充填した第2のケース13とを入れ、このペットボトルに水道水を入れて満たす。ここで、水道水は例えば市販の簡易浄水器により塩素を取り除くことが好ましい。そして、半日程度、直射日光を避けた室内あるいは冷蔵庫内に保管した後には、充分に美味しい活性水素溶存水が生成される。その後は、この活性水素溶存水を飲料水として使用する。そして、ペットボトル内の活性水素溶存水がなくなれば、ペットボトルに水道水を補充してその使用を続けることができる。但し、上記第1のケース12、第2のケース13および水道水をペットボトルに入れた後の3日目には、残存する活性水素溶存水を全部捨てて、新水道水で詰め替えることが好ましい。3日以上に経過すると、溶解するカルシウム量が1×10−3mol/l(硬度100)を超えて味が低下してくるからである。
【0055】
このようにして、石こうを充填した第2のケース13は、通常では2〜2.5ヶ月間にわたり連続して使用することができる。また、マグネシウム粒を充填した第1のケース12は、1ヶ月程度の間にわたり継続して使用することができる。この使用の間に、従来のように第1のケース12を食用酢により定期的に洗浄する必要は全くない。そして、上記第2のケース13中に石こう18がなくなると、その部材は廃棄するか、もしくは不足する石こう等を補充して再使用する。
【0056】
(実施の形態2)
図9は、本発明の活性水素溶存水の生成方法を説明するための一例となる別の活性水素溶存水の生成器の概略構成図である。実施の形態2の特徴は、石こうと金属マグネシウム粒との混合固形物を使用するところにある。
【0057】
図9に示すように、活性水素溶存水の生成器10aは、例えばペットボトルのような容器11と、後述する石こうとマグネシウム粒の混合物から成る水素生成固形物が充填された共用ケース31と、を有する。そして、上記共用ケース31と飲料水15を容器11内に入れて保管する。
【0058】
上記構成の生成器10aにおいて、活性水素溶存水の生成方法および生成機構は、基本的には実施の形態1で説明したのと同じである。すなわち、図9に示すように、容器11内に共用ケース31と共に常温あるいは冷却した飲料水15を入れると、飲料水15は水素生成固形物と反応し、隣接する領域において、硫酸カルシウムの溶解と活性水素の生成とが生じる。
そして、この実施の形態2では、硫酸カルシウムが解離して生成したカルシウム水和イオンと硫酸イオンの近傍において、活性水素が生成することになる。このために、生成した活性水素は効率的に上記水和イオンに結合する。また、マグネシウム粒の近傍に生成する硫酸イオンにより、マグネシウム粒表面に形成される水酸化マグネシウムが効率的に除去される。このようにして、高濃度の活性溶存水素水が持続的に生成できるようになる。
【0059】
次に、上記水素生成固形物32について図10,11を参照して説明する。図10(a)は水素生成固形物32の側面図であり、図10(b)は、図10(a)のC1−C1矢視断面図である。この円柱状の水素生成固形物32は、例えば70gの固形の石こう33に対して粉末状のマグネシウム粒34が全体で約1g程度含まれる。ここで、マグネシウム粒34は、その粒径が0.05mm〜0.15mmの範囲が好適であり、石こう内に略均一に分散するように混合される。
このような構造にすることにより、活性水素溶存水の生成において、水素生成固形物32が、その表面から一様に飲料水15中に溶出するようになる。すなわち、石こうの溶解とマグネシウム粒の反応消費とが略同じ速度でバランスよく起る。このために、水素生成固形物32の石こうのみが溶け、マグネシウム粒が残存したり、逆に石こうが溶け難くなりマグネシウム粒が飲料水15と反応しなくなるということはない。
【0060】
次に、上記水素生成固形物32の製造方法について図11を参照して説明する。図11は、その製法を説明するための流れ図である。
図11に示すように、水、パウダー状の石こう、粉末状のマグネシウム粒をそれぞれに計量し、ステップS1の混合調製の工程において、泥状の混合物質を調製する。ここで、水は一度沸騰させ、その後に例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化カリウムを添加しアルカリ性にしたものを使用するのがよい。そして、そのpH値が10〜13程度になるように調整すると好適である。また、石こうは例えば半水石こうを用いればよい。そして、上述したように、マグネシウム粒の粒径は0.05mm〜0.15mmのものを分級し配合すると好適である。また、石こうの量が70gに対して、マグネシウム粉末の量は0.9g〜1.2g程度になるように調合し、水の量はその粘度に合わせて、例えば2〜5質量%を加えて、上記泥状の混合物質を調製する。第1の温度であるこの調製温度は、10〜18℃になるように制御する。特に15℃程度が好適な温度である。
【0061】
次に、ステップS2の固形化の工程において、上記泥状の混合物質を第2の温度である室温(20〜25℃)で固める。さらに粘土状に固化した時点で5〜20g/cm2の圧力を加えて、発生する水素ガスを抜くことが好ましい。この固形化における第2の温度は、上記調製における第1の温度よりも高くなる。このようにして、上記水素生成固形物32が作製される。ここで、水素生成固形物32としては、円柱状以外にも種々の形状のものを使用することができる。角柱状でもよいし円筒状でもよい。
【0062】
図11で説明したように水素生成固形物32を作製することで、石こうとマグネシウム粒の緻密な混合物が得られる。この混合物の作製においては、第1の温度を第2の温度よりも低くして、作製中の水素の生成を抑えることが最も重要になる。
【0063】
次に、図12,13を参照して、好適な一態様における、斜線で示す上記水素生成固形物32を収納する共用ケース31について説明する。ここで、図12は共用ケース31の側面図である。図13(a)は、図12のD1−D1矢視の横断面図であり、図13(b)は、D2−D2矢視図であり、図13(c)は、D3−D3矢視の横断面図である。また、図13(d)は、図12のD4−D4矢視の横断面図であり、図13(e)は、D5−D5矢視図である。
【0064】
図12に示すように、共用ケース31は、例えば円筒状であって水素生成固形物32が収納される第1の円筒管35と、第2の円筒管36とを有する。そして、第1の円筒管35の下部には、第1の部材37および第2の部材38が取り付けられる。同様に、第1の円筒管35の上部には第3の部材39の一端部が着脱自在に取り付けられる。また、第2の円筒管36の下部には、上記第3の部材39の他端部が取り付けられ、第2の円筒管36の上部には、第2の部材38および第4の部材40が取り付けられる。ここで、上記各円筒管および各部材は、例えば塩化ビニール製で可視光を遮蔽する材料で構成される。
【0065】
第1の部材37には、図12および図13(a)に示すように、流水路となる孔41が設けられている。第2の部材38には、図12および図13(b)に示すように、その中心領域に窪み部42が形成され、その周縁の3箇所に流路43が設けられている。この構成において、飲料水15は、孔41を通り窪み部42および流路43を通って、図12および図13(c)に示す水素生成固形物32に達するようになる。
【0066】
また、第3の部材39は、図12および図13(d)に示すように、円筒状になっている。そして、第4の部材40には、図12および図13(e)に示すように、その中心領域に突起部44が形成され、その突起部44から外れた3箇所にガス抜き孔45が設けられている。
【0067】
次に、実施の形態2の生成器10aにおける上記共用ケース31の使用方法および活性水素溶存水の生成について、図9,12,13を参照して説明する。
【0068】
図9に示すように、第1の部材37を下側にして共用ケース31をペットボトルの容器11内に立てて入れ、この容器11に水道水を入れて満たす。ここで、水道水は例えば市販の簡易浄水器により塩素を取り除くことが好ましい。そして、半日程度、直射日光を避けた室内あるいは冷蔵庫内に保管した後には、充分に美味しい活性水素溶存水が生成される。その後は、この活性水素溶存水を飲料水として使用する。そして、ペットボトル内の活性水素溶存水がなくなれば、ペットボトルに水道水を補充してその使用を続けることができる。
【0069】
活性水素溶存水の生成では、上記容器11内において、共用ケース31内には飲料水15が入り込み、水素生成固形物32と反応する。そして、その表面から徐々に、石こう33が溶解すると共にマグネシウム粒34が一様に反応消費される。ここで、化学式1により活性水素が生成し、その一部が直近位置で溶解し解離したカルシウム水和イオンに結合し、上記飲料水15に溶存する。しかし、多くの活性水素は化学式1に示すように水素分子になり、水素ガスとして第3の部材39を通り上部へ上昇する。そして、この水素ガスは、第2の部材38の窪み部42、ガス流路43を通り、ガス溜まり46に達する。ここで、このガス溜まり46は、第2の部材38と第4の部材40との間隙にできる空間である。
ここで、化学式1の反応が進み、ガス溜まり46に貯まる水素ガスは、その圧力が上がると、共用ケース31内にあり高濃度の活性水素を含んでいる飲料水を押し下げ、孔41を通して共用ケース31外に流出させる。そして、更に水素ガス圧力が高くなり、所定の臨界値を越えると、水素ガスは細孔45から一気にガス抜きされる。このときに、容器11の飲料水15が孔41から共用ケース31内に逆流して入り込む。そして再び、上述した機構により高濃度の活性水素を含んだ飲料水が生成される。この繰り返しにより、共用ケース31で生成される活性水素溶存水が容器11内に充満するようになる。
【0070】
実施の形態2の場合、共用ケース31と飲料水15を容器11に2日間入れて保管しても、飲料水15の水質硬度は80以下である。また、飲料水のpH値は7.5程度である。このように、生成器10aを用いて生成した活性水素溶存水は充分に美味しい水である。
【0071】
更に、図14を参照して実施の形態2の場合に生じる効果について説明する。図14は、市販の水道水に金属マグネシウム片のみを浸漬する従来技術の場合と、上記実施の形態2の場合を比較して示す。図14では、図8で説明したのと同様に活性水素溶存水中の溶存水素(水素分子と活性水素の総計)の経時変化が示される。
【0072】
図14の実線は、上記石こうとマグネシウム粒の混合物である水素生成固形物32を浸漬させ溶解させた一例である。この場合の硫酸カルシウムの溶解した量は図7の7×10−4mol/lに相当し、溶解後の水質硬度は70程度である。そして点線は、市販の水道水に金属マグネシウム粒のみを浸漬した従来技術の一例である。
従来技術の場合、図8で説明したように、使用期間が10日内において、水素発生の減少が顕著である。これに対して、水素生成固形物32を溶解させる場合には、溶存水素量の減少の割合は一定で小さく、化学式1の反応の持続性が高いことが判る。この場合の溶存水素量の減少は、水素生成固形物32の表面が使用期間と共に溶出し、その表面積が減少するために生じるものである。使用中の水素生成固形物32の表面の顕微鏡観察では、マグネシウム粒34表面の化学式2による水酸化マグネシウムの形成は略皆無であった。
【0073】
このように、実施の形態2においては、活性水素生成の持続性が実施の形態1の場合よりも更に向上する。この場合も、従来の技術において必須になっていた、第1のケース12の所定時間の使用後において、マグネシウム粒16を食用酢に浸漬し、上記水酸化マグネシウムを溶解し除去する作業は全く不要となる。また、この場合、活性水素溶存水中の活性水素量は、図7で説明しているのと全く同じで従来技術の場合よりも高濃度になる。
上記実施の形態2で使用する共用ケース31は、複数個の部材で組み立てる構造になっている。このため、上記水素生成固形物32がなくなれば、上記共用ケース31に新たな水素生成固形物32を充填して使用することができる。
【0074】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について図15を参照して説明する。この実施の形態は、上記活性水素生成のマグネシウム金属と石こうとを混合させないで別々に共用ケース51に封入する場合である。
【0075】
上記共用ケース51は、細長い筒状の例えばプラスチックにより構成され、図15に示すように、マグネシウム金属47と、石こう33とが交互に配置した構造を有している。
【0076】
実施の形態3では、活性水素溶存水の生成において、図9において飲料水15が入れられた容器11に共用ケース51が収納される。そして、上記穴41を通り入り進入した飲料水15は、封入室35内のマグネシウム金属47と化学式1の反応を起こして活性水素を生成する。また、穴41を通り入り込んだ飲料水15は、封入室35内の二水石こう33を溶解し、解離したカルシウム水和イオンを生成する。そして、このカルシウム水和イオンが上記活性水素を捕獲するようになる。
【0077】
この場合には、活性水素の生成領域とカルシウム水和イオンの生成領域が極めて近接している。このために、生成した活性水素はカルシウム水和イオンに効率的に捕獲され、多くの活性水素が活性水素吸着イオンと結合するようになる。そして、生成した活性水素溶存水の効力の保持期間が長くなる。但し、この場合には、マグネシウム金属47の封入量と、石こう33の封入量とを調整し、その使用期限がほぼ同じになるようにする必要がある。
【0078】
実施の形態3において、石こう33としては二水石こうあるいは無水石こうを使用することができる。
【0079】
以上、この発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述した実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
【0080】
例えば、上記実施の形態1の石こうの供給において、第2のケース13を用いる代わりに、容器11内に第1のケース12を入れ一定量の水道水を満たし、この水道水に一定量の石こう、例えば一定量の半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうを添加し溶解させるようにする。例えば、2リットルの水道水に200mgの硫酸カルシウムを溶解させる。このように、一定量の硫酸カルシウムを調合し所定時間(例えば半日)保管してから活性水素溶存水とし飲料水として使用してもよい。この場合では、容器11内の活性水素溶存水は、そのままなくなるまで使用される。そして、なくなれば新たに調合して活性水素溶存水を調製することになる。この場合、硫酸カルシウムの代わりに硫酸マグネシウムを用いてもよい。
このように、一定量の硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムを調合し溶解させて活性水素溶存水を生成する方法では、硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムの錠剤を用いると好適である。
【0081】
また、実施の形態2において、共用ケース31を使用しないで、例えば錠剤状の上記水素生成固形物を直接に飲料水に一定量添加し、所定時間(例えば半日)保管してから活性水素溶存水とし飲料水として使用してもよい。この場合、マグネシウム金属粉末を混合させる石こうとしては、半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうを使用することができる。
【0082】
上記実施の形態において、石こうに代えて固形の硫酸マグネシウムを用い、その溶解し解離したマグネシウム水和イオンを使用するようにしてもよい。この場合には、上記第2のケース13あるいは共用ケース31、51に硫酸マグネシウムの固形物、あるいは硫酸マグネシウムとマグネシウム金属粉末の混合物固形物を充填する。あるいは、硫酸カルシウムの固形物と硫酸マグネシウムの固形物とを混合したものを上記ケースに充填するようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態に使用する石こう供給部材の形状は、種々の形態が可能である。実施の形態では細長い筒状のものを示しているが、これに限定されるものでなく、例えば外形が平板状のケースに石こうを充填する構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態1における活性水素溶存水の生成器の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における活性水素の発生部材を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1における石こうの供給部材を示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における石こうの供給部材を示す横断面図である。
【図5】本発明の効果を説明するための活性水素溶存水中の溶存水素量の経時変化を示す一例のグラフである。
【図6】本発明における硫酸カルシウムあるいは硫酸マグネシウムの添加の効果を示すグラフである。
【図7】本発明の効果を説明するための活性水素溶存水中の活性水素量の経時変化を示す一例のグラフである。
【図8】本発明の実施の形態1の効果を説明するための活性水素溶存水中の溶存水素量の経時変化を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態2における活性水素溶存水の生成器の概略構成図である。
【図10】本発明の実施の形態2における水素生成固形物を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2における水素生成固形物の製造方法を示す流れ図である。
【図12】本発明の実施の形態2における水素生成固形物の供給部材を示す側面図である。
【図13】本発明の実施の形態2における水素生成固形物の供給部材を示す横断面図である。
【図14】本発明の実施の形態2の効果を説明するための活性水素溶存水中の溶存水素量の経時変化を示すグラフである。
【図15】本発明の実施の形態3における石こうの供給部材を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
10,10a…活性水素溶存水の生成器,11…容器,12…第1のケース,13…第2のケース,14…穴,15…飲料水,16,34…マグネシウム粒,17…袋体,18,33…石こう,19…充填室,20…第1の通水コマ,21…第2の通水コマ,23,43…流路,22,41…孔,24…第1の窪み部,25…第2の窪み部,31,51…共用ケース,32…水素生成固形物,35…第1の円筒管,36…第2の円筒管,37…第1の部材,38…第2の部材,39…第3の部材,40…第4の部材,42…窪み部,44…突起部,45…ガス抜き孔,46…ガス溜まり,47…マグネシウム金属
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に、マグネシウム金属と、石こうあるいは硫酸マグネシウムとを入れることによって、活性水素を含む水を生成することを特徴とする活性水素溶存水の生成方法。
【請求項2】
水に、マグネシウム金属と石こうとの混合物を入れることによって、活性水素を含む水を生成することを特徴とする活性水素溶存水の生成方法。
【請求項3】
前記石こうは、半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうであることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性水素溶存水の生成方法。
【請求項4】
水を入れる容器と、
前記容器に収納するマグネシウム金属の充填された部材と、
前記容器に収納する石こうの充填された部材と、
を備えた活性水素溶存水の生成器。
【請求項5】
水を入れる容器と、
前記容器に収納するマグネシウム金属および石こうの充填された部材と、
を備えた活性水素溶存水の生成器。
【請求項6】
水を入れる容器と、
前記容器に収納する、マグネシウム金属と石こうとの混合物が充填された部材と、
を備えた活性水素溶存水の生成器。
【請求項7】
水を入れる容器と、
前記容器に収納するマグネシウム金属の充填された部材と、
前記容器に収納する硫酸マグネシウムの充填された部材と、
を備えた活性水素溶存水の生成器。
【請求項8】
前記部材の表面に光遮蔽層が形成され、前記充填された石こうに光が照射しないようになっていることを特徴とする請求項4,5又は6に記載の活性水素溶存水の生成器。
【請求項9】
請求項1,2又は3に記載の活性水素溶存水の生成に使用される石こうを供給する部材であって、
内部に水が入るようにしたケースと、
前記ケース内に充填された、石こう、あるいはマグネシウム金属と石こうとの混合物と、
を備えた石こう供給部材。
【請求項10】
前記充填された石こうの光照射を防ぐための光遮蔽層が前記ケースの表面に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の石こう供給部材。
【請求項11】
石こうにマグネシウム金属粉末を混合した固形物であって、水に添加されて活性水素を生成する活性水素の生成性物質。
【請求項12】
前記マグネシウム金属粉末の粒径が0.05mm〜0.15mmの範囲にあることを特徴とする請求項11に記載の活性水素の生成性物質。
【請求項13】
前記石こうは、半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうであることを特徴とする請求項11又は12に記載の活性水素の生成性物質。
【請求項14】
請求項11乃至13に記載の活性水素の生成性物質の製造方法であって、
第1の温度において、石こう、マグネシウム金属粉末および水を混合して泥状の混合物を形成する工程と、
前記第1の温度より高い第2の温度において、前記泥状の混合物を固化させる工程と、
を有することを特徴とする活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項15】
前記石こうは粉末状であることを特徴とする請求項14に記載の活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項16】
前記第1の温度は10〜18℃の範囲であり、前記第2の温度は室温であることを特徴とする請求項14又は15に記載の活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項17】
前記水のpH値が10〜13の範囲にあることを特徴とする請求項14,15又は16に記載の活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項18】
前記水に水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化カリウムが溶解していることを特徴とする請求項17に記載の活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項19】
前記水は一度沸騰したものであることを特徴とする請求項17又は18に記載の活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項20】
前記第2の温度において前記泥状の混合物を固化させる工程において、5〜20g/cm2の圧力にて加圧固化させる工程を有することを特徴とする活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項1】
水に、マグネシウム金属と、石こうあるいは硫酸マグネシウムとを入れることによって、活性水素を含む水を生成することを特徴とする活性水素溶存水の生成方法。
【請求項2】
水に、マグネシウム金属と石こうとの混合物を入れることによって、活性水素を含む水を生成することを特徴とする活性水素溶存水の生成方法。
【請求項3】
前記石こうは、半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうであることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性水素溶存水の生成方法。
【請求項4】
水を入れる容器と、
前記容器に収納するマグネシウム金属の充填された部材と、
前記容器に収納する石こうの充填された部材と、
を備えた活性水素溶存水の生成器。
【請求項5】
水を入れる容器と、
前記容器に収納するマグネシウム金属および石こうの充填された部材と、
を備えた活性水素溶存水の生成器。
【請求項6】
水を入れる容器と、
前記容器に収納する、マグネシウム金属と石こうとの混合物が充填された部材と、
を備えた活性水素溶存水の生成器。
【請求項7】
水を入れる容器と、
前記容器に収納するマグネシウム金属の充填された部材と、
前記容器に収納する硫酸マグネシウムの充填された部材と、
を備えた活性水素溶存水の生成器。
【請求項8】
前記部材の表面に光遮蔽層が形成され、前記充填された石こうに光が照射しないようになっていることを特徴とする請求項4,5又は6に記載の活性水素溶存水の生成器。
【請求項9】
請求項1,2又は3に記載の活性水素溶存水の生成に使用される石こうを供給する部材であって、
内部に水が入るようにしたケースと、
前記ケース内に充填された、石こう、あるいはマグネシウム金属と石こうとの混合物と、
を備えた石こう供給部材。
【請求項10】
前記充填された石こうの光照射を防ぐための光遮蔽層が前記ケースの表面に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の石こう供給部材。
【請求項11】
石こうにマグネシウム金属粉末を混合した固形物であって、水に添加されて活性水素を生成する活性水素の生成性物質。
【請求項12】
前記マグネシウム金属粉末の粒径が0.05mm〜0.15mmの範囲にあることを特徴とする請求項11に記載の活性水素の生成性物質。
【請求項13】
前記石こうは、半水石こう、二水石こうあるいは無水石こうであることを特徴とする請求項11又は12に記載の活性水素の生成性物質。
【請求項14】
請求項11乃至13に記載の活性水素の生成性物質の製造方法であって、
第1の温度において、石こう、マグネシウム金属粉末および水を混合して泥状の混合物を形成する工程と、
前記第1の温度より高い第2の温度において、前記泥状の混合物を固化させる工程と、
を有することを特徴とする活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項15】
前記石こうは粉末状であることを特徴とする請求項14に記載の活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項16】
前記第1の温度は10〜18℃の範囲であり、前記第2の温度は室温であることを特徴とする請求項14又は15に記載の活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項17】
前記水のpH値が10〜13の範囲にあることを特徴とする請求項14,15又は16に記載の活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項18】
前記水に水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化カリウムが溶解していることを特徴とする請求項17に記載の活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項19】
前記水は一度沸騰したものであることを特徴とする請求項17又は18に記載の活性水素の生成性物質の製造方法。
【請求項20】
前記第2の温度において前記泥状の混合物を固化させる工程において、5〜20g/cm2の圧力にて加圧固化させる工程を有することを特徴とする活性水素の生成性物質の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−255613(P2006−255613A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77851(P2005−77851)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(302040928)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(302040928)
【Fターム(参考)】
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