説明

活性炭粒子の製造方法

【課題】アセトアルデヒド等の不快臭に対して少量の活性炭で、より高い消臭効果を得ることができる活性炭粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(1)表面酸性基量が0.2mmol/g以上、細孔容積が0.7〜3.0cm3/gである活性炭粒子(a)に、特定のヒドロキシアミン化合物の濃度5〜35質量%の水溶液を、該活性炭粒子(a)における最大吸水量の85〜120%となる量で含有させた後、乾燥させる消臭用活性炭粒子(A)の製造方法、及び(2)前記(1)の方法で得られたヒドロキシアミン化合物を含有する消臭用活性炭粒子(A)と、塩基性物質除去剤を含有する消臭用活性炭粒子(B)を混合する工程を有する消臭用複合活性炭粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄機等のフィルター等に用いられる活性炭粒子、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の内装材や家具の接着剤等に含まれるホルムアルデヒド等による不快臭が問題とされている。この不快臭を除去するために、空気清浄機のフィルター等に装備して用いる消臭剤として、ヒドロキシアミン化合物を添着させた消臭活性炭粒子が知られている。
例えば、特許文献1には、アルデヒド類ガス、酸性ガス、及びアルカリ性ガスを同時に除去するため、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、酸性ガス除去剤、及びアルカリ性ガス除去剤を添着させたガス除去用濾材が開示されている。
特許文献2には、熱的に安定で、低級アルデヒド類を長時間にわたり効率よく吸着・除去するため、尿素と第一燐酸のアルカリ金属塩及び/又は酸性硫酸のアルカリ金属塩とを含有し、かつ30〜95℃に加温した水溶液を活性炭に添着させて得られた低級アルデヒド類吸着剤が開示されている。
特許文献3には、下水道処理施設で発生する悪臭ガスの除去用として、ヨウ素のオキソ酸の水溶液をスプレーすることにより、ヨウ素のオキソ酸及び/又はヨウ素の酸化物を活性炭に添着された脱臭剤が開示されている。そして、スプレー照射するヨウ素のオキソ酸の水溶液、又はヨウ素酸と無機酸との混合溶液の量は、(活性炭内部の空隙量+活性炭粒子の表面をぬらす程度の量)とすることが好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−194205号公報
【特許文献2】特許4452935号明細書
【特許文献3】特開2002−191968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気清浄機等を小型化するため高性能の消臭フィルターが要望されている。その要望に応えるためには消臭フィルターの活性炭粒子あたりの消臭効果の向上が必要である。
本発明は、アセトアルデヒド等の不快臭に対して少量の活性炭で、より高い消臭効果を得ることができる活性炭粒子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の表面酸性基量と細孔容積を有する活性炭粒子に、特定のヒドロキシアミン化合物を特定の条件で添着させることにより、前記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)を提供する。
(1)表面酸性基量が0.2mmol/g以上、細孔容積が0.7〜3.0cm3/gである活性炭粒子(a)に、下記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物の濃度5〜35質量%の水溶液を、該活性炭粒子(a)における下記算出法による最大吸水量の85〜120%となる量で含有させた後、乾燥させる、消臭用活性炭粒子(A)の製造方法。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。R3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基であり、同一でも異なっていてもよい。)
【0008】
(2)前記(1)の製造方法で得られたヒドロキシアミン化合物を含有する消臭用活性炭粒子(A)と、塩基性物質除去剤を含有する消臭用活性炭粒子(B)とを混合する工程を有する、消臭用複合活性炭粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アセトアルデヒド等の不快臭に対して安定して高い消臭効果を得ることができる活性炭粒子及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<活性炭粒子(A)の製造方法>
本発明の活性炭粒子(A)の製造方法は、表面酸性基量が0.2mmol/g以上、細孔容積が0.7〜3.0cm3/gである活性炭粒子(a)に、前記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物の濃度5〜35質量%の水溶液を、該活性炭粒子(a)における前記算出法による最大吸水量の85〜120%となる量で添着させた後、乾燥させることを特徴とする。
【0011】
(消臭効果の発現機構)
本発明の製造方法で得られる消臭活性炭粒子(A)は高い消臭効果を発現するが、その機構は以下のように考えられる。
ヒドロキシアミン化合物は、固体状態で結晶性が低い場合は、臭気物質との反応性が高く消臭作用を発揮するが、結晶性が高くなると臭気物質との反応性が低下して消臭作用が低下すると推定される。そして、活性炭粒子にヒドロキシアミン化合物を添着させる際に、該活性炭粒子の最大吸水量に近い量のヒドロキシアミン化合物の水溶液量を用いると、該水溶液は、該活性炭粒子の細孔中に全て満遍なく入り込み、活性炭粒子を乾燥すると該活性炭粒子の細孔表面にヒドロキシアミン化合物が付着すると考えられる。そして、35質量%以下のヒドロキシアミン化合物の水溶液を用いた場合の細孔表面の付着物は積層していないため結晶性が低く、消臭作用が向上すると考えられる。35質量%を超えるヒドロキシアミン化合物の水溶液を用いた場合は、細孔表面の付着物は積層し結晶性が高くなり、また表面積が減少して消臭作用が低下すると考えられる。
一方、該水溶液量が該活性炭粒子の最大吸水量の85%未満の場合は、細孔表面のヒドロキシアミン化合物の付着着面積が小さくなるために消臭作用が低下すると考えられる。また逆に、該水溶液量が該活性炭粒子の最大吸水量の120%を超える場合は、細孔中の他に活性炭粒子表面にも該水溶液が残り、乾燥することによりヒドロキシアミン化合物が細孔中と活性炭粒子表面の両方に付着することになる。活性炭粒子表面に付着したヒドロキシアミン化合物は乾燥時に結晶性が高くなり消臭作用は低下することを見出した。従って、活性炭粒子表面に付着したヒドロキシアミン化合物を含む場合は付着量が同じであっても消臭効果が低いと考えられる。
すなわち本発明は、ヒドロキシアミン化合物の濃度や水溶液量を調整し、かつ活性炭の最大吸水量に水溶液量を合わせることで、アセトアルデヒド等に対して安定して高い消臭効果を得ることができる活性炭粒子を製造することができる。
なお、特許文献1及び2には最大吸水量についての記載はないが、特許文献1の実施例では、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールをガス除去粒子全体の質量に対して、最大15質量%添着させている。この際に8.5%水溶液を調製している。これは少なくとも活性炭粒子に対して1.7倍以上の水溶液を用いており、活性炭の最大吸水量が活性炭1gに対して1mLとしても水溶液量が活性炭粒子の最大吸水量の170%以上のものである。
【0012】
<活性炭粒子(a)及び(b)>
本発明で使用される活性炭粒子(a)及び(b)(以下、両者を総称して「活性炭粒子」ともいう)としては、褐炭、泥炭、瀝青炭、コークス、木質炭、ヤシ殻炭、樹脂等を原料として通常の方法により賦活されたものであれば、特に制限なく使用することができる。これらの中では、消臭性能の観点から、木質炭とヤシ殻炭が好ましく、ヤシ殻炭がより好ましい。賦活法としては、水蒸気賦活法や薬品賦活法等が挙げられる。
活性炭粒子の細孔内部の親水性を向上させ、ヒドロキシアミン化合物の水溶液の浸透性を上げる観点から、活性炭粒子の表面酸性基量は0.20mmol/g以上であり、
0.25〜1.00mmol/gが好ましく、0.25〜0.50mmol/gが好ましい。表面酸性基量が0.20mmol/g未満の場合、ヒドロキシアミン化合物の水溶液が細孔内に浸透しにくいため十分に添着されず、消臭率が下がる傾向がある。入手の容易性の観点から表面酸性基量は1.00mmol/g以下が好ましい。
表面酸性基量は、活性炭粒子を製造する際の賦活処理時の温度と酸による洗浄時の酸濃度により調整することができ、賦活温度を低くする及び/又は酸濃度を高くすることで大きくなり、賦活温度を高くする及び/又は酸濃度を低くすることで小さくなる。
【0013】
活性炭粒子の細孔容積は、活性炭粒子の吸水量を増加させ添着量を多くする観点と活性炭粒子の強度を維持する観点から、0.7〜3.0cm3/gであり、0.7〜2.5cm3/gが好ましく、0.7〜2.0cm3/gがより好ましい。細孔容積が0.7cm3/g未満であると、最大吸水量が少なくなり、十分な量のヒドロキシアミン化合物や塩基性成分除去物質を活性炭粒子に添着できない傾向がある。逆に、細孔容積が3.0cm3/gを超えると活性炭粒子の強度が低下し、活性炭粒子が崩壊しやすくなる傾向がある。
活性炭粒子の細孔容積は、活性炭粒子を製造する際の賦活処理時の時間により調整することができ、賦活時間を長くすることで大きくなり、賦活時間を短くすることで小さくなる。
【0014】
活性炭粒子の形状は、特に制限されず、粉末状、粒状、繊維状、円柱状、ハニカム状、等が挙げられるが、種々の形状のフィルターに応用する観点から、粒状が好ましい。
活性炭粒子の粒径は、消臭性能とフィルター等への加工の適用性の観点から、直径38μm〜5mmが好ましく、直径50μm〜3mmがより好ましく、直径0.1〜2mmが更に好ましい。活性炭粒子の粒径は篩い法で測定することができる。
【0015】
<ヒドロキシアミン化合物>
本発明で用いられるヒドロキシアミン化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0016】
【化2】

【0017】
一般式(1)において、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基である。
炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。また、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
1は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましく、水素原子、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基がより好ましい。
【0018】
2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基である。
炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基等が挙げられる。
炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、上記のものが挙げられる。
2は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基である。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜5のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等が好ましく、特にメチレン基が好ましい。
【0019】
ヒドロキシアミン化合物の具体例としては、例えば、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
これらの中では、消臭性能等の観点から、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオールから選ばれる1種以上がより好ましく、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(TRIS)が特に好ましい。
上記のヒドロキシアミン化合物は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、ヒドロキシアミン化合物は、シグマアルドリッチジャパン社、和光純薬工業社、ダウケミカル日本社等から入手可能である。
【0020】
(ヒドロキシアミン化合物の水溶液)
本発明においては、一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物の水溶液が用いられる。ヒドロキシアミン化合物の水溶液濃度は、活性炭粒子の細孔中のヒドロキシアミン化合物の表面積を大きくし消臭性能を向上する観点から、5〜35質量%であり、7〜30質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
また、ヒドロキシアミン化合物の水溶液の量は、添着させる活性炭粒子(a)の最大吸水量の85〜120%であり、85〜110%が好ましく、90〜110%がより好ましく、90〜105%がより好ましく、95〜105%がより好ましく、95〜101%が更に好ましい。ここで、活性炭粒子(a)の最大吸水量の算出は以下の方法で行う。
(最大吸水量の算出)
室温25℃、湿度50%で、活性炭粒子(a)10gをスクリュー管(マルエム社製、No.6)に入れ、イオン交換水を0.1mL添加し、蓋をした後、1分間で約200回程度振とうし、目視で観察する。そこで容器壁面に活性炭粒子の付着がなければ全量吸水したとみなす。付着が見られれば、更に1分間の振とうと目視確認を最大2回繰り返し、それでも付着がなくならなければ最大吸水量を超えたと判断する。水を0.1mLずつ添加するごとに振とう及び観察を繰り返し、容器壁面に活性炭粒子(a)が付着した水の量を、最大吸水量を超えた量と判断する。最大吸水量を超える前までの水を添加量の累計を活性炭粒子(a)の質量 で割り、最大吸水量とする。容器壁面に活性炭粒子(a)が付着しない状態では、活性炭粒子(a)はさらさらした状態であり表面に濡れた部分が観察されない。活性炭粒子(a)が容器壁面に付着する状態では、活性炭粒子の表面の少なくとも一部に濡れた部分が観察できる。
【0021】
(ヒドロキシアミン化合物の添着方法)
本発明においては、活性炭粒子(a)とヒドロキシアミン化合物の水溶液を混合する等により活性炭粒子(a)にヒドロキシアミン化合物の水溶液を添着させた後、乾燥させる。具体的には、活性炭粒子(a)の最大吸水量となるヒドロキシアミン化合物の水溶液量を噴霧した後、混合容器を振とうする方法、混合機で活性炭粒子(a)を撹拌しながらヒドロキシアミン化合物を活性炭粒子(a)の最大吸水量となる水溶液量を噴霧する方法が挙げられる。
前記、混合機としては、容器回転型混合機、固定容器型混合機、流体運動型混合機等が挙げられる。具体的には固定容器型混合機としては高速流動型混合機、複軸パドル型混合機、高速剪断混合装置(ヘンシェルミキサー(登録商標)等)、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)や円錐型スクリュー混合機(ナウターミキサー(登録商標)等)が挙げられる。これらの中で、複軸パドル型混合機、低速混合装置及び円錐型スクリュー混合機が好ましい。噴霧器としては円錐タイプやホローコーンタイプが挙げられる。
ヒドロキシアミン化合物の水溶液を噴霧後、消臭性能の安定性の観点から、添着後の消臭用活性炭粒子(A)中の水分量を好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるように乾燥することが好ましい。水分量は、ヒドロキシアミン化合物の分解抑制のため1質量%以上が好ましい。従って、消臭性能の変動抑制とヒドロキシアミン化合物の分解抑制の観点から、消臭用活性炭粒子(A)中の水分量は、1〜7質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
乾燥効率とヒドロキシアミン化合物の分解抑制の観点から、消臭用活性炭粒子(A)の乾燥条件は、温度60〜150℃で0.1〜48時間が好ましく、75〜120℃で0.1〜12時間がより好ましい。乾燥は、大気圧より減圧条件下で行うこともできる。
ヒドロキシアミン化合物の添着量は、消臭性能の観点から、添着前の活性炭粒子(a)100質量部に対して、3〜27質量部が好ましく、7〜25質量部がより好ましい。
【0022】
<塩基性成分除去剤>
本発明においては、活性炭粒子(b)に塩基性物質除去剤を含有させて得た消臭用活性炭粒子(B)を前記消臭用活性炭粒子(A)と混合して、消臭用複合活性炭粒子として用いることができる。
塩基性成分除去剤としては、塩基性基を中和できる酸性基を有する化合物が挙げられ、塩基性成分の除去性能の観点から、リン酸、硫酸、硝酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸等、又はそれらの酸の部分中和の塩が挙げられる。
リン酸の部分中和の塩としては、リン酸又はリン酸類とのアンモニウム塩、グアニジン塩、及びアルカリ金属塩等が挙げられる。例えば、ポリリン酸アンモニウム、リン酸グアニジン、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム等が好ましい。塩基性成分の除去性能の観点から、リン酸、リン酸塩、硫酸が好ましく、リン酸がより好ましい。
【0023】
塩基性成分除去剤を活性炭粒子(b)に添着させる方法としては、ヒドロキシアミン化合物を添着させる方法と同様にして、塩基性成分除去剤水溶液を活性炭粒子(b)に添加して添着させ、乾燥させる方法が挙げられる。
塩基性成分除去剤の水溶液濃度は、塩基性成分の除去性能の観点から、20〜55質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。また、塩基性成分除去剤の水溶液の量は、塩基性成分の除去性能の観点から、添着させる活性炭粒子の最大吸水量の30〜120%が好ましく、40〜110%がより好ましく、50〜100%が更に好ましい。
塩基性成分除去剤の添着量は、塩基性成分の除去性能の観点から、添着前の活性炭粒子100質量部に対して、15〜45質量部が好ましく、25〜35質量部がより好ましい。
【0024】
<複合活性炭粒子の製造方法>
また、本発明の消臭用複合活性炭粒子の製造方法は、前記で得られたヒドロキシアミン化合物を含有する消臭用活性炭粒子(A)と、塩基性物質除去剤を含有する消臭用活性炭粒子(B)とを混合することで得られる。
消臭用活性炭粒子(A)と消臭用活性炭粒子(B)の混合質量比〔(A)/(B)〕は、アルデヒド臭と塩基性臭の両方を消臭する観点から、95/5〜60/40が好ましく、85/15〜70/30がより好ましく、80/20が更に好ましい。
複合活性炭粒子中における、塩基性物質除去剤の質量(β)に対するヒドロキシアミン化合物の質量(α)の質量比〔(α)/(β)〕は、アルデヒド、塩基性物質の両方を効率よく消臭する観点から、0.4〜7.0が好ましく、1.0〜5.0がより好ましく、1.0〜3.0が更に好ましい。
その混合方法としては、例えば、ヒドロキシアミン化合物を含有した活性炭粒子と塩基性成分除去剤を含有した活性炭粒子を混合する方法が挙げられる。混合には、前記の混合機を用いることができる。攪拌羽根を用いない混合機を用いる場合は、混合機の容器を振とうして行うことができる。
【0025】
本発明の消臭用活性炭粒子(A)又は消臭用複合活性炭粒子は消臭用のフィルター部材として用いることができる。具体的な消臭用フィルターの形態としては、消臭用活性炭粒子(A)又は消臭用複合活性炭粒子と、消臭用活性炭粒子(A)又は消臭用複合活性炭粒子を連結する接着剤とからなるガス除去粒子層の両面に通気性のカバー材が積層一体化されているものが挙げられる。
【実施例】
【0026】
実施例及び比較例
下記の活性炭粒子、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(シグマ アルドリッチ ジャパン社製)(以下、「TRIS」ともいう)、及びリン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン社製、75質量%水溶液)を用意し、表1〜6に示す条件で処理した。
・活性炭粒子A−1、A−6〜A−20、B−1〜B−5:
ヤシ殻炭、粒径:1〜2mm、比表面積:1880cm2/g、水分量0.95質量%
・活性炭粒子A−2:
石炭、粒径:0.5〜1.5mm、比表面積:1090cm2/g
・活性炭粒子A−3:
木質炭、粒径:1〜2mm、比表面積:1530cm2/g
・活性炭粒子A−4:
ヤシ殻炭、粒径:1〜2mm、比表面積:1710cm2/g
・活性炭粒子A−5:
石炭、粒径:1〜2mm、比表面積:1670cm2/g
【0027】
調製例1(TRIS水溶液の調製)
活性炭粒子A−2に用いた水溶液として、次の水溶液を調製した。
イオン交換水70gに対して、TRIS 30gを加え、マグネチックスターラーで溶解するまで撹拌し、濃度30質量%のTRIS水溶液を得た。
活性炭粒子A−3〜A−20についてもTRISの量を変えて濃度の異なる水溶液を調製した。
調製例2(リン酸の水溶液の調製)
活性炭粒子B−1用に用いた水溶液として、次の水溶液を調製した。
濃度75質量%のリン酸水溶液10gに対して、イオン交換水27.5gを加え、マグネチックスターラーで撹拌し、濃度20質量%のリン酸水溶液を得た。
活性炭粒子B−2〜B−5についてもリン酸の量を変えて濃度の異なる水溶液を調製した。
【0028】
調製例3(添着活性炭粒子の調製)
(1)容量50mLのスクリュー管に、活性炭粒子10gを入れ、TRISの30質量%水溶液(25℃)をピペットで3.1mL添加した。容器にふたをして手で3分間振とうした。その後80℃、ゲージ圧−100mmHg(ゲージ圧−1.3×104Pa)の減圧条件下で24時間乾燥し、水分量1.95質量%のヒドロキシ化合物を添着させた活性炭粒子A−2の活性炭粒子(添着炭)を得た。結果を表1に示す。
(2)活性炭粒子A−3〜A−19に対して濃度が異なる水溶液を添着させた活性炭粒子(添着炭)や、活性炭粒子B−1〜B−5に対してリン酸を添着させた活性炭粒子(添着炭)も同様にして調製した。結果を表1及び2に示す。
(3)表5〜6に示すように、ヒドロキシアミン化合物を添着させた活性炭粒子(A)とリン酸を添着させた活性炭粒子(B)とを、全量が2gになるように表中の比率で50mLのスクリュー管に入れ、ふたをして手で1分間振とうして混合し、活性炭粒子(添着炭)を調製した。
【0029】
前記調製例で得られた活性炭粒子の各種物性の測定、評価は、以下の方法により行った。
(1)表面酸性基量の測定
添着前の活性炭粒子の表面全酸性基量の測定は、Boehmらの滴定の方法に従って行った。すなわち、活性炭粒子0.5gをフラスコに入れ、そこに0.05規定の水酸化ナトリウム水溶液を50mL加えて室温で24時間静置した。その後、フラスコの中の活性炭粒子と水溶液を濾別し、濾液をメチルオレンジを指示薬として0.05規定の塩酸水溶液で逆滴定して算出した。
(2)細孔容積の測定
比表面積・細孔分布分析装置(島津製作所社製、商品名:ASAP2020)を用いて、液体窒素を用いた多点法で測定し、HK(Horvath-Kawazoe)法による値を用いた。なお、試料は60℃で12時間の減圧前処理を施した。
【0030】
(3)最大吸水量の算出
添着前の活性炭粒子の最大吸水量を測定した。
25℃、湿度50%で、比較例1’−1で用いた活性炭粒子10g(水分量0.95質量%)を50mLのガラス製スクリュー管(マルエム社製、No.6スクリュー管)に入れ、イオン交換水を0.1mL添加し、蓋をした後、スクリュー管を手で200回程度1分間振とうし、目視で活性炭粒子の流動性を観察した。そこで容器壁面に活性炭粒子の付着がなければ全量吸水したとみなす。付着が見られれば、更に1分間振とうし、目視確認する。これを最長3分間行い、それでも付着がなくならなければ最大吸水量を超えていると判断する。新たに付着がなければさらに、イオン交換水を0.1mLずつ添加及び流動性の観察を繰り返し、活性炭粒子がスクリュー管の壁面に付着した時に最大吸水量を超えたと判断し、最大吸水量を超える前のイオン交換水の添加量の累計から最大吸水量を計算した。具体的には操作として、まず、活性炭粒子10gを50mLのガラス製スクリュー管に入れ、イオン交換水を1.0mLずつ添加し、前記の操作を行い目視で活性炭粒子の流動性を観察し、最大吸水量を超えたと判断した時の添加量の累計より1.0mL少ない量を最大吸水量の目安とした。新たに活性炭粒子10gを別の50mLのガラス製スクリュー管に入れ、目安としたイオン交換水を加え、蓋をして3分間振とうした。そしてその後イオン交換水を0.1mLずつ添加して最大吸水量を求めた。比較例1’−1で用いた活性炭粒子の最大吸水量は0.80mL/gであった。
他の最大吸水量が異なる活性炭粒子も同様にして算出した。
【0031】
(4)ヒドロキシアミン化合物の添着量の算出
ヒドロキシアミン化合物の添着前後の活性炭粒子の質量変化と水分量とから添着量を計算した。
(5)添着活性炭粒子の水分量の測定方法
メトラー・トレド社製の「HG53ハロゲン水分計」にて下記の条件で測定した。
測定条件:サンプル量(約2g)、乾燥温度(150℃)、標準乾燥プログラム、スイッチオフタイマー(3)
【0032】
(6)ガス消臭率の算出
ガステック社製パーミエーター(校正用ガス調製装置)にて一定濃度のガス(40ppmのアセトアルデヒド、40ppmのアンモニア)を発生させ、測定対象の活性炭粒子(0.1g)を充填した臨床器材社製、ディスポーザブルスポイド(ポリプロピレン樹脂製、内径Φ13mm、長さ200mm)を通過させ、一時間後にサンプルの入口のガス濃度(x)及び出口のガス濃度(y)をガステック社製ガス検知管にて測定し、下記計算式(1)により消臭率(%)を算出した。
消臭率(%)=((x)−(y))/(x)×100 (1)
(パーミエーター測定条件)
・温度:35℃
・注入ガス:窒素(窒素ラインとパーミエーター間に、チャコールフィルタ及びモイスチャーフィルタを設置)
・標準ガス(発生ガス):
・アセトアルデヒド:パーミエーションチューブ(P−92−1)10本、入口濃度:40ppm
・アンモニア:パーミエーションチューブ(P−3−M)2本、入口濃度:40ppm
・通気速度:0.2L/min
・ガス検知管:
・アセトアルデヒド用:検知管92M(入口側)、92L又は92M(出口側)、吸引回数1回
・アンモニア用:検知管3LA(入口側)、3L(出口側)、濃度に応じて吸引回数を選択する。
【0033】
【表1】

【0034】
表1から、以下のことが分かる。
(1)表面酸性基量と細孔容積が異なる活性炭粒子(添着炭)(実施例1−1及び1−2、比較例1’−2〜1’−4)を対比すると、表面酸性基量0.2mmol/g未満の活性炭粒子(添着炭)、又は細孔容積0.7cm3/g未満の活性炭粒子(添着炭)(比較例1’−2〜1’−4)は、実施例1−1及び1−2よりアセトアルデヒド消臭率が低い。
(2)実施例1−1〜1−4、比較例1’−5、1’−6を対比すると、TRISの添着量を一定になるよう、添着前の活性炭粒子にTRISを活性炭粒子に対して10質量%添着させた場合、対最大吸水量の割合が89〜114%である実施例1−1〜1−4ではアセトアルデヒド消臭率が71〜100%であるのに対し、対最大吸水量の割合がそれぞれ153%及び59%である比較例1’−5及び1’−6では、消臭率が43%及び44%に留まっている。
【0035】
【表2】

【0036】
表2から、以下のことが分かる。
TRISの水溶液量がほぼ一定で水溶液の濃度を変えて活性炭粒子に添着させた活性炭粒子(A)を用いてアセトアルデヒドの消臭率を測定した。
実施例1−2、1−5〜1−7、比較例1’−7、1’−8を対比すると、対最大吸水量の割合が94〜101%の場合(水溶液量が略一定の場合)に、TRISの水溶液濃度を変えた場合、水溶液の濃度が低い比較例1’−7は、消臭率が低い。
水溶液の濃度が高い比較例1’−8の消臭率が低い。
【0037】
【表3】

【0038】
表3から、以下のことが分かる。
TRIS水溶液の濃度が一定で水溶液の量を変えて活性炭粒子に添着させた活性炭粒子(A)を用いてアセトアルデヒドの消臭率を測定した。
実施例1−2、1−8、1−9、比較例1’−9、1’−10を対比すると、TRISの溶液濃度を一定にして溶液量を変えた場合、溶液量が少ない比較例1’−9と溶液量が多い比較例1’−10は、消臭率が低い。
【0039】
表4において、比較例1’−11は、TRISの濃度12.5質量%の水溶液を最大吸水量の50%の水溶液量で活性炭に添加し、乾燥して添着させた後、乾燥した。得られた活性炭粒子にさらに、TRISの濃度12.5質量%水溶液を最大吸水量の50%の水溶液量で活性炭粒子に添着後、乾燥し活性炭粒子(添着炭)を調製した。
比較例1’−11では、表1の実施例1−2と同じ水溶液濃度で処理をして、最終的に同じ添着量の活性炭粒子(添着炭)が得られたが、2回に分けて添着させた比較例1’−11は消臭率が低い。
【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
表5から、以下のことが分かる。
リン酸の添着量を一定にして、対最大吸水量の割合を変えて、活性炭粒子にリン酸を添着させ(消臭用活性炭粒子(B))、TRISを添着させた消臭用活性炭粒子(A)と重量比〔(A)/(B)〕=80/20の割合で混合し、アセトアルデヒドとアンモニアの消臭率を測定した。
実施例2−2〜2−4で、リン酸水溶液量の対最大吸水量の割合が50〜100%でアンモニアの消臭率が高い。消臭用活性炭粒子(B)の添着条件に関係なく、消臭用活性炭粒子(A)が同じ場合はアセトアルデヒドの消臭効果は一定である。
【0043】
【表6】

【0044】
表6から、以下のことが分かる。
TRISを添着させた活性炭粒子(A)とリン酸を添着させた活性炭粒子(B)との混合重量の比を変えて、アセトアルデヒドとアンモニアの消臭率を測定した。
実施例2−3、2−8及び2−9でアンモニア消臭率に高く、実施例2−6、2−7及び2−3でアセトアルデヒド消臭率が高い。実施例2−3の混合重量比〔(A)/(B)〕=80/20で、アセトアルデヒドとアンモニアの両方に対して消臭効果が高い。
【0045】
表1〜6から、実施例の活性炭粒子は、比較例の活性炭粒子に比べて、アセトアルデヒド等の不快臭に対して少量の活性炭で、より高い消臭効果を得ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、アセトアルデヒド等の不快臭に対して安定して高い消臭効果を得ることができる活性炭粒子を効率的に製造することができ、得られた活性炭粒子は、空気清浄機等のフィルター等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面酸性基量が0.2mmol/g以上、細孔容積が0.7〜3.0cm3/gである活性炭粒子(a)に、該活性炭粒子(a)の最大吸水量の85〜120%となる量を用いて、下記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物の濃度5〜35質量%の水溶液を、添着させた後、乾燥させる、消臭用活性炭粒子(A)の製造方法。
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。R3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基であり、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物が2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールである、請求項1に記載の消臭用活性炭粒子(A)の製造方法。
【請求項3】
消臭用活性炭粒子(A)が、活性炭粒子(a)100質量部に対して、前記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物を、3〜27質量部添着させる、請求項1又は2に記載の消臭用活性炭粒子(A)の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で得られたヒドロキシアミン化合物を含有する消臭用活性炭粒子(A)と、塩基性物質除去剤を含有する消臭用活性炭粒子(B)とを混合する工程を有する、消臭用複合活性炭粒子の製造方法。
【請求項5】
塩基性物質除去剤の質量(β)に対するヒドロキシアミン化合物の質量(α)の質量比〔(α)/(β)〕が0.4〜7.0である、請求項4に記載の消臭用複合活性炭粒子の製造方法。

【公開番号】特開2012−20229(P2012−20229A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159932(P2010−159932)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】