説明

流しの排水口用蓋

【課題】 使用する排水口の口径に適合しうるように外周の一部を手で切り取る場合の作業性を損なうことなく、流しに水を溜める際に排水口の内周面との間から水が漏れるのを回避することができる流しの排水口用蓋を提供する。
【解決手段】 流しの排水口用蓋1は、環状枠体2と、環状枠体の内周面下部と一体に形成された放射状スリット付き蓋体3とを備える。環状枠体は、それぞれ口径の異なる排水口4に嵌め合わせうる外径を有する複数の環状壁部21A,21B,21Cと、隣り合う環状壁部の上部どうしを連結する連結部22とを有し、連結部の上面に環状切り取り溝23が形成されている。最内側以外の環状壁部21B,21Cの内周面に、周方向所定位置において上下方向にのびる垂直切り取り溝24が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所等の流し(シンク)の排水口に嵌め込んで使用されるゴム状弾性体製の蓋、即ち、いわゆる「菊割れ蓋」に関し、より詳細には、外周の一部を切り取ることによって口径の異なる数種類の排水口に適合し得るように構成された取替用の、流しの排水口用蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の菊割れ蓋として、図14に示すものが知られている。この菊割れ蓋(80)は、環状枠体(81)と、環状枠体(81)の内方開口を覆うように環状枠体(81)の内周面下部と一体に形成されかつ放射状のスリット(82a)を有する蓋体(82)とを備えたゴム製のものである。環状枠体(81)は、それぞれ口径の異なる3種類の排水口に嵌め合わせられる外径を有しかつ径方向に間隔をおいて同心状に配置される3つの環状壁部(83A)(83B)(83C)と、隣り合う環状壁部の上部どうしを全周にわたって連結する2つの連結部(84)とを有している。そして、各連結部(84)の上面に、連結部の周方向に沿ってのびる環状切り取り溝(85)が形成されている(下記特許文献1参照)。
この菊割れ蓋(80)によれば、最外側の環状壁部(83C)または最外側と中間の環状壁部(83C)(83B)を、連結部(84)上面の環状切り取り溝(85)に沿ってカッター等で切り取ることにより、口径の異なる3種類の排水口に使用することができる。
しかしながら、上記の菊割れ蓋(80)の場合、環状壁部(83C)(83B)を切り取るのにカッター等の刃物を使用する必要があるため、その作業が必ずしも容易でなく、作業中に手指等を怪我するおそれもあった。
【0003】
図15は、従来の別の菊割れ蓋を示すものである。同図に示す菊割れ蓋(90)も、環状枠体(91)と蓋体(92)とを備えたゴム製のものである。環状枠体(91)には、3つの環状壁部(93A)(93B)(93C)と隣り合う環状壁部の上部どうしを連結する連結部(94)とが設けられているが、各連結部(94)の下面に周方向に沿ってのびる横断面略レ字形の環状切り取り溝(95)が形成されている。また、最外側および中間の環状壁部(93B)(93C)のそれぞれに、周方向所定位置において下端縁から上端縁付近まで達する逆V字形の切れ目(96)が形成されている(下記特許文献2参照)。
この菊割れ蓋(90)によれば、環状壁部(93B)(93C)を切り取る際に、カッター等の工具を使用しなくても、逆V字形の切れ目(96)から環状切り取り溝(95)に沿って手で引き裂いて切り取ることができるので、切り取り作業が簡単かつ安全である。
しかしながら、上記の菊割れ蓋(90)の場合、最外側および中間の環状壁部(93B)(93C)に形成された逆V字形の切れ目(96)が下端縁から上端縁付近まで達する深いものであるため、これらの環状壁部(93B)(93C)を切り取らない状態で排水口に嵌め込んで使用した場合、切れ目(96)の箇所において排水口内周面との間に隙間が生じ易かった。そのため、菊割れ蓋(90)の環状枠体(91)の内側に更に止水蓋を嵌めた状態でシンクに水を溜める際、上記隙間から水が徐々に抜けてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭60−24787号公報
【特許文献2】特開2001−311198号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、使用する排水口の口径に適合し得るように外周の一部を手で切り取る場合の作業性を損なうことなく、流しに水を溜める際に排水口内周面との間から水が漏れるのを回避することができる、流しの排水口用蓋を提供することにある。
【0006】
本発明による流しの排水口用蓋は、流しの排水口に嵌め込んで使用されるゴム状弾性体製の蓋であって、環状枠体と、環状枠体の内方開口を塞ぐように環状枠体の内周面下部と一体に形成されかつ放射状のスリットを有する蓋体とを備えている。環状枠体は、それぞれ口径の異なる排水口に嵌め合わせうる外径を有しかつ径方向に間隔をおいて同心状に配置される複数の環状壁部と、複数の環状壁部の隣り合うものどうしをこれらの上部において全周にわたって連結する連結部とを有している。環状枠体の上面および連結部の下面のうち少なくともいずれか一方に、連結部の周方向に沿ってのびる環状切り取り溝が形成されている。そして、複数の環状壁部のうち最内側以外の環状壁部の内周面に、周方向所定位置において上下方向にのびる垂直切り取り溝が形成されている。
本発明の流しの排水口用蓋によれば、最内側以外の環状壁部の内周面に垂直切り取り溝が形成されているため、従来の蓋のように深い切れ目を入れなくても、この溝の箇所において環状壁部を手で上向きに引き裂くことができるので、切り取り作業を容易に行いうる。そして、本発明による蓋の場合、最内側以外の環状壁部に深い切れ目を入れておくことを要しないので、環状壁部の外周面をその全周にわたって排水口の内周面と水密状に接するように構成することができ、環状枠部の内側に更に止水蓋を嵌めた状態でシンクに水を溜める際にも水が抜けるおそれがない。
【0007】
本発明による流しの排水口用蓋において、最内側以外の環状壁部および連結部の上面に、垂直切り取り溝に対応する位置においてこれらの上面を横断する方向にのびる上部水平切り取り溝が形成されている場合がある。
この場合、上部水平切り取り溝に沿って、最内側以外の環状壁部および連結部を、これらの水平横断方向に手で容易に引き裂くことが可能となる。
【0008】
また、本発明による流しの排水口用蓋において、上部水平切り取り溝に代えて、または上部水平切り取り溝に加えて、連結部の下面に、垂直切り取り溝の上端に連なって同下面を横断する方向にのびる下部水平切り取り溝が形成されている場合もある。
この場合にも、垂直切り取り溝と連続する下部水平切り取り溝が連結部下面にあるため、最内側以外の環状壁部および連結部を水平横断方向に手で引き裂く作業が容易となる。
【0009】
本発明による流しの排水口用蓋において、環状切り取り溝は、連結部の上面に形成されているとともに、連結部の内周縁にほぼ対応する位置において上下方向にのびる垂直溝面と垂直溝面の下端縁から径方向外方に向かって斜め上向きにのびる傾斜溝面とで構成された略レ字形の横断面を有している場合がある。
図14に示す従来の菊割れ蓋の場合、連結部上面の環状切り取り溝は、横断面略U形に形成されていて、溝の底がやや広いため、正確な切り取り位置が掴み難く、綺麗に切り取ることができないことがあった。また、図15に示す従来のもう1つの菊割れ蓋では、連結部の下面に環状切り取り溝が形成されていて、同溝が表面に露出しないため、切り取り位置を把握し難く、綺麗に切り取ることができない場合があった。加えて、手で引き裂くことにより形成される切り取り面は不規則な凹凸があって必ずしも見栄えが良くないが、図15の菊割れ蓋のように環状切り取り溝が連結部下面に設けられていると、切り取り面が環状壁部の上面に隣接するため、蓋を排水口に嵌め込んだ状態においても切り取り面の一部が露出し、それによって蓋の外観が損なわれるおそれがあった。
そこで、上記のように、環状切り取り溝を連結部の上面に形成するとともに、その横断面形状を略レ字形としておけば、同溝の底に環状のラインが表れる。このラインは、蓋の上方から目視にて把握することができるため、切り取り位置を示すマークとして機能し、切り取り作業をより正確に行うことが可能となり、切り取り面も綺麗になる。また、この場合、切り取り面が、環状壁部の上面から垂直溝面の分だけ下がった位置に形成されるため、蓋を排水口に嵌め込んだ状態においても上面側に露出せず、蓋の外観が損なわれるおそれがない。
【0010】
また、本発明による流しの排水口用蓋において、環状切り取り溝は、連結部の内側に隣接する環状壁部の上面に形成されているとともに、連結部の内周縁にほぼ対応する位置において上下方向にのびる垂直溝面と前記垂直溝面の下端縁から径方向内方に向かって斜め上向きにのびる傾斜溝面とで構成された略レ字形の横断面を有している場合もある。
上記の場合にも、連結部の内側に隣接する環状壁部の上面に形成された断面横略レ字形の環状切り取り溝の底に表れる環状のラインを、蓋の上方から目視で把握することができるため、切り取り作業をより正確に行うことが可能となり、切り取り面も綺麗になる。
また、環状切り取り溝が、連結部の内側に隣接する環状壁部の上面に形成されているため、連結部には、溝の形成によって厚みが小さくなる部分、即ち、引き裂き強度が小さくなる部分が生じない。従って、連結部を切り取る際に、連結部がその径方向の中間で千切れたり、バリが生じたりし難くなる。
なお、本発明による流しの排水口用蓋において、環状切り取り溝は、上記のように連結部の上面、または連結部の内側に隣接する環状壁部の上面に形成される他、これらの上面にまたがって形成されてもよい。また、環状切り取り溝は、連結部の下面に形成されてもよく、さらには、連結部および/または環状壁部の上面と連結部の下面のそれぞれに形成されてもよい。
【0011】
本発明による流しの排水口用蓋において、最内側以外の環状壁部の周方向所定位置に、上部に排水口の内周面と水密状に接しうる止水部を残して、下端縁から垂直切り取り溝の長さ中間まで達する切れ目が形成されている場合がある。
この場合、切れ目によって環状壁部を手で上向きに引き裂く作業がより容易となる上、切り取り位置を目視で把握し易くなるが、切れ目の上方部分には止水部が残っているため、環状枠部の内側に更に止水蓋を嵌めた状態でシンクに水を溜める際にも水が抜けるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであって、流しの排水口用蓋(菊割れ蓋)の平面図である。
【図2】第1の実施形態に係る蓋の正面図である。
【図3】第1の実施形態に係る蓋の部分拡大底面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う蓋の垂直横断面図である。
【図5】図4の両側部分を拡大して示す蓋の部分省略横断面図である。
【図6】第1の実施形態に係る蓋の一部を拡大して示す上方斜視図である。
【図7】図3のVII−VII線に沿う蓋の部分拡大下方斜視断面図である。
【図8】第1の実施形態に係る蓋の使用状態を示すものであって、排水口に蓋を嵌め込み、さらにその内側に止水蓋を嵌め込んだ状態の垂直横断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態を示すものであって、流しの排水口用蓋の部分拡大底面図である。
【図10】図9のX−X線に沿う蓋の部分拡大下方斜視断面図である。
【図11】第2の実施形態に係る蓋の部分拡大垂直横断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態を示すものであって、流しの排水口用蓋の部分拡大下方斜視断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態を示すものであって、流しの排水口用蓋の部分拡大垂直断面図である。
【図14】従来の菊割れ蓋の垂直横断面図である。
【図15】従来のもう1つの菊割れ蓋の一部を拡大して示す下方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態を、図1〜図8を参照して以下に説明する。
この実施形態に係る流しの排水口用蓋(1)は、環状枠体(2)と、環状枠体(2)の内方開口を塞ぐように環状枠体(2)の内周面下部と一体に形成されかつ放射状のスリット(31)を有する蓋体(3)とを備えている。
この蓋(1)は、ゴム状弾性体、即ち、例えばNBR、SBR等の合成ゴムや熱硬化性樹脂系エラストマーによって一体成形される。
【0014】
環状枠体(2)は、それぞれ口径の異なる3つの排水口(例えば、口径135mm、145mm、150mmの排水口)に嵌め合わせうる外径を有しかつ径方向に間隔をおいて同心状に配置される3つの環状壁部(21A)(21B)(21C)と、径方向に隣り合う環状壁部(21A,21B:21B,21C)の上部どうしを全周にわたって連結する2つの水平環状の連結部(22)とを有している。
【0015】
最内側の環状壁部(21A)は、他の2つの環状壁部(21B)(21C)と比べて厚み及び高さが大きくなっており、その内周面の下端縁部が、蓋体(3)の外周縁部に連なっている。
【0016】
最内側の環状壁部(21A)の内周面、即ち、環状枠体(2)の内周面の高さ中間部には、内向きの環状リブ(28)が形成されている。環状リブ(28)の横断面は、略二等辺三角形状となされている。
【0017】
各連結部(22)の上面には、連結部(22)の周方向に沿ってのびる環状切り取り溝(23)が形成されている。
環状切り取り溝(23)は、連結部(22)の内周縁にほぼ対応する位置において上下方向にのびる垂直溝面(231)と、垂直溝面(231)の下端縁から径方向外方に向かって斜め上向きにのびる傾斜溝面(232)とで構成された略レ字形の横断面を有している。垂直溝面(231)の角度は、垂直に限らず、やや傾斜していても構わない。
なお、連結部(22)には、少なくともその上面に環状切り取り溝(23)が形成されていれば足りるが、さらに下面に設けてもよい。この場合、下面の溝の横断面形状は特に限定されないが、溝底の位置が上面の環状切り取り溝(23)の溝底とほぼ一致するようなものとなされるのが好ましい。
【0018】
中間および最外側の環状壁部(21B)(21C)の内周面に、周方向所定位置において上下方向にのびる垂直切り取り溝(24)が形成されている。垂直切り取り溝(24)の横断面形状は、特に限定されないが、図3や図7に示すように略V字形とすれば、これらの環状壁部(21B)(21C)において溝(24)の底の外側部分の厚みが最も薄くなり、この部分に沿って上下幅方向に引き裂く作業を容易に行うことができる。
【0019】
また、中間および最外側の環状壁部(21B)(21C)には、周方向所定位置、より具体的には、垂直切り取り溝(24)が設けられている位置において、上部に排水口(4)の内周面と水密状に接しうる止水部(26)を残して、下端縁から垂直切り取り溝(24)の長さ中間まで達する切れ目(27)が形成されている。
この実施形態では、切れ目(27)の形状は、図2や図6等に示すように逆V字形となされており、垂直切り取り溝(24)の下部は切り取られてなくなっている。なお、切れ目の形状は、上記に限られず、例えばスリット状や半円形状であってもよい。
止水部(26)は、排水口(4)内周面との間での止水性能が確実に得られるように、その上下幅、即ち、切れ目(27)の先端から環状壁部(21B)(21C)の上端縁までの距離が、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上となされる。
なお、切れ目は必ずしも形成されることを要しない。切れ目を形成しない場合には、中間および最外側の環状壁部(21B)(21C)の外周面における垂直切り取り溝(24)に対応する箇所に、切り取り開始位置であることを示すマークを印刷や刻印等によって形成しておくのが好ましい。
【0020】
中間および最外側の環状壁部(21B)(21C)および連結部(22)の上面に、垂直切り取り溝(24)に対応する位置において該上面を横断する方向、より詳しくは半径方向にのびる上部水平切り取り溝(25)が形成されている。
上部水平切り取り溝(25)の横断面形状は、特に限定されないが、例えば図2や図6に示すように略V字形とすれば、溝(25)の底の下方部分が最も薄くなり、この部分に沿って各環状壁部(21B)(21C)および連結部(22)を水平横断方向に引き裂き易くなる。
【0021】
この実施形態では、垂直切り取り溝(24)、切れ目(27)および上部水平切り取り溝(25)は、中間および最外側の環状壁部(21B)(21C)並びに連結部(22)における周方向の同じ位置、つまり、同一の半径線上に並んで形成されている。
もっとも、これらの溝(24)(25)や切れ目(27)については、最外側の環状壁部(21C)および外側の連結部(22)に設けられるものと、中間の環状壁部(21B)および内側の連結部(22)に設けられるものとが、周方向の異なる位置、例えば互いに180°離れた位置に形成されていても構わない。
【0022】
蓋体(3)には、その中心部および各スリット(31)の外端部に円形の小孔(32)があけられている。
蓋体(3)上面の外周縁寄り部分に環状段差(33)が設けられ、この段差(33)よりも内側の蓋体部分(30A)が同外側の蓋体部分(30B)と比べて厚みの小さいものとなされている。
【0023】
図8は、上述した流しの排水口用蓋(1)の使用状態を示すものである。
蓋(1)は、最も口径の大きい排水口(4)に適合するように、中間および最外側の環状壁部(21B)(21C)を切り取らずにそのまま残した状態となされている。
排水口(4)は、流し(S)の底壁の孔(S1)に嵌め込まれたトラップ(5)の開口部によって構成されている。トラップ(5)の内周面上縁部寄りには、水平な第1環状段差(51)が形成されており、この第1環状段差(51)の上に蓋(1)の中間および最外側の環状壁部(21B)(21C)が載置されている。また、トラップ(5)の内周面における第1環状段差(51)よりもやや下方位置に水平な第2環状段差(52)が形成され、この第2環状段差(52)の上にゴミ収容器(6)の環状フランジ部(61)が載せられている。蓋(1)の内側には、止水蓋(7)が嵌め込まれている。
図8に示すように、排水口(4)に蓋(1)が嵌め込まれることにより、蓋(1)の環状枠部(2)の外周面、即ち、最外側の環状壁部(21C)の外周面が、排水口(4)の内周面、即ち、トラップ(4)の内周面上縁部と水密状に接し、それによって同部分での止水性が確保されている。特に、この実施形態の蓋(1)の場合、最外側の環状壁部(21C)の周方向所定位置には、切れ目(27)が形成されているものの、その上方に止水部(26)が残されているため、同位置においても良好な止水性が得られ、従来の蓋(図15参照)のように切れ目の箇所から水漏れが生じる心配がない。
また、この実施形態の蓋(1)にあっては、環状枠体(2)内周面の環状リブ(28)が、やや下方に撓んだ状態で止水蓋(7)の外周面と水密状に接するため、この部分においても高い止水性が得られる。
【0024】
また、上記蓋(1)をより口径の小さい排水口に使用する場合、例えば、次のようにしてサイズの調整を行えばよい。即ち、まず、最外側の環状壁部(21C)における切れ目(27)の両側部分をそれぞれの手で持って互いに離れる方向に力を加えると、垂直切り取り溝(24)に沿って同環状壁部(21C)が上下幅方向に引き裂かれ、これに引き続いて、同環状壁部(21C)およびこれに隣接する連結部(22)が上部水平切り取り溝(25)に沿って水平横断方向に引き裂かれる。次いで、手で持った前記部分を周方向に動かすことにより、連結部(22)が中間の環状壁部(21B)との境界付近において環状切り取り溝(23)に沿って周方向に引き裂かれる。これにより、最外側の環状壁部(21C)とその内側に隣接する連結部(22)が環状枠体(2)から切り取られ、中間の環状壁部(21B)の外周面が露出した状態となり、蓋(1)を中間サイズの口径の排水口に使用することが可能となる。
最も小さい口径の排水口に使用する場合には、上記と同様の方法で、さらに中間の環状壁部(21B)およびこれの内側に隣接する連結部(22)を切り取り、最内側の環状壁部(21A)の外周面を露出させるようにすればよい。
【0025】
図9〜図11には、本発明の第2の実施形態が示されている。この実施形態の流しの排水口用蓋(10)は、以下の点を除いて、図1〜8に示す第1の実施形態の蓋(1)と同一の構成および作用効果を有する。
即ち、図示の流しの排水口用蓋(10)は、中間および最外側の環状壁部(21B)(21C)並びに連結部(22)の上面に上部水平切り取り溝が形成されておらず、これに代えて、各連結部(22)の下面に、垂直切り取り溝(24)の上端に連なって同下面を横断する方向、より詳しくは半径方向にのびる下部水平切り取り溝(29)が形成されている。下部水平切り取り溝(29)は、連結部(22)における同溝(29)の上方部分の厚みをほぼ均一なものとするために、その内端部が、連結部(22)上面に形成された環状切り取り溝(23)の傾斜溝面(232)とほぼ平行になるように径方向外方に向かって上向きに傾斜したものとなされている(図11参照)。下部水平切り取り溝(29)の横断面形状は、特に限定されないが、図10に示すように略V字形とすれば、溝(29)底の上方部分が最も薄くなり、この部分に沿って各環状壁部(21B)(21C)を水平横断方向に引き裂き易くなる。
この実施形態の蓋(10)によれば、中間および最外側の環状壁部(21B)(21C)並びに連結部(22)を横断方向に引き裂くのを容易にするための溝が、これらの上面に表れないため、体裁が良くなる上、同溝にゴミ等が溜まるという問題も生じない。
【0026】
図12には、本発明の第3の実施形態が示されている。この実施形態の流しの排水口用蓋(10A)は、以下の点を除いて、図9〜11に示す第2の実施形態の蓋(10)と同一の構成および作用効果を有する。
即ち、図12の流しの排水口用蓋(10A)の場合、各連結部(22)の下面に形成されている下部水平切り取り溝(29A)が、半径方向に対してやや角度を付けて斜め方向にのびている。
従って、この実施形態の蓋(10A)によれば、最外側または中間の環状壁部(21C)(21B)とその内側に隣接する連結部(22)の切り取りに際して、連結部(22)を斜め方向に横断する下部水平切り取り溝(29A)から環状切り取り溝(23)へスムーズに移行して引き裂くことが可能となるため、より作業性が向上する。また、図12から明らかなように、外側の連結部(22)下面に形成された下部水平切り取り溝(29A)の内端と、中間の環状壁部(21B)に形成された垂直切り取り溝(24)の位置が周方向にずれているため、最外側の環状壁部(21C)とその内側の連結部(22)のみを切り取りたい場合に、誤って中間の環状壁部(21B)を垂直切り取り溝(24)に沿って引き裂くおそれがない。
また、図示は省略したが、図1〜8に示す第1の実施形態の蓋(1)における上部水平切り取り溝(25)についても、上記と同様に半径方向に対してやや角度を付けて斜め方向にのびるように形成してもよく、それによって上記と同様の効果が得られる。
【0027】
図13には、本発明の第4の実施形態が示されている。この実施形態の流しの排水口用蓋(10B)は、以下の点を除いて、図1〜8に示す第1の実施形態の蓋(1)と同一の構成および作用効果を有する。
即ち、図13に示す流しの排水口用蓋(10B)において、環状切り取り溝(230)は、各連結部(22)の内側に隣接する最内側および中間の環状壁部(21A)(21B)の上面に形成されている。環状切り取り溝(230)は、連結部(22)の内周縁にほぼ対応する位置において上下方向にのびる垂直溝面(231A)と、垂直溝面(231A)の下端縁から径方向内方に向かって斜め上向きにのびる傾斜溝面(232B)とで構成された略レ字形の横断面を有している。垂直溝面(231A)の角度は、垂直に限らず、やや傾斜していても構わない。また、図13に示すように、垂直溝面(231A)の上端縁に若干の面取りが施されていてもよく、それによって環状切り取り溝(230)内に溜まったゴミが取れやすくなる。
この実施形態の蓋(10B)によれば、環状切り取り溝(230)が、連結部(22)の内側に隣接する環状壁部(21A)(21B)の上面に形成されているため、連結部(22)には、溝の形成によって厚みが小さくなる部分、即ち、引き裂き強度が弱くなる部分が生じない。従って、連結部(22)を切り取る際にも、連結部(22)がその径方向の中間で千切れたり、バリが生じたりし難くなる。
【0028】
なお、上記の各実施形態はあくまでも例示にすぎず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更を加えた上で本発明を実施することも勿論可能である。
【符号の説明】
【0029】
(1)(10)(10A)(10B):流しの排水口用蓋
(2):環状枠体
(21A)(21B)(21C):環状壁部
(22):連結部
(23)(230):環状切り取り溝
(231)(231A):垂直溝面
(232)(232B):傾斜溝面
(24):垂直切り取り溝
(25):上部水平切り取り溝
(26):止水部
(27):切れ目
(29)(29A):下部水平切り取り溝
(3):蓋体
(31):スリット
(4):排水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流しの排水口に嵌め込んで使用されるゴム状弾性体製の蓋であって、
環状枠体と、前記環状枠体の内方開口を塞ぐように前記環状枠体の内周面下部と一体に形成されかつ放射状のスリットを有する蓋体とを備え、
前記環状枠体は、それぞれ口径の異なる排水口に嵌め合わせうる外径を有しかつ径方向に間隔をおいて同心状に配置される複数の環状壁部、および、前記複数の環状壁部の隣り合うものどうしをこれらの上部において全周にわたって連結する連結部を有し、
前記環状枠体の上面および前記連結部の下面のうち少なくともいずれか一方に、前記連結部に沿って周方向にのびる環状切り取り溝が形成されている流しの排水口用蓋において、
前記複数の環状壁部のうち最内側以外の環状壁部の内周面に、周方向所定位置において上下方向にのびる垂直切り取り溝が形成されていることを特徴とする、流しの排水口用蓋。
【請求項2】
前記最内側以外の環状壁部および前記連結部の上面に、前記垂直切り取り溝に対応する位置において前記上面を横断する方向にのびる上部水平切り取り溝が形成されていることを特徴とする、請求項1記載の流しの排水口用蓋。
【請求項3】
前記連結部の下面に、前記垂直切り取り溝の上端に連なって前記下面を横断する方向にのびる下部水平切り取り溝が形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の流しの排水口用蓋。
【請求項4】
前記環状切り取り溝は、前記連結部の上面に形成されているとともに、前記連結部の内周縁にほぼ対応する位置において上下方向にのびる垂直溝面と前記垂直溝面の下端縁から径方向外方に向かって斜め上向きにのびる傾斜溝面とで構成された略レ字形の横断面を有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の流しの排水口用蓋。
【請求項5】
前記環状切り取り溝は、前記連結部の内側に隣接する前記環状壁部の上面に形成されているとともに、前記連結部の内周縁にほぼ対応する位置において上下方向にのびる垂直溝面と前記垂直溝面の下端縁から径方向内方に向かって斜め上向きにのびる傾斜溝面とで構成された略レ字形の横断面を有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の流しの排水口用蓋。
【請求項6】
前記最内側以外の環状壁部の前記周方向所定位置に、上部に前記排水口の内周面と水密状に接しうる止水部を残して、下端縁から前記垂直切り取り溝の長さ中間まで達する切れ目が形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の流しの排水口用蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−215058(P2012−215058A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49886(P2012−49886)
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(000128980)株式会社カクダイ (17)
【Fターム(参考)】