説明

流れ藻捕集装置と藻場の生成方法

【課題】 流れ藻の捕集を効率よく、簡便な装置および取り扱いによって行うことができるようにし、更に藻場の生成位置を任意に選定することができるようにする。
【解決手段】 海水を流通させ流れ藻を捕集収容する流れ藻捕集籠2と、この流れ藻捕集籠2を海面aに浮上させる浮上手段3と、流れ藻捕集籠2を浮遊係留する係留手段4とを有し、流れ藻捕集籠2は、一端に流れ藻の取り込み開口5が設けられる。そして、この浮上手段3によって、取り込み開口5を海面に配置するようにし、また係留手段3によって流れ藻捕集籠2を吹流し状態に浮遊させる構成としたことによって、流れ藻を効果的に捕集することができるようにするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流れ藻捕集装置と藻場の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、近海における海草、海藻の減少が著しく、また、藻場の不足による魚介類の育成に支障をきたし、漁獲量の低下が懸念されている。
この現象の原因の1つに、例えば草食種の魚と、海草、海藻の生態系のバランスがくずれていることが挙げられる。このバランス化を図る上で、豊富な藻場の創出が望まれている。
一方、例えばホンダワラ、カジメなどの大型藻類は、海底に仮根によって、定着するものであるが、何らかの原因で、この仮根が切れ、潮流や風流によって、流れ藻として海面を漂流する。この漂流状態では、流れ藻は、光合成し、腐敗することなく、小型動物のシェルターや、餌場などとして機能する。しかし、これが沿岸に打ち上げられると、前述した機能を維持することなく、腐敗し、むしろ沿岸の美観を損なうとか、衛生上の問題、ごみ増加の問題を来たす。
【0003】
流れ藻を捕捉して藻場を造成する方法は、すでに提案さている(特許文献1参照)。
この従来方法においては、流れ藻のトラップネットとロープは鉛直方向に固定する方法である。この場合、海底付近を漂流する流れ藻をトラップし、このトラップ状態にある流れ藻からの胞子の供給によって藻場を造成するものである。しかし、潮流は、頻繁にその向きが変るものであることから、この変化する潮流に応じて変化する流れ藻を効率よく捕捉するためには、トラップネットは、あらゆる方向に垂直に張りめぐらされることが必要であり、装置は、大掛かりとなる。
【特許文献1】特開2003−47354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、流れ藻の捕集を効率よく、簡便な装置および取り扱いによって行うことができるようにし、更に藻場の生成位置を任意に選定することができるようにした流れ藻捕集装置と藻場の生成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による流れ藻捕集装置は、海水を流通させ流れ藻を捕集収容する流れ藻捕集籠と、
該流れ藻捕集籠を海面に浮上させる浮上手段と、上記流れ藻捕集籠を浮遊係留する係留手段とを備えた流れ藻捕集装置であって、上記流れ藻捕集籠は、一端に流れ藻の取り込み開口を有し、上記浮上手段は、上記流れ藻捕集籠を、上記取り込み開口が上記海面を横切る位置もしくは海面近傍にまで浮上させる浮力を付与する浮上体を有して成り、上記係留手段は、上記流れ藻捕集籠を上記取り込み開口側で係留する係留体と、該係留体と上記流れ藻捕集籠とを連繋する連繋体と、該連繋体に設けられた中間フロートとを有して成ることを特徴とする。
【0006】
すなわち、本発明装置においては、流れ藻の取り込み開口を有する流れ藻捕集籠を、その開口が、海面を横切るように開口させるか、海面近くに開口させるようい浮上させるものであり、その開口側で中間フロートを介して係留する構成としたことから、一点係留の振れ回りを行うことができ、このようにすることによって、流れ藻捕集籠は、海面で、潮流や風流による実質的海水の流れ、すなわち流れ藻の流れの方向に沿って、しかもその取り込み開口が流れの上流側に向かうように、いわば吹流し状態に保持することができる。
しかしながら、上述した振れ回りを必要としない場合は、係留体によって、流れ藻捕集籠を固定状態にする。
【0007】
また、本発明による流れ藻捕集装置において、上記流れ藻捕集籠がプラスティック網より成ることを特徴とする。
このように、流れ藻捕集籠をプラスティック網によって構成するときは、この網を必要形状に整えることができ、柔軟性、軽量化が図られる。
【0008】
また、本発明は、上記流れ藻捕集籠の内面に、上記取り込み開口側への捕集藻の逆流を防止する捕集藻逆流防止棘を複数本突出させたことを特徴とする。
また、本発明は、上記流れ藻逆流防止棘が、その先端に向かって上記流れ藻取り込み開口とは反対方向に傾けられて成ることを特徴とする。
また、本発明は、上記捕集藻逆流防止棘が、上記流れ藻捕集籠の少なくとも奥行き方向に複数配列され、該捕集藻逆流防止棘の突出量を、流れ藻捕集籠の奥行き方向に関して漸次もしくは階段的に大としたことを特徴とする。
また、本発明による流れ藻捕集装置は、上記流れ藻捕集籠の上記取り込み開口との対向部に、海水流通体による流れ藻の取り出し開閉蓋が設けられたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明による流れ藻捕集装置は、上記係留手段の係留体が、複数のサンドバッグによって構成され、少なくとも該係留体は、上記流れ藻捕集籠に対し、取り外し可能とされたことを特徴とする。
上記流れ藻捕集籠の上記浮上手段は、複数のフロートが上記流れ藻捕集籠に着脱自在に係止されて成ることを特徴とする。
【0010】
本発明による藻場の生成方法においては、流れ藻を捕集収集し、該捕集収集された流れ藻を、海水が流通可能とされた収容体に収容して、海中もしくは海底の所要位置に配置し、上記捕集収集藻によって藻を増殖させて藻場の生成をおこなうことを特徴とする。
また、本発明による藻場の生成方法においては、上記流れ藻の捕集収集を、流れ藻捕集籠によって行い、該流れ藻の収集体を、該藻捕集籠ごと海中もしくは海底の所要位置に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による流れ藻捕集装置によれば、上述したように、流れ藻捕集籠が、その流れ藻の取り込み開口が、海面を横切るように、あるいは海面近傍に開口するようにして流れの変化に対応して上流側に向けて、吹流し状態に保持する構成としたことによって、海面もしくは海面近傍の流れ藻を効率よく捕集することができるものである。
そして、海水の流れに応じて移動を望まない、状況、場所において、流れ藻捕集籠を固定的に設置する場合においては、係留体の配置、個数等の選定によって固定状態とすることもできる。
また、その係留位置を、任意の位置に選定することができることから、流れ藻が多く発生する位置に配置することができ、流れ藻の捕集を効率よく行うことができるものである。
【0012】
そして、この流れ藻捕集籠を、プラスティック網によって構成するときは、その柔軟性から、所要の形状の籠を形成することができ、この柔軟性と軽量化が得られることから、流れ藻捕集籠の取り扱いが容易となるものである。
そして、この流れ藻捕集籠に対して、その浮上手段や、係留手段をとりはずことによって、流れ藻捕集籠が、単純、軽量化され、作業者の例えば漁業者による例えば陸上における保管収納などの取り扱いが簡便となる。
また、流れ藻捕集籠を例えばプラスティック網とするときは、プラスティック線素の太さ、網目の粗密の選定等によって、自己形状保持が可能であり、その強度、柔軟性、軽量化、海水の流通性等を高い自由度をもって選定することができる。
【0013】
また、流れ藻捕集籠内に、捕集藻逆流防止棘を配置するときは、一旦捕集された収集藻が、取り入れ開口から流出することが阻止される。特に、捕集藻逆流防止棘に、傾斜を付した“かえし”棘としたり、開口より遠い位置の捕集藻逆流防止棘について順次、もしくは階段的にその突出量を長くすることによって、流れ藻は、流れ藻捕集籠の奥行き方向に関しては有効に移行でることから、多量の捕集収容を可能にすることができるものである。
そして、流れ藻捕集籠の、流れ藻の取り込み開口とは反対側に、捕集藻の取り出し開閉蓋を設けることによって、捕集藻逆流防止棘によって取り込み開口から取り出しにくい構成とされた場合においても、この開閉蓋から容易に取り出すことができるものである。
【0014】
また、本発明による藻場の生成方法においては、流れ藻の発生しやすい位置とは関わりなく、藻場の生成を、藻場生成に適した位置、あるいは藻場生成を望む位置に生成できるものである。
そして、この藻場生成に当たっては、収集した藻を、流れ藻捕集籠とは別の収容体に移し変えることもできるが、流れ藻を捕集収集した流れ藻捕集籠自体を、海中あるいは海底に配置することによって、流れ藻からの例えば胞子によって藻の増殖を行うことができ、有効に藻場の生成ができるものである。
そして、流れ藻の収集時においても、また藻場形成時においても、上述した流れ藻捕集籠内に捕集されている藻に関しては、食害諸動物によって、食害を受けないことが確認された。
【0015】
更に、係留手段の係留体、すなわちアンカーを、サンドバッグによって構成することによって、例えば流れ藻捕集作業の後に、このサンドバッグを海底に放置した場合においても、これによって、魚網の損傷原因となったり、漁船そのほかの運行を阻害したり、海水汚染を生じるようなおそれを低減できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面を参照して、本発明による流れ藻捕集装置の実施の形態を説明するが、本発明は、この形態例に限定されるものではない。
図1、図2、図3、図4および図5は、それぞれ本発明による流れ藻捕集装置の一実施形態の上面図、側面図、前面図、背面図および縦断面図である。
この流れ藻捕集装置1は、海水を流通させ流れ藻を捕集収容する流れ藻捕集籠2と、この流れ藻捕集籠2を海面に浮上させる浮上手段3と、流れ藻捕集籠2を浮遊係留する係留手段4とを少なくとも有して成る。
【0017】
流れ藻捕集籠2は、例えば扁平直方体形状の筒状の流れ藻捕集籠本体に対し、その長手方向の一端面の開放端を流れ藻の取り込み開口5とし、この取り込み開口5と対向する他端面に、流れ藻の取り出し開閉蓋6が設けられた構成とする。
そして、この流れ藻捕集籠2に、浮上手段3を、着脱自在に配置する。
一方、流れ藻捕集籠2の流れ藻の取り込み開口5側、もしくはこの開口5側に偏寄った位置に、この流れ藻捕集籠2を浮遊係留する係留手段4を、着脱自在に繋ぐ。
【0018】
流れ藻捕集籠2は、海水の流通が可能でかつ流れ藻が透過し得ない程度の透過孔が形成された籠、例えば網によって構成する。この流れ藻捕集籠2の本体および開閉蓋6は、プラスティック線の編網等によって構成することができる。この場合、流れ藻捕集籠2は、例えばプラスティック網の編み線の太さや、網目の密度、流れ藻捕集籠2の大きさ、形状等によって、プラスティック網自体の自己形状保持力をもって所要の形状の流れ藻捕集籠2を構成することができる。
しかしながら、必要に応じて、図1〜図5に示すように、流れ藻捕集籠2を補強する例えば流れ藻捕集籠2の一部もしくは各稜線を形成する補強枠91を設けることができる。そして、例えば補強枠91をめぐって、上述したプラスティック網を張る。
【0019】
流れ藻捕集籠2の大きさは、例えば長手方向の長さLが6m、高さHが0.6m、幅Wが3m程度とすることができる。
この場合、例えば図3の正面図に示すように、流れ藻捕集籠2の、前方面の開口5は、その輪郭形状に沿って例えば塩化ビニルの直径20mmのパイプによる補強の前方枠91Fを配置することができる。この場合、前方枠91Fの左右の枠辺91aは、その長さを例えば1.5mとして、上方に、例えば0.9m程度突出させ、この突出部を流れ藻捕集籠2の位置を示す標識とするとか、これに流れ藻捕集籠2の位置を示す標識を付設する。
更に、流れ藻捕集籠2の例えば両側面2S1および2S2を補強するように、支柱状の補強体9を配置することができる。更に、例えば流れ藻捕集籠2の中央線に沿って厚さ方向に支柱状補強体9を、適当間隔をもって立てることができる。
【0020】
流れ藻の取り出し開閉蓋6は、例えばその下縁において、流れ藻捕集籠本体に対して外方に回動し得るように、例えばヒンジ機構によって枢支することができる。
この流れ藻の取り出し開閉蓋6と、流れ藻捕集籠2の本体を構成する上述したプラスティック網、およびは、例えば線径3mmの例えば硬質テトロン線によって、目合50mm、幅71mmの亀甲網大目合の網によって構成することができる。
【0021】
一方、図5の縦断面図に示すように、流れ藻捕集籠2内には、この流れ藻捕集籠2内に捕集した流れ藻(図示せず)が、取り込み開口5に逆流して流出することを防止する捕集藻逆流防止棘7を複数本突出させる。
この捕集藻逆流防止棘7は、例えば流れ藻捕集籠2を構成する例えば上面、または/および下面の網目の一部を切り起こすことによって構成することができる。
これら流れ藻逆流防止棘7は、その先端に向かって流れ藻取り込み開口5とは反対方向に例えば45°傾ける、いわゆる“かえし”形状とする。
また、これら捕集藻逆流防止棘7は、流れ藻捕集籠2の長手方向、すなわち奥行き方向に複数配列し、これら捕集藻逆流防止棘7の突出量が、取り込み開口5から遠ざかるに従って大とする。
このように、捕集藻逆流防止棘7を傾けたり、さらにその長さを流れ藻捕集籠2の奥に向かうほど大にすることによって流れ藻が、流れ藻捕集籠2の取り入れ開口5から奥行き方向に移動しやすく、かつ開口5に向かう逆流を効果的に阻止することができる。
【0022】
そして、藻捕集籠2を浮上させる浮上手段3は、例えばポリエチレン製の複数のフロート8を、流れ藻捕集籠2着脱できるように係止する。そして、これらフロート8の配置位置、および個数を選定することによって、図2に示すように、例えば海面aから、流れ藻捕集籠2上面2Uまでの距離Dが、例えば20cm〜30cm突出して取り込み開口5の上縁が、海面から上方に位置して、この取り込み開口5が、海面を横切って開口するように浮かせる。
このため、浮上手段3のフロート8の配置高さ、配置位置、個数が選定される。
これらフロート8は、例えば長さ234mm、外径205mm、中心孔の内径が39mm、浮力6kgのフロートを用いることができる。
これらフロート8は、例えば流れ藻捕集籠2の両側面2S1および2S2、開閉蓋6、開口5の周辺、中央の補強体9の配置位置等にそって、係止することができる。
【0023】
上述した浮上手段3の構成としては、例えば図6の斜視図に示すように、複数のフロート8をロープ8Rで連綴し、この連綴体8Tを、例えば流れ藻捕集籠22の両側面両側面2S1および2S2に取り外し可能に、結束することなどできる。
【0024】
そして、流れ藻捕集籠2は、その流れ藻の取り込み開口5側で係留手段4によって、係留する。
この係留手段4は、アンカーとなる係留体10と、この係留体10を、流れ藻捕集籠2と連繋する例えばロープによる連繋体11と、その中間部に配置される中間フロート12とを有して成る。
連繋体11は、例えば流れ藻捕集籠2の左右両側で、流れ藻捕集籠2の長手方向に関して取り込み開口5側に偏った位置に、着脱可能に取り付ける。
連繋体11は、例えば1辺が6mのV字状ロープVと、長さ例えば30mあるいはそれ以下のアンカーロープ11Bとを有し、両ロープの結合部に中間フロート12が配置されて成る。
【0025】
V字状ロープ11Aと、アンカーロープ11Bは、例えば直径18mmのポリエチレンとポリエステルの混合ロープを用いることができる。
中間フロート12は、例えば直径36mmの浮力21kg程度のポリエチレンフロートを用いることができる。
また、この中間フロート12の配置部には、図2に示すように、下端に重錘13が配置され、更に例えば中間部に例えば浮力6kgのフロート14が配置された例えばパイプ部よりなる標識支持体15が取着配置される。
そして、この標識支持体15に太陽電池による標識灯16が配置される。
【0026】
アンカーロー11Bプの先端には、アンカーとしての係留体10を配置する。
この係留体10は、例えば複数のサンドバッグ(砂袋)によって構成することができる。このサンドバッグは、例えば30kg程度、あるいはそれ以下とされ、これらを20〜30俵程度、アンカーロープ11Bの先端に取り付ける。
【0027】
上述した流れ藻捕集籠2は、繋留手段4によって、流れ藻が発生し易い位置に繋留するように、係留体10のサンドバッグを沈める。このようにすると、流れ藻捕集籠2は、これに係止された浮上手段3のフロート8によって浮上した状態で、中間フロート12によって浮上されたV字状ロープ11Aと、アンカーロープ11Bとによる連繋体11によって繋がれ、海面を漂う。
このとき、流れ藻捕集籠2は、その長手方向が、潮流や、風流による海面の流れに沿うように、したがって、流れ藻の流れに沿うように漂う。そして、このとき、係留手段4が、流れ藻捕集籠2の流れ藻の取り込み開口5に偏った位置に係止されていることから、流れ藻捕集籠2は、その流れ藻の取り込み開口5が、流れの上流に向かって開口するように、吹流し状態に漂う。
【0028】
この構成によれば、開口5を通じて流れ藻捕集籠2内に効果的に、流れ藻が取り込まれる。そして、一端この流れ藻捕集籠2内に流れ藻が取り込まれれば、上述したように、捕集藻逆流防止棘7によって流れ藻は、流れ藻捕集籠2の奥の方には、移動し流れ藻のが捕集保持される。
この流れ藻の発生季節は、例えば数ヶ月程度であるので、この期間に設置して捕集する。
この捕集された流れ藻は、必要に応じて開口5とは反対側の取り出し開閉蓋6を開放することによって用意にとりだすことができる。
【0029】
上述したように本発明構成において、流れ藻捕集籠2が漂うように係留することができるが、例えば流れ藻捕集籠2の設置位置の状況、例えば漁船そのほかの船舶の航行の都合等によって流れ藻捕集籠2の設定を必要とするときは、係留体10を流れ藻捕集籠2異なる位置に対して配置することによって流れ藻捕集籠2を固定することもできる。
また、本発明による流れ藻捕集装置は、上述した構成に限られるものではなく、その流れ藻捕集籠2の寸法、形状はもとより、補強体9、補強枠91の配置位置、形状、フロートの配置位置、形状等、種々の変更を行うことができる。
例えば上述した流れ藻捕集籠2が、より有効に流れに沿って流される位置を取ることができるように、流れ藻捕集籠2に、その長手方向に沿って、フィンを取り付けるなどの構成とすることもできる。
【0030】
そして、本発明による藻場の生成方法においては、上述した流れ藻の捕集位置に拘泥することなく、任意の例えば藻場育成に適した、所望位置に、図7の概略配置図に示すように、上述した本発明による流れ藻捕集装置1によって捕集収集した流れ藻を、海水が流通可能とされた収容体110に収容して、海中もしくは海底の所要位置に、例えばサンドバッグ等のアンカー112が取り付けられた係留ロープによって、定置もしくは定置浮遊させて配置する。このようにして、捕集収集藻からの例えば胞子の散乱によって増殖させて藻場の生成を行う。
【0031】
あるいは、上述した本発明における流れ藻捕集装置1の流れ藻捕集籠2を、流れ藻捕集を行って後、そのままこの流れ藻の捕集収集がなされた流れ藻捕集籠2を収容体110として、海中もしくは海底の所要位置に定置もしくは定置浮遊させて配置することもできる。
【0032】
上述したように、本発明による藻場捕集装置によれば、流れ藻の収集に適した位置で、効率よい流れ藻の捕集を行うことができるものであり、また、本発明による藻場生成方法は、藻場生成に適した位置、あるいは藻場生成が望まれる位置において行うことができる。
また、上述したように、本発明によれば、流れ藻の収集を任意の場所で行うことができることから、沿岸近くで流れ藻を収集してしまうことによって、流れ藻が浜辺、あるいは岸壁、消波壁等に打ち上げられてごみとなって美観をそこなったり、衛生の問題、ごみ増加を回避できるものである。
【0033】
尚、上述した流れ藻の捕集、または/および藻場の生成における流れ藻捕集籠2あるいは収容体110が藻の重さで、沈み込みすぎ、収集藻に光合成が起きにくい状態が長期にわたるおそれがある場合、流れ藻捕集籠2もしくは収容体110の上面にフロート等の浮上体を配置して、海面上、もしくは海面近傍に浮上させるようにすることもできるなど、上述した例に限定されることなく、本発明構成において、種々の変更を行うことができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による流れ藻捕集装置の一実施形態例の上面図である。
【図2】本発明による流れ藻捕集装置の一実施形態例の側面図である。
【図3】本発明による流れ藻捕集装置の一実施形態例の流れ藻捕集籠の正面図である。
【図4】本発明による流れ藻捕集装置の一実施形態例の流れ藻捕集籠背面図である。
【図5】本発明による流れ藻捕集装置の一実施形態例の流れ藻捕集籠の縦断面図である。
【図6】本発明による流れ藻捕集装置の他の実施形態例の流れ藻捕集籠の斜視図である。
【図7】本発明による藻場の生成方法の一実施形態の流れ藻収容体の配置状態を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1……流れ藻捕集装置、2……流れ藻捕集籠、3……浮上手段、4……係留手段、5……流れ藻の取り込み開口、6……開閉蓋、7……捕集藻逆流防止棘、8……フロート、8R……ロープ、8T……連綴体、9……補強体、10……係留体、11……連繋体、11A……V次状ロープ、11B……アンカーロープ、12……中間フロート、13……重錘、14……フロート、15……標識指示体、16……標識灯、91……補強枠、91F……前方枠、91a……枠辺、110……収容体、111……係留ロープ、112……アンカーロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を流通させ流れ藻を捕集収容する流れ藻捕集籠と、
該流れ藻捕集籠を海面に浮上させる浮上手段と、
上記流れ藻捕集籠を浮遊係留する係留手段とを備えた流れ藻捕集装置であって、
上記流れ藻捕集籠は、一端に流れ藻の取り込み開口を有し、
上記浮上手段は、上記流れ藻捕集籠を、上記取り込み開口が上記海面を横切る位置もしくは海面近傍にまで浮上させる浮力を付与する浮上体を有して成り、
上記係留手段は、上記流れ藻捕集籠を上記取り込み開口側で係留する係留体と、該係留体と上記流れ藻捕集籠とを連繋する連繋体と、該連繋体に設けられた中間フロートとを有して成ることを特徴とする流れ藻捕集装置。
【請求項2】
上記流れ藻捕集籠がプラスティック網より成ることを特徴とする請求項1に記載の流れ藻捕集装置。
【請求項3】
上記流れ藻捕集籠の内面に、上記取り込み開口側への捕集藻の逆流を防止する捕集藻逆流防止棘を複数本突出させたことを特徴とする請求項1に記載の流れ藻捕集装置。
【請求項4】
上記流れ藻逆流防止棘が、その先端に向かって上記流れ藻取り込み開口とは反対方向に傾けられて成ることを特徴とする請求項3に記載の流れ藻捕集装置。
【請求項5】
上記捕集藻逆流防止棘が、上記流れ藻捕集籠の少なくとも奥行き方向に複数配列され、該捕集藻逆流防止棘の突出量を、流れ藻捕集籠の奥行き方向に関して漸次もしくは階段的に大としたことを特徴とする請求項3に記載の流れ藻捕集装置。
【請求項6】
上記流れ藻捕集籠の上記取り込み開口との対向部に、海水流通体による流れ藻の取り出し開閉蓋が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の流れ藻捕集装置。
【請求項7】
上記係留手段の係留体が、複数のサンドバッグによって構成され、少なくとも該係留体は、上記流れ藻捕集籠に対し、取り外し可能とされたことを特徴とする請求項1に記載の流れ藻捕集装置。
【請求項8】
上記流れ藻捕集籠の上記浮上手段は、複数のフロートが上記流れ藻捕集籠に着脱自在に係止されて成ることを特徴とする請求項1に記載の流れ藻捕集装置。
【請求項9】
流れ藻を捕集収集し、該捕集収集された流れ藻を、海水が流通可能とされた収容体に収容して、海中もしくは海底の所要位置に配置し、上記捕集収集藻によって藻を増殖させて藻場の生成をおこなうことを特徴とする藻場の生成方法。
【請求項10】
流れ藻の捕集収集を、流れ藻捕集籠によって行い、該流れ藻の収集体を、上記藻捕集籠ごと海中もしくは海底の所要位置に配置することを特徴とする請求項9に記載の藻場の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−238741(P2006−238741A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56274(P2005−56274)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】