説明

流体を加熱する改善された方法

低電圧で非絶縁発熱素子によって流体を加熱するための改善された方法が、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水または空気のような、流体を加熱する改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者は、我々の環境を保護することをますます意識するようになっている。政府および私的企業体は、消費需要および懸念を満たすより良い製品を供給することを試みている。エネルギー消費量はこの環境議論の顕著な焦点の1つであり、および、種々のプロジェクトおよび製品がこの種の消費量を減少させるために提唱された。エネルギー消費量を減少させる方法の1つは、特に家庭、工業、農業および商業用途に用いられる流体を加熱するためのより効率的な方法を提供することである。
【0003】
流体の加熱法は、伝統的に絶縁装置内に埋め込まれかつ次いで輻射、対流または伝導力を含む様々な方法によって熱を出力表面に伝導する発熱素子を含む。この種の装置内の発熱素子は、典型的にニッケルおよび/またはクロムを含有する合金から作られるバンドまたはワイヤのいずれかとして形作られる。しかしながら、動作しているこの種の素子は、ユーザに対する感電死の危険性の理由で安全面の問題を呈する。この危険性を克服するために、この素子は典型的に素子ワイヤのまわりに絶縁層およびこの絶縁体のまわりに保護シースを有する。これらの追加層を加熱するのに多少の時間がかかり、それが効率を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、流体に対するより安全なおよびより効率的な加熱法を提供することは、有利である。本発明の一実施態様が、低電圧で使用可能な非絶縁でそのうえ安全な発熱素子を提供する。感電事故を避けるために、本発明の目的に対する「低電圧」は、(用途に従い)1Vと42Vの間で、および理想的には約24V周辺で変動する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、流体を加熱する一方法であって、
a.少なくとも100Vの高圧電力の源を供給するステップ、
b.前記高電圧を低電圧に変換するステップ、および
c.前記低電圧によって素子を加熱し、それによって流体を加熱するステップ、を含む方法を提供する。
【0006】
好ましくは、素子は非絶縁である。
【0007】
好ましくは、素子は絶縁されるかまたは部分的に絶縁される。
【0008】
好ましくは、素子はニッケルおよびクロム合金または他の合金から形成される。
【0009】
好ましくは、素子は実質的に80%ニッケルおよび20%クロムまたは他の合金を含む。
【0010】
好ましくは、流体は液体または気体である。
【0011】
好ましくは、液体は水である。
【0012】
好ましくは、液体はプロピレングリコールである。
【0013】
好ましくは、気体は空気である。
【0014】
好ましくは、素子の温度は少なくとも400℃まで上昇させられる。
【0015】
好ましくは、素子の温度は400℃と1700℃との間に上昇させられる。
【0016】
好ましくは、素子の温度は700℃と1700℃との間に上昇させられる。
【0017】
好ましくは、素子は1200℃と1700℃との間に上昇させられる。
【0018】
好ましくは、素子はワイヤの形である。
【0019】
好ましくは、ワイヤの直径は0.2−4mmの間にある。
【0020】
別の態様において、本発明は、特別に低い電圧で使用可能な非絶縁ワイヤの素子からなる熱水システムを加熱するための加熱アセンブリであって、素子の温度が800℃を上回るアセンブリを提供する。
【0021】
好ましくは、本発明に従う加熱アセンブリまたは方法は、海洋船舶内に用いられる。
【0022】
好ましくは、加熱アセンブリは交流使用および直流使用のスイッチの選択肢を含む。
【0023】
別の態様において、本発明は水を加熱する一方法であって、
a.少なくとも100Vの高圧電力の源を供給するステップ、
b.前記高電圧を低電圧に変換するステップ、および
c.前記低電圧によって非絶縁素子を加熱し、それによって水を加熱するステップ、を含む方法を提供する。
【0024】
好ましくは、低電圧は約22Vから28Vまで変動する。
【0025】
本発明は、42V未満および理想的には約24Vで使用可能な非絶縁発熱素子を流体の安全で効率的な加熱のために利用する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の好ましい一実施態様の回路図を示す。
【図2】液体内の漬浸のために設計された本発明の非絶縁発熱素子を示す。定義
【0027】
本出願のために、以下の定義が種々の表現にあてはまる:
「低電圧」は、1Vと42Vとの間、および理想的には約22Vから28Vの範囲内、約24Vの好ましい電圧を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示すように、本発明の好ましい一実施態様は120Vまたは240Vのいずれかの交流入力(10)を可能にする。これらの交流電圧は、(国に従い)標準電気コンセントから典型的である。代わりとして本発明の好ましい一実施態様は24V直流入力(12)、例えばソーラーパネルまたは電池を受け入れる。1つの好ましい実施態様において、複数電源が用いられることができる。複数電源が利用可能であるならば、遠隔セレクタスイッチ(14)が制御盤(16)および切替えリレー(18)を用いて電力入力源の間で、前後にトグルするように用いられることができる。本発明の有効範囲内の他の入力源が、直流/光電装置、交流発電機、風力発電機、熱交換および他の電力源を含む。
【0029】
42Vを越える交流電圧が用いられるならば、トランス(20)が、42V未満に、および理想的には約22Vから28Vの範囲内に、約24Vの好ましい一実施態様に、電圧を逓減するために用いられる。好ましい実施態様はトロイダルトランスを用いるが、逓降変圧器およびスイッチモード電源のような、代替物が当業者にとって明らかである。用いられる電気入力に関係なく、(図1の好ましい実施態様では)約24Vの低電圧が非絶縁発熱素子(24)に供給される。
【0030】
本発明が発熱素子(24)に対して低電圧を用いるので、発熱素子は従来のより高い電圧源から実行されるものより非常に安全である。さらに、発熱素子の中に入る電流が非絶縁素子(24)から放出される/生成される熱量を主に決定し、かつ電圧ではないので、低電圧を用いることは、より効率的である。システムに入力されるワット数(それは一定のままである)割る電圧が(アンペアでの)電流を決定するので、標準電気コンセントからのような、トランス(20)を用いて高電圧入力源を逓減することは電気効率を向上する。この効率プラス低電圧電源の安全の理由で非絶縁発熱素子(24)を用いる能力は、本発明の使用によってユーザが消費電力をもまた減少させると共に、より安全に流体を加熱することを可能にすることを意味する。
【0031】
図1の好ましい一実施態様では、発熱素子(24)がニッケルおよびクロム合金または他の合金を含む。一実施態様において、発熱素子が、実質的に80%ニッケルおよび20%クロムまたはその他合金を含む。発熱素子は、一般にIncoloy(登録商標)として公知である約40%ニッケルおよび21%クロムを備える合金組成を含む、公知技術の他の金属組成を備えることができる。発熱素子(24)用の異なる組成が、当業者にとって明らかであり、かつ発明の有効範囲内にある。
【0032】
好ましい一実施態様では、発熱素子(24)は非絶縁コイル、ワイヤまたはリボンの形であるが、但し、材料が高温に耐えることが可能な限り、発熱素子(24)用の多くの他の形が可能でありかつ本発明の範囲内にある。
【0033】
図1の好ましい一実施態様において、発熱素子(24)の温度が少なくとも400℃に上昇させられる。用途(および加熱される流体)に従い素子の温度が、700℃と1700℃の間にあることができる。
【0034】
図1の好ましい実施態様に示すように、流体タンク(30)は市場で入手可能な家庭タンクのサイズを含む任意のサイズであることができる。タンクは、25リットル(l)から2000リットルにわたる容量、典型的に25l、50l、200l、250lおよび500lを含む。典型的に、流体タンク(30)は琺瑯コーティングを備えた軟鋼、プラスチックまたはステンレス鋼でできている。しかしながら、クロム/チタン合金のような他の適切な材料が、水槽を含むタンクの作成のために用いられることができる。流体タンク(30)の容量および組成における多くの代替物が、当業者にとって明らかでかつ本発明の範囲内である。
【0035】
発熱素子(24)によって加熱される流体は水を含むが、グリコールおよび(プロピレングリコールを含む)その派生物のような他の流体が用いられることができる。さらに、本発明が同様に空気および他の気体のような流体と共に用いられることができることは、当業者にとって明らかである。
【0036】
図1の好ましい一実施態様に示すように、タンク(30)内の流体が発熱素子(24)によって加熱される。図1の好ましい一実施態様において、サーモスタットリード線(34)および制御盤(16)とともに、サーモスタット(32)がタンク(30)内の流体の温度を調整する。サーモスタット(32)は、アナログまたはデジタル制御を用いることができてプログラム可能であることができる。
【0037】
図1の好ましい実施態様に示すように、高温流体が開口部(28)を用いてタンク(30)から除去される一方、低温流体が開口部(26)を用いてタンク(30)に入る。流体は、対流を含む任意の従来の手段によってタンク(30)の内外に移動されることができる。本発明は、また、密閉加熱法を包含する。
【0038】
好ましい一実施態様において、発熱素子が図2内に示される。端子(1)が、特別低電圧電源に接続され、素子(4)を加熱させる。低温ピン(3)が、端子(1)の加熱を防ぐ。支持アーム(5)が、棒またはチューブのいずれかであってかつセラミック軸受筒(6)を支え、それが次に素子(4)を支える。ネジ付きボス(2)が、ハウジングにネジ止めするかまたはフランジのような従来技術で利用可能な固定の他の手段を備える。
【0039】
一例としてエンジン冷却システムへの熱交換接続のための具備を備えた海洋交流/直流50リットル熱水システムのために用いられる電源が、検討される。
【0040】
交流用の(1)および直流用の(2)遠隔セレクタスイッチが、可用性に依存して、陸上電力/発電機または交流発電機/バッテリシステムのどちらを用いるかをユーザが選ぶことを可能にする。上で記載されている素子が、タンクの底に設置されてかつ本線電力およびパワーパック経由で電池の両方に接続される。セレクタは利用可能なとき本線/陸上電力を自動的に選択する。本発明を過渡電圧(電圧低下、その他)から保護するプリント回路基板が、電源パック内に含まれる。加えて、このアセンブリは故障検出のためのLEDインジケータおよび音響警報器を備える。この例は、特別低電圧非絶縁素子の用法のうちのほんの1つである。パワーパックは、ビルジまたは水アクセスのまったくなく取り付けられ、および、タンクはたとえ水中に入れられても安全面の問題なく動作することができる。本線電力供給された熱水システムを水中に入れることは、水を直ちに通電してかつ短絡させ、適切に保護されていないならば水内に立っている人は皆ひどく負傷するかまたは死ぬ。
【0041】
したがって、本発明は家庭、公共および商業用途の水系を加熱することに適している。家庭の使用は、私的および公的宿泊設備内の家庭用温水システム内の水を加熱することを含む。公的設備は、モーテルおよびキャンプ場のような小型から中型のサイズの宿泊設備を含む。商業用途は、海洋産業における使用および採掘サイトにおける使用を含む。採掘サイトでは、この発明に従う加熱システムは、発電機の負荷を低下させる。
【0042】
本発明は、また、既存の加熱システムに用いられるのに適していることができる。既存のシステムは、本願明細書に記載されている方法を用いて、容易にかつ経済的に改造されることができる。さらに、電源および発熱素子は空気、熱水システム、スパ、プール、トースタ、ヘアドライヤ、オーブンを含む家庭用器具、その他を加熱するために既存の有用物に改造されることができる。
【0043】
本発明は、また、空気を加熱するために、例えば衣服乾燥機、オーブン、グリルおよびセントラルヒーティング内の空気を加熱するために用いられることができる。標準的に、これらの製品は、産業応用のための3相電源を含む、標準電気コンセントから高電圧(国に従い240V/ACまたは120V/ACのいずれか)を用いる。
【0044】
別の実施態様において、本発明は、低電圧で素子を加熱するステップを含む流体を加熱する一方法を提供する。
【0045】
別の実施態様において、本発明は低電圧で絶縁されたまたは部分的に絶縁された素子を加熱するステップを含む流体を加熱する一方法を提供する。
【0046】
別の実施態様において、本発明は、低電圧で素子を加熱するステップを含む水を加熱する一方法を提供する。加熱されるべき水は、一般的な熱水システムまたはタンク内に貯蔵されるかまたは消費者に即座に利用可能である。
【0047】
本発明は、電源に対してより低電圧の使用を可能にし、したがって、効率を向上してより大きな電気の安全性を提供する。
【0048】
別の実施態様において、本発明は低電圧で絶縁されたまたは部分的に絶縁された素子を加熱するステップを含む水のような流体を加熱する一方法を提供する。したがって絶縁されたものは素子を完全に封入する電気絶縁体を含む。部分的に絶縁されたものは、一部分、例えば素子の片側だけが絶縁されることを含む。
【0049】
本発明の別の態様は、土壌材料または土壌を含有する材料を含む農産品を加熱することに関する。上記の通りの本発明に従って、加熱は、土壌内の湿気を加熱することによってまたは、土壌材料それ自体を加熱することによって達成されることができる。
【0050】
したがって、本願明細書に記載されている本発明の実施態様が単に本発明の原理の適用の例証となるだけであることが、理解されるべきである。
【符号の説明】
【0051】
1 端子
2 ネジ付きボス
3 低温ピン
4 素子
5 支持アーム
6 軸受筒
10 交流入力
12 直流入力
14 遠隔セレクタスイッチ
16 制御盤
18 切替えリレー
20 トランス
24 発熱素子
26 開口部
28 開口部
30 タンク
32 サーモスタット
34 サーモスタットリード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を加熱する一方法であって、
a.少なくとも100Vの高圧電力の源を供給するステップ、
b.前記高電圧を低電圧に変換するステップ、および
c.前記低電圧によって素子を加熱し、それによって流体を加熱するステップを含む方法。
【請求項2】
前記素子が、非絶縁であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記素子が、絶縁されるかまたは部分的に絶縁されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記素子がニッケルおよびクロム合金または他の合金から形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記素子が実質的に80%ニッケルおよび20%クロムまたは他の合金を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記素子の温度が少なくとも400℃まで上昇させられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記素子の温度が400℃と1700℃との間に上昇させられることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記素子の温度が700℃と1700℃との間に上昇させられることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記素子の温度が1200℃と1700℃との間に上昇させられることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記素子がワイヤの形であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ワイヤの直径が0.2−4mmの間にあることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
特別に低い電圧で使用可能な非絶縁ワイヤの素子からなる熱水システムを加熱するための加熱アセンブリであって、前記素子の温度が800℃を上回ることを特徴とするアセンブリ。
【請求項13】
前記流体が液体または気体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記液体が水であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記気体が空気であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
海洋船舶に用いられる請求項1ないし15のいずれか1つに記載の加熱アセンブリまたは方法。
【請求項17】
交流使用および直流使用のスイッチの選択肢を備えた請求項12に記載の加熱アセンブリ。
【請求項18】
前記液体がプロピレングリコールであることを特徴とする請求項13に記載の加熱アセンブリ。
【請求項19】
水を加熱する一方法であって、
a.少なくとも100Vの高圧電力の源を供給するステップ、
b.前記高電圧を低電圧に変換するステップ、および
c.前記低電圧によって非絶縁素子を加熱しそれによって前記水を加熱するステップ、を含む方法。
【請求項20】
低電圧が約22Vから28Vまで変動することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記素子が約80%ニッケルおよび20%クロムを含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記素子の温度が少なくとも400℃まで上昇させられることを特徴とする請求項21に記載の方法。

【図2】
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【図1】
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【公表番号】特表2012−527062(P2012−527062A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510071(P2012−510071)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000562
【国際公開番号】WO2010/130004
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511250699)コスモス ソーラー ピーティーワイ エルティーディー (1)
【Fターム(参考)】