説明

流体プローブ

流体の特性を検出するためのデバイスおよび関連する方法である。デバイスは本体領域と、第1端部および第2端部を有する第1フレキシブル素子とを備える。第1端部は本体領域上に固定して配置される。フレキシブル素子は、第1熱膨張係数を有する第1層と第2の異なる熱膨張係数を有する第2層とを少なくとも備える。電気ヒータ素子は、フレキシブル素子を加熱してフレキシブル素子の屈曲を引き起こすように構成される。第1端部に隣接する電気ヒータ素子の第1部分の抵抗は、第1端部から離れた電気ヒータ素子の第2部分の抵抗よりも大きくしてもよい。デバイスは、5ミリ秒よりも小さい持続時間を有する電気パルスを電気ヒータに供給するよう構成されるヒータコントローラを備えてもよい。デバイスは、第1端部と第2端部を有し、第1端部が本体領域上に固定配置される第2の基準フレキシブル素子を備えてもよい。各フレキシブル素子は、そのフレキシブル素子の動きを示す信号を提供するよう構成されるセンサをそれぞれ備えてもよい。基準フレキシブル素子のセンサは、第1フレキシブル素子のセンサとは異なる構成を有しており、フレキシブル素子の少なくとも一つは、二つのフレキシブル素子の熱伝導率の分布を一様にするために少なくとも一つの追加材料部分を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の特性を求めるためのプローブ、およびこのようなプローブの製造方法および使用方法に関する。本発明の実施形態は、限定されるわけではないが血液などの流体の粘度の測定に適しており、特にこの種の流体の粘度の変化(例えば凝固による)を監視することに適している。
【背景技術】
【0002】
微小なチャンバ内に統合された微小でフレキシブルな機械的構造、例えばマイクロカンチレバー、マイクロブリッジ、またはマイクロメンブレン等を用いるセンサが知られている。例えば、米国特許第6,575,020号は、種々のマイクロカンチレバーを微小なチャンバ内に統合可能にする方法を記載している。微小なマイクロカンチレバーの機械的特性の変化を使用して、マイクロカンチレバーの環境における変化を検出することができる。米国特許第6,575,020号は、この種のマイクロカンチレバーが典型的に長さ100ミクロン、幅10ミクロン、厚さ1ミクロンのオーダーであり、シリコン、窒化ケイ素、ガラス、金属またはこのような材料の組合せで製造できることを述べている。この種のセンサは、相互作用チャンバに対してカンチレバーを動かすためのアクチュエータを備えてもよい。アクチュエータはいくつかの方法で実装することができる。例えば、圧電素子、静電気または磁場誘起の移動を与える手段、または熱誘起の移動を与える手段、例えばマイクロカンチレバーの発熱素子などである。
【0003】
このようなマイクロカンチレバー構成の欠点の一つは、カンチレバーが比較的硬い材料で形成され、したがってセンサのたわみ範囲(したがって潜在的な検出感度)が限定されることである。
【0004】
WO 2005/054817号として公開された国際特許出願PCT/GB2004/005079は、流体の特性を検出する第1素子を有するデバイスを記載している。フレキシブル素子は、シリコンに比べて比較的柔軟なポリマーなどの材料で形成することができる。フレキシブル素子は、長さが100ミクロンから1mmであり、二つの形状の間で曲げることができる。フレキシブル素子の端部の対応する移動は、30ミクロンから650ミクロンの距離にわたる。フレキシブル素子は、異なる熱膨張係数を有する二つの層で形成される。フレキシブル素子にはヒータが組み込まれており、第1の形状から第2の形状に素子を移動させる。熱が取り除かれると、素子は第1の形状に復帰する。適切なピエゾ抵抗材料を使用して、素子のたわみの度合いまたは割合を定めることができる。WO 2005/54817号の図4は、素子を駆動するためにヒータに与えられる矩形波パルス列と、その後ピエゾ抵抗センサ素子に変化が生じることが例示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態の目的は、本明細書で述べられているかいないかにかかわらず、従来技術に伴う一つ以上の課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、本発明は流体の特性を検出するデバイスを提供する。このデバイスは、本体領域と、第1端部と第2端部とを有し、第1端部が本体領域上に固定配置されている第1フレキシブル素子と、を備え、第1フレキシブル素子は、第1熱膨張係数を有する第1層と第2の異なる熱膨張係数を有する第2層と、フレキシブル素子を加熱してフレキシブル素子の屈曲を引き起こすように構成された電気ヒータと、を少なくとも備え、電気ヒータに対して8ミリ秒より少ない持続時間を有する電気パルスを供給するように構成されたヒータコントローラをさらに備える。
【0007】
8ミリ秒未満の持続時間を有するパルスは、血液、水およびグリセロールなどの液体を含む流体の特性を測定するとき、特にこのような流体の粘度を求めるときに用いるのに特に適している。パルスは、フレキシブル素子を屈曲させるために用いられる熱パルスとは時間的に別個であるフレキシブル素子の測定可能な機械的屈曲(真っ直ぐに戻る(unbend)ことを含む)を起こす。このような短いパルスは、ヒータに電力を与えるために用いられる電気パルスが取り除かれた後でもフレキシブル素子を曲げ続けることができる。機械的屈曲の測定または検出は、屈曲がピーク振幅に達したときの機械的屈曲の特性を検出することを含んでもよい。測定は、屈曲のピーク振幅のタイミングやピーク振幅の大きさなどのピーク振幅の特性を測定することを含んでもよい。
【0008】
さらに、このような短いパルスは測定可能な機械的振動を引き起こし、フレキシブル素子は真っ直ぐになるときに振動をする。このような測定可能な機械的振動では、機械的振動の比較的小さな振幅は、曲げられていない位置から曲げられた位置に動くとき、および元に戻る動きをするとき(フレキシブル素子が加熱されその後冷却されるとき)のフレキシブル素子のより期間の長い動きと重なる。より長いパルスはフレキシブル素子に機械的振動を発生させるが、フレキシブル素子を加熱し続けているときに振動を読み取るのは非常に困難である。それゆえ、機械的振動の測定を始める前に、加熱パルスを終了することが望ましい。フレキシブル素子の機械的振動は、センサが真っ直ぐになるときの速度に加えて、少なくとも一つの余分なパラメータを与える。このパラメータは、フレキシブル素子を取り囲む流体のパラメータ(例えば粘度)を求めるためにフィッティングされるか、または他の手段で解析あるいは決定可能である。この場合、屈曲の速度、または機械的振動中の極限たわみに到達するまでに要する時間のうち少なくとも一つを測定するか、あるいは機械的振動中の屈曲の程度を測定してもよい。
【0009】
フレキシブル素子の共振周波数と同期する複数のパルスを生成する必要はない。パルスは互いに対して任意のタイミングで生成してよく、時間的にリンクさせる必要はない(すなわち、パルスは時間的に別個のものであり、規則的な間隔で発生させたり、または任意の繰り返しパターンで発生させる必要はない)。
【0010】
パルスの持続時間は5ミリ秒未満でもよい。パルスの持続時間は、フレキシブル素子の機械的振動と、フレキシブル素子の温度による屈曲とを区別可能であるように十分に短くてもよい。
【0011】
電気パルスの持続時間は1.5ミリ秒未満でもよい。電気パルスの持続時間は1ミリ秒未満でもよい。電気パルスの持続時間は100マイクロ秒より大きくてもよい。例えばフレキシブル素子の周囲が気体である場合には、パルスは50マイクロ秒であることが望ましい場合がある。コントローラは、フレキシブル素子の共振周波数よりも少なくとも二桁小さい周波数で一連の電気パルスを提供するように構成されてもよい。例えば、100Hzよりも小さい周波数で一連のパルスを生成してもよい。例えば5%、10%または20%のデューティサイクルを用いてもよい。
【0012】
パルス持続時間および第1層と第2層の熱膨張率は、パルス後にフレキシブル素子が曲がり続けるようにされてもよい。
【0013】
パルス持続時間およびパルスエネルギーは、パルス後にフレキシブル素子が約50%曲がるようにされてもよい。
【0014】
パルス持続時間は、フレキシブル素子の周囲の環境を十分に加熱することなしに、フレキシブル素子を効率的に加熱できるような十分な短さであってもよい。パルス持続時間は、デバイスが損傷を受けるなどデバイスの任意の部分を過度に熱することなしに、フレキシブル素子を所望の程度屈曲させるのに十分なエネルギー(熱の形態で)をフレキシブル素子に伝達するのに十分な長さであってもよい。
【0015】
例えばフレキシブル素子の周囲が気体である場合、フレキシブル素子に与えられる熱形態の最小エネルギーは1μJであってもよい。例えばフレキシブル素子の周囲が1センチポアズの流体である場合、フレキシブル素子に与えられる熱形態の最小エネルギーは50μJであってもよい。例えばフレキシブル素子の周囲が2センチポアズよりも大きい流体である場合、フレキシブル素子に与えられる熱形態の最小エネルギーは100μJであってもよい。フレキシブル素子に与えられる最小エネルギーは、フレキシブル素子を屈曲させ測定可能な機械的オーバーシュートを生じさせるのに十分なものであってもよい。
【0016】
例えばフレキシブル素子の周囲が気体である場合、フレキシブル素子に与えられる熱形態の最大エネルギーは10μJであってもよい。例えばフレキシブル素子の周囲が1センチポアズの流体である場合、フレキシブル素子に与えられる熱形態の最大エネルギーは60μJであってもよい。例えばフレキシブル素子の周囲が2センチポアズよりも大きい流体である場合、フレキシブル素子に与えられる熱形態の最大エネルギーは150μJであってもよい。フレキシブル素子に与えられる熱形態の最大エネルギーは、250μJであってもよい。フレキシブル素子に与えられる熱形態の最大エネルギーは、フレキシブル素子に損傷を与えたり、またはフレキシブル素子が熱屈曲を起こして屈曲により発生する機械的オーバーシュートを隠したりしないようにしなければならない。
【0017】
デバイスは、第1フレキシブル素子の移動を示す信号を提供するように構成されたセンサをさらに備える。
【0018】
第2の態様では、本発明は流体の特性を検出するデバイスを操作する方法を提供する。デバイスは、本体領域と、第1端部と第2端部とを有し、第1端部が本体領域上に固定配置されている第1フレキシブル素子と、を備え、第1フレキシブル素子は、第1熱膨張係数を有する第1層と第2の異なる熱膨張係数を有する第2層と、フレキシブル素子を加熱してフレキシブル素子の屈曲を引き起こすように構成された電気ヒータと、を少なくとも備える。方法は、電気ヒータに8ミリ秒より小さい持続時間を有する電気パルスを与えてフレキシブル素子の屈曲を引き起こすことを含む。
【0019】
電気パルスは5ミリ秒より小さい持続時間でもよい。方法は、フレキシブル素子の動きを検出し、それによってフレキシブル素子を取り囲む流体の粘度を示す値を求めることをさらに含む。フレキシブル素子の移動中の特定ポイントでフレキシブル素子の動きの大きさを検出してもよい。これは、熱で引き起こされた動きと機械的な動きの成分を含んでもよい。代替的に、電気パルスを与えた後に、フレキシブル素子が所定の動きを完了するために要する時間を検出してもよい。このような動きは、機械的振動などから起こるフレキシブル素子の極限位置への移動、およびその後に平衡位置に向けて戻る移動であってもよい。
【0020】
方法は、フレキシブル素子の移動を追跡してある期間にわたる移動を表すデータを取得し、そのデータを用いてフレキシブル素子を取り囲む流体の粘度を示す少なくとも一つの値を求めることをさらに含んでもよい。
【0021】
第3の態様では、本発明は流体の特性を検出するデバイスを提供する。このデバイスは、本体領域と、第1端部と第2端部とを有し、第1端部が本体領域上に固定配置されている第1フレキシブル素子と、第1端部と第2端部とを有し、第1端部が本体領域上に固定配置されている第2フレキシブル素子と、を備え、各フレキシブル素子は、第1熱膨張係数を有する第1層と第2の異なる熱膨張係数を有する第2層と、それぞれのフレキシブル素子の移動を示す信号を提供するように構成されたそれぞれのセンサとを少なくとも備え、基準フレキシブル素子のセンサは第1フレキシブル素子のセンサとは異なる構成を有しており、フレキシブル素子の少なくとも一方は、フレキシブル素子の熱伝導率分布を実質的に一様にするための少なくとも一つの追加材料部分を含む。
【0022】
第1および第2フレキシブル素子の両方の温度応答が同様であることを保証するために、一つ以上の材料の追加部分をフレキシブル素子のいずれか一方(必要に応じて両方)の内部に設けることができる。各フレキシブル素子内の熱伝導率分布(すなわち、特定の熱伝導率値または熱伝導特性を有する材料の分布)を一様にすることで、フレキシブル素子が異なる構成のセンサを有しているにもかかわらず、同じ程度に加熱したとき、各フレキシブル素子が同様の熱交換特性を持ちほぼ一様の温度分布を有することができる。したがって、第2フレキシブル素子は、第1フレキシブル素子の基準としてより良好に機能することができる。少なくとも一つの追加材料部分は、センサと同様の熱伝導率を有していてもよい。
【0023】
少なくとも一つの追加材料部分は、センサと同様の熱伝導率を有してもよい。
【0024】
少なくとも一つの追加材料部分は、センサと同じ材料で形成されてもよい。
【0025】
センサは熱導体で形成されてもよい。
【0026】
各センサは金属を含んでもよい。
【0027】
少なくとも一つの追加材料部分も金属で形成され、各フレキシブル素子の金属成分と非金属成分の比率は実質的に同一であってもよい。
【0028】
第2の基準フレキシブル素子のセンサは、第1フレキシブル素子のセンサよりも、それぞれのフレキシブル素子の屈曲によって引き起こされる機械的歪みに対する検出感度が低いように構成されてもよい。
【0029】
第1フレキシブル素子は第1フレキシブル部材内に配置され、第2フレキシブル素子は別個の第2フレキシブル素子内に配置されてもよい。
【0030】
第1および第2のフレキシブル素子は単一のフレキシブル部材の内部に配置されてもよい。
【0031】
センサはコンスタンタンを含んでもよい。
【0032】
第1フレキシブル素子のセンサからの信号を処理して、第1フレキシブル素子を取り囲む媒質の粘度を示す信号を提供するように構成されるプロセッサをさらに備えてもよい。
【0033】
第1フレキシブル素子は、1N/m未満の定数のばねを有してもよい。
【0034】
第1フレキシブル素子は、第1端部から第2端部の長さが10ミクロンから2mmの間であってもよい。
【0035】
層の熱膨張係数の違いは、少なくとも10×10−6/°Cであってもよい。
【0036】
第1層と第2層の熱膨張係数の比率は、少なくとも10であってもよい。
【0037】
層は、10GPa未満のヤング率を有する材料で形成されてもよい。
【0038】
第4の態様では、本発明は流体の特性を検出するデバイスを提供する。このデバイスは、本体領域と、第1端部と第2端部とを有し、第1端部が本体領域上に固定配置されている第1フレキシブル素子と、を備え、第1フレキシブル素子は、第1熱膨張係数を有する第1層と第2の異なる熱膨張係数を有する第2層と、フレキシブル素子を加熱してフレキシブル素子の屈曲を引き起こすように構成された電気ヒータと、を少なくとも備え、第1端部に隣接するヒータ素子の第1部分の抵抗が、第1端部から離れたヒータ素子の第2部分の抵抗よりも大きく、使用時に、ヒータ素子の第1部分を含むフレキシブル素子の第1区画が、ヒータ素子の第2部分を含むフレキシブル素子の第2区画よりも、単位時間当たりより多くの熱を受け取り、第2区画は第1区画と寸法が等しい。
【0039】
このような構成を有するヒータ素子を設けることで、フレキシブル素子のさらなる加熱が、第1端部、すなわちフレキシブル素子が本体領域に接続されているポイントに近接する区画で発生することが保証される。したがって、その領域におけるフレキシブル素子のたわみを最大化することができ、その結果、他の方法よりもフレキシブル素子のたわみが大きくなり、デバイスの検出感度をより高めることができる。
【0040】
ヒータ素子の第1部分は、ヒータ素子の第2部分よりも断面積が小さくてもよい。ヒータ素子の第1部分は、ヒータ素子の第2部分よりも長くてもよい。
【0041】
第1部分は、第1端部と第2端部の間のフレキシブル素子の中間区画に配置されてもよい。
【0042】
第1部分は、フレキシブル素子の第1端部にあってもよい。
【0043】
ヒータ素子の少なくとも別の部分が第1端部と第2端部の間にあるフレキシブル素子の中間区画に配置され、ヒータ素子の第2部分よりも断面積が小さくてもよい。
【0044】
ヒータ素子が実質的に均一の抵抗率を有する材料で形成されてもよい。
【0045】
ヒータ素子は、断面積の大きな部分から断面積の小さな部分に向けてテーパー状になっていてもよい。
【0046】
第5の態様では、本発明は流体の特性を検出するデバイスの製造方法であって、デバイスの構成部品を提供することによって、上記請求項のいずれかに記載のデバイスを形成することを含む方法を提供する。
【0047】
以下、添付の図面を参照して、例示のみを目的として、本発明の実施の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A】第1構成および第2構成における、本発明の一実施形態による単一のフレキシブル部材を有するデバイスの斜視図である。
【図1B】第1構成および第2構成における、本発明の一実施形態による単一のフレキシブル部材を有するデバイスの斜視図である。
【図2】関連するセンサおよび加熱素子を示す、二つのフレキシブル素子を有するデバイスの模式的な平面図である。
【図3A】図2の加熱素子とセンサの構成をそれぞれ示す図である。
【図3B】図2の加熱素子とセンサの構成をそれぞれ示す図である。
【図4】材料の追加部分の位置を表した本発明の一実施形態によるフレキシブル部材の模式的な平面図である。
【図5A】同一の所定エネルギーのパルスに応答したフレキシブル部材のたわみ振幅を時間関数として示すグラフであり、0.5ms、1.0ms、2.0ms、4.00msのパルス持続時間を示す。
【図5B】同一の所定エネルギーのパルスに応答したフレキシブル部材のたわみ振幅を時間関数として示すグラフであり、0.5ms、1.0ms、2.0ms、4.00msのパルス持続時間を示す。
【図5C】同一の所定エネルギーのパルスに応答したフレキシブル部材のたわみ振幅を時間関数として示すグラフであり、0.5ms、1.0ms、2.0ms、4.00msのパルス持続時間を示す。
【図5D】同一の所定エネルギーのパルスに応答したフレキシブル部材のたわみ振幅を時間関数として示すグラフであり、0.5ms、1.0ms、2.0ms、4.00msのパルス持続時間を示す。
【図6A】それぞれ0%および30%のグリセロールと混合された塩水および水溶液中でのフレキシブル部材のたわみ振幅を時間の関数として表したピエゾ抵抗センサ電圧を示す図である。
【図6B】それぞれ0%および30%のグリセロールと混合された塩水および水溶液中でのフレキシブル部材のたわみ振幅を時間の関数として表したピエゾ抵抗センサ電圧を示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態によるデバイスの模式図である。
【図8】図1および図7のデバイスの、初期励起パルスに続く相対的なたわみ振幅を時間の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1Aおよび図1Bは、本発明の一実施形態による気体や液体などの流体の特性を検出するデバイス100を示す。
【0050】
デバイス100は、本体領域110に結合された3つのフレキシブル素子102、104、106を備える。各フレキシブル素子の第1端部は、本体領域110に接続される。
【0051】
各フレキシブル素子の第1端部から離れた第2端部は自由端であり、本体領域に対して移動する。各フレキシブル素子は、長方形の表面領域を持つ棒状であり、本体領域110から延びる長方形の長い側面を持つ。各フレキシブル素子102、104、106は、少なくとも二つの層108a、108bからなる積層構造である。各層の材料は、異なる熱膨張係数を有する。
【0052】
層は、異なる材料で形成することができる。代替的に、各層を同じ材料で形成し、異なる熱膨張係数を呈するように異なる方法で材料を処理してもよい(例えば、特定の方向に圧力を加える、および/またはフレキシブル素子内で別の材料に結合する)。例えば、異なる方向で材料に圧力を加えると、方向依存性を有する熱膨張係数を与えることができる。したがって、別々の層が同一の材料で形成されていても、別々の層が異なる方向で圧力を加えられていれば、別々の層は事実上異なる熱膨張係数を有するようになる。第1の層は、第2の層の熱膨張係数の2倍(または5倍、または10倍)の熱膨張係数を有していてもよい。熱膨張係数の違いは、少なくとも10×10−6/°Cであってもよい。層は、10GPaよりも小さいヤング率を有する材料で形成されてもよい。
【0053】
各層を構成する適切な材料は、ポリマー、ポリイミド、ポリアミドおよびアクリルポリマーを含む。
【0054】
熱を与えられると、同じ温度上昇に対して一方の層が他方の層よりも膨張し、したがって加熱されているフレキシブル素子は低い膨張係数を有する層(例えば、図1Aに示す位置)の方向に曲がる。フレキシブル素子が冷えると、同一の温度低下に対して一方の層が他方の層よりも大きく収縮し、したがってフレキシブル素子は大きい熱膨張係数を有する材料の方向(例えば、図1Bに示すように)に真っ直ぐに戻る。3つのフレキシブル素子102、104、106のそれぞれは、実質的に同一の長さ、幅および厚さを持つ。結合部材120は、フレキシブル素子102、104、106の自由端(すなわち、フレキシブル素子の本体領域110から離れている第2端部)のそれぞれに接続される。
【0055】
フレキシブル素子のそれぞれは、隣接するフレキシブル素子から横方向に離れていてもよく、すなわち、フレキシブル素子102、104、106のそれぞれの間にギャップがあってもよい。このようなギャップは、フレキシブル素子間の熱伝導を制限する。典型的に、結合部材120は熱絶縁材料で形成される。
【0056】
また、フレキシブル素子102、104、106と結合部材120とは、フレキシブル部材125を形成する。フレキシブル部材は、約1N/mの定数のばねを有してもよい。フレキシブル部材は長さが10ミクロンまたはそれ以上であってもよい。長さが2mmまたはそれ以下であってもよい。
【0057】
フレキシブル部材125は、ヒータを含む少なくとも一つのフレキシブル素子102、104、106を備える。ヒータは例えば電気発熱素子であり、フレキシブル部材125を動かすためにフレキシブル素子102、104、106を加熱する。例えば、電気加熱素子は、金属または金属合金で形成されることができる。加熱素子は、実質的に一様な抵抗率を有する材料で形成されてもよい。電気加熱素子は、コンスタンタンで形成されてもよい。コンスタンタンのような材料は、比較的低い抵抗の温度係数を有する。すなわち、その抵抗は温度により顕著には変化しない。電気加熱素子は、例えばAu、Pt、Cuやそれに類する導電性が高く比較的弾性のある材料(例えば、金属または金属合金)で形成されてもよい。
【0058】
フレキシブル部材125はまた、センサを含む少なくとも一つのフレキシブル素子102、104、106を備える。センサは、関連するフレキシブル素子102、104、106の移動を検出し、それを示す信号(したがって、フレキシブル部材125の対応する移動を示す信号)を提供する。センサは、フレキシブル素子の屈曲の度合いを示す信号を提供するように構成される。従来技術において述べたように種々の動作センサが知られており、全てを本発明の実施形態において実装することができる。この特定の実施形態では、動作センサはピエゾ抵抗材料の形をとる。ピエゾ抵抗材料は、機械的歪みを与えるとその電気抵抗が変化する材料である。例えば、センサのピエゾ抵抗材料は、ニクロム、クロム−銅合金、Au、Ptまたはポリマーで形成することができる。センサはコンスタンタンで形成されてもよく、その抵抗は比較的温度に対する感度が低い。コンスタンタンのように比較的温度の影響を受けない材料を用いることで、ヒータとセンサの間のクロストークが低減される。
【0059】
センサからの信号出力は、熱成分(センサ/フレキシブル素子の温度による膨張のため)と歪み成分(センサ/フレキシブル素子の移動のため)を含むものとみなすことができる。粘度のような流体特性の測定のためには、フレキシブル部材の励振に応答するセンサ信号の歪み成分をみるだけで、熱成分を最小化することが望ましい。歪み成分は、フレキシブル素子の曲げ挙動を表している。
【0060】
フレキシブル部材125は3つのフレキシブル素子102、104、106を備えており、中心のフレキシブル素子104がセンサを備え、二つの外側のフレキシブル素子102、106が移動を引き起こすヒータをそれぞれ備えていてもよい。両方のヒータは、ねじれ動作を与えずにフレキシブル部材(センサを含む中心のフレキシブル素子104を含む)を曲げるために、同時に作動されてもよい(例えば、同一の/等しい電気信号を各ヒータ素子に与えることによって)。センサからの信号は監視され、続いてプロセッサにより分析される。プロセッサは、所望の流体特性を示す信号を与える。例えば、時間の関数としてたわみの動きを解析することによって、フレキシブル素子が内部に配置されている流体の粘度を求めることができる。
【0061】
デバイス100はコントローラ130を備える。コントローラ130は、フレキシブル素子内の電気加熱素子に対して電気パルスを供給するよう構成されたヒートコントローラを備える。図5A〜図5Dを参照して後述するように、パルスは比較的短くてよく、例えば持続時間が8ミリ秒より短く、一部の実施形態では5ミリ秒より短い。パルスは、例えば100マイクロ秒以上であってもよい。パルスは100マイクロ秒より短くてもよく、例えば少なくとも50マイクロ秒である。
【0062】
コントローラ130はまた、センサからの信号を受け取り処理し、これによってフレキシブル素子を取り囲む流体の特性(例えば粘度)を示す値を求めるように構成されたプロセッサを備えてもよい。コントローラ130は、求められた特性を示す出力信号を、例えば時間の関数として提供するように構成される。
【0063】
フレキシブル部材、センサ、およびフレキシブル素子内の加熱素子の取り得る構成について、図2〜図4を参照して述べる。
【0064】
図1に示したような一つのフレキシブル部材125を備えるデバイス100の代わりに、デバイス100は、図2に示すように二つのフレキシブル部材125a、125bを備えてもよい。こうする場合、フレキシブル部材の一方(125b)は基準として機能する。
【0065】
各フレキシブル部材125a、125bは、図1に示したフレキシブル部材125に概して対応する。フレキシブル部材125a、125bはそれぞれ、単一の共通本体領域に接続される。図示の例では、フレキシブル部材125a、125bは並んでおり、共通平面(例えば、図を表す紙のシートの平面)内に延びている。代替的な構成では、フレキシブル部材125a、125bが平行する平面内に延びてもよく、例えば一方のフレキシブル部材の上部に他方のフレキシブル部材があるように互いに重なっていてもよい。
【0066】
特に、この実施形態における各フレキシブル部材125a、125bは、それぞれ3つのフレキシブル素子(102a、104a、106a、102b、104b、106b)を備える。それぞれの結合部材120a、120bは、各フレキシブル部材125a、125b内のフレキシブル素子を結びつける。
【0067】
各フレキシブル部材125a、125bの外側の二つのフレキシブル素子102a、106a、102b、106bは、一体の電気抵抗加熱素子103a、103bを備える。加熱素子は、異なる熱膨張係数を有する材料からなる二つの層のうち一方の内部に形成されることができ、または二つの層の間に形成されることができる。全てのフレキシブル素子(102a、106a、102b、106b)の内部に形成される各加熱素子の構成(すなわち、形状、位置および寸法)は同一である。これにより、全てのヒータ素子が関連するそれぞれのフレキシブル素子に類似の加熱影響を与えること、すなわち、両方のフレキシブル部材125a、125bが類似の加熱の影響を受け、したがって類似の量だけの曲げが引き起こされることが保証される。
【0068】
図2から、両方のフレキシブル素子102a、106aにおける電気ヒータ素子103aが直列に電気接続され、第2フレキシブル部材125bにおける電気ヒータ素子103bも同じであることが分かる。簡便のために、フレキシブルヒータ素子103aが第2フレキシブル部材125bにおける電気ヒータ素子103bと接続されてもよい。このような接続により、各ヒータ素子に対して類似の励起パルスを与えることが容易になる。すなわち、同様のパワーレベル、同様の形状および持続時間のパルスを、各個別のフレキシブル部材上に形成された各個別のヒータ素子に与えることが容易になる。
【0069】
中心のフレキシブル素子104a、104bはそれぞれ、センサ素子105a、105bの形状でそれぞれのセンサを備える。センサ素子105a、105bの構成は異なることに注意する。各センサ素子105a、105bはフレキシブル素子の全長にほぼ沿って延びるが、各センサ素子105a、105bの特定の形状は異なる。この異なる構成を用いて、異なる機能を提供する。特に、第1フレキシブル部材125a上のセンサ素子105aは、第2フレキシブル部材125b上のセンサ素子105bよりも歪みに対する感度が高い。典型的に、第2フレキシブル部材は基準として機能する。すなわち、センサ素子105bは基準信号を提供する。
【0070】
基準センサ素子105bは、全体の材料組成および材料の厚み/量に関してはアクティブセンサ素子105aと実質的に同一である。したがって、センサ素子105aおよび105bは同様の抵抗を有する。さらに、後に説明するように、センサ素子105a、105bは、実質的に同一の熱伝導率を有するフレキシブル素子の一部により包囲されるか、フレキシブル素子の一部である(図4を参照して後述するように、追加の材料250を使用するために)。したがって、センサ素子105a、105bからの信号出力は、実質的に同じ熱成分を有するはずである。言い換えると、センサ素子105a、105bからの信号の熱成分は、各センサに対して実質的に等しい。
【0071】
しかしながら、センサ素子105aと105bの間の構成の違い(例えば、センサの設置面積または形状)のために、それぞれの出力信号の歪み成分は異なるであろう。特に、センサ素子105aの一方は、他方のセンサ素子105bよりも大きな歪み成分を有するために設けられている。これらのセンサ素子は、それぞれアクティブセンサ素子105aと基準センサ素子105bであるとみなすことができる。したがって、便利なことに、基準センサ素子105bからの出力信号をアクティブセンサ素子105aからの出力信号から減じて、実質的に歪み成分のみを有する正味信号を残すことができる。言い換えると、アクティブセンサ素子105aの出力信号から基準センサ素子105bの出力信号を演じることで、正味(全体)信号の熱成分を最小化(および中和)し、単純に歪み成分が残る。ホイートストン・ブリッジ構成の適切なアームに両方のセンサを結合することによって、信号を都合良く減じることができる。その結果、ホイートストン・ブリッジ構成において、基準センサ素子105bからの電圧出力がアクティブセンサ素子105aからの電圧出力から差し引かれる。
【0072】
両方のフレキシブル部材125a、125bに共通コントローラ(例えば130)を結合することができる。コントローラは、各部材125a、125bのヒータ素子103a、103bを励起(すなわち、加熱)する同一の電気パルスを提供するように構成される。さらに、コントローラは、各流体の粘度を求めるために、センサ素子105a、105bからの信号を処理するように構成される。
【0073】
図3Aは、ヒータ素子103a、103bのみを示す。各ヒータ素子103a、103bは同一の構成(すなわち、大きさと形状)を有するので、ヒータ素子の一方(103a)について構成を説明する。しかしながら、他方のヒータ素子103bについても同一の詳細な構成が当てはまることを理解すべきである。
【0074】
図2から分かるように、各ヒータ素子は、(本体領域に隣接する)それぞれのフレキシブル素子の第1端部に隣接する位置から、フレキシブル素子(すなわち、205)の第2の離れた端部を介して第1端部に戻る回路内に延びる。第1端部では、ヒータ素子はデバイスの本体領域(110)上の対応する電気導電部に電気的に接続され、そこからコントローラ130(例えば、図1を参照)に接続される。
【0075】
典型的に、各ヒータ素子は厚みが均一であり、単一の蒸着層の内部に容易に素子が形成される。典型的に、各ヒータ素子を形成する材料は実質的に均一の抵抗率を有する。しかしながら、有利なことに、ヒータ素子に沿った距離の関数としての抵抗は異なる。
【0076】
長さl、断面積Aの電気伝導材料の断面の抵抗Rは、次式で計算することができる
R=ρl/A
ここで、ρは材料の抵抗率である。言い換えると、材料の断面の抵抗はその断面の断面積に反比例する。
【0077】
電気加熱素子103aは二つの機能を実行する。関係するフレキシブル素子を加熱する他、電気加熱素子103aは、ヒータ素子を駆動する電気パルスの停止後にフレキシブル素子内で熱エネルギーを拡散する熱導体としても機能する。したがって、フレキシブル素子内での熱エネルギーの分散を補助するために、比較的断面積の大きい加熱素子を有することが望ましい。他方、高いRを提供するためには比較的狭い加熱素子を有することが望ましいが、これは、熱エネルギーの可能な限り最大の量を加熱素子内に放散させてフレキシブル素子の屈曲を確実に引き起こすためである。さらに、電気ヒータ素子103aは金属などの比較的硬い材料で形成されることが多いが、これはフレキシブル素子内で望ましくない比較的固い層となりうる。
【0078】
これらのパラメータの全ての相互作用、および電気ヒータ素子103aの性能は、従来技術のデバイスと比較して改善されている。これは、第1端部に隣接するヒータ素子の比較的狭い部分201を提供して、その部分内での柔軟さおよび加熱効果を最大化することによるものである。さらに、ヒータ素子の比較的狭い部分203は、フレキシブル素子の中間部分/位置に配置されているが、これはその位置の周りの加熱/フレキシブル素子の柔軟性を最大化するためであり、したがって、加熱時にフレキシブル素子が曲がる度合いがさらに強化される。必要に応じて、ヒータ素子のこのような狭められた「ウエスト」部分を複数設けることができる。ヒータ素子内のあらゆる部分への熱の配分を補助するために、これらの狭い部分201、203が広い部分202、204の間に形成される。ヒータ素子の幅は、広い部分から隣接する狭められた部分へとテーパー状にされる。
【0079】
したがって、金属化の比較的大きな設置面積(例えば、ヒータ素子がより広い部分を追跡する)が設けられ、熱の迅速な分配およびカンチレバーのより良好な応答が可能になる。さらに、狭い部分(201、203)が設けられ、それらの部分での機械的剛性が減じられ、それらの部分での加熱効果が増大される。
【0080】
「狭い部分」という用語は、広い部分よりも幅が狭い部分のことを意味している。同様に、「広い部分」という用語は、狭い部分よりも幅が広い部分を意味している。
【0081】
一部の実施形態では、狭い部分201、203の機能の少なくともいくつかは、加熱素子の経路の蛇行部分として形成されてもよい。経路の蛇行部分は、フレキシブル素子に沿って直接進まないが、例えば蛇のように(serpentine)前後に曲がり、フレキシブル素子の所与の長さに対する加熱素子の長さをより大きくする。この結果、蛇行部分を含むフレキシブル素子の区画に対してより多くの熱を与えることになる。加熱素子経路の蛇行部分を備える実施形態では、経路の断面は、加熱素子経路の長さに沿って均一であってもよい。
【0082】
以下、図2および図3Bを参照して、センサ素子105a、105bの構成について、間単に説明をする。
【0083】
典型的に、センサ素子105aは、基準センサ素子105bよりも、フレキシブル素子に沿った長手方向の歪みに対する検出感度が高くなるように構成される。このような感度は、形状、および各センサを形成する異なるセンサ経路の相対的な寸法を変化させることによって実現できる。各センサは同じ厚さであってもよく、その場合、各フレキシブル素子内でのセンサ経路は単一の処理ステップで容易に形成される。
【0084】
各センサ素子105a、105bは、各フレキシブル素子(例えば、フレキシブル素子104a、104b)に沿って長手方向に延びる素子として形成される。センサ素子105a、105bは、フレキシブル素子の全長にわたって動きを求めるために、フレキシブル素子の全長に沿って延びてもよい。
【0085】
しかしながら、線形歪みに対する検出感度を最大化するために、センサ素子105aは、対応する基準センサ素子105bよりも、フレキシブル素子に沿って長手方向に延びる長さの割合が大きい。図3Bに示す特定の構成では、センサ素子105aは、四つの長手方向に延びる部分を形成するとみることができ、長手方向に延びる部分のそれぞれは、端部で隣接する部分に結合される。したがって、長手方向に延びる部分の端部でのみ、経路の横断方向に延びる部分(すなわち、フレキシブル素子に沿って長手方向には延びない部分)が存在する。
【0086】
対比のために、基準センサ素子105bの経路はフレキシブル素子に沿って蛇行して延び、長手方向に延びる部分によって横断方向に延びる部分が分離されている。その結果、経路の全長のうちより多くの割合が、フレキシブル素子を横切って延びている。
【0087】
したがって、基準センサ素子105bは、センサ素子105aよりも長手方向歪みに対する検出感度が低いが、温度に対する感度は同様である。加えて、経路のうち長手方向に延びる部分の幅を横断方向に延びる部分と比較して相対的に広くする(すなわち、より幅が広い)ことによって、基準センサ素子105bの歪みに対する検出感度をさらに低下させることができる。
【0088】
したがって、基準センサ素子105bよりも、アクティブセンサ素子105aの歪みに対する検出感度を高くすることができる。上述したように、基準センサ素子105bからの出力信号を、アクティブセンサ素子105aからの出力信号から減じることで、実質的に歪み成分のみ(すなわち、顕著な温度成分を含まない)の正味出力信号を求めることができる。
【0089】
異なる構成を有する異なるセンサ素子105a、105bのために、センサを形成する材料の相対的な配分は、それぞれのフレキシブル素子104a、104内で異なる。図3Bに示す特定の構成に関して、基準センサ素子105bは、対応するアクティブセンサ素子105aよりも多くの材料で形成される。このような構造上の違いは望ましくないことがある。
【0090】
各フレキシブル素子(例えば104a、104b)が同じ機械的特性および温度特性を有することが望ましい場合がある。典型的に、センサはピエゾ抵抗材料、例えば熱導体であるが比較的硬い金属で形成される。したがって、各フレキシブル素子は同じ材料比率を有する、例えば金属と非金属の比率が等しく、このような材料の配分がほぼ等しいことが望ましい場合がある。その結果、基準センサ素子105bで使用されるより多くの材料を補うために、アクティブセンサ素子105aを含むフレキシブル素子104aは、追加の材料の一つ以上の不活性(passive)部分250で埋められる。
【0091】
図4は、フレキシブル素子104aの拡大図であり、追加材料部分250をフレキシブル素子104aに沿って配分してフレキシブル素子104a、104bの熱伝導率の配分を均一化する方法を示す。
【0092】
追加材料部分250は、センサ素子105aの材料と同様の熱伝導率を呈してもよい。追加材料部分は、センサ素子105aと同じ材料で形成されてもよい(製造の容易さ、および特性の均一化を保証するため)。これがなされた場合、追加材料部分は、両方のフレキシブル素子の硬さの対応する均等化を実現する。追加材料250が金属である場合、追加材料250は、基準フレキシブル素子104aにおける金属成分と非金属成分の比率を変更し、二つのフレキシブル素子104a、104bにおける比率を等しくする。
【0093】
上で示したように、コントローラ130は、電気ヒータ素子に電気パルスを与え、それによってフレキシブル素子の屈曲を引き起こすように構成される。
【0094】
パルスは、フレキシブル素子に引き起こされる曲げが最大値に到達する前にパルスが終了するほどの短さであってもよく、または、フレキシブル素子の著しい機械的オーバーシュートが起きるような短さであってもよい。パルスは、パルスの停止後に、フレキシブル素子の著しい機械的なたわみが起きるのに十分な短さであってもよい。機械的なたわみは、測定できるように十分な大きさであってもよい。
【0095】
パルスは、フレキシブル素子を測定可能な量だけ機械的に振動させる十分な速さで、フレキシブル素子のたわみを引き起こすようなものであってもよい(これらの機械的振動については後述する)。これは、例えば、十分に短くかつ測定可能な量の機械的振動を始めるのに十分な大きさのインパルスをフレキシブル素子に与えるエネルギーのパルスによって達成することができる。パルスは、そのパルスと、その後の機械的振動の測定とが時間的に分かれているように十分に短くてもよい。
【0096】
パルスは、いわゆるトップハット(top-hat)関数であってもよいし、またはそのような関数の近似であってもよい。フレキシブル素子の柔軟性のために(例えばシリコンで製造されるプローブと比較して)、例えば共振周波数でサイン波の電気信号を用いてフレキシブル素子を励振する必要はない。トップハット関数またはその近似は、様々な異なる周波数を含み、したがって、例えばフレキシブル素子内の測定可能な機械的振動を励起するのを助けることができる。例えば5%、10%または20%のデューティサイクルを使用することができる。パルスは時間的に分離していてもよい。規則的なデューティサイクルよりも、パルス間に不規則な量の時間が残されてもよい。電気パルスの周波数は、フレキシブル素子の共振周波数よりも少なくとも二桁小さくてもよく、例えば100Hz以下であってもよい。
【0097】
パルスは、例えば持続時間が8ミリ秒未満、5ミリ秒以下、2ミリ秒以下、1ミリ秒以下、または0.5ミリ秒以下であってもよい。
【0098】
パルスを用いて所定の必要な量のエネルギーを伝えるとき、パルスの持続時間が短縮される場合、パルスの強度(すなわち、ピーク電圧)を増加しなければならない。パルスが短すぎると、パルスの強度は、加熱素子および/またはその周囲のフレキシブル素子に損傷を与えるほど高くなることがある。これは、加熱素子に十分なエネルギーを伝えるために十分な長さのパルスを用いて、加熱素子に損傷を与えることなくフレキシブル素子に必要な程度の屈曲を引き起こすことによって実現することができる。パルスは、例えば持続時間が少なくとも100マイクロ秒、少なくとも250マイクロ秒、および0.5ミリ秒であってもよい。例えばフレキシブル素子の周囲が気体である場合には、パルスは持続時間が少なくとも50マイクロ秒であってもよい。
【0099】
図5A〜図5Dは、持続時間の異なるパルスを利用する効果を示しており、図5Aは0.5ミリ秒のパルスを、図5Bは1.0ミリ秒のパルスを、図5Cは2.0ミリ秒のパルスを、図5Dは4.0ミリ秒のパルスを示している。いずれの場合も、パルスエネルギーの合計が等しくなるように、与えられたパルス電圧は調整されている。
【0100】
例えば、プローブが約1センチポアズの流体の中に置かれるとき、加熱素子に与えられる最小エネルギーは50μJであってもよい。例えば約1センチポアズの流体に対して、加熱素子に与えられる最大エネルギーは60μJであってもよい。より粘性のある流体に対しては、最小または最大エネルギーはより高くてもよく、より粘性の少ない流体に対しては、最小または最大エネルギーはより低くてもよい。最小エネルギーは、フレキシブル素子に測定可能な機械的オーバーシュートを引き起こすのに十分なものである必要がある。最大エネルギーは、フレキシブル素子に損傷を与えたり、または機械的オーバーシュートを隠すほどであってはならない。加熱素子に与えられる最小エネルギーは、1μJであっても、または100μJであってもよい。加熱素子に与えられる最大エネルギーは、10μJ、150μJ、または250μJであってもよい。
【0101】
図5A〜図5Dは、フレキシブル素子内の測定センサの応答を示す。これらの測定を実行するために利用されるデバイス100は、図1に示したタイプのものものである。図5A〜図5Dは、センサの電気抵抗の変化から生じる電圧振幅を示している(センサはホイートストン・ブリッジの一部を形成する)。したがって、振幅は、センサを含んでいるフレキシブル素子のたわみを示している。各図において、初期に信号が負の方向に行く部分が観察される。この初期の負の方向に行く部分の開始は、関連する電気パルスに対応する。各図において、パルスが停止する期間が示されている。
【0102】
各グラフの初期の負の方向に行く部分は、電気的な寄生効果およびフレキシブル素子が曲がる前のフレキシブル素子の初期座屈のためであると信じられている(後に続く電圧振幅の増加により示されるように)。電圧振幅はピークに上昇し、これはフレキシブル素子の最大たわみ、すなわち熱パルスにより引き起こされたフレキシブル素子の最大限の屈曲に対応する。続いてフレキシブル素子は緩和、すなわち真っ直ぐに戻り、振幅は比較的ゆっくりと減少する。
【0103】
より短いパルスに対しては、それに対応するより大きな機械的オーバーシュートが観察される。「機械的オーバーシュート」という用語は、電気パルスが終了した後にフレキシブル素子が曲がり続ける場合のことをいう。機械的オーバーシュートは、最大たわみ点(ピーク振幅)に到達するまで、フレキシブル素子の機械的慣性のためにフレキシブル素子が曲がることである。この効果は、0.5msおよび1.0ミリ秒の電気パルスの場合に最も発生するが、2.0ミリ秒および4.0ミリ秒の電気パルスの場合でもより少ない程度だが存在する。
【0104】
0.5ミリ秒および1.0ミリ秒の電気パルスは、測定可能な量の機械的振動を生じさせる(図中「機械的振動」とラベルが付けられている)。機械的振動は小さな振幅の振動であり、これはフレキシブル素子の曲がりが戻り元の形状に復帰するときに形成される、より長期間の曲線(減衰曲線に似ている)に重ね合わされる。機械的振動は、フレキシブル素子がパルスにより励起されている結果として発生する(任意の構造は、パルスにより励起された場合、機械的振動をする)。2.0ミリ秒および4.0ミリ秒の電気パルスを使用するとき、一部の機械的振動は生じることができるが、これらの振動の大きさは、図5Cおよび図5Dで見えるほど十分ではなく、測定可能でない場合がある。
【0105】
機械的オーバーシュートおよび機械的振動の両方とも有用である。なぜなら、それらは粘度(または流体の他のパラメータ)を求めるために利用できるからである。加えて、これはフレキシブル素子が真っ直ぐに戻るときに生じる比較的長期間の減衰のような関数である。短い電気パルスに対しては、(全体の振幅に関して)機械的オーバーシュートがより大きくなり、加えて、長いパルスよりも短いパルスに対して機械的振動がより顕著になることが観察される。したがって、測定可能な機械的オーバーシュートおよび/または測定可能な機械的振動を生じさせるために、十分に短いパルスを用いることが望ましいことがある。
【0106】
上述した例示的なパルス持続時間は、プローブが例えば1センチポアズの流体中に配置されているときに用いてもよい。しかしながら、プローブが異なるセンチポアズを有する流体中に配置されているときは、他のパルス持続時間が適切であることもある(フレキシブル素子は、異なる流体中では異なる振る舞いをする)。
【0107】
測定された機械的オーバーシュート形状は、流体によって異なる。加えて、機械的振動の期間および振幅は、流体によって異なる。したがって、これらの測定を使用して、流体についての情報を得ることができる。例えば、流体の粘度が高いほど、その流体中での機械的オーバーシュートのピークは遅れて生じる。加えて、流体の粘度が高いほど、機械的オーバーシュートのピークははっきりしなくなる。これに関して、ピークの大きさおよび質の両方を測定することができる。さらに、流体の粘度が高いほど、機械的振動の期間は長くなり、また機械的振動の振幅は小さくなる。
【0108】
機械的オーバーシュートの上昇部分における時定数に関するパラメータ、機械的振動の期間、または機械的振動の振幅は、標準的な数値フィッティング技術によって求めることができる。これらのパラメータを用いて、流体の特性の指標を得ることができる。例えば、パラメータは流体の粘度に応じて異なり、したがってパラメータを用いて時間にわたる流体の粘度を監視することができる。このようなパラメータを複数用いると、粘度測定(または流体の他の特性の測定)の精度を上げることができるが、これは測定を平均化および/または照合検査が可能になるからである。機械的オーバーシュートの形状または機械的振動の期間および振幅などのパラメータは、フレキシブル素子が屈曲/元に戻るための期間よりも迅速に測定することができ、これによって、測定対象の流体の瞬間的な粘度をよりよく表すことが可能になる。
【0109】
図6Aおよび図6Bは、異なる流体に対して応答関数が変わる様子を示す。両図とも、0.5ミリ秒の電気パルスがヒータに加えられるときのセンサの電圧振幅を示しており、それによりセンサを含むフレキシブル素子が屈曲しその後元に戻っている。図6Aおよび図6Bは、水媒質(W)および塩水(B)媒質(すなわち、塩水溶液)における応答を示す。図6Aは、水および塩水の純粋溶液における応答形状を示す一方、図6Bは溶液が30%のグリセロールを含むとき(すなわち、図6Aの溶液と比較して相対的に粘度が高い)の結果を示す。
【0110】
応答曲線は、二つの図で異なる。より粘度の高い媒質(図6B)では上昇時間がより遅くなっている。これは、粘度の低い媒質(図6A)における電圧振幅のピークよりも、電圧振幅のピークの発生時間が遅くなっていることにより明らかであり、また、機械的オーバーシュートの上昇部分の時定数によって明らかである。加えて、より粘度の高い媒質(図6B)で生じている機械的振動は、より粘度の低い媒質(図6A)で生じている機械的振動よりも、期間が長く振幅が小さい。
【0111】
図6Aおよび図6Bは、水媒質(W)と塩水媒質(B)とを区別することの可能なセンサを実証している。塩水媒質での電圧振幅のピークは、水媒質での電圧振幅のピークよりも発生時間が遅くなっている(図6Aおよび図6B)。加えて、塩水媒質で生じる機械的振動は、水媒質で生じる機械的振動よりも期間が長くなっている。電圧振幅のピークの移動および機械的振動の期間の変化は、塩水媒質が水媒質よりも粘度が高いことを示している。塩水媒質で生じる機械的振動の振幅は、水媒質で生じる機械的振動の振幅よりもわずかに小さいことがあり、これが間違いなくそのケースであるか否かを決定するためには曲線適合解析を行う必要がある。
【0112】
上記の実施形態は例示を目的としてのみ述べられており、本発明の範囲内に収まる種々の変形態様が当業者には明らかであろう。
【0113】
例えば、フレキシブル部材内のフレキシブル素子の特定の構成を参照して実施形態を説明してきた。電気パルスおよびヒータ経路の形状に関する本発明の態様は、デバイスが単一のフレキシブル素子のみを含む(すなわち、単一のフレキシブル部材)実施形態においても実装できることを理解すべきである。さらに、電気パルス、加熱経路および基準フレキシブル素子に関する態様などの本発明の任意の態様の任意の望ましい組合せが可能である。
【0114】
このようなデバイスの例が図7に示されている。図7はフレキシブル素子25を備え、フレキシブル素子内にはヒータ素子3とセンサ素子5の両方が配置される。このようなフレキシブル素子デバイスの一般的な概念は、PCT/GB2004/005079に開示されているものと同じであってよく、その内容は参照により本発明に援用される。しかしながら、図1〜4(デバイスがフレキシブル部材を備え、検出および加熱用に別個のフレキシブル素子を有する)に示したデバイスの応答は、図7に示すデバイス構成よりも良好な結果を与えることがある。例えば、図8は図1のデバイスの応答曲線Aと、図7のデバイスの応答曲線Bとを示す。図8の応答曲線Aの方がピークが大きいことが分かる。この大きいピークによって、関連するフレキシブル素子が浸されていた流体の特性を決定するためのパラメータのフィッティングがより簡単になる。
【0115】
本明細書に記載のフレキシブル素子は、PCT/GB2004/005079に記載のフレキシブル素子と同様の特性を有することができる。例えば、フレキシブル素子の端部の移動距離は、30ミクロンから650ミクロンの間であることができる。同様に、移動は異なる範囲をとることができる。例えば、移動範囲は1ミクロンと30ミクロンの間でもよいし、または1ミクロンと650ミクロンの間でもよい。
【0116】
上述の実施形態では、フレキシブル素子は互いに並んでいるものとして、すなわち共通の平面内で各素子が隣り合って延びているものとして説明した。しかしながら、デバイスは、平行する平面、例えば一方の上に他方が積層されている平面に延びるフレキシブル素子で形成されてもよい。このようなフレキシブル素子は、単一のフレキシブル部材の一部として形成することができる。例えば、フレキシブル部材は、フレキシブル部材内の第1位置(例えば、第1レベルまたは「高さ」)でセンサを備える第1のフレキシブル素子が延び、同じフレキシブル部材内の異なる位置でセンサを有する第2フレキシブル素子が延びるように形成することができる。例えば、基準センサは、他のセンサよりも歪みに対する検出感度の低いフレキシブル部材内のある位置に配置することができる。例えば、基準センサは、フレキシブル部材の中立軸に近接して配置されて、基準センサが他のセンサと同じだけの曲げを受けないようにしてもよい。したがって、基準センサは他のセンサ(例えばアクティブセンサ)よりも歪みが少なくなる。
【0117】
上述の実施形態では、加熱されたときにフレキシブル素子がより大きく曲がるようにプローブが構成された(例えば図1を参照)。しかしながら、プローブが顕著に曲がった状態で開始し、加熱時に曲がりが少なくなるようにプローブを構成してもよい。この文脈では、上記で用いた「屈曲」という用語は、フレキシブル素子が平衡形態から非平衡形態へと移動することを意味するように解釈され、必ずしもフレキシブル素子がさらに曲がることを意味するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の特性を検出するデバイスであって、
本体領域と、
第1端部と第2端部とを有し、前記第1端部が前記本体領域上に固定配置されている第1フレキシブル素子と、を備え、
前記第1フレキシブル素子は、第1熱膨張係数を有する第1層と第2の異なる熱膨張係数を有する第2層と、前記フレキシブル素子を加熱してフレキシブル素子の屈曲を引き起こすように構成された電気ヒータと、を少なくとも備え、
前記電気ヒータに対して8ミリ秒より少ない持続時間を有する電気パルスを供給するように構成されたヒータコントローラをさらに備えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記パルス持続時間が5ミリ秒より小さいことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1フレキシブル素子の共振周波数よりも少なくとも二桁小さい周波数で一連の前記電気パルスを供給するように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コントローラは、100Hzよりも小さい周波数で一連の前記電気パルスを供給するように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記パルス持続時間および前記パルスエネルギーは、前記電気パルスが停止された後に前記フレキシブル素子が約50%屈曲するようにされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
前記コントローラは、前記フレキシブル素子に測定可能な機械的振動をさせる電気パルスを供給するように構成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
前記コントローラは、前記フレキシブル素子が測定可能な機械的オーバーシュートを起こす十分に短い持続時間の電気パルスを供給するよう構成されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記コントローラは、前記フレキシブル素子または周囲のフレキシブル素子に損傷を与えることがない十分に長い持続時間の電気パルスを供給するよう構成されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のデバイス
【請求項9】
前記コントローラは、少なくとも50マイクロ秒の持続時間を有する電気パルスを供給するよう構成されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1フレキシブル素子の移動を示す信号を提供するよう構成されるセンサをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
流体の特性を検出するデバイスを操作する方法であって、
前記デバイスは、本体領域と、第1端部と第2端部とを有し、前記第1端部が前記本体領域上に固定配置されている第1フレキシブル素子と、を備え、
前記第1フレキシブル素子は、第1熱膨張係数を有する第1層と第2の異なる熱膨張係数を有する第2層と、前記フレキシブル素子を加熱してフレキシブル素子の屈曲を引き起こすように構成された電気ヒータと、を少なくとも備え、
前記電気ヒータに8ミリ秒より小さい持続時間を有する電気パルスを与えて前記フレキシブル素子の屈曲を引き起こすことを含む方法。
【請求項12】
前記電気パルスが5ミリ秒より小さい持続時間を有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フレキシブル素子の移動を検知し、これによって前記フレキシブル素子を取り囲む流体の粘度を表す値を求めることをさらに含む請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記求められた値は、前記フレキシブル素子の屈曲時の機械的オーバーシュートの特性に基づくことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記機械的オーバーシュートの特性は、前記フレキシブル素子の機械的屈曲のピーク振幅に関係する特性を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
機械的オーバーシュートの特性は、機械的屈曲のピーク振幅のタイミングを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
機械的オーバーシュートの特性は、機械的屈曲のピーク振幅の大きさを含むことを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記求められた値は、前記フレキシブル素子の屈曲により引き起こされるフレキシブル素子の機械的振動の特性に基づくことを特徴とする請求項13ないし17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
流体の特性を検出するデバイスであって、
本体領域と、
第1端部と第2端部とを有し、前記第1端部が前記本体領域上に固定配置されている第1フレキシブル素子と、
第1端部と第2端部とを有し、前記第1端部が前記本体領域上に固定配置されている第2フレキシブル素子と、を備え、
各フレキシブル素子は、第1熱膨張係数を有する第1層と第2の異なる熱膨張係数を有する第2層と、それぞれのフレキシブル素子の移動を示す信号を提供するように構成されたそれぞれのセンサとを少なくとも備え、
前記基準フレキシブル素子のセンサは前記第1フレキシブル素子のセンサとは異なる構成を有しており、前記フレキシブル素子の少なくとも一方は、前記フレキシブル素子の熱伝導率分布を実質的に一様にするための少なくとも一つの追加材料部分を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項20】
前記少なくとも一つの追加材料部分は、前記センサと同様の熱伝導率を有することを特徴とする請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記少なくとも一つの追加材料部分は、前記センサと同じ材料で形成されることを特徴とする請求項19または20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記センサは熱導体で形成されることを特徴とする請求項19ないし21のいずれかに記載のデバイス。
【請求項23】
各センサは金属を含むことを特徴とする請求項19ないし22のいずれかに記載のデバイス。
【請求項24】
前記少なくとも一つの追加材料部分も金属で形成され、各フレキシブル素子の金属成分と非金属成分の比率は実質的に同一であることを特徴とする請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記第2の基準フレキシブル素子のセンサは、前記第1フレキシブル素子のセンサよりも、それぞれのフレキシブル素子の屈曲によって引き起こされる機械的歪みに対する検出感度が低いように構成されることを特徴とする請求項19ないし24のいずれかに記載のデバイス。
【請求項26】
前記第1フレキシブル素子は第1フレキシブル部材内に配置され、前記第2フレキシブル素子は別個の第2フレキシブル素子内に配置されることを特徴とする請求項19ないし25のいずれかに記載のデバイス。
【請求項27】
前記第1および第2のフレキシブル素子は単一のフレキシブル部材の内部に配置されることを特徴とする請求項19ないし26のいずれかに記載のデバイス。
【請求項28】
前記センサはコンスタンタンを含むことを特徴とする請求項19ないし27のいずれかに記載のデバイス。
【請求項29】
前記第1フレキシブル素子のセンサからの信号を処理して、前記第1フレキシブル素子を取り囲む媒質の粘度を示す信号を提供するように構成されるプロセッサをさらに備えることを特徴とする請求項19ないし28のいずれかに記載のデバイス。
【請求項30】
流体の特性を検出するデバイスであって、
本体領域と、
第1端部と第2端部とを有し、前記第1端部が前記本体領域上に固定配置されている第1フレキシブル素子と、を備え、
前記第1フレキシブル素子は、第1熱膨張係数を有する第1層と第2の異なる熱膨張係数を有する第2層と、前記フレキシブル素子を加熱してフレキシブル素子の屈曲を引き起こすように構成された電気ヒータと、を少なくとも備え、
前記第1端部に隣接する前記ヒータ素子の第1部分の抵抗が、前記第1端部から離れた前記ヒータ素子の第2部分の抵抗よりも大きく、
使用時に、前記ヒータ素子の第1部分を含む前記フレキシブル素子の第1区画が、前記ヒータ素子の第2部分を含むフレキシブル素子の第2区画よりも、単位時間当たりより多くの熱を受け取り、前記第2区画は前記第1区画と寸法が等しいことを特徴とするデバイス。
【請求項31】
前記ヒータ素子の前記第1部分は、前記ヒータ素子の第2部分よりも断面積が小さいことを特徴とする請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記電気ヒータ素子の前記第1部分は、前記電気ヒータ素子の第2部分よりも長いことを特徴とする請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
前記第1部分は、前記第1端部と前記第2端部の間の前記フレキシブル素子の中間区画に配置されることを特徴とする請求項30ないし32のいずれかに記載のデバイス。
【請求項34】
前記第1部分は、前記フレキシブル素子の第1端部にあることを特徴とする請求項30ないし32のいずれかに記載のデバイス。
【請求項35】
前記ヒータ素子の少なくとも別の部分が前記第1端部と前記第2端部の間にある前記フレキシブル素子の中間区画に配置され、前記ヒータ素子の第2部分よりも断面積が小さいことを特徴とする請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
前記ヒータ素子が実質的に均一の抵抗率を有する材料で形成されることを特徴とする請求項30ないし35のいずれかに記載のデバイス。
【請求項37】
前記ヒータ素子は、断面積の大きな部分から断面積の小さな部分に向けてテーパー状になっていることを特徴とする、請求項31、35、または請求項31、35に従属する請求項のいずれかに記載のデバイス。
【請求項38】
前記第1フレキシブル素子は、1N/mより小さい定数のばねを有することを特徴とする請求項30ないし37のいずれかに記載のデバイス。
【請求項39】
前記第1フレキシブル素子は、前記第1端部から前記第2端部までの長さが10ミクロンから2mmの間であることを特徴とする請求項30ないし38のいずれかに記載のデバイス。
【請求項40】
前記層の熱膨張係数の差が少なくとも10×10−6/°Cであることを特徴とする請求項30ないし39のいずれかに記載のデバイス。
【請求項41】
前記第1層と前記第2層の熱膨張係数の比率が少なくとも10であることを特徴とする請求項30ないし40のいずれかに記載のデバイス。
【請求項42】
前記層が10GPaよりも小さいヤング率を有する材料で形成されることを特徴とする請求項30ないし41のいずれかに記載のデバイス。
【請求項43】
流体の特性を検出するデバイスの製造方法であって、前記デバイスの構成部品を提供することによって、上記請求項のいずれかに記載のデバイスを形成することを含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−536049(P2010−536049A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520618(P2010−520618)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002717
【国際公開番号】WO2009/022121
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(510038027)マイクロヴィスク リミテッド (1)