説明

流体吐出装置

【課題】 吐出流体の流量が変化しても、安定した吐出状態で流体を吐出できるようにする。
【解決手段】 吐出流体の吐出流量を調整自在な流量調整弁3を、装置本体に設け、装置本体における吐出流体流路での流量調整弁3の下流に、吐出口部Kを設けてある流体吐出装置において、流量調整弁3の流量調整操作に伴って、流体流量が増加する場合には吐出口部Kの開口断面を大きくし、流体流量が減少する場合には吐出口部Kの開口断面を小さくする吐出口断面変更機構Fを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体貯留容器(例えば、流体タンクや流体貯留槽やバスタブ)への流体供給に使用できる流体吐出装置に関し、更に詳しくは、吐出流体の吐出流量を調整自在な流量調整弁を、装置本体に設け、前記装置本体における吐出流体流路での前記流量調整弁の下流に、吐出口部を設けてある流体吐出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の流体吐出装置としては、前記装置本体における吐出流体流路での前記流量調整弁の下流に、一定の開口断面積に形成された吐出口部を設けて構成してあるものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の流体吐出装置によれば、流量調整弁の流量調整操作に伴って、流体流量が変化する場合、吐出される流体の速度も変化する。そして、流体吐出速度が大きく変化することによって、例えば、吐出速度が大きすぎると、吐出口部と流体との摩擦抵抗によって、一本の柱状にまとまった吐出流体の外周部と中心部分との流速の差が大きくなり、乱流状態になり易い。また、吐出口部の開口断面に満たないような流量で吐出させる場合は、吐出口部からの吐出状態が不安定となって流れがとぎれやすく、やはり乱流状態になり易い。吐出された流体の流れが、激しい乱流になれば、例えば、流体が飛び散ったり、飛び散ることによって流体が泡立ったり、既に吐出されて溜まっている流体上に落下する際の衝撃音が大きく発生したりし易くなる危険性がある。因に、対象となる流体が、例えば、界面活性剤や、粘性の高い材質である場合には、一度できた泡が消え難いから、次々と泡の量が増え、容器から溢れ出たりしやすい。この様に、従来の流体吐出装置によれば、吐出する流体の流量が変われば吐出状態が変化しやすく、安定した吐出流を形成し難いという問題点がある。
【0004】従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、吐出流体の流量が変化しても、安定した吐出状態で流体を吐出し易い流体吐出装置を提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
〔構成〕請求項1の発明の特徴構成は、図1に例示するごとく、吐出流体の吐出流量を調整自在な流量調整弁3を、装置本体に設け、前記装置本体における吐出流体流路Qでの前記流量調整弁3の下流に、吐出口部Kを設けてある流体吐出装置において、前記流量調整弁3の流量調整操作に伴って、流体流量が増加する場合には前記吐出口部Kの開口断面を大きくし、流体流量が減少する場合には前記吐出口部Kの開口断面を小さくする吐出口断面変更機構Fを設けてあるところにある。
【0006】請求項2の発明の特徴構成は、図2に例示するごとく、前記吐出口断面変更機構Fを構成するに、前記吐出口部Kを径方向に分割形成し、各分割部5・6どうしを径方向に移動自在に、且つ、前記分割部5に作用する重力が、前記吐出口部Kの縮径方向に作用するように形成してあるあるところにある。
【0007】尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【0008】〔作用及び効果〕請求項1の発明の特徴構成によれば、吐出流量の大小に伴って前記吐出口部の開口面積を前記吐出口断面変更機構によって大小させることができるから、例えば、吐出量の多い時でも、少ないときでも、吐出された流体の流速を大きく変えることなく吐出することが可能となり、極力、乱流の少ない状態で流体を吐出することができ易い。即ち、吐出流体の流量が変化しても、常に安定した吐出状態で流体を吐出することが可能となる。従って、流体が吐出時に飛び散ったり、跳ね返って飛び散ったり、泡立ったり、大きな騒音が発生したりするといったことを、緩和し易くなる。その例をあげると、本発明の流体吐出装置をバスタブへの給湯蛇口に適応させれば、大きい吐出量で湯を張っても衝撃音が発生し難くなって、静かに、且つ、短時間に湯を張ることができ、個建て住宅の浴槽のみならず、例えば、衝撃音が隣室に伝わりやすい集合住宅や、ホテル等の浴槽、特にユニットバス等に設置することで、より効果的に使用することができる。また、他の流体貯留容器(例えば、流体タンクや流体貯留槽)への界面活性剤流体や高粘性流体の吐出装置に適応させれば、流体吐出量の変化があっても、泡がたち難い状態で使用することができる。
【0009】請求項2の発明の特徴構成によれば、分割部の重量と吐出流体との吐出圧力とのバランスによって、吐出口部の開口断面積を調整できるので、特別な駆動機構を必要とせず、装置そのもののシンプル化が可能で、且つ、メンテナンス性も向上させることができる。また、例えば、電気を使用する吐出口断面変更機構に比べて、漏電対策を講じる必要が無く、コスト低減を図ることが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】図1は、本発明の流体吐出装置の一実施形態を示すもので、本実施形態の流体吐出装置は、蛇口(吐出口部に相当)Kと、給湯配管からの湯水の量を調整するためのバルブ(流量調整弁に相当)3とを備えて構成してある。蛇口Kは、バスタブ(流体貯留容器に相当)1の上縁部に沿う状態に取り付けてあり、バスタブ1上縁部から立ち上がる浴室壁2には、バルブ操作摘み3aが設けてある。そして、前記バスタブ1及び浴室壁2の裏側空間には、前記バルブ操作摘み3aが取り付いたバルブ3、及び、前記蛇口Kに連通接続された給湯配管4を配置してある。従って、前記操作摘み3aでバルブ3の開閉操作をすることによって、好みの温度の湯水を前記蛇口Kから吐出させて、バスタブ1に張ることが可能となる。前記給湯配管4及びバルブ3及び蛇口で装置本体は構成してある。
【0012】前記蛇口Kを説明すると、図2〜4に示すように、上下合せ構造となった上蓋部材(分割部に相当)5と下部材(分割部に相当)6とを備えた蛇口本体7で構成してある。前記上蓋部材5と下部材6とは、ともに金属製で、図に示すように、一端どうしをヒンジ接続して、その枢支軸芯周りに揺動自在に形成してある。そして、前記上蓋部材5と下部材6との他端部間の開口部分が、偏平断面形状の吐出開口部Hとなる。
【0013】また、前記下部材6には、前記ヒンジ接続部分より他端側の位置に、前記給湯配管4に対応した丸穴6aを形成してある。一方、前記下部材6が取り付けられるバスタブ1の上面部にも、前記丸穴6aに対応する丸穴1aが形成してある。そして、バスタブ1に対する前記蛇口K及び給湯配管4の取り付けは、前記両丸穴1a・6aに、バルブ3から延設された給湯配管4の端部を挿入し、給湯配管4外周部のネジ部4aに螺合させた一対のナット4bで、前記バスタブ1と下部材6との丸穴周縁部を挟持する状態に取付固定してある。また、下部材6の上面の中間部(前記丸穴6aより下流側)には、盛り上がり部6bを設けてある。この盛り上がり部6bは、前記給湯配管4からの水流が、偏平な吐出開口部Hの中央部部分に自然に集まり易くなるのを抑制して、水の流れを整えることによって吐出開口部Hの長手方向における吐出水量のバラツキを抑える作用がある(図3参照)。この盛り上がり部6bを整流手段Sという。そして、下部材6は、前記盛り上がり部6bの下流側ほど厚さを薄く形成してあり、スムースに湯水を吐出できるように構成してある。
【0014】前記上蓋部材5は、上述のようにバスタブ1に取り付けられた下部材6と揺動自在に連結してあり(図4参照)、裏面部が前記盛り上がり部6bに面接当する状態が揺動下限になるように構成してある。この揺動下限においては、前記吐出開口部Hの厚み方向の開口寸法が最小寸法となる。また、給湯配管4からの湯水の吐出に伴って、上蓋部材5は、押し上げられて、その押上力と上蓋部材5の重量とが釣り合う状態まで上方に揺動し、前記開口寸法が大きくなる。その結果、吐出開口部Hの開口面積が増加し、吐出される湯水の流速が増加するのを緩和することができる。前記上蓋部材5と給湯配管4と下部材6とを上述のとおり取り付けることによって吐出口断面変更機構Fが構成されている。即ち、給湯配管4からの湯水の供給量の増減に伴って吐出される湯水の流速が大きく変動するのを防止し、常に乱流の生じ難い状態で湯水をバスタブ1に吐出し、大きな水張り音が発生するのを防止することが可能となる。因に、この実施形態で説明した吐出口断面変更機構Fによれば、湯水供給量と上蓋部材5の重量とのバランスを利用して開口面積を調整できるから、他の電気的な開口面積制御機構を設けなくても、簡単な構成で上記作用を果たすことができる。そして、簡単な構成であるから、蛇口Kの取付作業やメンテナンス(例えば、掃除や部品交換)も、前記上蓋部材5を揺動させて開くことによって、給湯配管4や下部材6が露出し、複雑な組立解体作業なしに、目で確認しながら作業することが可能となる。また、給湯配管4の内空部、及び、上蓋部材5と前記下部材6との隙間が、湯水の吐出流体流路(以後、単に流路という)Qとなるわけであるが、前記上蓋部材5は、前記隙間の寸法が下流側ほど徐々に小さくなるように形成してあり、この形状によって湯水を徐々に偏平状態に整形しながら吐出することができる。一方、前記上蓋部材5の下流側の端部内周には、吐出開口部Hからバスタブ1へ吐出される湯水を、前記バスタブ1の壁面1bに沿わせてガイドする水押え5aを全長にわたって設けてある。具体的には、前記水押え5aは、前記流路Qを通過する湯水の方向に対して傾斜(湯水を壁面1b側へ誘導する方向の傾斜)した傾斜面をもって構成してある。
【0015】本実施形態の流体吐出装置によれば、前記バルブ操作摘み3aによって好みの吐出量となるようにバルブ3を開操作するだけで、自動的に上蓋部材5が吐出開口部Hの開口面積を適切な大きさに調整すると共に、前記吐出開口部Hの水押え5aで偏平で薄い断面形状で且つバスタブ壁面1bに沿わせて湯水を吐出することが可能となり、その結果、流下する湯水の断面内での流速のバラツキをおさえ、乱流の発生を抑制して静かに湯張りすることが可能となる。しかも、蛇口は、全体的に薄型に形成できることから、バスタブへの出入りの邪魔になり難く、且つ、バスタブ形状に馴染んだ状態に取り付けできて、浴室の美観性の向上をも叶えることができる。
【0016】〔別実施形態〕以下に他の実施の形態を説明する。
【0017】〈1〉 前記吐出口断面変更機構Fは、先の実施形態で説明したように、給湯配管4からの上向きの供給水流に対して上蓋部材5の重量でバランスして開口面積を調整するように構成したに限るものではなく、例えば、図5に示すように、スプリング(例えば、板バネやコイルスプリング)や弾性バンド部材(例えば、ゴム製バンド)等の付勢部材8を、上蓋部材5と固定側(下部材6やバスタブ1)とにわたって設けて、その付勢部材8の付勢力と供給水流とのバランスによって吐出開口部の開口面積を調整できるように構成してもよい。
〈2〉 前記蛇口Kの設置位置は、バスタブ上縁部に限ることなく、例えば、図5に示すように、バスタブの壁面1bに取り付けてあるものであってもよい。また、前記蛇口本体7は、先の実施形態で説明した上蓋部材5と下部材6とが揺動自在にヒンジ接合してある構成に限るものではなく、例えば、図5・6に示すように、上蓋部材5が、その厚み方向に沿ってスライドできるように下部材と連結してあるものであってもよい。
〈3〉 また、前記下部材6は、バスタブ1の一部分として形成してあるものであってもよい。
〈4〉 また、当該流体吐出装置は、先の実施形態で説明したバスタブからなる流体貯留容器に対して、湯水からなる吐出流体を供給するものに限定されるものではなく、例えば、吐出流体としては、液体洗剤や、下水汚泥や、セメントスラリー等の流体を、それぞれの流体貯留容器に供給するものであってもよい。また、吐出口部から吐出される吐出流体を、流体貯留容器の壁面に沿って流下させるように構成する以外に、例えば、図6に示すように、流体貯留容器内の流体表面に直接的に流体が供給されるように構成するものであってもよい。
〈5〉 また、吐出口部の先端形状は、先の実施形態で説明したように水押え5aを設けて内空部が先窄まりになるものに限定されるものではなく、吐出口部内の流速によっては、例えば、図5に示すように、内空部が基端側・先端側とも同幅(又は、ほぼ同幅)に形成してあってもよい。更には、内空部の先端側が拡開する形状に形成してあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】蛇口の取付状況を示す説明図
【図2】蛇口の詳細断面図
【図3】蛇口の上面視断面図
【図4】蛇口の斜視図
【図5】別実施形態の蛇口の断面図
【図6】別実施形態の蛇口の断面図
【符号の説明】
3 流量調整弁
5 分割部
6 分割部
F 吐出口断面変更機構
K 吐出口部
Q 吐出流体流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 吐出流体の吐出流量を調整自在な流量調整弁を、装置本体に設け、前記装置本体における吐出流体流路での前記流量調整弁の下流に、吐出口部を設けてある流体吐出装置であって、前記流量調整弁の流量調整操作に伴って、流体流量が増加する場合には前記吐出口部の開口断面を大きくし、流体流量が減少する場合には前記吐出口部の開口断面を小さくする吐出口断面変更機構を設けてある流体吐出装置。
【請求項2】 前記吐出口断面変更機構を構成するに、前記吐出口部を径方向に分割形成し、各分割部どうしを径方向に移動自在に、且つ、前記分割部に作用する重力が、前記吐出口部の縮径方向に作用するように形成してある請求項1に記載の流体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平10−114978
【公開日】平成10年(1998)5月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−269965
【出願日】平成8年(1996)10月11日
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)