説明

流体噴射ヘッド及び流体噴射装置

【課題】容易に形成することができ、リザーバ内の圧力の変化を効果的に緩和することが可能な流体噴射ヘッド及び流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】壁部に囲まれ、流体の供給源に接続され、前記流体を保持するリザーバと、前記リザーバに接続され、前記流体を噴射するノズル開口と、を備え、前記リザーバから前記ノズル開口へ前記流体を流通させると共に前記流体に圧力を加えることで前記ノズル開口から前記流体を噴射する流体噴射ヘッドであって、前記壁部は、前記リザーバと前記ノズル開口とを接続する接続口と、前記接続口に近接した位置であって前記リザーバ内を流通する前記流体の流通経路から外れた位置に設けられた凹部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射ヘッド及び流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を噴射する流体噴射装置として、例えばインクジェット式記録装置などが知られている。インクジェット式記録装置は、媒体に文字や画像等を記録する装置であり、記録ヘッドに設けられた複数のノズル開口から当該媒体にインクを噴射する構成になっている。各ノズル開口は圧力室を介してリザーバに接続されている。リザーバに保持されたインクが圧力室を介してノズル開口に供給され、圧力室においてインクに圧力が加えられることによってノズル開口からインクが噴射されるようになっている。
【0003】
圧力室においてインクに圧力を加えた場合、当該圧力はノズル開口のみならずリザーバ内にも伝達されることになる。リザーバ内に伝達された圧力変化は、当該リザーバに接続されたノズル開口の噴射圧に悪影響を及ぼすことになるため、リザーバ内にて圧力を緩和させることが求められていた。これに対して、例えば特許文献1に示すように、リザーバの壁部に別部材を取り付けることでダンパ構造とした流体噴射装置が提案されている。
【特許文献1】特開2007−176161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のリザーバを実際に形成する場合には、リザーバの壁部に対して別部材を取り付ける必要があるため、製造工程が煩雑化してしまう。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、容易に形成することができ、リザーバ内の圧力の変化を効果的に緩和することが可能な流体噴射ヘッド及び流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る流体噴射ヘッドは、壁部に囲まれ、流体の供給源に接続され、前記流体を保持するリザーバと、前記リザーバに接続され、前記流体を噴射するノズル開口とを備え、前記リザーバから前記ノズル開口へ前記流体を流通させると共に前記流体に圧力を加えることで前記ノズル開口から前記流体を噴射する流体噴射ヘッドであって、前記壁部は、前記リザーバと前記ノズル開口とを接続する接続口と、前記接続口に近接した位置であって前記リザーバ内を流通する前記流体の流通経路から外れた位置に設けられた凹部とを有することを特徴とする。
【0007】
リザーバの壁部のうちリザーバ内を流通する流体の流通経路から外れた位置では、流体の流通が淀みやすくなっている。本発明によれば、リザーバ壁部のうち流体の流通が淀みやすい位置に凹部が設けられていることとしたので、当該凹部では気泡が形成されやすくなると共に、形成された気泡は凹部の形状に沿って残留しやすくなる。この結果、凹部において弾性の高い気泡が保持されやすくなるため、当該気泡によってリザーバ内の圧力の緩和を効果的に行うことができる。また、リザーバの壁部に凹部を形成する構成は、リザーバの壁部に別部材を取り付ける構成に比べてはるかに容易に実現することができる。これにより、容易に形成することができ、リザーバ内の圧力の変化を効果的に緩和することができる流体噴射ヘッドを得ることができる。
【0008】
上記の流体噴射ヘッドは、前記凹部の寸法が、当該凹部の深さ方向に徐々に小さくなっていることを特徴とする。
本発明によれば、凹部の寸法が、当該凹部の深さ方向に徐々に小さくなっていることとしたので、当該凹部において球形の気泡を一層保持しやすくなる。
【0009】
上記の流体噴射ヘッドは、前記凹部は、平面視で丸みを帯びた形状になっていることを特徴とする。
本発明によれば、凹部が平面視で丸みを帯びた形状になっていることとしたので、当該凹部において球形の気泡を一層保持しやすくなる。
【0010】
上記の流体噴射ヘッドは、前記凹部は、前記壁部のうち前記接続口と同一面に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、凹部が壁部のうち接続口と同一面に設けられていることとしたので、例えば同一面を有する同一部材に接続口と凹部とを形成することができる。これにより、凹部の形成を一層容易にすることができる。
【0011】
上記の流体噴射ヘッドは、前記凹部は、前記壁部のうち前記接続口とは異なる面に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、凹部が壁部のうち接続口とは異なる面に設けられていることとしたので、凹部の位置に関する設計の幅が広がることになる。
【0012】
上記の流体噴射ヘッドは、前記凹部の表面には、前記流体を構成する液状体に対して撥液性を有する撥液層が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、凹部の表面には、流体を構成する液状体に対して撥液性を有する撥液層が設けられていることとしたので、当該凹部に流体が入り込むのを抑制することができる。これにより、当該凹部に気泡を形成しやすくすることができる。
【0013】
上記の流体噴射ヘッドは、前記ノズル開口は複数設けられており、前記接続口は複数の前記ノズル開口に一対一で接続されるように複数設けられており、前記凹部は、前記壁部のうち複数の前記接続口に近接する領域に設けられていることを特徴とする。
ノズル開口が複数設けられる場合、一のノズル開口からの噴射によって発生するリザーバ内の圧力変化が他のノズル開口の噴射圧に悪影響を及ぼすことがある。これに対して、本発明によれば、ノズル開口が複数設けられており、接続口が複数のノズル開口に一対一で接続されるように複数設けられており、凹部が壁部のうち複数の接続口に近接する領域に設けられていることとしたので、ノズル開口が複数設けられる場合において、一のノズル開口からの噴射によっても他のノズル開口の噴射圧に悪影響を及ぼすのを効果的に防ぐことができる。
【0014】
本発明に係る流体噴射装置は、媒体に流体を噴射する流体噴射ヘッドを備える流体噴射装置であって、前記流体噴射ヘッドとして、上記の流体噴射ヘッドを用いることを特徴とする。
本発明によれば、容易に形成することができ、リザーバ内の圧力を効果的に緩和することができる流体噴射ヘッドを用いることとしたので、噴射精度の高い流体噴射装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、本発明に係る液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、プリンタ1という)を例示する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るプリンタ1の概略構成を示す一部分解図である。
プリンタ1は、プリンタ本体5と、サブタンク2及び記録ヘッド3を搭載したキャリッジ4とを有している。
【0017】
プリンタ本体5には、キャリッジ4を往復移動させるキャリッジ移動機構16と、本実施形態における特徴的構成要素であり記録ヘッド3の各ノズルから増粘したインクLを吸引するクリーニング動作等に用いられるキャッピング機構15と、インク供給チューブ14を介して記録ヘッド3に供給するインクLを貯留したインクカートリッジ6とが設けられている。このプリンタ本体5には、記録紙を搬送する不図示の紙送り機構が設けられており、この紙送り機構は紙送りモータやこの紙送りモータによって回転駆動される紙送りローラ(いずれ不図示)等から構成され、記録紙を記録(印字・印刷)動作に連動させてプラテン13の上に順次送り出すようになっている。
【0018】
キャリッジ移動機構16は、プリンタ本体5の幅方向に架設されたガイド軸8と、パルスモータ9と、パルスモータ9の回転軸に接続されてこのパルスモータ9によって回転駆動される駆動プーリー10と、駆動プーリー10とはプリンタ本体5の幅方向の反対側に設けられた遊転プーリー11と、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されてキャリッジ4に接続されたタイミングベルト12を有しており、パルスモータ9を駆動することによってキャリッジ4がガイド軸8に沿って主走査方向に往復移動するようになっている。
【0019】
キャッピング機構15は、プリンタ本体5内のホームポジションに配置されている。このホームポジションは、キャリッジ4の移動範囲内のうち記録領域よりも外側の端部領域であって電源オフ時や長時間に亘って記録(液体噴射処理)が行われなかった場合にキャリッジ4が位置する場所に設定されている。
【0020】
図2は記録ヘッド3の構成を説明する断面図である。
記録ヘッド3は、導入針ユニット20、流路ユニット30及びアクチュエータユニット40を備えている。インクカートリッジ6内のインクLは導入針ユニット20によって記録ヘッド3に導入され、導入されたインクLが流路ユニット30を介してアクチュエータユニット40に流通され、アクチュエータユニット40においてインクLに圧力が加えられ、流路ユニット30からインクLが噴射されるようになっている。
【0021】
導入針ユニット20は、インク導入針21、インク導入管22及びフィルタ23を有している。
インク導入針21は、針先端21aが上記のサブタンク2及びインク供給チューブ14を介してインクカートリッジ6に接続されており、針先端21aからインクカートリッジ6に貯留されたインクLが供給されるようになっている。インク導入針21の拡幅端21bはインク導入管22に接続されている。
【0022】
インク導入管22は、拡幅端22aがインク導入針21の拡幅端21bに接続されており、流路端22bが流路ユニット30に接続されている。
フィルタ23は、インク導入針21の拡幅端21bとインク導入管22の拡幅端22aとの間に介挿されている。インク導入針21、インク導入管22の内部はフィルタ23を介して連通された状態になっている。
【0023】
流路ユニット30は、供給基板31、リザーバ基板32及びノズル基板33を有している。これらの供給基板31、リザーバ基板32及びノズル基板33は、例えばステンレスなどの鋼材によって構成されている。
供給基板31は、導入針ユニット20及びアクチュエータユニット40が固定された基板である。この供給基板31は開口部31a、開口部31b及び開口部31cを有している。各開口部31a、31b及び31cは、それぞれ供給基板31を貫通するように設けられている。
【0024】
開口部31aは、導入針ユニット20のインク導入管22に接続されている。開口部31aの内部はインク導入管22の管内部に連通されている。
開口部31b及び開口部31cは、それぞれ複数設けられており、アクチュエータユニット40に接続されている。開口部31bはアクチュエータユニット40のインクLの入口側に相当し、開口部31cはアクチュエータユニット40のインクLの出口側に相当する。
【0025】
リザーバ基板32は、供給基板31とノズル基板33との間に設けられた基板であり、供給基板31に対して接着層37を介して貼り付けられている。リザーバ基板32は、開口部32a及び開口部32bを有している。開口部32aは平面視で供給基板31に設けられた開口部31a及び31bを含む領域に設けられている。開口部32bは、供給基板31に設けられた開口部31cに平面視で重なる領域に設けられている。したがって、開口部32aの内部と開口部31aの内部と開口部31bの内部とが連通された状態になっており、開口部32cの内部と開口部31cの内部とが連通された状態になっている。
【0026】
ノズル基板33は、内面33bが接着層38を介してリザーバ基板32に貼り付けられた基板であり、外面33aがインクLの噴射面を構成している。ノズル基板33は、開口部33cを有している。開口部33cは、供給基板31の開口部31c及びリザーバ基板32の開口部32bに平面視で含まれる領域に設けられている。開口部33cの内部は外部に連通された状態になっている。
【0027】
アクチュエータユニット40のインクLの出口側、開口部31c、開口部32b及び開口部33cは外部に連通された状態になっている。アクチュエータユニット40の出口側から供給されるインクLは開口部33cを介して外部に噴射されるようになっている。このように、開口部33cはノズル34を構成している。
【0028】
供給基板31の内面31d、リザーバ基板32の開口部32a及びノズル基板33の内面33bで囲まれた空間には、インク導入ユニット20から導入されたインクLが保持されるようになっている。このように、当該空間はリザーバ35を構成しており、当該リザーバ35は、開口部32aの壁面、内面31d及び内面33bから構成される壁部70に囲まれた状態になっている。また、供給基板31の開口部31bは、リザーバ35からアクチュエータユニット40へインクLを供給するインク供給口36を構成している。
【0029】
アクチュエータユニット40は、圧力室基板41、振動板42、アクチュエータ43、フレキシブルケーブル44を有している。
圧力室基板41は、接着層46を介して流路ユニット30の供給基板31に貼り付けられた基板であり、開口部41a、開口部41b及び開口部41cを有している。
【0030】
開口部41aは、平面視で供給基板31の開口部31b及び開口部31cを含む領域に設けられている。開口部41aは、圧力室基板41の厚さ方向(図中上下方向)の途中までの深さで設けられている。
【0031】
開口部41bは、平面視で供給基板31の開口部31bを含む領域に設けられており、開口部41aの内部に設けられている。開口部41cは供給基板31の開口部31cに平面視で重なる位置に設けられており、開口部41aの内部に設けられている。開口部41aと開口部41bとが連通された状態になっており、開口部41aと開口部41cとが連通された状態になっている。
【0032】
開口部41aは圧力室45を構成している。圧力室45は、開口部41c及びインク供給口34を介してリザーバ35に接続されており、開口部41c、開口部31c及び開口部32bを介してノズル孔36に接続されている。
【0033】
振動板42は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材である。この振動板42は、アクチュエータ43の変形に応じて弾性フィルムが弾性変形するようになっている。アクチュエータ43は、フレキシブルケーブル44からの駆動信号によって変形するようになっている。
【0034】
この記録ヘッド3において、インクLはインク流路(流通経路)Cを流通して圧力室45に供給されるようになっている。また、フレキシブルケーブル44を通じて駆動信号がアクチュエータ43に供給され、アクチュエータ43が変形し、振動板42が圧力室45に近接する方向或いは離隔する方向に移動するようになっている。圧力室45の移動によって当該圧力室45の容積が変化し、圧力室45内のインクLに圧力変動が生じ、この圧力変動によってノズル孔36からインク滴Dが吐出されるようになっている。
【0035】
供給基板31の外面31dには、凹部50が設けられている。凹部50は、インク供給口34の近傍に配置されており、図3に示すように、インク供給口34を基準として平面視で開口部31aとは反対側の領域に配置されている。当該凹部50は供給基板31を形成する際に当該供給基板31の外面31dをハーフエッチングするなどして形成される。
【0036】
凹部50は、深さ方向に徐々に寸法が小さくなるように設けられており、凹部50の表面にはインクに対して撥液性を有する材料からなる撥液層50aが設けられている。また、図3に示すように、凹部50は、複数のインク供給口34の配列に沿って設けられており、図3中の上下方向端部においては平面視で丸みを帯びた形状になっている。
【0037】
上記の記録ヘッド3において、ノズル開口36からのインクの噴射を行う際には、図4に示すように、開口部31aを介してリザーバ35内にインクLが供給され、リザーバ35内に供給されたインクLはインク供給口34を介して圧力室45内に供給される。リザーバ35のうち上記のインクLの流通経路Cから外れた部分51では、インクの流通が停滞しやすくなる。フレキシブルケーブル44を通じて駆動信号がアクチュエータ43に供給され、アクチュエータ43が変形し、振動板42が圧力室45に近接する方向或いは離隔する方向に移動する。この動作によって圧力室45の容積が変化し、圧力室45内のインクLに圧力変動が生じ、この圧力変動によってノズル孔36からインク滴Dが吐出される。
【0038】
このとき、図4に示すように、リザーバ35内のうちインクの流通経路Cから外れた部分51では撥液層50aによってインクLの流通が抑制され、凹部50の設けられる範囲において気泡60が形成される。圧力室45内のインクLに加えられる圧力はインク供給口34を介してリザーバ35内のインクLにも加えられる。リザーバ35内に圧力が加えられる場合、当該圧力は気泡60によって吸収され、リザーバ35内の圧力変化が緩和されることになる。このように気泡60は、ダンパとしてリザーバ35内の圧力変化を緩和させるように機能する。
【0039】
本実施形態によれば、リザーバ35の壁部70のうちリザーバ35内を流通するインクの流通経路Cから外れた部分51では、インクの流通が淀みやすくなっている。本発明によれば、リザーバ35の壁部のうちインクの流通が淀みやすい部分51に凹部50が設けられていることとしたので、当該凹部50では気泡60が形成されやすくなると共に、形成された気泡60は凹部50の形状に沿って残留しやすくなる。この結果、凹部50において弾性の高い気泡60が保持されやすくなるため、当該気泡60によってリザーバ35内の圧力の緩和を効果的に行うことができる。また、リザーバ35の壁部70に凹部50を形成する構成は、リザーバ35の壁部70に別部材を取り付ける構成に比べてはるかに容易に実現することができる。これにより、容易に形成することができ、リザーバ35内の圧力の変化を効果的に緩和することができる記録ヘッド3を得ることができる。
【0040】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、凹部50の表面に撥液層50aを設ける構成としたが、凹部50の表面のみならず、ノズル基板33上のうち凹部50に平面視で重なる位置に撥液層を設ける構成であっても構わない。この構成により、気泡60を形成しやすくすることができる。
【0041】
また、上記実施形態では、リザーバ35の壁部70のうちインク供給口34と同一の面(供給基板31の外面31d)に凹部50を形成する構成としたが、これに限られることは無く、図5〜図7に示すように、インク供給口34とは異なる面に凹部を設ける構成であっても構わない。以下に示す構成のように、凹部の位置に関しては幅広い設計が可能である。なお、図5〜図7は、流路ユニット30の構成を示す断面図である。
【0042】
図5では、壁部70のうちノズル基板33側の面に凹部52を配置した構成を示している。同図では、ノズル基板33とリザーバ基板32との間に凹部基板61が設けられ、当該凹部基板61上のうち平面視で凹部50に重なる位置に凹部52が設けられた構成になっている。凹部52の寸法は凹部50の寸法と同一になっており、凹部52の表面には撥液層52aが設けられている。この構成によれば、凹部50と凹部52とが平面視で重なる位置に対向して配置されているため、気泡60を保持する凹部の形状を、球形である気泡60の形状に沿った形状とすることができる。このため、より確実に気泡60を保持することが可能となる。なお、図5に示す構成においては、凹部52の形成時に凹部基板61をハーフエッチングする構成のみならず、当該凹部52が凹部基板61を貫通するように形成された構成としても構わない。
【0043】
図6では、リザーバ基板32の開口部32aの壁面を基板面に対して傾けて形成した構成、すなわち、ノズル基板33から供給基板31に近づくにつれて開口が徐々に広くなるように開口部32aが形成された構成を示している。同図においては、当該傾けて形成された開口部32aの壁面と供給基板31とで挟まれた空間が凹部53となる。
【0044】
また、図6に示す流路ユニット30では、リザーバ基板32の両面に配置した接着層37、接着層38が、インクに対して撥液性を有する材料によって構成されており、接着層37については開口部32aの開口部に露出するように設けられている。この接着層37は、凹部53上に設けられる撥液層として機能することになる。
【0045】
図6に示す構成においては、開口部32aの傾斜部分と供給基板31側の接着層37との間に気泡60が発生し、当該気泡60はこれらに挟まれるように保持されることとなる。なお、開口部32aの傾斜については、図7とは逆に供給基板31からノズル基板33に近づくにつれて開口部の寸法が徐々に大きくなるような構成であっても構わない。
【0046】
図7では、リザーバ基板32が第1基板32cと第2基板32dとが接着層32eによって貼り付けられた構成になっている。また、第1基板32cは接着層37を介して供給基板31に貼り付けられ、第2基板32dは接着層38を介してノズル基板33に貼り付けられた構成になっている。同図では、第1基板32cに設けられる開口部32fの寸法の方が第2基板32dに設けられる開口部32gの寸法よりも大きくなっており、供給基板31を貼り付けた状態においては、当該第1基板32cの開口部32fの壁面が第2基板32dの開口部32gの壁面に対して凹んだ状態になっている。同図では、この凹んだ部分を凹部54としている。また、第1基板32cと第2基板32dとを接着する接着層32e、リザーバ基板32と供給基板31とを接着する接着層37が当該第1基板32cの貫通孔に露出した状態になっている。当該接着層32e、接着層37はインクに対して撥液性を有する材料からなる。
【0047】
図7に示す構成においては、第1基板32cの開口部32f、接着層32e及び接着層37によって囲まれる部分に気泡60が発生し、当該気泡60はこれらの間に保持されることとなる。なお、第1基板32cの開口部32fの寸法よりも第2基板32dの開口部32gの寸法の方を大きくし、凹部54を第2基板32d側に形成する構成であっても構わない。
【0048】
また、上記実施形態では、平面視でインク供給口34の配列方向に沿って凹部50を一体的に設ける構成としたが、これに限られることは無く、例えば図8及び図9に示すように、インク供給口34の配列方向に沿って凹部(55、56)を複数設ける構成としても構わない。
【0049】
この場合、図8に示すように、凹部55の形状を平面視で丸みを帯びた形状にしても良いし、図9に示すように、凹部56の形状を平面視で円形としても構わない。これらの構成においては、凹部55、56の形状を平面視でも丸みを帯びさせることにより、球形である気泡60の形状に沿って当該気泡60を保持することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式記録装置に具体化したが、これに限られることは無く、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【0051】
また、凹部の構成については、上記にて説明した各構成に限られるものではなく、例えば上記各構成にて示した位置を複数組み合わせるように凹部を形成する構成であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの概略構成図。
【図2】記録ヘッドの構成を示す断面図。
【図3】リザーバ基板の構成を示す平面図。
【図4】流路ユニットの構成を示す断面図。
【図5】本発明に係る流路ユニットの他の構成を示す断面図。
【図6】本発明に係る流路ユニットの他の構成を示す断面図。
【図7】本発明に係る流路ユニットの他の構成を示す断面図。
【図8】本発明に係る流路ユニットの他の構成を示す平面図。
【図9】本発明に係る流路ユニットの他の構成を示す平面図。
【符号の説明】
【0053】
1…プリンタ(流体噴射装置) 3…記録ヘッド(流体噴射ヘッド) 31…供給基板 32…リザーバ基板 33…ノズル基板 34…インク供給口(接続口) 35…リザーバ 36…ノズル開口 50、52〜56…凹部 70(31d、32a、33b)…壁部 C…流通経路 L…インク(流体) D…インク滴(流体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部に囲まれ、流体の供給源に接続され、前記流体を保持するリザーバと、
前記リザーバに接続され、前記流体を噴射するノズル開口と、
を備え、前記リザーバから前記ノズル開口へ前記流体を流通させると共に前記流体に圧力を加えることで前記ノズル開口から前記流体を噴射する流体噴射ヘッドであって、
前記壁部は、
前記リザーバと前記ノズル開口とを接続する接続口と、
前記接続口に近接した位置であって前記リザーバ内を流通する前記流体の流通経路から外れた位置に設けられた凹部とを有する
ことを特徴とする流体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記凹部の寸法が、当該凹部の深さ方向に徐々に小さくなっている
ことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記凹部は、平面視で丸みを帯びた形状になっている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記凹部は、前記壁部のうち前記接続口と同一面に設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記凹部は、前記壁部のうち前記接続口とは異なる面に設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記凹部の表面には、前記流体を構成する液状体に対して撥液性を有する撥液層が設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の流体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記ノズル開口は複数設けられており、
前記接続口は複数の前記ノズル開口に一対一で接続されるように複数設けられており、
前記凹部は、前記壁部のうち複数の前記接続口に近接する領域に設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の流体噴射ヘッド。
【請求項8】
媒体に流体を噴射する流体噴射ヘッドを備える流体噴射装置であって、
前記流体噴射ヘッドとして、請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の流体噴射ヘッドを用いることを特徴とする流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−255316(P2009−255316A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104409(P2008−104409)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】