説明

流体圧機器用プラグ部材

【課題】 プラグ部材を取り外したときに、貫通孔から作動油が排出されることを抑制することができる流体圧機器用プラグ部材を提供すること。
【解決手段】 流体圧機器用プラグ部材を、一端側から流体圧機器の開口部内に挿入される被挿入部と、被挿入部の他端側に設けられ、流体圧機器内の流体を吸収する吸収機構とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧機器用プラグ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報には、パワーステアリング装置のバルブハウジングに、配管を接続する接続部が形成され、接続部内の貫通孔にプラグ部材が挿入されたものが開示されている。このプラグ部材は、プラグ本体外周を貫通孔内周のシール面に密着させて貫通孔を封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−63112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、プラグ部材を貫通孔に装着している状態では、バルブハウジング内部の作動油の漏洩は防止されるが、プラグ部材を取り外したときに、プラグ部材付近に溜まっていた作動油が貫通孔から排出されるおそれがある。そのため、排出された作動油を回収する必要があり、この回収作業が繁雑となる問題があった。
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、プラグ部材を取り外したときに、貫通孔から作動油が排出されることを抑制することができる流体圧機器用プラグ部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本願発明では、流体圧機器用プラグ部材を、一端側から流体圧機器の開口部内に挿入される被挿入部と、被挿入部の他端側に設けられ、流体圧機器内の流体を吸収する吸収機構とから構成した。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、プラグ部材を取り外したときに、貫通孔から作動油が排出されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1のパワーステアリング装置の全体図である。
【図2】実施例1のバルブハウジング部分の拡大図である。
【図3】実施例1の接続部およびプラグ部材を示す図である。
【図4】実施例2の接続部およびプラグ部材を示す図である。
【図5】実施例3の接続部およびプラグ部材を示す図である。
【図6】他の実施例の接続部およびプラグ部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施例1〕
[全体構成]
図1はパワーステアリング装置20の全体図である。図2はバルブハウジング5部分の拡大図である。
パワーステアリング装置20は、図1に示すように、両端側にタイロッド1を介して図外の転舵輪に連繋するラック軸を内部に収容したラックハウジング2と、ラックハウジング2の一端側に設けられ、内部に油圧室が形成された油圧パワーシリンダ3と、ラックハウジング2の他端側に設けられ、ラックハウジング2にボルト4を介して接続されたバルブハウジング5と、バルブハウジング5の内部に設けられ、油圧パワーシリンダ3の油圧室に供給される作動油の流量を制御する図外のコントロールバルブと、コントロールバルブの内部に一端側が設けられ、他端側が図外のステアリングホイールに連繋される入力軸6とから構成されている。
油圧パワーシリンダ3は、ラックハウジング2内にラック軸と同軸上に連結されたピストンロッドが挿通配置されていると共に、ピストンロッドに固定されたピストンによって油圧パワーシリンダ3内が左右の油圧室に隔成されている。
バルブハウジング5は、図2に示すように、ほぼ筒状に形成され外周には油圧パワーシリンダ3の各油圧室と連通する配管7,8が接続されていると共に、コントロールバルブに作動油を供給する図外の油圧ポンプに連通する配管が接続される接続部9が設けられている。さらに、油圧ポンプのリザーバタンクに連通する配管を接続するドレンポート10が設けられている。
【0009】
[接続部およびプラグ部材の詳細]
図3は接続部9およびプラグ部材14を示す図である。図3(a)は接続部9およびプラグ部材14の断面図であり、図3(b)はプラグ部材14を他方側(接続部9の開口側)から見た図である。
接続部9の内部には貫通孔11が形成されている。この貫通孔11は、バルブハウジング5内部から連通するポート部13と、ポート部13より大径に形成され外部に開口するプラグ挿入部12から構成されている。
プラグ部材14は、プラグ挿入部12に挿入される被挿入部15と、被挿入部15の他端側に設けられた吸収機構16とから形成されている。被挿入部15と吸収機構16には、被挿入部15の一端側に開口し、吸収機構16まで連通する連通孔17が形成されている。
被挿入部15と吸収機構16は多孔質材料によって一体に形成されており、作動油を吸収可能にしている。被挿入部15の外周には、別体に形成された筒状部18が設けられている。この筒状部18は、被挿入部15よりも剛性が高い材料で形成されている。筒状部18の端部から径方向に延出した持ち手部19が形成されている。この持ち手部19は、筒状部18と一体に形成されている。
【0010】
[作用]
完成した流体圧機器は、実際に作動油を供給して作動テストを行う必要がある。テスト終了後は内部の作動油を排出するが、作動油を完全に排出することは困難であるし、内部腐食の防止のためにもある程度作動油を残しておいた方が好ましい。しかし、内部に作動油を残した状態で流体圧機器を搬送すると、作動油を給排出する開口部から作動油が漏れることがある。そこで従来から、開口部にプラグ部材を挿入して開口部を封止していた。しかし、プラグ部材により搬送中に作動油が漏れることはないものの、搬送先でプラグ部材を取り外すとプラグ部材付近に溜まっていた作動油が流体圧機器から漏れるおそれがあった。
そこで実施例1では、プラグ部材14を、接続部9の貫通孔11(プラグ挿入部12)に挿入される被挿入部15と、パワーステアリング装置20の作動油を吸収する吸収機構16とを設けた。
接続部9の貫通孔11にプラグ部材14が挿入されているときには、プラグ部材14付近に流れてきた作動油は、吸収機構16によって吸収される。よって、貫通孔11のプラグ部材14付近に作動油が溜まることを抑制し、プラグ部材14を取り外したときに作動油がパワーステアリング装置20から漏れることを抑制することができる。
また実施例1では、吸収機構16を多孔質材料により形成した。
多孔質材料は多数の小穴が空いているため、毛細管現象により吸収機構16内部に作動油を保持することができる。
また実施例1では、被挿入部156には、被挿入部15の一端側に開口し吸収機構16まで連通する連通孔17が形成されている。
よって、連通孔17により作動油を吸収機構16に速やかに導くことができ、貫通孔11のプラグ部材14付近に作動油が溜まることを抑制し、プラグ部材14を取り外したときに作動油がパワーステアリング装置20から漏れることを抑制することができる。
また実施例1では、被挿入部15を吸収機構16と一体に多孔質材料で形成することとした。
よって、被挿入部15内部にも作動油を保持することができる。
また実施例1では、多孔質材料で形成された被挿入部15の外周に、被挿入部15よりも剛性の高い筒状部18を設けることとした。
多孔質材料で形成された被挿入部15を直接プラグ挿入部12に挿入しようとすると、被挿入部15が過度に変形し、挿入性及び脱離性が悪化するおそれがある。被挿入部15の外周に筒状部18を設けることで挿入性及び脱離性を高めることができる。
また実施例1では、筒状部18の径方向に延設された持ち手部19を設けた。
プラグ部材14を取り外すときに吸収機構16を摘むと、吸収機構16が潰れて内部の作動油が漏れるおそれがある。プラグ部材14を取り外すときに持ち手部19を持って作業を行うことにより作動油が漏れることを抑制することができる。
【0011】
[効果]
実施例1の効果について以下に列記する。
(1) 内部に作動油を収容するパワーステアリング装置20(流体圧機器)の接続部9の貫通孔11(開口部)を封止するプラグ部材14(流体圧機器用プラグ部材)であって、一端側からパワーステアリング装置20の接続部9の貫通孔11内に挿入される被挿入部15と、被挿入部15の他端側に設けられ、パワーステアリング装置20内の作動油を吸収する吸収機構16とを設けた。
よって、貫通孔11のプラグ部材14付近に作動油が溜まることを抑制し、プラグ部材14を取り外したときに作動油がパワーステアリング装置20から漏れることを抑制することができる。
(2) 吸収機構16は、多孔質材料によって形成されることとした。
よって、毛細管現象により吸収機構16内部に作動油を保持することができる。
(3) 被挿入部15に、吸収機構16と連通する連通孔17を設けた。
よって、連通孔17により作動油を吸収機構16に速やかに導くことができ、貫通孔11のプラグ部材14付近に作動油が溜まることを抑制し、プラグ部材14を取り外したときに作動油がパワーステアリング装置20から漏れることを抑制することができる。
(4) 被挿入部15は、吸収機構16と一体に多孔質材料によって形成され、被挿入部15の外周側に設けられ、被挿入部15よりも剛性の高い材料で形成され、筒形状を有する筒状部18を更に設けた。
よって、被挿入部15の挿入性及び脱離性を高めることができる。
(5) 筒状部18は、径方向に延設された持ち手部19を更に設けた。
よって、プラグ部材14を取り外すときに、作動油が漏れることを抑制することができる。
【0012】
〔実施例2〕
[接続部およびプラグ部材の詳細]
図4は接続部9およびプラグ部材14を示す図である。図4(a)は接続部9およびプラグ部材14の断面図であり、図4(b)はプラグ部材14を他方側(接続部9の開口側)から見た図である。
接続部9の内部には貫通孔11が形成されている。この貫通孔11は、バルブハウジング5内部から連通するポート部13と、ポート部13より大径に形成され外部に開口するプラグ挿入部12から構成されている。
プラグ部材14は、プラグ挿入部12に挿入される被挿入部15と、被挿入部15の他端側に設けられた吸収機構16とから形成されている。被挿入部15と吸収機構16には、被挿入部15の一端側に開口し、吸収機構16まで連通する連通孔17が形成されている。
被挿入部15と吸収機構16は多孔質材料によって一体に形成されており、作動油を吸収可能にしている。吸収機構16が外側には液密性を有するカバー部材21が設けられている。
【0013】
[作用]
吸収機構16は多孔質材料によって形成されるため、大量の作動油を吸収すると外部に作動油が漏れ出すおそれがあった。
そこで実施例2では、吸収機構16の外側に液密性を有するカバー部材21をもうけることとした。
よって、吸収機構16の外側にまで達した作動油が外部に漏れ出すことを抑制することができる。
【0014】
[効果]
実施例2の効果について述べる。
(6) 吸収機構16の外側に設けられ、液密性を有するカバー部材21を更に有することとした。
よって、吸収機構16の外側にまで達した作動油が外部に漏れ出すことを抑制することができる。
【0015】
〔実施例3〕
[接続部およびプラグ部材の詳細]
図5は接続部9およびプラグ部材14を示す図である。図5(a)は接続部9およびプラグ部材14の断面図であり、図5(b)はプラグ部材14を他方側(接続部9の開口側)から見た図である。
接続部9の内部には貫通孔11が形成されている。この貫通孔11は、バルブハウジング5内部から連通するポート部13と、ポート部13より大径に形成され外部に開口するプラグ挿入部12から構成されている。
プラグ部材14は、プラグ挿入部12に挿入される被挿入部23と、被挿入部23の他端側に設けられた一方向弁24と、一方向弁24と連通する貯留部22とから形成されている。被挿入部23は有底カップ状に形成され、開口部が貫通孔11に向けて挿入されている。被挿入部23の底部に一方向弁24が形成されている。一方向弁24は、被挿入部23から貯留部22に向かう作動油の流れを許容し、逆方向の作動油の流れを禁止している。貯留部22は一方側が開口し他方側は閉塞した形状に形成され、内部に十分に作動油を貯留可能な体積の中空部を有している。一方向弁24と貯留部22により吸収機構16を形成している。被挿入部23の底部には径方向に延出した持ち手部25が形成されている。
【0016】
[作用]
貫通孔11からプラグ部材14に向かう作動油は、被挿入部23から一方向弁24を通って貯留部22に流入する。貯留部22に流入した作動油は、一方向弁24によって貫通孔11への逆流が抑制され、プラグ部材14を取り外したときに作動油がパワーステアリング装置20から漏れることを抑制することができる。
【0017】
[効果]
実施例3の効果について述べる。
(7) 吸収機構16は、流体を貯留する貯留部22と、被挿入部23と貯留部22の間に設けられ、被挿入部23側から貯留部22側への流体の流れを許容する一方向弁24とから構成することとした。
よって、一方向弁24により貫通孔11への逆流が抑制され、プラグ部材14を取り外したときに作動油がパワーステアリング装置20から漏れることを抑制することができる。
【0018】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施例1ないし実施例3に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
図6は他の実施例における接続部9およびプラグ部材14を示す図である。図6(a)は接続部9およびプラグ部材14の断面図であり、図6(b)はプラグ部材14を他方側(接続部9の開口側)から見た図である。例えば、実施例1では、被挿入部15の外周には筒状部18が設けられているが、用いている多孔質材料の剛性が比較的高い場合には図6に示すように筒状部を設けなくとも良い。また実施例1では、持ち手部19が形成されているが、図6に示すように持ち手部も設けなくとも良い。
また実施例1ないし実施例3では、パワーステアリング装置20の接続部9にプラグ部材14を設けているが、パワーステアリング装置20に作動油を給排出する他の部位にプラグ部材を設けても良い。またパワーステアリング装置20に限らず、作動油が内部に残留した状態で搬送されるような流体圧機器であれば他の装置でも良い。
【0019】
〔請求項以外の技術的思想〕
更に、上記実施例から把握しうる請求項以外の技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
(イ)請求項2に記載の流体圧機器用プラグ部材において、
前記被挿入部は、前記吸収機構と一体に多孔質材料によって形成され、
前記被挿入部の外周側に設けられ、前記被挿入部よりも剛性の高い材料で形成され、筒形状を有する筒状部を更に有することを特徴とする流体圧機器用プラグ部材。
よって、被挿入部の挿入性及び脱離性を高めることができる。
(ロ)上記(イ)に記載の流体圧機器用プラグ部材において、
前記筒状部は、径方向に延設された持ち手部を更に有することを特徴とする流体圧機器用プラグ部材。
よって、流体圧機器用プラグ部材を取り外すときに、作動油が漏れることを抑制することができる。
(ハ)請求項2に記載の流体圧機器用プラグ部材は、
前記吸収機構の外側に設けられ、液密性を有するカバー部材を更に有することを特徴とする流体圧機器用プラグ部材。
よって、吸収機構の外側にまで達した作動油が外部に漏れ出すことを抑制することができる。
(ニ)請求項1に記載の流体圧機器用プラグ部材において、
前記吸収機構は、
流体を貯留する貯留部と、
前記被挿入部と前記貯留部の間に設けられ、前記被挿入部側から前記貯留部側への流体の流れを許容する一方向弁と、
から構成されることを特徴とする流体圧機器用プラグ部材。
よって、一方向弁により貫通孔への逆流が抑制され、プラグ部材を取り外したときに作動油がパワーステアリング装置から漏れることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0020】
9 接続部
11 貫通孔
12 プラグ挿入部
13 ポート部
14 プラグ部材
15 被挿入部
16 吸収機構
17 連通孔
18 筒状部
19 持ち手部
20 パワーステアリング装置
21 カバー部材
22 貯留部
23 被挿入部
24 一方向弁
25 持ち手部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体を収容する流体圧機器の開口部を封止する流体圧機器用プラグ部材であって、
一端側から前記流体圧機器の開口部内に挿入される被挿入部と、
前記被挿入部の他端側に設けられ、流体圧機器内の流体を吸収する吸収機構と、
を有することを特徴とする流体圧機器用プラグ部材。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧機器用プラグ部材において、
前記吸収機構は、多孔質材料によって形成されることを特徴とする流体圧機器用プラグ部材。
【請求項3】
請求項2に記載の流体圧機器用プラグ部材において、
前記被挿入部は、前記吸収機構と連通する連通孔を有することを特徴とする流体圧機器用プラグ部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−44403(P2013−44403A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183222(P2011−183222)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(301041449)日立オートモティブシステムズステアリング株式会社 (44)
【Fターム(参考)】