説明

流体投与装置用の投与ヘッド

流体を格納する貯蔵器(10)に組み付けられ、ポンプまたはバルブから成るディスペンサ部材(20)を駆動して、前記流体を選択的に投与するように作られた流体投与ヘッド(40)であって、前記流体投与ヘッド(40)は、投与開口部(41)を有し、さらに、殺菌剤および静菌剤の一方または両方を含んだ薄膜(50)を有し、前記薄膜(50)は前記投与開口部(41)の近傍に配置されている、という流体投与ヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体投与ヘッド、および、当該流体投与ヘッドを有する流体投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬の分野では、特に投与ヘッドからの投与中の流体汚染を抑制する目的で、投与中の流体が接触する特定の面に殺菌剤および/または静菌剤を用いることが知られている。そして、こうした殺菌剤および/または静菌剤を、流体の放出流路の全体または一部に用いることが提案されている。当該放出流路は、浸漬管(dip tube)の入口から、ポンプ内を通って投与ヘッドの中(具体的には流体が投与される投与開口部)まで延びる。さらに、いくつかの装置では、投与ヘッド内、投与開口部の上流側直近位置にシャッタが配置される。こうした装置では、使用のたびに、投与開口部の下流側(特に、投与ヘッドの壁によって開口部の出口に形成される小さな窪み)に残留液滴が残る場合がある。残留液滴は特に汚染されやすく、従って、装置の次回使用時に、次回投与分の流体が汚染される危険が特に生じやすい。加えて、鼻用投与ヘッドは、噴霧実行中はユーザの鼻に挿入されるため、前記投与ヘッドの表面の大部分は鼻の内壁と接触することとなり、そのために汚染される場合もある。投与ヘッドの製造に用いるプラスチック材料に静菌特性または殺菌特性を持たせるための試みは、数多くなされてきた。そうした解決法の中には、銀塩(またはその類似物)などの静菌剤を混ぜ込んだプラスチック材料から成形するという手法や、表面処理を施す手法がある。表面処理とは、具体的には、成形後に殺菌剤を含んだ層でコーティングすることである。しかし、残念ながら、真に満足のいく解決法は現在のところ存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】仏国特許発明第2 736 285号明細書
【特許文献2】米国特許第6 264 936号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した問題の生じない投与ヘッドと当該投与ヘッドを有する流体投与装置とを提供することを目的とする。
より具体的に言えば、本発明は、毎回の駆動後に投与開口部出口に残る可能性のある残留液滴について効果的な汚染除去が可能な投与ヘッドを提供することを目的とする。
また、本発明は、ユーザの鼻に挿入されている間に汚染されるおそれのある表面の効果的な汚染除去が可能な鼻用投与ヘッドを提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、投与ヘッドの製造に従来用いられるプラスチック材料の変更が不要な投与ヘッドを提供することを目的とする。
また、本発明は、製造および組立が簡単かつ安価である投与ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、流体を格納する貯蔵器に組み付けられ、ポンプまたはバルブから成るディスペンサ部材を駆動して、前記流体を選択的に投与するように作られた流体投与ヘッドであって、投与開口部を有し、さらに、殺菌剤および静菌剤の一方または両方を含んだ薄膜を有し、前記薄膜は前記投与開口部の近傍に配置されている、という流体投与ヘッドを提供する。
【発明の効果】
【0007】
また、効果的な構成として、前記薄膜は押出成形シートであること、とする。
また、効果的な構成として、前記薄膜の厚みは1mm未満であり、0.5mm未満が効果的であること、とする。
また、効果的な構成として、前記流体投与ヘッドは、ユーザの鼻孔に挿入される鼻用投与ヘッドであること、とする。
【0008】
また、効果的な構成として、前記薄膜は、前記流体投与ヘッドの外面のうち、少なくとも鼻孔に挿入される部分を覆っていること、とする。
また、効果的な構成として、前記投与ヘッドは前記薄膜に重ねて型成形されること、とする。
また、効果的な構成として、前記薄膜は、前記投与開口部の外側および内側の両方または一方において、高温積層法、締め嵌め法、熱シール法、接着接合法の少なくとも1つの方法によって、前記流体投与ヘッドに固定されていること、とする。
【0009】
また、効果的な構成として、前記薄膜は、ディスク形状をしており、中央に孔を有すること、とする。
また、効果的な構成として、前記薄膜に投与開口部が形成されていること、とする。
また、本発明は更に、流体を格納する貯蔵器と、前記貯蔵器に設置された、ポンプまたはバルブから成るディスペンサ部材とを有し、更に、上述した構成の流体投与ヘッドとを有する、という流体投与装置を提供する。
【0010】
本発明に関する上記の特徴および効果、そして、その他の特徴および効果は、非限定的な例についての以下の詳細な説明を、添付図面を参照しながら読むことで、更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用された流体投与装置の概略的な断面図である。
【図2】本発明の効果的な実施の形態における投与ヘッドの一部を詳細に示す概略図である。
【図3】本発明の別の実施の形態における投与ヘッドの概略図である。
【図4】図3の詳細を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
投与対象の流体と接触する表面の消毒(disinfectant)処理を行う目的で長年使われてきた技術としては、具体的には、プラスチック材料に殺菌剤および/または静菌剤を混ぜ込む技術、あるいは、成形後の表面に殺菌剤および/または静菌剤をコーティングする技術があるが、これらは不充分であることが分かった。本発明者らの研究により、殺菌剤および/または静菌剤が最大の効果を発揮するのは、薄膜に含まれている場合であり、その場合の薄膜の厚みは、通常十分の数ミリメートル(mm)であり、具体的には1mm未満であり、0.5mm未満が好ましい、ということが明らかになった。また、本発明者らの実験により、この種の厚みの小さいプラスチック薄膜に消毒用処理を施した場合、厚みがより厚い面に用いた場合に比べて、殺菌剤および/または静菌剤の効果は相当に大きくなることが明らかになった(通常の流体投与装置の噴霧ヘッドの面は厚い)。
【0013】
そこで、本発明は、少なくとも投与ヘッド40の投与開口部41の近傍に、殺菌剤および/または静菌剤を含む薄膜50を有する構成となっている。通常、こうした投与ヘッド40は、図1、3に概略的に示すような鼻用投与ヘッドであり、投与対象の流体を格納した貯蔵器10に固定されたポンプまたはバルブ20(ディスペンサ部材)に取り付けられている。ポンプまたはバルブ20は、例えば、固定用リング30によって貯蔵器10のネック部11に固定されている。投与ヘッド40は通常、軸方向の投与開口部41を有し、当該投与開口部41は、ユーザの鼻孔に挿入される軸方向伸長部の下流側端部に設けられる。前記投与ヘッド40の内部には放出流路42が形成されている。また、前記放出流路42内には内部ノズル(または内部挿入物)45が設置されている。それによって内部のデッドボリュームが小さくなり、狭い放出流路が実現されるため、投与開口部41からの適正な流体噴霧が保証される。また、従来と同じ構成として、投与開口部41の上流側直近位置で、投与ヘッド40の端部にスプレープロフィール(噴霧器)(図示せず)を設けることにしてもよい。
【0014】
図2は本発明の実施の形態を示し、当該実施の形態では、殺菌剤および/または静菌剤を含む薄膜50が投与開口部41に配置されている。図2の実施の形態では、前記薄膜50を囲む形で投与ヘッド40が成形されている。前記薄膜50は、中央に孔を有する形状に押出成形されたディスク状薄膜の形で作られている。この実施の形態では、投与開口部41は薄膜50に形成されている。こうした構成では、前記投与開口部41の外側に残留液滴Gが残る場合、当該残留液滴Gは薄膜50に接するため、前記薄膜50に含まれる殺菌剤および/または静菌剤が前記残留液滴に効果的に作用し、その結果、次回投与分の流体の汚染は抑制される。言うまでもなく、図2に示す実施の形態は単なる一例であり、他の例も考えられるであろう。例えば、ディスク状薄膜は、殺菌剤および/または静菌剤を含んだ堅いプレートから形成することが可能であろう。
【0015】
図3、4は、本発明の別の実施の形態を示す。本実施の形態では、薄膜50が投与ヘッドの外面を覆っている。図3に示すように、薄膜50は、鼻用ヘッドのうち少なくとも、ユーザの鼻孔に挿入される部分(すなわち、端部に投与開口部41が設けられた軸方向伸長部)を覆っている。先ず薄膜50を適当な型内に配置し、その後、投与ヘッド形成用のプラスチック材料を前記薄膜に対して射出する、という方法で作るのが効果的である。また、変形例として、他の何らかの方法で、薄膜を投与ヘッド上に形成および/または固定することにしてもよい。例えば、高温積層法(hot-deposited)、締め嵌め法(shrink-fitted)、熱シール法、および/または、接着接合法により、投与ヘッドの形状に合わせて、薄膜を形成および/または固定することができる。また、薄膜が前記投与開口部41の内側および外側の両方を覆う構成としてもよいが、必須ではない。殺菌剤および/または静菌剤を含ませた薄膜を、投与ヘッド40の投与開口部41部分に形成または固定する手段については、上記以外のものも考えられる。本実施の形態の重要な特徴は、毎回の使用後に投与開口部41の出口部分に残留液滴Gが残ったとしても、当該残留液滴Gは上記の殺菌剤および/または静菌剤を含む薄膜と接触することになる、という点である。加えて、鼻用投与ヘッドの場合は、当該鼻用投与ヘッドの外面に付着する鼻孔接触残留物にも対処できる。
【0016】
本発明は更に、流体投与ヘッドの成形に用いるプラスチック材料を変更する必要がないという効果を有する。忘れてはならない点として、医薬の分野における流体投与装置の場合、材料の変更は各国の各種医療機関および保健機関の承認を受ける必要があるため、いかなるものであっても複雑でありコストの上昇を招く。本発明によれば、同じプラスチック材料を使い続けることが可能となり、その一方で、上述したように、残留液滴に効果的に対処できることも保証されている。加えて、流体と殺菌剤および/または静菌剤を含む材料との接触を、実際に必要な個所に限定できるという事実により、投与対象の流体と殺菌剤および/または静菌剤との間で生じる交換(exchange)も制限することができる。一方、従来のように流体放出経路に沿って前記流体と接触する表面の全体または大部分に殺菌剤および/または静菌剤を用いる処理が施された場合には、当該全体または大部分において、こうした交換が生じ得る。
【0017】
以上、本発明について、2つの特定の実施の形態を挙げて説明したが、言うまでもなく、本発明はこれら実施の形態には限定されない。むしろ、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲を逸脱することなしに、これら実施の形態に有用な変更を加えることが可能であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を格納する貯蔵器(10)に組み付けられ、ポンプまたはバルブから成るディスペンサ部材(20)を駆動して、前記流体を選択的に投与するように作られた流体投与ヘッド(40)であって、
前記流体投与ヘッド(40)は、投与開口部(41)を有し、さらに、殺菌剤および静菌剤の一方または両方を含んだ薄膜(50)を有し、
前記薄膜(50)は前記投与開口部(41)の近傍に配置されていること、
を特徴とする前記流体投与ヘッド(40)。
【請求項2】
前記薄膜(50)は押出成形シートであること、
を特徴とする請求項1に記載の流体投与ヘッド。
【請求項3】
前記薄膜(50)の厚みは1mm未満であり、0.5mm未満が効果的であること、
を特徴とする請求項1または2に記載の流体投与ヘッド。
【請求項4】
前記流体投与ヘッド(40)は、ユーザの鼻孔に挿入される鼻用投与ヘッドであること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の流体投与ヘッド。
【請求項5】
前記薄膜(50)は、前記流体投与ヘッド(40)の外面のうち、少なくとも鼻孔に挿入される部分を覆っていること、
を特徴とする請求項4に記載の流体投与ヘッド。
【請求項6】
前記投与ヘッド(40)は前記薄膜(50)に重ねて型成形されること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の流体投与ヘッド。
【請求項7】
前記薄膜(50)は、前記投与開口部(41)の外側および内側の両方または一方において、高温積層法、締め嵌め法、熱シール法、接着接合法の少なくとも1つの方法によって、前記流体投与ヘッド(40)に固定されていること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の流体投与ヘッド。
【請求項8】
前記薄膜(50)は、ディスク形状をしており、中央に孔を有すること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の流体投与ヘッド。
【請求項9】
前記薄膜(50)に投与開口部(41)が形成されていること、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の流体投与ヘッド。
【請求項10】
流体を格納する貯蔵器(10)と、前記貯蔵器に設置された、ポンプまたはバルブから成るディスペンサ部材(20)と、を有し、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の流体投与ヘッド(40)を更に有すること、を特徴とする流体投与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−508052(P2013−508052A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534749(P2012−534749)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052237
【国際公開番号】WO2011/048332
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(502343252)アプター フランス エスアーエス (144)