説明

流体方向づけ部材を備える電動歯ブラシのブラシヘッド

本発明は、電動歯ブラシの一部として歯を清掃するのに適しており、ブリッスル領域を含むブラシヘッド部材を具備するブラシヘッドであり、動作中に往復運動で動くブラシヘッドに関する。ある実施形態において、このブラシヘッドは、ブラシヘッドの少なくともかなりの部分の周りに延在するリム部材を具備し、このリム部材が、ブリッスル領域全体を囲むように延在し、ブリッスルの先端よりも低い上端をもつ。このリム部材がブリッスル部とは異なる可撓性をもつので、歯ブラシの動作中、リム部材及びブリッスルの動きは位相がずれ、そのため、歯ブラシの動作時にブリッスルから流体が歯に向かって方向づけられる結果がもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電動歯ブラシ用のブラシヘッドに関し、より具体的には、ユーザの歯及び歯ぐきに向かって流体が流れる方向を改善するために、ブラシヘッドのブリッスル(bristle,刷毛)と協働して動作する素子を具備する、このようなブラシヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの電動歯ブラシにおいては、清掃を含む所望の臨床的効果を促進するだけでなく、ユーザにとって歯及び歯ぐきに対する望ましい感覚的効果を促進するために、ブリッスルの往復運動が、できるだけ多量の流体を、ユーザの歯及び歯ぐきに向かって方向づけることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、回転タイプの動きを含む往復運動ブラシヘッドの動きの或るタイプは、場合によっては、外広がりの流体動作を生じる可能性があり、そのため、往復運動ブラシヘッド動作の他のタイプと比較して、臨床的効果及び感覚的効果が減少してしまう。ブリッスルの動作からできるだけ多量の流体をユーザの歯及び歯ぐきに向かって方向づけるようにして、ユーザのために清掃及び感覚的効果をもたらすことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本発明のある実施態様は、電動歯ブラシ用のリムを備えたブラシヘッドであって、電動歯ブラシの一部として歯を清掃するのに適し、ブリッスル領域を含み、動作中に往復運動で動くブラシヘッド部材と、当該ブラシヘッドのブリッスル領域の少なくともかなりの部分の周りに延在し、ブリッスルの先端よりも低い上端をもち、歯ブラシの動作時にブリッスルから歯に向かう流体の動きを生じるように構成されるリム部材と、を有するブラシヘッドである。
【0005】
本発明の他の実施態様は、電動歯ブラシ用のブラシヘッドであって、電動歯ブラシの一部として歯を清掃するのに適し、ブリッスル領域を含み、動作中に往復運動で動くブラシヘッド部材と、このブラシヘッド部材に位置付けされる少なくとも一つのパドル部材において、ブリッスル領域が当該パドル部材の大部分の周りに延在し、ブリッスルと一緒にブリッスル基部から上向きに延在し、ブリッスル領域ほど高くなく、歯ブラシの動作時にブリッスルから歯に向かって流れ出る流体の動きを生じるように構成されるパドル部材と、を有するブラシヘッドである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1乃至図3は、全体として10で参照される本発明の流体方向づけブラシヘッドアセンブリの第1の実施形態を示す。このブラシヘッドアセンブリ10は、電動歯ブラシ用のブラシヘッド12及びリム(rim,縁、外周)構造体14を具備している。ブラシヘッド12は、歯ブラシの柄、即ち、持ち手部材部18から延在する基部16と、ここではブリッスル領域20として参照される選択された構造で構成される歯ブラシブリッスルの複数の毛束(tuft,タフト)と、を有する通常の部材である。ブラシヘッド12の素子は通常のものであり、それゆえ、本発明の趣旨に入る構造及び装置において可変し得る。
【0007】
ある実施形態では、リム構造体14が、柄/持ち手部18に沿って僅かな距離だけ後方に、図示の実施形態では約1/4インチ(6.35ミリメートル)後方に(この距離は可変されてもよいが)延在し、グローブ又はブーツのように基部16を覆って囲むように嵌め合わされている。このリム構造体は、ブラシヘッド12の背面に結合されている。リム構造体14は流体リム部22を具備し、この流体リム部が、図示の実施形態では、ブリッスル領域の最も高いブリッスル毛丈の約半分の高さまでブリッスル領域20を取り囲んでいる。この流体リム部22の高さは、ある程度まで可変され得るが、歯に接触しないように、但し、後述されるように流体方向づけ効果を提供するのに十分な高さであるように、ブリッスル領域の最も低いブリッスル毛丈を下回る高さでなければならない。リム部がブリッスル毛丈と比較して短すぎる場合、リム構造体は所望の流体方向づけ効果及びポンピング効果を提供しないであろう。
【0008】
通常、流体リム部22の上部エッジ24は、その周辺部(periphery,外縁)の付近では平坦である。図示の実施形態では、流体リム部22が連続的であり、開口をもっていないが、場合によっては、その長さに沿ってポイントごとに開口エリアを含むこともできる。一般に、流体リム部22の目的が、流体をブリッスルから歯に向けて外の方へ動かすように方向づけることであるので、開口エリアは最小限に留められる。
【0009】
リム構造体の材料は、通常、好ましくは、可撓性のエラストメリック材料であるが、この材料は必ずしも可撓性である必要はない。通常、流体リム部22の可撓性は、流体がブリッスルから歯/歯ぐきに向かうための「ポンピング」動作を生成するために、ブリッスル/ブリッスル毛束の可撓性とは異なる。ブリッスルが前後に移動するのにつれてリム部と接触するので、流体リム部22は、ブリッスルの動きのための境界を形成し、流体を歯及び歯ぐきに向かって直接方向づけるためのデフレクタ/ガイドとして作用する。歯に対する流体方向の角度(歯に当たるときの角度)は、一般に、約+90°である。
【0010】
動作中、ブリッスル領域20のブリッスルの動きは、流体リム部22の動きと位相がずれており(out of phase,同調しておらず)、更に、一般に、流体リム部とブリッスル毛束との間の可撓性の差異により、ブラシヘッドの動きに応じても動くことから、流体についての「ポンピング」効果をもたらす。このポンピング効果により、ユーザの歯及び歯ぐきに向かう流体の動きが生成される。リム構造体なしで動作時ブリッスルから出てくる流体、特に、ブラシヘッドの側部に向かう流体は、本発明により実質的に全て歯に向けられ、ユーザにとって可能な改善された臨床的効果及び改善された感覚的効果をもたらす。
【0011】
図1乃至図3の実施形態に示されるリム構造体14は、ブラシヘッドに挿入される別個の素子であるが、そのリム部22を特に含むリム構造体14は、ブラシヘッドと一体的に作製されることもできる。但し、その場合のリム部の構造は、別個の素子について示される構造と同じままであり、実質的にこの場合と全く同じように機能する。
【0012】
図4、図5及び図6は、本発明の流体方向づけブラシヘッドの他の実施形態を示す。この実施形態のブラシヘッド27も、柄/持ち手部材34から延在するブラシヘッド基部30と、この基部から上向きに延在し、ブリッスル領域32を規定する複数のブリッスル毛束と、を具備している。この実施形態において、流体方向づけ部材は、2つのパドル(paddle,かい)様の素子26及び28を具備し、これらのパドル素子が、ブリッスル領域32によって取り囲まれ、ブラシヘッド27の中央に位置している。図示の実施形態では、パドル素子26,28は、ブラシヘッドの長手方向に延在し、約0.35インチ(8.89ミリメートル)の長さ、0.28インチ(7.11ミリメートル)の高さ及び約0.03インチ(0.76ミリメートル)の厚さであり、エラストマー(elastomer,弾性材)又は同様の材料のような可撓性材料から作製される。
【0013】
一方、パドル素子26,28は、ブラシヘッドの実質的に全長にわたって延在し、そのため、ブリッスル領域を長手方向に2つに分割することもできる。更に、パドル素子26及び28双方が、最も短いブリッスルよりも短く、図示の実施形態では、これらのパドル素子は、最も高いブリッスルより約0.25インチ(6.35ミリメートル)短く、最も短いブリッスルよりも約0.08インチ(2.03ミリメートル)短い。但し、パドル素子の寸法は可変し得ることを理解されたい。とはいえ、パドル素子は最も短いブリッスルよりも短いことが重要である。
【0014】
図示の実施形態では、パドル素子26及び28は、実質的に同一であるけれども、それぞれの動きが互いにある程度まで位相がずれるように、構造又は材料が異なっていてもよい。パドルがブリッスルと位相がずれていることも可能である。
【0015】
ポンピング動作は、2つのパドル間の差動運動から生じると共に、パドル部とブリッスル毛束との間の差動運動からも生じる。パドル素子は、一般的には可撓性をもつが、曲がらない又はほとんど曲がらない剛性を同様にもつこともできる。通常、パドルはブリッスルよりも剛性が高い。場合によっては、パドル素子の高さは、ブリッスル毛丈にかなり近づくこともできるが、それでもなお、ユーザの歯に対して剪断タイプの清掃効果を生じるために、依然としてブリッスル毛丈より低い高さである。
【0016】
図示の実施形態は2つの平行なパドル素子を具備しているが、単一のパドル素子でも所望の結果がもたらされるであろう。変更される実施形態では、各パドルが非平行であるかもしれないが、これらのパドルは、やはり一般的にはブラシヘッドの長手方向に配向されるであろう。更に、単一のパドルが、パドルの長さに沿ってポイントごとにそこから延在するウィングを備えることもできる。
【0017】
この実施形態の動作中、リム構造体の実施形態と同様に、ブリッスルとパドル素子及び/又は2つのパドル素子との間の差動運動により、ブラシヘッドから外に向かう流体の「ポンピング」効果が生成され、ほとんどの流体がブラシヘッドに対して90°で歯及び歯ぐきの方向に向けられる。それゆえ、開示されたブラシヘッドの動作によって生成された流体の動きは、通常のブラシヘッドによる動作よりも歯及び歯ぐきの方向においてより制御され、臨床的にも感覚的な態様においてもより効果的である。
【0018】
従って、ブラシヘッドから離れる流体を歯及び歯ぐきの方向に向けることを助ける歯ブラシのブラシヘッド装置が開示されている。これにより、清掃が改善されるだけでなく、ユーザの感覚的な体験においても改善が得られる。本発明の好ましい実施形態が説明のために開示されているけれども、請求項によって規定される本発明の趣旨から逸脱することなく、種々の変更、改良形態及び代替形態が実施態様に組み込まれてもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ブラシヘッドに嵌め合わせるのに適した、本発明の電動歯ブラシのブラシヘッド及びリム構造体の双方を示す斜視図である。
【図2】ブラシヘッドの適所に置かれたリム構造体を示す側面図である。
【図3】ブラシヘッドの適所に置かれたリム構造体を示す正面図である。
【図4】図1乃至図3の実施形態に対する代替の実施形態の側面図である。
【図5】図4の実施形態の正面図である。
【図6】図4乃至図5の実施形態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動歯ブラシ用のリムを備えたブラシヘッドであって、
前記電動歯ブラシの一部として歯を清掃するのに適し、ブリッスル領域を含み、動作中に往復運動で動くブラシヘッド部材と、
前記ブラシヘッドの前記ブリッスル領域の少なくともかなりの部分の周りに延在し、前記ブリッスルの先端よりも低い上端をもち、前記歯ブラシの動作時に前記ブリッスルから前記歯に向かう流体の動きを生じるように構成されるリム部材と、
を有するブラシヘッド。
【請求項2】
前記リム部材が、前記ブリッスル領域を囲むように実質的に連続している、請求項1に記載のブラシヘッド。
【請求項3】
前記リム部材と前記ブリッスル領域の前記ブリッスルとの間の可撓性に差異があり、そのため、前記ブリッスルと前記リム部材との間に差動運動をもたらすとともに、前記流体が前記歯に向かうポンピング動作をもたらす、請求項1に記載のブラシヘッド。
【請求項4】
前記リム部材が、前記ブラシヘッド部材と区別される、請求項1に記載のブラシヘッド。
【請求項5】
前記リム部材が、前記ブラシヘッド部材と一体化される、請求項1に記載のブラシヘッド。
【請求項6】
前記リム部材が、前記ブリッスル領域の最も高いブリッスル毛丈の約半分の高さをもつ、請求項1に記載のブラシヘッド。
【請求項7】
前記ブリッスルから流れ出る実質的に全ての前記流体が、ユーザの歯及び歯ぐきに向かって方向づけられる、請求項1に記載のブラシヘッド。
【請求項8】
電動歯ブラシ用のブラシヘッドであって、
前記電動歯ブラシの一部として歯を清掃するのに適し、ブリッスル領域を含み、動作中に往復運動で動くブラシヘッド部材と、
前記ブラシヘッド部材に位置付けされる少なくとも一つのパドル部材であって、前記ブリッスル領域が当該パドル部材の大部分の周りに延在し、当該パドル部材は、前記ブリッスルと一緒にブリッスル基部から上向きに延在し、前記ブリッスル領域ほど高くなく、前記歯ブラシの動作時に前記ブリッスルから前記歯に向かう流体の動きを生じるように構成されるパドル部材と、
を有するブラシヘッド。
【請求項9】
少なくとも2つのパドル部材を具備する、請求項8に記載のブラシヘッド。
【請求項10】
前記パドル部材が、当該ブラシヘッドの実質的に長手方向に延在する、請求項9に記載のブラシヘッド。
【請求項11】
前記パドル部材が、前記ブリッスル領域の実質的に長さ全体に延在する、請求項9に記載のブラシヘッド。
【請求項12】
前記ブリッスル領域が、前記パドル部材の周囲全体に延在する、請求項9に記載のブラシヘッド。
【請求項13】
前記パドル部材が、平行であり、実質的に同等のサイズ及び構造をもつ、請求項9に記載のブラシヘッド。
【請求項14】
前記パドル部材が、前記ブラシヘッドの動作中に互いに位相がずれて動くように、十分に異なる構造又は材料からなる、請求項9に記載のブラシヘッド。
【請求項15】
前記パドル部材が、前記ブリッスルとは異なる可撓性をもつ、請求項9に記載のブラシヘッド。
【請求項16】
前記パドル部材の長さに沿って、前記パドル部材から外向きに延在するウィング部を具備する、請求項9に記載のブラシヘッド。
【請求項17】
前記パドル部材の対向する端部に前記ウィング部を具備する、請求項16に記載のブラシヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−513675(P2007−513675A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543711(P2006−543711)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052821
【国際公開番号】WO2005/055863
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】