説明

流体流から元素状微量汚染物質を除去する方法およびシステム

流体流から元素状微量汚染物質を除去する方法であって、この方法は、元素状微量汚染物質を含む流体流を、酸化触媒を含むフロースルーモノリスに通して、この元素状微量汚染物質を酸化する工程、および、この酸化された微量汚染物質を含む流体流を、酸化触媒を含まない吸着剤と接触させて、酸化された微量汚染物質を吸着する工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、参照することにより本書に組み込まれる、2008年4月2日に出願された米国特許出願第12/080,341号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、元素状水銀などの元素状微量汚染物質を流体流から除去する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
有害汚染物質の放出は、人間の健康に危険をもたらすことから、関心の高い環境問題となっている。例えば、石炭火力発電所や医療廃棄物の焼却は、人間活動が関連している、大気中への水銀放出の主な発生源である。元素状水銀や、例えばメチル水銀などの元素状水銀が変化したものは、地球汚染物質である。
【0004】
元素状水銀を人間が吸入すると、軽度の一過性タンパク尿、急性腎不全、振戦、被刺激性、不眠症、記憶障害、神経筋の変化、頭痛、感覚神経機能の低下、および認知機能の低下など、腎臓や中枢神経系(CNS)に急性的影響を与えることが既に報告されている。元素状水銀の急性吸入は、胃腸系や呼吸器系に影響を及ぼし、胸痛、呼吸困難、咳、肺機能障害、および間質性肺炎を引き起こす可能性がある。さらに、元素状水銀への慢性的暴露は、過敏性(興奮性の増加)、被刺激性、極度の内気、不眠症、極端な唾液分泌、歯肉炎、振戦、およびタンパク尿の出現を含む、腎臓やCNSへの悪影響を引き起こす可能性があることも研究により示されている。
【0005】
人間がメチル水銀に暴露される主な経路は魚の摂食などの食事である。メチル水銀への急性的暴露は、失明、難聴、および意識レベルの障害など、CNSの影響を引き起こす可能性がある。メチル水銀への慢性的暴露は、感覚異常(皮膚の穿痛感)、視力障害、倦怠感、言語障害、および視野狭窄などの症状を生じさせる。
【0006】
毎年48トンの水銀が、米国の石炭火力発電所から放出されていると推測される。あるDOE−エネルギー情報局の年次エネルギー見通し(annual energy outlook)では、石炭を燃料とする発電容量の利用が増加することにより、発電のための石炭消費量は2002年の9億7600万トンから2025年には14億7700万トンにまで増加するであろうと予想した。しかしながら、石炭火力発電所に対する水銀放出管理規制は、厳しく実施されては来なかった。その主な理由は、特に元素状水銀制御のための、妥当なコストで実施可能な効果的な制御技術が不足していることである。
【0007】
特許文献1において開示された活性炭ハニカムを利用すると、有毒金属などの微量汚染物質を高いレベルで除去することができる。これらの活性炭ハニカムは共触媒、例えば、特定の金属、金属化合物、CaO、CaSO4、CaCO3、Al23、SiO2、KI、Fe23、CuO、ゼオライト、カオリナイト、石灰、石灰岩、フライアッシュ、硫黄、チオール、黄鉄鉱、ボーキサイト、ジルコニア、ハロゲンおよびハロゲン含有化合物、および、硫黄および硫黄含有化合物などを含んでもよい。こうして、これらの活性炭ハニカムを、例えば酸化金属の吸着の他、同じ材料内の元素状有毒金属の酸化に用いることができる。
【0008】
しかしながら、システムレベルの設計において、水銀などの元素状微量汚染物質を流体流から除去したいという要望が依然として存在している。この点において、吸着剤に酸化触媒が存在していると、細孔を塞ぐことにより、すなわち微量汚染物質の吸着剤マトリクス内への拡散経路を低下させることにより、吸着剤の容量を潜在的に制限してしまう可能性がある。
【0009】
本発明者は、元素状微量汚染物質の酸化、およびそれらの吸着剤での捕集に対し、新しいシステムレベルの多段階手法を見出した。本発明の方法およびシステムは、酸化触媒による、フロースルーモノリス上での元素状微量汚染物質の酸化、および、酸化触媒を含まない吸着剤上での、酸化された微量汚染物質の吸着を含む。吸着剤上に酸化触媒がないことにより、吸着剤マトリクスには、微量汚染物質吸着のための空所を残すことができる。この2つの段階の材料、設計、および製造は、独立したものとしてもよい。これらを、性能、コスト、およびオペレーティングシステムのために個々に最適化してもよく、そしてこれらはシステムレベルで纏め上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第2007/0261557号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施の形態は、流体流から元素状微量汚染物質を除去する方法であって、この方法は、
元素状微量汚染物質を含む流体流を、酸化触媒を含むフロースルーモノリスに通して、この元素状微量汚染物質を酸化する工程、および、
この酸化された微量汚染物質を含む流体流を、酸化触媒を含まない吸着剤と接触させて、酸化された微量汚染物質を吸着する工程、
を含む。
【0012】
本発明の別の実施の形態は、流体流から元素状微量汚染物質を除去するためのシステムであって、
フロースルーモノリスを通過し得る流体流内の元素状微量汚染物質を酸化する酸化触媒を含む、このフロースルーモノリス、および、
酸化触媒の下流に設置され、酸化触媒によって酸化された微量汚染物質を吸着する、酸化触媒を含まない吸着剤、
を含む。
【0013】
本発明は、以下の詳細な説明を単独で、あるいは添付の図面とともに参照することにより理解できる。図面は本発明のさらなる理解を提供するために含まれているものであり、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は本発明の1以上の実施の形態を示し、その説明とともに、本発明の原理と働きを説明する助けとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】互いに接触している酸化段階と吸着段階とを有する、本発明の一実施の形態によるシステム例を示す図
【図2】所定距離だけ離れている酸化段階と吸着段階とを有する、本発明の一実施の形態によるシステム例を示す図
【図3】同じハニカムモノリスに含有された酸化段階と吸着段階とを有する、本発明の一実施の形態によるシステム例を示す図
【図4】ハニカムモノリスを積み重ねた構造を有し、所定距離だけ離れている酸化段階と吸着段階とを有する、本発明の一実施の形態によるシステム例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
酸化触媒を含むフロースルーモノリスを本書では「酸化段階」と称することが多いが、元素状のまたは酸化された微量汚染物質を、このフロースルーモノリス上で、吸着してもよいし吸着しなくてもよいことを理解されたい。酸化触媒を含まない吸着剤を、本書では「吸着段階」と称することが多い。この2つの組合せを、「多段階」手法と称することが多い。
【0016】
上述の実施形態で可能となる多段階手法は、1つの材料で同時に行われる酸化および吸着と比較して、1以上の利点を有し得る。例えば、吸着段階に酸化触媒が存在していないため、吸着容量を向上させることができる。酸化段階および吸着段階を個々にカスタマイズして、排ガス内において典型的な元素状/酸化水銀比率を有する、所与の発電所の性能を最大にすることもできる。フロースルーモノリスおよび吸着剤の長さまたは容積が個々に最適化されると、全体の材料要件を縮小することができる可能性もあり、すなわち単一の製品形状による「万能サイズ」の手法と比較して、圧力降下を減少させたりコストを削減したりすることが可能となる。
【0017】
工場閉鎖停止期間には、潜在的に酸化段階または吸着段階の両方ではなく、これらのいずれかを交換する必要があるかもしれない。他のものを交換せずに1つを交換することができると、材料要件の減少および材料取扱要件の縮小により、操業コストを削減できる可能性もある。多段階手法は再生または再利用の利益を提案することもできる。この点において、単一基質の解決法よりも効果的に個々の段階を再生することができる。
【0018】
多段階手法は導入の柔軟性を提案できる可能性もある。既存の構造によって、工場は、酸化段階をある上流位置に導入し、そして吸着段階を、異なる位置であるが近傍の下流位置、湾曲部付近、ダクトの上方などに導入することを好む可能性がある。多段階手法は、各段階を個々により効果的なものとし得る、排ガス経路の温度区域内に、これらの段階を戦略的に配置することも可能とするかもしれない。
【0019】
本発明は、流体流から任意の元素状微量汚染物質を吸着する際に使用することができる。流体流はガスの形でもよいし、または液体の形でもよい。ガスまたは液体は、例えば、ガス流または液体流内に固体粒子、あるいはガス流内に液体小滴など、別の相を含んでもよい。ガス流の例としては、燃焼排ガス(瀝青炭および亜瀝青炭類、あるいは褐炭からなど)や、石炭ガス化法において生成される合成ガス流が挙げられる。
【0020】
元素状微量汚染物質としては、例えば、流体流内の3質量%以下の元素状汚染物質、例えば2質量%以下、または1質量%以下の元素状汚染物質が挙げられる。元素状微量汚染物質として、例えば、流体流内の10,000μg/m3以下の元素状汚染物質を挙げることもできる。
【0021】
微量汚染物質の例には、有毒金属元素を含む金属元素が含まれる。有毒金属の例としては、カドミウム、水銀、クロム、鉛、バリウム、およびベリリウムが挙げられる。一実施の形態において、有毒金属は水銀である。他の例示的な金属性元素状微量汚染物質には、ニッケル、コバルト、バナジウム、亜鉛、銅、マンガン、アンチモン、銀、およびタリウムが含まれる。追加の元素状微量汚染物質としては、ヒ素およびセレンが挙げられる。
【0022】
元素状微量汚染物質を、酸化触媒を含むフロースルーモノリスを通過できる任意の相のものとしてもよい。すなわち、微量汚染物質は、例えばガス流体流内に液体として存在しているものでもよいし、あるいは液体流体流内に液体として存在しているものでもよい。あるいは、微量汚染物質を、ガスまたは液体の流体流内に、ガス相の汚染物質として存在しているものとすることもできる。一実施の形態において、微量汚染物質は、燃焼排ガスまたは合成ガス流内の水銀蒸気である。
【0023】
本発明の実施形態は、元素状微量汚染物質を含む流体流を、酸化触媒を含むフロースルーモノリスに通して、この微量汚染物質を酸化する工程を含む。この文脈において、元素状微量汚染物質の酸化は、汚染物質の元素形態を酸化状態に変化させる。例えば、一実施の形態においては、元素状水銀(Hg0)を酸化状態(Hg+またはHg2+)に変化させる。酸化水銀の形態の例には、HgOと、例えばHg2Cl2およびHgCl2などのハロゲン化水銀が含まれる。従って、金属の酸化状態には、例えば、その金属を含む任意の有機または無機の化合物または組成物が含まれる。
【0024】
フロースルーモノリスは、そのモノリス体の任意の適切な部分に酸化触媒を含んでもよい。一実施の形態において、フロースルーモノリスは、酸化触媒を、モノリス全体に亘って備える、あるいは、少なくとも流体流に曝される可能性のあるモノリスの表面に亘って備える。他の実施形態において、フロースルーモノリスは、酸化触媒をモノリスの1以上の個別の部分に備える。酸化触媒を、フロースルーモノリスの形成に用いられるバッチ混合物内に存在させることにより、あるいは既に形成されたモノリス上に例えばウォッシュコーティング技術を用いて被覆させることにより、フロースルーモノリス上に提供してもよい。
【0025】
酸化触媒を含むフロースルーモノリスは、ハニカムモノリスなど、任意の適切な形状とすることができる。ハニカムモノリスなどのフロースルーモノリスは、例えば、酸化触媒コーティングを有するガラス、ガラスセラミック、セラミック、または金属のハニカムを含んでもよい。
【0026】
酸化触媒の例としては、金属元素、金属化合物、ハロゲン、およびハロゲン化化合物が挙げられる。例えば、酸化触媒は、遷移金属または遷移金属化合物を含んでもよい。例示的な酸化触媒としては、Au、Pt、Pd、Cu、Ni、Ru、Rh、Ir、Co、Fe、Mn、および、これらを含む無機または有機化合物が挙げられる。
【0027】
いくつかの実施形態において、フロースルーモノリスの酸化触媒を含んでいる部分は、酸化された微量汚染物質を吸着しない、または本質的に吸着しない。他の実施形態において、フロースルーモノリスは酸化された微量汚染物質を吸着する。すなわち、酸化触媒を含むフロースルーモノリスを「酸化段階」と称するとき、酸化された微量汚染物質を、酸化触媒を含むフロースルーモノリス上で吸着することを排除しない。
【0028】
本発明の実施形態は、酸化された微量汚染物質を含む流体流を、酸化触媒を含まない吸着剤と接触させて、この酸化された微量汚染物質を吸着する工程をさらに含む。酸化触媒を含まない吸着剤は、流体流に残存している可能性のある元素状微量汚染物質を吸着することもできる。酸化触媒を含まない吸着剤は、酸化触媒を含むフロースルーモノリスを通過する以前に既に流体流に存在していた可能性のある酸化された微量汚染物質を吸着することもできる。
【0029】
本発明において使用される「吸着する」、「吸着」、および「吸着される」という用語は、微量汚染物質の吸着、吸収、または他の取込みを、物理的に、または化学的に、あるいは物理的かつ化学的に指すものである。
【0030】
酸化触媒を含まない吸着剤は、本発明の実行に適した任意の材料で作製することができる。例えば、吸着剤は活性炭を含むものでもよいし、活性炭マトリクス内に追加の材料を含むまたは含まない、連続的な活性炭本体の形を成しているものでもよい。あるいは、酸化触媒を含まない吸着剤は、活性炭で被覆されたガラス、ガラスセラミック、セラミック、または金属体でもよい。いずれの場合も、活性炭材料は、流体流からの微量汚染物質の吸着に触媒作用を及ぼす、硫黄および/または触媒をさらに含んでもよい。硫黄および/または触媒は、活性炭材料の形成に用いられるバッチ混合物内に存在させてもよいし、あるいは既に形成された材料上に、例えばウォッシュコーティング技術を用いて被覆させてもよい。この点において、「硫黄」という用語は、元素状硫黄と、硫黄を有する化学的化合物および組成物を含んだ任意の酸化状態の硫黄との両方を含む。
【0031】
酸化触媒を含まない吸着剤は、本発明の実行に適した任意の形状とすることができる。例えば、酸化触媒を含まない吸着剤を、充填層、流体流に注入された粒子、または酸化触媒を含むフロースルーモノリスとは異なるフロースルーモノリス、としてもよい。例示的なフロースルーモノリスには、例えば、流体流がモノリスを通って流れることを可能とするチャネルまたは多孔性網を備えた任意のモノリシック構造が含まれる。
【0032】
上述したように、フロースルーモノリスを、酸化段階、吸着段階、または両段階に用いてもよい。両段階がフロースルーモノリスを用いる場合には、これらのモノリスを、任意の1以上の物理的および/または化学的特性が一致しないように構成することができる。例えば、これらのモノリスを、異なるモノリシック構造、異なる組成、および、例えばハニカムの場合には、異なるセル密度、異なる厚さの多孔性チャネル壁、または、異なるサイズまたは断面形状を有するセルチャネル、を含むものとすることができる。ハニカムの例示的なセル形状としては、円形、正方形、三角形、長方形、六角形、正弦曲線、または任意のこれらの組合せが挙げられる。これらのハニカムを、ハニカムのセルが互いにずれるように設置してもよい。このような構造は、流体流をあるハニカムのセルから別の下流のハニカムの2以上のセルへと分裂させるのを促進し得る。
【0033】
図1は、本発明の一実施の形態によるシステム例100を示している。この事例では、酸化触媒を含まないフロースルーモノリス106は、酸化触媒を含むフロースルーモノリス104と異なる。流体流をシステムの入口端102からシステムの出口端108に通過させて、流体流内の元素状汚染物質を酸化し、そして酸化された微量汚染物質を吸着することができる。
【0034】
図1において、両フロースルーモノリスは、入口端と、出口端と、そして交差している多孔性セル壁により画成され入口端から出口端へと延在している非常に多数のセルとを備えた、ハニカム形状を成している。各段階のハニカムは、流体流とセル壁との間の接触をより密にできるような壁フロースルー構造を与えるために、1以上の選択的に塞がれたハニカムセル端を随意的に備えることも可能である。
【0035】
いくつかの実施形態においては、図1に示したように、酸化段階および吸着段階の両方がハニカム体を備える。この事例において、酸化段階のハニカムは吸着段階のハニカムと一致しているものでもよいし、あるいは、ハニカム長、セルサイズ、およびセル形状のうちの少なくとも1つに関して一致していないものでもよい。他の実施形態においては、酸化段階、または吸着段階のみが、ハニカム吸着剤を備える。
【0036】
図2は、本発明の一実施の形態による別のシステム例200を示している。この事例では、酸化触媒を含まないフロースルーモノリス吸着剤206は、酸化触媒を含むフロースルーモノリス204から所定距離だけ離れている。流体流をシステムの入口端202からシステムの出口端208に通過させて、流体流内の元素状汚染物質を酸化し、そして酸化された微量汚染物質を吸着することができる。
【0037】
段階間の所定距離を利用して、例えば、流体流をさらによく混合できるようにしたり、または、水銀濃度検出器やフライアッシュ除去システムを配置するための空間を提供したりすることもできる。段階間の空間の長さは、6インチ(15.24cm)から数フィート以上など、任意の所望の長さとすることができる。
【0038】
段階間の任意の空間は、充填層などの他の材料を随意的に含んでもよく、この他の材料とは、例えば流体流から微量汚染物質をさらに除去することを可能とするものでもよいし、あるいは流体流内の微量汚染物質と化学的に相互作用し得るものでもよい。このような充填層に適した材料としては、例えば、活性炭ペレット、フライアッシュ、コージライト、酸化鉄、または酸化アルミニウムが挙げられる。
【0039】
図3は、本発明の一実施の形態による別のシステム例300を示している。この事例では、ハニカム304の長さL1に沿った酸化段階、およびハニカム304の長さL2に沿った吸着段階が、同じハニカムモノリス内に含まれる。流体流をシステムの入口端302からシステムの出口端306に通過させて、流体流内の元素状汚染物質を酸化し、そして酸化された微量汚染物質を吸着することができる。
【0040】
最後に、図4は、本発明のさらなる実施の形態によるシステム例400を示している。この事例では、酸化段階404と吸着段階406は、両方ともハニカムモノリスを積み重ねた構造を有し、また所定距離だけ離れている。流体流をシステムの入口端402からシステムの出口端408に通過させて、流体流内の元素状汚染物質を酸化し、そして酸化された微量汚染物質を吸着することができる。
【0041】
システムの酸化段階および吸着段階は、本発明の実行に適した任意の環境に設置することができる。例えば、1つのまたは両方の段階を、ダクト内や、燃焼排ガスまたは合成ガスなどの流体流を運ぶ任意の他のエンクロージャ内に設置してもよい。粒子捕集器などの1以上の他の部品を、流体流の流れの中の、どちらか一方の段階の上流または下流のいずれかに設置してもよい。例えば、電気集塵装置を、システムの上流に取り付けてもよい。
【0042】
一定期間使用されると、酸化段階のフロースルーモノリス、または酸化触媒を含まない吸着剤は、それぞれ、もはや微量汚染物質に対して所望のレベルの酸化または吸着性能を提供できないように使い尽くされる可能性がある。このため、1以上の微量汚染物質検出器またはセンサを、システム内、またはシステムの出口端、あるいは出口端付近のどこかに設置して、元素形態または酸化状態いずれかの微量汚染物質のレベルを検出してもよい。例えば、検出器を、酸化段階の上流に、酸化段階下流の吸着段階上流に、および/または吸着段階の下流に取り付けてもよい。検出器またはセンサは、システム内、またはシステムの出口端、あるいは出口端付近の、任意の所与の点における流体流内の微量汚染物質(元素状態および/または任意の酸化状態の)の濃度を示すフィードバックを提供することができる。1つの例示的な実施形態においては、適切な水銀センサを、PS Analytical(モデルPSA10.680)や日本インスツルメンツ(モデルDM−6)製造の連続検出水銀測定装置(continuous detection mercury analyzer)とすることができる。
【0043】
従って、酸化段階下流の流体流内の元素状微量汚染物質の濃度が、酸化性能が特定の基準以下であることを示す既定レベルを超えたときに、酸化触媒を含むフロースルーモノリスを交換してもよい。同様に、システム出口での酸化された微量汚染物質の濃度が、吸着性能が特定の基準以下であることを示す既定レベルを超えたときに、酸化触媒を含まない吸着剤を交換してもよい。
【0044】
本発明について、これまでその特定の図示の実施形態に関連して詳細に説明してきたが、このようなものに限定されるとみなされるべきではなく、添付の請求項で画成されるような本発明の広い精神および範囲から逸脱することなく、同様に数多くの変形が可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0045】
100,200,300,400 システム
102,202,302,402 入口端
104,204,404 酸化触媒を含むフロースルーモノリス
106,206,406 酸化触媒を含まないフロースルーモノリス
108,208,306,408 出口端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流から元素状微量汚染物質を除去する方法であって、
元素状微量汚染物質を含む流体流を、酸化触媒を含むフロースルーモノリスに通して、該元素状微量汚染物質を酸化する工程、および、
該酸化された微量汚染物質を含む流体流を、酸化触媒を含まない吸着剤と接触させて、前記酸化された微量汚染物質を吸着する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記元素状微量汚染物質が、カドミウム、水銀、クロム、鉛、バリウム、ベリリウム、ヒ素、およびセレンから選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記酸化触媒を含むフロースルーモノリスが、ハニカムモノリスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記酸化触媒を含まない吸着剤が、前記酸化触媒を含むフロースルーモノリスと異なるフロースルーモノリスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
流体流から元素状微量汚染物質を除去するためのシステムであって、
フロースルーモノリスを通過し得る流体流内の元素状微量汚染物質を酸化する酸化触媒を含む、該フロースルーモノリス、および、
前記酸化触媒の下流に設置され、前記酸化触媒によって酸化された微量汚染物質を吸着する、酸化触媒を含まない吸着剤、
を含むことを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−516250(P2011−516250A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502978(P2011−502978)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/002036
【国際公開番号】WO2009/123724
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】