説明

流体用ホース、及び流体用ホースの損傷判別方法

【課題】管継手への着脱によってホース本体の端側の外周面に生じる損傷の状態を容易に判別することができる。
【解決手段】ビールホース10では、ホース本体50の軸線方向一端側(接続部50A)の外周面に脆弱膜52がコーティングされている。このため、ホース本体50が管継手12に対して着脱される際に、管継手12に設けられたロック爪44が接続部50Aの外周面と摺接すると、脆弱膜52が傷付けられる。この脆弱膜52は、接続部50Aの外周面とは色が異なるため、脆弱膜52の損傷状態に基づいて接続部50Aの外周面の損傷状態を視覚的に容易に判別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に接続される流体用ホース及び該流体用ホースの損傷状態を判別するための損傷判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体用のホースをワンタッチで接続可能な管継手が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような管継手は、ホースの端側が挿入される挿入口を備えており、この挿入口から管継手の内部に挿入されたホースの端側の外周面には、ゴム製のシール部材が密着する。また、管継手の内部には、シール部材よりもホースの挿入方向手前側において金属製のロック爪が設けられており、このロック爪がホース端側の外周面に引っ掛かることで、管継手からのホースの離脱が阻止される。
【0003】
一方、上述の如き管継手からホースを取り外す際には、管継手の内周面とホースの外周面との間に特殊な工具を挿入してロック爪を撓ませる。これにより、ホース端側の外周面に対するロック爪の引っ掛かり状態を解除することができ、ホースの取り外しが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−14165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如き管継手では、ホースの着脱の際にロック爪がホース端側の外周面と摺接することで、ホース端側の外周面に傷が生じることがある。このため、管継手への着脱を繰り返されたホースでは、端側の外周面の傷が原因でシール部材のシール不良が発生する恐れがある。したがって、既に使用されたことがあるホースを管継手に接続する際には、端側の外周面の損傷状態を充分に確認する必要があるが、ホースの外皮の材質などによっては外周面の損傷状態を視覚的に判別することが困難な場合がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、管継手への着脱によってホース本体の端側の外周面に生じる損傷の状態を容易に判別することができる流体用ホース、及び流体用ホースの損傷判別方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る流体用ホースは、管継手に設けられたロック爪が端側の外周面に引っ掛かることで前記管継手に接続されると共に、前記引っ掛かりを解除されることで前記管継手からの取り外しを許容されるホース本体と、前記ホース本体の前記端側の外周面に設けられ、前記ホース本体の外周面とは色又は色の濃度が異なる脆弱膜と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の流体用ホースでは、ホース本体の端側の外周面に脆弱膜が設けられている。このため、ホース本体が管継手に対して接続及び取り外し(着脱)される際に、管継手に設けられたロック爪がホース本体端側の外周面と摺接すると、脆弱膜が傷付けられる。この脆弱膜は、ホース本体の外周面とは色又は色の濃度が異なっているため、脆弱膜の損傷状態に基づいてホース本体端側の外周面の損傷状態を判別すれば、当該外周面の損傷状態を視覚的に容易に判別することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る流体用ホースの損傷判別方法は、管継手に設けられたロック爪が端側の外周面に引っ掛かることで前記管継手に接続されると共に、前記引っ掛かりを解除されることで前記管継手からの取り外しを許容されるホース本体を備えた流体用ホースの損傷判別方法であって、前記ホース本体の外周面とは色又は色の濃度が異なる脆弱膜を前記端側の外周面に設けると共に、前記脆弱膜の損傷状態に基づいて前記端側の外周面の損傷状態を判別することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の流体用ホースの損傷判別方法では、ホース本体の端側の外周面に脆弱膜が設けられている。このため、ホース本体が管継手に対して接続及び取り外し(着脱)される際に、管継手に設けられたロック爪がホース本体端側の外周面と摺接すると、脆弱膜が傷付けられる。この脆弱膜は、ホース本体端側の外周面とは色又は色の濃度が異なっているため、本損傷判別方法のように、脆弱膜の損傷状態に基づいてホース本体端側の外周面の損傷状態を判別すれば、当該外周面の損傷状態を視覚的に容易に判別することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る流体用ホースでは、管継手への着脱によってホース本体の端側の外周面に生じる損傷の状態を容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るビールホースの部分的な構成及びこのビールホースが接続される管継手の部分的な構成を示す部分断面図である。
【図2】ビールホースが管継手に接続された状態を示す部分断面図である。
【図3】ビールホースが管継手から取り外された状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係る流体用ホースとしてのビールホース10及びこのビールホース10の損傷判別方法について説明する。先ず、このビールホース10が接続される管継手12について説明する。
(管継手12)
本実施形態に係る管継手12は、図1に示されるように継手本体14を備えている(なお、図1では継手本体14の一部のみが図示されている)。この継手本体14は、樹脂材料によって形成されたものであり、筒状のホース連結部16を有している。このホース連結部16の内側は、ビールホース10が挿入される挿入孔18とされている。
【0014】
挿入孔18の内周部は、複数段の段付き状に形成されており、軸線方向一端側(図1では左側)が大径部20とされている。大径部20は、軸線方向一端側が開口しており、大径部20の軸線方向他端側(図1では右側)には、大径部20よりも小径な中径部22が設けられている。さらに、中径部22の軸線方向他端側(図1では右側)には、中径部22よりも小径な小径部24が設けられており、小径部24の軸線方向他端側(図1では右側)には、小径部24よりも小径な流路26が設けられている。なお、小径部24の内径寸法は、後述するビールホース10のホース本体50の外径寸法よりも僅かに大きく形成されている。
【0015】
中径部22の内側には、ゴム材によってリング状に形成されたシール部材28が同軸的に嵌挿されている。シール部材28は、大径部20と小径部24との間の段部によって軸線方向他側(図1では右側)への変位を制限されている。このシール部材28は、挿入孔18内に挿入されたビールホース10の外周面に密着し、ビールホース10と継手本体14との間をシールする。
【0016】
一方、大径部20の内側には、樹脂材料によってリング状に形成されたカバーリング30が収容されている。カバーリング30は、大径部20の内側に同軸的に嵌挿されており、大径部20と中径部22との間の段部32に当接した状態で配置されている。カバーリング30の内径寸法は、後述するホース本体50の外径寸法よりも大きく、かつ中径部22の内径寸法よりも小さく形成されており、シール部材28は、カバーリング30によって軸線方向一側(図1では左側)への変位を制限されている。
【0017】
さらに、大径部20の内側には、円筒状に形成された圧入部材34が設けられている。この圧入部材34は、カバーリング30に対して挿入孔18の開口側(図1では左側)に配置されており、大径部20の内側に同軸的に嵌挿されている。この圧入部材34は、軸線方向他端側(図1では右側)で内径寸法がテーパー状に拡大しており、軸線方向他端部が薄肉な薄肉部34Aとされている。
【0018】
また、圧入部材34の外周部には、断面略台形状に形成された凸部34Bが設けられている。この凸部34Bは、大径部20の内周部に形成された圧入溝16A(周溝)内に嵌り込んでいる。これにより、圧入部材34は、薄肉部34Aの先端がカバーリング30に押し付けられた状態で継手本体14に係止されている。
【0019】
一方、圧入部材34の薄肉部34Aの内側には、バネ性を有する金属材料によってリング状に形成されたロック爪44が同軸的に配置されている。ロック爪44は、圧入部材34とカバーリング30との間で軸線方向に変位不能に保持されている。このロック爪44は、断面略V字状に形成されており、撓み変形することで内径寸法を拡径可能とされている。このロック爪44の自然状態での内径寸法は、後述するホース本体50の外径寸法よりも僅かに小さく形成されている。
【0020】
また、圧入部材34の内側には、ロック爪44を撓ませるための解除リング46が設けられている。この解除リング46は、薄肉円筒状に形成されており、圧入部材34の内側に同軸的に嵌合している。この解除リング46は、圧入部材34に対して所定の範囲内で軸線方向に相対移動可能とされており、図示しない特殊工具によって圧入部材34の軸線方向他端側へ押し込まれるようになっている。解除リング46が圧入部材34の軸線方向他端側へ押し込まれると、解除リング46の軸線方向端部がロック爪44の内周部の傾斜と摺接し、これにより、ロック爪44の内径寸法が拡大するようになっている。この解除リング46の内径寸法は、後述するホース本体50の内径寸法よりも僅かに大きく形成されている。
【0021】
上記構成の管継手12では、圧入部材34の軸線方向一端側(図1では左側)の開口が、本実施形態に係るビールホース10を挿入するための挿入口48とされている。次に、ビールホース10について説明する。
(ビールホース10)
ビールホース10は、ビールを移送するためのホースであり、樹脂材料によって長尺円筒状に形成されたホース本体50を備えている。なお、本実施形態ではホース本体50は、外皮がポリウレタン樹脂によって形成されている。
【0022】
このホース本体50の軸線方向一端側は、前述した管継手12に接続される接続部とされている。接続部50Aの外周面には、当該接続部50Aの外周面(ホース本体50の外周面)とは異なる色の脆弱膜52がコーティングされている。なお、図1では、説明の都合上、脆弱膜52がコーティングされた部分に細かいドットを付してある)。この脆弱膜52は、金属等と摺接することで容易に傷付く構成になっている。
【0023】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0024】
上記構成のビールホース10では、ホース本体50の接続部50Aが管継手12の挿入口48から管継手12内に挿入されると、接続部50Aの外周面(脆弱膜52)がロック爪44と摺接しながら接続部50Aが管継手12の奥側(図1では右側)へ挿入される。そして、図2に示されるように、接続部50Aの先端が小径部24と流路26との間の段部に当接すると、接続部50Aをそれ以上挿入することができなくなり、本ビールホース10が管継手12に接続された状態になる。
【0025】
この状態では、シール部材28が接続部50Aの外周面(脆弱膜52)に密着することで、ホース本体50と管継手12との間がシールされる。また、ロック爪44の内周側端部が接続部50Aの外周面に引っ掛かることで、管継手12からのホース本体50の離脱が阻止される。この状態で、ホース本体50内に液体(ビール)が流れて内圧が作用すると、ホース本体50が管継手12から抜ける方向の力を受け、接続部50Aが挿入口48側に若干移動し、ロック爪44の内周側端部が接続部50Aの外周面に食い込む。これにより、ロック爪44によるホース本体50の把持力が大きくなり、管継手12とホース本体50とが強固に連結される。
【0026】
一方、管継手12からビールホース10を取り外す際には、圧入部材34の内周面と接続部50Aの外周面との間に図示しない特殊工具を挿入し、解除リング46を管継手12の奥側(図2では右側)へ押し込む。管継手12の奥側へ押し込まれた解除リング46は、ロック爪44の内周部の斜面と摺接し、ロック爪44の内周部を拡径方向に撓ませる。これにより、接続部50Aの外周面に対するロック爪44の引っ掛かりが解除され、管継手12からのビールホース10の取り外しが可能になる。
【0027】
ここで、上述の如くビールホース10が管継手12に対して接続・取り外し(着脱)される際には、管継手12のロック爪44が接続部50Aの外周面(脆弱膜52)と摺接するため、接続部50Aの外周面に傷が発生する。このため、管継手12に対する着脱を繰り返されたビールホース10では、接続部50Aの外周面の傷が原因でシール部材28のシール不良が発生し、管継手12部分からのビール漏れが発生する恐れがある。
【0028】
この点、本実施形態では、接続部50Aの外周面に脆弱膜52がコーティングされているため、図3に示されるように、接続部50Aの外周面の傷付き部分Dでは脆弱膜52が削り取られて接続部50Aの地肌が露出する。したがって、脆弱膜52の色と傷付き部分Dの色とのコントラストによって、傷付き部分Dを明確に判別することができる(傷を可視化することができる)。これにより、接続部50Aの外周面の損傷状態(傷の程度)を容易に判別することができるため、ビールホース10が管継手12に対して繰り返し着脱されたか否かなどを容易に判別することが可能になる。したがって、繰り返し着脱されたビールホース10が誤って使用されることによる管継手12部分からのビール漏れの発生を回避することができる。
【0029】
なお、上記実施形態では、本発明がビールを移送するためのビールホース10に対して適用された場合について説明したが、これに限らず、本発明はロック爪が外周面に引っ掛かることで管継手に接続される流体用ホースであれば適用することができる。
【0030】
また、上記実施形態では、ホース本体50の外周面とは色が異なる脆弱膜52を接続部50Aの外周面に設けた構成にしたが、本発明はこれに限らず、ホース本体50の外周面と同系色の脆弱膜52を接続部50Aの外周面に設ける構成にしてもよい。この場合、ホース本体50の外周面と脆弱膜52との色の濃度を異ならせれば、両者を視覚的に容易に識別することができ、上記実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
【0031】
以上、実施形態を挙げて本発明について説明したが、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
10 ビールホース(流体用ホース)
12 管継手
44 ロック爪
50 ホース本体
50A 接続部(ホース本体の端側)
52 脆弱膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管継手に設けられたロック爪が端側の外周面に引っ掛かることで前記管継手に接続されると共に、前記引っ掛かりを解除されることで前記管継手からの取り外しを許容されるホース本体と、
前記ホース本体の前記端側の外周面に設けられ、前記ホース本体の外周面とは色又は色の濃度が異なる脆弱膜と、
を備えた流体用ホース。
【請求項2】
管継手に設けられたロック爪が端側の外周面に引っ掛かることで前記管継手に接続されると共に、前記引っ掛かりを解除されることで前記管継手からの取り外しを許容されるホース本体を備えた流体用ホースの損傷判別方法であって、
前記ホース本体の外周面とは色又は色の濃度が異なる脆弱膜を前記端側の外周面に設けると共に、前記脆弱膜の損傷状態に基づいて前記端側の外周面の損傷状態を判別することを特徴とする流体用ホースの損傷判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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