説明

流体駆動自転車

【課題】流体を用いて駆動力を伝える操舵兼駆動輪を備えた自転車の提供。
【解決手段】自転車2は、主フレーム4と、ドラム11と、操舵軸20と、駆動輪6と、流体駆動装置28とを備えている。操舵軸20は、主フレーム4に回転可能に支持されている。操舵軸20は、ドラム11に回転可能とされている。駆動輪6は、操舵軸20に回転可能に支持されている。流体駆動装置28は、流体ポンプ30、往路34、復路36及び流体モータ32を備えている。往路34及び復路36は、流体ポンプ30と流体モータ32とを接続している。往路34及び復路36は、ドラム11の内部と操舵軸20の内部とを通って形成されている。往路34及び復路36は、操舵軸20とドラム11との間にそれぞれスイベルジョイントを備えている。流体モータ32は、駆動輪6を回転させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体による駆動装置を備えた自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の自転車102の駆動伝達機構の部分断面が示された側面図である。この自転車102が特開2007−307963号公報に記載されている。この自転車102では、操舵輪である前輪104が駆動輪とされている。この駆動伝達機構では、クランクの回転により前輪104が駆動させられる。この自転車102は、主フレームの前方に位置するヘッドパイプ106を備えている。このヘッドパイプ106は、ハンドルを備えた操舵軸108を360°回転可能に保持している。この操舵軸108の下端には、前輪104と一体に回転する前輪軸110が支持されている。前輪軸110は、その軸線を回転軸として回転可能に支持されている。ハンドルにより操舵軸108がきられ、その方向に前輪104の進行方向が変えられる。
【0003】
この駆動伝達機構は、図示しないクランクが運転者により漕がれる。このクランクの駆動力は、チェーン112によりギア114に伝えられる。このギア114は、かさ歯車116と一体とされている。このギア114及びかさ歯車116は、ヘッドパイプ106に対して回転可能に支持されている。この駆動力は、ギア114と一体に回転するかさ歯車116から、かさ歯車118に伝えられる。このかさ歯車118は、かさ歯車120とパイプ122を介して一体とされている。かさ歯車118、かさ歯車120及びパイプ122は、操舵軸108の軸線を回転軸として回転可能とされている。かさ歯車118からかさ歯車120に伝えられた駆動力は、かさ歯車124に伝えられる。このかさ歯車124は、前輪104と一体に固定されている。かさ歯車124が回転することで、前輪104が回転させられる。
【0004】
一般に、操舵輪兼駆動輪とされた駆動伝達機構は、複雑な機構に成り易い。操舵輪兼駆動輪とされた駆動伝達機構は、重量が大きく成り易い。この駆動伝達機構では、かさ歯車118、かさ歯車120及びパイプ122からなる縦回転体により、駆動力が前輪104に伝えられている。駆動伝達機構の構造は、シンプルな構造である。この自転車102は、この駆動伝達機構を用いることで軽量化されている。この自転車102は、操舵輪兼駆動輪を備えることで、小回りに適している。
【特許文献1】特開2007−307963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この駆動伝達機構では、クランクの回転がチェーン112を介して、ギア114に伝えられる。この駆動伝達機構では、チェーン112はクランクに取り付けられたギアとギア114とに架け渡されている。このチェーン112は、運転者の足元に配置される。このチェーン112の配置の自由度は、小さい。前輪を駆動輪とされた自転車102では、チェーン112が運転者の足元で駆動される。運転者がチェーン112などの駆動部に接触しないように、安全カバーなどが備えられている。この自転車102では、運転者の足元のスペースが狭くなる。
【0006】
本発明の目的は、流体を用いて駆動力を伝える操舵兼駆動輪を備えた自転車の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自転車は、主フレームと、ドラムと、操舵軸と、駆動輪と、流体駆動装置とを備えている。この操舵軸は、主フレームに操舵軸を回転軸として回転可能に支持されている。この操舵軸は、ドラムに対して操舵軸を回転軸として回転可能とされている。この駆動輪は、操舵軸に駆動輪の軸線を回転軸として回転可能に支持されている。この流体駆動装置は、流体ポンプ、往路、復路及び流体モータを備えている。この往路は、流体ポンプと流体モータとを接続している。この往路は、ドラムの内部と操舵軸の内部とを通って形成されている。この復路は、流体モータと流体ポンプとを接続している。この復路は、ドラムの内部と操舵軸の内部とを通って形成されている。この往路及び復路は、操舵軸とドラムとの間にそれぞれスイベルジョイントを備えている。この流体モータは、駆動輪を回転させる。
【0008】
好ましくは、この自転車では、上記往路は、流体ポンプとドラムとを接続する第一往路と、ドラムに形成された第二往路と、操舵軸に形成された第三往路と、操舵軸と流体モータとを接続する第四往路とを備えている。上記復路は、流体モータと操舵軸とを接続する第四復路と、操舵軸に形成された第三復路と、ドラムに形成された第二復路と、ドラムと流体ポンプとを接続する第一復路とを備えている。この第二往路と第三往路とはスイベルジョイントで接続されている。この第二復路と第三復路とは、スイベルジョイントで接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る自転車では、操舵輪である駆動輪が流体により駆動される。この流体の駆動装置では、駆動力を伝える経路の配置の自由度が大きい。この自転車では、駆動力を伝えるための駆動装置が運転者の足元に露出されない。この自転車は、運転者が駆動装置の駆動部に接触する怖れがない。この自転車は、安全性に優れている。更に、この自転車では、操舵輪兼駆動輪を流体駆動しても、操舵の自由度を阻害しない。この自転車2は、流体の経路の耐久性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る自転車2の正面図である。図1の右向きが、この自転車2の前方向きである。図1の左向きが、自転車2の後方向きである。この自転車2は、主フレーム4と、前輪6と、後輪8と、操舵部10と、ドラム11と、駆動装置12とを備えている。この自転車2では、前輪6が操舵輪兼駆動輪とされている。
【0012】
後輪8は、主フレーム4の後方に回転可能に取り付けられている。この自転車2では、主フレーム4を挟んで左右側面に一対の後輪8が取り付けられている。これらの後輪8は、回転可能に取り付けられている。後輪8は、自転車2の主フレーム4の前後方向に転がるように取り付けられている。この主フレーム4は、上方にサドル14を備えている。主フレーム4の前方には、ヘッドパイプ16が備えられている。ヘッドパイプ16は、その内部が空洞であり、円筒状である。
【0013】
操舵部10は、ハンドル18、操舵軸20、一対のホーク22を備えている。ハンドル18は、リング状である。操舵軸20は、丸棒形状をしている。ハンドル18のリングの中心が、操舵軸20の上方端に固定されている。操舵軸20の軸線は、リング状のハンドル18の回転軸に一致している。
【0014】
図2は、図1の自転車2の操舵部10の断面が示された側面図である。操舵軸20の内部には二つ空間が形成されている。一方の空間は、操舵軸20の軸線上に位置している。一方の空間は、操舵軸20の軸線方向に延びている。他方の空間の操舵軸方向の断面は、一方の空間を囲むリング状にされている。他方の空間は、操舵軸20の軸方向に延びている。この操舵軸20に形成された空間は、操舵軸20の軸線上の空間とそれを囲むリング状の空間である。
【0015】
一対のホーク22は、操舵軸20の下方端から下方に延びている。一方のホーク22は、操舵軸20の右側に延びている。他方のホーク22は、操舵軸20の左側に延びている。この一対のホーク22は、下方に向かって逆U字状に延びている。操舵軸20は、ヘッドパイプ16に支持されている。操舵軸20は、その軸線を回転軸として回転可能に支持されている。この自転車2では、操舵軸20はヘッドパイプ16にベアリングにより回転可能に支持されている。
【0016】
前輪6は、前輪軸23を備えている。この前輪軸23は、前輪6の軸線上に固定されている。この前輪軸23は、一対のホーク22に支持されている。この前輪軸23は、回転可能に支持されている。これにより、前輪6は、一対のホーク22に対して、回転可能とされている。
【0017】
この自転車2では、ドラム11は、円筒形状である。ドラム11の軸線上には、操舵軸20が通される軸孔が形成されている。ドラム11の内部には、空間が形成されている。ドラム11の軸孔には操舵軸20が回転可能に通されている。この空間は、操舵軸20が通されることで、二つの空間に分けられる。ドラム11と操舵軸20との間に配置されたOリングにより、二つの空間は液密に仕切られている。図2では、ドラム21の内部の空間は、操舵軸20の軸方向上下に分かれている。ドラム11は、操舵軸20に対して回転可能に支持されている。ドラム11は、ヘッドパイプ16に一体に固定されていてもよい。
【0018】
図1に示されるように、駆動装置12は、一対のクランク24、駆動歯車26、流体駆動装置としての油圧装置28を備えている。一方のクランク24は、主フレーム4の右側に取り付けられている。他方のクランク24は、主フレーム4の左側に取り付けられている。これらのクランク24は、回転可能に取り付けられている。駆動歯車26は、主フレーム4に対して回転可能に取り付けられている。一対のクランク24の回転軸と駆動歯車26との回転軸は、同軸である。駆動歯車26はフリーホイールを備えている。この駆動歯車26は、フリーホイールを介してクランク24に取り付けられている。
【0019】
図3は、図1の自転車2の油圧装置28の油圧回路図である。この油圧装置28は、流体ポンプとしての油圧ポンプ30、流体モータとしての油圧モータ32、往路34、復路36、迂回路38及びマニホールド40を備えている。往路34は、油圧ポンプ30と油圧モータ32との間を連通している。復路36は、油圧モータ32と油圧ポンプ30との間を連通している。往路34は、その途中に分岐点42を備えている。復路36は、その途中に分岐点44を備えている。迂回路38は、分岐点42と分岐点44とを連通させている。往路34、復路36及び迂回路38は、流体が通される流路である。
【0020】
油圧ポンプ30として、油圧歯車ポンプが例示される。具体的には外接式ギアポンプ、内接式ギアポンプ、ピストンポンプ、べーンポンプ及びトロコイドポンプが例示される。油圧モータ32の構造は、基本的に油圧ポンプ30と同じである。油圧ポンプ30では、軸の回転が入力とされ油圧が出力とされている。油圧モータ32では、油圧が入力とされ軸の回転が出力とされている。
【0021】
図2に示されるように、往路34は、第一往路46、第二往路48、第三往路50、第四往路52を備えている。第一往路46は、流体ポンプ30とドラム11の第二往路48とを連通している。第二往路48は、ドラム11の内部に形成された空間である。第二往路48は、操舵軸20の第三往路50と連通している。第三往路50は操舵軸20の内部に形成された一方の空間である。第四往路52は、操舵軸20の第三往路50と流体モータ32を連通している。
【0022】
図3に示されるように、この往路34は、逆止弁54、アキュームレータ56及びスイベルジョイント58を備えている。この逆止弁54は、油圧ポンプ30と分岐点42との間の往路34に位置している。この逆止弁54は、油圧ポンプ30側から油圧モータ32側への油の流れを許容する。この逆止弁54は、油圧モータ32側から油圧ポンプ30側への油の流れを阻止する。この逆止弁54は、分岐点42と油圧モータ32との間の往路34に位置してもよい。アキュームレータ56は、油圧モータ32と分岐点42との間の往路34に位置している。アキュームレータ56は、分岐点42と油圧ポンプ30との間の往路34に位置してもよい。
【0023】
スイベルジョイント58は、操舵軸20とドラム11との間に形成されている。スイベルジョイント58は、流体圧下でも回転可能な管継手である。スイベルジョイント58は、操舵軸20とドラム11との間に形成されている。この自転車2では、互いに摺動する操舵軸20とドラム11との間にはシールとしてOリングが装着されている。このOリングにより第二往路48と第三往路50との間は液密に接続されている。
【0024】
図2に示されるように、復路34は、第一復路60、第二復路62、第三復路64、第四復路66を備えている。第一復路60は、流体ポンプ30とドラム11の第二復路62とを連通している。第二復路62は、ドラム11の内部に形成された空間である。第二復路62は、操舵軸20の第三復路64と連通している。第三復路64は、操舵軸20の内部に形成された他方の空間である。第四往路66は、操舵軸20の第三復路64と予備タンク70とを連通している。
【0025】
図3に示されるように、復路36は、パイロット圧で開閉する開閉弁としてのカウンターバランスバルブ68、予備タンク70及びスイベルジョイント72を備えている。予備タンク70は、分岐点44と油圧ポンプ30との間の復路36に位置している。予備タンク70は、復路36の終点に位置している。予備タンク70は、油圧ポンプ30と連通している。この予備タンク70は、フィルター74を備えている。
【0026】
カウンターバランスバルブ68は、分岐点44と予備タンク70との間の復路36に位置している。このカウンターバランスバルブ68は、往路34の流体圧が復路36の流体圧より大きいときには復路36を連通させる。このカウンターバランスバルブ68は、往路34の流体圧が復路36の流体圧以下のときには復路36を遮断する。このカウンターバランスバルブ68は、往路34の流体圧により復路36を開閉している。このカウンターバランスバルブ68は、往路34の流体圧をパイロット圧としている。この開閉弁として例えばパイロットチェック弁を用いても良い。
【0027】
スイベルジョイント72は、操舵軸20とドラム11との間に形成されている。スイベルジョイント72は、流体圧下でも回転可能な管継手である。スイベルジョイント72は、操舵軸20とドラム11との間に形成されている。この自転車2では、互いに摺動する操舵軸20とドラム11との間にはシールとしてOリングが装着されている。このOリングにより第二復路62と第三復路64との間は液密に接続されている。
【0028】
迂回路38は、流量調整弁76及び逆止弁78を備えている。流量調整弁76は、逆止弁78と分岐点44との間の迂回路38に位置する。流量調整弁76は、迂回路38を流れる油の量を調節する。この流量調整弁76としては、絞り弁が例示できる。絞り弁は、つまみの操作で流路の開口断面積を変更できる。この絞り弁は簡単な構造で安価である。逆止弁78は、分岐点42と流量調整弁76との間の迂回路38に位置する。逆止弁78は、分岐点44側から分岐点42側への油の流れを許容する。この逆止弁78は、分岐点42側から分岐点44側への油の流れを阻止する。
【0029】
この自転車2の油圧装置28では、マニホールド40を備えている。このマニホールド40は金属製のブロックである。このマニホールド40の材質としては、アルミニウム合金が例示される。このマニホールド40の内部には、往路34の一部、復路36の一部、迂回路38、分岐点42及び分岐点44が形成されている。このマニホールド40には、逆止弁54、アキュームレータ56、カウンターバランスバルブ50、流量調整弁76、逆止弁78が取り付けられている。この逆止弁54、アキュームレータ56、カウンターバランスバルブ50、流量調整弁76、逆止弁78及びマニホールド40は、バルブユニットを構成している。
【0030】
図1に示されるように、油圧ポンプ30は、歯車80及び軸82を備えている。この歯車80は、駆動歯車26と噛み合っている。この歯車80は、軸82の一端に固定されている。この歯車80及び軸82は、軸82を回転軸として回転可能に油圧ポンプ30に支持されている。油圧ポンプ30は、この軸82の回転により駆動させられる。
【0031】
図2に示されるように、油圧モータ32の回転軸は、前輪軸23に接続されている。この油圧モータ32の回転軸の回転は、前輪軸23に伝えられるように構成されている。この自転車2では、油圧モータ32の回転軸と前輪軸23とが連結されている。油圧モータ32の回転軸と前輪6の回転軸とは、動力伝達機構を介して回転を伝達してもよい。動力伝達機構としては、歯車、チェーン及びベルトが例示できる。
【0032】
図1の自転車2では、一対のクランク24が運転者により漕がれ、クランク24が回転する。クランク24の回転により、駆動歯車26が回転する。駆動歯車26の回転は、油圧ポンプ30の歯車80に伝えられる。この自転車2では、駆動歯車26は、フリーホイールを備えている。このフリーホイールのラチェット機構により、クランク24の回転は、一方の回転向きのみが駆動歯車26に伝えられる。他方の回転向きの回転は、フリーホイールと駆動歯車26との間で空回りして伝えられない。
【0033】
クランク24の一方の回転向きの回転により、駆動歯車26が回転する。駆動歯車26の回転は、歯車80に伝えられる。歯車80の回転により、軸82が回転する。軸82の回転により、油圧ポンプ30が駆動される。この油圧ポンプ30は、予備タンク70から油を吸い上げる。この予備タンク70では、フィルター74を通された油が油圧ポンプ30に送られる。この油圧ポンプ30により、往路34を通って油圧モータ32に油が流れる。往路34では、逆止弁54により油の逆流が阻止されている。逆止弁78により、油が分岐点42から分岐点44へ流れることが阻止されている。この油の油圧により、油圧モータ32が回転する。
【0034】
この油は、油圧モータ32から復路36を通って予備タンク70へ流れる。復路36の油圧は、往路34の油圧より低い。この圧力差により、迂回路38は、逆止弁78により遮断される。この圧力差により、カウンターバランスバルブ50は、復路36を連通させている。油は、予備タンク70、油圧ポンプ30、往路34、油圧モータ32、復路36の順に経由して予備タンク70に戻されている。この自転車2では、流体として油が用いられているが、流体は油に限られない。流体ポンプにより流体圧を発生させられ、この流体圧で流体モータを駆動させられる流体であればよい。
【0035】
この油圧モータ32の回転により、前輪6が回転させられる。この往路34は、アキュームレータ56を備えている。このアキュームレータ56は、往路34の油圧の急激な上昇を抑制する。これにより、油圧モータ32は、滑らかに駆動させられる。これにより、駆動輪である前輪6が、滑らかに回転し始める。
【0036】
第一往路46又は第四往路52のいずれか又は両方は、弾性変形可能な柔軟な管で構成されてもよい。この管は、油圧の急激な変動を管自身が膨張変形して緩和する。この管を用いた往路34では、アキュームレータ56を備えなくても、前輪6が滑らかに回転し始める。弾性変形可能な柔軟な管としては、ゴム管が例示される。
【0037】
図1のハンドル18が、運転者により回転させられる。ハンドル18の回転にともなって、操舵軸20が回転する。操舵軸20の回転により、前輪6の進行方向が変えられる。これにより、自転車2は走行向きが変えられる。
【0038】
往路34及び復路36は、それぞれスイベルジョイント58、72を備えている。これにより、操舵軸20とドラム11との間の回転摺動中も、流体が液密に往路34及び復路36を流れる。この駆動装置12は、簡単な構造で、操舵軸兼駆動輪の操舵軸20の回転を可能としている。この自転車2では、操舵軸20は流体の流路による制約を受けることなくヘッドパイプ16に対して回転可能とされている。この自転車2では、スイベルジョイント58、72により、操舵軸20が回転しても流路の管に与える負荷は小さい。
【0039】
この油圧装置28の往路34は、逆止弁54を備えている。これにより、油圧モータ32側から油圧ポンプ30側への油の逆流が抑制されている。迂回路38は、逆止弁78を備えている。これにより、分岐点42から分岐点44への油の逆流が抑制されている。この自転車2では、油圧モータ32の逆回転が抑制されている。この自転車2では、上り坂の途中で止めても自転車2が後退することが抑制されている。
【0040】
この油圧装置28は、迂回路38とカウンターバランスバルブ50とを備えている。カウンターバランスバルブ50は、往路34の油圧が復路36の油圧以下のときには復路36を遮断する。これにより、油は、分岐点42、往路34、油圧モータ32、復路36、分岐点44及び迂回路38を循環する。この自転車2では、下り坂を下るときに、油圧ポンプ30が油圧モータ32側からの油圧を受けない。この自転車2は、クランク24を静止させた状態で坂道を下ることができる。
【0041】
この油圧装置28は、流量調整弁76を備えている。これにより、迂回路38を流れる油の量が調節される。これにより、この自転車2は、下り坂での走行速度を抑制することができる。この流量調整弁76は、つまみをまわすことで、油の流量が調整可能である。この流量調整弁76を備えた自転車2は、下り坂での走行速度を調整することができる。
この自転車2は、流量調整弁76により予め油の流量を調整しておくことで、下り坂を遅い速度で安全に下ることができる。
【0042】
この自転車2の駆動装置12は、油圧で駆動される。この自転車2は、チェーンを備えていない。この自転車2は、駆動を伝える往路34、復路36の配置の自由度が大きい。この自転車2では、マニホールド40により、油圧機器がコンパクトにまとめられている。この自転車2では、運転者の足元のスペースを広く確保することができる。この自転車2では、運転者の足元に可動部が露出しない。この自転車2は、運転者の安全性がより高く確保されている。この自転車2の駆動装置12は、身障者及び高齢者のための車椅子に好適である。
【0043】
この駆動歯車26のフリーホイールは、クランク24の一方の回転向きの回転のみ伝える。クランク24の他方の回転向きの回転はフリーホイールにより伝えられないように構成されている。これにより、前輪6が回転中にクランク24を静止させることができる。クランク24を静止させた惰性走行の自転車2では、油は迂回路38を通って循環させられる。流量調整弁76が、油の流れに対して抵抗として働く。この自転車2は、短い距離で緩やかに停止させることができる。この自転車2は、安全に停止できる。
【0044】
この自転車2では、前輪6が駆動輪兼操舵輪である。ハンドル18をまわして、前輪6の進行向きが直進向きから斜め前方に変えられると、自転車2は前進しながら旋回させられる。前輪6の進行向きが直進向きから斜め後方に変えられると、自転車2は後退しながら旋回させられる。前輪6の進行向きが直進向きから180°変えられると、自転車2は後退させられる。この様にこの自転車2は小回りに適している。この自転車2の操舵及び駆動の構成は車椅子にも適している。本発明に係る自転車には車椅子も含まれる。
【0045】
図4に示された自転車102の駆動伝達機構では、かさ歯車118、かさ歯車120及びパイプ122は操舵軸108の軸線を回転軸として回転する。操舵軸108は、ハンドルの操舵によりその軸線を回転軸として回転し、進行方向が変更される。この自転車102では、かさ歯車118、かさ歯車120及びパイプ122が回転することにより、操舵軸108を回転させる力が働く。特に静止状態から動力を加えられたときに操舵軸108を回転させる力が働きやすい。このため、ハンドルがしっかり握られていない状態で、クランクを漕ぎ出すとハンドルが、かさ歯車118、かさ歯車120及びパイプ122の回転方向に取られる現象が生じやすい。
【0046】
自転車2では、油圧モータ32により前輪6が駆動される。この自転車2では、操舵軸20を回転させる駆動力が発生しない。これにより、特に静止状態から動力を加えられた直後に操舵軸20を回転させる力が発生しない。この自転車2では、駆動力によりハンドル18がとられない。この自転車2は、ハンドル18を握る力が軽減されている。この自転車2の駆動輪兼操舵輪は、身障者及び高齢者のための車椅子に好適である。
【0047】
図1の自転車2では、前輪6を駆動輪兼操舵輪としている。後輪8を駆動輪兼操舵輪としてもよい。後輪8を操舵輪とする自転車では、前方のハンドルの操舵を後方の操舵輪に伝える操舵力伝達機構が設けられる。この自転車2では、第一往路46、第四往路52、第一復路60及び第四復路66は固定できる。第一往路46、第四往路52、第一復路60及び第四復路66は、金属製の配管を用いてもよい。金属製の配管を用いることで、管の耐久性が向上する。金属製の配管が用いられても、この自転車では、アキュームレータ56により駆動輪が滑らかに回転し始める。
【0048】
自転車の主フレームの前方左右及び後方左右の4箇所にキャスターを備えて、更にこの駆動輪兼操舵輪を設けてもよい。このキャスターは、進行方向が自由に変えられる車輪である。例えば、主フレームの前方左右のキャスターと後方左右のキャスターとの中間に駆動輪兼操舵輪を設けてもよい。この自転車は、主フレームの前後方向の向きに関わらず、どの方向へも移動できる。この自転車は、車椅子に好適である。前方左右のキャスター、後方左右のキャスター及び駆動輪兼操舵輪を設けることで、駆動輪兼操舵輪の進行方向に360°いずれの方向にも直線的な移動も可能である。
【0049】
図1の自転車2は、クランク24により駆動する。このクランク24は、足で回転させられる。このクランク24は、主フレーム4の上方に設置されて手動クランクとしてもよい。人力の駆動に代えて油圧ポンプ30がモータにより駆動されてもよい。
【0050】
この実施形態で示されるように、本発明に係る自転車2では、図3の駆動伝達機構を備えた自転車102に比べ、駆動装置12の配置の自由度が大きい。運転者の安全性もより高まる。このように、駆動装置12の配置の自由度が高く、安全性に優れることから、車椅子の駆動装置にも好適である。この自転車2は、流体駆動される駆動輪兼操舵輪を備えた自転車に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車椅子を含む自転車に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る自転車の正面図である。
【図2】図2は、図1の自転車の操舵部の断面が示された側面図である。
【図3】図3は、図1の自転車の油圧装置の油圧回路図である。
【図4】図4は、従来の自転車の駆動伝達機構の部分断面が示された側面図である。
【符号の説明】
【0053】
2・・・自転車
4・・・主フレーム
6・・・前輪
8・・・後輪
10・・・操舵部
11・・・ドラム
12・・・駆動装置
14・・・サドル
16・・・ヘッドパイプ
18・・・ハンドル
20・・・操舵軸
22・・・ホーク
23・・・前輪軸
24・・・クランク
26・・・駆動歯車
28・・・油圧装置
30・・・油圧ポンプ
32・・・油圧モータ
34・・・往路
36・・・復路
38・・・迂回路
40・・・マニホールド
42・・・分岐点
44・・・分岐点
46・・・第一往路
48・・・第二往路
50・・・第三往路
52・・・第四往路
54・・・逆止弁
56・・・アキュームレータ
58・・・スイベルジョイント
60・・・第一復路
62・・・第二復路
64・・・第三復路
66・・・第四復路
68・・・カウンターバランスバルブ
70・・・予備タンク
72・・・スイベルジョイント
74・・・フィルター
76・・・流量調整弁
78・・・逆止弁
80・・・歯車
82・・・軸
102・・・自転車
104・・・前輪
106・・・ヘッドパイプ
108・・・操舵軸
110・・・前輪軸
112・・・チェーン
114・・・ギア
116、118、120、124・・・かさ歯車
122・・・パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主フレームと、ドラムと、操舵軸と、駆動輪と、流体駆動装置とを備えており、
この操舵軸が主フレームに操舵軸を回転軸として回転可能に支持されており、
この操舵軸がドラムに対して操舵軸を回転軸として回転可能とされており、
この駆動輪が操舵軸に駆動輪の軸線を回転軸として回転可能に支持されており、
この流体駆動装置が流体ポンプ、往路、復路及び流体モータを備えており、
この往路が流体ポンプと流体モータとを接続しており、
この往路がドラムの内部と操舵軸の内部とを通って形成されており、
この復路が流体モータと流体ポンプとを接続しており、
この復路がドラムの内部と操舵軸の内部とを通って形成されており、
この往路及び復路が操舵軸とドラムとの間にそれぞれスイベルジョイントを備えており、
この流体モータが駆動輪を回転させる自転車。
【請求項2】
上記往路が流体ポンプとドラムとを接続する第一往路と、ドラムに形成された第二往路と、操舵軸に形成された第三往路と、操舵軸と流体モータとを接続する第四往路とを備えており、
上記復路が流体モータと操舵軸とを接続する第四復路と、操舵軸に形成された第三復路と、ドラムに形成された第二復路と、ドラムと流体ポンプを接続する第一復路とを備えており、
この第二往路と第三往路とはスイベルジョイントで接続されており、
この第二復路と第三復路とはスイベルジョイントで接続されている請求項1に記載の自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−190460(P2009−190460A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30623(P2008−30623)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(598026851)株式会社カワムラサイクル (42)