流動層ガス化炉
【課題】水蒸気の使用量を削減できる流動層ガス化炉を提供する。
【解決手段】二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25を、炉本体26一側部の底部に設けた第一のガスボックス32から炉内へ上向きに供給し、ガス化剤としての水蒸気3を、炉本体26他側部の底部に設けた第二のガスボックス34から炉内へ上向きに供給する構成を採り、炉本体26内の一側部に吹き込まれるCO2ガス25により、炉本体26に供給される高温の流動媒体15を流動化して流動層4を形成させ、炉本体26内の他側部に吹き込まれる水蒸気3により、可燃性のガス化ガス18を生成させるとともに、流動媒体15と未燃固形分を流動化して流動層4を形成させる。
【解決手段】二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25を、炉本体26一側部の底部に設けた第一のガスボックス32から炉内へ上向きに供給し、ガス化剤としての水蒸気3を、炉本体26他側部の底部に設けた第二のガスボックス34から炉内へ上向きに供給する構成を採り、炉本体26内の一側部に吹き込まれるCO2ガス25により、炉本体26に供給される高温の流動媒体15を流動化して流動層4を形成させ、炉本体26内の他側部に吹き込まれる水蒸気3により、可燃性のガス化ガス18を生成させるとともに、流動媒体15と未燃固形分を流動化して流動層4を形成させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流動層ガス化炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二塔式ガス化炉の流動層ガス化炉においては、高温の流動媒体(硅砂、石灰性など)を、下部から吹き込まれる水蒸気により流動化して流動層を形成し、この状態で流動層上部のフリーボードへ石炭、バイオマスなどの固体原料を供給すると、該固体原料の可燃性のガス化ガス(H2、CO、炭化水素)と未燃固形分とに熱分解され、該未燃固形分の一部が水蒸気、あるいは固体原料自体から蒸発した水分と水性ガス化反応を行って可燃性のガス化ガス(H2、CO)を生成し、COの一部が水蒸気と反応して、CO2とH2Oを生成する(例えば、特許文献1)。また、流動層ガス化炉に供給された固体原料が流動層中の流動媒体に触れると、前記H2、CO、炭化水素、水分の他に、固体原料に含まれているタールが蒸発する。
【0003】
つまり、流動層ガス化炉に吹き込まれる水蒸気は、可燃性のガス化ガスを生成させるためのガス化剤であるとともに、前段の媒体分離装置から流動層ガス化炉に供給される高温の流動媒体を流動化して流動層を形成する役割を担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−018749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体原料が流動層中の流動媒体に触れた際に蒸発したタールの一部は、未燃固形分や後続して流動層ガス化炉に供給される固体原料の表面に付着し、ガス化ガスの生成を阻害する。このため、流動層ガス化炉に吹き込まれる水蒸気の一部はガス化剤として機能せず、単に流動層を形成する役割だけを担っていることになり、水蒸気発生手段において水蒸気を発生させるためのエネルギーが無駄になっている。
【0006】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、水蒸気の使用量を削減できる流動層ガス化炉を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
外方から炉本体の一側内方へ流動媒体と固体原料とが供給され、炉本体の他側内方から外部へ未燃固形分と流動媒体とガス化ガスとが送出される流動層ガス化炉において、
ガス化ガスに含まれているCO2ガスを分離し得る二酸化炭素分離手段と、
該二酸化炭素分離手段によって得たCO2ガスを前記炉本体の底部から炉内に上向きに供給し得る第一のガス供給手段と、
ガス化剤として水蒸気を前記炉本体の底部から炉内に上向きに供給し得る第二のガス供給手段とを備えている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
第一のガス供給手段を、CO2ガスを前記炉本体の一側底部から炉内に上向きに供給し得るように構成し、
第二のガス供給手段を、水蒸気を前記炉本体の他側底部から炉内に上向きに供給し得る構成したもので、
炉本体内の一側底部に供給されるCO2ガスは、流動媒体を流動化して流動層を形成する役割だけを担い、
炉本体内の他側底部に供給される水蒸気は、可燃性のガス化ガスを生成させるためのガス化剤であるとともに、前記流動媒体と未燃固形分を流動化して流動層を形成する役割を担う。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
炉本体内に仕切板を設けられ、炉本体内の流動媒体が滞留し得る範囲の上部を、第一のガス供給手段上方の熱分解ゾーンと第二のガス供給手段上方のガス化ゾーンとに区分したもので、
前記仕切板が、ガス化ゾーンから熱分解ゾーンへ水蒸気が拡散することを抑えるので、可燃性のガス化ガスを効率よく生成することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2のいずれかに記載の流動層ガス化炉において、
炉本体を、一側の第一の炉本体と、他側の第二の炉本体と、第一、第二の炉本体の下部を連通させる移送通路とによって構成し、
第一の炉本体に第一のガス供給手段を設け、
第二の炉本体に第二のガス供給手段を設けたもので、
移送通路内に入った流動媒体及び未燃固形分が、第一の炉本体から第二の炉本体へ水蒸気が流れ込むことを防ぐので、可燃性のガス化ガスを効率よく生成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流動層ガス化炉によれば、下記のような優れた作用効果を奏し得る。
【0012】
二酸化炭素分離手段でガス化ガスから分離したCO2ガスを第一のガス供給手段を介して炉本体内の一側部へ送り込み、流動媒体及び固体原料の流動層の形成に利用するので、流動層ガス化炉全体としての水蒸気の使用量が削減され、水蒸気を発生させるためのエネルギーの消費を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の流動層ガス化炉の第1の例を用いた二塔式ガス化炉を示す概念図である。
【図2】本発明の流動層ガス化炉の第2の例を用いた二塔式ガス化炉を示す概念図である。
【図3】本発明の流動層ガス化炉の第3の例を用いた二塔式ガス化炉を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0015】
図1は本発明の流動層ガス化炉の第1の例を用いた二塔式ガス化炉を示すもので、26は流動層ガス化炉を構成する炉本体、6は燃焼炉である。
【0016】
炉本体26内では、水蒸気3(ガス化剤)と固体原料5(石炭、バイオマスなど)とからガス化ガス18と可燃性固形分(未燃固形分)が生成され、この未燃性固形分と流動層4を形成する流動媒体との混合流体は、シール部8(ループシール)を経て燃焼炉6へ送給される。
【0017】
燃焼炉6では、その下部から分散板9を介して供給される空気10(もしくは酸素)によって前記未燃固形分を流動燃焼させ、流動媒体を加熱する。燃焼炉6で流動燃焼した燃焼流体11は、燃焼炉6の上部から排ガス管12を経てホットサイクロンなどの媒体分離装置13に送給され、燃焼排ガス14と流動媒体15とに分離される。
【0018】
前記シール部8には、その下部から供給される水蒸気3によって混合流体7を上向きに移送させる個所があり、燃焼炉6に供給される空気10(もしくは酸素)が流動層ガス化炉1へ流れ込むことを防いでいる。
【0019】
媒体分離装置13において燃焼流体11から分離された高温(800℃程度)の流動媒体15は、ダウンカマー16及びシール部21(ループシール)を経て前記流動層ガス化炉1に供給される。また、流動層ガス化炉1の流動層4の上部のフリーボード17に生成されたガス化ガス18は、導出管19を経てホットサイクロンなどの固体分離装置20に送給され、ここでガス化ガス18中に含まれている固体粒子23が分離される。
【0020】
更に、ガス化ガス18中にはCO2ガス25が10〜15%程度の割合で混合しており、このCO2ガス25を回収するために、固体分離装置20の後段に二酸化炭素分離手段24を設けている。二酸化炭素分離手段24ではCO2ガス25を、メタノールを吸収液に用いるレクチゾール法、またはポリエチレングリコールのジメチルエーテルを吸収液に用いるセレクソール法などの物理吸収方法によって回収する。
【0021】
前記シール部21には、その下部から供給される水蒸気3によって流動媒体15を上向きに移送させる個所があり、流動層ガス化炉1からガスが固体分離装置20へ流れ込むことを防いでいる。
【0022】
図中、22は原料供給装置であり、該原料供給装置22は、流動層ガス化炉1内の流動層4の上部のフリーボード17に固体原料5を供給するように構成されている。
【0023】
流動層ガス化炉は、炉本体26の一側部に、前記シール部21から炉内へ高温の流動媒体15を供給する流動媒体入口27、及び前記原料供給装置22から炉内へ固体原料5を供給する原料入口28を設け、炉本体26の他側部に、炉内から前記シール部8へ未燃固形分と流動媒体との混合流体7を送出させる流動媒体出口29、及び炉内から前記固体分離装置20へガス化ガス18を送出させるガス出口30とを設けたものである。
【0024】
図1に示す流動層ガス化炉の特徴部分は、炉本体26の一側部の底部に、前記二酸化炭素分離手段24によりガス化ガス18から分離したCO2ガス25を、分散板31を介して炉内へ上向きに供給し得る中空構造の第一のガスボックス32を設け、炉本体26の他側部の底部に、ガス化剤としての水蒸気3を、分散板33を介して炉内へ上向きに供給し得る中空構造の第二のガスボックス34を設けた点にある。
【0025】
更に、シール部8,21に二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25を供給し、シール部8においては、その下部から供給されるCO2ガス25によって混合流体7を上向きに移送させるようにして、燃焼炉6に供給される空気10(もしくは酸素)が炉本体26へ流れ込むことを防ぎ、シール部21においては、その下部から供給されるCO2ガス25によって流動媒体15を上向きに移送させるようにして、炉本体26からガスが固体分離装置20へ流れ込むことを防いでいる。二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25は、ブロワ(図示せず)により昇圧され、第一のガスボックス32、及びシール部8,21へと送り込まれる。
【0026】
次に、図1に示す流動層ガス化炉の作動について述べる。二塔式ガス化炉の稼働中は、二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25を、炉本体26一側部の底部に設けた第一のガスボックス32の分散板31を介して炉内へ上向きに供給し、水蒸気発生手段(図示せず)によって発生させたガス化剤としての水蒸気3を、炉本体26他側部の底部に設けた第二のガスボックス34の分散板33を介して炉内へ上向きに供給する。
【0027】
媒体分離装置13からシール部21を経て炉本体26一側部内に供給された直後の高温の流動媒体15は、第一のガスボックス32から吹き込まれるCO2ガス25により流動化して流動層4を形成する。この状態で原料供給装置22により炉本体26一側内部のフリーボード17に石炭、バイオマスなどの固体原料5を供給すると、該固体原料5が可燃性のガス化ガス18(H2、CO、炭化水素)と未燃固形分とに熱分解される。また、炉本体26に供給された固体原料5が流動層4中の流動媒体に触れた際には、前記H2、CO、炭化水素、水分の他に、固体原料5に含まれているタールが蒸発する。
【0028】
流動層ガス化炉内の流動媒体及び未燃固形分は、外部から炉本体26内の一側部に流動媒体15と固体原料5が供給されること、並びに炉本体26内の他側部から外部へ未燃固形分と流動媒体との混合流体7が送出されることの相乗的な効果で、炉本体26内をその一側部から他側部へ向けて漸次移動する。
【0029】
そして、炉本体26の他側部において前記流動媒体15と未燃固形分は、第2のガスボックス34から吹き込まれる水蒸気3により引き続き流動層4を形成する。未燃固形分の一部は水蒸気3、あるいは固体原料5自体から蒸発した水分と水性ガス化反応を行って可燃性のガス化ガス18(H2、CO)を生成し、COの一部が水蒸気3と反応して、CO2とH2Oを生成する。
【0030】
つまり、炉本体26内の一側部に吹き込まれるCO2ガス25は、前段の媒体分離装置13から炉本体26に供給される高温の流動媒体15を流動化して流動層4を形成する役割だけを担い、炉本体26内の他側部に吹き込まれる水蒸気3は、可燃性のガス化ガス18を生成させるためのガス化剤であるとともに、前記流動媒体15と未燃固形分を流動化して流動層4を形成する役割を担っている。
【0031】
未燃固形分と流動媒体との混合流体7は、シール部8を経て燃焼炉6へ送給され、該燃焼炉6に供給される空気10により未燃固形分が燃焼するとともに高速で流動する流動媒体の加熱が図られる。未燃固形分の燃焼によって流動媒体を加熱した燃焼流体11は、排ガス管12を経て媒体分離装置13に送給され、燃焼排ガス14と流動媒体15とに分離される。
【0032】
この後、流動媒体15はダウンカマー16及びシール部21を経て流動層ガス化炉1に還流する。また、流動層ガス化炉1の流動層4の上部のフリーボード17に生成されたガス化ガス18は、導出管19を経てホットサイクロンなどの固体分離装置20に送給され、ガス化ガス18中に含まれている固体粒子23が分離され、更に、ガス化ガス18中に混合しているCO2ガス25は二酸化炭素分離手段24によって回収される。このCO2ガス25は、ブロワ(図示せず)により昇圧され、第一のガスボックス32、及びシール部8,21へと送り込まれる。
【0033】
図1に示す流動層ガス化炉では、二酸化炭素分離手段24でガス化ガス18から分離したCO2ガス25を、炉本体26内の一側部、及びシール部8,21へ送り込み、炉本体26においては流動層4の形成に利用し、シール部8においては、炉本体26への空気10(もしくは酸素)の流入抑止に利用し、シール部21においては、固体分離装置20へのガスの流入抑止に利用するので、流動層ガス化炉全体としての水蒸気3の使用量が削減され、水蒸気3を発生させるために水蒸気発生手段(図示せず)が消費するエネルギーを少なくすることができる。
【0034】
図2は本発明の流動層ガス化炉の第2の例を用いた二塔式ガス化炉を示すものであり、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0035】
図2に示す流動層ガス化炉では、炉本体26内に仕切板35を設けることにより、流動媒体が滞留し得る範囲(流動層4が形成される範囲)の上部を、第一のガスボックス32上方(炉本体26の一側部)の熱分解ゾーン36と第二のガスボックス34上方(炉本体26の他側部)のガス化ゾーン37とに区分している。
【0036】
仕切板35は流動層4が形成される範囲の上部に設けられているので、流動層4が形成される範囲の下部は、炉本体26の一側部と他側部とが区分されることなく連通しており、流動媒体及び未燃固形分は熱分解ゾーン36から仕切板35の下方を通り抜け、ガス化ゾーン37へ向けて漸次移動できる。
【0037】
次に、図2に示す流動層ガス化炉の作動について述べる。二塔式ガス化炉の稼働中は、二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25を、炉本体26一側部の底部に設けた第一のガスボックス32の分散板31を介して炉内の熱分解ゾーン36へ上向きに供給し、水蒸気発生手段(図示せず)によって発生させたガス化剤としての水蒸気3を、炉本体26の他側部の底部に設けた第二のガスボックス34の分散板33を介して炉内のガス化ゾーン37へ上向きに供給する。
【0038】
媒体分離装置13から熱分解ゾーン36に供給された直後の高温の流動媒体15は、第一のガスボックス32から吹き込まれるCO2ガス25により流動化して流動層4を形成する。この状態で原料供給装置22により熱分解ゾーン36上方のフリーボード17に固体原料5を供給すると、該固体原料5が可燃性のガス化ガス18(H2、CO、炭化水素)と未燃固形分とに熱分解される。また、熱分解ゾーン36に供給された固体原料5が流動層4中の流動媒体に触れた際には、前記H2、CO、炭化水素、水分の他に、固体原料5に含まれているタールが蒸発する。
【0039】
流動層ガス化炉内の流動媒体及び未燃固形分は、外部から炉本体26内の一側部の熱分解ゾーン36に流動媒体15と固体原料5が供給されること、並びに炉本体26内の他側部のガス化ゾーン37から外部へ未燃固形分と流動媒体との混合流体7が送出されることの相乗的な効果により、熱分解ゾーン36から仕切板35の下方を通り抜け、ガス化ゾーン37へ向けて漸次移動する。
【0040】
そして、ガス化ゾーン37において前記流動媒体15と未燃固形分は、第2のガスボックス34から吹き込まれる水蒸気3により引き続き流動層4を形成する。未燃固形分の一部は水蒸気3、あるいは固体原料5自体から蒸発した水分と水性ガス化反応を行って可燃性のガス化ガス18(H2、CO)を生成し、COの一部が水蒸気3と反応して、CO2とH2Oを生成する。
【0041】
つまり、熱分解ゾーン36に吹き込まれるCO2ガス25は、前段の媒体分離装置13から炉本体26に供給される高温の流動媒体15を流動化して流動層4を形成する役割だけを担い、ガス化ゾーン37に吹き込まれる水蒸気3は、可燃性のガス化ガス18を生成させるためのガス化剤であるとともに、前記流動媒体15と未燃固形分を流動化して流動層4を形成する役割を担っている。
【0042】
図2に示す流動層ガス化炉では、二酸化炭素分離手段24でガス化ガス18から分離したCO2ガス25を、炉本体26内の熱分解ゾーン36、及びシール部8,21へ送り込み、炉本体26においては流動層4の形成に利用し、シール部8においては、炉本体26への空気10(もしくは酸素)の流入抑止に利用し、シール部21においては、固体分離装置20へのガスの流入抑止に利用するので、流動層ガス化炉全体としての水蒸気3の使用量が削減され、水蒸気3を発生させるために水蒸気発生手段(図示せず)が消費するエネルギーを少なくすることができる。
【0043】
また、炉本体26内に設けた仕切板35が、ガス化ゾーン37から熱分解ゾーン36へ水蒸気3が拡散することを抑えるので、可燃性のガス化ガス18(H2、CO)を効率よく生成することができる。
【0044】
図3は本発明の流動層ガス化炉の第3の例を用いた二塔式ガス化炉を示すものであり、図中、図1、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0045】
この流動層ガス化炉は、第一の炉本体26A、第二の炉本体26B、及び移送通路26Cを備え、第一の炉本体26Aの一側部に、シール部21から炉内へ高温の流動媒体15を供給する流動媒体入口27、及び原料供給装置22から炉内へ固体原料5を供給する原料入口28を設け、第二の炉本体26Bの他側部に、炉内からシール部8へ未燃固形分と流動媒体との混合流体7を送出させる流動媒体出口29、及び炉内から固体分離装置20へガス化ガス18を送出させるガス出口30とを設け、前記移送通路26Cを介して第一の炉本体26Aの他側部の下部に第二の炉本体26Bの一側部の下部を連通させている。
【0046】
第一の炉本体26Aの他側部の下部と第二の炉本体26Bの一側部の下部とは、移送通路26Cを介して連通しているので、流動媒体及び未燃固形分は第一の炉本体26Aから移送通路26Cを通り抜け、第二の炉本体26Bへ向けて漸次移動できる。
【0047】
図3に示す流動層ガス化炉の特徴部分は、第一の炉本体26Aの底部に、前記二酸化炭素分離手段24によりガス化ガス18から分離したCO2ガス25を、分散板31を介して炉内へ上向きに供給し得る中空構造の第一のガスボックス32を設け、第二の炉本体26Bの底部に、ガス化剤としての水蒸気3を、分散板33を介して炉内へ上向きに供給し得る中空構造の第二のガスボックス34を設けた点にある。
【0048】
次に、図3に示す流動層ガス化炉の作動について述べる。二塔式ガス化炉の稼働中は、二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25を、第一の炉本体26Aの底部に設けた第一のガスボックス32の分散板31を介して第一の炉本体26A内へ上向きに供給し、水蒸気発生手段(図示せず)によって発生させたガス化剤としての水蒸気3を、第二の炉本体26Bの底部に設けた第二のガスボックス34の分散板33を介して第二の炉本体26B内へ上向きに供給する。
【0049】
媒体分離装置13から第一の炉本体26Aに供給された直後の高温の流動媒体15は、第一のガスボックス32から吹き込まれるCO2ガス25により流動化して流動層4を形成する。この状態で原料供給装置22により流動層4上方のフリーボード17に固体原料5を供給すると、該固体原料5が可燃性のガス化ガス18(H2、CO、炭化水素)と未燃固形分とに熱分解される。また、第一の炉本体26Aに供給された固体原料5が流動層4中の流動媒体に触れた際には、前記H2、CO、炭化水素、水分の他に、固体原料5に含まれているタールが蒸発する。
【0050】
流動層ガス化炉内の流動媒体及び未燃固形分は、外部から第一の炉本体26A内に流動媒体15と固体原料5が供給されること、並びに第二の炉本体26B内から外部へ未燃固形分と流動媒体との混合流体7が送出されることの相乗的な効果により、第一の炉本体26Aから移送通路26Cを通り抜け、第二の炉本体26Bへ向けて漸次移動する。
【0051】
そして、第二の炉本体26Bにおいて前記流動媒体15と未燃固形分は、第2のガスボックス34から吹き込まれる水蒸気3により流動層4を形成する。未燃固形分の一部は水蒸気3、あるいは固体原料5自体から蒸発した水分と水性ガス化反応を行って可燃性のガス化ガス18(H2、CO)を生成し、COの一部が水蒸気3と反応して、CO2とH2Oを生成する。
【0052】
つまり、第一の炉本体26Aに吹き込まれるCO2ガス25は、前段の媒体分離装置13から第一の炉本体26Aに供給される高温の流動媒体15を流動化して流動層4を形成する役割だけを担い、第二の炉本体26Bに吹き込まれる水蒸気3は、可燃性のガス化ガス18を生成させるためのガス化剤であるとともに、前記流動媒体15と未燃固形分を流動化して流動層4を形成する役割を担っている。
【0053】
図3に示す流動層ガス化炉では、二酸化炭素分離手段24でガス化ガス18から分離したCO2ガス25を、第一の炉本体26A、及びシール部8,21へ送り込み、第一の炉本体26Aにおいては流動層4の形成に利用し、シール部8においては、第二の炉本体26Bへの空気10(もしくは酸素)の流入抑止に利用し、シール部21においては、固体分離装置20へのガスの流入抑止に利用するので、流動層ガス化炉全体としての水蒸気3の使用量が削減され、水蒸気3を発生させるために水蒸気発生手段(図示せず)が消費するエネルギーを少なくすることができる。
【0054】
また、移送通路26C内の流動媒体及び未燃固形分が、第一の炉本体26Aから第二の炉本体26Bへ水蒸気3が流れ込むことを防ぐので、可燃性のガス化ガス18(H2、CO)を効率よく生成することができる。
【符号の説明】
【0055】
3 水蒸気
5 固体原料
7 混合流体
18 ガス化ガス
24 二酸化炭素分離手段
25 CO2ガス
26 炉本体
26A 第一の炉本体
26B 第二の炉本体
26C 移送通路
32 第一のガスボックス(第一のガス供給手段)
34 第二のガスボックス(第二のガス供給手段)
35 仕切板
36 熱分解ゾーン
37 ガス化ゾーン
【技術分野】
【0001】
本発明は流動層ガス化炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二塔式ガス化炉の流動層ガス化炉においては、高温の流動媒体(硅砂、石灰性など)を、下部から吹き込まれる水蒸気により流動化して流動層を形成し、この状態で流動層上部のフリーボードへ石炭、バイオマスなどの固体原料を供給すると、該固体原料の可燃性のガス化ガス(H2、CO、炭化水素)と未燃固形分とに熱分解され、該未燃固形分の一部が水蒸気、あるいは固体原料自体から蒸発した水分と水性ガス化反応を行って可燃性のガス化ガス(H2、CO)を生成し、COの一部が水蒸気と反応して、CO2とH2Oを生成する(例えば、特許文献1)。また、流動層ガス化炉に供給された固体原料が流動層中の流動媒体に触れると、前記H2、CO、炭化水素、水分の他に、固体原料に含まれているタールが蒸発する。
【0003】
つまり、流動層ガス化炉に吹き込まれる水蒸気は、可燃性のガス化ガスを生成させるためのガス化剤であるとともに、前段の媒体分離装置から流動層ガス化炉に供給される高温の流動媒体を流動化して流動層を形成する役割を担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−018749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体原料が流動層中の流動媒体に触れた際に蒸発したタールの一部は、未燃固形分や後続して流動層ガス化炉に供給される固体原料の表面に付着し、ガス化ガスの生成を阻害する。このため、流動層ガス化炉に吹き込まれる水蒸気の一部はガス化剤として機能せず、単に流動層を形成する役割だけを担っていることになり、水蒸気発生手段において水蒸気を発生させるためのエネルギーが無駄になっている。
【0006】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、水蒸気の使用量を削減できる流動層ガス化炉を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
外方から炉本体の一側内方へ流動媒体と固体原料とが供給され、炉本体の他側内方から外部へ未燃固形分と流動媒体とガス化ガスとが送出される流動層ガス化炉において、
ガス化ガスに含まれているCO2ガスを分離し得る二酸化炭素分離手段と、
該二酸化炭素分離手段によって得たCO2ガスを前記炉本体の底部から炉内に上向きに供給し得る第一のガス供給手段と、
ガス化剤として水蒸気を前記炉本体の底部から炉内に上向きに供給し得る第二のガス供給手段とを備えている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
第一のガス供給手段を、CO2ガスを前記炉本体の一側底部から炉内に上向きに供給し得るように構成し、
第二のガス供給手段を、水蒸気を前記炉本体の他側底部から炉内に上向きに供給し得る構成したもので、
炉本体内の一側底部に供給されるCO2ガスは、流動媒体を流動化して流動層を形成する役割だけを担い、
炉本体内の他側底部に供給される水蒸気は、可燃性のガス化ガスを生成させるためのガス化剤であるとともに、前記流動媒体と未燃固形分を流動化して流動層を形成する役割を担う。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
炉本体内に仕切板を設けられ、炉本体内の流動媒体が滞留し得る範囲の上部を、第一のガス供給手段上方の熱分解ゾーンと第二のガス供給手段上方のガス化ゾーンとに区分したもので、
前記仕切板が、ガス化ゾーンから熱分解ゾーンへ水蒸気が拡散することを抑えるので、可燃性のガス化ガスを効率よく生成することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2のいずれかに記載の流動層ガス化炉において、
炉本体を、一側の第一の炉本体と、他側の第二の炉本体と、第一、第二の炉本体の下部を連通させる移送通路とによって構成し、
第一の炉本体に第一のガス供給手段を設け、
第二の炉本体に第二のガス供給手段を設けたもので、
移送通路内に入った流動媒体及び未燃固形分が、第一の炉本体から第二の炉本体へ水蒸気が流れ込むことを防ぐので、可燃性のガス化ガスを効率よく生成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流動層ガス化炉によれば、下記のような優れた作用効果を奏し得る。
【0012】
二酸化炭素分離手段でガス化ガスから分離したCO2ガスを第一のガス供給手段を介して炉本体内の一側部へ送り込み、流動媒体及び固体原料の流動層の形成に利用するので、流動層ガス化炉全体としての水蒸気の使用量が削減され、水蒸気を発生させるためのエネルギーの消費を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の流動層ガス化炉の第1の例を用いた二塔式ガス化炉を示す概念図である。
【図2】本発明の流動層ガス化炉の第2の例を用いた二塔式ガス化炉を示す概念図である。
【図3】本発明の流動層ガス化炉の第3の例を用いた二塔式ガス化炉を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0015】
図1は本発明の流動層ガス化炉の第1の例を用いた二塔式ガス化炉を示すもので、26は流動層ガス化炉を構成する炉本体、6は燃焼炉である。
【0016】
炉本体26内では、水蒸気3(ガス化剤)と固体原料5(石炭、バイオマスなど)とからガス化ガス18と可燃性固形分(未燃固形分)が生成され、この未燃性固形分と流動層4を形成する流動媒体との混合流体は、シール部8(ループシール)を経て燃焼炉6へ送給される。
【0017】
燃焼炉6では、その下部から分散板9を介して供給される空気10(もしくは酸素)によって前記未燃固形分を流動燃焼させ、流動媒体を加熱する。燃焼炉6で流動燃焼した燃焼流体11は、燃焼炉6の上部から排ガス管12を経てホットサイクロンなどの媒体分離装置13に送給され、燃焼排ガス14と流動媒体15とに分離される。
【0018】
前記シール部8には、その下部から供給される水蒸気3によって混合流体7を上向きに移送させる個所があり、燃焼炉6に供給される空気10(もしくは酸素)が流動層ガス化炉1へ流れ込むことを防いでいる。
【0019】
媒体分離装置13において燃焼流体11から分離された高温(800℃程度)の流動媒体15は、ダウンカマー16及びシール部21(ループシール)を経て前記流動層ガス化炉1に供給される。また、流動層ガス化炉1の流動層4の上部のフリーボード17に生成されたガス化ガス18は、導出管19を経てホットサイクロンなどの固体分離装置20に送給され、ここでガス化ガス18中に含まれている固体粒子23が分離される。
【0020】
更に、ガス化ガス18中にはCO2ガス25が10〜15%程度の割合で混合しており、このCO2ガス25を回収するために、固体分離装置20の後段に二酸化炭素分離手段24を設けている。二酸化炭素分離手段24ではCO2ガス25を、メタノールを吸収液に用いるレクチゾール法、またはポリエチレングリコールのジメチルエーテルを吸収液に用いるセレクソール法などの物理吸収方法によって回収する。
【0021】
前記シール部21には、その下部から供給される水蒸気3によって流動媒体15を上向きに移送させる個所があり、流動層ガス化炉1からガスが固体分離装置20へ流れ込むことを防いでいる。
【0022】
図中、22は原料供給装置であり、該原料供給装置22は、流動層ガス化炉1内の流動層4の上部のフリーボード17に固体原料5を供給するように構成されている。
【0023】
流動層ガス化炉は、炉本体26の一側部に、前記シール部21から炉内へ高温の流動媒体15を供給する流動媒体入口27、及び前記原料供給装置22から炉内へ固体原料5を供給する原料入口28を設け、炉本体26の他側部に、炉内から前記シール部8へ未燃固形分と流動媒体との混合流体7を送出させる流動媒体出口29、及び炉内から前記固体分離装置20へガス化ガス18を送出させるガス出口30とを設けたものである。
【0024】
図1に示す流動層ガス化炉の特徴部分は、炉本体26の一側部の底部に、前記二酸化炭素分離手段24によりガス化ガス18から分離したCO2ガス25を、分散板31を介して炉内へ上向きに供給し得る中空構造の第一のガスボックス32を設け、炉本体26の他側部の底部に、ガス化剤としての水蒸気3を、分散板33を介して炉内へ上向きに供給し得る中空構造の第二のガスボックス34を設けた点にある。
【0025】
更に、シール部8,21に二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25を供給し、シール部8においては、その下部から供給されるCO2ガス25によって混合流体7を上向きに移送させるようにして、燃焼炉6に供給される空気10(もしくは酸素)が炉本体26へ流れ込むことを防ぎ、シール部21においては、その下部から供給されるCO2ガス25によって流動媒体15を上向きに移送させるようにして、炉本体26からガスが固体分離装置20へ流れ込むことを防いでいる。二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25は、ブロワ(図示せず)により昇圧され、第一のガスボックス32、及びシール部8,21へと送り込まれる。
【0026】
次に、図1に示す流動層ガス化炉の作動について述べる。二塔式ガス化炉の稼働中は、二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25を、炉本体26一側部の底部に設けた第一のガスボックス32の分散板31を介して炉内へ上向きに供給し、水蒸気発生手段(図示せず)によって発生させたガス化剤としての水蒸気3を、炉本体26他側部の底部に設けた第二のガスボックス34の分散板33を介して炉内へ上向きに供給する。
【0027】
媒体分離装置13からシール部21を経て炉本体26一側部内に供給された直後の高温の流動媒体15は、第一のガスボックス32から吹き込まれるCO2ガス25により流動化して流動層4を形成する。この状態で原料供給装置22により炉本体26一側内部のフリーボード17に石炭、バイオマスなどの固体原料5を供給すると、該固体原料5が可燃性のガス化ガス18(H2、CO、炭化水素)と未燃固形分とに熱分解される。また、炉本体26に供給された固体原料5が流動層4中の流動媒体に触れた際には、前記H2、CO、炭化水素、水分の他に、固体原料5に含まれているタールが蒸発する。
【0028】
流動層ガス化炉内の流動媒体及び未燃固形分は、外部から炉本体26内の一側部に流動媒体15と固体原料5が供給されること、並びに炉本体26内の他側部から外部へ未燃固形分と流動媒体との混合流体7が送出されることの相乗的な効果で、炉本体26内をその一側部から他側部へ向けて漸次移動する。
【0029】
そして、炉本体26の他側部において前記流動媒体15と未燃固形分は、第2のガスボックス34から吹き込まれる水蒸気3により引き続き流動層4を形成する。未燃固形分の一部は水蒸気3、あるいは固体原料5自体から蒸発した水分と水性ガス化反応を行って可燃性のガス化ガス18(H2、CO)を生成し、COの一部が水蒸気3と反応して、CO2とH2Oを生成する。
【0030】
つまり、炉本体26内の一側部に吹き込まれるCO2ガス25は、前段の媒体分離装置13から炉本体26に供給される高温の流動媒体15を流動化して流動層4を形成する役割だけを担い、炉本体26内の他側部に吹き込まれる水蒸気3は、可燃性のガス化ガス18を生成させるためのガス化剤であるとともに、前記流動媒体15と未燃固形分を流動化して流動層4を形成する役割を担っている。
【0031】
未燃固形分と流動媒体との混合流体7は、シール部8を経て燃焼炉6へ送給され、該燃焼炉6に供給される空気10により未燃固形分が燃焼するとともに高速で流動する流動媒体の加熱が図られる。未燃固形分の燃焼によって流動媒体を加熱した燃焼流体11は、排ガス管12を経て媒体分離装置13に送給され、燃焼排ガス14と流動媒体15とに分離される。
【0032】
この後、流動媒体15はダウンカマー16及びシール部21を経て流動層ガス化炉1に還流する。また、流動層ガス化炉1の流動層4の上部のフリーボード17に生成されたガス化ガス18は、導出管19を経てホットサイクロンなどの固体分離装置20に送給され、ガス化ガス18中に含まれている固体粒子23が分離され、更に、ガス化ガス18中に混合しているCO2ガス25は二酸化炭素分離手段24によって回収される。このCO2ガス25は、ブロワ(図示せず)により昇圧され、第一のガスボックス32、及びシール部8,21へと送り込まれる。
【0033】
図1に示す流動層ガス化炉では、二酸化炭素分離手段24でガス化ガス18から分離したCO2ガス25を、炉本体26内の一側部、及びシール部8,21へ送り込み、炉本体26においては流動層4の形成に利用し、シール部8においては、炉本体26への空気10(もしくは酸素)の流入抑止に利用し、シール部21においては、固体分離装置20へのガスの流入抑止に利用するので、流動層ガス化炉全体としての水蒸気3の使用量が削減され、水蒸気3を発生させるために水蒸気発生手段(図示せず)が消費するエネルギーを少なくすることができる。
【0034】
図2は本発明の流動層ガス化炉の第2の例を用いた二塔式ガス化炉を示すものであり、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0035】
図2に示す流動層ガス化炉では、炉本体26内に仕切板35を設けることにより、流動媒体が滞留し得る範囲(流動層4が形成される範囲)の上部を、第一のガスボックス32上方(炉本体26の一側部)の熱分解ゾーン36と第二のガスボックス34上方(炉本体26の他側部)のガス化ゾーン37とに区分している。
【0036】
仕切板35は流動層4が形成される範囲の上部に設けられているので、流動層4が形成される範囲の下部は、炉本体26の一側部と他側部とが区分されることなく連通しており、流動媒体及び未燃固形分は熱分解ゾーン36から仕切板35の下方を通り抜け、ガス化ゾーン37へ向けて漸次移動できる。
【0037】
次に、図2に示す流動層ガス化炉の作動について述べる。二塔式ガス化炉の稼働中は、二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25を、炉本体26一側部の底部に設けた第一のガスボックス32の分散板31を介して炉内の熱分解ゾーン36へ上向きに供給し、水蒸気発生手段(図示せず)によって発生させたガス化剤としての水蒸気3を、炉本体26の他側部の底部に設けた第二のガスボックス34の分散板33を介して炉内のガス化ゾーン37へ上向きに供給する。
【0038】
媒体分離装置13から熱分解ゾーン36に供給された直後の高温の流動媒体15は、第一のガスボックス32から吹き込まれるCO2ガス25により流動化して流動層4を形成する。この状態で原料供給装置22により熱分解ゾーン36上方のフリーボード17に固体原料5を供給すると、該固体原料5が可燃性のガス化ガス18(H2、CO、炭化水素)と未燃固形分とに熱分解される。また、熱分解ゾーン36に供給された固体原料5が流動層4中の流動媒体に触れた際には、前記H2、CO、炭化水素、水分の他に、固体原料5に含まれているタールが蒸発する。
【0039】
流動層ガス化炉内の流動媒体及び未燃固形分は、外部から炉本体26内の一側部の熱分解ゾーン36に流動媒体15と固体原料5が供給されること、並びに炉本体26内の他側部のガス化ゾーン37から外部へ未燃固形分と流動媒体との混合流体7が送出されることの相乗的な効果により、熱分解ゾーン36から仕切板35の下方を通り抜け、ガス化ゾーン37へ向けて漸次移動する。
【0040】
そして、ガス化ゾーン37において前記流動媒体15と未燃固形分は、第2のガスボックス34から吹き込まれる水蒸気3により引き続き流動層4を形成する。未燃固形分の一部は水蒸気3、あるいは固体原料5自体から蒸発した水分と水性ガス化反応を行って可燃性のガス化ガス18(H2、CO)を生成し、COの一部が水蒸気3と反応して、CO2とH2Oを生成する。
【0041】
つまり、熱分解ゾーン36に吹き込まれるCO2ガス25は、前段の媒体分離装置13から炉本体26に供給される高温の流動媒体15を流動化して流動層4を形成する役割だけを担い、ガス化ゾーン37に吹き込まれる水蒸気3は、可燃性のガス化ガス18を生成させるためのガス化剤であるとともに、前記流動媒体15と未燃固形分を流動化して流動層4を形成する役割を担っている。
【0042】
図2に示す流動層ガス化炉では、二酸化炭素分離手段24でガス化ガス18から分離したCO2ガス25を、炉本体26内の熱分解ゾーン36、及びシール部8,21へ送り込み、炉本体26においては流動層4の形成に利用し、シール部8においては、炉本体26への空気10(もしくは酸素)の流入抑止に利用し、シール部21においては、固体分離装置20へのガスの流入抑止に利用するので、流動層ガス化炉全体としての水蒸気3の使用量が削減され、水蒸気3を発生させるために水蒸気発生手段(図示せず)が消費するエネルギーを少なくすることができる。
【0043】
また、炉本体26内に設けた仕切板35が、ガス化ゾーン37から熱分解ゾーン36へ水蒸気3が拡散することを抑えるので、可燃性のガス化ガス18(H2、CO)を効率よく生成することができる。
【0044】
図3は本発明の流動層ガス化炉の第3の例を用いた二塔式ガス化炉を示すものであり、図中、図1、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0045】
この流動層ガス化炉は、第一の炉本体26A、第二の炉本体26B、及び移送通路26Cを備え、第一の炉本体26Aの一側部に、シール部21から炉内へ高温の流動媒体15を供給する流動媒体入口27、及び原料供給装置22から炉内へ固体原料5を供給する原料入口28を設け、第二の炉本体26Bの他側部に、炉内からシール部8へ未燃固形分と流動媒体との混合流体7を送出させる流動媒体出口29、及び炉内から固体分離装置20へガス化ガス18を送出させるガス出口30とを設け、前記移送通路26Cを介して第一の炉本体26Aの他側部の下部に第二の炉本体26Bの一側部の下部を連通させている。
【0046】
第一の炉本体26Aの他側部の下部と第二の炉本体26Bの一側部の下部とは、移送通路26Cを介して連通しているので、流動媒体及び未燃固形分は第一の炉本体26Aから移送通路26Cを通り抜け、第二の炉本体26Bへ向けて漸次移動できる。
【0047】
図3に示す流動層ガス化炉の特徴部分は、第一の炉本体26Aの底部に、前記二酸化炭素分離手段24によりガス化ガス18から分離したCO2ガス25を、分散板31を介して炉内へ上向きに供給し得る中空構造の第一のガスボックス32を設け、第二の炉本体26Bの底部に、ガス化剤としての水蒸気3を、分散板33を介して炉内へ上向きに供給し得る中空構造の第二のガスボックス34を設けた点にある。
【0048】
次に、図3に示す流動層ガス化炉の作動について述べる。二塔式ガス化炉の稼働中は、二酸化炭素分離手段24で得たCO2ガス25を、第一の炉本体26Aの底部に設けた第一のガスボックス32の分散板31を介して第一の炉本体26A内へ上向きに供給し、水蒸気発生手段(図示せず)によって発生させたガス化剤としての水蒸気3を、第二の炉本体26Bの底部に設けた第二のガスボックス34の分散板33を介して第二の炉本体26B内へ上向きに供給する。
【0049】
媒体分離装置13から第一の炉本体26Aに供給された直後の高温の流動媒体15は、第一のガスボックス32から吹き込まれるCO2ガス25により流動化して流動層4を形成する。この状態で原料供給装置22により流動層4上方のフリーボード17に固体原料5を供給すると、該固体原料5が可燃性のガス化ガス18(H2、CO、炭化水素)と未燃固形分とに熱分解される。また、第一の炉本体26Aに供給された固体原料5が流動層4中の流動媒体に触れた際には、前記H2、CO、炭化水素、水分の他に、固体原料5に含まれているタールが蒸発する。
【0050】
流動層ガス化炉内の流動媒体及び未燃固形分は、外部から第一の炉本体26A内に流動媒体15と固体原料5が供給されること、並びに第二の炉本体26B内から外部へ未燃固形分と流動媒体との混合流体7が送出されることの相乗的な効果により、第一の炉本体26Aから移送通路26Cを通り抜け、第二の炉本体26Bへ向けて漸次移動する。
【0051】
そして、第二の炉本体26Bにおいて前記流動媒体15と未燃固形分は、第2のガスボックス34から吹き込まれる水蒸気3により流動層4を形成する。未燃固形分の一部は水蒸気3、あるいは固体原料5自体から蒸発した水分と水性ガス化反応を行って可燃性のガス化ガス18(H2、CO)を生成し、COの一部が水蒸気3と反応して、CO2とH2Oを生成する。
【0052】
つまり、第一の炉本体26Aに吹き込まれるCO2ガス25は、前段の媒体分離装置13から第一の炉本体26Aに供給される高温の流動媒体15を流動化して流動層4を形成する役割だけを担い、第二の炉本体26Bに吹き込まれる水蒸気3は、可燃性のガス化ガス18を生成させるためのガス化剤であるとともに、前記流動媒体15と未燃固形分を流動化して流動層4を形成する役割を担っている。
【0053】
図3に示す流動層ガス化炉では、二酸化炭素分離手段24でガス化ガス18から分離したCO2ガス25を、第一の炉本体26A、及びシール部8,21へ送り込み、第一の炉本体26Aにおいては流動層4の形成に利用し、シール部8においては、第二の炉本体26Bへの空気10(もしくは酸素)の流入抑止に利用し、シール部21においては、固体分離装置20へのガスの流入抑止に利用するので、流動層ガス化炉全体としての水蒸気3の使用量が削減され、水蒸気3を発生させるために水蒸気発生手段(図示せず)が消費するエネルギーを少なくすることができる。
【0054】
また、移送通路26C内の流動媒体及び未燃固形分が、第一の炉本体26Aから第二の炉本体26Bへ水蒸気3が流れ込むことを防ぐので、可燃性のガス化ガス18(H2、CO)を効率よく生成することができる。
【符号の説明】
【0055】
3 水蒸気
5 固体原料
7 混合流体
18 ガス化ガス
24 二酸化炭素分離手段
25 CO2ガス
26 炉本体
26A 第一の炉本体
26B 第二の炉本体
26C 移送通路
32 第一のガスボックス(第一のガス供給手段)
34 第二のガスボックス(第二のガス供給手段)
35 仕切板
36 熱分解ゾーン
37 ガス化ゾーン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外方から炉本体の一側内方へ流動媒体と固体原料とが供給され、炉本体の他側内方から外部へ未燃固形分と流動媒体とガス化ガスとが送出される流動層ガス化炉において、
ガス化ガスに含まれているCO2ガスを分離し得る二酸化炭素分離手段と、
該二酸化炭素分離手段によって得たCO2ガスを前記炉本体の底部から炉内に上向きに供給し得る流動層形成用の第一のガス供給手段と、
ガス化剤として水蒸気を前記炉本体の底部から炉内に上向きに供給し得る流動層形成用の第二のガス供給手段とを備えたことを特徴とする流動層ガス化炉。
【請求項2】
第一のガス供給手段は、CO2ガスを前記炉本体の一側底部から炉内に上向きに供給し得るように構成され、
第二のガス供給手段は、水蒸気を前記炉本体の他側底部から炉内に上向きに供給し得る構成された請求項1に記載の流動層ガス化炉。
【請求項3】
炉本体内には仕切板が設けられ、炉本体内の流動媒体が滞留し得る範囲の上部を、第一のガス供給手段上方の熱分解ゾーンと第二のガス供給手段上方のガス化ゾーンとに区分した請求項2に記載の流動層ガス化炉。
【請求項4】
炉本体は、一側の第一の炉本体と、他側の第二の炉本体と、第一、第二の炉本体の下部を連通させる移送通路とによって構成され、
第一の炉本体に第一のガス供給手段を設け、
第二の炉本体に第二のガス供給手段を設けた請求項1または2に記載の流動層ガス化炉。
【請求項1】
外方から炉本体の一側内方へ流動媒体と固体原料とが供給され、炉本体の他側内方から外部へ未燃固形分と流動媒体とガス化ガスとが送出される流動層ガス化炉において、
ガス化ガスに含まれているCO2ガスを分離し得る二酸化炭素分離手段と、
該二酸化炭素分離手段によって得たCO2ガスを前記炉本体の底部から炉内に上向きに供給し得る流動層形成用の第一のガス供給手段と、
ガス化剤として水蒸気を前記炉本体の底部から炉内に上向きに供給し得る流動層形成用の第二のガス供給手段とを備えたことを特徴とする流動層ガス化炉。
【請求項2】
第一のガス供給手段は、CO2ガスを前記炉本体の一側底部から炉内に上向きに供給し得るように構成され、
第二のガス供給手段は、水蒸気を前記炉本体の他側底部から炉内に上向きに供給し得る構成された請求項1に記載の流動層ガス化炉。
【請求項3】
炉本体内には仕切板が設けられ、炉本体内の流動媒体が滞留し得る範囲の上部を、第一のガス供給手段上方の熱分解ゾーンと第二のガス供給手段上方のガス化ゾーンとに区分した請求項2に記載の流動層ガス化炉。
【請求項4】
炉本体は、一側の第一の炉本体と、他側の第二の炉本体と、第一、第二の炉本体の下部を連通させる移送通路とによって構成され、
第一の炉本体に第一のガス供給手段を設け、
第二の炉本体に第二のガス供給手段を設けた請求項1または2に記載の流動層ガス化炉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2012−57126(P2012−57126A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204273(P2010−204273)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
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