説明

流動層内粒子の滞留時間評価方法及び装置

【課題】流動層内で粒子が移動する因子を単純化することによって原料粒子の滞留時間を簡便に予測できるようにする。
【解決手段】反応補助粒子2と原料粒子3を容器1の一側から導入し、容器1底部から反応補助流体4を供給することにより流動層を形成して原料粒子3の処理を行い、容器1の他側から反応補助粒子2とともに処理済の原料粒子3'を取り出す際において、下記式(1)
【数1】



を用いて容器1内における原料粒子3の滞留時間を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動層内粒子の滞留時間評価方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、容器の一側から石炭等の原料粒子を供給すると共に加熱した砂等の反応補助粒子を供給し、容器の底部からは水蒸気からなる反応補助流体を供給することで容器内に流動層を形成して原料粒子のガス化処理を行い、ガス化によって生成したガス化ガスは容器の上部から取り出す一方、容器の他側からは反応補助粒子と処理済の原料粒子(チャー)を取り出すようにしたガス化炉が知られている。ここで、前記容器から取り出した反応補助粒子とチャーを導入する燃焼炉を設け、該燃焼炉においてチャーを燃焼することにより反応補助粒子の加熱を行い、この加熱した反応補助粒子を再び前記容器に循環供給するようにした二塔式ガス化炉が知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
上記したガス化炉においては、容器内で石炭粒子をどれだけガスに変換できるかがガス化炉を設計する上で重要であり、この石炭粒子のガスへの変換は流動層内における原料粒子の滞留時間が大きく関わっており、従って、ガス化炉を設計する上で原料粒子の滞留時間は重要なパラメータとなる。
【0004】
又、湿分を含む原料粒子を容器の一側から供給し、容器の底部からは乾燥用の空気等からなる反応補助流体を供給することにより容器内に流動層を形成して原料粒子の乾燥を行い、容器の他側からは処理済の乾燥した原料粒子を取り出すようにした乾燥装置が知られている(特許文献2、特許文献3等参照)。
【0005】
上記乾燥装置においても、容器内で原料粒子をどれだけ乾燥できるかが乾燥装置を設計する上で重要であり、この原料粒子の乾燥は流動層内における原料粒子の滞留時間が大きく関わっており、従って、乾燥装置を設計する上で原料粒子の滞留時間は重要なパラメータとなる。
【0006】
従って、流動層内における原料粒子の滞留時間を知ることができれば、前記ガス化炉及び乾燥装置等の設計を容易にすることができる。
【0007】
尚、流動層炉の排出口の開口断面積を変化させることによって流動層炉における粉粒体の滞留時間を制御するようにした流動層炉の制御方法及び装置が特許文献4に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−208259号公報
【特許文献2】特開2002−309266号公報
【特許文献3】特開2008−128524号公報
【特許文献4】特許第2742017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献4に示すものは、排出口の開口断面積を変化させることによって粉粒体の滞留時間を制御するようにした機械的部に関するものであり、流動層内粒子の滞留時間を評価するようにしたものではない。
【0010】
一方、気泡流動層内の粒子の滞留時間を計算する手法としては、DEM(Discrete Element Method:離散要素法)のように粒子一つ一つの運動方程式を解いて計算する手法や、2流体解析手法のように固体相を一つの流体と仮定し、気体相と固体相を2つの連続相として解く手法などがある。
【0011】
しかし、いずれの場合においても多大な計算時間が必要となり(イメージとしては1週間〜数ヶ月規模の計算時間)、商用の流動層の規模の計算を行うことは現状では非常に困難である。
【0012】
又、その他の手法としては、実際に実験を行うことで滞留時間を直接計測する手法があるが、この場合も、実際の商用の流動層の規模で実験を行うことは非常に困難であり、又、条件(装置規模や流動化の強度など)が変わる都度実験を行う必要があるため、実験に多大の時間と費用を要するという問題がある。
【0013】
上記した如く、容器の一側から粒子が供給され、下部からは反応補助流体が供給さすることにより流動層を形成して原料粒子の処理を行い、処理した粒子を容器の他側から取り出す場合のように、容器内を流動化しつつ移動する粒子の滞留時間を簡単な手法によって評価できるようにしたものについては、従来は全く存在していなかった。
【0014】
本発明は、流動層内で粒子が移動する因子を単純化することによって原料粒子の滞留時間を簡便に予測できるようにした流動層内粒子の滞留時間評価方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、反応補助粒子と原料粒子を容器の一側から導入し、容器底部から反応補助流体を供給することにより流動層を形成して原料粒子の処理を行い、容器の他側から反応補助粒子とともに処理済の原料粒子を取り出す際において、下記式(1)
【数1】



t:時間
x:水平方向座標
z:垂直方向座標
C:原料粒子の濃度
u:対流による水平方向の反応補助粒子の速度
w:対流による垂直方向の反応補助粒子の速度
S:偏析係数(偏析の程度を表すパラメータ)
Dx:x方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
Dz:z方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
S,Dx,Dzは実験によって求められる値
を用いて容器内における粒子濃度の時間変化から原料粒子の滞留時間を評価することを特徴とする流動層内粒子の滞留時間評価方法、に係るものである。
【0016】
上記流動層内粒子の滞留時間評価方法において、反応補助流体は気体又は液体である。
【0017】
本発明は、反応補助粒子と原料粒子を容器の一側から導入し、容器底部から反応補助流体を供給することにより流動層を形成して原料粒子の処理を行い、容器の他側から反応補助粒子とともに処理済の原料粒子を取り出すようにしている流動層内粒子の滞留時間評価装置であって、
下記式(1)
【数2】



を入力する記憶部と、
流動層の水平方向座標xと垂直方向座標zを入力する座標入力部と、
対流による水平方向の反応補助粒子の速度u及び対流による垂直方向の反応補助粒子の速度wの初期値を入力する初期値入力部と、
実験によって求められた偏析係数S(偏析の程度を表すパラメータ)と、x方向の混合拡散係数Dx(混合拡散の程度を表すパラメータ)と、z方向の混合拡散係数Dz(混合拡散の程度を表すパラメータ)を入力する実験値入力部と、
前記記憶部に記憶された式(1)に、座標入力部によるx,zと、初期値入力部によるu,w及び実験値入力部によるS,Dx,Dzを与えて、x,z座標での原料粒子濃度Cの時間変化を演算する演算部と、
を有することを特徴とする流動層内粒子の滞留時間評価装置、に係るものである。
【0018】
本発明は、原料粒子を容器の一側から導入し、容器底部から反応補助流体を供給することにより流動層を形成して原料粒子の処理を行い、容器の他側から処理済の原料粒子を取り出す際において、下記式(2)
【数3】



t:時間
x:水平方向座標
z:垂直方向座標
C:原料粒子の濃度
u:対流による水平方向の原料粒子の速度
w:対流による水平方向の原料粒子の速度
Dx:x方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
Dz:z方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
Dx,Dzは実験によって求められる値
を用いて容器内における粒子濃度の時間変化から原料粒子の滞留時間を評価することを特徴とする流動層内粒子の滞留時間評価方法、に係るものである。
【0019】
上記流動層内粒子の滞留時間評価方法において、反応補助流体は気体又は液体である。
【0020】
本発明は、原料粒子を容器の一側から導入し、容器底部から反応補助流体を供給することにより流動層を形成して原料粒子の処理を行い、容器の他側から処理済の原料粒子を取り出すようにしている流動層内粒子の滞留時間評価装置であって、
下記式(2)
【数4】



を入力する記憶部と、
流動層の水平方向座標xと垂直方向座標zを入力する座標入力部と、
対流による水平方向の反応補助粒子の速度u及び対流による垂直方向の反応補助粒子の速度wの初期値を入力する初期値入力部と、
実験によって求められたx方向の混合拡散係数Dx(混合拡散の程度を表すパラメータ)と、z方向の混合拡散係数Dz(混合拡散の程度を表すパラメータ)を入力する実験値入力部と、
前記記憶部に記憶された式(2)に、座標入力部によるx,z、初期値入力部によるu,w及び実験値入力部によるDx,Dzを与えて、x,z座標での原料粒子濃度Cの時間変化を演算する演算部と、
を有することを特徴とする流動層内粒子の滞留時間評価装置、に係るものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の流動層内粒子の滞留時間評価方法及び装置によれば、簡便な汎用式を用いて流動層での原料粒子の滞留時間を簡略に予測することができ、よって、従来のように長時間に亘る膨大な計算を行う必要がなく、更に、装置規模や使用条件が異なるたびにその都度実験を行って原料粒子の滞留時間を導出するといった面倒な作業も省略することかでき、従って、流動層において原料粒子の処理を行う種々の装置の設計を短期間に容易に行えるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を説明するための容器の一例を示す概略側面図である。
【図2】本発明の流動層内粒子の滞留時間評価装置の一実施例を示すブロック図である。
【図3】図2の装置の演算フローシートである。
【図4】容器の長さを1mとしたモデルの場合における滞留時間の試験結果を示す線図である。
【図5】容器の長さを3mとしたモデルの場合における滞留時間の試験結果を示す線図である。
【図6】本発明の他の実施例を説明するための容器の一例を示す概略側面図である。
【図7】本発明の流動層内粒子の滞留時間評価装置の他の実施例を示すブロック図である。
【図8】図7の装置の演算フローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0024】
図1は発明をガス化炉の容器に適用した場合の一実施例を示すものであり、容器1の一側からは反応補助粒子2(砂)と原料粒子3(石炭粒子)が導入されており、容器1の底部からは反応補助流体4(水蒸気)が供給されることにより前記砂と石炭粒子による流動層が形成されて石炭粒子のガス化処理が行われており、容器1の上部からはガス化ガス後が取り出され、又、容器1の他側の内部にはシール壁6が設けられており、シール壁6の下端の下側を潜り抜けた反応補助粒子2(砂)と処理済の石炭粒子3'(チャー)が、他側から取り出されるようになっている。
【0025】
本発明では、上記図1のガス化炉のように、砂からなる反応補助粒子2に対して比重、粒径が異なる石炭粒子からなる原料粒子3が流動層内で移動する因子を
1.対流:一側から導入される砂aによって他側に押し出される現象(I)
2.混合拡散:流動層内の水蒸気による気泡bの上昇によって粒子が混合し広がる現象(II)
3.偏析:砂と石炭粒子のように他種類の粒子が存在する場合、それぞれの粒子c,c'に働く力の差によって、粒子が流動層表面に浮いたり沈んだりする現象(III)
の3つに単純化し、粒子の滞留時間を簡便に予測できるようにした。
【0026】
そして、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、流動層内の粒子濃度Cの時間変化及び分布を、以下の式(1)で表わすことができることを突き止めた。
【数5】



t:時間
x:水平方向座標
z:垂直方向座標
C:原料粒子の濃度
u:対流による水平方向の砂の速度
w:対流による垂直方向の砂の速度
S:偏析係数(偏析の程度を表すパラメータ)
Dx:x方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
Dz:z方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
S,Dx,Dzは実験によって求められる値
【0027】
尚、上記式(1)において、
【数6】


【0028】
上記式(1)中、偏析係数S、x方向の混合拡散係数Dx、z方向の拡散係数Dzは実験によって求めることができる。
【0029】
図2は本発明の流動層内粒子の滞留時間評価装置の一実施例を示すブロック図であり、この滞留時間評価装置は、パーソナルコンピュータやノート型パソコン等を用いて具現化することができ、より詳細には、CPU等の演算装置、メモリ等の内部記憶装置、ハードディスクドライブ等の外部記憶装置、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、マウスやキーボード等の入力装置等によって具現化される。
【0030】
本発明の流動層内粒子の滞留時間評価装置は、図2に示すように、前記式(1)
【数7】



を入力する記憶部9と、流動層の水平方向座標xと垂直方向座標zを入力する座標入力部10と、対流による水平方向の反応補助粒子の速度u及び対流による垂直方向の反応補助粒子の速度wの初期値を入力する初期値入力部11と、実験によって求められた偏析係数S(偏析の程度を表すパラメータ)と、x方向の混合拡散係数Dx(混合拡散の程度を表すパラメータ)と、z方向の混合拡散係数Dz(混合拡散の程度を表すパラメータ)を入力する実験値入力部12と、前記記憶部9に記憶された式(1)に、座標入力部10によるx,zと、初期値入力部11によるu,w及び実験値入力部12によるS,Dx,Dzを与えて、x,z座標での原料粒子濃度Cの時間変化を演算する演算部13と、演算したx,z座標での原料粒子濃度Cの時間変化を表示する表示部14とを有する。
【0031】
上記図2に示した流動層内粒子の滞留時間評価装置においては、図3に演算フローシートを示す如く、ステップS1に示す式(1)の取り込みを行うと共に、ステップS2に示す座標入力部10からのx,zの取り込みと、ステップS3に示す初期値入力部11からのu,wの取り込みと、及び、ステップS4に示す実験値入力部12からのS,Dx,Dzの取り込みを行って、ステップS5において前記式(1)による演算を行い、ステップS6に示すようにx,z座標での原料粒子濃度Cの時間変化を求めて粒子の滞留時間を評価する。
【0032】
従って、図2の流動層内粒子の滞留時間評価装置では、座標入力部10によるx,zと、初期値入力部によるu,w及び実験値入力部12によるS,Dx,Dzを与えるのみの簡略な操作で、粒子濃度の時間変化を求めて粒子の滞留時間を短時間で求めることができる。
【0033】
更に、発明者らは、前記式(1)の汎用性を検証するための試験を実施した。容器1の長さを1mとしたモデルの場合の試験結果を図4に示し、容器1の長さを3mとしたモデルの場合の試験結果を図5に示した。
【0034】
図4、図5中、横軸は滞留時間(石炭粒子が容器に導入されてからの時間/石炭粒子が容器に導入されてから出て行くまでの平均時間:無次元値)であり、縦軸は濃度(石炭粒子の供給濃度/容器内の石炭粒子の平均濃度:無次元値)であり、前記式(1)に基づいて流動層内粒子の滞留時間評価装置により求めた演算値を実線Aで示し、実験によって求めた実験値を白抜きの点Bで示した。
【0035】
図4に示すように、容器1の長さが1mのモデルの場合において、前記式(1)に基づいて求めた実線Aの演算値は、白抜きの点Bで示した実験値と非常に良く符合することが判明した。
【0036】
又、図5に示すように、容器1の長さが3mのモデルの場合においても、前記式(1)に基づいて求めた実線Aの演算値は、白抜きの点Bで示した実験値と非常に良く符合することが判明した。
【0037】
従って、前記式(1)を用いることで石炭粒子の流動層での滞留時間を簡単に高い精度で予測することが可能になり、よって、従来に比してガス化炉の設計が著しく容易になり、更に、ガス化炉が大型化した場合にも、従来のようにその都度実験を行って石炭粒子の滞留時間を求める必要がなく、簡単に精度良くガス化炉を設計できるようになる。
【0038】
図6は本発明を乾燥装置の容器に適用した場合の他の実施例を示すものであり、湿分を含む原料粒子7が容器1の一側から供給され、容器1の底部からは乾燥用の空気等からなる反応補助流体8を供給することにより容器1内に流動層を形成して原料粒子7の乾燥を行い、容器の他側からは処理済の乾燥した原料粒子7'を取り出すようになっている。
【0039】
上記図6に示した乾燥装置では、容器1には1種類の原料粒子7が導入されるのみであるため、原料粒子7が流動層内で移動する因子を
1.対流:一側から導入される原料粒子7によって押し出される現象(I)
2.混合拡散:流動層内の空気等による気泡bによって粒子が混合し広がる現象(II)
の2つに単純化し、滞留時間を簡便に予測できるようにした。
【0040】
即ち、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、流動層内の粒子濃度Cの時間変化及び分布を、前記式(1)から偏析係数Sを1とした以下の式(2)で表わすことができることを突き止めた。
【数8】



t:時間
x:水平方向座標
z:垂直方向座標
C:原料粒子の濃度
u:対流による水平方向の原料粒子の速度
w:対流による垂直方向の原料粒子の速度
Dx:x方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
Dz:z方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
Dx,Dzは実験によって求められる値
【0041】
図7は本発明の流動層内粒子の滞留時間評価装置の他の実施例を示すブロック図であり、この滞留時間評価装置は、パーソナルコンピュータやノート型パソコン等を用いて具現化することができ、より詳細には、CPU等の演算装置、メモリ等の内部記憶装置、ハードディスクドライブ等の外部記憶装置、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、マウスやキーボード等の入力装置等によって具現化される。
【0042】
本発明の流動層内粒子の滞留時間評価装置は、図7に示すように、前記式(2)
【数9】



を入力する記憶部9'と、流動層の水平方向座標xと垂直方向座標zを入力する座標入力部10と、対流による水平方向の反応補助粒子の速度u及び対流による垂直方向の反応補助粒子の速度wの初期値を入力する初期値入力部11と、実験によって求められたx方向の混合拡散係数Dx(混合拡散の程度を表すパラメータ)と、z方向の混合拡散係数Dz(混合拡散の程度を表すパラメータ)を入力する実験値入力部12'と、前記記憶部に記憶された式(2)に、座標入力部によるx,zと、初期値入力部によるu,w及び実験値入力部によるDx,Dzを与えて、x,z座標での原料粒子濃度Cの時間変化を演算する演算部13と、演算したx,z座標での原料粒子濃度Cの時間変化を表示する表示部14とを有する。
【0043】
上記図7に示した流動層内粒子の滞留時間評価装置においては、図8に示す如く、ステップS1'に示す式(2)の取り込みを行うと共に、ステップS2に示す座標入力部10からのx,zの取り込みと、ステップS3に示す初期値入力部11からのu,wの取り込みと、及び、ステップS4に示す実験値入力部12'からのDx,Dzの取り込みを行って、ステップS5において前記式(2)による演算を行い、ステップS6に示すようにx,z座標での原料粒子濃度Cの時間変化を求めて粒子の滞留時間を評価する。
【0044】
従って、図7の流動層内粒子の滞留時間評価装置では、座標入力部10によるx,zと、初期値入力部によるu,w及び実験値入力部12'によるDx,Dzを与えるのみの簡略な操作で、粒子濃度の時間変化を求めて粒子の滞留時間を短時間で求めることができる。
【0045】
又、このようにして求めた演算値は、前記図4、図5に示したように容器1の長さが変化した場合においても、実験値と良く符合することが分かった。このように、前記式(2)を用いることにより湿分を含む原料粒子7の流動層での滞留時間を高い精度で予測することが可能になるため、従来に比して乾燥装置の設計が著しく容易になり、更に、乾燥装置が大型化した場合にも、従来のようにその都度実験を行って原料粒子の滞留時間を求める必要がなく、簡単に精度良く乾燥装置を設計できるようになる。
【0046】
尚、上記実施例では、反応補助流体に水蒸気又は空気等からなる気体を用いて流動層を形成する場合について例示したが、反応補助流体に液体を用いて流動層により各種反応或いは洗浄等の作業を行う場合の原料粒子の挙動は、前記気体による反応補助流体の場合の原料粒子の挙動と同様であることから、反応補助流体に液体を用いた場合にも、前記式(1)、式(2)を用いて原料粒子の滞留時間を予測することできる。
【0047】
上記した式(1)及び式(2)によれば、簡略な汎用式として用いて流動層での原料粒子の滞留時間を容易且つ短時間に評価することができるので、従来のように装置規模や使用条件が異なるたびにその都度実験を行って原料粒子の滞留時間を導出するという面倒な作業を省略することができ、よって、流動層で原料粒子の処理を行う種々の装置の設計作業を極めて能率的に行えるようになる。
【0048】
尚、本発明の流動層内粒子の滞留時間評価方法及び装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 容器
2 反応補助粒子
3 原料粒子
3' 処理済の原料粒子
4 反応補助流体
7 原料粒子
7' 処理済の原料粒子
8 反応補助流体
9,9' 記憶部
10 座標入力部
11 初期値入力部
12,12' 実験値入力部
13 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応補助粒子と原料粒子を容器の一側から導入し、容器底部から反応補助流体を供給することにより流動層を形成して原料粒子の処理を行い、容器の他側から反応補助粒子とともに処理済の原料粒子を取り出す際において、下記式(1)
【数1】



t:時間
x:水平方向座標
z:垂直方向座標
C:原料粒子の濃度
u:対流による水平方向の反応補助粒子の速度
w:対流による垂直方向の反応補助粒子の速度
S:偏析係数(偏析の程度を表すパラメータ)
Dx:x方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
Dz:z方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
S,Dx,Dzは実験によって求められる値
を用いて容器内における粒子濃度の時間変化から原料粒子の滞留時間を評価することを特徴とする流動層内粒子の滞留時間評価方法。
【請求項2】
反応補助流体は気体又は液体であることを特徴とする請求項1に記載の流動層内粒子の滞留時間評価方法。
【請求項3】
反応補助粒子と原料粒子を容器の一側から導入し、容器底部から反応補助流体を供給することにより流動層を形成して原料粒子の処理を行い、容器の他側から反応補助粒子とともに処理済の原料粒子を取り出すようにしている流動層内粒子の滞留時間評価装置であって、
下記式(1)
【数2】



を入力する記憶部と、
流動層の水平方向座標xと垂直方向座標zを入力する座標入力部と、
対流による水平方向の反応補助粒子の速度u及び対流による垂直方向の反応補助粒子の速度wの初期値を入力する初期値入力部と、
実験によって求められた偏析係数S(偏析の程度を表すパラメータ)と、x方向の混合拡散係数Dx(混合拡散の程度を表すパラメータ)と、z方向の混合拡散係数Dz(混合拡散の程度を表すパラメータ)を入力する実験値入力部と、
前記記憶部に記憶された式(1)に、座標入力部によるx,zと、初期値入力部によるu,w及び実験値入力部によるS,Dx,Dzを与えて、x,z座標での原料粒子濃度Cの時間変化を演算する演算部と、
を有することを特徴とする流動層内粒子の滞留時間評価装置。
【請求項4】
原料粒子を容器の一側から導入し、容器底部から反応補助流体を供給することにより流動層を形成して原料粒子の処理を行い、容器の他側から処理済の原料粒子を取り出す際において、下記式(2)
【数3】



t:時間
x:水平方向座標
z:垂直方向座標
C:原料粒子の濃度
u:対流による水平方向の原料粒子の速度
w:対流による垂直方向の原料粒子の速度
Dx:x方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
Dz:z方向の混合拡散係数(混合拡散の程度を表すパラメータ)
Dx,Dzは実験によって求められる値
を用いて容器内における粒子濃度の時間変化から原料粒子の滞留時間を評価することを特徴とする流動層内粒子の滞留時間評価方法。
【請求項5】
反応補助流体は気体又は液体であることを特徴とする請求項4に記載の流動層内粒子の滞留時間評価方法。
【請求項6】
原料粒子を容器の一側から導入し、容器底部から反応補助流体を供給することにより流動層を形成して原料粒子の処理を行い、容器の他側から処理済の原料粒子を取り出すようにしている流動層内粒子の滞留時間評価装置であって、
下記式(2)
【数4】



を入力する記憶部と、
流動層の水平方向座標xと垂直方向座標zを入力する座標入力部と、
対流による水平方向の反応補助粒子の速度u及び対流による垂直方向の反応補助粒子の速度wの初期値を入力する初期値入力部と、
実験によって求められたx方向の混合拡散係数Dx(混合拡散の程度を表すパラメータ)と、z方向の混合拡散係数Dz(混合拡散の程度を表すパラメータ)を入力する実験値入力部と、
前記記憶部に記憶された式(2)に、座標入力部によるx,z、初期値入力部によるu,w及び実験値入力部によるDx,Dzを与えて、x,z座標での原料粒子濃度Cの時間変化を演算する演算部と、
を有することを特徴とする流動層内粒子の滞留時間評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−236380(P2011−236380A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111010(P2010−111010)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)