説明

流動抵抗調節されたエアロゾル化活性薬剤送達

【課題】ヒト患者の肺に活性薬剤を送達するための方法およびデバイスを提供すること。活性薬剤処方物は、乾燥粉末形態であり得るか、霧状化され得るか、または噴霧剤との混合物であり得る。活性薬剤処方物は、初期期間の間に低い吸入流速で患者に送達され、その活性薬剤のバイオアベイラビリティーを増加する。
【解決手段】エアロゾル化活性薬剤をヒト患者の肺に送達するためのデバイス104であって、該デバイスは、該エアロゾル化活性薬剤処方物の流動抵抗を調節して、流量モニタリング106および患者の指示に独立した様式の該エアロゾル化活性薬剤処方物の初期標的流速を生成する、流動抵抗モジュレーターを含む、デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、活性薬剤処方物の肺送達に関する。より詳細には、肺深部(deep lung)中の吸収を介する活性薬剤の全身性バイオアベイラビリティーを増加させるための、活性薬剤処方物の肺送達のための方法およびデバイスである。バイオアベイラビリティーは、患者の指示および流速モニタリングに独立する様式で、エアロゾル化活性薬剤の流速を調節することによって増加される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
患者への効果的な送達は、任意の首尾よい薬物治療の重要な局面である。種々の送達経路が存在し、そして各々は、それ自身の利点および欠点を有する。丸剤、カプセル剤、エリキシル剤などの経口薬物送達は、おそらく最も簡便な方法であるが、多くの薬物は、それらが吸収され得る前に消化管で分解される。皮下注射は、しばしば、全身性薬物送達(タンパク質の送達を含む)のための効果的経路であるが、患者の受け入れがそれほど得られない。1日1回以上の薬物(例えば、インスリン)の注射は、しばしば患者のコンプライアンスの低下の要因であるので、種々の代替的投与経路もまた、開発されている。これらには、経皮送達、鼻内送達、直腸内送達、膣内送達、および肺送達が挙げられる。
【0003】
特に関心深いことに、肺の薬物送達は、患者による活性薬剤処方物の吸入に依存し、その結果、分散物中の活性薬物は、肺の遠位(肺胞)領域に到達し得る。このことは、吸入時の流れが活性薬剤処方物をエアロゾル化する、患者に取り付けられたデバイスを使用するか、または圧縮ガスまたは噴霧剤を使用して、活性薬剤処方物をエアロゾル化および送達する、薬物分散デバイスまたは薬物エアロゾルデバイスを使用して、達成され得る。
【0004】
特定の薬物が、肺胞領域を通して血液循環内に直接的に容易に吸収されることが見出されている。肺送達は、他の投与経路による送達が困難である、タンパク質およびポリペプチドの送達に特に有望である。このような肺送達は、肺の疾患を処置するための、全身性送達および局所送達の両方に効果的である。
【0005】
非特許文献1(Elliotら、Aust.Paediatr.J.(1987)23:293−297)は、半合成インスリンの6つの糖尿病小児の気道への噴霧送達を記載し、そしてこれらの小児において糖尿病を制御することが可能であることを決定したが、吸収の効率は、皮下送達と比較して低かった(20〜25%)。Laubeら、特許文献1(米国特許第5,320,094号)は、Elliotおよび多くの他の研究とは異なり、インスリンが肺に送達されたが、血中グルコースレベルが正常範囲内に低下するのに十分な肺性インスリン療法に応答する患者が存在しなかったことを強調した。Laubeらは、この問題が、送達方法の結果として送達系および/または口腔咽頭部における薬物の損失から生じること、および肺内の沈着の最大化が、血中のグルコース制御を改善するはずあることを仮説した。最大送達を達成するために、Laubeらは、30リットル/分未満、好ましくは約17リットル/分の流速でエアロゾル吸入時の吸入流速を制御した。この送達系は、インスリンを受け取るための医療チャンバー、インスリンがと取り除かれる出口開口部、および吸入流速を制御するための流速制限開口部を備える。
【0006】
一般に譲渡された米国特許出願60/078,212は、上記仮説を試験し、そして17リットル/分未満でのインスリンの肺送達が、より高い吸入流速よりも、より短い時間の期間でインスリンの血中レベルの増加を提供することを記載した。
【0007】
Rubsamenら、特許文献2(米国特許第5,364,838号)および特許文献3(同第5,672,581号)は、測定量のエアロゾル化インスリンの送達を記載する。このインスリンは、患者の吸入速度および吸入容量の決定から得られた情報に応答して、吸入流路内に自動的に放出される。モニタリングデバイスは、マイクロプロセッサーに情報を継続的に送り、そしてこのマイクロプロセッサーは、呼吸サイクルの最適な点に到達したことを決定し、マイクロプロセッサーは、インスリンの放出を可能にするバルブの開口部を作動させる。吸入流速は、約0.1〜2.0リットル/秒の範囲であり、そして容積は、約0.1〜0.8リットルの範囲である。
【0008】
特許文献4(WO97/40819)は、薬物送達の増加および肺経路を介して送達された薬物の沈着に対する鍵として、遅い吸入流速を記載する。標的流速(15〜60リットル/分)を得るために、デバイスの流動抵抗は、0.12〜0.21(cm H2O)1/2内であるように設計された。特許文献5(EPO692990 B1)は、乾燥粉末吸入器のためのデアグロメレーター(deagglomerator)を記載し、そして送達された用量および/または吸入された粉末エアロゾルの呼吸可能な割合に依存する空気流速を減少させることが所望される。このデアグロメレーターは、増加する流速に応答してチャネルの形状を変化する。このチャネルを通して弱い圧力低下を生じる、粉末を含む空気の通過は、可変性の形状がない場合に見られるよりも増加し、そしてある範囲の流速にわたってより効果的なデアグロメレーションを提供する。
【0009】
本発明者らは、現在、快適かつ再現可能な様式で肺経路を介して活性薬剤を効果的に送達するために、低い初期流速、それに続くより高い流量の期間を維持することが所望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,320,094号明細書
【特許文献2】米国特許第5,364,838号明細書
【特許文献3】米国特許第5,672,581号明細書
【特許文献4】国際公開第WO97/40819号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第0692990号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Elliotら、Aust.Paediatr.J.(1987)23:293−297
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
従って、1つの局面において、本発明は、ヒト患者の肺へエアロゾル化活性薬剤処方物を送達するためのデバイスに関する。このデバイスは、エアロゾル化活性薬剤処方物の流動抵抗を調節して、エアロゾル化活性薬剤処方物の初期標的流速を生成する、流動抵抗モジュレーターを含む。この流動抵抗調節モジュレーターは、流量モニタリングおよび患者の指示に独立した様式で流動抵抗を調節する。
【0013】
別の局面において、本発明は、ヒト患者の肺への活性薬剤処方物の送達のための方法に関する。この方法は、初期期間、それに続くより低い流動抵抗の期間のための高い流動抵抗を有する、エアロゾル化活性薬剤処方物を提供する工程を包含する。
上記に加えて、本発明は、以下の手段を提供する。
(項目1) エアロゾル化活性薬剤をヒト患者の肺に送達するためのデバイスであって、該デバイスは、該エアロゾル化活性薬剤処方物の流動抵抗を調節して、流量モニタリングおよび患者の指示に独立した様式の該エアロゾル化活性薬剤処方物の初期標的流速を生成する、流動抵抗モジュレーターを含む、デバイス。
(項目2) 前記流動抵抗モジュレーターが、前記エアロゾル化活性薬剤処方物の流動を時間で調節する、項目1に記載のデバイス。
(項目3) 前記流動抵抗モジュレーターが、15リットル/分未満の初期標的流速を最初に生成する、項目1に記載のデバイス。
(項目4) 前記初期標的流速が、10リットル/分未満である、項目3に記載のデバイス。
(項目5) 前記初期標的流速が、10秒未満の間維持される、項目1に記載のデバイス。
(項目6) 前記エアロゾル化活性薬剤処方物が、乾燥粉末活性薬剤処方物を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目7) 前記エアロゾル化活性薬剤処方物が、霧状形態のボーラスで送達される活性薬剤を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目8) 前記エアロゾル化活性薬剤処方物が、噴霧剤との混合物の活性薬剤を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目9) 前記エアロゾル化活性薬剤処方物が、活性薬剤溶液を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目10) 前記エアロゾル化活性薬剤処方物が、活性薬剤懸濁液を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目11) 前記エアロゾル化活性薬剤処方物が、活性薬剤スラリーを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目12) 患者に取り付けられたデバイスである、項目1に記載のデバイス。
(項目13) 項目1に記載のデバイスであって、ここで、該活性薬剤は、インスリン、シクロスポリン、副甲状腺ホルモン、卵胞刺激ホルモン、α−1−アンチトリプシン、ブデソニド、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インターフェロンα、インターフェロンβ、成長コロニー刺激因子、黄体化ホルモン放出ホルモン、カルシトニン、低分子量ヘパリン、ソマトスタチン、RSウイルス抗体、エリスロポイエチン、第VIII因子、第IX因子、セレダーゼ、セレザイム、ならびにそれらのアナログ、アゴニストおよびアンタゴニストからなる群より選択される、デバイス。
(項目14) ヒト患者の肺にエアロゾル化活性薬剤を送達するための方法であって、該方法は、初期時間の期間に高い流動抵抗で該エアロゾル化活性薬剤を送達する工程を包含する、方法。
(項目15) 前記高い流動抵抗が、0.4〜2(cm H2O)1/2/SLMの抵抗である、項目14に記載の方法。
(項目16) 前記低い流動抵抗が、0〜0.3(cm H2O)1/2/SLMの抵抗である、項目14に記載の方法。
(項目17) 前記高い流動抵抗が、15リットル/分以下の流速に対応する、項目14に記載の方法。
(項目18) 前記低い流動抵抗が、15〜80リットル/分の流速に対応する、項目14に記載の方法。
(項目19) 前記初期時間の期間が、10秒未満の期間であり、項目14に記載の方法。
(項目20) 前記初期時間の期間が、5秒未満の期間であり、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の乾燥粉末活性薬剤処方物送達の実施態様の概略図である。
【図2】図2は、図1のデバイスから送達されるエアロゾルの濃度のグラフである。
【図3】図3は、時間の関数とした図1のデバイスの流動抵抗モジュレーターの抵抗のグラフである。
【図4】図4は、図3に示された抵抗に対応する流速の抵抗のグラフである。
【図5】図5は、本発明の流量モジュレーターおよびその付随するデバイスの対応する流速の重ね合わせのグラフである。
【図6】図6は、最大の吸入試行を用いた、種々の流動抵抗での、図1のデバイスを使用する患者の吸入速度のグラフである。
【図7】図7は、最大の吸入試行を用いた、種々の流動抵抗での、図1のデバイスを使用する患者の吸入容積のグラフである。
【図8】図8は、種々の流動抵抗での、図1のデバイスを使用する患者の快適な吸入速度のグラフである。
【図9】図9は、快適な吸入速度での、変化する流動抵抗での、図1のデバイスを使用する患者の吸入容積のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、活性薬剤処方物の肺送達のための方法およびデバイスを提供し、ここで、この活性薬剤処方物の流動抵抗が、時間に伴い変化される。本発明は、それが、快適かつ再現可能な様式で活性薬剤の血中レベルの増加を提供するという点で驚くべきことである。
【0016】
(定義)
本明細書中で使用される場合、「活性薬剤」は、いくつかの薬理学的(しばしば、有益な)効果を提供する、薬剤、薬物、化合物、物質の組成物またはこれらの混合物を含む。これには、食品、食品補助剤、栄養剤、薬物、ワクチン、ビタミンおよび他の薬剤を含む。本明細書中で使用される場合、この用語はさらに、患者において局所的効果または全身性効果を生じる、任意の生理学的または薬理学的に活性な物質を含む。送達され得る活性薬剤としては、抗生物質、抗ウイルス剤、抗てんかん剤(anepileptics)、鎮痛薬、抗炎症剤および気管支拡張薬が挙げられ、そしてこれは、以下に作用する薬物を含むが、これらに限定されない無機化合物および有機化合物であり得る:末梢神経、アドレナリン作用性レセプター、コリン作用性レセプター、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経効果器連結部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、消化および排泄系、ヒスタミン系、中枢神経系。適切な薬剤は、例えば、以下から選択され得る:ポリサッカリド、ステロイド、催眠薬および鎮静薬、向精神剤(psychic energizer)、トランキライザ、鎮痙薬、筋弛緩薬、抗パーキンソン剤、鎮痛薬、抗炎症剤、筋収縮剤(muscle contractant)、抗微生物剤、抗マラリア剤、避妊薬を含むホルモン剤、交感神経作用剤(sympathomimetic)、ポリペプチド、および生理学的効果を誘発し得るタンパク質、利尿薬、脂質調節剤、抗男性ホルモン剤、駆虫薬、腫瘍形成剤(neoplastics)、抗腫瘍剤、血糖降下剤、栄養剤および栄養補助剤、成長補助剤、脂質、抗腸炎剤(antienteritis agent)、電解質、ワクチンおよび診断剤。
【0017】
本発明に有用な活性薬剤の例は、以下を含むが、これらに限定されない:インスリン、カルシトニン、顆粒球コロニー刺激因子(EPO)、第VIII因子、第IX因子、セレダーゼ(ceredase)、セレザイム(cerezyme)、シクロスポリン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、α−1プロテイナーゼインヒビター、エルカトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、成長ホルモン、ヒト成長ホルモン(HGH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ヘパリン、低分子量ヘパリン(LMWH)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン−2、黄体化ホルモン放出ホルモン(luteinizing hormone releasing hormone)(LHRH)、ソマトスタチン、ソマトスタチンアナログ(オクトレオチドを含む)、バソプレッシンアナログ、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インスリン様成長因子、インスリントロピン(insulintropin)、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−6、インターロイキン−10、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、神経成長因子、副甲状腺ホルモン(PTH)、サイモシンα1、IIb/IIIaインヒビター、α−1−アンチトリプシン、RSウイルス抗体、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)遺伝子、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、殺菌性/透過性増強タンパク質(BPI)、抗−CMV抗体、インターロイキン−1レセプター、13−シスレチノイン酸、ペンタミジンイセチオネート、硫酸アルブテロール、硫酸メタプロテレノール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセタミド、ブデソニドアセトニド、イプラトロピウムブロミド、フルニソリド、クロモリンナトリウム、酒石酸エルゴタミン、ならびに上記のアナログ、アゴニストおよびアンタゴニスト。活性薬剤はさらに、核酸(裸の核酸分子、ウイルスベクター、会合ウイルス粒子、核酸結合脂質もしくは脂質含有物質、または脂質もしくは脂質含有物質内に組み込まれた核酸、プラスミドDNAもしくはプラスミドRNA,または細胞(特に、肺の肺胞領域の細胞)のトランスフェクションもしくは形質転換に適切な型の他の核酸構築物として存在する)を含み得る。この活性薬剤はまた、種々の形態(例えば、可溶性および不溶性の荷電分子または非荷電分子、分子錯体または薬理学的に受容可能な塩の成分)であり得る。この活性薬剤は、天然に存在し得るか、またはこれらは、組換え産生され得るか、あるいはこれらは、1以上のアミノ酸が付加または欠失された、天然に存在するか、または組換え産生された活性薬剤のアナログであり得る。さらに、この活性薬剤は、ワクチンとしての使用に適切な生きた減弱化ウイルスまたは死ウイルスを含み得る。
【0018】
「エアロゾル化活性薬剤処方物」は、肺送達に適切な処方物中の上記に定義された活性薬剤を意味する。このエアロゾル化活性薬剤処方物は、乾燥粉末形態であり得るか、霧状化される溶液、懸濁液またはスラリーであり得るか、または適切な低沸点の、高度に揮発性の噴霧剤との混合物であり得る。1より多い活性薬剤が、このエアロゾル化活性薬剤処方物に取り込まれ得ること、および用語「薬剤」の使用が、2以上のこのような薬剤の使用を決して排除しないことが理解されるべきである。
【0019】
「吸入流速」は、エアロゾル化活性薬剤処方物が送達される流速である。
【0020】
エアロゾル化活性薬剤処方物中の活性薬剤の量は、所望の結果を達成するための活性薬剤の治療有効量を送達するために必要な量である。実際に、これは、特定の薬剤、症状の重篤度、および所望の治療効果に依存して広範に変化する。しかし、このデバイスは、一般的に、0.001mg/日〜100mg/日、好ましくは、0.01mg/日〜50mg/日の用量で送達されなければならない活性薬剤に有用である。
【0021】
本発明は、活性薬剤が初期に低い吸入流速で患者に送達される場合、その活性薬剤が一定であるがより高い吸入流速で送達される場合とは反対に、活性薬剤のバイオアベイラビリティーが増加するという、予期されなかった観察に少なくとも一部分基づく。
【0022】
本発明における使用に適切な活性薬剤処方物は、噴霧化のための乾燥粉末、溶液、懸濁物またはスラリー、ならびに噴霧剤(プロペラント)中に懸濁または溶解された粒子を含む。本発明における使用に適切な乾燥粉末は、非結晶活性薬剤、結晶活性薬剤、ならびに非結晶活性薬剤および結晶活性薬剤の両方の混合物を含む。この乾燥粉末活薬剤は、肺の肺胞への浸透を可能にするように選択された粒子サイズ(すなわち、好ましくは集団中間直径(mass median diameter)(MMD)10μm以下、好ましくは7.5μm未満、そして最も好ましくは5μm未満を有し、そして通常は、直径0.1μm〜5μmの範囲である。これらの粉末の送達用量効率(DDE)は、30%を超え、通常は40%を超え、好ましくは50%を超え、そして頻繁に60%を超える。そしてエアロゾル粒子サイズ分布は、集団中間空気力学的直径(mass median aerodynamic diameter)(MMAD)約1.0〜5.0μm、通常は1.5〜4.5μm MMAD、そして好ましくは1.5〜4.0μm MMADである。これらの乾燥粉末活性薬剤は、約10重量%より少なく、通常約5重量%より少なく、そして好ましくは約3重量%より少ない、水分含量を有する。このような活性薬剤粉末は、WO 95/24183およびWO 96/32149に記載されており、これらの公報は、本明細書中で参考として援用される。しかし、より大きいサイズの粒子(例えば、MMADが10μmと30μmとの間の粒子)を送達することは、その粒子のMMADが5.0μmより小さい限りは、可能であり得る。このような粒子は、例えば、PCT公開公報WO 97/44013およびWO 98/31346に記載されており、これら公報の開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0023】
乾燥粉末活性薬剤処方物は、好ましくは、実質的に非結晶性の粉末を生じる条件下で噴霧乾燥することによって、調製される。バルク(bulk)活性薬剤(通常は結晶形態)は、生理学的に受容可能な水性緩衝剤(代表的には、約2〜9の範囲のpHを有する、クエン酸緩衝剤)に溶解される。この活性薬剤は、0.01重量%〜1重量%、通常は0.1%〜0.2%の濃度で溶解される。次いで、この溶液は、商業的供給業者(例えば、Niro A/S(Denmark)、Buchi(Swizerland)など)から入手可能な従来の噴霧乾燥器にて噴霧乾燥されて、実質的に非結晶性の粉末を生じ得る。これら非結晶粉末は、この非結晶構造を生成する条件下での適切な活性薬剤溶液の凍結乾燥、真空乾燥、または蒸発乾燥によってもまた、調製され得る。このように生成された非結晶活性薬剤処方物は、所望のサイズ範囲内の粒子を生成するように、すりつぶされ得るかまたは粉砕され得る。乾燥粉末活性薬剤はまた、結晶形態でもあり得る。この結晶乾燥粉末は、バルク結晶活性薬剤をすりつぶすことかまたはジェットミルにかけることによって、調製され得る。
【0024】
本発明の活性薬剤粉末は、必要に応じて、呼吸器投与および肺投与に適切な薬学的キャリアまたは賦形剤と、混合され得る。このようなキャリアは、患者に送達されている粉末の活性薬剤濃度を低下させることが望まれる場合に、単にバルキング薬剤として作用し得る。しかし、このようなキャリアはまた、粉末分散デバイス中の粉末の分散度を改良してこの活性薬剤のより効率的かつ再生可能な送達を提供するように、そしてこの活性薬剤の取り扱い特徴(例えば、流動性および粘稠度)を改良して製造および粉末充填を容易にするように、作用し得る。このような賦形剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(a)炭化水素(例えば、モノサッカライド(例えば、フルクトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなど);ジサッカライド(例えば、ラクトース、トレハロース、セロビオースなど);シクロデキストリン(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン);ならびにポリサッカライド(例えば、ラフィノース、マルトデキストリン、デキストランなど);(b)アミノ酸(例えば、グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、リジンなど);(c)有機酸および塩基から調製された、有機塩(例えば、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、塩酸トロメタミンなど);(d)ペプチドおよびタンパク質(例えば、アスパルテーム、ヒト血清アルブミン、ゼラチンなど);ならびに(e)アルジトール(例えば、マンニトール、キシリトールなど)。キャリアの好ましいグループは、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、グリシン、クエン酸ナトリウム、ヒト血清アルブミンおよびマンニトールを含む。
【0025】
この乾燥粉末活性薬剤処方物は、WO 96/09085(本明細書中で参考として援用される)に記載されるが、下記のようにその流動抵抗を制御するように適合されているような、Inhale Therapeutic Systemsの乾燥粉末吸入器を使用して送達され得る。この乾燥粉末はまた、米国特許第5,320,094号(本明細書中に参考として援用される)にLaubeらによって記載されるような計量(metered dose)吸入器を使用してか、または米国特許第4,338,931号(本明細書中に参考として援用される)に記載されるもののような、患者駆動式デバイスによって、送達され得る。
【0026】
噴霧される溶液は、市販の活性薬剤処方物溶液をエアロゾル化することによって、調製され得る。これらの溶液は、線量計(dosimeter)、すなわち、制御されたボーラ用量でエアロゾルを送達する噴霧器(例えば、Puritan Bennettによって作製される、Raindrop)(この使用は、Laubeらによって記載される)によって、送達され得る。溶液、懸濁物またはスラリーの送達のための他の方法は、Rubsamenら、米国特許第5,672,581号に記載される。振動型圧電部材を使用するデバイスは、Ivriらの米国特許第5,586,550号(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0027】
プロペラント系は、プロペラント中に溶解された活性薬剤、またはプロペラントに懸濁された粒子を含み得る。これらの両方の型の処方物が、Rubsamenらの米国特許第5,672,581号(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0028】
活性薬剤のバイオアベイラビリティーの増加を得るために、上記のデバイスは、この活性薬剤処方物の初期吸入流速を制限するように改変されなければならない。本発明者らは、一旦、低い吸入流速の初期期間が確立されると、この制限は除去され得、そしてより高い流速が可能であることを、見出した。このより高い流速が確立されなければ、この患者は欲求不満になり、そして吸入を止める。
【0029】
本発明によると、約15リットル/分未満、好ましくは10リットル/分未満、そして頻繁に約5リットル/分と10リットル/分の流速が、約10秒未満、好ましくは5秒未満、そして頻繁には約3秒と5秒と間の期間に確立される。この限定された流速の初期期間の後に、この流速制限は除去され、そしてこの流速は、その患者の通常の吸入流速となる。この流速は、約15リットル/分と80リットル/分との間、通常は約15リットル/分と60リットル/分との間、そして頻繁に約15リットル/分と30リットル/分との間である。これを達成するために、流動抵抗調節器が、このデバイスに組み込まれる。このデバイスの圧力センサーが、吸入の開始を決定する。この流動抵抗調節器は、高抵抗(約0.4と2との間の(cm H2O)1/2/SLM、通常約0.4と1.5との間の(cm H2O)1/2/SLM、そして頻繁に約0.5と1.0との間の(cm H2O)1/2/SLM)(ここで、SLMは、標準温度および標準圧力でのリットル/分)にセットされて、上記の流速が得られる。一旦、限定された流動の初期期間が過ぎる(圧力センサーおよび事前に確立した時間によって決定する)と、この流動抵抗調節器はリセットされて、この流動に対する抵抗は、あったとしてもほとんど提供されない。この抵抗は、約0と0.3との間の(cm H2O)1/2/SLM、通常は0と0.25との間の(cm H2O)1/2/SLM、そして頻繁に0と0.2との間の(cm H2O)1/2/SLMである。従って、その患者の通常の快適な吸入流速が、確立される。流速調節についての例示的系は、図1に示される。この系において、この流速調節器は、吸込み空気の流速を制御するための、デバイス(104)への吸込み空気マニホルド(102)上に位置するバルブ(100)である。流量計(106)およびコンピュータ(108)は、調査目的のために流動制限に応答した患者の行動を評価するためにのみ使用される。圧力センサー(110)は、吸入の開始を測定し、そしてバルブ(100)の開口を誘発する。この場合に、この流速調節器は、マイクロプロセッサーによって駆動されるバルブであることが示されるが、簡単な機械的バルブ系もまた、使用され得る。さらに、吸入の開始を検出するために、流動センサーまたは圧力センサーのいずれかが、使用され得る。
【0030】
本発明のさらなる特徴に従って、粒子による咽喉中での固着が、以下の等式に従って、流速、および空気力学的直径の二乗に比例することが見出された:
I=kd2
I=咽喉中に固着する粒子の数
k=比例定数
d=この粒子のMMAD
Q=流速。
【0031】
この活性薬剤の大多数が、この低い流速期間の間に送達されると仮定すると、上記の等式に従って、本発明の低い初期流速を使用して、咽喉に固着する粒子の数を増加させることなく、より大きな粒子を送達することが可能である。次いで、最初に、この流速が低くそしてこのエアロゾルの濃度が高い(すなわち、このエアロゾル中の粒子の数がそのピークにある)場合、この粒子は、咽喉に固着されるよりも優先的に、肺の深部に送達され、そしてこの活性薬剤のバイオアベイラビリティーが増加する。
【0032】
図1のデバイス中に存在するエアロゾル濃度が、図2に示される。0.5リットルのエアロゾルについて、このグラフは、第1の0.1〜0.2リットルの濃度が最高であること、そしてその後、この濃度が消滅することを示す。従って、低い流速でこのエアロゾルの最初の部分を送達して、咽喉固着を回避し、そしてバイオアベイラビリティーを増加させることが、重要である。このことを達成するための流速調節器の抵抗プロフィールが、図3に示される。この抵抗は、最初の3秒間の間は高く(0.65(cm H2O)1/2/SLM)、次いで、このバルブが開けられ、そしてこの抵抗はこのデバイスの通常の抵抗(この場合は、0.15(cm H2O)1/2/SLM)へと移行する。図4の流速から理解され得るように、この初期の吸入流速は約10SLMであり、次いで、約25〜30SLMまで移行する。本発明のさらなる流速調節器の抵抗プロフィール、およびその関連流速プロフィールが、図5に示される。この抵抗は、最初の5秒間の間に、高から低へ(0.9(cm H2O)1/2/SLMから0.20(cm H2O)1/2/SLMへ)移行する。図5の流速から理解され得るように、最初の3秒間の吸入流速は20SLM未満であり、次いで、約30SLMまで移行する。これらの場合の両方において、第1の0.1〜0.2リットル中のこのエアロゾルの濃度が最大であるので、この活性薬剤の大多数は、最初の3秒間に送達される。これは、肺深部への送達を増加し、従って、この活性薬剤のバイオアベイラビリティーを増加させる。
【0033】
以下の実施例は、本発明の例示である。これらは、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。これらの実施例のバリエーションおよび等価物が、本明細書中の開示、図面および特許請求の範囲を考慮して、当業者に明らかである。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
流速に対する流動抵抗の関係を決定するために、10人のボランティア(5人の男性(M)および5人の女性(F))に、3つの異なる抵抗に対して呼吸するように依頼し、そして最大速度および快適な速度の両方で吸入するように導いた。この結果を、図6〜9に示す。図6および7は、男性および女性に関する、最大の吸入速度および快適な吸入速度についての流速である。図8および9は、上記の、最大吸入速度および抵抗、ならびに快適な吸入速度および抵抗で吸入された、エアロゾルの容量を示す。
【0035】
10リットル/分の流速を快適に維持するための抵抗は、約0.3(cm H2O)1/2/SLMである。さらに、より高い流動抵抗で送達されたエアロゾルの吸気容量は低下する。なぜなら、抵抗が増加するにつれて、吸気がますます困難になり、そしてより快適ではなくなるからである。実際、高抵抗の最初のエアロゾル送達期間後に抵抗が減少する場合、その吸入容量は、一定の低い流動抵抗送達速度で送達される容量に対して、有意には減少しない。
【0036】
(実施例2)
(材料および方法)
(材料)
結晶ヒト亜鉛インスリン(26.3U/mg)を、Eli Lilly and Company、Indianapolis、INから入手し、そして逆相HPLCによって測定した場合に99%を超えて純粋であることがわかった。USPマンニトールを、Roquette Corporation(Gurnee、IL)から入手する。グリシンを、Sigma Chemical Company(St.Louis、Missouri)から購入した。クエン酸ナトリウム二水和物、USPを、J.T.Baker(Phillipsburg、NJ)から得る。
【0037】
(粉末生成)
インスリン粉末を、マンニトールおよびグリシンを含むクエン酸ナトリウム緩衝剤中に、バルク結晶インスリンを溶解して、最終固体濃度7.5mg/mlおよびpH6.7±0.3を得ることによって、作製する。この噴霧乾燥器を、110℃と120℃との間の入口温度および液体送り速度5ml/分で操作して、70℃と80℃との間の出口温度を生じる。次いで、この溶液を0.22μmフィルターを通じて濾過し、そしてBuchi Spray Dryer中で噴霧乾燥して、微細な白色非結晶粉末を形成する。生じた粉末を、乾燥環境(<10%RH)のきつくキャップした容器中に保存する。
【0038】
(粉末の分析)
この粉末の粒子サイズ分布を、Sedisperse A−11(Micrometrics、Norcross、GA)にてこの粉末を分散した後に、Horiba CAPA−700 Particle Size Analyzerにて液体遠心沈降することによって、測定する。この粉末の水分含量を、Mitsubishi CA−06 Moisture Meterを使用して、Karl Fischerの技術によって測定する。このエアロゾルの粒子サイズ分布を、多段式インパクター(cascade impactor)(Graseby Andersen、Smyrna、GA)を使用して測定する。この送達容量効率(DDE)を、WO96/09085に記載されるのと同様に、Inhale Therapeutic Systemsのエアロゾルデバイスを使用して評価する。このDDEを、このエアロゾルデバイスのマウスピースを突出したブリスターパッケージ(blister package)内に含まれる名目用量のパーセンテージとして規定する。このDDEを、真空がデバイスの作動に従って2.5秒間引かれる(30L/分)ガラス繊維フィルター(Gelmann、47mm直径)上で捕獲した。DDEを、このブリスターパック中の粉末の質量によって、このフィルター上で収集した粉末の質量を割ることによって、計算する。
【0039】
粉末処理の前後のインスリンの完全性を、計量した部分の粉末を蒸留水に再溶解し、そしてこの再溶解した溶液を、この噴霧乾燥器中に挿入したもとの溶液と比較することによって、ヒトインスリンの参照標準物に対して測定する。逆相HPLCによる保持時間およびピーク面積を使用して、このインスリン分子が、このプロセス中で化学的に改変または分解されたか否かを、決定する。UV吸光度を使用して、インスリン濃度(278nmにて)および不溶性凝集物の存在または不在(400nmにて)を決定した。さらに、出発溶液のpHおよび再構成した溶液のpHを測定する。このインスリン粉末の非結晶の性質を、偏光顕微鏡によって確認する。
【0040】
(インビボ試験)
吸入されたインスリンのバイオアベイラビリティーに対する、吸入速度の変化の効果を試験するために、24人の個体に、図1に示される系を使用してインスリン2mgを投与する。各処置は、各1mgの2回の吸入からなる。吸入器は、米国特許第5,740,794号(本明細書中に参考として援用される)に記載のような、Inhale Therapeutic Systems Inhalers(San Carlos、CA)である。この処置は、以下である:
A.粒子サイズ3.6μMMAD(大きいPSD)を有するインスリンの吸入投与。標準的呼吸操作および吸入器を利用する。(ランプなし)。
【0041】
B.粒子サイズ3.6μMMAD(大きいPSD)を有するインスリンの吸入投与。吸入速度は、図1に示される系によって、約10リットル/分に限定される。(ランプ)。
【0042】
C.粒子サイズ2.6μMMAD(小さいPSD)を有するインスリンの吸入投与。吸入速度は、図1に示される系によって、約10リットル/分に限定される。(ランプ)。
【0043】
このインスリン乾燥粉末処方物は、平均5ミクロン未満の平均粒子直径を有する。この吸入器は、この粉末を分散し、そして保持チャンバ中に約240mlの容量で保持される、薬物のエアロゾル雲(パフ(puff))を生成する。この保持チャンバの容量は、深い吸気の小さい画分(>2リットル)である。このチャンバは、このパフの吸入の間に、周囲の空気がこのチャンバ中に吸引され、それによって、エアロゾルをこのチャンバから押出し、そして肺へ深く送るように、設計されている。
【0044】
最少1mlの血漿を提供するに十分な血液を、ヘパリン化したチューブに24人の被験体から、インスリン投与の30分前および15分前、そしてこの吸入の開始の0(インスリン投与の直前)、5、10、20、30、40、45、60、90、120、180、240、300および360分後に、収集した。360分に採取したサンプルについてのインスリンバイオアベイラビリティーを、uU.分/mL(インスリンのマイクロ単位/血漿ミリリットル)として、表Iに示す。これらの図は、低い初期流速、続くより高い流速によって、一定のより高い流速よりも高い、インスリンのバイオアベイラビリティーを提供したことを示す(ケースAと比較して、ケースBの状態について、平均11%の増加)。低い初期流速と小さい粒子サイズの組み合わせが、さらにバイオアベイラビリティーを増加させた(ケースBと比較して、ケースCについて平均242%の増加)。
【0045】
表I
【0046】
【表1】


本明細書中で言及される各刊行物、特許または特許出願の開示は、あたかも各々の個々の刊行物、特許または特許出願が、詳細かつ個別に参考として援用されると示されたのと同じ程度に、本明細書中に参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−136688(P2009−136688A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2017(P2009−2017)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【分割の表示】特願2000−575566(P2000−575566)の分割
【原出願日】平成11年10月7日(1999.10.7)
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)