説明

流動接触分解方法

【課題】従来よりも重質化したり、金属分含有量が増加した原料油を流動接触分解する場合においても、長期間に亘ってガソリン留分の収率を高く、かつコークの生成を抑制することができ、同時に原料油の分解率を高くすることができる流動接触分解方法を提供すること。
【解決手段】平衡触媒の一部を抜き出して新しい触媒を補充しながら行う流動接触分解方法であって、新しい触媒としてアンモニアTPD法による酸量が50〜250μmol/gである触媒を用いるとともに、流動接触分解装置内の触媒全量に対する新しい触媒の1日あたりの補充割合A(質量%)を、当該新しい触媒の酸量B(μmol/g)と、下記の式(I)を満たすように調整して行うことを特徴とする流動接触分解方法。
700 ≦ A×B ≦ 1,800 ・・・・(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動接触分解方法、特にガソリン留分の収率を高め、コークの生成を抑制し得る流動接触分解方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解は、重質油と触媒とを接触させて分解し、主としてガソリン留分を製造することを目的としている。
流動接触分解の原料は、通常減圧軽油や常圧残油等の重質油が用いられる。流動接触分解の原料である重質油、特に常圧残油には多量の金属(ニッケルやバナジウムなど)が含まれ、触媒が循環して使用されることにより金属が触媒に堆積する。
【0003】
近年では、従来型の流動接触分解(FCC)装置に、原料油である減圧軽油に加え、より重質で金属分が多い常圧残油や減圧残油を混合処理したり、残油流動接触分解(RFCC)装置の原料油としてより重質で金属分の多い減圧残油を混合処理するなど、FCC装置やRFCC装置にとってよりシビアーな状況となっている。
このような状況下で、FCC装置やRFCC装置での原料油の分解率を維持・向上させる手段として、より分解活性の高い流動接触分解触媒を投入することや、流動接触分解触媒の投入量を増加することが考えられる。しかし、単に触媒活性が高い流動接触分解触媒を増加すると、原料油の過分解が起こり、コーク生成が増加して、FCC装置やRFCC装置の再生塔の負荷が高くなり、処理量の制約に繋がる結果となる。逆にあまり低い活性の触媒を用いると触媒投入量を多くしなければならないという不具合がある。
【0004】
ところで、非特許文献1で記述されているように、流動接触分解における新しい触媒は、磨耗による触媒のロスや接触分解活性の維持のために投入されるもので、通常は、流動接触分解装置内の触媒全量に対し1〜2質量%投入されている。また、特許文献1では、流動接触分解に用いる触媒として、分解活性が高い特定の結晶性アルミノ珪酸塩と無機酸化物マトリックスとからなる接触分解触媒を提案している。
しかしながら、もし原料油が重質化したり、あるいは金属分が増加した場合において、単に新しい触媒の投入量を増加したり、分解活性が高い触媒を使用した場合、上記のとおり、初期段階において過分解を生じる結果となり、充分な問題解決には至らない。
このようなことから、原料油が重質化したり、あるいは金属分が増加した場合においても、長期間に亘ってガソリン留分の収率を高く、コークの生成を抑制することができる流動接触分解方法の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−126661号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Fluid Catalytic Cracking Handbook, p106, Gulf Publishing Company Houston TeBas (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下において、より重質化したり、金属分の含有量が増加した原料油を流動接触分解する場合においても、長期間に亘ってガソリン留分の収率を高く、かつコークの生成を抑制することができ、同時に原料油の分解率を高くすることができる流動接触分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の指標に基づいて、流動接触分解方法において新たに投入される新しい触媒の性状及び該触媒の補充割合を制御することによって、本発明の目的を達成し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、
〔1〕平衡触媒の一部を抜き出して新しい触媒を補充しながら行う流動接触分解方法であって、新しい触媒としてアンモニアTPD法による酸量が50〜250μmol/gである触媒を用いるとともに、流動接触分解装置内の触媒全量に対する新しい触媒の1日あたりの補充割合A(質量%)を、当該新しい触媒の酸量B(μmol/g)と、下記の式(I)を満たすように調整して行うことを特徴とする流動接触分解方法、
700 ≦ A×B ≦ 1,800 ・・・・(I)
〔2〕新しい触媒の1日あたりの補充割合Aが、流動接触分解装置内の触媒全量に対し4質量%以上である上記〔1〕に記載の流動接触分解方法、
〔3〕前記新しい触媒が、ゼオライトを含有することを特徴とする上記[1]に記載の流動接触分解方法、
〔4〕前記ゼオライトが、Y型ゼオライトまたはベータゼオライトである上記〔3〕に記載の流動接触分解方法、
〔5〕前記Y型ゼオライトが、格子定数(U.D.)が2.430〜2.450nmであることを特徴とする上記〔4〕に記載の流動接触分解方法、
〔6〕前記新しい触媒が、(a)ゼオライト10〜40質量%、(b)アルミナ2〜30質量%、(c)粘土鉱物10〜60質量%、及び(d)バインダー10〜30質量%を含有することを特徴とする上記〔3〕に記載の流動接触分解方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、重質化したり、金属分の含有量が増加した原料油を流動接触分解する場合においても、長期間に亘ってガソリン留分の収率を高く、かつコークの生成を抑制することができ、同時に原料油の分解率を高くすることができる流動接触分解方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の流動接触分解方法においては、触媒の一部を抜き出して新しい触媒(新触媒)を補充しながら行う。重質油と接触しながら循環使用される触媒(以下、「平衡触媒」と称する。)に、重質油中に存在する金属が堆積して触媒活性が低下するため、触媒全体として接触分解反応におけるガソリン留分の収率を高く維持し、コークの生成を抑制する性能を維持するためである。
前記流動接触分解方法における平衡触媒の一部を抜き出して新しい触媒を補充する場合の補充割合は、下記の式(I)を満たすように調整することが必要である。
700 ≦ A×B ≦ 1,800 ・・・・(I)
式中、Aは、流動接触分解装置内の触媒全量に対する新しい触媒の1日あたりの補充割合(質量%)、Bは新しい触媒のアンモニアTPD法による酸量(μmol/g)を示す。
式(I)の〔A×B〕の値が700未満では、所望の原料油の分解率やガソリン収率を高く保つことができなくなり、また、〔A×B〕の値が1,800を越えると原料油の過分解を起こし、不要なコークを生成することとなり、本発明の目的を達成することができない。従って、〔A×B〕の値は、800〜1,600であることがより好ましい。
【0012】
前記新しい触媒は、アンモニアTPD法による酸量(以下、「酸量」と略称することがある)Bが、50〜250μmol/gのものであることが必要である。新しい触媒のアンモニアTPD法による酸量Bが50μmol/g未満では、触媒の補充割合Aが過大になることにより経済性に劣るため好ましくなく、また、酸量Bが、250μmol/gを越えると、原料重質油の過分解が生ずる恐れがあって好ましくない。したがって新しい触媒は、アンモニアTPD法による酸量は、80〜250μmol/gのものであることがより好ましい。
【0013】
また、前記新しい触媒の1日あたりの補充割合Aは、4質量%以上であることが好ましい。Aが4質量%以上であれば、触媒全体の活性低下を確実に抑制する効果が得られる。
【0014】
本発明に用いる新しい触媒としては、上記の酸量を有するとともに、さらに以下の組成を有することが好ましい。すなわち、
(1)ゼオライト(a)を含有する触媒であることが好ましい。
すなわち、ゼオライトからなる触媒、若しくはゼオライトと他の成分とを含む触媒が好ましい。
(2)さらに、(a)ゼオライトとともに、(b)アルミナを含有する触媒であることが好ましい。
(a)と(b)含むことによって触媒の酸量及び細孔分布、全比表面積などを適正に調整することが容易になる。
(3)また、さらに、(a)と(b)に加えて、(c)粘土鉱物、及び(d)バインダーを含有することが好ましい。
このことによって、触媒の細孔分布を調整し、また触媒の機械的強度を高めることができる。
以上のことから、(a)〜(d)を含む触媒(組成物)が特に好ましい。
【0015】
前記(a)成分のゼオライトとしては、重質油の分解に適した細孔分布を有する点でY型ゼオライトやベータゼオライトが好ましく、中でも、Y型ゼオライトが好ましい。
Y型ゼオライトとしては、超安定Y型ゼオライト(USY)、NaYやHYを希土類で交換したREY、及びこれらにスチーミング処理等を施して得られるREUSYが特に好ましい。
また、Y型ゼオライトは、格子定数(U.D.)が2.430〜2.450nmであるY型ゼオライトが好ましい。U.D.が2.430〜2.450nmであれば、目的とする酸量を有する触媒(組成物)を容易に得ることができる。
なお、ゼオライトの酸量は、アルカリとのイオン交換、酸処理、スチーミング処理、被毒物質による吸着処理などによって調整することができる。
また、本発明で用いるゼオライトは、さらに全比表面積が300〜1,000m2/gのものが好ましく、400〜1,000m2/gのものがより好ましい。全比表面積が300m2/g以上であれば、所望のガソリン留分の収率が得られる点で好ましく、全比表面積が1,000m2/g以下であれば原料重質油の過分解が抑制される点で好ましい。
なお、全比表面積は、窒素吸着法のASTM D4365−95によって測定されるものである。
【0016】
前記(b)成分であるアルミナとしては、擬ベーマイトが好ましく用いられる。擬ベーマイトを製造するには、硫酸アルミニウム水溶液とアンモニア水、アルミン酸ナトリウム水溶液と硫酸、硝酸等の鉱酸、あるいは硫酸アルミニウム水溶液とアルミン酸ナトリウム水溶液などと組み合わせ、中和反応させ、アルミナゲルを沈殿させ、沈殿したアルミナゲルをろ過及び洗浄してナトリウムイオン、硫酸イオンを除去し、アルミナゲルケーキとする。このアルミナゲルケーキを再びイオン交換水で再スラリー化し、固形分濃度5〜30質量%とし、スプレードライヤーにて乾燥温度100〜250℃で噴霧乾燥すると、擬ベーマイトが得られる。
【0017】
また(c)成分の粘土鉱物としては、カオリンやベントナイトを用いることができる。
さらに、(d)成分のバインダーとしては、シリカゾル、アルミナゾル、シリカ・アルミナゾル等が好ましく用いられる。
【0018】
本発明に用いる好ましい触媒としては、さらに必要に応じてシリカ・アルミナを配合することができる。この場合、シリカ・アルミナ中の(シリカ/アルミナ)比は、好ましくは5/95〜80/20(質量/質量)であり、好ましくは10/90〜70/30(質量/質量)である。シリカの量が多すぎると、シリカ・アルミナの細孔径を大きくすることができなかったり、触媒組成物の細孔分布がブロードとなり、重質油が細孔の中に入れなくなることがある。
【0019】
上記(a)〜(d)を含む触媒組成物である場合の各成分の配合割合については、(a)成分のゼオライトは好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは15〜35質量%、(b)成分のアルミナは、好ましくは2〜30質量%、更に好ましくは2〜20質量%、(c)粘土鉱物は好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは15〜50質量%、(d)バインダーは10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%である。
【0020】
前記(a)ゼオライトの含有量が10質量%以上であれば、ガソリンの収率を高く保つことができ、一方、ゼオライトの含有量が40質量%以下であれば、ゼオライトの種類を問わず、原料重質油や生成したガソリン留分が過分解を起こし、ガス及びコークの生成が増大する恐れがない。
前記(b)成分のアルミナの含有量が2質量%以上であれば、原料重質油の分解に必要なメソ細孔が確保でき、アルミナの含有量が30質量%以下であれば原料重質油が大まかに分解した後、ガソリンに更に分解する分解活性点を提供する(a)成分(ゼオライト)の必要量を確保することが容易である。
(c)成分の粘土鉱物の含有量が10質量%以上であればガソリン留分の収率が低下することがなく、60質量%以下であれば他の触媒の有効成分の配合量を制限する弊害はない。
(d)バインダーの含有量が10質量%以上であると触媒の機械的強度を確保でき、30質量%以下であれば他の有効成分の必要な配合量を確保することが容易である。
【0021】
本発明に用いることが好ましい、前記(a)〜(d)からなる新しい触媒(組成物)の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
(a)ゼオライト、(b)アルミナ、さらには(c)粘土鉱物及び(d)バインダーを各前記好ましい配合割合の範囲で採取し、それをイオン交換水と混合し、固形分濃度が好ましくは5〜25質量%のスラリーとする。このとき、アルミナの原料である熱処理擬ベーマイトやゼオライト及び粘土鉱物、は0.2〜5μmに粉砕しておくことが好ましい。またスラリーはpH3〜9に調整することが好ましい。
続いて、上記により得られたスラリーを、スプレードライヤーにて100〜400℃で噴霧乾燥し、好ましくは直径20〜150μm、より好ましくは30〜120μmの球状触媒とする。
次いでこれを80℃〜200℃で、0.5〜5時間焼成することにより目的とする流動接触分解触媒が得られる。
なお、必要に応じて、さらに酸量を調整するためにスチーミング等の処理を行ってもよい。
このような方法によって、酸量が50〜250μmol/gである触媒を得ることができる。
【0022】
本発明に用いる好ましい触媒の酸量は、触媒を構成するゼオライト、アルミナをそれぞれスチーミング処理、アルカリイオン交換処理、被毒物質による被毒処理等を行って全体の酸量を調整しても良い。スチーミング処理の場合は、例えば、400〜600℃、1〜5時間程度曝せばよく、アルカリイオン交換処理の場合は、例えば、50〜70℃の炭酸ナトリウム水溶液に0.5〜3時間入れることなどの条件で行うことができる。
【0023】
本発明で好ましく用いる新しい触媒は、上記のとおりであるが、平衡触媒として当初から使用する接触分解触媒についても、上記新しい触媒を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の接触分解方法において原料として用いる重質油としては、とくに制限はなく、減圧軽油、常圧残油あるいは減圧残油、脱硫重油であってもよく、もちろん未脱硫重質油であるか脱硫重質油であるかを問わない。また、これらの混合油であってもよい。
【0025】
また、接触分解反応の反応条件としては、特に制限はなく、流動床(FCC、RFCC)式接触分解装置を用い、従来公知の方法で行うことができる。具体的には例えば、反応温度は好ましくは450〜550℃で行い、触媒/油比は3〜10(質量/質量)とすることが好ましい。また、触媒の再生温度は600〜850℃とすることが好ましい。
【0026】
また、例えば、流動接触分解ガス中の有用成分であるプロピレンの選択性を向上させる目的の場合には、上記触媒組成に、さらにZSM−5やMCM−22などのプロピレン選択性の高いゼオライトを添加剤として使用してもよい。この場合、添加剤としての前記ゼオライトの投入量は、通常、触媒全体に対し0.5〜15質量%である。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0028】
実施例1
(1)触媒の調製
(i)新触媒の調製
(a)東ソー社製HSZ−320NAA(NaY)をアンモニア水溶液とイオン交換後、500℃で、3時間焼成し、さらに650℃で1時間スチーミング処理して、U.D.が2.450nm、酸量が1,050μmol/gのY型ゼオライトを得た。
(b)米国LBRoche ChemicBls社製噴霧乾燥球状擬ベーマイトVERSBL250を500℃で3時間焼成し、酸量が460μmol/gの活性アルミナを得た。
(c)粘土鉱物としてカオリンを準備した。さらに
(d)シリカバインダーを準備した。
次いで、(a)18質量%、(b)3質量%、(c)50質量%及び(d)29質量%を混合しスラリー化し、続いてスプレードライして、接触分解触媒A1を調製した。接触分解触媒A1(新触媒)の酸量は、200μmol/gであった。
(ii)擬似平衡化処理触媒の調整
前記接触分解触媒A1を770℃―98容量%スチーム(窒素バランス)でスチーミング処理し、13時間水熱処理後、バナジン酸ニッケル、バナジウムのシクロヘキサン溶液を用いて、触媒上にニッケル1,400質量ppm、バナジウム2,800質量ppmを含浸し、その後、735℃―20容量%スチーム(窒素バランス)−4時間、更には850℃―5容量%スチーム(窒素バランス)−4時間を行った。これを擬似平衡化処理触媒A2と称する。A2(平衡化処理触媒)の酸量は、10μmol/gであった。
(iii)反応評価
小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)により反応評価を行った。
評価条件:触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒A1を70g、前記(ii)の擬似平衡化処理触媒A2を930g充填し、反応温度545℃、C/O=5.2で、アラビアンヘビー/アラビアンライト=50容量%/50容量%相当品の脱硫重油を原料油として反応評価した。原料油性状を表1に、反応評価結果を表2に示す。
また、表中の新触媒A1は、接触分解触媒A1を600℃にて2時間焼成したものを用いた。以下の新触媒についても同様である。
【0029】
実施例2
触媒充填量1kgのうち、新触媒である接触分解触媒A1を40g、擬似平衡化処理触媒A2を960gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で反応評価した。結果を表2に示す。
【0030】
実施例3
(i)新触媒の調製
(a)東ソー社製HSZ−320NAAをアンモニア水溶液とイオン交換後、500℃で、3時間焼成し、さらに650℃で6時間スチーミング処理して、U.D.が2.440nm、酸量が1,050μmol/gのY型ゼオライトを得た。
(b)〜(d)は実施例1と同じものを用意した。
次いで、(a)22質量%、(b)3質量%、(c)50質量%及び(d)25質量%をスラリー化し、次いでスプレードライして、接触分解触媒B1を調製した。接触分解触媒B1(新触媒)の酸量は、160μmol/gであった。
(ii)擬似平衡化処理触媒の調整
接触分解触媒B1について、実施例1と同様の方法と条件で擬似平衡化処理触媒B2を調整した。平衡化処理触媒B2の酸量は、10μmol/gであった。
(iii)反応評価
評価条件として、触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒B1を100g、前記(ii)の擬似平衡化処理触媒B2を900g充填したこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製 「DCR」)による反応評価を行った。結果を表3に示す。
【0031】
実施例4
実施例3で調製した接触分解触媒B1と、擬似平衡化処理した擬似平衡化処理触媒B2を用い、評価条件として触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒B1の割合を70g、上記擬似平衡化処理触媒B2を930gとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。結果を表3に示す。
【0032】
実施例5
(i)新触媒及び擬似平衡化処理触媒の調製
(a)として、東ソー社製HSZ−320NAAをアンモニア水溶液とイオン交換後、500℃で3時間焼成し、さらに650℃で24時間スチーミング処理して、得られたU.D.が2.430nm、酸量が500μmol/gのY型ゼオライトを用いたこと以外は、実施例1と同様方法で、接触分解触媒C1及び擬似平衡化処理触媒C2を調整した。接触分解触媒C1の酸量は、90μmol/gであった。
(ii)反応評価
評価条件として、触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒C1を100g、前記(ii)の擬似平衡化処理触媒C2を900g充填したこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。結果を表5に示す。
【0033】
比較例1
実施例1で調製した接触分解触媒A1と、擬似平衡化処理した擬似平衡化処理触媒A2を用いて、評価条件として触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒A1を割合が100g、擬似平衡化処理触媒A2を900gとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0034】
比較例2
実施例1で調製した接触分解触媒A1と、擬似平衡化処理した擬似平衡化処理触媒A2を用いて、評価条件として触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒A1を割合が10g、擬似平衡化処理触媒A2を990gとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0035】
比較例3
実施例3で調製した接触分解触媒B1と、擬似平衡化処理した擬似平衡化処理触媒B2を用いて、評価条件として触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒B1を割合が40g、擬似平衡化処理触媒B2を960gとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。結果を表3に示す。
【0036】
比較例4
実施例3で調製した接触分解触媒B1と、擬似平衡化処理した擬似平衡化処理触媒B2を用いて、評価条件として触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒B1を割合が10g、擬似平衡化処理触媒B2を990gとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。結果を表3に示す。
【0037】
比較例5
(i)新触媒及び擬似平衡化処理触媒の調製
(a)として、東ソー社製HSZ−320NAAをアンモニア水溶液とイオン交換後、500℃で、3時間焼成し、さらに650℃で0.2時間スチーミング処理して、得られたU.D.が2.456nm、酸量が2,100μmol/gのY型ゼオライトを用いたこと以外は、実施例1と同様方法で、接触分解触媒D1及擬似平衡化処理触媒D2を調整した。接触分解触媒D1の酸量は、260μmol/gであった。
(ii)反応評価
評価条件として、触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒D1を100g、擬似平衡化処理触媒D2を900g充填したこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。結果を表4に示す。
【0038】
比較例6
比較例5で調製した接触分解触媒D1と、擬似平衡化処理した擬似平衡化処理触媒D2を用いて、小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。
評価条件:触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒D1の割合が70g、残りが上記擬似平衡化処理触媒D2が930gであって、その他の条件は実施例1と同様の条件にて行った。結果を表4に示す。
【0039】
比較例7
比較例5で調製した接触分解触媒D1と、擬似平衡化処理した擬似平衡化処理触媒D2を用い、評価条件として、触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒D1の割合を10g、擬似平衡化処理触媒D2を990g充填したこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。結果を表4に示す。
【0040】
比較例8
実施例5で調製した接触分解触媒C1と、擬似平衡化処理した擬似平衡化処理触媒C2を用い、評価条件として、触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒C1を70g、擬似平衡化処理触媒C2を930g充填したこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。結果を表5に示す。
【0041】
比較例9
実施例5で調製した接触分解触媒C1と、擬似平衡化処理した擬似平衡化処理触媒C2を用い、評価条件として触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒C1を40g、平衡化処理触媒C2を960g充填したこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。結果を表5に示す。
【0042】
比較例10
実施例5で調製した接触分解触媒C1と、擬似平衡化処理した擬似平衡化処理触媒C2を用いて、評価条件として、触媒充填量1kg、そのうち、新触媒である接触分解触媒C1を10g、擬似平衡化処理触媒C2を990g充填したこと以外は、実施例1と同様の条件で小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価を行った。結果を表5に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
[注]
表2中の「原油の分解率」は、小型ライザー装置(グレースダビソン社製「DCR」)による反応評価において、通油した原料油100質量%から、流動接触分解反応により生成した流動接触分解残油(CLO)の質量%を引いた値である。表3〜5における「原油の分解率」も同様である。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
表2〜5より、本願発明の流動接触分解法では、原料油の分解率が91.9質量%以上、ガソリン収率が40.7質量%以上、かつコーク収率は7.3質量%以下であって、いずれも良好であって許容できる範囲にあることが分る(実施例1〜5)。
これに対し、本願発明の要件、〔A×B〕が低く640以下である場合は、ガソリン収率は高いものの原料油の分解率が91.8質量%以下と低く(比較例2〜4、7〜10)、本願発明の要件〔A×B〕が高く2,000以上の場合は、ガソリン収率が40.5質量%以下と低く、いずれも好ましくない(比較例1,5,6)。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の流動接触分解方法は、重質化したり、金属分の含有量が増加した原料油を流動接触分解する場合においても、長期間に亘ってガソリン留分の収率を高く、かつコークの生成を抑制することができ、同時に原料油の分解率を高くすることができる。したがって、有用な流動接触分解方法として広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平衡触媒の一部を抜き出して新しい触媒を補充しながら行う流動接触分解方法であって、新しい触媒としてアンモニアTPD法による酸量が50〜250μmol/gである触媒を用いるとともに、流動接触分解装置内の触媒全量に対する新しい触媒の1日あたりの補充割合A(質量%)を、当該新しい触媒の酸量B(μmol/g)と、下記の式(I)を満たすように調整して行うことを特徴とする流動接触分解方法。
700 ≦ A×B ≦ 1,800 ・・・・(I)
【請求項2】
新しい触媒の1日あたりの補充割合Aが、流動接触分解装置内の触媒全量に対し4質量%以上である請求項1に記載の流動接触分解方法。
【請求項3】
前記新しい触媒が、ゼオライトを含有することを特徴とする請求項1に記載の流動接触分解方法。
【請求項4】
前記ゼオライトが、Y型ゼオライトまたはベータゼオライトである請求項3に記載の流動接触分解方法。
【請求項5】
前記Y型ゼオライトが、格子定数(U.D.)が2.430〜2.450nmであることを特徴とする請求項4に記載の流動接触分解方法。
【請求項6】
前記新しい触媒が、(a)ゼオライト10〜40質量%、(b)アルミナ2〜30質量%、(c)粘土鉱物10〜60質量%、及び(d)バインダー10〜30質量%を含有することを特徴とする請求項3に記載の流動接触分解方法。

【公開番号】特開2011−79909(P2011−79909A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231759(P2009−231759)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(590000455)財団法人石油産業活性化センター (249)
【Fターム(参考)】