説明

流動方向検出吸入器

本発明は、吸入装置のさまざまな構成要素を作動および制御する流体センサに関する。この流体センサは、吸入装置内に配置されて前記装置内における流体を検出するとともに、前記流体の周波数、方向および/または振幅を表す信号を出力するマイクロホン等音響要素を含む。これらの信号は静電板および/または高周波振動子を制御および作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に吸入装置の分野に関し、特に音響制御を利用して吸入装置の異なるシステムの呼吸作動を容易にする吸入装置に関する。本発明の用途は、特に散剤の吸入を容易にする分野にある。
【背景技術】
【0002】
ある一定の気道疾患においては、治療薬の直接投与による治療が功を奏することは周知である。これらの薬剤の多くは、乾燥粉末形態で最も容易に入手可能であるため、これらの投与は、前記粉末状物質を鼻または口を介して吸入することにより最も簡便に達成される。それ以外に、この形態の薬物は、呼吸器系以外の疾患の治療に用いられうる。薬物を気道の極めて大きい表面積上に沈着させると、前記薬物は、血流中に非常に急速に吸収され得、したがって、この投与方法は、注射、錠剤またはその他の従来的な手段による投与に取って代わりうる。
【0003】
こうした粉末形態の薬剤の投与に用いられるいくつかの吸入装置が従来技術において周知である。たとえば、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4および特許文献5に、散剤を内包するカプセルの頂部を穿孔する手段を有する吸入装置であって、前記薬剤は、吸入と同時に、穿孔されたカプセルから使用者の口内へ、以って使用者の肺および呼吸器系へと吸い出される吸入装置が開示されている。これらの特許のいくつかに、吸入時に散剤をカプセルから排出する上で補助的役割を果たして、吸気のみに依存しなくても散剤がカプセルから吸い出されるようにするプロペラ手段が開示されている。たとえば、ホール(Hall)に対して発行された特許文献6には、散剤を内包するカプセルを有する装置であって、使用者が穿孔ピンを手で押下することにより前記カプセルが穿孔される装置が開示されている。特許文献7には、多数の穿孔ピンと、プロペラ手段と、外部的な手動操作により前記プロペラ手段を動作させる自蔵式動力源とを有して、吸入と同時に前記プロペラ手段が、散剤を吸気流中に排出する上で補助的役割を果たすようになっている吸入装置が開示されている。さらにまた、特許文献8を参照されたい。
【0004】
前記の従来技術の説明は、概して、散剤の吸入を容易にする装置が開示されているウィルク(Wilke)らの特許文献9からの引用である。カプセル穿孔構造が設けられて、この構造が、回転と同時に薬剤を内包するカプセルに1個以上の穴を設けて、電気機械式振動子によりカプセルが振動すると、散剤がカプセルから放出されうるようになっている。前記電気機械式振動子は、自身の最内側端部において振動プランジャーロッドを含んでおり、このロッドは、自身を付勢して振動させる機械式ソレノイドブザーに接続される。前記ブザーは、高エネルギー電池により電力供給されるとともに、外部のボタンスイッチにより作動せしめられる。さらに、前記のように、ウィルクらの特許に開示の装置においては、散剤の振動は、押しボタンを押すことによって始動せしめられる。これは、一部の使用者(たとえば極度の関節炎を患っている患者)には困難かつ苦痛でありうる。最後に、ウィルクらの特許に開示の吸入器を最も効果的に使用するためには、使用者は、該使用者が吸入を開始するのと正確に同時に振動始動用押しボタンを押さなければならない。これもまた、一部の使用者(たとえば非常に若い患者、筋神経疾患を患っている患者等)には困難でありうる。
【0005】
前記に説明されたような従来技術においては、何らかの機械的作動手段、たとえば、フラッパ弁、タービン弁、渦流発生装置、渦測定装置、熱線、直接的な圧力降下、超音波ドップラーシフト測定等を含む空気流センサによって作動せしめられる吸入装置が支配的である。
【0006】
2000年11月28日発行の本出願人の先行特許文献10において、装置のさまざまな構成要素を作動および制御する流体センサを有する吸入装置が提供されている。この流体センサは、吸入装置内に配置されて前記装置内における流体を検出するとともに、前記流体の周波数および/または振幅を表す信号を出力するマイクロホン等の音響要素を含む。これらの信号は、静電板および/または高周波振動子を制御し、かつ作動させる。この吸入装置は、患者が呼吸するときに薬剤の1回投与分の全(適用)量が放出されることを確実にすることによって、より高い薬剤利用率を達成した。しかしながら、この音響流動センサは、空気の流れの方向を検出する能力を有さない。前記センサが空気の流れを検出する一方で、使用者が呼息しているときは、薬剤が不適切な時期に放出され得、患者は、1回投与分の全量を受け入れることができなくなってしまう。
【0007】
このように、当業界には、これまで対処されてこなかった必要性が存在しており、前記欠点と短所とに対処しなければならない。
【0008】
【特許文献1】米国特許第3507277号明細書
【特許文献2】米国特許第3518992号明細書
【特許文献3】米国特許第3635219号明細書
【特許文献4】米国特許第3795244号明細書
【特許文献5】米国特許第3807400号明細書
【特許文献6】米国特許第2517482号明細書
【特許文献7】米国特許第3831606号明細書
【特許文献8】米国特許第5458135号明細書
【特許文献9】米国特許第3948264号明細書
【特許文献10】米国特許第6152130号明細書
【特許文献11】米国特許第5694920号明細書
【発明の開示】
【0009】
本発明は、本出願人の前記特許文献10等の従来技術の吸入装置を超える改良を提供するものである。本発明は、吸入器を操作する音響流動方向センサを提供するものである。この音響流動方向センサは、吸入器内へと向かう空気流の方向を検出するとともに、使用者の呼息時ではなく、使用者の吸息時に吸入器の作動を可能にする。ひとつの好適な実施例には、音響要素を含んで、前記要素のまわりにおける空気流を検出するとともに、前記空気流の周波数と方向と振幅とを表す信号を生じしめ、前記信号を用いて吸入装置のある特定の構成要素が制御(たとえば作動、作動解除、漸増電圧の印加等)される音響制御装置を含む。この特徴は、前記吸入器を使用者にとってより使いやすいものにするのに役立ち、かつ前記吸入装置を使用するために必要な練習を最小限に抑えるとともに、小児に対する有用性を高める。
【0010】
好ましくは、前記音響要素は、吸入装置(たとえば乾燥散剤吸入器)の空気通路内に配置されて、吸入空気流に呼応して信号を生じしめるマイクロホン要素または圧力変換器である。これらの信号を用いて、吸入器のある一定の構成要素、たとえば高周波振動子、静電板、タイマー、計数器等が制御される。さらにまた、好ましくは、患者に対する薬剤の最大限の効果を得るために、これらの信号を用いて、吸入装置のある一定の構成要素の作動/制御を行なって、吸入効果が最大限に高められる。
【0011】
このように、本発明は、吸息時にのみ作動せしめられて、特定の薬剤が最適に利用されることを可能にする完全自動吸入装置を提供するものである。たとえば、音響信号を用いて、患者が最適な(たとえば最大限の)吸入努力を達成した時にのみ、高周波振動子を始動させて、以って1回投与分の全(適用)量の薬剤が使用者の呼吸器系に適正に送り込まれることを確実にすることができる。これに代わる方法として、これらの信号(呼吸作動信号)を用いて、吸入装置のさまざまな構成要素に漸増する動力を漸増的に加えること、または前記構成要素の逐次的な作動/作動解除を行なうことで最適な吸入投与量を達成することができる。
【0012】
以下の詳細な説明は、好適な実施形態と使用方法とに言及して行なわれるが、本発明は、これらの好適な実施形態と使用方法とに制限されるものではないことが、当業者には理解されよう。むしろ、本発明は、広範な範囲にわたるとともに、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。
【0013】
本発明の多くの態様は、以下の図面を参照することにより、さらに理解されうる。これらの図面中の構成要素は、必ずしも一定の尺度で示されているわけではなく、むしろ本発明の原理を明確に示すことに重点が置かれている。これらの図面において、同様の参照符号は、いくつかの図を通じて対応する部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1および2を参照すると、吸入装置2の空気流路12の断面図が示されている。最初に、図1に示される空気流路12は、前記に説明された吸入装置等の一般的な吸入装置の一般化された空気流路であることに注意されたい。しかしながら、本発明は、空気流路の特定の形状にかかわりなく、いかなる吸入装置にも適合化せしめられることを意図されている。最も基本的なレベルにおいて、本発明は、空気流センサ8を設けて、前記センサ8のまわりにおける乱気流(すなわち吸入器使用者の吸気流量)を検出するとともに、吸入装置2のさまざまな構成要素を、検出された乱気流の振幅、方向および/または周波数の関数として、以下に説明されるように制御することにより作用する。
【0015】
図1に示されるように、空気10(または何らかのその他の流体)は、一般に装置2で吸入を行う患者の呼吸作用によって空気流路12内に流入する。空気10が流路12を介して流動するときに、前記空気の一部分は、通路2内の開口6を介して空洞部4内に流入する。前記空洞部4内には、空気流量検出装置8が配置される。好ましくは、この空気流量検出装置8は、音響検出要素、たとえばマイクロホンである。さらにまた、好ましくは、マイクロホン8は、前記空洞部4内において検出される空気流に呼応して、適切な雑音信号48を生じしめるようになっている。空洞部4内における空気流の振幅と方向と周波数とは、装置2の空気流路12内における空気流量10の関数である。このため、マイクロホン8により出力される雑音信号48は、周波数と振幅との両方において、前記空洞部内の空気流の流量および方向の関数(流路12内における流量の関数)として変化するとともに、以って吸入器2のさまざまな構成要素を、以下に説明されるように、周波数および/または振幅の関数として制御するのに用いられる。空洞部4の形状と開口6の大きさとは、空気流路12の特定の形状、流路12を介した空気流量10および/またはマイクロホン8の周波数応答および/または感度にしたがって選択されるべきであり、全てのこうした変形態様は、本発明の範囲内に含まれる。好ましくは、前記のように、空洞部4の形状と開口6の大きさとは、通路2内における空気の少なくとも一部分が、マイクロホン8の応答を誘導することができるだけの十分な振幅を有して空洞部4内に流入することを可能にするように選択される。
【0016】
次に図2を参照すると、特許文献11に開示されているような乾燥散剤吸入器内の空気流量センサ(前記に図1を参照して説明)の実施形態の拡大断面図が示されている。図2には、一般的な乾燥散剤吸入器2の構成要素が図示されている。使用者(すなわち患者)が装置2を用いて吸入を行なうためのマウスピース46が設けられる。高周波振動機構28(すなわち圧電素子、超音波変換器またはその他の電気/機械振動機構等)が設けられて、乾燥散剤50の容器20(たとえばブリスターまたはカプセル)を振動させて、前記薬剤の粒子を空気流路12内へと浮遊させる。粒子の浮遊をさらに補助するために、静電位板26を設けて、ある一定の電荷(すなわち前記静電板26の電荷と逆の電荷)の粒子を空気流10中に引き入れることができる。この実施形態において、空気流路12内に引き込まれる空気10の一部分10’は、空洞部4内に誘導されて、マイクロホン要素8によって検出される。空気流の検出と同時に、前記マイクロホン要素は、雑音信号48を生じしめる。これらの雑音信号48を用いて、高周波振動子28および/または静電板26または吸入器のその他の構成要素のいずれかが、以下に説明されるように制御される。
【0017】
図3は、本発明の乾燥散剤吸入器用音響制御システムを示すブロック図である。前記のように、マイクロホン要素8は、検出された空気流10’に呼応して雑音信号48を生じしめる。これらの信号は、処理回路30により処理されて、信号48が調整されるとともに、前記空気流の方向と前記雑音信号48の振幅および/または周波数とが判断される。処理回路30は、呼吸信号60と吸息信号62との2つの信号を生じしめる。
【0018】
呼吸信号60は、吸入装置内における空気流の存在を示す論理レベルの信号である。吸息信号62は、呼吸信号60の立ち上り縁部において、空気流の方向標識としてラッチされる。呼吸信号の立ち上り縁部における吸息信号の状態は、呼吸時における流路内の空気流の確実な方向標識となる。これらの信号を用いて、高周波振動子および/または静電板が制御される。この目的のために、呼吸信号60は、比較回路40および/または32に入力されるとともに、それぞれ基準スレッショルド信号52および/または54と比較される。さらにまた、前記比較回路40および/または32が最初に呼吸信号60の立ち上り縁部を検出した場合は、吸息信号62は、比較回路40および/または32によってラッチされる。高周波振動子スレッショルド42は、高周波振動子制御装置44(この制御装置が次に高周波振動子26を作動させる)を作動させるために必要とされる最小限の電圧および/または周波数を表す信号52を生じしめる。比較器40は、信号52と呼吸信号60とを比較し、前記信号が等しい振幅および/または周波数(何らかの所定の誤差限界範囲内)を有し、かつラッチされた吸息信号62が真である場合に、比較器40は、図5に示されるように、高周波振動子26を作動させるとともに直接制御する高周波振動子制御装置44を作動させる。すなわち、呼吸信号60が基準スレッショルドを超える場合は、呼吸を意味する十分な空気流が空気流路12内に存在する。このため、ラッチされた吸息信号62が真であることと、呼吸信号60が基準スレッショルドを超える(すなわち真である)こととの組合せは、使用者が吸息していることを示す。同様に、静電板偏向器制御装置36は、比較器32により呼吸信号60と信号54とが等しく合致することと、真である吸息信号62とによって作動せしめられる。静電板検出器スレッショルド34は、静電板26を作動させるために必要とされる最小限の電圧および/または周波数を表す信号54を生じしめる。
【0019】
高周波振動子制御装置44および/または静電板制御装置36は、吸息信号62のその後の変化とは無関係に、呼吸信号60が真のままである限り吸息は継続していると仮定する。呼吸信号60が擬似になると、すなわち前記信号がスレッショルド電圧未満に低下すると、高周波振動子28および/または静電板偏向器26は、作動解除される。
【0020】
図4は、マイクロホンと処理回路とを含む略図である。吸入装置に用いられるマイクロホン8への電力は、抵抗器70を介して供給される。この回路において、マイクロホン8を横切る空気流によって創出される雑音信号48は、前記マイクロホンからキャパシタ72を介して通信されるとともに、増幅回路100により増幅される。この増幅回路は、演算増幅器74と該増幅器に関連ある構成要素とによって構成される。この増幅回路100は、さらにまた、低域濾過を行なって、望ましくない信号に対する感度を低下させる。キャパシタ76とダイオード78とダイオード80とキャパシタ82と抵抗器84とは、吸息の存在を示す論理レベルの信号である呼吸信号を出力する整流回路102を構成する。比較回路104は、演算増幅器86と抵抗器88と抵抗器90とキャパシタ92と抵抗器94とからなる。この比較回路104は、流路内における空気流の初期方向を検出するとともに、吸息信号を出力する比較器である。
【0021】
前記比較回路は、以下のように作用する:信号48は、低域フィルター(70、72および74の仮想接地)を介して前記比較器に印加される。呼吸が始まると、空気流路12内における圧力の変化により、信号48は、いかなる呼吸も存在しない場合の電圧に対して、瞬間電圧偏差を有することになる。前記比較器は、信号48の前記瞬間電圧を長期的態様または低域濾過された態様の信号48、すなわち抵抗器88とキャパシタ92との交点において創出される信号と比較することにより、この電圧偏差を検出する。呼吸が始まる瞬間において、これらの2個の信号間における差は、呼吸の方向、すなわち吸息または呼息のいずれであるかを表す。この差は、吸息信号62を発生させる比較器86によって検出される。呼吸の開始時点において音響センサ信号の瞬間偏差間における差を利用することができるその他の機構または回路は、本発明の精神および範囲内に含まれる。
【0022】
雑音信号48は、前記のように、空気流の流量および方向10を示すことを理解されたい。本発明は、好ましくは、雑音信号48の周波数および/または振幅の関数として制御可能とすることを意図しており、以って処理回路は、雑音信号48を振幅または周波数またはその両方の点で調整するようにされうる。
【0023】
本発明のまた他の特徴は、薬剤の換気投与を処理するより優れた手段である。喘息、肺容量の低下等により、処方された1回分の投与量の薬剤を吸入するために多数回の呼吸を必要とする使用者もいる。こうした状況において、吸入器は、以下のようにして1回分の投与量を管理する:吸息の空気流の速度がスレッショルド未満に低下する(吸息信号が擬似となる)ようなときは、薬剤投与を停止し;また別の吸息が開始される(吸息信号と呼吸信号とのいずれもが真となる)と、1)薬剤投与が完了するか、または2)空気流速度が前記スレッショルド未満となるまで、薬剤投与を継続する。このプロセスは、薬剤投与が完了するか、または経過した累積吸息時間が所定の制限を超えるまで継続される。
【0024】
吸気容量処理装置38が設けられて、患者の最大吸気流量10(信号48により表される)を計算する。図面には示されていないが、この情報を用いて、高周波振動子スレッショルド42および/または静電板検出器スレッショルド34のスレッショルド信号が調節されうる。当然ながら、これを達成するためには、高周波振動子スレッショルド42および/または静電板検出器スレッショルド34は、当該技術分野において周知のように、プログラム可能でなければならない。このようにして、マイクロホン8をプログラムして、患者毎または個別的に変動する吸気流量に合わせて吸入器のさまざまな構成要素を始動させることができる。このため、たとえば、本発明の吸入器制御機構を自己調節式として、たとえば肺容量の低下によって引き起こされる患者の吸気流量の低下を斟酌することができる。これに代わる方法として、前記処理装置38を改変して、本明細書に記載のさまざまな構成要素(たとえば振動子、静電板等)を最適な吸息時点(たとえば最大吸息努力時)に連続的に作動させることができる。このため、たとえば、前記処理装置38を改変して、使用者の最大吸息努力の直前の時点で振動子を作動させ、然る後に続いて静電板を作動させて、以って薬剤の最適な呼吸吸収が達成される時期に薬剤を空気流中に誘導することができる。さらにまた、処理装置38が、適切な記憶装置を有して、患者の吸気流量を追跡するようにして、これを用いて散剤50を調節して最大限の投薬効果を達成することができる。
【0025】
このように、前記に記載の目標と目的とを完全に達成することができる、音響制御機能を有する吸入装置と該吸入装置を操作する方法とが得られたことは明白である。特定の実施形態と使用方法とが説明されたが、多くの改変、代案および同等物が考えられうる。たとえば、処理回路30とスレッショルド信号発生器34および42と比較器42および32とは、本明細書に記載の機能性を達成することができるいかなる周知のデジタル(たとえばマイクロプロセッサ)またはアナログ回路および/または前記回路に付随するソフトウェアであってもよい。図3において説明されたさまざまな構成要素は、モジュール形態で示されたが、これらの各々の構成要素は、離散的な市販または特注の構成要素とされるか、または単一の統一システムに含まれうる。
【0026】
また、スレッショルド回路42および34と振幅/周波数処理装置30と吸気容量処理装置38とは、使用者(患者)による制御と使用者が確定することができる事前設定(すなわち作動のための最小流量等)とが可能になるようにされうる。
【0027】
加えて、比較器40および32は、異なる信号強度および/または周波数に基づいて作動信号を発生させるようにされうる。このため、たとえば、高周波振動子は、1Khzの信号周波数が達成される場合にのみ作動するようにされうる一方で、静電板は、35mVの信号強度が得られる場合にのみ作動する。
【0028】
その他の改変もまた可能である。たとえば、マイクロホン8は、空洞部4内ではなく、装置2の空気流路12の内壁上に直接配置されうる。加えて、図1に示されるように、乱流発生器14を設けて、空気流路12内において乱気流を生じしめることができる。この改変は、たとえば、さもなければ空気10の一部分10’が空洞部4に流入することができない吸入装置において用いられうる。さらに、マイクロホン8の代わりに、前記音響要素は、適切な信号を流体圧力(振幅)および/または周波数の関数として出力する何らかの周知の流体圧力変換器(たとえば空気圧変換器)とされうる。したがって、本発明は、適切に改変されて、あらゆる流動媒質(空気以外)において作用して自動音響制御を達成しうる。
【0029】
さらにまた他の改変が可能である。たとえば、図面には示されていないが、本発明は、信号60および62により制御されるタイマーを備えうる。このタイマーは、適切に改変されて、装置が作動せしめられうる予定時刻を制御して、たとえば過量摂取を防ぎうる。このため、たとえば、前記タイマーを改変して、装置の構成要素の作動を1日のある一定の時刻にのみ可能にすることができる。さらにまた、前記タイマーを適切に改変して、使用に関連あるデータ(たとえば使用時刻、薬剤投与量、吸息努力等)のダウンロードを可能にすることができる。このデータは、推奨される投与量と投薬回数とを追跡することが重要である臨床試験に特に関連しうる。当然ながら、前記のことは、装置が使用された回数を単純に計数する計数器等を用いて達成されうる。さらにまた、前記計数器を用いて、特定の投薬時に、または固定時間長の間に使用者が装置を使用した累積時間を追跡することができる。
【0030】
本発明は、乾燥散剤吸入器2用の音響制御機構に関して説明されたが、本発明は、これに制限されるものではない。逆に、本発明は、呼吸(吸息)検出に基づく制御機構(本明細書に記載のとおり)を必要とするあらゆる吸入装置に適合せしめられることが意図されている。たとえば、本明細書において用いられたような呼吸センサおよび制御装置を用いて麻酔装置を改変して、患者に投与される麻酔薬の量を監視および制御することができる。加えて、音響検出要素を用いて、特定の患者の最大吸気および/または呼気流量を測定するとともに、この情報を記録してダウンロードし、かつ分析することができる。
【0031】
前記の詳細な説明において、吸息の振幅、方向および/または周波数を表す音響信号を用いて吸入装置のさまざまな構成要素を制御するいくつかの実施形態が示されたが、これらの実施形態は、単に音響制御機構を達成する例として示されただけであり、本発明の精神および原理から実質的に逸脱することなしに、その他の代案が可能である。全てのこうした改変および変形態様は、本開示および本発明の範囲内に含まれるとともに、以下の特許請求の範囲によって保護されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一般的な吸入装置と音響制御装置との断面図である。
【図2】図1の拡大断面図である。
【図3】本発明の好適な実施形態の音響方向制御装置の機能ブロック図である。
【図4】前記音響方向回路の略図である。
【図5】前記音響方向回路のタイミング図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に薬剤を送給するための空気吸入装置において:
自身のまわりの空気流を検出し、かつ前記空気流の方向と振幅とを識別する信号を生じしめるように構成される音響検出要素を含む音響制御装置と;
前記信号が、前記使用者による吸息を指示する場合に、前記薬剤を前記空気流中に誘導するように構成される高周波振動子とを有することを特徴とする空気吸入装置。
【請求項2】
前記空気流中に配置されて、選択された薬剤粒子を自身に引き寄せる静電板であって、前記信号が前記使用者による吸息を指示する場合に作動せしめられるように構成される静電板をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の吸入装置。
【請求項3】
前記音響制御装置は、前記信号が、吸息が停止したことを指示する場合に、前記高周波振動子の振動を停止させるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の吸入装置。
【請求項4】
前記高周波振動子は、空気流の振幅にともなって作動および作動解除されるようになっていることを特徴とする請求項3に記載の吸入装置。
【請求項5】
前記信号は、タイマーの作動を制御し、前記タイマーは、累積吸息時間を追跡することを特徴とする請求項1に記載の吸入装置。
【請求項6】
前記タイマーは、好ましくは、累積吸息時間が所定のレベルを超える場合に、前記使用者にフィードバックを行なうことを特徴とする請求項5に記載の吸入装置。
【請求項7】
音響検出要素は、音響マイクロホン要素からなることを特徴とする請求項1に記載の吸入装置。
【請求項8】
音響検出要素は、空気圧変換器からなることを特徴とする請求項1に記載の吸入装置。
【請求項9】
前記薬剤は、乾燥散剤からなることを特徴とする請求項1に記載の吸入装置。
【請求項10】
前記薬剤は、容器から送給されることを特徴とする請求項1に記載の吸入装置。
【請求項11】
散剤を使用者に投与するための吸入装置であって、
空気流路と;
前記空気流路内に配置される音響検出要素を含む音響制御装置であって、前記音響検出要素のまわりにおける空気流を検出するとともに、前記空気流の周波数と振幅と方向とを表す信号を生じしめるように構成される音響制御装置を含み、
前記散剤を前記空気流内に誘導するように構成される高周波振動子と、
前記高周波振動子は、前記信号が、吸息を指示する場合に作動せしめられるとともに、前記信号が、吸息が停止したことを指示する場合に作動解除されるようになっていることを特徴とする吸入装置。
【請求項12】
前記高周波振動子は、処方された量の散剤が投与されるまで複数回にわたって作動および作動解除されることを特徴とする請求項11に記載の吸気装置。
【請求項13】
前記信号は、タイマーの作動を制御し、前記タイマーは、累積吸息時間を追跡することを特徴とする請求項11に記載の吸気装置。
【請求項14】
前記薬剤は、容器から送給されることを特徴とする請求項11に記載の吸気装置。
【請求項15】
前記音響マイクロホン要素のまわりにおいて空気が流動する場合に信号を創出するように構成される音響検出要素と、
前記信号を前記空気流の方向と振幅とに関する情報に変換する変換回路とからなる空気流吸入方向検出器。
【請求項16】
前記変換回路は、前記空気流の初期方向を検出する比較回路を含むことを特徴とする請求項15に記載の吸入方向検出器。
【請求項17】
前記変換回路は、前記空気流の速度を検出する整流回路を含むことを特徴とする請求項15に記載の吸入方向検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−523700(P2007−523700A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554320(P2006−554320)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/005750
【国際公開番号】WO2005/081977
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(500566682)マイクロドース・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (17)