説明

流動模様形成用メタクリル樹脂組成物、及びその成形体

【課題】 本発明の目的は、十分な強度を有し、かつ、少ない添加量で流動模様発現効果が大きい流動模様形成樹脂が添加された流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】 本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性ベース樹脂組成物100重量部、及び流動模様形成樹脂組成物0.1〜15重量部を含み、前記熱可塑性ベース樹脂組成物100重量%が、メタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群20〜95重量%、非ジエンゴム層含有多層重合体4.999〜79.999重量%、及び顔料A0.001〜5重量%からなり、かつ、前記流動模様形成樹脂組成物100重量%が、環状オレフィン樹脂、及びスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂からなる群70〜99.99重量%と、顔料B0.01〜30重量%とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動模様が発現する熱可塑性樹脂組成物、該熱可塑性樹脂組成物からなるキャップストック、ならびに押出成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル系樹脂はその透明性や特有のwater−clearな外観から、ガラス代替材料として古くから使用されている。また、優れた耐候性を活かして、屋外で使用される材料の表面を覆う層の原料であるキャップストックとしても用いられている。
【0003】
ところで従来より、木目模様に代表される流動性模様を有するプラスチック成形体が求められており、様々な検討が行われてきている。
【0004】
例えば、成形品の表面にダイレクトプリント印刷する方法があるが、印刷機が高価であり、工程が複雑化し、異型品または小物の場合は著しく生産性が阻害され製品コストが高く付くという問題がある。
【0005】
また、成形品の表面にプリント印刷したフィルム・シートをラミネートする方法もあるが、流動性模様のシートの値段が高いという問題や、シート・フィルムを接着するための工程が必要であり、コストアップになるという問題があった。加えて、複雑な形状の成形品ではシート・フィルムを貼り付けるのが困難であるため用途が制限されていた。
【0006】
さらに、ベース樹脂に木粉等に代表されるセルロース系粉粒体・木質材料を混合し、成形する方法も提案されているが、これら組成物はセルロース系粉粒体を含むため、耐候性が充分でなく、屋外での使用が制限されていた。加えて、天然由来であることから、一定の品質のセルロース粉粒体を入手することが困難であるという問題があった。
【0007】
こうしたことから近年、着色されたペレットを添加して成形する方法が注目されている。この方法は、主体となるベース樹脂に対し、模様を発現させる種樹脂を、成形の際に完全には混合されないように加工条件、ペレット組成を工夫しながら添加することで、成形品の表面に種樹脂の流れムラによる模様を現出させて、流動模様とするものである。
【0008】
この場合の種樹脂として、ベース樹脂に対して、
(1)可塑化温度(別表現としては、熱変形温度、ビカット軟化温度、ガラス転移温度、融点)を高くする方法、
(2)溶融粘度を高くする(別表現としては、重合度を高くする、分子量を高くする、MFIを低くする)方法、
(3)相溶性の低い樹脂を種樹脂とする方法、
(4)滑剤を多量に添加する方法
等が知られている。
【0009】
(4)の方法は滑剤成分がブリードアウトするため、基材樹脂との密着性低下し表層樹脂と基材樹脂が剥離するという問題、表層がべとつくという問題があった。
【0010】
(3)の方法は流動模様を発現させるには有効な手段であるが、強度等に問題があり、現実的ではなかった。
【0011】
(2)は流動模様発現の効果が大きくなく、これだけでは、成形機種、金型種、成形条件によって流動模様が消えてしまうという問題があった。さらに、流動模様を明確に出すため溶融粘度差をつけ過ぎると流動が安定せず、成形が安定しない、成形歪みが大きくなるという問題があった。
【0012】
(1)は(2)、(3)、(4)のような問題を発生させずに、流動模様を発現させるのに有効な方法であるが、流動模様発現効果が不十分であった。
【0013】
以上のことから、(1)、及び(2)の組み合わせた方法が主に検討されており、このような方法としては、例えば、下記特許文献1、及び特許文献2に記載の方法等が開示されているが、いまなお、流動模様発現効果が不十分であるとの問題がある。
【0014】
特許文献1には、環状オレフィン系樹脂及び/またはポリメチルペンテン樹脂(A)合成ゴム(B)接着性付与樹脂(C)及び顔料(D)からなる流れ模様形成用着色樹脂組成物が記載されており、その従来技術には、ベース樹脂と種樹脂を非相溶のものを混合して流動模様を発現させた場合には、衝撃強度低下、樹脂成型物表面が表面剥離するとの記載がある。ここで、ベース樹脂としては、オレフィン重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、AS樹脂等が挙げられており、好ましいのは、オレフィン重合体樹脂としている。その実施例のベース樹脂として記載しているものは上述の特許文献1の種樹脂と相溶性がある、オレフィン重合体樹脂であるポリプロピレン樹脂のみが記載されている。
【0015】
特許文献2には、ポリプロピレンを構成要素に含むベース用の熱可塑性エラストマー100重量部に対して、種用の粒状組成物2〜20重量部を添加混合し、その混合物を成形することにより流動性模様が施された軟質樹脂成形品を製造する方法であって、上記粒状組成物は、非晶性環状オレフィン系共重合体と顔料とからなることを特徴とする流動模様が施された軟質樹脂成形品の製造方法が記載されている。ここで、この種用の樹脂は、ベース用の樹脂と相溶性があることが必要である、と記載されており、実際にその実施例や比較例で用いられている種用の樹脂やベース用の樹脂は、非晶質環状オレフィン系共重合体や結晶性オレフィン系共重合体であり、互いに相溶する重合体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平09−241450号公報
【特許文献2】特開2000−117848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者は、熱可塑性樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物、例えば、メタクリル系樹脂のように、もともと流動模様を発現させるのが困難であるのに加えて、その欠点である耐衝撃性を改良するためにゴム含有グラフト共重合体を含み成型時に高粘度となるため、流動模様を発現させるのが更に困難となっている熱可塑性樹脂組成物に流動模様を発現させるべく検討を開始し、上述の状況を鑑み、上述の着色されたペレットを添加して成形する方法を採用し、流動模様発現効果が十分ではないものの検討の主流となっている、上述のベース樹脂に対して種樹脂の(1)可塑化温度を高くする方法、及び(2)溶融粘度を高くする方法、を組み合わせた方法につき予備検討した。
【0018】
その結果、特許文献1、及び2のように相溶性のあるベース樹脂、及び種樹脂を組み合わせ用いた場合には、ベース樹脂と種樹脂が混ざりやすいので、流動性模様発現性能は不十分となり、また、特許文献1に記されている種樹脂であるポリメチルペンテンのような環状ジエンは耐候性に劣り、また、特許文献1に記されている合成ゴムは三級炭素、及び、ジエンを含んでおり耐候性に劣り、また、特許文献2で種樹脂としても使用されているポリプロピレン系エラストマーは三級炭素を含むとともに、加硫されているので、また、組成物中にジエンを含むため耐候性が不十分となることを見出した。
【0019】
そこで、従来強度等に問題があり、現実的ではないと考えられていた上述の(3)相溶性の低い樹脂を種樹脂、即ち、本願における流動模様形成樹脂とする方法につき敢えて検討することとし、その結果驚くべきことに、ベース樹脂としてメタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上熱可塑性ベース樹脂に対して、ガラス転移温度が高く、非相溶の流動模様形成樹脂を主成分とする特定の流動模様形成樹脂組成物を添加することで、耐衝撃性、及び耐候性に優れる成形体が得られる流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
即ち、本発明の目的は、耐衝撃性が改良されてなるメタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂ベース樹脂を主成分とする樹脂組成物に対して、十分な強度を有し、かつ、少ない添加量で流動模様発現効果が大きい流動模様形成樹脂が含まれてなる流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定の熱可塑性ベース樹脂組成物、及び特定の流動模様形成樹脂組成物を組み合わせた流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物とすることで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
即ち、本発明は、熱可塑性ベース樹脂組成物100重量部、及び流動模様形成樹脂組成物0.1〜15重量部を含み、前記熱可塑性ベース樹脂組成物100重量%が、メタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性ベース樹脂20〜95重量%、非ジエンゴム層含有多層重合体4.999〜79.999重量%、及び顔料A0.001〜5重量%からなり、かつ、前記流動模様形成樹脂組成物100重量%が、環状オレフィン樹脂、及びスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の流動模様形成樹脂70〜99.99重量%と、顔料B0.01〜30重量%とからなる、流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0023】
好ましい実施態様は、前記流動模様形成樹脂のガラス転移温度(PTg(℃))と、前記熱可塑性ベース樹脂が結晶性の場合は融点、又は、非晶性の場合はガラス転移温度(BT(℃))と、が下記数式1の関係を満たすことを特徴とする、前記流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物とすることである。
【0024】
【数1】

【0025】
(但し、BT(℃)は、熱可塑性ベース樹脂が結晶性の場合は融点(BTm(℃))、非晶性の場合はガラス転移温度(BTg(℃))である。)
好ましい実施態様は、前記熱可塑性ベース樹脂を、メタクリル樹脂とすることである。
【0026】
好ましい実施態様は、前記非ジエンゴム層含有多層重合体のゴム層を、アクリルゴム、及びシリコンゴムからなる群から選ばれる1種以上のゴム層とすることである。
【0027】
好ましい実施態様は、前記非ジエンゴム層含有多層重合体を、そのゴム内層がアクリルゴムであるアクリルゴム内層含有多層重合体であって、かつ、該アクリルゴム内層、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する単量体の重合体の外層の少なくとも2層を有する多層重合体とすることである。
【0028】
好ましい実施態様は、前記流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物を、実質的に前記熱可塑性ベース樹脂組成物からなる数平均粒径0.1mm〜10mmのペレット、及び実質的に前記流動模様形成樹脂組成物からなる数平均粒径0.1mm〜10mmのペレットの混合物とすることである。
【0029】
好ましい実施態様は、前記流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物を、さらに脂肪酸金属塩0.02〜10重量部を含有する流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物とすることである。このように、脂肪酸金属塩さらには特定の脂肪酸金属塩を添加することにより、懸濁重合で得られたメタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性ベース樹脂、好ましくはメタクリル樹脂、及びアクリロニトリルスチレン(AS)樹脂からなる群から選ばれる1種以上、特に好ましくはメタクリル樹脂で課題となっている加工時の熱劣化による変色を抑制することができる。
【0030】
好ましい実施態様は、前記流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物を、さらに滑剤0.02〜1重量部を含有する流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物とすることである。
【0031】
また、本発明は、本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物のキャップストックに関する。
【0032】
また、本発明は、前記キャップストックを用いた押出成形体に関する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物は、少ない添加量でも充分な流動模様を発現することができる流動模様形成樹脂組成物を含む組成物であり、かつ、耐衝撃性、及び耐候性に優れる成形体が得られる樹脂組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物)
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性ベース樹脂組成物100重量部、及び流動模様形成樹脂組成物0.1〜15重量部を含む流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性ベース樹脂組成物100重量%が、メタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性ベース樹脂20〜95重量%、非ジエンゴム層含有多層重合体4.999〜79.999重量%、及び顔料A0.001〜5重量%からなり、かつ、
前記流動模様形成樹脂組成物100重量%が、環状オレフィン樹脂、及びスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の流動模様形成樹脂70〜99.99重量%と、顔料B0.01〜30重量%とからなる、流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物である。
【0035】
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、メチルメタクリレート・スチレン(MS)樹脂やスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂を添加することができる。
【0036】
本発明の1つの特徴は、一般に、耐衝撃性に劣る樹脂である、メタクリル樹脂、また、耐衝撃性が不十分なアクリロニトリルスチレン樹脂、ポリエステル樹脂に、アクリルゴム内層含有多層重合体を多量に含ませることで、耐衝撃性が改良されることを見出したことである。
【0037】
また、上述の本発明に係る流動模様形成樹脂は、本発明に係る熱可塑性ベース樹脂組成物の主成分でありマトリクス樹脂である、メタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性ベース樹脂に対して、低相溶性であり、成型加工時の粘度差が大きく、融点が存在すれば融点、存在しなければガラス転移温度が流動模様形成樹脂と差が大きいので、上述した本発明の課題が解決されるだけでなく、流動模様形成樹脂は透明な樹脂であるため、形成される流動性模様は、所謂白ボケが低減されたものとなる。
【0038】
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物の流動性模様発現性、及び衝撃強度を高い水準でバランスさせる観点から、前記熱可塑性ベース樹脂組成物100重量部に対して前記流動模様形成樹脂組成物の添加量を0.2〜10重量部とすることが好ましく、より好ましくは0.3〜5重量部とすることであり、さらに好ましくは0.4〜3重量部とすることであり、特に好ましくは0.4〜1.5重量部とすることである。
【0039】
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物は、耐候性の低下を防止する観点から木粉や木質材料等のセルロース系材料を含まないことが好ましい。
【0040】
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物は、耐候性の低下を防止する観点からジエン系ゴム材料を含まないことが好ましい。
【0041】
(流動模様)
本発明に係る流動性模様としては、美麗さの観点から、木目調模様、マーブル模様、及び御影石調模様からなる1種以上の模様が好ましく、特に市場でのニーズが高く、流通量が多い木目調模様が好ましい。
【0042】
(キャップストック)
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物は、上述の如く優れた、耐衝撃性、及び耐候性を有する成形体となるので、また、本発明に係る流動性模様は押出成型、特に共押出成型時に美麗な流動模様を発現可能なので、特に材料の表面を覆う層の原料であるキャップストックのような押出成形体の原料として好適である。
【0043】
(共押出・用途)
前記共押出で本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物をキャップストックとして用いる場合には、熱可塑性ベース樹脂と相溶性が近いことから、そのキャップされる基材樹脂としては塩化ビニル樹脂が好ましく、成形体としは窓枠が好ましい。
【0044】
(脂肪酸金属塩)
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物は、加工時の熱劣化を抑制する観点、及びプレートアウト物の発生を抑制することで成形時の冷却金型汚染などの問題の発生を抑制する観点から、さらに、脂肪酸金属塩を、熱可塑性ベース樹脂組成物100重量部に対して、0.02〜10重量部含むことが好ましく、より好ましくは0.05〜5重量部含むこと、更に好ましくは0.08〜3重量部、特に好ましくは0.1〜1重量部である。
【0045】
本発明に用いられる熱可塑性ベース樹脂、例えばメタクリル樹脂を得る際に、例えば懸濁重合法を用い、その際の分散安定剤として好ましく使用される部分ケン化ポリビニルアルコールを用いる場合には、分散効果が高いものの加工時の熱劣化が成形温度付近で比較的容易に起こり、低ケン化度のものほど着色しやすい傾向があることが知られている。またメチルセルロースなどほかの分散安定剤も部分ケン化ポリビニルアルコールに比べると程度は低いものの、厳しい加工条件下では着色する。脂肪酸金属塩を添加することにより、懸濁重合で得られるこのように例えばメタクリル樹脂を含有する本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物の加工時の熱劣化を大幅に抑制することができる。
【0046】
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物は、加工時の熱劣化が抑制されるため、変色が少ない。たとえば、本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物において、顔料A、及び顔料Bを含まない樹脂組成物からは、黄色度を色差計を用いて測定したb値が1〜20、好ましくは1〜10の成形体を得ることができる。なお、b値は、たとえばJIS K7105にしたがって測定することができる。
【0047】
前記脂肪酸金属塩としては、飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸の金属塩を使用可能であるが、なかでも脂肪酸の炭素数が8〜20である脂肪酸金属塩が好適であり、また脂肪酸金属塩の金属はアルカリ金属またはアルカリ土類金属が好ましい。具体的には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛などがあげられる。なかでも熱劣化抑制効果、毒性、プレートアウト性の点で、とくにステアリン酸カルシウムが好ましい。また、熱劣化抑制効果、耐水性の点で、脂肪酸金属塩の金属のイオン価数は2であることが好ましい。
【0048】
(滑剤)
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物は、成形性観点から、さらに、滑剤を、熱可塑性ベース樹脂組成物100重量部に対して、0.02〜1重量部含むことが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5重量部含むことである。
【0049】
前記滑剤としては、成形性の観点から、酸化ポリエチレン、脂肪酸エステル、ポリエチレンワックス、及びパラフィンワックスからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ブリードアウト性の観点から、酸化ポリエチレン、脂肪酸エステルがより好ましく、特に好ましくは酸化ポリエチレンである。
【0050】
(その他添加剤)
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて公知のミクロ懸濁重合で製造された艶消し剤や抗酸化剤、光安定剤などの添加剤を加えてもよい。艶消し剤を添加した場合には、低光沢を有するキャップストックを製造することができる。
【0051】
前記艶消し剤としては、有機系、無機系いずれも使用可能である。たとえば、無機系では炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、ガラス、シリカなどが、有機系ではスチレン系架橋重合体、アクリル系架橋重合体などが使用される。とくに成形時の耐衝撃性の点より、有機系の艶消し剤が好ましく、例えば平均粒子径2〜20μmのゴム状アルキルアクリレートポリマーをコア層、マトリックスポリマーに対して相溶性を有するシェル層からなるコア/シェル構造を有する艶消し剤がより好ましい。
【0052】
(混合)
本発明において、本発明に係る熱可塑性ベース樹脂組成物、及び本発明に係る流動模様形成樹脂組成物の混合方法については、互いに粉状態で混合してもよく、一方が粉体の状態、他方がペレットの状態で混合してもよく、両方がペレットの状態で混合しても良いが、美麗な流動性模様を効果的に発現させる観点からは、両方がペレットの状態で混合することが好ましい。
【0053】
(成型)
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物を成型して、本発明に係る流動模様を効果的に発現させる為の成型条件としては、その成形時の最高樹脂温度(MT(℃))が、熱可塑性ベース樹脂が結晶性の場合融点(BTm(℃))、非晶性の場合ガラス転移温度(BTg(℃))のどちらかの温度(BT(℃))と、熱可塑性ベース樹脂の分解温度(BTd(℃))、及び流動模様形成樹脂組成物のガラス転移温度(PTg)に140を足した温度(PTg+140(℃))の低い方の温度(LT(℃))と、に対して下記数式2の関係を満たすようにすることが好ましい。
【0054】
【数2】

【0055】
上記を言い換えれば、本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物を成型して、本発明に係る流動模様を効果的に発現させる為の成型条件としては、熱可塑性ベース樹脂の融点が存在すれば融点、存在しなければ、ガラス転移温度より70℃以上、分解温度以下、かつ、流動模様形成樹脂組成物のガラス転移温度より、+140℃以下の樹脂温度となるように成形することが好ましい。
【0056】
より好ましくは、熱可塑性ベース樹脂のガラス転移温度、もしくは融点より80℃以上、分解温度以下、かつ、流動模様形成樹脂組成物のガラス転移温度より、+120℃以下の樹脂温度となるように、更に好ましくは、熱可塑性ベース樹脂のガラス転移温度、もしくは融点より90℃以上、分解温度以下、かつ、流動模様形成樹脂組成物のガラス転移温度より、+100℃以下の樹脂温度となるように成形することである。特に熱可塑性ベース樹脂として、塩化ビニル樹脂を用いる場合は、共押出の際、塩化ビニル樹脂のゲル化を十分進ませ、かつ、熱分解させない観点から、熱可塑性ベース樹脂と流動模様形成樹脂組成物の樹脂温度を180℃以上、220℃以下とすることが好ましい。
【0057】
(熱可塑性ベース樹脂組成物)
本発明に係る熱可塑性ベース樹脂組成物100重量%は、耐衝撃性改良効果、本発明に係る流動模様発現性、耐候性、及び成型加工性の観点から、メタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性ベース樹脂20〜95重量%、非ジエンゴム層含有多層重合体4.999〜79.999重量%、及び顔料A0.001〜5重量%からなることを要し、好ましくは熱可塑性ベース樹脂30〜90重量%、非ジエンゴム層含有多層重合体9.99〜69.99重量%、及び顔料A0.01〜2重量%、より好ましくは、熱可塑性ベース樹脂40〜80重量%、非ジエンゴム層含有多層重合体19.99〜59.99重量%、及び顔料A0.01〜2重量%、特に好ましくは、熱可塑性ベース樹脂40〜70重量%、非ジエンゴム層含有多層重合体29.99〜59.99重量%、及び顔料A0.01〜2重量%である。
【0058】
このような本発明に係る熱可塑性ベース樹脂組成物は、数平均粒子径が0.1〜10mmのペレットの状態で、本発明に係る流動模様形成樹脂組成物と混合されることが好ましく、流動模様発現性の観点、取り扱い性の観点から、0.3〜0.8mmのペレットの状態で混合することがより好ましい。
【0059】
(ベース樹脂)
前記熱可塑性ベース樹脂は、メタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上であり、共押出性の観点から、メタクリル樹脂、及びアクリロニトリルスチレン樹脂からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、耐候性、及び、表面硬度が優れているという観点から、特に好ましくはメタクリル樹脂である。
【0060】
前記熱可塑性ベース樹脂のガラス転移温度BTg(℃)は、メタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、及びポリエステル樹脂からなるその組成により変化するが、一般に0〜150℃の範囲であり、本発明の効果を十分に奏せしめる観点から、好ましくは、50〜130℃、より好ましくは、80〜120℃である。
【0061】
(メタクリル樹脂)
前記メタクリル樹脂は、優れた耐候性を有するので、例えば屋外で使用される材料の表面を覆うキャップストックとして用いられている樹脂であり、その優れた外観性、耐候性、及び耐熱性を十分に発揮せしめる観点から、メタクリル酸メチル50〜100重量%、及びこれと共重合可能なモノマー50〜0重量%からなるメタクリル樹脂用単量体100重量%の重合体であることを要し、好ましくはメタクリル酸メチル50〜99.9重量%、及びこれと共重合可能なモノマー50〜0.1重量%、より好ましくはメタクリル酸メチル70〜98重量%、及びこれと共重合可能なモノマー2〜30重量%とすることである。
【0062】
前記メタクリル樹脂は、一般的には融点(BTm(℃))を有しない非晶性樹脂であり、そのガラス転移温度BTg(℃)はその組成により変化するが、一般に60〜130℃の範囲であり、本発明の効果を十分に奏せしめる観点からは、80〜120℃のものを用いことが好ましく、より好ましくは90〜110℃である。
【0063】
メタクリル酸メチルと共重合可能なモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレンなどのビニルアレーン類;アクリル酸、メタクリル酸などのビニルカルボン酸類およびそのエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類;塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソブチレンなどのアルケン類;ハロゲン化アルケン類があげられる。
【0064】
本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物を、屋外で使用される材料の表面を覆うキャップストック樹脂として用いる場合には、前記熱可塑性ベース樹脂を優れた耐候性を有するメタクリル樹脂とすることが好ましく、この場合に、メタクリル酸メチルと共重合可能なモノマーとして、耐候性を損わないアルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを用いることが好ましい。アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどがあげられる。
【0065】
なお、本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリルおよび/またはメタクリルのことをいう。
【0066】
(アクリロニトリルスチレン樹脂)
前記アクリロニトリルスチレン樹脂としては、通常のアクリロニトリルスチレン樹脂の他、α−メチルスチレン系、マレイミド系等の耐熱アクリロニトリルスチレン樹脂を用いることができる。なお,アクリロニトリルスチレン樹脂にゴム成分であるアクリル酸エステル成分を含むAAS樹脂、同様にEPDMを含むAES樹脂等の耐候性グレードの樹脂も本発明のアクリロニトリルスチレン樹脂の範囲に入る。しかし、ゴム成分としてジエンを含むABS樹脂等は耐候性が著しく低下するため、含まないことが好ましい。さらに、十分な流動模様を発現させるためには、流動模様形成用樹脂との相溶性に差を持たせるため、アクリロニトリルスチレン樹脂を100重量%の重合体としたときに、アクリロニトリルを10重量%以上含むことが好ましく、さらに好ましくは20重量%以上である。
【0067】
前記アクリロニトリルスチレン樹脂は、融点(BTm(℃))を有しない樹脂であり、そのガラス転移温度BTg(℃)はその組成により変化するが、一般に80〜150℃の範囲であり、本発明の効果を十分に奏せしめる観点からは、90〜130℃のものを用いことが好ましく、より好ましくは、100〜120℃である。
【0068】
(ポリエステル樹脂)
前記ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸、又はジカルボン酸のアルキルエステルのような誘導体と、ジオールとの重縮合物によって得られたものや、一分子中にカルボン酸、又はカルボン酸のアルキルエステルのような誘導体と水酸基とを共に有する単量体を重縮合したもの、一分子中に環状エステル構造を有する単量体を開環重合したものである、飽和ポリエステル樹脂である。
【0069】
前記ポリエステル樹脂は、一般に明確に融点(BTm(℃))を有する樹脂であり、その融点BTm(℃)はその組成により変化するが、一般に30〜300℃の範囲であり、本発明の効果を十分に奏せしめる観点から、好ましくは、50〜290℃であり、より好ましくは、90〜280℃であり、更に好ましくは、130〜275℃であり、特に好ましくは、150〜270℃である。
【0070】
また、明確な融点(BTm(℃))を有しない例えばPET−G等の非晶質ポリエステルも透明性が高いことから本発明のベース樹脂として好ましく、そのガラス転移温度BTg(℃)は、その組成により変化するが、一般に60〜130℃の範囲であり、本発明の効果を十分に奏せしめる観点から、好ましくは、70〜120℃である。
【0071】
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。ジオールとしては、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。一分子中にカルボン酸、又はカルボン酸のアルキルエステルのような誘導体と水酸基を共に有する単量体としては乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシヘキサン酸等のヒドロキシアルカン酸が挙げられる。一分子中に環状エステル構造を有する単量体としてはカプロラクトン等が挙げられる。
【0072】
前記ポリエステル樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンテレフタレート)、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸−ヒドロキシヘキサン酸)、ポリコハク酸エチレン、ポリコハク酸ブチレン、ポリアジピン酸ブチレン、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ(α−オキシ酸)や、これらの共重合体、これらのブレンド物が例示されるが、本発明においてはポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンテレフタレート)や、ポリ乳酸やこれらの共重合体、これらのブレンド物が特に好ましい。
【0073】
(非ジエンゴム層含有多層重合体)
前記非ジエンゴム層含有多層重合体は、本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物に優れた耐衝撃性を付与する耐衝撃性改良剤である反面、本発明に係る熱可塑性ベース樹脂組成物の成型時の粘度を増大させる成分であり、本発明の樹脂組成物を耐候性に優れた組成物とする観点から非ジエンゴム層を含有することを要し、このような非ジエンゴム層としては、衝撃強度の観点から、アクリルゴム、及びシリコンゴムからなる群から選ばれる1種以上のゴム層であることが好ましく、白ボケを抑える観点から、アクリルゴム層とすることがより好ましい。また、優れた衝撃強度を発現させるため、アクリルゴム層、シリコンゴム層を内層として含有するアクリルゴム内層含有多層重合体、シリコンゴム内層含有多層重合体であることが好ましい。
【0074】
前記非ジエンゴム層含有多層重合体は、このようなゴム内層を覆うように、本発明に係る多層重合体のベース樹脂中での相溶性や分散性を向上させる機能を有する、外層重合体からなる外層が形成されている多層重合体とすることが好ましい。
【0075】
(アクリルゴム内層含有多層重合体)
このようなアクリルゴム層を内層として含有するアクリルゴム内層含有多層重合体は、アクリルゴムの存在下に、(メタ)アクリル酸エステルと、必要に応じて芳香族ビニルモノマーなどの(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーとを含むモノマー混合物を重合した共重合体が、本発明に係る熱可塑性ベース樹脂、特にメタクリル樹脂との相溶性がよく、強度を大幅に向上できる点から好ましい。
【0076】
特に、(1)メタクリル酸メチル、架橋性モノマーおよび必要に応じてメタクリル酸メチルと共重合可能なモノマーを含有する単量体混合物からなる重合体の存在下に、アクリル酸アルキルエステル、架橋性モノマーおよび必要に応じてアクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマーを含有する単量体混合物を重合して得られる2層重合体の存在下に、さらに(メタ)アクリル酸エステルおよび必要に応じてこれと共重合可能なモノマーを含有する単量体または単量体混合物を重合して得られる3層構造を有する共重合体、または(2)アクリル系架橋ゴムの存在下に、(メタ)アクリル酸エステルおよび必要に応じてこれと共重合可能なモノマーを含有する単量体または単量体混合物を重合して得られる2層構造を有する共重合体が好適に使用される。このような多層構造共重合体は、アクリル樹脂との相溶性がよく、強度を大幅に向上させる点から好ましい。このような多層構造共重合体の重合法は、とくに限定されるものではないが、粒径を高精度に制御することで大きな耐衝撃性改良効果を奏しめる観点から乳化重合法が好ましい。
【0077】
前記(1)の3層構造を有する共重合体において、最内層を形成するメタクリル酸メチルと共重合可能なモノマーとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチルなどの炭素数が2〜8のメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭酸数が1〜12のアクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどのエステル基に環状化合物をもつ(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル類、他にアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどを、また、架橋性モノマーとしては、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート、モノアリルマレエート、モノアリルフマレート、ブタジエンなどを用いることができる。最内層を形成するモノマー混合物中のメタクリル酸メチル、共重合可能なモノマーおよび架橋性モノマーの重量比は、耐衝撃性、耐候性、表面硬度、耐熱性等の観点から、1〜99.99:0〜98.99:0.01〜5であることが好ましく、50〜99.9:0〜49.9:0.1〜3であることがより好ましい。
【0078】
中間層を形成するアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアルキル基の炭素数が1〜12のアクリル酸アルキルエステルを、アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマーとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチルなどの炭素数が1〜8のメタクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどのエステル基に環状化合物をもつ(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル類、他にアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどを、また、架橋性モノマーとしては、前述の最内層であげたものと同様のモノマーを用いることができる。中間層を形成するモノマー混合物中のアクリル酸アルキルエステル、共重合可能なモノマー、架橋性モノマーの重量比は、耐衝撃性、耐候性、表面硬度、耐熱性等の観点から、50〜99.99:0〜49.99:0.01〜5であることが好ましく、70〜99.9:0〜29.9:0.1〜3であることがより好ましい。
【0079】
最外層を形成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどがあげられる。また、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなどの芳香族ビニルモノマー、クロロスチレンなどの芳香族ビニル類、他にアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどを用いることができる。最外層を形成するモノマー混合物中の(メタ)アクリル酸エステルおよび共重合可能なモノマーの重量比は、耐衝撃性、耐候性、表面硬度、成形体の表面性等の観点から、50〜100:0〜50であることが好ましく、70〜95:5〜25であることがより好ましい。
【0080】
前記(1)の3層構造を有する共重合体において、最内層を形成するモノマー、中間層を形成するモノマーおよび最外層を形成するモノマーの重量比は、3〜50:10〜92:5〜87であることが好ましく、10〜40:20〜75:10〜70であることがより好ましい。前記範囲を外れる組成の場合には、耐衝撃性低下、耐候性悪化、成形体の表面荒れとなる傾向がある。
【0081】
前記(2)の2層構造を有する共重合体において、アクリル系架橋ゴムは、前記(1)の3層構造を有する共重合体の中間層を形成する際に用いられるアクリル酸アルキルエステルおよび架橋性モノマーと同様のモノマーを使用して形成され得る。また、必要に応じて、アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマーを使用することもできる。外層は、前記(1)の3層構造を有する共重合体の最外層を形成する(メタ)アクリル酸エステルおよびこれと共重合可能なモノマーと同様のモノマーを同様に重合して形成される。
【0082】
前記(2)の2層構造を有する共重合体において、アクリル系架橋ゴムおよび外層を形成するモノマーの重量比は、50〜95:50〜5であることが好ましく、70〜90:30〜10であることがより好ましい。前記範囲を外れる組成の場合には、耐衝撃性または分散性が低下する傾向がある。
【0083】
(シリコンゴム内層含有多層重合体)
前記シリコンゴム内層含有多層重合体に使用されるシリコンゴムとしては、例えばジメチルシリルオキシ、ジエチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ等の、アルキル或いはアリール2置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサン系重合体が好ましく例示され、具体的には、1,3,5,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)に代表される環状シロキサンや、好ましくは重量平均分子量が500〜20,000以下の直鎖状、又は分岐状のオルガノシロキサンオリゴマーを主成分とするオルガノシロキサン系ゴム重合体形成用単量体を、酸や、アルカリ、塩、フッ素化合物などの触媒を用いて、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の方法で重合したポリオルガノシロキサンの粒子を好ましく例示することができる。
【0084】
また、前記オルガノシロキサン系ゴム重合体形成用単量体100重量%中には、架橋構造を形成する観点から、メチルトリエトキシシラン、テトラプロピルオキシシランなどの3官能以上のアルコキシシラン、及びメチルオルソシリケートなどの3官能以上のシランの縮合体からなる群から選ばれる1種以上が、0.1〜20重量%含まれていることが好ましいく、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0085】
さらに、前記オルガノシロキサン系ゴム重合体形成用単量体100重量%中には、アリル置換基をこのオルガノシロキサン系ゴム重合体に導入することで、本発明に係るシェル重合体(S)を、このシロキサンゴムに接してグラフト重合することにより、シリコンゴムの外層重合体による被覆を十分なものとする観点から、メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルフェニルジメトキシメチルシランなどの2官能の加水分解性基、及びビニル基を含有するシラン化合物であるグラフト交叉剤が、0重量%〜50重量%含まれていることが好ましい。
【0086】
(外層重合体)
前記外層重合体は、外層重合体用単量体を重合してなる重合体、即ち、外層重合体用単量体の重合体である。
【0087】
このような外層重合体用単量体100重量%は、マトリクス樹脂との相溶性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル化合物、及びビニルシアン化合物からなる群から選ばれる1種以上の単量体50〜100重量%、多官能性単量体0〜10重量%、及びこれらと共重合可能な不飽和単量体0〜50重量%からなることが好ましく、より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル化合物、及びビニルシアン化合物からなる群から選ばれる1種以上の単量体60〜100重量%、多官能性単量体0〜10重量%、及びこれらと共重合可能な不飽和単量体0〜40重量%とすることである。
【0088】
((メタ)アクリル酸エステル化合物)
前記外層重合体用単量体に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の炭素数が1〜22のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の炭素数が1〜22のアルキル基を有し、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の炭素数が1〜22のアルキル基を有し、アルコキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸エステル類のアルキル基の炭素数については必ずしも制限されるものではないが、例えば炭素数が22を超えると重合性が劣る場合があるため、アルキル基の炭素数が22以下の(メタ)アクリル酸エステル類が好適に使用されうる。中でも、重合性が優れ、安価で汎用的に用いられている、アルキル基の炭素数が12以下の(メタ)アクリル酸エステル類が好適に使用される。マトリクス樹脂との相溶性の観点から、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルが好適に使用され得る。加えて、マトリクス樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合には、接着性の観点からグリシジル基、酸基、ヒドロキシル基等のポリエステルと反応しうる官能基を有する単量体を使用することが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよい。
【0089】
(流動模様形成樹脂組成物)
本発明に係る流動模様形成樹脂組成物100重量%は、環状オレフィン樹脂、及びスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の流動模様形成樹脂70〜99.99重量%、及び顔料B0.01〜30重量%からなることを要し、好ましくは流動模様形成樹脂80〜99.98重量%、及び顔料B0.02〜20重量%からなるようにすること、更に好ましくは流動模様形成樹脂85〜99.9重量%、及び顔料B0.1〜15重量%からなるようにすること、特に好ましくは流動模様形成樹脂85〜99重量%、及び顔料B1〜15重量%からなるようにすることである。
【0090】
このような本発明に係る流動模様形成樹脂組成物は、数平均粒子径が0.1〜10mmのペレットの状態で、本発明に係る本発明に係る熱可塑性ベース樹脂組成物と混合されることが好ましく、より美麗な流動性模様を効果的に発現させる観点からは、0.3〜0.8mmのペレットの状態で混合することがより好ましい。
【0091】
(流動模様形成樹脂)
本発明に係る流動模様発現樹脂は、流動模様発現性の観点から、環状オレフィン樹脂、及びスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂が好ましく、耐候性の観点から環状オレフィン樹脂が好ましい。
【0092】
(環状オレフィン樹脂)
前記環状オレフィン樹脂は、透明性や耐候性に優れるが、脆く例えばガードナー強度が低い樹脂であり、開環メタセシス重合タイプ、付加重合タイプ、及び、他のオレフィン類との付加共重合タイプから選ばれる1種以上が好ましく、実用性の観点から、より好ましくは開環メタセシス重合タイプ、他のオレフィン類との付加共重合タイプであり、衝撃強度の観点から、特に好ましくは開環メタセシス重合タイプである。本発明に係る流動性模様を効果的に発現せしめる観点からは、そのガラス転移温度(PTg(℃))が120℃〜180℃の環状オレフィン樹脂を用いることが好ましい。加えて、混練能力の低い押出機を使用する場合は、120℃〜160℃、更に好ましくは125℃〜150℃、特に好ましくは、130℃〜140℃が好ましい。また、混練能力の高い押出機を使用する場合は、130℃〜175℃、更に好ましくは140℃〜170℃が好ましい。
【0093】
前記環状オレフィン樹脂としてはオレフィン類との付加共重合タイプである日本ゼオン社製ゼオノア、ゼオネックス(登録商標)、開環メタセシス重合タイプとしては、JSR社製アートンが挙げられる。
【0094】
また、本発明に係る環状オレフィン樹脂としては、流動模様を効果的に発現せしめる観点から、260℃、10kg加重でのメルトフローインデックス(MI)の値が、熱可塑性ベース樹脂のそれよりに30g/minを足した値より低いものを用いることが好ましい。
【0095】
(スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂)
前記スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリスチレン、または、ハイインパクトポリスチレンとポリフェニレンエーテルのポリマーブレンドであり、耐候性の観点から、ベンゼン環以外のジエン系を持たないことが好ましい。本発明に係る流動性模様を効果的に発現せしめる観点からは、そのガラス転移温度は上記環状オレフィン樹脂と同範囲であることが好ましい。
【0096】
前記ポリスチレンとしては東洋スチレン社製HRM26(登録商標)が、前記ポリフェニレンエーテルとしては旭化成社製ザイロン(登録商標)が挙げられる。
【0097】
また、本発明に係るスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、流動模様を効果的に発現せしめる観点から、260℃、10kg加重でのメルトフローインデックス(MI)は上記環状オレフィン樹脂と同範囲であることが好ましい。
【0098】
(顔料)
本発明に係る顔料Aは、本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物において、ベース樹脂、即ちマトリクス樹脂となり、マトリクス部分を形成する材料である熱可塑性ベース樹脂組成物を着色する顔料である。
【0099】
本発明に係る顔料Bは、本発明の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物においてアクセント樹脂となり、流動性模様部分を形成する材料である流動模様形成樹脂組成物を着色する顔料である。
【0100】
このような本発明に係る顔料は、無機顔料、有機顔料の群から選ばれる1種以上の顔料が好ましく、耐候性の観点から、より好ましくは無機顔料である。
【実施例】
【0101】
以下、実施例および比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、これらはいずれも例示的なものであり、本発明の内容を何ら限定するものではない。
【0102】
(濃淡差指数)
例えば、以下の様にして、各サンプルの濃淡差指数を導出できる。
【0103】
得られた長尺成形体(幅30mm、厚さ0.7mm)の代表的な部分を長さ14cm切り出し濃淡差指数評価用のサンプルを作成し、その表面外観をα−HyperCCDIIオンチップマイクロレンズ付き6ラインカラーCCD、白色冷陰極蛍光ランプ使用、高調波抑制対策ガイドライン適合VCCIクラスB適合のスキャナー(例えば、EPSON製GT−C750)で96dpiで取り込んだ。その後、各ドットをRed、Green、Blueそれぞれ0〜255の256階調で表すRGBカラーモデルを用いて表した。これをNTSC規格で使用されているYIQカラーモデルの基づく、以下の数式3を用いてグレースケール階調に変換した。
【0104】
【数3】

【0105】
このグレースケール階調(0〜255で0は黒、255は白を意味する)を横軸に頻度を縦軸にとった階調分布図とした。この階調分布図の最大値となるグレースケール階調KTと累積頻度が10%となるグレースケール階調K10の差として濃淡指数を算出した。
【0106】
この濃淡指数は、大きいほど成形体の濃い部分と中間的な部分が明確であることを意味し、木目の出やすさを表現する有効な手法であり、近年、解析手段の一つとして普及してきている。
【0107】
(ガードナー衝撃強度)
得られた成形体から30mm×30mm×0.7mmの試験片を切り出し、ガードナー強度を測定した。なお、ガードナー試験は、23℃の恒温室において、4ポンドのおもりを使用して実施した。
【0108】
(熱可塑性ベース樹脂組成物ペレットの作製)
メタクリル樹脂41重量%、アクリルゴム層含有多層重合体59重量%、からなる熱可塑性ベース樹脂組成物100重量%を100重量部に、顔料A1.0重量部、脂肪酸金属塩0.2重量部、及び滑剤0.2重量部を添加した混合物を、溶融押出して、数平均粒子径5mmの熱可塑性ベース樹脂組成物ペレットを作製した。この熱可塑性ベース樹脂組成物ペレットのBTg(℃)は97℃であり、260℃、10kg加重でのMIは64g/10min.である。
【0109】
このメタクリル樹脂は、メチルメタクリレート(MMA)/ブチルアクリレート(BA)の重量比が90/10の単量体の懸濁重合体である。
【0110】
このアクリルゴム層含有多層重合体100重量%は、中心からMMA/アリルメタクリレート(ALMA)=24.8/0.05重量%からなる体積平均粒子径が140nmのシード層、BA/スチレン(ST)/ALMA=43/10/0.15重量%からなるガラス転移温度が−20℃の体積平均粒子径が210nmの架橋ゴムコア層、及びMMA/BA=17.6/4.6の単量体混合物の重合体22重量%からなるガラス転移温度が60℃の硬質重合体からなるシェル層を有する体積平均粒子径が230nmのアクリルゴム層含有多層重合体ラテックスを乳化重合により合成したものである。
【0111】
この顔料Aは、硫酸法で製造された結晶構造がルチル型の平均粒子径が260nmの高耐候性酸化チタンであり、具体的には堺化学工業(株)製R−62Nを用いた。
【0112】
この脂肪酸金属塩は、ステアリン酸カルシウムであり、具体的には堺化学工業(株)製SC−100を用いた。
【0113】
この滑剤は、酸化ポリエチレンであり、具体的にはHoneywell社製ACPE629Aを用いた。
【0114】
(流動模様形成樹脂組成物ペレットの作製)
表1に示す流動模様形成樹脂100重量部に顔料B4重量部(黒色酸化鉄系顔料:大日精化工業株式会社製PP−D 100224)を添加した混合物を、東洋精機製コニカル押出機2D20Cを用いて表1〜4に示す成形条件にて、数平均粒子径5mmの流動模様形成樹脂組成物ペレットM、HM、PS、HPS、ZE1、ZE2、及びHDPEを各々作製した。各々のペレットのTg、及び260℃、10kg加重でのMIを表1に示す。
【0115】
表1の流動模様形成樹脂種について、PMMAはポリメチルメタクリレートであり旭化成カミカルズ社製DELPET 720V(登録商標)を、耐熱PMMAはアルケマ社製Altuglas HT121(登録商標)を、PSはポリスチレンであり東洋スチレン社製HRM26を、耐熱PSは東洋スチレン社製TO080を、COP1は環状オレフィン樹脂であり日本ゼオン社製ZEONOR 1410R(登録商標)を、COP2は環状オレフィン樹脂であり日本ゼオン社製ZEONOR 1420R(登録商標)を、各々用いた。
【0116】
【表1】

【0117】
表2に示す流動模様形成樹脂組成物ペレットPPE20として、ポリスチレン(PS)80重量部、及びポリフェニレンエーテル(PPE)20重量部からなる流動模様形成樹脂100重量部に顔料B4重量部(黒色酸化鉄系顔料:大日精化工業株式会社製PP−D 100224)を添加した混合物を、東洋精機製コニカル押出機2D20Cを用いて表1〜4に示す成形条件にて、数平均粒子径5mmの流動模様形成樹脂組成物ペレットを作製した。
【0118】
同様にして、流動模様形成樹脂100重量部を、PS60重量部、及びPPE40重量部としてPPE40を、PS40重量部、及びPPE60重量部としてPPE60を、PS20重量部、及びPPE80重量部としてPPE80を各々作製した。各々のペレットのTg、及び260℃、10kg加重でのMIを表2に示す。
【0119】
ここで、PSとしては東洋スチレン社製HRM26を、PPEとしては旭化成ケミカルズ社製ザイロンS202A(登録商標)を、各々用いた。
【0120】
【表2】

【0121】
表3に示す流動模様形成樹脂100重量部に顔料B8重量部(黒色酸化鉄系顔料:大日精化工業株式会社製PP−D 100224)を添加した混合物を、東洋精機製コニカル押出機2D20Cを用いて表1〜4に示す成形条件にて、数平均粒子径5mmの流動模様形成樹脂組成物ペレット8ZE1、及び8ARを各々作製した。各々のペレットのPTg(℃)、及び260℃、10kg加重でのMIを表3に示す。
【0122】
表3の流動模様形成樹脂種について、COP1、COP3は環状オレフィン樹脂であり、COP1は日本ゼオン社製ZEONOR 1410R(登録商標)、COP3はJSR社製ARTON 4531F(登録商標)である。
【0123】
【表3】

【0124】
表4に示す流動模様形成樹脂組成物ペレット8PPE10として、ポリスチレン(PS)90重量部、及びポリフェニレンエーテル(PPE)10重量部からなる流動模様形成樹脂100重量部に顔料B8重量部(黒色酸化鉄系顔料:大日精化工業株式会社製PP−D 100224)を添加した混合物を、東洋精機製コニカル押出機2D20Cを用いて表1〜4に示す成形条件にて、数平均粒子径5mmの流動模様形成樹脂組成物ペレットを作製した。
【0125】
同様にして、流動模様形成樹脂100重量部を、PS80重量部、及びPPE20重量部として8PPE20を、PS70重量部、及びPPE30重量部として8PPE30を各々作製した。各々のペレットのTg、及び260℃、10kg加重でのMIを表4に示す。
【0126】
ここで、PSとしては東洋スチレン社製HRM26を、PPEとしては旭化成ケミカルズ社製ザイロンS202A(登録商標)を、各々用いた。
【0127】
【表4】

【0128】
(実施例、比較例)
上記で作製した熱可塑性ベース樹脂組成物ペレット100重量部に、上記で作製した各種の流動模様形成樹脂組成物ペレットを表5に示す量添加し、東洋精機製一軸押出機D2020を用いて、低温成型としてC1/C2/C3/D/Screw回転数=180/180/180/200/30、及び高温成型としてC1/C2/C3/D/Screw(℃/℃/℃/℃/rpm)=200/200/200/200/30で、幅5mm、厚さ0.7mmの平板を作製した。
【0129】
作製した平板につき、各々木目発現性評価として濃淡差指数、及び未溶融ペレットの有無と、耐衝撃性、及び耐剥離性の評価としてガードナー衝撃強度を、高温成型、及び低温成型の平板各々について測定した。測定結果を表5に示す。
【0130】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ベース樹脂組成物100重量部、及び流動模様形成樹脂組成物0.1〜15重量部を含む流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物であって、
該熱可塑性ベース樹脂組成物100重量%が、メタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性ベース樹脂20〜95重量%、非ジエンゴム層含有多層重合体4.999〜79.999重量%、及び顔料A0.001〜5重量%からなり、かつ、
該流動模様形成樹脂組成物100重量%が、環状オレフィン樹脂、及びスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の流動模様形成樹脂70〜99.99重量%と、顔料B0.01〜30重量%とからなる、流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記流動模様形成樹脂のガラス転移温度(PTg(℃))と、前記熱可塑性ベース樹脂が結晶性の場合は融点、又は、非晶性の場合はガラス転移温度(BT(℃))と、が下記数式1の関係を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物。
【数4】


(但し、BT(℃)は、熱可塑性ベース樹脂が結晶性の場合は融点(BTm(℃))、非晶性の場合はガラス転移温度(BTg(℃))である。)
【請求項3】
前記熱可塑性ベース樹脂が、メタクリル樹脂である、請求項1又は2に記載の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記非ジエンゴム層含有多層重合体のゴム層が、アクリルゴム、及びシリコンゴムからなる群から選ばれる1種以上のゴム層である、請求項1〜3のいずれかに記載の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記非ジエンゴム層含有多層重合体が、そのゴム内層がアクリルゴムであるアクリルゴム内層含有多層重合体であって、かつ、該アクリルゴム内層、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する単量体の重合体の外層の少なくとも2層を有する多層重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物であって、実質的に前記熱可塑性ベース樹脂組成物からなる数平均粒径0.1mm〜10mmのペレット、及び実質的に前記流動模様形成樹脂組成物からなる数平均粒径0.1mm〜10mmのペレットの混合物である、流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物であって、さらに脂肪酸金属塩0.02〜10重量部を含有する流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物であって、さらに滑剤0.02〜1重量部を含有する流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の流動模様形成用熱可塑性樹脂組成物のキャップストック。
【請求項10】
請求項8に記載のキャップストックを用いた押出成形体。

【公開番号】特開2011−252091(P2011−252091A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127004(P2010−127004)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】