説明

流木の塩分除去、燃焼方法

【課題】
本発明は、海洋を漂ったり浜に打ち上げられた塩分を含む流木を効率的に脱塩分処理して、バイオマスエネルギー源として有効利用し、その際、塩分に起因する悪影響を装置に与えないようにする方法に関する。
【解決手段】
流木あるいはその破砕片を塩分濃度が0.3%以下の水に浸漬する第1工程、それを引き上げて土砂あるいは泥を表面に付着させる第2工程、70℃以下の雰囲気温度で加熱する第3工程、表面の土砂分を取り除いてから流木あるいはその破砕片を燃焼あるいは部分燃焼する第4工程からからなる処理を行う。あるいはこの第2工程を流木あるいはその破砕片を土砂の層に埋めた状態で行う。また、これらの処理を、重量として20%以下の海藻が共存しているものについても適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋を漂い浜などに打ち上げられた流木を、塩分の悪影響がないようにして燃焼あるいは部分燃焼してエネルギーとして利用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋を漂ったり、浜に打ち上げられた流木が増え、処分することが必要になっているが、炭酸ガス発生量の抑制が重要な現在、バイオマス資源として有効利用して燃焼あるいは部分燃焼してエネルギー回収できることが望まれる。その際に問題になるのは、流木に含まれていた塩分(塩化ナトリウム)に起因する塩素が燃焼ガスの水分と反応して塩化水素を形成し、これが冷却されると装置の金属配管などを塩酸が付着して腐食を促進することである。
【0003】
流木の塩分を低減するためには、塩分濃度が低い水の中に浸漬してから乾燥するなどの方法が考えられるが、効率的に塩分を除去できない。特許文献にも、流木の脱塩分処理の方法は見当たらず、たとえば特許文献1には、海洋で海藻を生育する海洋プランテーションと、海藻を収穫して部分燃焼する方法が示されているが、そこでは海水に起因する海藻の塩分除去や、塩分に起因する配管腐食への対応策は示されていない。
【特許文献1】特開2006−204264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、海洋を漂ったり浜に打ち上げられた塩分を含む流木を効率的に塩分除去して、バイオマスエネルギー源として有効利用し、その際、塩分に起因する悪影響を装置に与えないようにするための方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための第1の手段は、流木あるいはその破砕片を塩分濃度が0.3%以下の水に浸漬する第1工程、それを引き上げて土砂あるいは泥を表面に付着させる第2工程、70℃以下の雰囲気温度で加熱する第3工程、表面の土砂分を取り除いてから、流木あるいはその破砕片を燃焼あるいは部分燃焼する第4工程からなる方法である。
【0006】
第2の手段は、0005においての第2工程が、流木あるいはその破砕片を土砂の層に埋めた状態にすることである。
【0007】
第3の手段は、0005あるいは0006において、重量として20%以下の海藻が共存している流木を処理の対象物にすることである。
【発明の効果】
【0008】
これら方法によって、流木などに含まれる塩分を効率的に除去して、流木をエネルギー回収できる装置に装入して燃焼あるいは部分燃焼しても、塩分に起因する塩酸による装置の腐食を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の処理の対象物は、浜に打ち上げられた流木や、海洋を漂っていた流木を引き上げたものなどである。その中には海水に起因する塩分(塩化ナトリウム)を1%以上、塩素分として0.6%以上程度含んでいる。この状態のものを乾燥して燃焼すると、塩化水素(HCl)が生成し、燃焼ガスの温度が下がると水分と反応し、塩酸の水溶液が装置の壁面などに付着する。燃焼ガスが通過する配管が鉄などの金属管でできていると、それが塩酸水溶液と反応して腐食が進み、装置を傷めやすい。バイオマスからエネルギーを取り出すには、含まれている水素分を水まで、炭素分を二酸化炭素まで完全燃焼して熱としてエネルギーを回収すること、あるいは一酸化炭素や水素を含むガスまで部分燃焼する方法などがあるが、いずれの場合にも、バイマス原料の中に塩分が含まれていると問題で、塩化ナトリウムを、0.2%以下、できれば0.1%以下にまで下げることが、実用的なエネルギー回収のために不可欠である。
【0010】
本発明においては、海洋を漂っていた状態あるいは浜に打ち上げられていた状態の流木を回収して、それを水に浸漬する。水に浸漬することによって、その水が流木中に浸透して塩分を溶かし出すか、あるいは希釈する。この浸漬時間は7日以上が望ましい。この浸漬に用いる水の塩分(塩化ナトリウム)の濃度と、本発明で処理した流木の塩分除去率との関係を図1に示す。除去率を90%以上にするには、第1工程の処理に用いる水の塩分濃度は0.3%以下にすることが必要である。
【0011】
後の工程で燃焼や部分燃焼するときに操業を安定して行えるようにするには、さまざまの形状をした流木を破砕してチップなどにして形状を整えておくことが望ましい。このチップへの破砕加工は、0010で述べた第1工程の前に行うことも可能であるが、また、流木の状態のままで第1工程を行い、第1工程が終わった後で破砕してチップすることも可能である。
【0012】
このように第1工程の処理をされた流木あるいはその破砕片は、水から出してそのまま乾燥しても、含まれる塩分を効率的に低下することができない。第1工程が終わった状態の流木あるいはその破砕片中に含まれていた塩分の多くが流木あるいはその破砕片の中に残留するからである。それに対して、本発明では、第1工程の処理が終わって水から取り出した流木あるいはその破砕片の表面に、土砂あるいは泥を付着させる第2工程の操作を行なった後、加熱・乾燥の工程に移る。
【0013】
この第2工程の方法の1つは、流木あるいはその破砕片の表面に、土砂あるいは泥を水を含んだ粘り気のある状態で吹きつけ、あるいは塗りつけて層を形成することである。層の厚さは平均で1mm以上であればよい。また、その別の方法は、流木あるいはその破砕片を、たとえば鋼板で形成した容器の中に装入して、その上から乾いた土砂を注いで、埋没した状態にすることである。
【0014】
第3工程は、加熱を行って水分を蒸発させ、その際、塩分の多くを流木あるいはその破砕片の表面に着けた土砂や泥の中か、流木あるいはその破砕片をうずめた土砂の層に移行させる。この移行を効率に行うには、第3工程の処理を行う雰囲気の温度が重要である。図2に示すように、塩分の除去率を90%以上にするのは雰囲気温度は70℃以下であることが必要である。また、処理時間の関係から、温度の下限は40℃以上であることが望ましい。このような条件を満足する雰囲気温度を得るためには、箱状の空間の中でガスを燃焼させる、温風を送り込む、金属性のパイプの中を温水あるいは温風を通して、間接的に加熱するなどの方法がある。この加熱・乾燥の工程で、塩分を含む水が流木あるいはその破砕片の内部から表面に移動し、最終的に土砂の表面から蒸発する際に、塩分結晶を土砂の表面に残留する。雰囲気の温度が70℃を越えると、水分の蒸発速度が大きすぎて、流木あるいはその破砕片の内部で結晶して残留する塩分が増えるために、残留塩分が増加して好ましくない。
【0015】
第3工程を終わった処理物は、次ぎに表面の土砂を除去して、燃焼あるいは部分燃焼する。表面の土砂を分離するためには、必要に応じて鋼玉のような硬いものを入れて回転炉に入れて土砂分を削り取り、篩い分けて分離するなどの方法がある。特に、第3工程まで流木の状態のままで、破砕せず、燃焼あるいは部分燃焼のために、破砕する必要がある場合には、第3工程が終わった後で破砕を行い、同時に表面の土砂の分離を行うことができる。
分離された土砂分は、本発明の処理に数回繰り返して使用することができる。そして、塩分含有量が3%を過ぎると、水で洗って塩分を水に移行させて処分するか、あるいは塩分を含んだ状態で処分場に埋め立てる。
【0016】
このようにして塩分を低減させた流木あるいはその破砕片は、本発明で処理したものを単独で、あるいは他のバイオマス資源と混合して、エネルギー源として利用するために、直接燃焼あるいは部分燃焼を行う。部分燃焼法は、ガス化法とも呼ばれる方法であって、固定床炉や流動床炉の中に、チップ状などの原料を装入して、タールの発生抑制と、出来るだけ一酸化炭素や水素、メタンなどの生成量が多くなるという2つの条件を満足するように、空気供給量を適当な値に設定することによって行う。得られたガスは、別の装置で燃やされて発電などに用いられる。塩分含有量が0.1%程度以下に調整されており、かつ、破砕などによって形状が調整されておれば、本発明の処理品は、通常のバイオマス資源と同様に用いることができる。また、燃焼法、すなわち直接燃焼法は、完全燃焼させてその熱をボイラーで水蒸気などに変換して、発電、動力、あるいは熱として利用するものである。この方法においても、塩分含有量が0.1%程度以下に低下しておれば、流木あるいはその破砕物は、他のバイオマス資源と同様に用いることができる。
【0017】
流木や海水の中で使用された木材には、海藻類が絡まったり、生えている場合がある。そこで、その海藻類がどの程度共存した状態まで、本発明の方法が適用できるかの検討を行った。海藻類の割合が増えると、図3に示すように塩分の残留が増える傾向がある。この点から共存する海藻の許容量の上限は20重量%である。この許容限度内では、燃焼あるいは部分燃焼を行う際に特に問題は見られなかった。
【0018】
0010から0017において述べた本発明の工程の例を図4に示す。
【実施例1】
【0019】
浜に打ち上げられた流木を集めて、図4の工程例Aによって処理を行った。処理前の流木の塩分(塩化ナトリウム)含有量は、1.5%であった。これを塩分(塩化ナトリウム)を0.21%含有する水槽に漬けて7日後に取りだした。その表面に泥を吹きつけから、55℃で7時間放置した。この表面に付着した泥が乾燥したものをショットブラスト法で分離した後、流木部分を粗破砕して、長さ70mm以下、幅 50mm以下、厚さ20mm以下に破砕した。その塩分含有量は、0.15%であった。このようにして得られた破砕片を50重量%、残りは通常の木材チップという配合でボイラーで燃焼して蒸気製造に用いた。海藻を含む流木使用に伴う操業上、設備上の問題点は認められなかった。
【実施例2】
【0020】
浜に打ち上げられた流木を集めて、図4の工程例Bによって処理を行った。処理前の流木の塩分(塩化ナトリウム)含有量は、1.5%であった。これを塩分(塩化ナトリウム)0.23%含有する水槽に漬けて7日後に取りだした。この表面に泥を吹きつけてから、55℃で7時間放置した。これをチップ機にかけて、長さ50mm以下、幅 30mm以下、厚さ5mm以下に破砕するとともに、泥が乾燥したものを分離し、ふるい分けた。チップの塩分含有量は、0.11%であった。このようにして得られた破砕片を50重量%、残りは通常の木材チップという配合でボイラーで燃焼して蒸気製造に用いた。海藻を含む流木使用に伴う操業上、設備上の問題点は認められなかった。
【実施例3】
【0021】
浜に打ち上げられた流木を集めて、付着した海藻類を除去した後。図4の工程例Cで処理を行った。処理前の流木の塩分(塩化ナトリウム)含有量は、1.3%であった。これをチップ機にかけて、長さ50mm以下、幅 30mm以下、厚さ5mm以下に破砕した。次に塩分(塩化ナトリウム)を0.23%含有する水槽に漬けて7日後に取りだした。さらに水分を3%。土を6%含む砂と混合し、鉄容器に入れて55℃で5時間放置した。得られたものを回転機にかけてから篩い分けて、チップと砂を分離した、チップの塩分分析値は0.10%以下であった。このようにして得られたチップを60重量%、残りは通常の木材チップという配合で1MWの固定床型ガス化装置に入れて部分燃焼して、水素20容積%。CO 22容積%、メタン分3容積%の可燃ガスを得て、ガスタービン発電に供給した。流木使用に伴う操業上、設備上の問題点は認められなかった。
【実施例4】
【0022】
浜に打ち上げられた流木を(海藻混入量 約7%)を集めて、図4の工程例Dで処理を行った。処理前の流木の(海藻を含む)塩分(塩化ナトリウム)含有量は、1.5%であった。これを塩分(塩化ナトリウム)0.21%含有する水槽に漬けて8日後に取りだした。ついでチップ機にかけて、長さ50mm以下、幅 30mm以下、厚さ5mm以下に破砕した。このチップを、水分を3%。土を6%含む砂と混合し、鉄容器に入れて60℃で4時間放置した。得られたものを回転機にかけてから篩い分けて、チップと砂を分離した、チップの塩分分析値は0.10%であった。このようにして得られたチップを50重量%、残りは通常の木材チップという配合で1MWのボイラーで燃焼して蒸気製造に用いた。海藻を含む流木使用に伴う操業上、設備上の問題点は認められなかった。
【実施例5】
【0023】
漂流中の流木(海藻混入量 約3%)を集めて、図4の工程例Cによって処理を行った。処理前の流木の塩分(塩化ナトリウム)含有量は、1.4%であった。まず、流木をチップ機にかけて、長さ50mm以下、幅 30mm以下、厚さ5mm以下に破砕した。このチップを塩分(塩化ナトリウム)を0.21%含有する水槽に漬けて7日後に取りだした。これに水分を3%。土を6%含む砂と混合し、鉄容器に入れて53℃で5時間放置した。得られたものを回転機にかけてから篩い分けて、チップと砂を分離した、チップの塩分分析値は0.12%であった。このようにして得られたチップを60重量%、残りは通常の木材チップという配合で1MWのボイラーで燃焼して蒸気製造に用いた。海藻を含む流木使用に伴う操業上、設備上の問題点は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の方法は、牡蠣養殖用の筏のように海水の中で使われた木について、廃木として処分する場合にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1工程で用いる水の塩分濃度が、本発明の方法で処理した流木の塩分除去率に及ぼす影響を示す。
【図2】本発明の第3工程での雰囲気温度が、本発明の方法で処理した流木の塩分除去率に及ぼす影響を示す。
【図3】流木への海藻の混入割合が、本発明の方法で処理した流木の塩分除去率に及ぼす影響を示す。
【図4】本発明の工程の例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流木あるいはその破砕片を塩分濃度が0.3%以下の水に浸漬する第1工程、それを引き上げて土砂あるいは泥を表面に付着させる第2工程、70℃以下の雰囲気温度で加熱する第3工程、表面の土砂分を取り除いてから流木あるいはその破砕片を燃焼あるいは部分燃焼する第4工程からなることを特徴とする流木の塩分除去、燃焼方法。
【請求項2】
請求項1の第2工程が、流木あるいはその破砕片を土砂の層に埋めた状態であることを特徴とする流木の塩分除去、燃焼方法。
【請求項3】
請求項1あるいは2において、処理対象物に重量として20%以下の海藻が共存していることを特徴とする流木の塩分除去、燃焼方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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