説明

流路系、及びハイブリダイゼーション検出装置

【課題】内部でハイブリット形成可能な新規流路系を提供すること。
【解決手段】ビーズが充填された細管からなる流路系1であって、核酸鎖Nが固定されているハイブリット形成用ビーズ2と、カチオン性イオン交換能を持つ多孔質マイクロビーズ3と、が少なくとも充填されたカラム層を有することにより、流路系1内での多孔質マイクロビーズへの核酸の吸着を防止し、反応効率の上昇、及び反応条件を安定させることが可能な流路系を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリダイゼーション検出に係わる技術に関する。より詳しくは、流路系内でハイブリダイゼーションを進行させ、これを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子の変異解析、SNPs(一塩基多型)分析、遺伝子発現頻度解析、遺伝子ネットワーク解明等に利用され得るバイオアッセイ技術の開発が進んでいる。例えば、いわゆるDNAチップ又はDNAマイクロアレイ(以下、本願では「DNAチップ」と総称。)と呼ばれる集積基板を用いた方法が挙げられる。
【0003】
このDNAチップやタンパク質を集積したプロテインチップなどに代表されるようなセンサーチップ技術は、検出用物質(プローブと称されることが多い。)とターゲット物質との間の特異的な相互作用を利用して、ターゲット物質の含有量、構成成分、機能等を調べる方法である。
【0004】
最近では、検出用物質とターゲット物質との間の特異的な相互作用を、流路やキャピラリーを利用して行う技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ポリヌクレオチドの増幅を行う部分と、検出用オリゴヌクレオチドが固定されている多孔質層を有するハイブリダイゼーション部分とが、流路によって連結されているポリヌクレオチドの分析用部材が開示されている。
【0005】
特許文献2には、毛細管状の流路の内壁にプローブ化合物を固定して、被検ポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションを進行させるポリヌクレオチドの分析方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、5種の異なるDNAプローブが担持された各マイクロビーズを、マイクロアレイ容器の流路に充填し、検体とビーズに固定されたDNAプローブとの間で選択的にハイブリダイゼーションを形成させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−130795号公報。
【特許文献2】特開2004−121226号公報。
【特許文献3】特開2002−303627号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、流路やキャピラリーなどの細い流路内において、ハイブリット形成を進行させる場合、反応効率をよくするために多孔質のマイクロビーズを用いることが多い。しかし、多孔質のマイクロビーズを用いると、送液中のターゲット核酸が多孔質マイクロビーズに吸着することがある。そのため、ターゲット検出の際、マイクロビーズに固定された核酸鎖とのハイブリット形成なのか、多孔質マイクロビーズへの吸着なのかの区別が困難となる。
【0008】
また、ターゲット核酸が多孔質マイクロビーズに吸着してしまうと、マイクロビーズ上の核酸鎖にターゲット核酸が十分な濃度や量で行き届かず、反応効率が低下するばかりか、反応条件が不安定となる問題もあった。
【0009】
そこで、本発明は、多孔質マイクロビーズへの核酸の吸着を防止し、反応効率の上昇、及び反応条件を安定させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、前記課題を解決するために、充填するビーズの好適な条件などについて鋭意研究した結果、反応効率を上昇させ、かつ反応条件を安定させることが可能な新規流路系などを見出した。
【0011】
本発明では、ビーズが充填された細管からなる流路系であって、核酸鎖が固定されているハイブリット形成用ビーズと、カチオン性イオン交換能を持つ多孔質マイクロビーズと、が少なくとも充填されたカラム層を有する流路系を提供する。
【0012】
前記多孔質マイクロビーズは、カチオン性イオン交換能を持つものであれば特に限定されないが、好適な一例としては、パフュージョンクロマトグラフィー粒子が挙げられる。
【0013】
前記ハイブリット形成用ビーズ上では、固定された前記核酸鎖と、ターゲット核酸とが相補結合するハイブリット形成を進行させることができる。
【0014】
前記核酸鎖を、同種塩基配列を有するリンカーとすれば、前記ハイブリット形成用ビーズ上では、固定された該リンカーとターゲット核酸とが相補結合する第1ハイブリット形成と、該ターゲット核酸の一本鎖部分と送液中のプローブ核酸とが相補結合する第2ハイブリット形成と、を進行させることもできる。
【0015】
前記リンカーの同種塩基配列の一例としては、ポリT又はポリU等が挙げられる。この場合、流路系内のハイブリット形成用ビーズ上では、該ポリT又はポリUと全RNAサンプル中のポリAテール部分を有するmRNAとが相補結合する第1ハイブリット形成と、該mRNAと送液中のプローブ核酸とが相補結合する第2ハイブリット形成と、を進行させることができる。
【0016】
本発明に係る流路系は、前記ハイブリット形成用ビーズが少なくとも充填されている反応部と、前記多孔質マイクロビーズが充填されている送液促進部と、が順に層をなすように形成してもよい。一例を挙げると、前記反応部と、前記反応部の上流領域に設けられた前記送液促進部と、前記反応部の下流領域に設けられた前記送液促進部と、からなる3層構造となるように形成することができる。
【0017】
また、本発明に係る流路系は、前記ハイブリット形成用ビーズと、前記多孔質マイクロビーズと、を混合充填して形成してもよい。
【0018】
さらに、本発明に係る流路系は、前記ハイブリット形成ビーズと前記多孔質マイクロビーズとが混合充填されている反応部と、前記多孔質マイクロビーズが充填されている送液促進部と、が順に層をなすように形成してもよい。一例を挙げると、前記反応部と、前記反応部の上流領域に設けられた前記送液促進部と、前記反応部の下流領域に設けられた前記送液促進部と、からなる3層構造となるように形成することができる。
【0019】
本発明に係る流路系に送液する全溶液は、界面活性作用及び核酸分解酵素失活作用を有する物質を同濃度含む溶液が望ましい。前記物質の一例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を挙げることができる。
【0020】
本発明に係る流路系は、ハイブリダイゼーション検出装置に用いることができる。例えば、本発明に係る流路系と、前記ハイブリット形成用ビーズ上におけるハイブリット形成を検出する検出部と、を少なくとも備えるハイブリダイゼーション検出装置を提供できる。
【0021】
以下、本発明で使用する技術用語の定義付けを行う。「ターゲット核酸」とは、サンプル溶液中に含まれる核酸であって、本発明に係る流路系を用いて、その含有量、構成成分、機能などの分析を行うことを目的とする核酸をいう。「塩基配列」とは、重合している2以上の塩基を意味する。「リンカー」とは、ビーズに対して核酸を保持するために利用される所定配列の核酸である。
【0022】
「プローブ核酸」とは、ハイブリダイゼーション検出に有用な情報を提供できる核酸であって、例えば、蛍光物質が標識された一本鎖核酸、あるいは放射性物質が標識された一本鎖核酸などを挙げることができ、前者では励起蛍光を検出し、後者では放射線を検出することによって、ハイブリダイゼーションを検出できる。
【0023】
「ポリ」とは、塩基が2以上重合した塩基配列を有する核酸分子を意味する。「ポリT」とは塩基チミン(T)が2以上重合した塩基配列を有する核酸分子を意味する。「ポリU」とは、塩基ウラシル(U)が2以上重合した塩基配列を有する核酸分子を意味する。「ポリAテール(poli(A)tail)」とは、mRNAの3’末端に付加されているアデニノシンの鎖である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る流路系は、多孔質マイクロビーズへの核酸の吸着を防止できるため、流路内でのハイブリダイゼーション等の反応効率を上昇させ、かつ反応条件を安定させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0026】
まず、図1を用いて、本発明に係る流路系の構成を説明する。図1は、本発明に係る流路系の一実施形態を示す図である。
【0027】
この図1に符号1で示す流路系は、大別して、サンプル溶液の流路となる口径0.5mm程度の細管11と、該細管11の一端に形成された導入部12と、該細管11の他端側に形成された排出部13と、から構成されている。なお、図1に示された矢印Wは、サンプル溶液等の流れる方向を示している。
【0028】
この図示された流路系1には、導入部12に近接する細管11部分の内部に微小粒径のハイブリット形成用ビーズ2が多数充填されている。ハイブリット形成用ビーズ2には、核酸鎖Nが固定されている(後述の図2参照)。このハイブリット形成用ビーズ2上では、ハイブリダイゼーションなどの所望の相互作用が進行する。
【0029】
ハイブリット形成用ビーズ2のビーズベット長Bは、自由に設計することができる。一般に、ビーズベット長Bが長くなるほど、マイクロ流路内圧も上昇するので、好適な一例を挙げると、ビーズベット長4mm以下、より好ましくは2mm以下である。
【0030】
ハイブリット形成用ビーズ2の下流側(即ち、排出部13側)に多孔質マイクロビーズ3が多数充填されている。この多孔質マイクロビーズ3は、送液されてくるサンプル溶液や洗浄用のバッファー溶液などの送液速度を促進するための役割を担う。
【0031】
多孔質マイクロビーズ3は、送液されるサンプル溶液中のターゲット核酸を吸着しないものが望ましい。ターゲット核酸が多孔質マイクロビーズ3に吸着してしまうと、ターゲットの検出の際、ハイブリット形成用ビーズ2に固定された核酸鎖Nとのハイブリット形成なのか、多孔質マイクロビーズ3への吸着なのかの区別が困難となる。また、ターゲット核酸が多孔質マイクロビーズに吸着してしまうと、マイクロビーズ上の核酸鎖に、ターゲット核酸が十分な濃度や量で行き届かず、反応効率が著しく低下し、更に、反応条件も不安定となる。
【0032】
本発明では、多孔質マイクロビーズ3として、カチオン性イオン交換能を持つものを用いることにより、ターゲット核酸の吸着を防止することに成功した。そのため、流路系1内での反応効率を上昇させ、かつ反応条件を安定させることが可能となった。
【0033】
多孔質マイクロビーズ3は、送液を促進し、かつ、カチオン性イオン交換能を有するものであれば特に限定されないが、好適な一例としては、パフュージョンクロマトグラフィー粒子を挙げることができる。
【0034】
このパフュージョンクロマトグラフィー粒子の典型的なものは、貫通孔(Through pore)と称される大きなポアと吸着孔(Diffusive pore)と称される小さなポアを持っている。これにより、バッファー溶液に溶け込んだ分子は、前記貫通孔を通りぬけ、吸着孔の隅々まで運ばれる。このため、分子と充填材表面の官能基との接触面積が大きくなり、バッファーの流れと官能基との距離は充填材の粒径に関係がなく非常に小さくなる(1μm以下)ので、高流速で、かつ低圧の送液を行うことができる。
【0035】
次に、図2から図6を用いて、ハイブリット形成用ビーズ2上におけるハイブリット形成の様子を説明する。
【0036】
図2は、流路系1内に充填されているハイブリット形成用ビーズ21の表面上の物質構成の一例を模式的に示す図である。
【0037】
ハイブリット形成用ビーズ21は、例えばポリスチレンなどの材料で形成された微小なマイクロビーズである。このハイブリット形成用ビーズ21の表面は、核酸の一末端を化学的に結合させるのに好適な構成を備えている。
【0038】
ハイブリット形成用ビーズ21は、該ハイブリット形成用ビーズ21の表面に対して、例えば、アビジン-ビオチン結合やカップリング反応(例えば、ジアゾカップリング反応)などを介して結合された核酸鎖Nを備えている。この状態で、ハイブリット形成用ビーズ21を流路系1に充填する(図1参照)。
【0039】
核酸鎖Nは、ハイブリット形成用ビーズ21に保持された状態で、流路系1内において待ち受けており、送液されてくるサンプル液中の相補的なターゲット核酸Xとハイブリダイゼーションする。ハイブリダイゼーションの様子を、図3に示す。
【0040】
図3では、ハイブリット形成用ビーズ21に保持された状態の核酸鎖Nの一本鎖部分に対して、ターゲット核酸Xがハイブリダイゼーションし、二本鎖を形成している様子を模式的に示す。図示しないが、核酸鎖N、又はターゲット核酸Xに、予めハイブリダイゼーション検出に利用できる蛍光物質、あるいは放射性物質などを標識(ラベル)しておくことで、該標識物質から得られる光情報や放射線情報を捕捉することによって、前記ハイブリダイゼーションを検出することができる。
【0041】
図4は、図2とは異なる実施形態のハイブリット形成用ビーズ22の表面上の物質構成を模式的に示す図である。
【0042】
このハイブリット形成用ビーズ22は、該ハイブリット形成用ビーズ22の表面に対して、例えば、アビジン-ビオチン結合やカップリング反応(例えば、ジアゾカップリング反応)などを介して結合されたオリゴ核酸であるリンカーLを備えている。該リンカーLは、ターゲット核酸Xと相補結合する塩基配列を有していれば特に限定されないが、一例を挙げると、同種塩基配列であるポリT又はポリUを有するものが好適である。
【0043】
図5は、リンカーLとターゲット核酸Xが相補結合する様子を模式的に示す図である。例えば、図5に示すように、リンカーLがポリT塩基配列部分を有する場合、ターゲット核酸XのポリA部位がポリAセレクションプロセスに基づいて、前記ポリT部分と相補結合する。ターゲット核酸Xの好適例の一つとして、ポリAテールを有するmRNAを挙げることができる。
【0044】
前記ターゲット核酸Xは、リンカーLを介してハイブリット形成用ビーズ22に保持された状態で、流路系1内において待ち受けており、送液されてくるサンプル溶液中の相補的なプローブ核酸Pとのハイブリダイゼーションを進行する。ハイブリダイゼーションの様子を図6に示す。
【0045】
図6は、ハイブリット形成用ビーズ22にリンカーLを介して保持されたターゲット核酸Xの一本鎖部分に対して、プローブ核酸Pがハイブリダイゼーションし、二本鎖を形成している様子を模式的に示している。
【0046】
この図6に示すように、プローブ核酸Pには、予めハイブリダイゼーション検出に利用できる蛍光物質F、あるいは放射性物質(図示せず)などを標識(ラベル)しておくことで、該標識物質から得られる光情報や放射線情報を捕捉することによって、前記ハイブリダイゼーションを検出することが可能となる。
【0047】
このようなハイブリダイゼーションアッセイは、例えば、被験者の細胞などから抽出されたmRNAをハイブリット形成用ビーズ22に、リンカーLを介して保持しておき、このmRNAに対して、公知の疾病発現原因遺伝子に係わる塩基配列を有するプローブ核酸Pがハイブリダイズするか否かを判定する目的の検査などに利用できる。
【0048】
以上のアッセイは、例えば、図7の工程図に示された方法に基づいて実施できる。まず、流路系1を構成する細管11の所定位置に向けて、パフュージョンクロマトグラフィー粒子のような多孔質マイクロビーズ3を充填する(図7中の(I)参照)。
【0049】
次に、多孔質マイクロビーズ3の上流側に向けて、リンカーLが固定化されているハイブリット形成用ビーズ22を充填する(図7中の(II)参照)。
【0050】
そして、ハイブリット形成用ビーズ22に向けて、ターゲット核酸Xを含む第1サンプル溶液S1を送液する(図7中の(III)参照)。このとき、ハイブリット形成用ビーズ22に保持されているリンカーL(例えば、ポリT)とターゲット核酸X(例えば、ポリAテール部分)とが、相補結合する(第1ハイブリット形成、図7中の(IV)参照)。
【0051】
続いて、プローブ核酸Pを含有する第2サンプル溶液S2を、前記第1ハイブリット形成後のハイブリット形成用ビーズ22へ向けて送液する(図7中の(V)参照)。そして、所定温度、pH条件で所定時間、ターゲット核酸Xとプローブ核酸Pとの間のハイブリダイゼーションを進行させる(第2ハイブリット形成、図7中の(VI)参照)。このときのプローブ核酸Pから得られる情報(例えば、標識された蛍光物質からの励起蛍光情報)により、ハイブリダイゼーションを検出する。
【0052】
以上説明した本発明に係る流路系1は、図8に示すように、ハイブリット形成用ビーズ2が充填されている反応部111aと、多孔質マイクロビーズ3が充填されている送液促進部112aが順に層をなすように形成している(図8中符号1aで示す)が、その構成は限定されない。図9から図11を用いて、本発明に係る流路系1への各ビーズの充填方法を例示する。
【0053】
図9は、図8とは異なる実施形態の流路系1bを示す図である。本実施形態に係る流路系1bは、ハイブリット形成用ビーズ2を充填した反応部111aと、反応部111aの上流領域(導入部12側)に多孔質マイクロビーズ3を充填して設けられた送液促進部112aと、反応部111aの下流領域(排出部13側)に多孔質マイクロビーズ3を充填して設けられた送液促進部112aと、からなる3層構造をしている。即ち、反応部111aの両側を、送液促進部112a、112aで挟み込んだ構成となっている。
【0054】
送液促進部112a、112aを設けることにより、送液促進だけでなく、以下の効果も期待できる。一般に、導入部12や排出部13の近傍の細管部分では、外部ポンプ等との接続のためのナットなどの諸部材が設けられることが多い。そのため、この部分に反応部111aを設けると、光などの検出や測定などが困難となる。しかし、送液促進部112a、112aを反応部111aの下流側、及び上流側に設けることによって、検出、測定などの対象となる反応部111aが流路系1の中央部近くに配置できるようになるので、検出、測定などが容易になるという利点が生まれる。
【0055】
また、反応部111aの両側を、送液促進部112a、112aで挟み込む構成をとることで、流路系1b内には、隙間なくビーズを充填することができる。流路系1b内に隙間なくビーズを充填することで、輸送などによる振動の影響も受け難くすることができる。
【0056】
図10は、図8、及び図9とは異なる実施形態の流路系1cを示す図である。本実施形態に係る流路系1cには、ハイブリット形成用ビーズ2と多孔質マイクロビーズ3を混合充填している。
【0057】
本発明に用いる多孔質マイクロビーズ3は、核酸を吸着しないため、ハイブリット形成用ビーズ2と混合しても、ハイブリット形成用ビーズ2上でのハイブリット形成を阻害しない。従って、ハイブリット形成用ビーズ2と多孔質マイクロビーズ3を混合充填することにより、流路系1c内の反応効率の低下、及び反応条件の不安定化を招くことなく、送液促進効果を得ることができる。
【0058】
図8で示した実施形態と同様に、ハイブリット形成用ビーズ2と多孔質マイクロビーズ3を混合充填した反応部111bの下流領域(排出部13側)に、多孔質マイクロビーズ3を充填した送液促進部112bを設け、反応部111bと送液促進部112bが順に層をなすように形成してもよい(図11参照)。
【0059】
また、図9で示した実施形態と同様に、前記反応部111bと、反応部111bの上流領域(導入部12側)に多孔質マイクロビーズ3を充填して設けられた送液促進部112bと、反応部111bの下流領域(排出部13側)に多孔質マイクロビーズ3を充填して設けられた送液促進部112bと、からなる3層構造としてもよい(図12参照)。即ち、反応部111bの両側を、送液促進部112b、112bで挟み込んだ構成をとることも自由である。
【0060】
送液促進部112b、112bを設けることにより、送液促進だけでなく、上記と同様の効果も期待できる。即ち、検出、測定などの対象となる反応部111bが流路系1の中央部近くに配置できるようになり、検出、測定などが容易になるという利点、及び、流路系1e内に隙間なくビーズを充填することで、輸送などによる振動の影響を受け難くなるという利点が生じる。
【0061】
本発明に係る流路系1(1a〜1e)に送液するサンプル溶液などの溶液は、ハイブリット形成等に影響を与えない限り、目的に合わせてあらゆる物質を含ませることができる。例えば、流路系1(1a〜1e)に送液する溶液全部に、界面活性作用を有する物質を含ませれば、マイクロビーズへの核酸等の吸着を防止することができるため、洗浄等を行う必要がなく、液相の置換の必要もなくなる。そのため、総測定時間の短縮を図ることができる。
【0062】
また、核酸分解酵素失活作用を有する物質を含ませれば、RNaseやDNaseなどの核酸分解酵素による影響を抑制することができる。そのため、効率の良い、安定した測定を行うことができる。
【0063】
界面活性作用及び核酸分解酵素失活作用を有する物質の好適な一例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(以下「SDS」とする。)を挙げることができる。SDSは、マイクロビーズへの核酸等の吸着を防止する効果があるため、サンプル液などの送液後に、洗浄を行う必要がない。また、後述の実施例3で説明するとおり、SDSは、蛍光測定に影響を及ぼさないため、蛍光測定時に、SDSを含まない液相に置換する必要がない。そのため、RNaseやDNaseなどの核酸分解酵素による影響を抑制し、安定した測定を行うことができる。
【0064】
本発明に係る流路系1(1a〜1e)へサンプル液を送液する場合、そのまま送液することも可能であるが、サンプル液を濾過した後に流路系1(1a〜1e)へ送液することがより好ましい。浮遊物質などを除去するためである。サンプル液中の浮遊物質などを予め濾過しておけば、流路系1(1a〜1e)の目詰まりを防止できる。
【0065】
濾過に用いるフィルタは、浮遊物質や長鎖の核酸を除去できるものが望ましい。好適な一例としては、その孔径が0.65μm以下、より好ましくは0.1μm以下のフィルタを挙げることができる。フィルタ濾過する前に、濾過の精度を上げるために、遠心分離を行うことも自由である。
【0066】
本発明に係る流路系1(1a〜1e)では、排出部13において、減圧を行うことも可能である。一般に、上流からの送液により、流路系1(1a〜1e)の上流側に圧力が集中するが、下流側を陰圧に保つことで、流路系1(1a〜1e)中の液相の流れを改善することができる。減圧の仕方の一例としては、排出部13に図示しないがシリンジなどを接続し、該シリンジを吸引することで排出側を陰圧に保つことができる。
【0067】
以上で説明した流路系1(1a〜1e)は、単独で使用してもよいが、多数本セットした構成のマルチ流路系(図示せず)を採用してもよい。例えば、導入部12を共通にして、同一のサンプル溶液を同時に多数の流路系1(1a〜1e)へ送液できるようにし、さらには、各流路系の反応部111a(111b)には、異なる種類のターゲット核酸Xを保持させておくことによって、網羅的なハイブリダイゼーション検出を同時一斉に行うようにしてもよい。
【0068】
図13は、流路系1(1a〜1e)を用いるハイブリダイゼーション検出装置の検出部の好適な実施形態の一例を示す図である。
【0069】
図13に示された検出部4は、ハイブリダイゼーションを蛍光検出する場合の典型的な構成を備える。ハイブリット形成用ビーズ2上においてハイブリダイゼーションした状態で存在する核酸N、若しくはプローブ核酸Pには、予め蛍光物質が標識されている。
【0070】
流路系1(1a〜1e)のハイブリット形成用ビーズ2が充填されている反応部111a(111b)へ向けて、所定波長の蛍光励起光Lを図示しない光源から出射して平行光に途中変換し、反応部111a(111b)の近傍に配置されたレンズ41によって反応部111a(111b)へ向けて絞り込んで照射する。
【0071】
これにより、反応部111a(111b)内で励起された蛍光fを、前記レンズ41で平行光に変換し、さらに後方に配置されたレンズ42で絞り込み、その後方に配置された光ディテクタ43で検出し、蛍光強度を測定する。なお、本発明に係わる検出部は、この蛍光検出手段に限定されず、核酸N、若しくはプローブ核酸Pが提供する情報種に応じて、これを検出できる構成を採用することが可能である。
【実施例1】
【0072】
実施例1では、本発明にかかる流路形に充填する多孔質マイクロビーズとして、好適なものを調べた。
【0073】
<マイクロビーズの調整>
まず、逆相性、疎水性、アニオン性のイオン交換性、カチオン性のイオン交換性をそれぞれ持つ多孔質のマイクロビーズ(PORPS、Applied Biosystems)を準備した。それぞれのマイクロビーズの特性を表1に示す。10%エタノール水溶液に、それぞれのマイクロビーズを2.5%で懸濁し、マイクロビーズ懸濁液を調整した。
【表1】

【0074】
<マイクロカラムの作製>
まず、流路系を構成する細管として、内径0.53mm、外径0.68mm、長さ6cmのフューズド・シリカ・キャピラリー・チューブ(ジーエルサイエンス株式会社製)を用意した。
【0075】
そして、送液の下流側端部に、孔径1μmのフィルタをセットした排出部、上流側にはフィルタをセットしない導入部を、それぞれチュービングスリーブ、フェラル、ナットを用いて取り付けた。また、上流側の導入部には、レオダイン型シリンジに対応するフィルポートを取り付け、下流側の排出部にはルアー・ロック・ニードルを取り付けた。
【0076】
<送液促進部の形成>
上記で調整した各種マイクロビーズ懸濁液をマイクロチューブ内に注入した。注入後、マイクロチューブ中に充填されたマイクロビーズのベットを純水で十分洗浄、乾燥した。
【0077】
<マイクロカラムのセット>
前記で作製したマイクロカラムからルアー・ロック・ニードルとフィルポートを取り外し、蛍光顕微鏡のステージであるヒートプレート上に固定し、温度制御を行った。上流側のシリコン・チューブは圧力計に接続し、下流側のシリコン・チューブは廃液貯めにセットした。圧力計は、シリンジ・ポンプにセットしたシリンジと接続し、シリンジ中の液相を圧力計経由でマイクロカラムに注入できるようにした。送液中の内圧を常時モニターした。
【0078】
<コンディショニング液・洗浄液・核酸溶液の調整>
ベットのコンディショニング液として、0.5M塩化ナトリウム水溶液を調整した。洗浄液として、0.1%SDSを含有した0.5M塩化ナトリウム水溶液を調製した。核酸溶液として、5’側をCy3で標識した21-merのポリデオキシヌクレオチドを、5μMの濃度で0.5M塩化ナトリウム水溶液に溶解し、調整した。
【0079】
<Cy3標識核酸の各種マイクロビーズへの吸着の測定>
まず、上記で調整したコンディショニング液700μLをマイクロカラム内へ注入し、マイクロカラムの液相を置換した。次に上記で調整した核酸溶液400μLをマイクロカラム内へ注入し、各種マイクロビーズへ核酸を吸着させた。その後、上記で調整した洗浄液700μLをマイクロカラム内へ注入し、ベットの洗浄を行った。最後に、上記で調整したコンディショニング液700μLを再度マイクロカラム内へ注入し、マイクロカラムの液相を置換した。この間、ヒートプレートを用いて、マイクロカラムを37℃に温度制御した。
【0080】
最初にコンディショニング液を注入した後と、最後にコンディショニング液を注入した後に、蛍光測定を行った。蛍光測定は、以下のように行った。
【0081】
多芯の光ファイバー・プローブを用意し、光ファイバーの一部は照明系へ、他は受光系へ分けた。プローブの先端にはレンズを置き、直径500μmの範囲の照明と受光ができるようにした。照明は、高圧水銀光源からの光を、Cy3用の励起光用の蛍光フィルタを通して、光ファイバーの照明系の方へ入れることにより行った。蛍光の測定は光ファイバーの受光系の方から放射される蛍光を、Cy3用の蛍光用の蛍光フィルタを通して、分光器に導光して行った。
【0082】
<結果>
最初のコンディショニング液注入後の蛍光と、最後のコンディショニング液注入後の蛍光との差スペクトルを図14に示す。570nm付近にピークを持つスペクトルがCy3に起因する蛍光である。
【0083】
図14に示す通り、逆相性のOligoR3(図14中C参照)と疎水性のPOROS20HP2(図14中B参照)、アニオン性のイオン交換能を持つPOROS20HQ(図14中D参照)では、蛍光の増加が確認できる。これにより、逆相性、疎水性、アニオン性のイオン交換能を持つ多孔質マイクロビーズには、ポリヌクレオチドが吸着することが分かった。
【0084】
なお、逆相性のPOROS20R1(図14中A)では蛍光の減少がみられたが、検討の結果、ポリヌクレオチドの吸着は認められるものの、洗浄液中のSDSの作用によって、POROS20R1自信の蛍光が消失していることが分かった。
【0085】
一方、カチオン性のイオン交換能を持つPOROS20HS1(図14中E参照)、POROS20S(図14中F参照)、POROS10S(図14中G参照)では、蛍光変化はほとんど確認できなかった。これにより、カチオン性のイオン交換能を持つ多孔質マイクロビーズには、ポリヌクレオチドがほとんど吸着しないことが分かった。
【0086】
実施例1では、本発明に係るマイクロ流路系の送液促進部に充填するマイクロビーズとしては、カチオン性のイオン交換能を持つ多孔質マイクロビーズが最も好適であることが分かった。
【実施例2】
【0087】
実施例2では、カチオン性のイオン交換能を持つ多孔質マイクロビーズが、本発明に係るマイクロ流路系を用いたハイブリット形成へ影響がないか調べた。
【0088】
<マイクロビーズの調整、及び送液促進部の形成>
カチオン性のイオン交換能を持つPOROS20Sを用い、実施例1と同様の方法により、POROS20S懸濁液を調整した。実施例1と同様の方法でマイクロカラムを作製し、調整したPOROS20S懸濁液をマイクロチューブ内に注入した。注入後、マイクロチューブ中に充填されたPOROS20Sのベットを純水で十分洗浄、乾燥した。
【0089】
<ポリヌクレオチド結合マイクロビーズの調整>
Streptavidin Coated Microsphere plain(直径6μm、Polysciences)の水溶液に、5'末端にビオチンを修飾したデオキシチミジン(dT)のポリヌクレオチド(21mer)を加えて、アビジン−ビオチン結合によりポリdTが固定されたビーズ(以下、「ポリdTビーズ」と称する。)を調製した。
【0090】
<ハイブリット形成部の形成>
調整したポリdTビーズを、実施例1と同様の方法で上記で形成した送液促進部の上流へ注入し、ハイブリット形成部を形成し、2層のマイクロカラムとした。
【0091】
<コンディショニング液・洗浄液・核酸溶液の調整>
実施例1と同様に、コンディショニング液、洗浄液を調整した。また、核酸溶液として、3’末端をCy3で標識した120-merのポリ(dA)のポリデオキシヌクレオチドを、5μMの濃度で0.5M塩化ナトリウム水溶液に溶解し、調整した。
【0092】
<ハイブリット形成、及び蛍光測定>
実施例1と同様の方法で、最初のコンディショニング液の注入、核酸溶液の注入、洗浄液の注入、最後のコンディショニング液の注入を順番に行った。最初にコンディショニング液を注入した後と、最後にコンディショニング液を注入した後に、核酸溶液中のCy3標識したポリdA配列とポリdTビーズ上ポリdT配列間のハイブリット形成を、実施例1と同様の方法で蛍光測定した。
【0093】
<結果>
最初のコンディショニング液注入後の蛍光と、最後のコンディショニング液注入後の蛍光との差スペクトルを図15に示す。図15に示す通り、Cy3に起因する蛍光の増加が観察された。これにより、ハイブリット形成部において、ハイブリット形成が行われたことが確認できた。
【0094】
実施例2では、カチオン性のイオン交換能を持つ多孔質マイクロビーズを用いても、ハイブリット形成に影響を与えないことが分かった。
【0095】
実施例1、及び2の結果から、ハイブリット形成部を、カチオン性のイオン交換能を持つ多孔質マイクロビーズを充填した送液促進部で挟み込み、3層化することも可能であると示唆された。即ち、ハイブリット形成部の上流に送液促進部を形成しても、核酸がほとんど吸着しないため、ハイブリット形成部においての核酸濃度や量の低下はないと考えられる。
【実施例3】
【0096】
実施例3では、SDSを常時含んだ液相を用いる場合のハイブリット形成への影響、及びハイブリット形成部に、ポリdTビーズとカチオン性のイオン交換能を持つ多孔質マイクロビーズを混合したベットを用いた場合のハイブリット形成への影響をそれぞれ調べた。
【0097】
<混合マイクロビーズ懸濁液の調整>
実施例2と同様の方法でポリdTビーズを、実施例1と同様の方法により、カチオン性のイオン交換能を持つPOROS20S懸濁液をそれぞれ調整した。調整したそれぞれの懸濁液を、ポリdTビーズの重量比が、0%、25%、50%、100%となるように混合した。
【0098】
<送液促進部・ハイブリット形成部の形成>
実施例1と同様の方法でマイクロカラムを作製し、調整したPOROS20S懸濁液をマイクロチューブ内に注入した。注入後、マイクロチューブ中に充填されたPOROS20Sのベットを純水で十分洗浄、乾燥して、送液促進部を形成した。
【0099】
調整した混合マイクロビーズ懸濁液を、上記で形成した送液促進部の上流へ、実施例1と同様の方法で注入し、ハイブリット形成部を形成し、2層のマイクロカラムとした。
【0100】
<コンディショニング液・洗浄液・核酸溶液の調整>
コンディショニング液、及び洗浄液として、0.1%SDSを含有した0.5M塩化ナトリウム水溶液を調製した。核酸溶液として、3’末端をCy3で標識した120-merのポリ(dA)のポリデオキシヌクレオチドを、5μMの濃度で、0.1%SDSを含有する0.5M塩化ナトリウム水溶液に溶解し、調整した。
【0101】
<ハイブリット形成、及び蛍光測定>
実施例1と同様の方法で、コンディショニング液の注入、核酸溶液の注入、洗浄液の注入を順番に行った。コンディショニング液を注入した後と、洗浄液を注入した後に、核酸溶液中のCy3標識したポリdA配列とポリdTビーズ上ポリdT配列間のハイブリット形成を、実施例1と同様の方法で蛍光測定した。
【0102】
<結果>
コンディショニング液注入後の蛍光と、洗浄液注入後の蛍光との差スペクトルを図16に示す。図16に示す通り、Cy3に起因する蛍光の増加が観察された。これにより、ハイブリット形成部において、ハイブリット形成が行われたことが確認できた。即ち、SDSを常時含んだ液相を用いても、ハイブリット形成に影響はないことが分かった。
【0103】
また、図16に示す通り、蛍光強度は、ポリdTビーズの含有量に従って増加する傾向がみられた(図16中A〜D参照)。そこで、ポリdTビーズの含有量に対しての570nmでの蛍光の増加を図17にプロットしたところ、ほぼ比例していることが分かった。即ち、ハイブリット形成部に、ポリdTビーズとカチオン性のイ
オン交換能を持つ多孔質マイクロビーズを混合したベットを用いても、ハイブリット形成に影響を与えないことが分かった。
【0104】
実施例3では、本発明に係るマイクロ流路系において、SDSを常時含んだ液相を用いることが可能であることが確認できた。このことから、蛍光測定のための液相の置換が不要となり、総測定時間を大幅に短縮できることが明らかとなった。
【0105】
また、本発明に係るマイクロ流路系のハイブリット形成部において、ポリdTビーズとカチオン性のイオン交換能を持つ多孔質マイクロビーズを混合したベットを用いることが可能であることも確認できた。このように、多孔質マイクロビーズを、送液促進部だけでなく、ハイブリット形成部へも用いることができると、送液促進だけでなく、試料に起因する目詰まりを減少できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係る流路系は、多孔質マイクロビーズへの核酸の吸着を防止できるため、流路内でのハイブリダイゼーション等の反応効率を上昇させ、かつ反応条件を安定させることが可能となる。また、多孔質マイクロビーズを用いることで、マイクロ流路内での目詰まり、及びマイクロ流路内圧上昇の防止ができる。そのため、高流量送液が可能である。特に、様々な浮遊物、長鎖の核酸などを含む全RNAサンプルの送液にも有効に利用できる。更に、送液する全溶液に界面活性作用、及び核酸分解酵素失活作用を有する物質を含ませれば、総測定時間の短縮を図ることができ、RNaseやDNaseなどの核酸分解酵素による影響を抑制し、効率的で安定した測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明に係る流路系の一実施形態を示す図である。
【図2】流路系1内に充填されているハイブリット形成用ビーズ21の表面上の物質構成の一例を模式的に示す図である。
【図3】ハイブリット形成用ビーズ21に保持された核酸鎖Nとターゲット核酸Xがハイブリット形成する様子を模式的に示す図である。
【図4】図2とは異なる実施形態のハイブリット形成用ビーズ22の表面上の物質構成を模式的に示す図である。
【図5】ハイブリット形成用ビーズ22に保持されたリンカーLとターゲット核酸Xが相補結合する様子を模式的に示す図である。
【図6】ハイブリット形成用ビーズ22にリンカーLを介して保持された状態のターゲット核酸Xとプローブ核酸Yがハイブリダイゼーションする様子を模式的に示す図である。
【図7】本発明に係る流路系1を用いたアッセイの工程例を示す図である。
【図8】本発明に係る流路系1aの一実施形態を示す図である。
【図9】図8とは異なる実施形態の流路系1bを示す図である。
【図10】図8、及び図9とは異なる実施形態の流路系1cを示す図である。
【図11】図8、図9、及び図10とは異なる実施形態の流路系1dを示す図である。
【図12】図8、図9、図10、及び図11とは異なる実施形態の流路系1eを示す図である。
【図13】流路系1(1a〜1e)を用いるハイブリダイゼーション検出装置の検出部の好適な実施形態の一例を示す図である。
【図14】実施例1において、最初のコンディショニング液注入後の蛍光と、最後のコンディショニング液注入後の蛍光との差スペクトルを示す図面代用グラフである。
【図15】実施例2において、最初のコンディショニング液注入後の蛍光と、最後のコンディショニング液注入後の蛍光との差スペクトルを示す図面代用グラフである。
【図16】実施例3において、コンディショニング液注入後の蛍光と、洗浄液注入後の蛍光との差スペクトルを示す図面代用グラフである。
【図17】実施例3において、ポリdTビーズの含有量に対しての570nmでの蛍光の増加を示す図面代用グラフである。
【符号の説明】
【0108】
1、1a、1b、1c、1d、1e マイクロ流路系
11 細管
12 導入部
13 排出部
2、21、22 ハイブリット形成用ビーズ
3 多孔質マイクロビーズ
111、111a、111b 反応部
112、112a、112b 送液促進部
N 核酸鎖
P プローブ核酸
X ターゲット核酸
L リンカー
F 蛍光物質
第1サンプル液
第2サンプル液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーズが充填された細管からなる流路系であって、
核酸鎖が固定されているハイブリット形成用ビーズと、
カチオン性イオン交換能を持つ多孔質マイクロビーズと、
が少なくとも充填されたカラム層を有する流路系。
【請求項2】
前記多孔質マイクロビーズは、パフュージョンクロマトグラフィー粒子であることを特徴とする請求項1記載の流路系。
【請求項3】
前記ハイブリット形成用ビーズ上では、
固定された前記核酸鎖と、ターゲット核酸とが相補結合するハイブリット形成が行われることを特徴とする請求項1記載の流路系。
【請求項4】
前記核酸鎖は同種塩基配列を有するリンカーであって、
前記ハイブリット形成用ビーズ上では、
固定された該リンカーとターゲット核酸とが相補結合する第1ハイブリット形成と、
該ターゲット核酸の一本鎖部分と送液中のプローブ核酸とが相補結合する第2ハイブリット形成と、
が行われることを特徴とする請求項1記載の流路系。
【請求項5】
前記リンカーの同種塩基配列はポリT又はポリUであり、
該ポリT又はポリUと全RNAサンプル中のポリAテール部分を有するmRNAとが相補結合する第1ハイブリット形成と、
該mRNAと送液中のプローブ核酸とが相補結合する第2ハイブリット形成と、
が行われることを特徴とする請求項4記載の流路系。
【請求項6】
前記ハイブリット形成用ビーズが少なくとも充填されている反応部と、
前記多孔質マイクロビーズが充填されている送液促進部と、
が順に層をなすことを特徴とする請求項1記載の流路系。
【請求項7】
前記反応部と、
前記反応部の上流領域に設けられた前記送液促進部と、
前記反応部の下流領域に設けられた前記送液促進部と、
からなる3層構造であることを特徴とする請求項6記載の流路系。
【請求項8】
前記ハイブリット形成用ビーズと、
前記多孔質マイクロビーズと、
が混合充填されていることを特徴とする請求項1記載の流路系。
【請求項9】
前記ハイブリット形成ビーズと前記多孔質マイクロビーズとが混合充填されている反応部と、
前記多孔質マイクロビーズが充填されている送液促進部と、
が順に層をなすことを特徴とする請求項8記載の流路系。
【請求項10】
前記反応部と、
前記反応部の上流領域に設けられた前記送液促進部と、
前記反応部の下流領域に設けられた前記送液促進部と、
からなる3層構造であることを特徴とする請求項9記載の流路系。
【請求項11】
前記流路系に送液する全溶液は、界面活性作用及び核酸分解酵素失活作用を有する物質を同濃度含む溶液であることを特徴とする請求項1記載の流路系。
【請求項12】
前記物質は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であることを特徴とする請求項11記載の流路系。
【請求項13】
請求項1記載の流路系と、
前記ハイブリット形成用ビーズ上におけるハイブリット形成を検出する検出部と、
を少なくとも備えるハイブリダイゼーション検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−102053(P2008−102053A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285776(P2006−285776)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】