説明

流量コントロール弁

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、血圧計などで使用される流量コントロール用の電磁弁に関し、特に、腕帯内の圧力を連続的かつ徐々に減圧でき、しかも再現性よく制御することのできる流量コントロール弁に関する。
【0002】
【従来の技術】血圧計には各種のものが提案されているが、腕帯内の圧力を所定値まで増加させた後その圧力を徐々に減圧してゆき、この減圧過程において各人の血圧値を測定するものがある。図5の(b)は、係る血圧計において、腕帯内の圧力を徐々に減圧する為に使用される電磁弁(等速徐々排気弁)の一例を概略断面図で図示したものである。なお、図5の(a)は、この電磁弁の正面図を図示したものである。
【0003】この電磁弁は、内管1を通して腕帯部やポンプ部と接続されるフロントケース2と、オリフィスパッキン3を介して内管1の圧力流出口1-1を開閉する駆動軸(アーマチュア)4と、電磁力に基づいて駆動軸4を図5の左方向に駆動する電磁コイル5などで構成されている。ここで、圧力流出口1-1とオリフィスパッキン3とが圧接される各端面は、共に平坦面になっており、しかも、圧接用の端面は互いに平行関係となるよう形成されている。
【0004】駆動軸4を移動させる電磁コイル5の周りには、ヨーク6とプレート7とが備えられており、このヨーク6とプレート7はマグネット8によって励磁されている。また、駆動軸4にはコイルバネ19が当接されており、コイルバネ19の作用によって図5の右方向に付勢されている。尚、10はフレーム部、11はターミナルである。
【0005】次に、以上の構成からなる電磁弁を利用して血圧測定をする場合の一例を説明する。先ず、電磁コイル5に所定値の電流を流して電磁力を発生させ、この電磁力によって駆動軸4を図5の左向きに移動させる。すると、駆動軸4先端部のオリフィスパッキン3が圧力流出口1-1に圧接されるので、内管部分1は完全に閉塞状態となる。
【0006】次に、この状態でポンプ(図示せず)を作動させて腕帯(図示せず)に空気を注入して腕帯を加圧する。その後、腕帯の減圧過程に移行するが、この時は、電磁コイル5への供給電流を徐々に減少させることによって電磁力を弱めてゆく。すると、コイルバネ19の作用によってオリフィスパッキン3が右方向に移動して圧力流出口1-1が開放されてゆくことになり、腕帯内の空気が大気中に微速排気されることになる。そして、この微速排気の過程において各人の血圧値が計測される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の流量コントロール弁では、電磁コイル5に生じる電磁力を利用して圧力流出口1-1を閉塞させ、コイルバネ19の反発力を利用して圧力流出口1-1を開放させている。この電磁力や反発力は、駆動軸4を介してオリフィスパッキン3に伝達されるのであるが、従来装置の場合には、駆動軸4を適宜に支持する部材が設けられていないので、駆動軸4のガタツキや傾き、及び軸受との引っかかり等の影響を直接受けてしまうという問題点があった。つまり、駆動軸4のガタツキなどは、そのままオリフィスパッキン3に伝達されるので、例えば血圧計で微速排気の動作を行わせる場合には微細な排気流量の制御ができないか、若しくは、動作の再現性が非常に悪いという問題点を生じていた。
【0008】この発明は、この問題点に着目してなされたものであって、簡単な構造でありながら、微細かつ連続的な排気流量を再現性よく制御できる流量コントロール弁を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用】〔請求項1に係る流量コントロール弁〕
上記の目的を達成する為、請求項1の発明は、圧縮気体を外部に流出させる圧力流出口を有するハウジングと、このハウジング内に移動可能に配置される駆動軸と、この駆動軸の先端に設けられ、前記圧力流出口に圧接される弾性部材と、電磁コイルを有し、この電磁コイルの電磁力により、前記弾性部材で圧力流出口を閉塞又は開放するように前記駆動軸を移動させる駆動軸駆動部と、中心部が駆動軸の軸方向所定の第1の位置に連結されるとともに周辺部がハウジングに連結され、駆動軸を圧力流出口の開閉方向にのみ移動するように支持する第1の支持部材と、中心部が駆動軸の前記軸方向第1の位置とは異なる第2の位置に連結されるとともに周辺部がハウジングに連結され、駆動部を圧力流出口の開閉方向にのみ移動するように支持する第2の支持部材とを備えている。
【0010】ここで、第1及び第2の支持部材の材料は特に限定されないが、例えば、薄膜状に形成された樹脂、ゴム材、金属、紙材などが該当する。また、第1及び第2の支持部材の形状や構造も特に限定されないが、例えば、弾性を有する薄膜材料を駆動軸の周り全面に形成して、その薄膜材料の周辺部を固定部分に連結すればよい。駆動軸の周りに形成される薄膜材料は、駆動軸を移動可能に支持するものであれば良いのであるから、例えば、前記形状の薄膜材料に帯状のしわを複数本形成したり、或いは一本または複数本の切り込みを入れてもよく、その形状は任意である。また、剛性の高い薄膜に一本または複数本の切り込みを入れた形状でもよい。いずれにしても、この第1及び第2の支持部材は、駆動軸が常に同じ経路で移動するように駆動軸を支持する材料、形状、構造であればよく、駆動軸の移動経路がいつも同じであることから、流量の微細な制御が容易であり且つ制御の再現性にも優れている。
【0011】なお、この第1及び第2の支持部材は、軸を駆動軸の軸方向第1と第2の位置の2か所で支持しているので、その分だけ制御の再現性などが向上する。更に、第1及び第2の支持部材の弾性力を利用して圧力流出口が開放される向きに付勢するようにしてもよく、そうすれば他のバネ部材などが不要となる。
〔請求項2に係る流量コントロール弁〕
請求項2の発明は、血圧計の排気弁として使用される請求項1に記載の流量コントロール弁であって、前記第1及び第2の支持部材は弾性力を有する薄膜状の部材で形成され、前記圧力流出口を開放する向きに前記可動部が付勢されていることを特徴としている。
【0012】この発明の場合には、可動部支持体は、薄膜状の弾性材料で形成されており、この可動部支持体が可動部をその他の固定部分に連結している。そして、可動部は、可動部支持体の弾性力によって圧力流出口が開放される向きに付勢されているので、コイルバネなどの部材は不要となる。また、流量の微細な制御が容易であり、制御の再現性に優れている点は、請求項1の場合と同様であるので、血圧計の微速排気の動作などにおいて特に有効に機能する。
〔請求項3に係るコントロール弁〕請求項3の発明は、血圧計の排気弁として使用される請求項1に記載の流量コントロール弁であって、前記可動部支持体は薄膜状の金属板に適宜な切り込みを入れて形成している。この発明の場合には、薄い金属板に切り込み(切欠き)を入れて可動支持体を形成できるので、可動支持体を簡単に形成することができ、また当該コントロール弁の組立時の扱いも簡単化できる。
【0013】
【実施例】以下、実施例に基づいて、この発明を更に詳細に説明する。図1は、この発明の一実施例である流量コントロール弁の概略断面図を図示したものである。この流量コントロール弁は、内管1を通して腕帯部やポンプ部と接続されるフロントケース2と、オリフィスパッキン3を介して内管1の圧力流出口1-1を開閉する駆動軸4と、電磁力に基づいて駆動軸4を駆動する電磁コイル5などで構成されている。そして、電磁コイル5の周りには、ヨーク6とプレート7とが備えられており、このヨーク6とプレート7はマグネット8によって励磁されている。なお、10はフレーム部、11はターミナルである。
【0014】また、駆動軸4は、フロントダンパー9-1とバックダンパー9-2を介してフレーム部10に連結されており、これが本実施例の特徴点である。図2は、図1R>1に示す流量コントロール弁のうち、フロントダンパー9-1の付近を詳細に図示したものであり、駆動軸4がフロントダンパー9-1によってフレーム10に連結されている状態を示している。ここで、フロントダンパー9-1は、駆動軸4の円周上全面に薄膜を貼って形成されており、その中心部が駆動軸4に連結され、周辺部が固定部たるフレーム10に連結されている。つまり、図2は、フィルムダンパを駆動軸4の円周上の一面に貼った実施例を示している。ダンパー部9-1,9-2は、駆動軸4を支持するように形成されているので、駆動軸4は、図2の前後方向にのみ可動し、これ以外の方向には移動しないように規制される。また、この薄膜(ダンパー)9はバネ性を有しており、ダンパー9は、常時、駆動軸4をフロントケース2の反対側に向けて付勢している。
【0015】以下、図1及び図2を参照しつつ、この実施例に係る流量コントロール弁の動作を説明する。先ず、電磁コイル5に所定値の電流を流すことによって、図1の左向きの電磁力を発生させる。すると、この電磁力はダンパー9の反発力に打ち勝って駆動軸4を図1の左方向に移動させ、オリフィスパッキン3を圧力流出口1-1に圧接して内管1を完全な閉塞状態にする。ここで、駆動軸4は、フロントダンパー9-1とバックダンパー9-2によって支持されているので、駆動軸4とオリフィスパッキン3の移動経路は常に同じ経路となる。
【0016】その後、血圧計の微速排気の過程に移行すると、電磁コイル5への供給電流を少しずつ減少させる。すると、この電流の減少に応じて電磁力が弱まるので、駆動軸4はダンパー9の弾性力によって徐々に右向きに移動し、結果として、圧力流出口1-1は微細かつ連続的に開放されてゆく。この場合にもフロントダンパー9-1とバックダンパー9-2によって駆動軸4が支持されているので、駆動軸4とオリフィスパッキン3の移動経路は常に同じであり、従って、排気特性は再現性に優れたものとなる。尚、ダンパー9-1,9-2は、駆動軸4をその両端部に近い所で支持しているので(図1参照)、駆動軸4の傾きをきびしく規制することができ、微少な排気流量を再現性良く制御することができる。また、ダンパー9は、駆動軸4の円周上の全面に渡って形成されているので、可動部分に塵などが侵入することを防止することができ、その分だけ故障も少ない。
【0017】なお、図1の流量コントロール弁の場合には、ダンー9のバネ性を利用して圧力流出口1-1を開放しているが、これに限定される必要はなく、例えば、駆動軸4を支える為だけにダンパー9を配置し、バネ性は他の部材によって得るようにしても良い。また、ダンパーの形状も図2のものには限定されず、例えば、図3八頭4に示す形状が考えられる。すなわち、図3は、ダンパー部9の別の実施例を図示したものであり、図2のように駆動軸の円周上の一面に薄膜を貼るのではなく、駆動軸4とフレーム10との間に薄膜体放射上に4本渡した実施例を示している。また、図4は、剛性の固い金属板などを駆動軸4の円周上に貼り、バネ性を調整するために適宜な切り込みを入れた実施例を示している。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、この発明に係る流量コントロール弁は、駆動軸がいつも同じ経路で移動できるよう駆動軸とハウジングとの間に、駆動軸を駆動軸の軸方向第1と第2の位置で支持する第1と第2の支持部材を設けたことを特徴としている。従って、圧力流出口を開閉する動き以外の駆動軸のガタツキ分が解消され、微細な流量でもこれを再現性よく制御することが可能となる。また、第1と第2の支持部材駆動軸軸方向異なる第1と第2の位置に各々設けているので、駆動軸の傾きや、駆動軸の傾きによる軸受との引っかかりなどを回避することができ、より高い効果を得ることが可能となる。更にまた、この発明を血圧計の微速排気弁に適用した場合には、微細かつ連続的な微速排気動作を再現性よく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例である流量コントロール弁の概略断面図を図示したものである。
【図2】図1のフロントダンパー部の周辺を詳細に図示したものである。
【図3】ダンパー部の別の実施例を図示したものである。
【図4】ダンパー部の更に別の実施例を図示したものである。
【図5】従来の流量コントロール弁の概略断面図を図示したものである。
【符号の説明】
-1 圧力流出口
3 オリフィスパッキン
4 駆動軸
5 電磁コイル
8 マグネット
-1 フロントダンパー
-2 バックダンパー
10 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】圧縮気体を外部に流出させる圧力流出口有するハウジングと、このハウジング内に移動可能に配置される駆動軸と、この駆動軸の先端に設けられ、前記圧力流出口に圧接される弾性部材と、電磁コイルを有し、この電磁コイルの電磁力により、前記弾性部材で圧力流出口を閉塞又は開放するように前記駆動軸を移動させる駆動軸駆動部と、中心部が駆動軸の軸方向所定の第1の位置に連結されるとともに周辺部がハウジングに連結され、駆動軸を圧力流出口の開閉方向にのみ移動するように支持する第1の支持部材と、中心部が駆動軸の前記軸方向第1の位置とは異なる第2の位置に連結されるとともに周辺部がハウジングに連結され、駆動軸を圧力流出口の開閉方向にのみ移動するように支持する第2の支持部材と、を備えることを特徴とする流量コントロール弁。
【請求項2】血圧計の排気弁として使用される請求項1に記載の流量コントロール弁であって、前記第1の支持部材及び第2の支持部材は弾性力を有する薄膜状の部材で形成され、前記圧力流出口を開放する向きに前記可動部が付勢されていることを特徴とする流量コントロール弁。
【請求項3】血圧計の排気弁として使用される請求項1に記載の流量コントロール弁であって、前記第1の支持部材及び第2の支持部材は薄膜状の金属板に適宜な切り込みを入れて形成していることを特徴とする流量コントロール弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3029073号(P3029073)
【登録日】平成12年2月4日(2000.2.4)
【発行日】平成12年4月4日(2000.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−203590
【出願日】平成4年7月30日(1992.7.30)
【公開番号】特開平6−47008
【公開日】平成6年2月22日(1994.2.22)
【審査請求日】平成11年6月30日(1999.6.30)
【早期審査対象出願】早期審査対象出願
【出願人】(000112565)フオスター電機株式会社 (113)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【参考文献】
【文献】特開 昭58−214084(JP,A)
【文献】特開 昭54−70681(JP,A)
【文献】特開 昭62−113977(JP,A)
【文献】特開 昭51−118123(JP,A)
【文献】特開 昭47−44230(JP,A)
【文献】実開 平1−19404(JP,U)