説明

浄化装置

【課題】水性処理液中の固体粒状物及び非水溶性油を高精度に取り除くことができる浄化装置を提供する。
【解決手段】本発明の浄化装置11は、比重の軽い油分を含む水性処理液が導入され一時的に保持されて少なくとも一部の油分を分離し上方に逃がす主空間21と、主空間21の上方に形成され分離した油分を保持する副空間22を区画する槽本体2と、主空間21に水性処理液を供給する導入部3と、主空間21に配設され水性処理液から固体粒状物をろ過するろ過手段4と、ろ過手段4でろ過された水性処理液を槽本体2より導出する導出部5と、副空間22に集められた油分を槽本体2より導出する油分導出部6と、を有することを特徴とする浄化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化装置に関し、特に水性処理液中に含まれる比重の軽い油分及び切削屑等の固形粒状物を除去し、水性処理液を再び利用できるように浄化する浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の切削作業時には、作業性向上を目的としてエマルジョン切削液(水性処理液)が用いられている。利用された水性処理液には切削に伴う切削屑等の固体粒状物及び工作機械の摺動部分の潤滑のために用いられる油分が混在し、再び利用するに際してそれらを取り除くことが行われている。固体粒状物はろ過材等でろ過することで取り除けるが(特許文献1)、油分はろ過材では十分に取り除くことが困難である。十分に油分の除去ができなければ、水性処理液は浮上する比重の軽い油分によってその表面が蓋をされた状態となり、空気と接触できず、腐敗し再利用できなくなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−212405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、水性処理液中の固体粒状物及び非水溶性油を高精度に取り除くことができる浄化装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の構成上の特徴は、比重の軽い油分を含む水性処理液が導入され一時的に保持されて少なくとも一部の前記油分を分離し上方に逃がす主空間と、前記主空間の上方に形成され分離した前記油分を保持する副空間を区画する槽本体と、
前記主空間に前記水性処理液を供給する導入部と、
前記主空間に配設され前記水性処理液から固体粒状物をろ過するろ過手段と、
前記ろ過手段でろ過された前記水性処理液を前記槽本体より導出する導出部と、
前記副空間に集められた前記油分を前記槽本体より導出する油分導出部と、
を有することである。
【0006】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記導出部から前記主空間に洗浄用流体を供給する洗浄用流体供給手段と、
前記ろ過手段に付着する前記固体粒状物を前記洗浄用流体と共に前記槽本体より排出する逆洗排出部と、を更に有することである。
【0007】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記槽本体は前記主空間をそれぞれ上方に前記副空間と連通する第1主空間と第2主空間に区画する区画壁と、
前記第1主空間と前記副空間との間に流路抵抗となる抵抗部と、
前記ろ過手段は、前記第1主空間に配置された第1ろ過手段と前記第2主空間に配置された第2ろ過手段とで構成され、
前記導出部は前記第1ろ過手段でろ過された前記水性処理液を前記第2主空間に送る中間導通部分と、前記第2ろ過手段でろ過された前記水性処理液を前記槽本体より導出する導出部分とで構成されることである。
【0008】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項3において、前記中間導通部分から前記第1主空間及び前記導出部分から前記第2主空間に前記洗浄用流体を供給する洗浄用流体供給手段と、
前記第1ろ過手段に付着する前記固体粒状物を前記洗浄用流体と共に前記槽本体より排出する第1逆洗排出部分と、前記第2ろ過手段に付着する前記固体粒状物を前記洗浄用流体と共に前記槽本体より排出する第2逆洗排出部分とで構成される逆洗排出部と、
を更に有することである。
【0009】
また請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項3又は4において、前記第2ろ過手段は前記第1ろ過手段よりろ過精度が高いことである。
【0010】
また請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項3〜5の何れか1項において、前記副空間を介した前記第1主空間から前記第2主空間への流量は、前記中間導通部分を介した前記第1主空間から前記第2主空間への流量より少ないことである。
【0011】
また請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜6の何れか1項において、前記油分導出部は開閉弁を有することである。
【0012】
また請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜7の何れか1項において、前記導出部と前記導入部との間に位置する前記水性処理液を貯液可能な貯液タンクを更に有することである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明においては、槽本体が主空間と主空間内の水性処理液から分離した油分を保持する副空間とに区画され、且つ主空間にろ過手段が配設されるため、水性処理液中の油分は副空間に分離した後、固体粒状物を主空間内のろ過手段により除去することができる。すなわち、ろ過手段により固体粒状物を除去すると共に、副空間内に分離した油分を保持させることによりろ過手段とは離隔された部位にて油分除去を行うことが可能になり、固体粒状物除去と油分除去とをそれぞれ適正に行うことが可能になる。
【0014】
請求項2に係る発明においては、洗浄用流体供給手段によって導出部から洗浄用流体を供給し、逆洗排出部によってろ過手段に付着した固体粒状物が洗浄用流体と共に槽本体から排出することで、ろ過手段に付着した固体粒状物を取り除くことができるため、ろ過手段の寿命が長く、経済的であり且つろ過手段の交換の手間も削減できる。また、逆洗排出部を導入部とは別に設けていることから洗浄すべき水性処理液を逆洗操作により汚染するおそれを少なくできる利点もある。
【0015】
請求項3に係る発明においては、主空間は副空間にそれぞれ連通する第1主空間と第2主空間とに区画壁によって区画されており、第1主空間と副空間との間に抵抗部を有する。そして、第1主空間に第1ろ過手段、第2主空間に第2ろ過手段が配置され、第1ろ過手段でろ過された水性処理液は中間導通部分によって第2主空間に送り込まれ、第2ろ過手段でろ過されて導出部分によって槽本体から導出される。つまり、本発明に係る浄化装置は請求項1に係る浄化装置を直列に接続したような形態ではあるが、副空間を共通しているため、油分除去に必要な部材の数は低減可能である。このような構成とすることで、固体粒状物は2つのろ過手段によってろ過されるため洗浄効果がアップする。そして、抵抗部により第1主空間から副空間への流れが抑制されるため、水性処理液のほとんどは第1ろ過手段でろ過されて第2主空間へ送り込まれ、比重の軽い油分が副空間へと流れ込みやすい。結果、固体粒状物及び油分をより確実に除去することができる。
【0016】
請求項4に係る発明においては、洗浄用流体供給手段によって中間導通部分から第1主空間及び導出部分から第2主空間に洗浄用流体を供給し、逆洗排出部によって第1及び第2ろ過手段に付着する固体粒状物を槽本体から排出することができるため、ろ過手段の寿命が長く、経済的且つろ過手段の交換の手間も削減できる。また、逆洗排出部を導入部とは別に設けていることから洗浄すべき水性処理液を逆洗操作により汚染するおそれを少なくできる利点もある。
【0017】
請求項5に係る発明においては、第1ろ過手段と第2ろ過手段とでろ過精度が異なり、且つ第2ろ過手段のろ過精度が高いため、ろ過手段のろ過能力の低下を抑制でき、且つ水性処理液のろ過をより確実に行うことができる。
【0018】
請求項6に係る発明においては、水性処理液が第1ろ過手段でろ過されて第2主空間に送り込まれる量が副空間を介した流れより多いため、水性処理液を第1ろ過手段でろ過し、第2ろ過手段でろ過した後に槽本体から外部に導出される。そして、比重の軽い油分は抵抗部を介して副空間に流れ込むため、僅かに含有する油分が優先的に副空間に移動すると共に、第1ろ過手段を通過しない副空間を介する水性処理液の流れは低減することができるので固体粒状物及び油分をより確実に除去することができる。
【0019】
請求項7に係る発明においては、水性処理液の油分導出部を介した漏出を防止する目的で開閉弁を油分導出部に有している。そのため、ろ過作業を行う間にその開閉弁を閉状態にすることで水性処理液の漏出を抑制した状態で、より確実な油分の除去を行うことができる。なお、開閉弁を閉じた状態にしていても副空間は主空間の上方に位置するために油分はその比重差により副空間に移動させることができる。
【0020】
請求項8に係る発明においては、導入部と導出部との間に水性処理液を貯液する貯液タンクを有することで、導入部から槽本体を介してろ過された水性処理液を導出部から貯液タンクに戻すことで、再び導入部から槽本体でろ過することができる。結果、水性処理液を繰り返し浄化できるため、より綺麗な水性処理液へと再生可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態1の浄化装置11の構成を示す説明図である。
【図2】本実施形態2の浄化装置12の構成を示す説明図である。
【図3】本実施形態2の浄化装置12に準じた装置を用いた水性処理液の浄化実験の結果を表で表した説明図である。
【図4】本実施形態2の浄化装置12に準じた装置を用いた水性処理液の浄化実験の結果をグラフで表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の代表的な実施形態を図1〜図4を参照して説明する。
【0023】
(実施形態1)
本実施形態1の浄化装置11は、図1に示されるように、槽本体2と、導入部3と、ろ過手段4と、導出部5と、油分導出部6と、洗浄用流体供給手段7と、逆洗排出部8とを有する。本実施形態の浄化装置は水性処理液の浄化装置であり、水性処理液は比重が小さい油分と固体粒状物とを被浄化物として僅かに含む。油分は水性処理液には溶解できず、比重差により水性処理液から分離する。以下、本実施形態において水性処理液と記載した場合には被浄化物を含む場合もある。
【0024】
槽本体2は、主空間21と副空間22とに区画され、主空間21と副空間22とは抵抗部23によって連通している。主空間21には、水性処理液が導入され一時的に保持され、水性処理液中の油分が比重差により分離し上方に逃れる。副空間22には、主空間21の上方に形成され、抵抗部23を介して主空間21に接続される。主空間21内にて分離した油分は抵抗部23を通過して副空間22内に保持される。抵抗部23は、主空間21と副空間22とを区画する区画天井24に開口する孔を区画し、その孔径及び区画天井24の厚み(孔の長さ)により水性処理液の流れを規制する。
【0025】
導入部3は、主空間21の上方に開口する導入口25に一端が接続される開閉可能な開閉弁31と、開閉弁31の他端に管33を介して水性処理液を供給するモータポンプ32とを有する。導入部3は、モータポンプ32を制御することにより主空間21に供給される水性処理液の流量を調整する。開閉弁31はモータポンプ32により水性処理液を供給する際には開状態に保持し、モータポンプ32を停止した際には閉状態に保持する。
【0026】
ろ過手段4は、固体粒状物をろ過可能な円筒状のろ過フィルターであり、一端が区画天井24に固定され、他端が主空間21下方に開口する導出口26に接続され、主空間21内に配設される。ろ過フィルターの孔のサイズは、除去したい固体粒状物のサイズに合わせて選択可能である。また、ろ過フィルターは、水性処理液の固体粒状物の混入割合、水性処理液の量などを考慮し、複数配設することができる。ろ過フィルターを複数配設する場合にはその目開きを全て同じにすることもできるし、水性処理液の流れの上流側からその目開きを順次小さくしていくこともできる。
【0027】
導出部5は、導出口26に接続する切替弁51を有する。導出部5は、ろ過手段4によってろ過された水性処理液を槽本体2から外部に導出・回収する手段である。
【0028】
油分導出部6は、副空間22の上方に開口した油分導出口27に接続され開閉可能な開閉弁61を有する。油分導出部6を介して、副空間22に溜まった油分を外部に導出する。
【0029】
洗浄用流体供給手段7は、切替弁51を介して導出口26に接続され、導出口26から洗浄用流体(洗浄用エアー)を主空間21に供給する。供給された洗浄用流体はろ過手段4を通過しろ過手段に付着した固体粒状物を除去できる。前述した切替弁51は、槽本体2から外部への水性処理液の導出(導出状態)、洗浄用流体供給手段7から洗浄用流体の供給(供給状態)、導出及び供給の停止(閉状態)の3つの状態を切り替え可能な弁である。
【0030】
逆洗排出部8は、主空間21の下方に開口する逆洗排出口28に接続する開閉可能な開閉弁81を有し、洗浄用流体供給手段7によって供給された洗浄用流体を水性処理液と共に槽本体2から外部に排出する。
【0031】
本実施形態1の浄化装置11は、更に、設備タンク(貯液タンク)91、バケットストレーナ92及び廃油用タンク93を有する。
【0032】
設備タンク91は、バケットストレーナ92を介して導入部3と接続し、槽本体2で浄化する水性処理液を貯液可能なタンクである。設備タンク91は、更に導出部5の切替弁51に接続し、槽本体2で浄化された水性処理液が戻ってくる。設備タンク91は、バケットストレーナ92に管911で接続し、導出部5の切替弁51に管912で接続する。
【0033】
バケットストレーナ92は設備タンク91と導入部3のモータポンプ32との間に位置し、槽本体2に供給する水性処理液中の比較的大きな固体粒状物をろ過する部材である。バケットストレーナ92は必ずしも配置する必要ななく、サイズの大きな固体粒状物の除去を目的とするものである。バケットストレーナ92は、設備タンク91に管911で接続され、モータポンプ32にも管921で接続される。
【0034】
廃油用タンク93は、油分導出部6及び逆洗排出部8に接続され、液体を貯液可能なタンクである。油分導出部6の開閉弁61に管931で接続され、逆洗排出部8の開閉弁81に管932で接続される。廃油用タンク93には、水性処理液中の油分及びろ過手段4によってろ過された固体粒状物を含んだ液体(廃油)が排出される。
【0035】
次に、本実施形態1の浄化装置11の浄化処理過程を説明する。
【0036】
まず、導入部3の開閉弁31は開状態、油分導出部6の開閉弁61は閉状態、導出部5の切替弁51は導出状態、そして逆洗排出部8の開閉弁81は閉状態とする。導入部3のモータポンプ32を作動させ、設備タンク91から水性処理液をバケットストレーナ92、導入部3、の順に槽本体2の主空間21に流していく。設備タンク91から流出する水性処理液は、管911を矢印A方向に流れ、バケットストレーナ92でサイズの大きい固体粒状物がろ過されて取り除かれる。そして、主空間21に導入した水性処理液の一部は抵抗部23から副空間22に流入する(矢印B方向)。水性処理液中の油分は浮上し、主空間21の上方に移動するため、抵抗部23から副空間22へと逃れる。また、副空間22に一部の水性処理液が流入した場合も液中の油分が浮上するため、油分は副空間22の上方に水性処理液と分離した状態で保持される。主空間21に導入した水性処理液は、ろ過手段4でろ過され(矢印F方向)、導出口26から切替弁51を通過して、槽本体2から導出され(矢印C方向)、設備タンク91に還流する。一度、槽本体2を経由した水性処理液は、ろ過手段4でろ過され、液中の油分も副区間22へと分離されている。更にモータポンプ32の作動を続けることで、水性処理液が槽本体2と設備タンク91とを循環し、繰り返しろ過され、残っている油分は繰り返し副空間22に分離されるため、より浄化された水性処理液に再生することができる。そして、副空間22に溜まった油分は、適宜、油分導出部6の開閉弁の開閉弁61を開状態とすることで、油分導出口27から管931を矢印D方向に流通して廃油用タンク93に排出することができる。開閉弁61を開状態にした状態でモータポンプ32を作動させると、抵抗部23を介して加えられる水性処理液の圧力により副空間22内に保持された油分が開閉弁61を介して外部に流れていくことになる。開閉弁61は、水性処理液の油分の汚染度によって定期的に開状態とする。汚染度は水性処理液がどのような工作機械に用いられたかによって、経験的に導き出すことができる。
【0037】
また、設備タンク91を工作機械と接続することで、工作機械を作動させ、水性処理液を機械の潤滑や温度上昇抑制に使用しながら、浄化装置1で浄化する構成とすることもできる。
【0038】
次に、本実施形態1の浄化装置11のろ過手段4を洗浄する逆洗処理過程を説明する。まず、導入部3の開閉弁31は閉状態、油分導出部6の開閉弁61は閉状態、導出部5の切替弁51は供給状態、そして逆洗排出部8の開閉弁81は開状態とする。逆洗用流体供給手段7から逆洗用エアーを供給する(矢印E方向)。逆洗用エアーは切替弁51を経由し、導出口26からろ過手段4を介して主空間21に流入する。逆洗用エアーは、水性処理液がろ過手段4を通過するのと逆方向(矢印R方向)に流れ、ろ過手段4の孔に詰まっている固体粒状物を取り除く。そして、逆洗排出部8の逆洗排出口28から水性処理液、エアーと共に固体粒状物が主空間21から排出され、管932を流通して廃油用タンク93に流れ込む(矢印G方向)。ろ過フィルターを洗浄する洗浄用流体としては、逆洗用エアーに代えて、水性処理液等の流体を用いることもできる。
【0039】
ろ過手段4の洗浄は、定期的に、処理した水性処理液量で判定、あるいは主空間21内やモータポンプ32の出口に取り付けた圧力検出センサから得られる圧力の変化で判定し、ろ過手段4の目詰まりに伴う圧力上昇を検知して自動的に逆洗処理過程を行うこと等が考えられる。圧力検出センサは、例えば、導入部3のモータポンプ32と開閉弁31との間に設置することができる。
【0040】
本実施形態1の浄化装置11によれば、槽本体2が主空間21と主空間21内の水性処理液から分離した油分を保持する副空間22とに区画され、且つ主空間21にろ過手段4が配設されるため、水性処理液中の油分は副空間22に分離した後、固体粒状物を主空間21内のろ過手段4により除去することができる。すなわち、ろ過手段4により固体粒状物を除去すると共に、副空間22内に分離した油分を保持させることによりろ過手段4とは離隔された部位にて油分除去を行うことが可能になり、固体粒状物除去と油分除去とをそれぞれ適正に行うことが可能になる。
【0041】
そして、浄化装置11は、油分導出部6が開閉弁61を有するため、開閉弁61が閉状態で副空間22に油分が逃げ込みやすく、より確実な油分の除去を行うことができる。
【0042】
また、浄化装置11は、導入部3と導出部5との間に水性処理液を貯液する設備タンク91を有することで、導入部3から槽本体2を介してろ過された水性処理液を導出部5から設備タンク91に送ることで、再び導入部から槽本体でろ過することができる。結果、水性処理液を繰り返し浄化できるため、より綺麗な水性処理液へと再生可能である。
【0043】
更に、浄化装置11は、洗浄用流体供給手段7によって導出部6から洗浄用エアーを供給し、逆洗排出部8によってろ過手段4に付着した固体粒状物が洗浄用エアーと共に槽本体2から排出することで、ろ過手段4に付着した固体粒状物を取り除くことができるため、ろ過手段4の寿命が長く、経済的であり且つろ過手段の交換の手間も削減できる。また、逆洗排出部8を導入部3とは別に設けていることから洗浄すべき水性処理液を逆洗により汚染するおそれを少なくできる利点もある。
【0044】
(実施形態2)
本実施形態2の浄化装置12は、実施形態1の浄化装置11と基本的に同様の構成であり、作用効果も同様の作用効果を有する。以下、異なる部分について主に説明する。
【0045】
本実施形態2の浄化装置12は、主空間21が第1主空間211と第2主空間212とに区画壁29によって区画される。区間壁29は、区間天井24から下方に延設される板状部材であり主空間21を区画する。第1主空間211と副空間22との間の区間天井24には流路抵抗となる抵抗部23が形成されており、第2主空間212と副空間22との間の区間天井24には両空間を連通するための連通部20が形成されている。
【0046】
第1主空間211には第1ろ過手段41が配設され、第2主空間212には第2ろ過手段42が配設される。第1ろ過手段41は、固体粒状物をろ過可能な円筒状のろ過フィルターであり、一端が区画天井24に固定され、他端が第1主空間211下方に開口する第1導出口261に接続される。第2ろ過手段42は、固体粒状物をろ過可能な円筒状のろ過フィルターであり、一端が区画天井24に固定され、他端が第2主空間21下方に開口する第2導出口(導出部分)262に接続される。第1ろ過手段41及び第2ろ過手段42のろ過フィルターの目開きのサイズは、除去したい固体粒状物のサイズに合わせて選択可能であり、それぞれ1以上を各主空間に配設可能である。そして、第2ろ過手段42は、第1ろ過手段41よりろ過精度が高い。第1導出口261から導出する水性処理液は中間導通部分52によって第2導入口251から第2主空間212に導入する。つまり、水性処理液は、第1主空間211でろ過され、次に第2主空間212でろ過精度の異なるろ過フィルターでろ過され、槽本体2から導出される。
【0047】
副空間22を介した第1主空間211から第2主空間212への流量は、中間導通部分52を介した第1主空間211から第2主空間212への流量より少ない。そして、連通部20の副空間22から第2主空間21への流れは、油分の浮上を阻害しない程度である。つまり、連通部20における水性処理液の流れは油分が浮上する流れIに対向する方向に流れているため、連通部20における水性処理液の流れの速さは油分が浮上する流れIの速さよりも小さくすることで油分の浮上を適正に行うことができる。なお、油分が浮上する流れの速さは油分の粒径、油分と水性処理液との比重差、油分の帯電などにより決定される。
【0048】
第1主空間211及び第2主空間212は、それぞれ第1逆洗排出口281及び第2逆洗排出口282が開口し、それぞれに開閉可能な開閉弁811及び開閉弁812が接続される。洗浄用流体供給手段7は、第1導出口261及び第2導出口262に切替弁511、512を介して接続する。
【0049】
次に、実施形態2の浄化装置12の浄化処理過程を説明する。
【0050】
まず、導入部3の開閉弁31は閉状態、油分導出部6の開閉弁61は閉状態、導出部5の切替弁511、512は導出状態、そして逆洗排出部8の開閉弁811及び812は閉状態とする。導入部3のモータポンプ32を作動させ、矢印A方向に設備タンク91から水性処理液をバケットストレーナ92、導入部3、槽本体2の第1主空間211の順に流し入れる。第1主空間211に導入した水性処理液の一部が抵抗部23から副空間22に流入する(矢印B方向)。水性処理液中の油分は浮上し、第1主空間211の上方から抵抗部23を通過して副空間22へと逃れる。また、副空間22に一部の水性処理液が流入した場合も液中の油分が浮上するため、油分は副空間22の上方に水性処理液と分離した状態で溜まる。第1主空間211に供給された水性処理液は、ほとんどが第1ろ過手段41でろ過され(矢印F方向)、第1導出口261から切替弁511を介して中間導通部分52を通過して第2主空間212に導入する(矢印H方向)。第2主空間212に導入した水性処理液中の油分は、連通部20を通過して、副空間22に逃れる(矢印I方向)。そして、第2主空間212の水性処理液は、そのほとんどが第2ろ過手段42によってろ過され、第2導出口262から切替弁512を介して槽本体2から導出され(矢印C方向)、設備タンク91に還流する。実施形態1の浄化装置11と同様に、水性処理液は槽本体2を循環し、繰り返しろ過され、油分も副空間22に逃れるため、より浄化された水性処理液に再生することができる。そして、副空間22に溜まった油分は、適宜、油分導出部6の開閉弁の開閉弁61を開状態とすることで、油分導出口27から管931を矢印D方向に流通して廃油用タンク93に排出することができる。
【0051】
次に、本実施形態2の浄化装置12のろ過手段41及び42を洗浄する逆洗処理過程を説明する。
【0052】
まず、導入部3の開閉弁31は閉状態、油分導出部6の開閉弁61は閉状態、導出部5の切替弁511及び512は供給状態、そして逆洗排出部8の開閉弁811及び812は開状態とする。逆洗用流体供給手段7から逆洗用エアーを供給する(矢印E方向)。逆洗用エアーは切替弁511を経由し、第1導出口261から第1ろ過手段41を介して第1主空間211に流入する(矢印R方向)。また、逆洗用エアーは切替弁512を経由し、第2導出口262から第2ろ過手段42を介して第2主空間212に流入する(矢印R方向)。逆洗用エアーは、第1ろ過手段41及び第2ろ過手段42の孔に詰まった固体粒状物を取り除く。そして、それぞれ逆洗排出部8の第1逆洗排出口281及び第2逆洗排出口282から水性処理液、エアーと共に固体粒状物が第1主空間211及び第2主空間212から排出され、管932及び管933を流通して廃油用タンク93に流れ込む(矢印G方向)。
【0053】
本実施形態2の浄化装置12によれば、主空間21は副空間22にそれぞれ連通する第1主空間211と第2主空間212とに区画壁29によって区画されており、第1主空間211と副空間22との間に抵抗部23を有する。そして、第1主空間211に第1ろ過手段41、第2主空間212に第2ろ過手段42が配置され、第1ろ過手段41でろ過された水性処理液は中間導通部分52によって第2主空間212に送り込まれ、第2ろ過手段42でろ過されて第2導出口(導出部分)262によって槽本体2から導出される。つまり、本発明に係る浄化装置12は実施形態1の浄化装置11を直列に接続したような形態ではあるが、副空間212を共通しているため、油分除去に必要な部材の数は低減可能である。このような構成とすることで、固体粒状物は2つのろ過手段によってろ過されるため洗浄効果がアップする。そして、抵抗部23により第1主空間211から副空間22への流れが抑制されるため、水性処理液のほとんどは第1ろ過手段41でろ過されて第2主空間212へ送り込まれ、比重の軽い油分が副空間22へと流れ込みやすい。結果、固体粒状物及び油分をより確実に除去することができる。
【0054】
また、第1ろ過手段41に付着していた固体粒状物は、第1導出口261から洗浄用エアーが供給され、第1逆洗排出口281から水性処理液、エアーと共に排出され、第2ろ過手段42に付着していた固体粒状物は、第2導出口262から洗浄用エアーが供給され、第2逆洗排出口282から水性処理液、エアーと共に排出される。そのため、各主空間のろ過手段は、目詰まりをしても適宜洗浄して、水性処理液の浄化を再開することができる。
【0055】
(実験)
本実施形態2の浄化装置12に準じた装置を用いて水性処理液の浄化を行った。
【0056】
浄化装置2の槽本体2は、直径267.4mm×高さ500mmの円筒形状で、容量は31リットルであった。バケットストレーナ92は、直径267.4mm×高さ250mmの円筒形状で、容量は19リットルであった。バックストレーナ92は目開き250μm(60メッシュ)のフィルターを介して水性処理液(エマルジョン切削液)が流れるようにした。第1ろ過手段41は、ろ過面積は31650平方ミリメートル、目開き20μmのフィルターを2つ平行に配設している。それぞれのフィルター毎に第1導出口261が開口している。第2ろ過手段42は、ろ過面積31650平方ミリメートル、目開き1μmのフィルターを2つ平行に配設している。それぞれのフィルター毎に第2導出口262が開口している。浄化処理能力は、最大500L/時間であり、本試験では500L/時間になるように本浄化装置に水性処理液を供給した。
【0057】
設備タンク91には水性処理液を200L貯液し、設備タンク91は切削加工機械に接続され、切削加工機械を作動し続けながら、浄化装置12を作動させた。
【0058】
水性処理液の汚染度、浮上油、残存率を経時的に測定した。水性処理液は新油の状態で汚染度、浮上油ともに0g/Lであった。ここで、汚染度は不純物の質量を測定することにより算出できる値である。また、浮上油は水性処理液を60分間静置した際に分離した油分の質量から算出した値である。なお、油分の質量は1mLを1gとして算出した。残存率はろ過前の不純物の質量を基準としてろ過後の不純物の質量の割合にて算出した。
【0059】
(結果)
結果を図3及び図4に示す。図3及び4より明らかなように、本装置を作動させる直前の水性処理液は、汚染度が0.5g/L、浮上油が30g/Lであった。本装置の作動後、一時間後に、20%の残存率にまで浄化されていた。更に、切削加工機械を作動させつつ、浄化しても2時間後以降、残存率は5%以下であった。また、pHも9に保たれており、油分の除去も適正に行われていることが裏付けられた。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態2の浄化装置12は、実施形態1の浄化装置11を2つ接続して配置した構成であるが、浄化装置11を3以上接続して配置することもできる。
【符号の説明】
【0061】
11,12:浄化装置、
2:槽本体、20:連通部、21:主空間、211:第1主空間、212:第2主空間、
22:副空間、23:抵抗部、24:区画天井、25:導入口、26:導出口、
261:第1導出口、262:第2導出口、27:油分同導出口、28:逆洗排出口、
29:区画壁、
3:導入部、31:開閉弁、32:モータポンプ、33:管、
4:ろ過手段、41:第1ろ過手段、42:第2ろ過手段、
5:導出部、51,511,512:切替弁、52:中間導通部分、
6:油分導出部、61:開閉弁、
7:洗浄用流体供給手段、
8:逆洗排出部、81,811,812:開閉弁、
91:設備タンク(貯液タンク)、911,912:管、92:バケットストレーナ、
921:管、93:廃油用タンク、931〜933:管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重の軽い油分を含む水性処理液が導入され一時的に保持されて少なくとも一部の前記油分を分離し上方に逃がす主空間と、前記主空間の上方に形成され分離した前記油分を保持する副空間を区画する槽本体と、
前記主空間に前記水性処理液を供給する導入部と、
前記主空間に配設され前記水性処理液から固体粒状物をろ過するろ過手段と、
前記ろ過手段でろ過された前記水性処理液を前記槽本体より導出する導出部と、
前記副空間に集められた前記油分を前記槽本体より導出する油分導出部と、
を有することを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
前記導出部から前記主空間に洗浄用流体を供給する洗浄用流体供給手段と、
前記ろ過手段に付着する前記固体粒状物を前記洗浄用流体と共に前記槽本体より排出する逆洗排出部と、
を更に有する請求項1に記載の浄化装置。
【請求項3】
前記槽本体は前記主空間をそれぞれ上方に前記副空間と連通する第1主空間と第2主空間に区画する区画壁と、
前記第1主空間と前記副空間との間に流路抵抗となる抵抗部と、
前記ろ過手段は、前記第1主空間に配置された第1ろ過手段と前記第2主空間に配置された第2ろ過手段とで構成され、
前記導出部は前記第1ろ過手段でろ過された前記水性処理液を前記第2主空間に送る中間導通部分と、前記第2ろ過手段でろ過された前記水性処理液を前記槽本体より導出する導出部分とで構成される請求項1に記載の浄化装置。
【請求項4】
前記中間導通部分から前記第1主空間及び前記導出部分から前記第2主空間に洗浄用流体を供給する洗浄用流体供給手段と、
前記第1ろ過手段に付着する前記固体粒状物を前記洗浄用流体と共に前記槽本体より排出する第1逆洗排出部分と、前記第2ろ過手段に付着する前記固体粒状物を前記洗浄用流体と共に前記槽本体より排出する第2逆洗排出部分とで構成される逆洗排出部と、
を更に有する請求項3に記載の浄化装置。
【請求項5】
前記第2ろ過手段は前記第1ろ過手段よりろ過精度が高い請求項3又は4に記載の浄化装置。
【請求項6】
前記副空間を介した前記第1主空間から前記第2主空間への流量は、前記中間導通部分を介した前記第1主空間から前記第2主空間への流量より少ない請求項3〜5の何れか1項に記載の浄化装置。
【請求項7】
前記油分導出部は開閉弁を有する請求項1〜6の何れか1項に記載の浄化装置。
【請求項8】
前記導入部と前記導出部との間に位置する前記水性処理液を貯液可能な貯液タンクを更に有する請求項1〜7の何れか1項に記載の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−88106(P2011−88106A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245252(P2009−245252)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(504303160)豊栄工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】