説明

浄水カートリッジ及び浄水器

【課題】簡易な構成により、ろ材が外部へ漏れ出すことを防止することができる浄水カートリッジ及びそれを備えた浄水器を提供する。
【解決手段】内部に中空流路7を有する筒形状に成形された活性炭から成るろ材1を有する浄水カートリッジ10であって、ろ材1の一端面と第1蓋部30との間及びろ材1の他端面と第2蓋部31との間で挟持された状態で、ろ材1の外面を袋状に覆う外面被覆部材2を備え、原水が、ろ材1を径方向へ流通してろ過され中空流路7に導かれた後、第2蓋部31の開口部32において外面被覆部材2を介して外部へ導かれるか、又は、第2蓋部31の開口部32から中空流路7に導かれ、ろ材1を径方向へ流通してろ過された後、外面被覆部材2を介して外部へ導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に中空流路を有する筒形状に成形された活性炭から成るろ材と、前記ろ材の一端面を押圧する第1蓋部と、前記中空流路に連通接続する開口部を有し前記ろ材の他端面を押圧する第2蓋部とから成る浄水カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、内部に中空流路を有する筒形状のろ材を有する浄水カートリッジでは、ろ材の一端面と他端面とを除く外周面に外側フィルタが設けられると共に、中空流路の内周面に内側フィルタが設けられている(特許文献1を参照。)。このような浄水カートリッジでは、原水が、筒形状のろ材の径方向外側から内側へ向けて前記ろ材の内部を流通する過程でろ過され、ろ材の内側の中空流路を介し、浄水として下流側に導かれる。
尚、上記内側フィルタは、上記ろ材が粒状活性炭等の場合、その粒状の活性炭の一部が崩れてろ材の破片となったものを、中空流路を介して浄水と共に下流側に漏出することを防止するようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−212555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の浄水カートリッジでは、ろ材破片が下流側に漏出されることを防止するため、ろ材の内部に形成された中空流路の内壁に内側フィルタを設けなければならず、部品点数が増加するとともに、構造が複雑となり製造に手間がかかるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成により、ろ材が外部へ漏れ出すことを防止できる浄水カートリッジ及びそれを備えた浄水器を提供する点にある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の浄水カートリッジは、内部に中空流路を有する筒形状に成形された活性炭から成るろ材と、前記ろ材の一端面を押圧する第1蓋部と、前記中空流路に連通接続する開口部を有し前記ろ材の他端面を押圧する第2蓋部とから成り、
その特徴構成は、前記ろ材の前記一端面と前記第1蓋部との間及び前記ろ材の前記他端面と前記第2蓋部との間で挟持された状態で、前記ろ材の外面を袋状に覆う外面被覆部材を備え、
原水が、前記ろ材を径方向へ流通してろ過され前記中空流路に導かれた後、前記第2蓋部の前記開口部において前記外面被覆部材を介して外部へ導かれるか、又は、前記第2蓋部の前記開口部から前記中空流路に導かれ、前記ろ材を径方向へ流通してろ過された後、前記外面被覆部材を介して外部へ導かれる点にある。
【0007】
上述したように、中空流路を有するろ材は、特にその中空流路の内面近傍に位置するろ材が、長期の使用等により崩れろ材の破片となり、当該ろ材の破片が浄水に混じる虞があるが、上記特徴構成によれば、ろ材の外面を袋状に覆う外面被覆部材が、ろ材の破片を確実に捕捉することができ、下流側に導かれる浄水にろ材の破片等が混合することを適切に防止できる。尚、ここで、外面とは、少なくともろ材の軸心方向に沿って設けられた外側面とその両端面を含むものである。
また、本発明の浄水カートリッジでは、ろ材の外面を外面被覆部材により袋状に覆っているため、中空流路の内面に内側フィルタ等を設けなくとも、ろ材が崩れて下流側に漏れ出ることを好適に防止できる。これにより、特に、ろ材の中空流路の内面に別途フィルタを設ける必要がなくなり、部品点数を抑制できると共に、簡易な構成で、比較的簡単な工程により浄水カートリッジを製造できる。
【0008】
本発明の浄水カートリッジの更なる特徴構成は、前記ろ材は、前記一端面と前記他端面とを除く外面のすべてが、原水の流入面となる点にある。
【0009】
従来の浄水カートリッジでは、フィルタ部材をろ材の外側面において径方向内側に支持するために、第1蓋部及び第2蓋部にろ材の外側面に径方向で当接してフィルタ部材を支持する鍔部を設ける必要があり、このような浄水カートリッジでは、原水が流通するろ過面積が鍔部により低減されるため、筒形状のろ材のろ過機能は十分に発揮されてなかった。
これに対し、本発明の浄水カートリッジでは、ろ材の外面を袋状に覆う外面被覆部材を設けているため、上述のようなフィルタ部材は設ける必要がなく、第1蓋部及び第2蓋部の径方向外側に鍔部等を設ける必要がなくなる。
即ち、本発明の浄水カートリッジは、上記特徴構成のように、ろ材は、一端面と他端面とを除く外面のすべてを、原水の流入面とすることができる。これにより、原水をろ材の一端面と他端面とを除く外面、即ち、外側面のすべてからろ材の径方向の内側又は外側へ流通してろ過することができる。この結果、筒形状に形成されたろ材のろ過面積である外側面は、すべて有効ろ過面積として機能することとなり、筒形状に形成されたろ材のろ過機能が効果的に発揮される。
【0010】
本発明の浄水カートリッジの更なる特徴構成は、前記外面被覆部材は、不織布から成り、その不織布シートの端部同士が熱溶着により互いに付着して前記袋状となる点にある。
尚、上記不織布は、坪量(面密度)が15g/m2〜60g/m2で、ポリプロピレン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエチレン系繊維などの合成繊維であることが好ましい。
【0011】
上記特徴構成によれば、ろ材の外面を袋状に覆う外面被覆部材が、比較的長期間原水を通水しても、破損する虞が少ない不織布により形成するので、その内部においてろ材の破片等を適切に捕捉し続けることができる。また、当該外面被覆部材は、その端部同士が熱溶着により互いに付着されているので、比較的簡単な方法で、ろ材の外面を袋状に覆うことができる。
【0012】
本発明の浄水カートリッジの更なる特徴構成は、前記外面被覆部材は、繊維状の有機系高分子物質が前記ろ材の外面に吹き付けられて成る点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、ろ材の外面に実質的に連続繊維状の有機系高分子物質が吹き付けられ、それらが互いに融着して外面被覆部材を形成するので、比較的高い強度の外面被覆部材を形成できる。これにより、特に、ろ材の外面を適切に補強して、ろ材が崩れることを効果的に抑制できる。
【0014】
本発明の浄水カートリッジを備えた浄水器の特徴構成は、前記第1蓋部及び前記第2蓋部が、前記ろ材の軸心方向でろ材側へ押圧される点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、第1蓋部及び第2蓋部が、ろ材の軸心方向で外側からろ材側へ押圧されるので、当該押圧力により、外面被覆部材は、第1蓋部とろ材の一端面との間、及び、第2蓋部及びろ材の他端面との間で、適切に保持される浄水器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の浄水カートリッジ及びそれを備えたシャワーヘッド型の浄水器の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の浄水カートリッジの拡大断面図である。
【図3】エレクトロスピニング法で作成した本発明の浄水カートリッジ及びそれを備えたシャワーヘッド型の浄水器の断面図である。
【図4】本発明の浄水カートリッジ及びそれを備えたカウンタートップ型の浄水器の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
本発明の浄水カートリッジ10及びそれを備えたシャワーヘッド型の浄水器100の第1実施形態を、図1及び図2に基づいて説明する。
本発明の浄水カートリッジ10は、図1及び図2に示すように、内部に中空流路7を有する円筒形状に成形された活性炭から成るろ材1と、ろ材1の一端面を押圧支持する第1蓋部30と、中空流路7に連通接続する開口部32を有しろ材1の他端面を押圧支持する第2蓋部31とから構成されている。
【0018】
ろ材1は、粒状活性炭及び繊維状活性炭にバインダーを混ぜたものを、内部に中空流路7を有する円筒形状に成形されている。具体的には、例えば、中空円筒状のろ材1(軸心方向の長さ120mm、内径7mm、外径28mm)を成形するに、活性炭(WHA60/140N:日本エンバイロケミカルズ社製)を20gと、バインダーとしてのポリエチレン樹脂(GUR2105:Ticona社製)を2gとを、混合して成形容器に封入して0.5Mpaで加圧した後、180℃で50分間加熱して、冷却して成形される。
【0019】
第1蓋部30は、ろ材1の中空流路7の内周面に対して当接しろ材1を径方向に位置決めする凸部51を備えている。
第2蓋部31には、ろ材1の内側に設けられた中空流路7に連通接続する開口部32が設けられている。そして、当該開口部32は、ろ材1の中空流路7の内周面に対し当接して、ろ材1を径方向に位置決めする円環状の鍔部50を備えている。更に、ろ材1の軸心方向で第2蓋部31のろ材1と反対側には、後述するシャワーヘッド浄水吐出部34の環状支持部38に外環される円環状支持部52が設けられている。当該円環状支持部52には、その周方向外側に沿って設けられた第2凹状溝部43に嵌る第2O-リング42が設けられ、シャワーヘッド浄水吐出管部34の環状支持部38との間をシールするようになっている。
【0020】
図2に示すように、上述したろ材1の外面には、それを袋上に覆う外面被覆部材2を備えている。ここで、外面とは、少なくともろ材1の軸心方向に沿って設けられた外側面と、その両端面を含むものである。当該外面被覆部材2は、ろ材1の両端面において、中空流路7が形成されている部位も覆うように構成されている。そして、当該ろ材1は、ろ材1の一端面と第1蓋部30との間、及び、ろ材1の他端面と第2蓋部31との間に挟持された状態で、その位置が保持される。
外面被覆部材2は、本実施形態において、不織布等が適用され、その端部同士が熱溶着等により接合させることで袋状とされる。
【0021】
上記浄水カートリッジ10は、本実施形態において、上記第1蓋部30を上流側とし上記第2蓋部31を下流側とした状態で、シャワーヘッド本体33に挿入可能に構成されている。
【0022】
図1に示すように、シャワーヘッド本体33は、原水の流れ方向下流側の下流側端部37を有し、それに対し、シャワーヘッド浄水流出部34の上流側端部40が、螺合接続するように構成されている。
シャワーヘッド本体33の下流側端部37は、第1凹状溝部35がその外周に沿って設けられており、そこに第1O-リング36を嵌め込んで構成されている。当該第1O-リング36は、シャワーヘッド本体33の下流側端部37に対し、シャワーヘッド浄水流出部34の上流側端部40が螺合接続された場合、両者の間をシールする機能を有する。
シャワーヘッド浄水流出部34には、浄水カートリッジ10の第2蓋部31に外嵌して、浄水カートリッジ10の径方向の位置決めをする環状支持部38が設けられている。さらに、浄水カートリッジ10の第2蓋部31を軸心方向で下流側から上流側へ押圧して、浄水カートリッジ10の軸心方向の位置決めをする押圧支持部39が設けられている。
【0023】
浄水カートリッジ10がシャワーヘッド本体33に挿入され、シャワーヘッド浄水流出部34がシャワーヘッド本体33に螺合接続されている場合、原水は、浄水カートリッジ10とシャワーヘッド本体33との間に導かれ、外面被覆部材2を介してろ材1を径方向に流通してろ過され、ろ材1の内側の中空流路7を流通して、再び外面被覆部材2を介して、第2蓋部31の開口部32からシャワーヘッド浄水流出部34の内部へ導かれる。
これにより、ろ材1の破片等が、ろ材1の外面を袋状に覆う外面被覆部材2により、確実に捕捉されることとなり、下流側に導かれる浄水にろ材1の破片等が混合することを適切に防止できる。
【0024】
〔比較試験〕
上述した本発明の浄水カートリッジ10と、従来の浄水カートリッジとの性能比較試験とその試験結果について、以下に説明する。
尚、従来の浄水カートリッジは、ろ材1の外周面に外側フィルタとして被覆部材を熱融着で付設し、ろ材を第1蓋部30及び第2蓋部31に予め設けられた10mm高さの鍔部により外嵌支持する(図示せず)ものであり、本発明の浄水カートリッジ10は、上述したように、ろ材1の一端面と他端面とを除くすべての外面(外側面)が、原水の流入面となるものである。即ち、本発明の浄水カートリッジ10の原水の流入面積は、従来の浄水カートリッジの原水の流入面積よりも、大きく構成されている。
本試験において、使用するろ材1は、以下に示すようなものであり、本発明の浄水カートリッジ10と従来の浄水カートリッジとにおいて同様のものを使用する。
ろ材1は、ピッチ系活性炭素繊維(株式会社アドール製:A−15)を70重量%と、補強材としてのピッチ系汎用炭素繊維(大阪ガスケミカル株式会社製:ドナカーボ・S)を23重量%と、熱溶融性繊維としてのアクリル繊維7重量%とをから構成されている。そして、その形状は、外径を26mm、内径が9mm、高さを120mmとされている。そして、当該ろ材1の外面には、外面被覆部材2として、ユニチカ株式会社製:エルベスS0503WDO−1050を設けている。本発明の浄水カートリッジはろ材の外面を袋状に外面被覆部材2で覆い、従来の浄水カートリッジはろ材1の外周部表面を外面被覆部材2で覆った。
〔試験条件〕
上述したようなろ材1を備えた従来の浄水カートリッジと、本発明の浄水カートリッジ10に対し、所定量の試験水(遊離残留塩素濃度:2ppm)をろ材1の外側面からろ材1を径方向に通過するように流通させ、ろ材1通過後の浄水の遊離残留塩素除去率が80%(遊離残留塩素濃度:0.4ppm)に低下するまでの積算流量を測定した。
〔試験結果〕
上記試験の結果、浄水の残留塩素除去率が80%以下まで低下する試験水の積算流量は、従来の浄水カートリッジを用いてろ過した場合、1510Lであるのに対し、本発明の浄水カートリッジ10を用いてろ過した場合、1800Lであった。
このことから、従来のものに比べて本発明の浄水カートリッジ10は、ろ過性能を向上できていることが実証できた。
【0025】
〔別実施形態〕
【0026】
(A)上記実施形態において、上記浄水カートリッジ10は、上記第1蓋部30を上流側とし上記第2蓋部31を下流側とした状態で、シャワーヘッド本体33に挿入可能に構成されているものを示したが、別に、上記第2蓋部31を上流側とし上記第1蓋部30を下流側とした状態で、シャワーヘッド本体33に挿入するように構成しても構わない。
この場合、原水は、前記第2蓋部31の前記開口部32から前記中空流路7に導かれ、前記ろ材1を径方向外側へ流通してろ過された後、前記外面被覆部材2を介してシャワーヘッド本体33と浄水カートリッジ10との間に導かれて、その後シャワーヘッド浄水流出部34の側へ導かれることとなる。
【0027】
(B)本発明の浄水カートリッジ10は、図4に示すように、カウンタートップ型の浄水器に対しても、好適に適用することができ、その実施形態を下記に示す。尚、上記実施形態で説明した構造については、同様の符号を付すこととし、説明を割愛することがある。
本実施形態における浄水器100は、キッチンカウンターに設置されるカウンタートップ型浄水器として構成されており、蛇口60に接続される切り替えバルブと、その切り替えバルブ61から給水ホース62を通じて原水が供給される浄水器本体63と、浄水器本体63から受け入れた原水をろ過する浄水カートリッジ10と、浄水カートリッジ10でろ過された浄水を浄水吐出口65を介して外部へ導く浄水吐出管64とを備えている。
切り替えバルブは、切り替えレバー61により、蛇口60から受け入れた原水を、給水ホース62を通じて浄水器本体63に供給して浄水を浄水吐出管64から外部へ導く浄水供給状態と、蛇口から受け入れた原水を図示しないシャワー口から吐出させる状態とに切り替え自在に構成されている。
【0028】
浄水器本体63は、円筒形状の本体ケーシング部材66と、その本体ケーシング部材66の下方に設けられ給水ホース62が接続される接続継手部材67とから構成され、接続継手部材67の中心部には、その給水ホース62から供給された原水が流通する給水路68が設けられている。
【0029】
本発明の浄水カートリッジ10は、上記接続継手部材67の給水路68と連通接続する筒形状筐体底部70と、一端で当該筒形状筐体底部70と接続すると共に他端で上記浄水吐出口65とに連通接続する吐出開口部71を有する筒形状筐体69とに外囲されている。そして、浄水カートリッジ10は、第2蓋部31の開口部32が、筒形状筐体69の吐出管開口部71に連通すると共に、第1蓋部30が、筒形状筐体底部70に当接して配置される。
【0030】
本実施形態においても、ろ材1は、上述した外面被覆部材2により袋状に覆われており、ろ材1が劣化して崩れたろ材破片が、下流側に導かれることを好適に防止する。
【0031】
上記浄水供給状態において、原水は、給水ホース62から浄水器本体の接続継手部材67に設けられた給水路68を介して、筒形状筐体69及び筒形状筐体底部70と浄水カートリッジ10との間に導かれ、浄水カートリッジ10のろ材1を径方向で外側から内側に流通することでろ過されて中空流路7に導かれ、第2蓋部31の開口部32、筒形状筐体69の吐出管開口部71、浄水吐出口65を、記載順に流通して、浄水吐出管64から外部へ導かれる。
【0032】
(C)尚、本実施形態の外面被覆部材2は、図3に示すように、上述した不織布以外にも、下記のような方法を用いて有機系高分子物質により形成することができる。この場合、ろ材1の両端面の中空流路7の形成部位に、有機系高分子物質から成る外面被覆部材2を形成可能にするため、浄水カートリッジ10の第1蓋部30には凸部51を設けず、第2蓋部31は円環状の鍔部50を設けない構成を採用することが望ましい。
即ち、外面被覆部材2は、エレクトロスピニング法により、ろ材1の外面に対し有機系高分子物質を吹き付けて、繊維状にして付着させることにより形成することができる。当該有機系高分子物質は、例えば、高温で溶融して吹き付けられるものを好適に用いることができる。溶融される有機系高分子物質としては、例えば、熱可塑性ポリマーであるポリエチレンテレフタレート、66ナイロンなどのポリアミド等が好適に用いられる。
また、有機溶媒に溶解可能な有機系高分子物質も、好適に用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートに対してはジクロロメタンとトリフルオロ酢酸の混合溶液、66ナイロンなどのポリアミドに対してはギ酸またはジメチルアセタミドを溶媒として適用することができる。
【0033】
また、外面被覆部材2は、上記エレクトロスピニング法の他に、ろ材1に対して有機系高分子物質を加圧によりろ材1の外面に付着させることによっても形成できる。この場合、ポリプロピレン(融点162℃)を芯成分とし、エチレン−プロピレン―ブテン−1三元共重合体(融点133℃)を鞘成分とした成分重量比が60:40で繊維太さが320dtexの鞘芯型熱接着性複合モノフィラメントを10mmにカットしたもの(ES繊維)3.0gを、ろ材1と共に容器に入れて加圧することにより、ろ材1の外面に対し、外面被覆部材2が形成される。
【0034】
また、外面被覆部材2は、上記エレクトロスピニング法の他に、ろ材1に対して有機系高分子物質を吸引によりろ材1の外面に付着させることによっても形成できる。この場合、ポリプロピレン(融点162℃)を芯成分とし、エチレン−プロピレン−ブテン−1三元共重合体(融点133℃)を鞘成分とした成分重量比が60:40で繊維太さが320dtexの鞘芯型熱接着性複合モノフィラメントを10mmにカットしたもの(ES繊維)3.0gを、30倍の重量の水に分散し、ろ材1と共に容器に入れる。その後、有機系高分子物質を、ろ材1を通過する状態で、吸引ポンプ等により外部へ吸引することで、繊維状の高分子化合物をろ材1の表面に付着させると共に、溶媒である水を外部に排出することにより、ろ材1の外面に対し、外面被覆部材2が形成される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の浄水カートリッジ及びそれを備えた浄水器は、簡易な構成により、ろ材が外部へ漏れ出すことを防止することができる浄水カートリッジ及び浄水器として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 :ろ材
2 :外面被覆部材
7 :中空流路
30 :第1蓋部
31 :第2蓋部
32 :開口部
35 :第1凹状溝部
36 :第1O-リング
42 :第2O-リング
43 :第2凹状溝部
100 :浄水器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中空流路を有する筒形状に成形された活性炭から成るろ材と、前記ろ材の一端面を押圧する第1蓋部と、前記中空流路に連通接続する開口部を有し前記ろ材の他端面を押圧する第2蓋部とから成る浄水カートリッジであって、
前記ろ材の前記一端面と前記第1蓋部との間及び前記ろ材の前記他端面と前記第2蓋部との間で挟持された状態で、前記ろ材の外面を袋状に覆う外面被覆部材を備え、
原水が、前ろ材を径方向へ流通してろ過され前記中空流路に導かれた後、前記第2蓋部の前記開口部において前記外面被覆部材を介して外部へ導かれるか、又は、前記第2蓋部の前記開口部から前記中空流路に導かれ、前記ろ材を径方向へ流通してろ過された後、前記外面被覆部材を介して外部へ導かれる浄水カートリッジ。
【請求項2】
前記ろ材は、前記一端面と前記他端面とを除く外面のすべてが、原水の流入面となる請求項1に記載の浄水カートリッジ。
【請求項3】
前記外面被覆部材は、不織布から成り、その不織布シートの端部同士が熱溶着により互いに付着して前記袋状となる請求項1又は2に記載の浄水カートリッジ。
【請求項4】
前記外面被覆部材は、繊維状の有機系高分子物質が前記ろ材の外面に吹き付けられて成る請求項1又は2に記載の浄水カートリッジ。
【請求項5】
上記請求項1乃至4の何れかに記載の浄水カートリッジを備えた浄水器であって、前記第1蓋部及び前記第2蓋部が、前記ろ材の軸心方向でろ材側へ押圧される浄水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−234210(P2010−234210A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83391(P2009−83391)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(591147694)大阪ガスケミカル株式会社 (85)
【出願人】(390010593)太盛工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】