説明

浄水器内蔵型吐水装置および水質浄化用カートリッジ

【課題】水質浄化用カートリッジを収容していない状態で流路切換弁を操作して浄水流路を弁開にしても原水を誤って浄水の用途に用いることがない浄水器内蔵型吐水装置。
【解決手段】水が透過可能な水質浄化材料を外周面に有し、吐水装置1に同軸的に収容されて吐水装置1の内周面との間に外周側流路25を形成するカートリッジ本体20と、カートリッジ本体20の下流側の端面を被覆するとともに、カートリッジ本体内部24に連通する接続口を穿設されて吐水装置1のカートリッジ受け10に差し込み固定可能な接続端22bを有する下流端接続部材22とを有し、カートリッジ本体20の上流側の端面を閉鎖し、下流端接続部材22に、差し込み固定時にはカートリッジ受け10に設けられて浄水流路を閉塞する止水弁17を押圧して浄水流路を開弁する押圧部22dを設けた水質浄化用カートリッジ7。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所または厨房、洗面所あるいは風呂場等で用いられ、使用時に吐出される水を浄化する機能を有した浄水器内蔵型吐水装置に関し、特に、水を浄化する水質浄化用カートリッジを交換可能に内蔵するとともに用途に応じて浄水と原水を切り換えることのできる浄水器内蔵型吐水装置、およびその水質浄化用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台所、洗面所や風呂場において、ホース等を介して水道設備の先端に取り付けられ、冷水または温水(以下、単に水という)の水質浄化能力を具備する吐水装置には、特許文献1に記載されたシャワーヘッドなどがあった。
【0003】
このシャワーヘッドは、吐出口を形成した頭部と、手で持つことのできる把持収容部とを備え、把持収容部内に水質浄化用カートリッジを交換可能に収容していた。また、頭部には外部から操作可能な流路切換弁を設けて、水が水質浄化用カートリッジを透過して浄化される浄水吐出と、原水のまま吐出される原水吐出とを切り換えることができるようになっていた。
このシャワーヘッドでは、把持収容部に水質浄化用カートリッジを収容するので重量バランスがよく取扱いがしやすかった。また、流路切換弁によって原水吐出と浄水吐出とを切り換えて使用することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3454756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のシャワーヘッドでは、使用者が把持収容部に水質浄化用カートリッジを収容し忘れて流路切換弁を操作し、浄水流路を弁開にすると、把持収容部内に流入した原水が水質浄化されることなく浄水流路を通過して吐出口から吐出されてしまう。使用者が浄水と原水とを視覚によって区別することは難しいため、この原水を誤って飲用等に用いてしまうことがあった。
また、このときに原水が浄水流路を通過するため、原水に含まれるゴミや錆などの固形物質等が浄水流路内に付着してしまうおそれがあった。その場合、その後把持収容部に水質浄化用カートリッジを収容して浄水吐出しても、しばらくの間はこれらの固形物質等を含み飲用等に適さない浄水が吐出されてしまう。
また、水質浄化用カートリッジが装着された際に、吐水装置内部に水道設備側からの原水の流入を確保しつつ、浄水流路および原水流路を形成する必要がある。特許文献1のシャワーヘッドでは、水質浄化用カートリッジの上流側の端面を把持収容部の底部に当接させる長さとすることで水質浄化用カートリッジの軸方向の位置決めを行っていたが、把持収容部の長さが異なる吐水装置に対しては、対応した長さの水質浄化用カートリッジをそれぞれ用意する必要があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、水質浄化用カートリッジを収容していない状態で流路切換弁を操作して浄水流路を弁開にしても浄水流路から原水が誤って吐出されることがなく、浄水の用途に誤って原水が用いられるのを防止することのできる浄水器内蔵型吐水装置および水質浄化用カートリッジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、上記課題が解決される手段は以下の通りである。
本発明は、吐水装置に収容される水質浄化用カートリッジであって、水が透過可能な水質浄化材料を少なくとも外周面の一部に有し、上記吐水装置に同軸的に収容されてその外周面と上記吐水装置の内周面との間に外周側流路となる隙間を形成するカートリッジ本体と、上記カートリッジ本体の下流側の端面を被覆するとともに、上記カートリッジ本体内部に連通する接続口を穿設されて上記吐水装置のカートリッジ受けに差し込み固定可能な接続端を有する下流端接続部材とを有し、上記カートリッジ本体の上流側の端面を閉鎖し、上記吐水装置内に、上記外周側流路から上記水質浄化材料を透過して上記下流端接続部材を通過した水が吐出される浄水流路と、上記水質浄化材料を透過せずに上記外周側流路を通過した水が吐出される原水流路とを形成するとともに、上記下流端接続部材に、差し込み固定時には上記カートリッジ受けに設けられて浄水流路を閉塞する止水弁もしくは流量制御弁を押圧して上記浄水流路を開弁する押圧部を設けたことを特徴とする。
なお、本発明において止水弁もしくは流量制御弁が浄水流路を「閉塞する」とは、水質浄化用カートリッジを収容せずに浄水吐出の設定にしたときに、浄水流路下流への水の流れを完全に遮断できるもののほか、水道設備の水圧によって少量の水が下流へ流れ出るものも含む。吐出水量が著しく減少すれば、使用者が異常を認識して水質浄化用カートリッジを収容し忘れていることに気づくことができる。
【0008】
また、本発明は、上記下流端接続部材には、上記吐水装置の内周面から内方向に突設した内周突起物の内径よりも大径に形成された大径部を設けたことを特徴とする。
さらに、本発明は、上記吐水装置への収容時にはこの大径部が上記内周突起物に下流側から当接することにより、上記押圧部が上記止水弁を押圧する状態を保持することを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明は、上記吐水装置が下流端付近に上記内周突起物を有する収容部上流部材と収容部下流部材とに軸方向に二分割される上記浄水器内蔵型吐水装置に収容されるカートリッジであって、上記下流端接続部材を上流側に向けて上記収容部上流部材に差し込んだ際に、上記収容部上流部材の下流端付近で上記大径部が上記内周突起物に当接して進入を阻止されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記吐水装置への収容時には、上記上流側の端面で、上記吐水装置の上流側底部の水流入口の周縁近傍に設けられた底部突起物に当接することにより、上記押圧部が上記止水弁を押圧する状態を保持することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる浄水器内蔵型吐水装置は、基端に他部品との接続端を有して内部に流路を設けた収容部と、この収容部の先端に設けられ水の吐出口を形成した頭部とを備えた吐水装置であって、上記収容部には少なくとも外周面の一部に水質浄化材料を含むカートリッジ本体を備えた水質浄化用カートリッジを同軸的に収容し、この水質浄化用カートリッジの下流端部を上記収容部または上記頭部に形成されたカートリッジ受けに差し込み固定して上記カートリッジ本体内部を上記吐出口へ連通させ、上記カートリッジ本体を透過せずに上記カートリッジ本体の外周面に沿って外周側流路を通過する際に、浄水吐出時に蓄積された蓄積物を洗い流して上記吐出口へ流出させる原水流路と、上記外周側流路から上記カートリッジ本体を透過して、上記吐出口へ連通する浄水流路とを形成し、上記水質浄化用カートリッジの下流には、上記原水流路と上記浄水流路とのいずれかを選択的に開通させるか、あるいは、流路抵抗の小さい一方を開閉する外部から操作可能な流路切換弁を組み込み、かつ、上記カートリッジ受けの下流の上記浄水流路には、弁体が下流側から弁座に押し付けられ上記浄水流路を閉塞する止水弁もしくは流量制御弁を設けるとともに、上記水質浄化用カートリッジを上記収容部に収容すると上記水質浄化用カートリッジの下流端部付近に形成された押圧部が上記弁体を押圧して上記浄水流路を開弁することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記収容部の内周面には内方向に突出する内周突起物を設け、上記水質浄化用カートリッジの下流端部付近にはこの内周突起物の内径よりも大径に形成した大径部を設け、上記水質浄化用カートリッジを上記収容部に収容すると、この大径部が上記内周突起物に下流側から当接することにより、上記押圧部が上記止水弁の弁体を押圧する状態を保持することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、上記収容部を、下流端付近に上記内周突起物を有する収容部上流部材と収容部下流部材とに軸方向に二分割可能に形成し、上記水質浄化用カートリッジの上記下流端部を上流側に向けて上記収容部上流部材に差し込んだ際には、上記収容部上流部材の下流端付近で上記大径部が上記内周突起物に当接して上記水質浄化用カートリッジの進入が阻止されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記収容部の上流側底部には水流入口を設けるとともにこの水流入口の周縁近傍には底部突起物を立設し、上記水質浄化用カートリッジを上記収容部に収容すると、上記水質浄化用カートリッジが上流端部でこの底部突起物に当接することにより、上記押圧部が上記止水弁の弁体を押圧する状態を保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吐水装置内の上記水質浄化用カートリッジの下流に、弁体が弁座に押し付けられ上記浄水流路を閉塞する止水弁を設けるとともに、上記水質浄化用カートリッジの下流端接続部材に、差し込み固定時には止水弁の弁体を押圧して浄水流路を開弁する押圧部を設けたことにより、水質浄化用カートリッジを収容し忘れて流路切換弁を浄水吐出に操作しても、止水弁が浄水流路を閉塞するため吐出口から原水が吐出されることがない。このため、使用者が誤って原水を飲用等してしまうことがない。また、原水に含まれるゴミや錆などの固形物質が浄水流路に混入することがない。
また、流量制御弁を設けた場合には、水質浄化用カートリッジを収容し忘れて流路切換弁を浄水吐出に操作しても、流量制御弁によって浄水流路から通常よりも少量の原水しか吐出されない。このため、使用者が異常を認識して、水質浄化用カートリッジを収容し忘れたことに気づき、原水等を誤って飲用等してしまうことがない。
【0016】
また、上記下流端接続部材には、上記吐水装置の内周面から内方向に突設した内周突起物の内径よりも大径に形成された大径部を設けたことにより、この大径部が内周突起物に当接して水質浄化用カートリッジが軸方向に位置決めされるため、吐水装置内の原水の水流入口、浄水流路および原水流路が維持される。このため、軸方向の位置決めのために水質浄化用カートリッジの上流側の端面を吐水装置の底部に当接させる必要がなく、水質浄化用カートリッジの長さを吐水装置内部の長さに合わせて長く形成する必要がなくなるので、水質浄化用カートリッジの規格の自由度が向上する。
また、上記水質浄化用カートリッジを上記吐水装置へ収容すると、この大径部が上記内周突起物に下流側から当接することにより、上記押圧部が上記止水弁を押圧する状態を保持するため、上記押圧部が押し戻されて止水弁が弁閉になったり、下流端接続部材がカートリッジ受けから離脱したりすることを防止して、吐水装置内に所望の浄水流路および原水流路を維持することができる。
【0017】
また、水質浄化用カートリッジが、上記吐水装置が下流端付近に上記内周突起物を有する収容部上流部材と収容部下流部材とに軸方向に二分割される上記浄水器内蔵型吐水装置に収容され、上記下流端接続部材を上流側に向けて上記収容部上流部材に差し込んだ際に、上記収容部上流部材の下流端付近で上記大径部が上記内周突起物に当接して進入を阻止されることにより、使用者が誤って水質浄化用カートリッジを軸方向逆向きに収容し吐水装置の組み立てを完了することが防止される。
【0018】
また、上記水質浄化用カートリッジを上記吐水装置へ収容すると、上記上流端閉鎖部材が、上記吐水装置の上流側底部の水流入口の周縁近傍に設けられた底部突起物に当接することにより、上記押圧部が上記止水弁を押圧する状態を保持するため、上記押圧部が押し戻されて止水弁が弁閉になったり、下流端接続部材がカートリッジ受けから離脱したりすることを防止して、吐水装置内に所望の浄水流路および原水流路を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係る水質浄化用カートリッジを収容した浄水器内蔵型吐水装置の縦断面図であり、(b)はA部の拡大図である。
【図2】同浄水器内蔵型吐水装置の流路を示すF−F線断面図である。
【図3】(a)は水質浄化用カートリッジを収容していない同浄水器内蔵型吐水装置の縦断面図であり、(b)はB部の拡大図である。
【図4】同浄水器内蔵型吐水装置の収容部の組み立てを示す縦断面図である。
【図5】同浄水器内蔵型吐水装置の収容部上流部材を示す図であり、(a)は下流側から見た正面図、(b)は側方図、(c)は上流側から見た背面図、(d)は縦断面図である。
【図6】同浄水器内蔵型吐水装置のカートリッジ受けを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側方図、(c)は縦断面図である。
【図7】同浄水器内蔵型吐水装置の止水弁の弁体を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は下流側から見た正面図、(c)は側方図、(d)は上流側から見た背面図、(e)は縦断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る水質浄化用カートリッジを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は側方図、(d)は縦断面図である。
【図9】(a)は同浄水器内蔵型吐水装置を上流側から見た図であり、(b)はC−C線断面図である。
【図10】(a)はD−D線断面図であり、(b)はE部の拡大図である。
【図11】同水質浄化用カートリッジを軸方向逆向きにして同収容部上流部材に差し込もうとした状態を示す縦断面図である。
【図12】同浄水器内蔵型吐水装置に設けた流路切換弁の分解斜視図である。
【図13】同浄水器内蔵型吐水装置の浄水吐出を示す頭部の拡大図であり、(a)は水平断面図、(b)はI部の拡大図、(c)はG−G線断面図であり、(d)はH−H線断面図である。
【図14】同浄水器内蔵型吐水装置の原水吐出を示す頭部の拡大図であり、(a)は水平断面図、(b)はJ−J線断面図、(c)はK−K線断面図である。
【図15】同浄水器内蔵型吐水装置の吐出プレートを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は底面図である。
【図16】同浄水器内蔵型吐水装置の吐出切換弁の回動部材および蓋部を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側方図、(d)は底面図である。
【図17】同回動部材および蓋部を示す図であり、(a)はL−L線断面図であり、(b)M−M線断面図であり、(c)はN−N線断面図である。
【図18】同浄水器内蔵型吐水装置のストレート吐出状態を示すO−O線断面図である。
【図19】同浄水器内蔵型吐水装置のエコシャワー吐出状態を示すO−O線断面図である。
【図20】同浄水器内蔵型吐水装置のシャワー吐出状態を示すO−O線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る浄水器内蔵型吐水装置および水質浄化用カートリッジについて説明する。
図1に示す浄水器内蔵型吐水装置1は、台所や洗面所の流し台に設けられ、水道設備の先端にホース等の他部品を介して取り付けられる。浄水器内蔵型吐水装置1は、基端にホース(図示せず)と接続するホース取付部2aを設けて直接手で持つことのできる形状に形成された把持収容部2と、この把持収容部2の先端に設けられ吐出口4a〜4cを形成された頭部3とからなり、流し台のホルダ部に保持させて固定したまま水を供給することができるとともに、把持収容部2を持って取り回し、流し台の中央から隅に至るまで水を供給することもできるようになっている。
【0021】
頭部3には、把持収容部2から略反対側の位置に浄水吐出と原水吐出とを切り換える流路切換弁の操作用押しボタン6を突出させ、下面には、水を吐出するストレート吐出口4a、内シャワー吐出口4bおよび外シャワー吐出口4cを形成している。その真上には、上流側で一度分岐した浄水流路と原水流路とが合流する集合空間部28が形成され、この集合空間部28には水の吐出形状を切り換える吐出切換弁5を設けている。
【0022】
図4に示すようにホースと頭部3との間を接続する略円筒形状の把持収容部2は、水質浄化用カートリッジ7を交換可能に収容するために軸方向に二分割され、ホース取付部2aを有する収容部上流部材8と、頭部3に一体に形成されるとともに水質浄化用カートリッジ7を差し込んで固定するカートリッジ受け10を設けた収容部下流部材9とに分離することができる。
図4に示すように、収容部下流部材9の外周面には係止片9aを周上等間隔に4つ突設し、図4、図5に示すように収容部上流部材8の内周面には、頭部側(下流側)端部からホース側(上流側)へ軸方向に刻設され、その上流端で円周方向に折曲するとともに周面を穿開したL字溝8aを周上等間隔に4つ形成している。収容部上流部材8と収容部下流部材9とを一体的に組み立てるには、雄部材となる収容部下流部材9の各係止片9aを、雌部材となる収容部上流部材8の内周面の各L字溝8aに沿って進入させ、L字溝8aの上流端まで進入させてから円周方向に回転させて係合させ、軸方向に引っ張っても外れないようにする(図1)。収容部上流部材8と収容部下流部材9とを分離するには、組み立ての逆の手順で、係止片9aを内部に押し込んで円周方向に逆回転させた後、各係止片9aを各L字溝8aに沿って軸方向に引き抜いて取り外す。
【0023】
図5に示すように、収容部上流部材8は、把持収容部2の軸方向長さの大部分を構成する円筒状のカートリッジ収容部8bを形成するとともに、基端部(上流端部)には、外周面にホースと接続するための雄ねじを設けた小径な円筒状のホース取付部2aを形成している。ホース取付部2aとその下流のカートリッジ収容部8bとは連通し(図5(d))、相互の連結部分には流路の中央から放射状に形成された3枚の板からなる整流板8cが設けられている(図5(a)、(c))。
図5(a)、(d)に示すように、カートリッジ収容部8bの上流側底部には、中央にホース取付部2aと連通する水流入口11が形成されるとともに、その周縁近傍には、下流側から見て整流板8cに合致するように3本の底部リブ12を立設している。この底部リブ12は水流入口11周縁から放射状に延設されるとともに、把持収容部2内周面に沿って軸方向に延設され、各底部リブ12は全体としてL字状に形成されている。このうち軸方向に延設された部分によって3本の底部リブ12が形成する内径には、水質浄化用カートリッジ7の上流端閉鎖部材21が収まるようになっている(図1)。
【0024】
収容部上流部材8の内周面には、内方向に突出し、底部付近から下流端付近まで軸方向に延設される内周リブ13が周上等間隔に4本形成されている(図5(d))。
また、収容部上流部材8の底部側(上流側)および外周面は、有底円筒状の底部に孔を設けた把持カバー14で覆われて保護されている(図1)。図5(b)、図10(b)に示すように、収容部上流部材8の外周面に軸方向に延設した凹溝と、把持カバー14の内周面に軸方向に形成した凸条とが係合して、収容部上流部材8が把持カバー14に対して周方向に回転しないように固定されている。
【0025】
図4に示すように、収容部下流部材9は、頭部3に一体に形成されて上流側に突出する筒状の部材であり、上記のように収容部上流部材8に内嵌させて取り付ける。
また、収容部下流部材9の内側では円筒状のカートリッジ受け10が上流側に突出する二重筒構造になっており、図2に示すように、カートリッジ受け10の内部通路は浄水流路を構成する頭部3の第一流路15に連通し、カートリッジ受け10の外周面と収容部下流部材9の内周面との間に形成される流路は原水流路を構成する頭部3の第二流路16に連通している。
【0026】
図3(b)、図6に示すように、カートリッジ受け10は、水質浄化用カートリッジ7を差し込み固定できる内径に形成されるとともに、水質浄化用カートリッジ7を取り付けていない状態では浄水流路を閉塞する止水弁17の弁座としての役割を持つ。そのため、通水孔を狭く穿設した円板状の弁座部10aを有している。
止水弁17は、弁座としてのカートリッジ受け10の弁座部10aと、この弁座部10aの下流側に配置され通水孔を閉塞可能な形状の弁体18と、この弁体18を弁座部10aに押し付けるように付勢する付勢手段としてのコイルスプリング19とからなる。
【0027】
図3(b)、図7に示すように、弁体18は合成樹脂を成形した部品であって、下流側から順に、コイルスプリング19から外れないように内接する筒状のバネ座部18aと、カートリッジ受け10の通水孔よりも大径に形成されて弁座部10aの通水孔を閉塞する本体部18bと、通水孔よりも十分に細く形成されて上流側に突出する断面十字形の押圧受け部18cとを有している。
本体部18bは、通水孔およびコイルスプリング19の内径よりも大径の円板状に形成されて、下流側(頭部側)からコイルスプリング19に付勢され、上流側(カートリッジ受け側)で弁座部10aの通水孔周縁に押し付けられて、通水孔を閉塞する(図3(b))。上流側の面では、通水孔を確実に閉塞できるように、外周部を筒状あるいは環状に立設させている。
押圧受け部18cは、止水弁17の弁閉状態において、通水孔を貫通して弁座部10aの上流側に突出しており、他部材が上流側から弁体18を押圧できるようになっている。
【0028】
図3(b)に示すように、付勢手段としてのコイルスプリング19は、下流側の一端部を頭部3の内壁面に当接させ、上流側は弁体18のバネ座部18aに外接するとともに端部を本体部18bに当接させて、弁体18を頭部3から離間させ弁座部10aに押し付ける方向に付勢している。コイルスプリング19としては、図3に示すように、把持収容部2に水質浄化用カートリッジ7を収容せずに水道設備(図示せず)から水を供給し、流路切換弁を操作して原水吐出から浄水吐出に切り換えたときに、水道の水圧に抗して吐出水量を大幅に減少させ、使用者に異常を認識させうるだけの付勢力(バネ定数)を有するものが望ましく、さらには、水道の水圧に抗して通水孔を封止し、浄水流路を完全に閉塞できるだけの付勢力(バネ定数)を有するものがより望ましい。
また、付勢手段はコイルスプリング19には限られず、他の弾性体を用いてもよい。さらに、たとえば、弁体18の少なくとも一部を磁石で形成し、その下流には頭部3内壁に固定された磁石を配置して、2つの磁石が反発する磁力によって弁体18を付勢するように構成してもよい。
【0029】
水質浄化用カートリッジ7は、図8に示すように、軸方向に長い貫通孔(中央空間部24)を有する円筒状に形成した活性炭等の水質浄化材料からなるカートリッジ本体20と、カートリッジ本体20の上流端に取り付けられる合成樹脂製の上流端閉鎖部材21と、カートリッジ本体20の下流端に取り付けられる合成樹脂製の下流端接続部材22とからなる。
カートリッジ本体20は、活性炭を主成分とし、円筒状に固めたもので、外周と内周との間を水が透過するときに、水中に溶解した化学成分や浮遊している微細な固形物質が吸着または濾過される。
活性炭の形状は、カートリッジ外周に原水流路を形成可能であれば特に限定されず、円柱状等に形成することもできるが、円筒状とすれば、カートリッジを水が透過するときに活性炭の一部のみに水が集中して浄水能力が早期に低下する、いわゆる水道(みずみち)現象の発生を抑制し、かつ、後述する中央空間部24を後述する下流端接続部材22の内筒部22cに連通させることができるため、効率的な浄水流路を形成できる。
【0030】
上流端閉鎖部材21は、カートリッジ本体20の上流側の端面および外周面を覆う有底短円筒状に形成されてカートリッジ本体20の上流側の端面を閉鎖するとともに、底部からは中央空間部24に嵌入する柱部21aが突設され、カートリッジ本体20に強固に取り付けられる。
この上流端閉鎖部材21の外径は、収容部上流部材8の底部リブ12の内径に略等しく、水質浄化用カートリッジ7を把持収容部2に収容した際には、底部および外周面でL字状の底部リブ12に当接して軸方向および径方向に位置固定され、水質浄化用カートリッジ7を把持収容部2に同軸的に収容することができる(図1(a))。
【0031】
下流端接続部材22は、カートリッジ本体20の下流側の端面を被覆する大径短円筒状の被覆端22aと、収容部下流部材9のカートリッジ受け10に差し込み固定される小径円筒状の接続端22bとを両端に形成し、軸方向の中央部には、粒状あるいはペレット状の殺菌セラミック23を円板状に固めて収容している。
下流端接続部材22の被覆端22aは、その内周面でカートリッジ本体20の外周面に当接してカートリッジ本体20の下流側を被覆するとともに、把持収容部2の内周リブ13の内径よりも大径かつ把持収容部2内周面よりも小径となるように外形状を形成され、水質浄化用カートリッジ7を把持収容部2に収容した際には内周リブ13に当接して軸方向に支持される(図9(b))。
【0032】
また、被覆端22aの内側ではカートリッジ本体20に内嵌する内筒部22cが設けられており、中央空間部24へ流入した水が、下流端接続部材22の内部通路を通過して、接続端22bから頭部3へと供給される。
下流端接続部材22の内部通路に配置される殺菌セラミック23は、リン酸カルシウムを母体として酸化亜鉛、モンモリロナイト等を混合して粒状あるいはペレット状に焼結したものに銀あるいは銅等を吸着したもので、その表面に水中の有害な細菌類を吸着して殺菌するとともに金属イオンを放出して水中の有害な細菌類を殺菌または滅菌し、水質を無害化する。
【0033】
下流端接続部材22の接続端22bは、カートリッジ受け10に内嵌する小径の円筒状に形成されて下流側に突出し、その外周には水の漏れ止め用のOリング26が嵌め込まれている。接続端22bの内周面には内部通路を横断して形成される断面十字形の板材が張り渡され、その中央部分からは、断面十字形の十字押圧部22dが下流方向に向かって突出形成されている。この十字押圧部22dは、止水弁17の通水孔よりも十分に細く形成されている(図1(b))。
図1(b)に示すように、この接続端22bをカートリッジ受け10に差し込み固定することによって、水質浄化用カートリッジ7を芯出しおよび位置固定することができる。また、このときに十字押圧部22dが弁体18の押圧受け部18cに当接し、コイルスプリング19の付勢力に抗して弁体18を押圧することで、止水弁17を開弁して、中央空間部24から下流端接続部材22、カートリッジ受け10、頭部3の第一流路15までを連通させる(図2)。このとき、止水弁17の通水孔中には、十字押圧部22dと押圧受け部18cとの一方または双方が必ず存在するが、十字押圧部22dおよび押圧受け部18cを通水孔に対して十分に細く形成しているので、水の流れが妨げられることはない。
【0034】
収容部上流部材8に水質浄化用カートリッジ7を収容し(図4)、収容部上流部材8を収容部下流部材9に組み付けることで、水質浄化用カートリッジ7がカートリッジ受け10に差し込み固定され、浄水器内蔵型吐水装置1の把持収容部2に水質浄化用カートリッジ7を収容することができる(図1)。このとき、把持収容部2の内周面と水質浄化用カートリッジのカートリッジ本体7外周面との間に、外周側流路25が形成される。
また、このとき、十字押圧部22dを押し戻そうとするコイルスプリング19の付勢力に対し、接続端22bの外周面とカートリッジ受け10の内周面との間に摩擦力が働くほかに、図9(b)、図10に示すように、大径の被覆端22aが下流側から把持収容部2の内周リブ13に当接することで、十字押圧部22dが上流側に後退しないように軸方向に支持される。また、図1(a)に示すように、上流端閉鎖部材21が把持収容部2の底部リブ12に当接することで、十字押圧部22dが上流側に後退しないように軸方向に支持される。
この浄水器内蔵型吐水装置1では、図1(b)のように十字押圧部22dが軸方向に支持されて止水弁17の弁体18を押圧する状態を保持するので、コイルスプリング19の付勢力によって使用中に十字押圧部22dが押し戻され、止水弁17が弁閉になってしまったり、水質浄化用カートリッジ7がカートリッジ受け10から離脱してしまったりすることがない。
【0035】
止水弁17の開閉機構の他の例として、止水弁17の弁体と水質浄化用カートリッジ7の押圧部とを、錠と鍵のように形成し、止水弁17に設けた穴部に所定の形状の押圧部を差し込んで、その位置で周方向に回転させることにより弁体を押圧して作動させ、開錠すなわち弁開するようにしてもよい。
【0036】
図2に示すように、頭部3内では、カートリッジ受け10の内部通路に連通して浄水流路を構成する第一流路15と、カートリッジ受け10の外周に周設された外周側流路25に連通して原水流路を構成する第二流路16とが、分岐して左右に仕切られている。
図2、図13に示すように、第一流路15と第二流路16とは、ともに下方を仕切板で仕切られており、それぞれ、この仕切板に弁孔31a、32aを穿設している。両弁孔31a、32aは下方に形成された一つの集合空間部28に連通している。
図1、図18に示すように、この集合空間部28の下部には、原水または浄水の吐出形状を3種類に切り換えることのできる吐出切換弁5を設けている。
【0037】
図2に示すように、この浄水器内蔵型吐水装置1は、弁孔31a、32aの一方を選択的に開通させ、他方を閉塞することで、浄水吐出と原水吐出とを切り換えることができる流路切換弁を有している。
この流路切換弁は、弁孔31aを開閉する浄水遮断弁31と弁孔32aを開閉する原水遮断弁32とを、頭部3に対して前後動可能に取り付けられた押しボタン6によって操作する。
【0038】
以下、押しボタン6が頭部3の内外に前後動する方向を、奥行き方向という。
図13、図14に示すように、浄水遮断弁31の弁孔31aと原水遮断弁32の弁孔32aとは、互いに奥行き方向にずらした位置に穿設されている。
浄水遮断弁31(原水遮断弁32)は、鋼球等の硬い球形に形成した球形弁体31b(32b)で弁孔31a(32a)を塞ぐことにより弁閉にする。図13(c)(d)に示すように、球形弁体31b(32b)とコイルスプリング31c(32c)とが、下面を開口した箱形の弁体支持部材31d(32d)の内部に、コイルスプリング31c(32c)、次いで球形弁体31b(32b)の順に収容されており、弁体支持部材31d(32d)が頭部3内で奥行き方向に移動可能であるとともに、弁孔31a(32a)の位置に至るとコイルスプリング31c(32c)の付勢力によって球形弁体31b(32b)が弁孔31a(32a)を閉塞する。図2、図13では、浄水遮断弁31の球形弁体31bが弁孔31aを閉塞しているとともに、原水遮断弁32の球形弁体32bは弁孔32aからずれて原水流路を開放している。図14では、原水遮断弁32の球形弁体32bが弁孔32aを閉塞しているとともに、浄水遮断弁31の球形弁体31bは弁孔31aからずれて浄水流路を開放している。
【0039】
図12、図13(b)に示すように、浄水遮断弁31および原水遮断弁32の弁体支持部材31d、32dは、左右に並列配置される2本のプッシュロッド33、33によって、奥行き方向の位置が等しくなるように押しボタン6に固定されており、押しボタン6の前後動に伴って頭部3の第一流路15および第二流路16を前後に移動する。
流路切換弁は、押しボタン6と頭部3との間に、ノック式ボールペンなどに使用されるスラストロック機構34を備えており、押しボタン6は押圧により浅い停止位置と深い停止位置とに交互に停止する。図12に示すように、このスラストロック機構34は、押しボタン6を頭部3から離間させる方向に付勢するコイルスプリング34aと、円筒状の外周面に奥行き方向に浅い溝と深い溝を周方向に交互に形成した切換リング34bと、周面に切換用のリブを形成した第一切換こま34cと、円筒の頭部側端面を周方向に凹凸が繰り返すように形成し、押し付けられるたびに第一切換こま34cを一定角度周回転させる第二切換こま34dとを、頭部側から押しボタン側に順に組み立ててなり、押しボタン6を押すたびに第一切換こま34cのリブが切換リング34bの浅い溝と深い溝とに交互に入り込むため、押しボタン6、浄水遮断弁31および原水遮断弁32が浅い停止位置と深い停止位置とに交互に停止する。
【0040】
図13に示すように、押しボタン6の深い停止位置では、浅い位置に形成された浄水遮断弁31の弁孔31aよりも奥に球形弁体31bが位置し、第一流路15が開放される(図13(d))とともに、深い位置に形成された原水遮断弁32の弁孔32aに球形弁体32bが押し付けられて弁閉となり、第二流路16が閉塞される(図13(c))。
このとき、把持収容部2の水流入口11から流入した原水は、水質浄化用カートリッジ7の外周側流路25から、カートリッジ本体20を透過して中央空間部24に流れ込み、カートリッジ受け10、止水弁17および第一流路15を順に通過する浄水流路を通って、集合空間部28に達して吐出される(浄水吐出)。この水は、カートリッジ本体20、殺菌セラミック23によって水質を浄化されて浄水となる。
【0041】
深い停止位置から押しボタン6を押して浅い停止位置に移行させると、図14に示すように、浅い位置に形成された浄水遮断弁31の弁孔31aに球形弁体31bが押し付けられて弁閉となり(図14(c))、第一流路15が閉塞されるとともに、深い位置に形成された原水遮断弁32の弁孔32aには球形弁体32bが届かず、第二流路16が開放される(図14(b))。
このとき、把持収容部2の水流入口11から流入した原水は、水質浄化用カートリッジ7の外周側流路25を通過して第二流路16に流れ込む原水流路を通って、集合空間部28に達して吐出される(原水吐出)。
原水吐出時には、原水がカートリッジ本体20の外表面に沿って外周側流路25を通過することにより、浄水吐出時に溜まったカートリッジ本体20表面の蓄積物が洗い流される自動クリーニング構造を有するため、目詰まりを起こりにくくするとともにカートリッジ本体20の劣化が防止され、水質浄化性能を長時間高レベルに維持できるようになる。
【0042】
浄水または原水は、下流に設けられた吐出切換弁5によって、ストレート吐出、エコシャワー吐出、シャワー吐出のいずれかの形状で吐出される。
図18に示すように、吐出切換弁5は、複数の吐出口を設けた吐出プレート29(図15)と、この吐出プレート29に上方から内嵌するとともに頭部に回動可能に取り付けられる回動部材35と、この回動部材35の上部に一体に取り付けられる蓋部36と(図16)からなる。
【0043】
吐出プレート29は、図15に示すように、円板状の底板を有し、この底板の周縁を頭部3との取り付け用に立設した有底円筒状の部材である。吐出プレート29の底板には、中心に穿設されたストレート吐出口4aと、ストレート吐出口4aの近傍に周設された多数の小孔からなる内シャワー吐出口4bと、この内シャワー吐出口4bの更に周囲に設けられた多数の小孔からなる外シャワー吐出口4cとが穿設されている。また、図15(a)のように、底板には、ストレート吐出口4aと内シャワー吐出口4bとの間に流路を仕切る内壁を立設しているとともに、内シャワー吐出口4bと外シャワー吐出口4cとの間にも流路を仕切る内壁を立設している。
【0044】
図16に示すように、有底円筒状の回動部材35および板状の蓋部36は一体に組み立てられ、吐出プレート29に上方から内嵌する。
回動部材35は吐出プレート29に内嵌され、図16(d)、図17に示すように、下面中央には、頭部3から突出した筒状部材(図18参照)を貫装する貫通孔35aを設けるとともに、その周囲には、吐出プレート29に内嵌した状態でストレート吐出口4aに連通する一対の流出口35bと、内シャワー吐出口4bに連通する3つの流出口35cとが穿設されている。流出口35bおよび流出口35bは貫通孔35aに対し対称の位置に設けられ、流出口35cおよび流出口35cも貫通孔35aに対し対称の位置に設けられる。残りの流出口35cの反対側の側面には、外シャワー吐出口4cに連通する流出口35dが設けられている(図16(c)、図17(c))。
図16(a)(b)に示すように、蓋部36は回動部材35の上面に取り付けられて、中心には頭部3から突出した筒状部材を貫装する貫装孔36aを設けるとともに、その周囲には、6つの通水孔36b〜gを同一円周上等間隔に穿設している。
【0045】
回動部材35の内部は、立設された内壁によって複数の流路に仕切られており、図17(a)に示すように、通水孔36b、36eに流入した水は流出口35b、35bからストレート吐出口4aに連通するようになっており、図17(b)に示すように、通水孔36c、36fに流入した水は流出口35c、35cから内シャワー吐出口4bに連通するようになっており、図17(c)に示すように、通水孔36d、36gに流入した水はそれぞれ流出口35d、35cから外シャワー吐出口4cおよび内シャワー吐出口4bに連通するようになっている。
【0046】
図18に示すように、回動部材35の上面に蓋部36を取り付け、頭部3から突出した筒状部材に回動部材35および蓋部36の貫通孔35a、36aを嵌合させ、下方から吐出プレート29を取り付けて上記筒状部材にネジ止めすると、吐出切換弁5を頭部3に回動可能に取り付けることができる。頭部3の前方には吐出切換弁5に固定された操作部37を突設しており(図1)、この操作部37を摘んで吐出切換弁5を回動操作することができる。
蓋部36の上面と対向する頭部3の面には、集合空間部28で集合した水が流出する一対の供給口28aが、上記筒状部材に対称な位置に形成されている。
【0047】
図18は、浄水吐出状態で、吐出切換弁5をストレート吐出に切り換えたときの断面図である。
このとき、浄水遮断弁31の弁孔31aを通過した水は、集合空間部28に流入して供給口28aに至る。このとき供給口28a、28aの直下には通水孔36b、36eが位置し、水は通水孔36b、36eから流出口35bへ回動部材35内を通過し、ストレート吐出口4aから吐出される。
【0048】
このストレート吐出から吐出切換弁5を60度回動させると、図19に示すエコシャワー吐出となる。
このとき供給口28a、28aの直下には通水孔36c、36fが位置し、浄水流路を通過した水は、通水孔36c、36fから流出口35cへ回動部材35内を通過し、内シャワー吐出口4bから吐出される。水は内シャワー吐出口4bのみから吐出されるため、比較的狭い範囲に強く吐出される。
【0049】
このエコシャワー吐出から吐出切換弁5を同方向に更に60度回動させると、図20に示すシャワー吐出となる。このとき供給口28a、28aの直下にはそれぞれ通水孔36d、36gが位置し、同様に浄水流路を通過した水は、通水孔36gから流出口35cへ回動部材35内を通過し内シャワー吐出口4bから吐出されるとともに、通水孔36dから流出口35dへ回動部材35内を通過し外シャワー吐出口4cから吐出される。水は内シャワー吐出口4bおよび外シャワー吐出口4cから吐出され、比較的広い範囲に吐出される。
【0050】
この水質浄化用カートリッジ7および浄水器内蔵型吐水装置1では、図1(b)に示すように、カートリッジ受け10に設けられて浄水流路を閉塞する止水弁17を、水質浄化用カートリッジ7の下流端接続部材22に形成した十字押圧部22dが押圧して開弁する構成としたため、図3(b)のように水質浄化用カートリッジ7を収容し忘れて流路切換弁を浄水吐出に操作しても、止水弁17が水流を遮断して原水を吐出させることがない。このため、使用者が誤って原水を飲用など浄水の用途に用いてしてしまうことがない。また、原水に含まれるゴミや錆などの固形物質が浄水流路に混入することがない。
【0051】
また、水質浄化用カートリッジ7の収容時には、図9、図10のように把持収容部2内周面に突設された内周リブ13に下流端接続部材22の大径の被覆端22aが当接し、あるいは図1(a)のように把持収容部2底部に設けられた底部リブ12に上流端閉鎖部材21が当接することにより、十字押圧部22dが軸方向に支持されて止水弁17の弁体18を押圧する状態を保持するため、コイルスプリング19の付勢力によって十字押圧部22dが押し戻されて止水弁17が弁閉になってしまったり、水質浄化用カートリッジ7がカートリッジ受け10から離脱してしまったりすることがない。
このため、水質浄化用カートリッジ7による止水弁17の開閉を確実に行うとともに、把持収容部2内に自動クリーニング構造を実現することのできる所望の浄水流路および原水流路を維持することができる。
【0052】
また、下流端接続部材22の被覆端22aは、収容部上流部材8の下流端付近まで延設した内周リブ13の内径よりも大径に形成されているため、水質浄化用カートリッジ7を把持収容部2に収容する際に、図11のように、使用者が誤って水質浄化用カートリッジ7の下流端接続部材22を上流側に向けて収容部上流部材8に差し込もうとしても、被覆端22aが内周リブ13に当接して、水質浄化用カートリッジ7の進入を阻止する。そのため、水質浄化用カートリッジ7を正しい姿勢から軸方向逆向きに収容して把持収容部2の組み立てを完了し、浄水器内蔵型吐水装置1を使用してしまうことを防止することができる。
【0053】
別態様として、浄水器内蔵型吐水装置1を本実施形態のように把持収容部2を手で持って取り回すことができるシャワーヘッドタイプに形成するのではなく、ホース等の他部品を介さずに、台所の流し等に直接固定された吐水装置として形成してもよい。
【0054】
上記実施形態では、内周リブ13および底部リブ12は細長いリブに形成されているが、このような形状には限定されず、下流端接続部材22または上流端閉鎖部材21に当接して軸方向に支持することができて外周側流路25の水の流れを阻害しないものであれば、どのような形状でもよい。
また、把持収容部2には、内周リブ13および底部リブ12のうち一方のみを設けるようにしてもよい。
内周リブ13のみを設けた場合、下流端接続部材22の被覆端22aが内周リブ13に当接して水質浄化用カートリッジ7が軸方向に支持されるため、上流端閉鎖部材21を把持収容部2底部に接触させる必要がない。そのため、カートリッジ本体20の軸方向の長さを把持収容部2の長さに合わせる必要がなく、規格の自由度が向上する。このため、把持収容部2の軸方向の長さが異なる複数の吐水装置に対し、一種類の水質浄化用カートリッジを、格別のアダプター等を用いることなく適用させることができる。
【0055】
また、上記実施形態では、浄水遮断弁31と原水遮断弁32とを有する流路切換弁によって浄水流路および原水流路の一方を選択的に開放し他方を閉塞しているが、原水遮断弁32のみを有する流路切換弁によって流路抵抗の小さい原水流路を開閉することにより、原水流路を開放しているときには原水吐出を行い、原水流路を閉塞しているときには浄水吐出を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態では、押しボタン6および球形弁体31b、32bによるプッシュ式の流路切換弁を用いたが、流路切換弁の種類は限定されず、回動式の切換弁などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 浄水器内蔵型吐水装置
2 把持収容部
3 頭部
4a ストレート吐出口
4b 内シャワー吐出口
4c 外シャワー吐出口
5 吐出切換弁
7 水質浄化用カートリッジ
8 収容部上流部材
9 収容部下流部材
10 カートリッジ受け
10a 弁座部
11 水流入口
12 底部リブ
13 内周リブ
15 第一流路
16 第二流路
17 止水弁
18 弁体
18c 押圧受け部
19 コイルスプリング
20 カートリッジ本体
21 上流端閉鎖部材
22 下流端接続部材
22a 被覆端
22b 接続端
22d 十字押圧部
24 中央空間部
25 外周側流路
31 浄水遮断弁
32 原水遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水装置に収容される水質浄化用カートリッジであって、
水が透過可能な水質浄化材料を少なくとも一部に有するカートリッジ本体と、
上記カートリッジ本体の下流側の端面を被覆するとともに、上記カートリッジ本体内部に連通する接続口を穿設されて上記吐水装置のカートリッジ受けに差し込み固定可能な接続端を有する下流端接続部材とを有し
記吐水装置内に、上記水質浄化材料を透過して上記下流端接続部材を通過した水が吐出される浄水流路と、上記水質浄化材料を透過しない水が吐出される原水流路とを形成するとともに、
上記下流端接続部材に、差し込み固定時には上記カートリッジ受けに設けられて浄水流路を閉塞する止水弁もしくは流量制御弁を押圧して上記浄水流路を開弁する押圧部を設けたことを特徴とする浄水器内蔵型吐水装置の水質浄化用カートリッジ。
【請求項2】
吐水装置に収容される水質浄化用カートリッジであって、
水が透過可能な水質浄化材料を少なくとも一部に有するカートリッジ本体と、
上記カートリッジ本体の下流側の端面を被覆するとともに、上記カートリッジ本体内部に連通する接続口を穿設されて上記吐水装置のカートリッジ受けに差し込み固定可能な接続端を有する下流端接続部材とを有し
記吐水装置内に、上記水質浄化材料を透過して上記下流端接続部材を通過した水が吐出される浄水流路と、上記水質浄化材料を透過しない水が吐出される原水流路とを形成するとともに、
上記下流端接続部材には、上記吐水装置の内周面から内方向に突設した内周突起物の内径よりも大径に形成された大径部を設けたことを特徴とする浄水器内蔵型吐水装置の水質浄化用カートリッジ。
【請求項3】
上記下流端接続部材には、上記吐水装置の内周面から内方向に突設した内周突起物の内径よりも大径に形成された大径部を設け、
上記吐水装置への収容時にはこの大径部が上記内周突起物に下流側から当接することにより、上記押圧部が上記止水弁を押圧する状態を保持することを特徴とする請求項1記載の浄水器内蔵型吐水装置の水質浄化用カートリッジ。
【請求項4】
上記吐水装置が下流端付近に上記内周突起物を有する収容部上流部材と収容部下流部材とに軸方向に二分割される上記浄水器内蔵型吐水装置に収容されるカートリッジであって、
上記下流端接続部材を上流側に向けて上記収容部上流部材に差し込んだ際には、上記収容部上流部材の下流端付近で上記大径部が上記内周突起物に当接して進入を阻止されることを特徴とする請求項2または3記載の浄水器内蔵型吐水装置の水質浄化用カートリッジ。
【請求項5】
上記吐水装置への収容時には、上流側の端面で、上記吐水装置の上流側底部の水流入口の周縁近傍に設けられた底部突起物に当接することにより、上記押圧部が上記止水弁を押圧する状態を保持することを特徴とする請求項1記載の浄水器内蔵型吐水装置の水質浄化用カートリッジ。
【請求項6】
基端に他部品との接続端を有して内部に流路を設けた収容部と、この収容部の先端に設けられ水の吐出口を形成した頭部とを備えた吐水装置であって、
上記収容部には少なくとも一部に水質浄化材料を含むカートリッジ本体を備えた水質浄化用カートリッジを収容し、この水質浄化用カートリッジの下流端部を上記収容部または上記頭部に形成されたカートリッジ受けに差し込み固定して上記カートリッジ本体内部を上記吐出口へ連通させ、
上記カートリッジ本体を透過せずに上記吐出口へ連通する原水流路と
記カートリッジ本体を透過して、上記カートリッジ受けを経由し上記吐出口へ連通する浄水流路とを形成し、
上記水質浄化用カートリッジの下流には、上記原水流路と上記浄水流路とのいずれかを選択的に開通させるか、あるいは、流路抵抗の小さい一方を開閉する外部から操作可能な流路切換弁を組み込み、
かつ、上記カートリッジ受けの下流の上記浄水流路には、弁体が下流側から弁座に押し付けられ上記浄水流路を閉塞する止水弁もしくは流量制御弁を設けるとともに、上記水質浄化用カートリッジを上記収容部に収容すると上記水質浄化用カートリッジの下流端部付近に形成された押圧部が上記弁体を押圧して上記浄水流路を開弁することを特徴とする浄水器内蔵型吐水装置。
【請求項7】
上記収容部の内周面には内方向に突出する内周突起物を設け、
上記水質浄化用カートリッジの下流端部付近にはこの内周突起物の内径よりも大径に形成した大径部を設け、
上記水質浄化用カートリッジを上記収容部に収容すると、この大径部が上記内周突起物に下流側から当接することにより、上記押圧部が上記止水弁の弁体を押圧する状態を保持することを特徴とする請求項6記載の浄水器内蔵型吐水装置。
【請求項8】
基端に他部品との接続端を有して内部に流路を設けた収容部と、この収容部の先端に設けられ水の吐出口を形成した頭部とを備えた吐水装置であって、
上記収容部には少なくとも一部に水質浄化材料を含むカートリッジ本体を備えた水質浄化用カートリッジを収容し、この水質浄化用カートリッジの下流端部を上記収容部または上記頭部に形成されたカートリッジ受けに差し込み固定して上記カートリッジ本体内部を上記吐出口へ連通させ、
上記カートリッジ本体を透過せずに上記吐出口へ連通する原水流路と、
上記カートリッジ本体を透過して、上記カートリッジ受けを経由し上記吐出口へ連通する浄水流路とを形成し、
上記水質浄化用カートリッジの下流には、上記原水流路と上記浄水流路とのいずれかを選択的に開通させるか、あるいは、流路抵抗の小さい一方を開閉する外部から操作可能な流路切換弁を組み込み、
かつ、上記収容部の内周面には内方向に突設した内周突起物を形成するとともに、上記水質浄化用カートリッジにはこの内周突起物の内径よりも大径に形成された大径部を設けたことを特徴とする浄水器内蔵型吐水装置。
【請求項9】
上記収容部を、下流端付近に上記内周突起物を有する収容部上流部材と収容部下流部材とに軸方向に二分割可能に形成し、
上記水質浄化用カートリッジの上記下流端部を上流側に向けて上記収容部上流部材に差し込んだ際には、上記収容部上流部材の下流端付近で上記大径部が上記内周突起物に当接して上記水質浄化用カートリッジの進入を阻止することを特徴とする請求項7または8記載の浄水器内蔵型吐水装置。
【請求項10】
上記収容部の上流側底部には水流入口を設けるとともにこの水流入口の周縁近傍には底部突起物を立設し、
上記水質浄化用カートリッジを上記収容部に収容すると、上記水質浄化用カートリッジが上流端部でこの底部突起物に当接することにより、上記押圧部が上記止水弁の弁体を押圧する状態を保持することを特徴とする請求項6記載の浄水器内蔵型吐水装置。
【請求項11】
上記頭部に、水のストレート吐出口と、このストレート吐出口の周りに周設された内シャワー吐出口と、この内シャワー吐出口の周りに周設された外シャワー吐出口とを形成し、
水を上記ストレート吐出口から吐出するストレート吐出と、水を上記内シャワー吐出から吐出するエコシャワー吐出と、水を上記内シャワー吐出口および上記外シャワー吐出口から吐出するシャワー吐出とを切り換える吐出切換弁を内部に設けたことを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載の浄水器内蔵型吐水装置。
【請求項12】
上記流路切換弁と上記吐出切換弁との間には、上記原水流路と上記浄水流路とが合流する集合空間部を設けたことを特徴とする請求項11記載の吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−55880(P2012−55880A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45825(P2011−45825)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【分割の表示】特願2010−198006(P2010−198006)の分割
【原出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(592243553)株式会社タカギ (31)
【Fターム(参考)】