浄水器用カートリッジおよびそれを備えた浄水器
【課題】浄水器への着脱にかかる手間が少なく、簡単に交換できる浄水器用カートリッジおよびそれを備えた浄水器を提供する。
【解決手段】浄水器用カートリッジ1は、一方の端部に原水流入口5および浄水出水口6を有する。分離膜の一例である中空糸膜エレメント4と第1通路R1との間に配置されて、中空糸膜17の大部分を隙間を持って覆う中空糸膜エレメントカバー11を設けている。
【解決手段】浄水器用カートリッジ1は、一方の端部に原水流入口5および浄水出水口6を有する。分離膜の一例である中空糸膜エレメント4と第1通路R1との間に配置されて、中空糸膜17の大部分を隙間を持って覆う中空糸膜エレメントカバー11を設けている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水器用カートリッジおよびそれを備えた浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水器用カートリッジとしては、特開2003−53160号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この浄水器用カートリッジは、複数の中空糸膜を収容し、下方に開口している下部接続口が原水導入用配管および逆洗用配管に接続されている一方、上方に開口している上部接続口が浄水排出用配管に接続されている。
【0003】
浄水時、上記原水導入用配管に設けられた弁が開放されて、原水が原水導入用配管から浄水器用カートリッジの下部接続口に流入して、中空糸膜の外側表面から内側表面に向かって透過することで浄水になる。その後、上記浄水は、浄水器用カートリッジの上部接続口から浄水排出用配管に排出される。このとき、上記逆洗用配管に設けられた弁は閉鎖されている。
【0004】
一方、逆洗時、逆洗用水が、浄水排出用配管から浄水器用カートリッジの上部接続口に流入して、中空糸膜の内側表面から外側表面に向かって透過する。これにより、上記中空糸膜の外側表面に付着した付着物が離間して逆洗用水と共に浄水器用カートリッジの下部接続口から逆洗用配管に流出する。なお、逆洗時、原水導入用配管に設けられた弁は閉鎖され、かつ、逆洗用配管に設けられた弁は開放されている。
【0005】
このように、従来の浄水器用カートリッジでは、浄水排出用配管のための上方に開口した1つの上部接続口がある一方、原水導入用配管および逆洗用配管のための下方に開口した2つの下部接続口があるため、浄水器用カートリッジの上方での上部接続口から浄水排出用配管を取り外す作業と、浄水器用カートリッジの下方での2つの下部接続口から原水導入用配管および逆洗用配管を取り外す作業とを必要とし、3つの配管の取り外し作業が必要である上に、浄水器用カートリッジの上方と下方とで取り外し作業が必要であるため、取り外し作業が煩雑であるという問題がある。
【0006】
また、上記浄水器用カートリッジの取り付け作業も同様に、上方の1つの上部接続口の1箇所と、下方の2つの下部接続口の2箇所とで、取り付け作業を行わなければならないため、取り付け作業も煩雑であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−53160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、浄水器本体への着脱にかかる手間が少なく、簡単に交換できる浄水器用カートリッジおよびそれを備えた浄水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の浄水器用カートリッジは、
一方の端部に第1開口および第2開口を有すると共に、上記第1開口に連通する第1通路と、上記第2開口に連通する第2通路とを内部に有するカートリッジ本体と、
上記第1通路から第2通路に流れる水を濾過する分離膜と、
上記第1通路と上記分離膜との間に配置されて、上記分離膜との間に隙間を持って上記分離膜を覆う分離膜カバーと
を備えたことを特徴としている。
【0010】
ここで、上記「一方の端部」とは、分離膜の一端を境界にしてこの境界よりも上記一方の側にあるカートリッジ本体の部分を意味する。
【0011】
上記構成によれば、浄水器本体に着脱する場合、第1開口および第2開口がカートリッジ本体の一方の端部にあるので、浄水器本体への着脱作業はカートリッジ本体の一方の端部に対して行えば終了する。したがって、上記浄水器本体への着脱にかかる手間が少なく、簡単に交換できる。
【0012】
また、上記浄水器用カートリッジは、上記第1開口と第2開口との2箇所を浄水器本体に接続すればよいので、従来(特開2003−53160号公報)に比べて接続箇所が少なくて、着脱が容易である。
【0013】
また、上記分離膜で浄水を生成する場合、原水をカートリッジ本体の第1開口に供給すると、原水は第1通路から第2通路へ流れる。このとき、上記分離膜が第1通路から第2通路に流れる原水を濾過して浄水にするので、カートリッジ本体の第2開口から浄水を取り出すことができる。
【0014】
また、上記分離膜を逆洗する場合、逆洗用水を第2開口に供給すると、逆洗用水が第2通路から第1通路へ流れる。これにより、上記逆洗用水が原水の流れ方向とは逆方向に分離膜を流れるので、汚れ等の付着物が分離膜から離間する。その結果、上記付着物を逆洗用水と共に流して第1開口からカートリッジ本体外へ排出できる。
【0015】
この逆洗時、第1開口および第2開口がカートリッジ本体の一方の端部にあるため、逆洗用水はカートリッジ本体内においてU字状に流れの向きを変えることになり、そのため、必然的に分離膜を局所的に流れるショートカットが生じようとするが、上記分離膜カバーが有るためショートカットが防止されるのである。このように、上記分離膜カバーを設けているから、第1開口および第2開口がカートリッジ本体の一方の端部にあって、逆洗用水の流れがU字状に向きを変える流れであっても、分離膜を局所的に流れるショートカットが防止される。もし、上記分離膜との間に隙間を持って分離膜を覆う分離膜カバーがないならば、逆洗時に抵抗が少ない分離膜の最短経路をなす一部が局所的に洗浄されて、その後は、逆洗用水が分離膜の上記一部のみに流れて他の部分を流れなくて、逆洗用水はショートカットすることになって、その他の部分が洗浄されなくて逆洗が不完全となり、また、逆洗時に大量の逆洗用水が必要となって、かつ、長時間かけて逆洗を行わなければならないという問題があるのである。
【0016】
本発明は、上記カートリッジ本体内で逆洗用水が180°向きを変えることになっても、分離膜との間に隙間を持って分離膜を覆う分離膜カバーがあるので、逆洗用水が分離膜の全体を略均等に流れることができて、逆洗用水のショートカットが生じなく、分離膜の略全体を効率良く逆洗することができる。したがって、少ない逆洗用水で短時間で逆洗を効率良く略完全に行うことができる。
【0017】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記分離膜は、上記第2通路から上記第1通路に流れる水によって洗浄可能に設けられている。
【0018】
上記実施形態によれば、上記分離膜は、第2通路から第1通路に流れる水によって洗浄可能に設けられているので、第2開口に水を供給すると、その水が第2通路から第1通路に流れて分離膜を洗浄することが可能である。
【0019】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記第1開口および第2開口は同一方向に向かって開口する。
【0020】
上記実施形態によれば、上記第1開口および第2開口が同一方向に向いて開口しているので、上記浄水器用カートリッジを一方向に移動させて、ワンタッチで浄水器用カートリッジを浄水器本体に着脱可能にすることができる。
【0021】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記分離膜は、複数の中空糸膜を有する中空糸膜エレメントであり、
上記分離膜カバーは、上記中空糸膜エレメントの周囲を覆う中空糸膜エレメントカバーである。
【0022】
上記実施形態によれば、上記中空糸膜エレメントカバーが、水の流動方向に長く延びる中空糸エレメントの周囲を覆うので、特に逆洗用水のショートカットが生じ易い長く延びる中空糸エレメントを使用しても、逆洗用水のショートカットを防止できて、略均等に逆洗用水を流すことができる。
【0023】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記第1開口は上記第2開口を取り囲むように環状に設けられている。
【0024】
上記実施形態によれば、上記第1開口は第2開口を取り囲むように環状に設けているので、第1開口および第2開口に対する配管の着脱が容易となる。
【0025】
また、上記第1開口は第2開口を取り囲むように環状に設けているので、第1開口および第2開口を密に配置して、スペースを有効に利用して、上記第1開口および第2開口の開口面積を大きくすることができる。もし、仮に、第1開口および第2開口を、互いに離間して設けると、無駄なスペースが生じて必然的に開口面積が小さくなるのである。
【0026】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記分離膜カバーの上記分離膜に対向する部分には、上記分離膜の全体に略均等に水が流れるようにするための貫通穴が設けられている。
【0027】
上記実施形態によれば、上記分離膜カバーの分離膜に対向する部分には、分離膜の全体に略均等に水が流れるようにするための貫通穴が設けられているので、分離膜カバーと分離膜の間の距離を狭くして小型化できる。
【0028】
仮に、上記貫通穴を分離膜カバーの分離膜に対向する部分に設けていないなら、分離膜カバーと分離膜の間の距離を過度に狭くすると、分離膜の全体に略均等に水が流れなくなるので、分離膜において逆洗できない部分が大きくなってしまう可能性がある。
【0029】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記分離膜カバーは、上記第2開口側から離れて行くにしたがって末広がりとなるように傾斜している。
【0030】
上記実施形態によれば、逆洗用水を第2開口に供給すると、逆洗用水が第2通路から第1通路へ流れて、汚れ等の付着物が分離膜から離間する。このとき、上記分離膜カバーが、第2開口側から離れて行くにしたがって末広がりとなるように傾斜しているので、分離膜から離間した付着物が、分離膜カバーと分離膜との間の隙間に詰まるのを防ぐことができる。したがって、上記付着物が逆洗用水と共に第1通路に流れ易くなるので、分離膜の洗浄効果を向上させることができる。
【0031】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記分離膜カバーはフィルム状に形成されている。
【0032】
上記実施形態によれば、逆洗用水を第2開口に供給すると、逆洗用水が第2通路から第1通路へ流れて、汚れ等の付着物が分離膜から離間する。このとき、上記分離膜カバーがフィルム状であるので、逆洗用水の水圧に応じて変形する。その結果、上記分離膜カバーと分離膜との間の隙間が適切な大きさに調節される。したがって、上記逆洗用水をスムーズに流すことができるので、分離膜の洗浄効果を向上させることができる。
【0033】
また、上記分離膜カバーがフィルム状であるので、分離膜カバーと分離膜との間の隙間を確保しつつ、カートリッジ本体を小型化することができる。
【0034】
また、上記フィルム状の分離膜カバーの厚さは、例えば樹脂成型品の分離膜カバーの厚さの1/10程度にすることができる。したがって、上記分離膜カバーをフィルム状に形成することにより、分離膜カバーの材料費を低減できる。
【0035】
一実施形態の浄水器用カートリッジは、
上記分離膜の少なくとも一部を覆うネットを備える。
【0036】
上記実施形態によれば、上記逆洗用水を第2開口に供給したとき、ネットが分離膜の少なくとも一部を覆うので、逆洗用水の流れによって分離膜の形状が崩れないようにすることができる。したがって、上記分離膜カバーと分離膜との間の隙間が小さくなるのを防ぐことができる。
【0037】
また、上記浄水器用カートリッジの製造時、ネットが分離膜の少なくとも一部を覆っていれば、分離膜の形状が安定するので、第1通路と分離膜との間に分離膜カバーを容易に配置できる。
【0038】
また、上記浄水器用カートリッジの輸送時、ネットが分離膜の少なくとも一部を覆っていることにより、振動や衝撃による分離膜へのダメージを緩和できる。
【0039】
本発明の浄水器は、
浄水器本体と、
上記浄水器本体に着脱可能な本発明の浄水器用カートリッジと
を備えたことを特徴としている。
【0040】
上記構成によれば、上記浄水器本体に着脱可能な浄水器用カートリッジを備えることによって、浄水器用カートリッジを簡単に交換できるので、メンテンナンスの作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の浄水器用カートリッジによれば、カートリッジ本体が一方の端部に第1開口および第2開口を有するので、浄水器本体への着脱作業を行う箇所が少なく、この着脱作業は簡単になり、交換を容易に行うことができる。
【0042】
また、本発明の浄水器用カートリッジによれば、分離膜との間に隙間を持って分離膜を覆う分離膜カバーを備えるので、上記第1開口および第2開口がカートリッジ本体の一方の端部にあって着脱作業が簡単であるにも拘わらず、逆洗用水が分離膜を局部的に流れることがなく、逆洗用水のショートカットを防止でき、分離膜の全体に逆洗用水を略均等に流すことができて、逆洗用水の使用量を低減できて、短時間で逆洗をすることができる。
【0043】
本発明の浄水器によれば、上記浄水器本体に着脱可能な浄水器用カートリッジを備えるので、浄水器用カートリッジの交換が容易であり、メンテンナンスを作業性良く行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は本発明の第1実施形態の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【図2】図2は上記第1実施形態の浄水器用カートリッジを浄水器本体に取り付けた状態の模式断面図である。
【図3】図3は上記第1実施形態の浄水器用カートリッジにおける原水の流れを説明するための模式図である。
【図4】図4は上記第1実施形態の浄水器用カートリッジにおける逆洗用水の流れを説明するための模式図である。
【図5】図5は本発明の一比較例の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【図6】図6は上記比較例の浄水器用カートリッジにおける逆洗用水の流れを説明するための模式図である。
【図7】図7は本発明の一変形例の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【図8】図8は本発明の一変形例の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【図9】図9は本発明の第2実施形態の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【図10】図10は本発明の第3実施形態の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の浄水器用カートリッジおよび浄水器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0046】
〔第1実施形態〕
図1に、本発明の第1実施形態の浄水器用カートリッジ1を側方から見た断面を模式的に示す。
【0047】
上記浄水器用カートリッジ1は、樹脂製のカートリッジ本体2と、分離膜の一例としての中空糸膜エレメント4とを備えている。
【0048】
上記カートリッジ本体2の上端部には、第1開口の一例としての原水流入口5と、第2開口の一例としての浄水出水口6とを、同一方向である上方に向いて開口するように設けている。この原水流入口5は浄水出水口6を取り囲むように環状に設けていて、原水流入口5と浄水出水口6とを略同心に配置している。
【0049】
また、上記カートリッジ本体2は、有底円筒状の外側部材9と、外側部材9の内側に配置された段付円筒状の内側部材3とからなる。上記内側部材3は、図示しない放射状のアームで外側部材9に固定している。この内側部材3の小径円筒部10の上方に向いた開口は浄水出水口6である。また、上記外側部材9の上端部と内側部材3の小径円筒部10との間の上方に向いた環状の開口は、原水流入口5である。上記小径円筒部10に連なる大径円筒部12には分離膜の一例である中空糸膜エレメント4を設けている。なお、上記内側部材3は、全体がABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂で形成されており、原水および逆洗用水の水圧で変形するようなものではない。
【0050】
上記中空糸膜エレメント4は、U字状に屈曲された複数(見易くするために1つのみ図示)の中空糸膜17を、それらの両端部の開口状態を保つように、上記両端部をポッティング材13によって集束してなる。上記原水流入口5からの原水が、上記外側部材9と内側部材3との間の第1通路R1を通った後、中空糸膜エレメント4を通って濾過されて浄水となって、上記内側部材3の内部の第2通路R2を通って浄水出水口6に向かって流れる。上記原水流入口5から中空糸膜エレメント4までの間が上記第1通路R1であり、中空糸膜エレメント4から浄水出水口6までの間が上記第2通路R2である。
【0051】
上記大径円筒部12の中空糸膜エレメント4の周り部分は、分離膜カバーの一例である中空糸膜エレメントカバー11を構成している。したがって、上記中空糸膜エレメントカバー11は、第1通路R1と中空糸膜17との間に配置されていることになる。この中空糸膜エレメントカバー11は、中空糸膜17が延びる方向に延在し、中空糸膜17のU字状の先端部つまり下端部17aの側方も覆っている。このように、上記中空糸膜エレメントカバー11が中空糸膜17の大部分の周りで上記大部分との間に隙間を持って上記大部分を覆っているので、中空糸膜エレメント4の全体に水が略均等に流れる。
【0052】
上記中空糸膜17は、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜等を例えば0.5mm〜30mm程度の太さで中が空胴の糸状に成型したものである。また、上記中空糸膜17の屈曲部の下端部17aの下端を大径円筒部12の下端よりも上側に位置させて、中空糸膜17の屈曲部が大径円筒部12から突出しないようにしている。なお、上記中空糸膜17の材質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等がある。
【0053】
図2に、上記浄水器用カートリッジ1を浄水器の浄水器本体20に取り付けた状態を側方から見た断面を模式的に示す。
【0054】
上記浄水器本体20は、浄水器用カートリッジ1に向かって原水が流れる原水導入用配管14と、浄水器用カートリッジ1から出た浄水が流れる浄水排出用配管15を備えている。上記原水導入用配管14,浄水排出用配管15の接続用端部18,19の内周面には、図示しないOリングを取り付けている。
【0055】
上記構成の浄水器用カートリッジ1を浄水器本体20に取り付ける場合、接続用端部18,19へ原水流入口5,浄水出水口6を向け、浄水器用カートリッジ1を浄水器本体20に近づく上方向に移動させて、原水導入用配管14の接続用端部18内に外側部材9の上端部を挿入すると共に、浄水排出用配管15の接続用端部19内に内側部材3の小径円筒部10を挿入する。一方、上記浄水器用カートリッジ1を取り外す場合、浄水器用カートリッジ1を浄水器本体20から離れる下方向に移動させる。
【0056】
このように、上記浄水器用カートリッジ1を浄水器本体20に着脱する場合、原水流入口5および浄水出水口6がカートリッジ本体2の上端部にあるので、カートリッジ本体2の上端部に対してのみ着脱作業を行えばよい。したがって、上記浄水器用カートリッジ1は着脱にかかる手間が少なく、簡単に交換できる。
【0057】
また、上記浄水器用カートリッジ1は、原水流入口5,浄水出水口6の2箇所を接続用端部18,19に接続すればよいので、従来(特開2003−53160号公報)に比べて接続箇所が少なくて、着脱が容易である。
【0058】
さらに、上記原水流入口5および浄水出水口6が同一方向である上方に向いて開口しているので、浄水器用カートリッジ1を一方向である上方に移動させて、ワンタッチで浄水器用カートリッジ1を浄水器本体20に取り付けることが可能である。
【0059】
また、上記原水流入口5を浄水出水口6と略同心に設けているので、芯合わせが容易で、接続作業が容易である。
【0060】
また、上記浄水器が浄水器用カートリッジ1を備えることにより、浄水器のメンテンナンスの作業が飛躍的に向上させることができる。
【0061】
上記浄水器用カートリッジ1で浄水を生成する場合、図3の矢印A1で示すように、原水流入口5からカートリッジ本体2内に原水を流す。そうすると、上記原水は、矢印A2,A3で示すように、第1通路R1を流れ、外側部材9の底部へ向う。そして、上記原水は、外側部材9の底部近傍で矢印A4,A5で示すように流れて内側部材3の大径円筒部12の先端の中空糸膜エレメントカバー11内に入って浄水出水口6に向かって流れる。ここで、上記原水は、中空糸膜17で濾過されて浄水となった後、第2通路R2を流れて、矢印A6で示すように、浄水出水口6からカートリッジ本体2外に流出する。
【0062】
このように、上記原水が内側部材3の中空糸膜エレメントカバー11の下端から浄水出水口6に向かって流れることによって、中空糸膜17の屈曲部から両端部近くまでを原水が同じように流れるので、中空糸膜17の略全部が原水の濾過に有効に寄与して、原水から効率良く浄水を生成できる。
【0063】
一方、上記浄水器用カートリッジ1を逆洗する場合、図4の矢印B1で示すように、浄水出水口6から内側部材3内に逆洗用水を入れる。そうすると、上記逆洗用水が、第2通路R2を流れて、中空糸膜エレメント4の中空糸膜17を通過することにより、中空糸膜17の孔を塞いでいた付着物が中空糸膜17から離間する。そして、上記中空糸膜17を通過した逆洗用水は、矢印B2〜B5で示すように、第1通路R1を流れた後、矢印B6で示すように、原水流入口5からカートリッジ本体2外に流出する。したがって、上記付着物も逆洗用水と共に第1通路R1を流して、原水流入口5からカートリッジ本体2外に排出できる。
【0064】
この逆洗時、上記カートリッジ本体2の上端部に原水流入口5および浄水出水口6を設けているので、浄水出水口6に流した逆洗用水は、第2通路R2をカートリッジ本体2の下端部へ向かって流れた後、その下端部近傍でUターンし、第1通路R1をカートリッジ本体2の上端部へ向かって流れる。このように、上記逆洗用水のUターン状の流れが形成される状況下において、もし仮に、上記中空糸膜エレメント4の大部分の周りに隙間を持って覆う中空糸膜エレメントカバー11を設けていなければ、逆洗時に抵抗が少ない中空糸膜17の最短経路をなす一部が局所的に洗浄されて、その後は、逆洗用水が中空糸膜17のその一部を局所的に流れて他の部分を流れなくて、逆洗用水はショートカットすることになって、中空糸膜17の略全体を効率良く洗浄できなくて、逆洗が不十分になり、逆洗で使用する逆洗用水の量が大量となり、かつ、逆洗が長時間になるという問題が起こってしまう。
【0065】
これに対して、上記浄水器用カートリッジ1は、上記カートリッジ本体2の上端部に原水流入口5および浄水出水口6を設けているため、逆洗用水がカートリッジ本体2内において180°向きを変える流れになっても、中空糸膜エレメントカバー11が中空糸膜エレメント4の大部分の周りに隙間を持って覆うので、逆洗用水を中空糸膜17の全体に略均等に流すことができて、逆洗用水のショートカットが生じなく、中空糸膜17の略全体を効率良く逆洗することができる。したがって、少ない逆洗用水で短時間で逆洗を効率良く行うことができる。
【0066】
また、上記中空糸膜エレメントカバー11が細長く延在する中空糸膜17の周囲を覆うので、特に逆洗用水のショートカットが生じ易い細長く延在する中空糸膜17を使用しても、逆洗用水のショートカットを防止でき、中空糸膜17に略均等に逆洗用水を流すことができる。
【0067】
また、上記原水流入口5は浄水出水口6を取り囲むように環状に同心に設けているので、芯合わせが容易で、原水流入口5および浄水出水口6に対する接続用端部18,19の着脱が容易となる。
【0068】
また、上記原水流入口5は浄水出水口6を取り囲むように環状に設けているので、原水流入口5および浄水出水口6を密に配置して、スペースを有効に利用して、上記原水流入口5および浄水出水口6の開口面積を大きくすることができる。もし仮に、上記原水流入口5および浄水出水口6は、互いに離間して設けると、無駄なスペースが生じて必然的に開口面積が小さくなるのである。
【0069】
図5に、本発明の一比較例の浄水器用カートリッジ101を側方から見た断面を模式的に示す。
【0070】
上記浄水器用カートリッジ101は、中空糸膜エレメントカバー11を設けていない点、つまり、図1の内側部材3とは異なる形状の内側部材103を備えている点のみが上記浄水器用カートリッジ1と異なっている。したがって、図5において、図1に示した浄水器用カートリッジ1の構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。なお、図5の102は、外側部材9および内側部材103からなるカートリッジ本体である。
【0071】
この比較例の浄水器用カートリッジ101を逆洗する場合、図6の矢印B101で示すように、浄水出水口6から内側部材103内に逆洗用水を流す。そうすると、上記カートリッジ本体102の上端部に原水流入口5および浄水出水口6を設けているので、第2通路R2を流れた後、Uターンし、中空糸膜17を通過して、矢印B102〜B105で示すように流れる。このとき、上記中空糸膜17の両端部以外の部分は大径円筒部112で取り囲まれていないので、逆洗用水が、大径円筒部112の下端近傍でUターンすることになり、中空糸膜17のポッティング材13近傍の部分を集中的に流れてしまう。つまり、上記逆洗用水の所謂ショートカットが起きてしまう。その結果、上記逆洗用水の流れは矢印B101〜B105で示すようなU字状になって、中空糸膜17のポッティング材13近傍の部分しか逆洗できない。このように、比較例では、カートリッジ本体102の上端部に同一方向に開口する原水流入口5および浄水出水口6を設けているために、逆洗用水の流れがU字状になる状況下で、図1の中空糸膜エレメントカバー11を備えていないので、抵抗が少ない中空糸膜17の最短経路をなす一部(中空糸膜17におけるポッティング材13のすぐ下側の部分)のみが局所的に洗浄されて、その後は、他の部分が洗浄されないショートカットが生じて、逆洗が不十分となり、また、逆洗で使用する逆洗用水の量が大量となり、かつ、逆洗が長時間になるという問題が起こるのである。
【0072】
これに対して、本発明の図1の第1実施形態では、中空糸膜エレメントカバー11が第1通路R1内にあるので、上記問題が起こるようなことがない。
【0073】
上記第1実施形態では、中空糸膜エレメントカバー11は、内側部材3と一体に形成したが、内側部材3と別体で形成してもよい。
【0074】
上記第1実施形態では、中空糸膜17を用いていたが、精密ろ過膜、限外ろ過膜またはナノろ過膜等からなるスパイラル膜、チューブラー膜または平膜を用いてもよい。
【0075】
上記第1実施形態では、中空糸膜17の屈曲部の下端部17aの下端を大径円筒部12の下端よりも上側に位置させていたが、中空糸膜17の屈曲部の下端部17aの下端と大径円筒部12の下端とを同じ高さにしてもよい。
【0076】
上記第1実施形態では、原水流入口5は浄水出水口6を取り囲むように環状に設けていたが、原水流入口5および浄水出水口6を互いに離間して設けてもよい。
【0077】
上記第1実施形態では、原水導入用配管14の接続用端部18の内周面にOリングを取り付けていたが、外側部材9の上端部の外周面にOリングを取り付けてもよい。
【0078】
上記第1実施形態では、浄水排出用配管15の接続用端部19の内周面にOリングを取り付けていたが、内側部材3の小径円筒部10の外周面にOリングを取り付けてもよい。
【0079】
上記第1実施形態では、大径円筒部12の内周面に螺旋状の溝を設けてもよい。この溝設けることにより、大径円筒部12内で原水を旋回させて、原水から異物を遠心力で分離できる。
【0080】
上記第1実施形態では、小径円筒部10および大径円筒部12を円筒状に形成したが、小径円筒部10および大径円筒部12の少なくとも一方を、浄水出水口6から離れるにしたがって径が大きくなるようにしてもよく、あるいは、小さくなるようにしてもよい。
【0081】
上記第1実施形態において、外側部材9および内側部材3の少なくとも一方を透明樹脂または不透明樹脂で形成してもよい。
【0082】
上記第1実施形態では、カートリッジ本体2は略円筒形であったが、箱状のカートリッジ本体を用いてもよい。
【0083】
上記第1実施形態の有底円筒状の外側部材9に換えて、有底角筒状の外側部材を用いてもよい。
【0084】
上記第1実施形態の段付円筒状の内側部材3に換えて、段付角筒状の内側部材を用いてもよい。
【0085】
上記第1実施形態の内側部材103に換えて、図7に示す内側部材203を用いてもよい。この内側部材203の大径円筒部212の一部を構成する中空糸膜エレメントカバー211には、中空糸膜17の全体に略均等に水が流れるようにするための貫通穴216を、周方向および軸方向(中空糸膜17が延びる方向)に所定の間隔を空けて複数設けている。これにより、上記大径円筒部212と中空糸膜17の間の距離が狭くても、逆洗用水を中空糸膜17の全体に略均等に流体が流せる。したがって、上記大径円筒部212と中空糸膜17の間の隙間を狭くしても、中空糸膜17において逆洗できない部分が増加するのを防ぐことができる。
【0086】
上記第1実施形態のカートリッジ本体2に換えて、図8に示すカートリッジ本体302を用いてもよい。このカートリッジ本体302の上端部には、第1開口の一例としての原水流入口305と、浄水出水口6とを、互いに離間するように設けている。また、上記カートリッジ本体302では、原水流入口305からの原水が、外側部材309と大径円筒部12との間の第1通路R301を通った後、中空糸膜エレメント4を通って濾過されて浄水となって、第2通路R2を通って浄水出水口6に向かって流れる。ここでは、上記原水流入口305から中空糸膜エレメント4までの間が上記第1通路R301であり、中空糸膜エレメント4から浄水出水口6までの間が上記第2通路R2である。
【0087】
このようなカートリッジ本体302を用いた場合でも、原水流入口305および浄水出水口6がカートリッジ本体302の上端部にあるので、カートリッジ本体302の上端部に対してのみ着脱作業を行えばよく、この着脱作業は簡単である。
【0088】
また、上記カートリッジ本体302においても、中空糸膜エレメントカバー11が細長く延在する中空糸膜17の周囲を覆うので、特に逆洗用水のショートカットが生じ易い細長く延在する中空糸膜17を使用しても、逆洗用水のショートカットを防止でき、中空糸膜17に略均等に逆洗用水を流すことができる。
【0089】
なお、図7,図8において、図1に示した浄水器用カートリッジ1の構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0090】
下表1に、上記浄水器用カートリッジ1等に係る実験結果を示す。下表1において、「筒有り」は図1の浄水器用カートリッジ1を指し、また、「筒無し」は図5の浄水器用カートリッジ101を指す。すなわち、下表1において、No.1およびNo.3は、浄水器用カートリッジ101を用いた実験の結果を示す一方、No.2は、浄水器用カートリッジ1を用いた実験の結果を示す。
【0091】
【表1】
【0092】
〔試験条件〕
(1)カオリン2.0mg/L、フミン酸ナトリウム1.0mg/Lを添加した水道水をポンプで中空糸膜エレメント4に送ることにより、水道水を濾過する。
(2)原水流入口5側と浄水出水口6側の差圧が0.1MPaで、浄水出水口6から出る浄水の流量が1.0L/minに低下した時点を、中空糸膜エレメント4の寿命が尽きた点とし、この点までに濾過できた水道水の水量を処理量とする。
〔逆洗条件〕
70Lの原水を処理するごとに、浄水出水口6から内側部材3内に逆洗用水を5分間流し続ける。
〔中空糸膜エレメント構造〕
(1)ポリプロピレン製の中空糸膜を中空糸膜17として使用する。
(2)中空糸膜17の膜面積を1.1m2とする。
(3)中空糸膜17の束の直径を約32〜34mmにする。
(4)中空糸膜エレメントカバー11の内径を37mmにする。
(5)原水および逆洗用水の水圧で変形しないようにABS樹脂で形成した内側部材を内側部材103として使用する。
【0093】
上記表1において、No.2とNo.3とを比較すると判るように、No.3よりもNo.2の方が十分に逆洗できて、濾過できる水道水の水量が増えている。
【0094】
〔第2実施形態〕
図9に、本発明の第2実施形態の浄水器用カートリッジ401を側方から見た断面を模式的に示す。また、図9において、図1に示した第1実施形態の構成部と同一構成部は、第1実施形態の構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0095】
上記浄水器用カートリッジ401は、ABS樹脂製の段付円筒状の内側部材403と、樹脂製の網目状のネット421とを備えている点が、上記第1実施形態の浄水器用カートリッジ1と異なっている。なお、上記内側部材403は、原水および逆洗用水の水圧で変形するようなものではない。
【0096】
上記内側部材403は、外側部材9の内側に位置し、図示しない放射状のアームで外側部材9に固定している。また、上記内側部材403は、小径円筒部10と、この小径円筒部10に連なる大径円筒部412とを有している。この大径円筒部412には中空糸膜エレメント4を設けており、大径円筒部412の中空糸膜エレメント4の周り部分は、分離膜カバーの一例である中空糸膜エレメントカバー411を構成している。したがって、上記中空糸膜エレメントカバー411は、第1通路R1と中空糸膜17との間に配置されていることになる。この中空糸膜エレメントカバー411は、中空糸膜17が延びる方向に延在し、中空糸膜17のU字状の先端部つまり下端部17aの側方も覆っている。このように、上記中空糸膜エレメントカバー411が中空糸膜17の大部分の周りで上記大部分との間に隙間を持って上記大部分を覆っているので、中空糸膜エレメント4の全体に水が略均等に流れる。また、上記中空糸膜エレメントカバー411は、ポッティング材13から外側部材9の底部に近づくにしたがって径が大きくなっている。すなわち、上記中空糸膜エレメントカバー411は、浄水出水口6側から離れて行くにしたがって末広がりとなるように傾斜している。
【0097】
上記ネット421は、中空糸膜17のポッティング材13から露出している部分に全周に渡って巻き付けられ、その部分を覆っている。また、上記ネット421の網目の大きさは、中空糸膜17から離間した付着物が通過できる程度であればよいが、原水および逆洗用水の流れに悪影響を及ぼさない観点上、小さすぎない方がよい。
【0098】
上記構成の浄水器用カートリッジ401を逆洗する場合、浄水出水口6から内側部材403内に逆洗用水を入れる。そうすると、上記逆洗用水が、第2通路R2を流れて、中空糸膜エレメント4の中空糸膜17を通過することにより、中空糸膜17の孔を塞いでいた付着物が中空糸膜17から離間する。このとき、上記中空糸膜エレメントカバー411は、浄水出水口6側から離れて行くにしたがって末広がりとなるように傾斜しているので、中空糸膜17から離間した付着物が、中空糸膜17と中空糸膜エレメントカバー411との間の隙間に詰まるのを防ぐことができる。したがって、上記付着物が逆洗用水と共に第1通路R1に流れ易くなるので、中空糸膜17の洗浄効果を向上させることができる。
【0099】
また、上記逆洗用水を浄水出水口6から内側部材403内に逆洗用水を入れたとき、ネット412が中空糸膜17を覆っているので、逆洗用水の流れによって中空糸膜17の形状が崩れないようにすることができる。したがって、上記中空糸膜エレメントカバー411と中空糸膜17との間の隙間が小さくなるのを防ぐことができる。
【0100】
また、上記浄水器用カートリッジ401の製造時、ネット421が中空糸膜17を覆っていれば、中空糸膜17の形状が安定するので、第1通路R1と中空糸膜17との間に中空糸膜エレメントカバー411を容易に配置できる。
【0101】
また、上記浄水器用カートリッジ401の輸送時、ネット421が中空糸膜17を覆っていることにより、振動や衝撃による中空糸膜17へのダメージを緩和できる。
【0102】
上記第2実施形態では、ネット421は、中空糸膜17のポッティング材13から露出している部分の全部を全周に渡って覆うようにしていたが、中空糸膜17のポッティング材13から露出している部分の一部を全周に渡って覆うようにしてもよい。
【0103】
上記第2実施形態のネット421に換えて、中空糸膜エレメント4の全部を覆うネットを用いてもよい。
【0104】
〔第3実施形態〕
図10に、本発明の第3実施形態の浄水器用カートリッジ501を側方から見た断面を模式的に示す。また、図10において、図9に示した第2実施形態の構成部と同一構成部は、第2実施形態の構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0105】
上記浄水器用カートリッジ501は、段付円筒状の内側部材503を備えている点が、上記第2実施形態の浄水器用カートリッジ401と異なっている。
【0106】
上記内側部材503は、外側部材9の内側に位置し、図示しない放射状のアームで外側部材9に固定している。また、上記内側部材503は、樹脂製の小径円筒部10と、この小径円筒部10に連なる大径円筒部512と、分離膜カバーの一例である中空糸膜エレメントカバー511とを有している。この大径円筒部512には中空糸膜エレメント5を設けている。なお、上記内側部材503において、中空糸膜エレメントカバー511以外の部分は、ABS樹脂で形成し、原水および逆洗用水の水圧で変形しないようにしている。
【0107】
上記中空糸膜エレメントカバー511は、PET(ポリエチレンテレフタレート)を溶融してフィルム状にした後、冷却することで得ている。また、上記中空糸エレメントカバー511の上端は大径円筒部512の下端に超音波溶着で接合されている。また、上記中空糸膜エレメントカバー511は、第1通路R1と中空糸膜17との間に配置されており、中空糸膜17が延びる方向に延在し、中空糸膜17のU字状の先端部つまり下端部17aの側方も覆っている。このように、上記中空糸膜エレメントカバー511が中空糸膜17の大部分の周りで上記大部分との間に隙間を持って上記大部分を覆っているので、中空糸膜エレメント5の全体に水が略均等に流れる。なお、上記フィルム状の中空糸エレメントカバー511は例えばブロー成型して大径円筒部512の下端に連なるようにしてもよい。
【0108】
上記構成の浄水器用カートリッジ501を逆洗する場合、浄水出水口6から内側部材503内に逆洗用水を入れる。そうすると、上記逆洗用水が、第2通路R2を流れて、中空糸膜エレメント4の中空糸膜17を通過することにより、中空糸膜17の孔を塞いでいた付着物が中空糸膜17から離間する。このとき、上記中空糸膜エレメントカバー511がフィルム状であるので、逆洗用水の水圧に応じて変形する。その結果、上記中空糸膜エレメントカバー511と中空糸膜17との間の隙間が適切な大きさに調節される。したがって、上記逆洗用水をスムーズに流すことができるので、中空糸膜17の洗浄効果を向上させることができる。
【0109】
また、上記中空糸膜エレメントカバー511がフィルム状であるので、中空糸膜エレメントカバー511と中空糸膜17との間の隙間を確保しつつ、カートリッジ本体2を小型化することができる。
【0110】
また、上記フィルム状の中空糸膜エレメントカバー511の厚さは、上記第2実施形態の中空糸膜エレメントカバー511の厚さの1/10程度にすることができる。具体的には、中空糸膜エレメントカバー511の厚さを、0.05mm〜0.30mmの範囲内の厚さにすることができる。したがって、上記中空糸膜エレメントカバー511をフィルム状に形成することにより、中空糸膜エレメントカバー511の材料費を低減できる。
【0111】
下表2に、上記浄水器用カートリッジ1等に係る実験結果を示す。なお、下表2において、「筒有り」は図1の浄水器用カートリッジ1を指し、また、「筒無し」は図5の浄水器用カートリッジ101を指し、また、「筒有り(フィルム)」は図10の浄水器用カートリッジ501を指す。すなわち、下表2において、No.11、No.12およびNo.14は、浄水器用カートリッジ1を用いた実験の結果を示すし、また、No.13は、浄水器用カートリッジ1を用いた実験の結果を示し、また、No.15は、浄水器用カートリッジ101を用いた実験の結果を示す。
【0112】
【表2】
【0113】
〔試験条件〕
(1)カオリン2.0mg/L、フミン酸ナトリウム1.0mg/Lを添加した水道水をポンプで中空糸膜エレメント4に送ることにより、水道水を濾過する。
(2)原水流入口5側と浄水出水口6側の差圧が0.1MPaで、浄水出水口6から出る浄水の流量が1.0L/minに低下した時点を、中空糸膜エレメント4の寿命が尽きた点とし、この点までに濾過できた水道水の水量を処理量とする。
〔逆洗条件〕
70Lの原水を処理するごとに、浄水出水口6から内側部材3内に逆洗用水を5分間流し続ける。
〔中空糸膜エレメント構造およびその周辺構造〕
(1)ポリプロピレン製の中空糸膜を中空糸膜17として使用する。
(2)中空糸膜17の膜面積を1.4m2とする。
(3)中空糸膜17の束の直径は約48〜50mmとする。
(4)中空糸膜エレメントカバー11,511の内径を50mmとする。
(5)原水および逆洗用水の水圧で変形しないようにABS樹脂で形成した内側部材を内側部材103として使用する。
(6)PET製の厚さ0.1mmのフィルムを中空糸膜エレメントカバー511として使用する。
【0114】
上記表2において、No.14とNo.15とを比較すると判るように、中空糸膜エレメントカバー11の内面と中空糸膜17との間に隙間が無い場合には、中空糸膜エレメントカバー11があると、逆洗効果が低下して、濾過できる水道水の水量が減っている。
【0115】
また、上記表2において、No.12とNo.14,No.15とを比較すると判るように、中空糸膜17にネット421を付けることにより、逆洗効果が向上して、濾過できる水道水の水量が増えている。これは、上記中空糸膜17の束の広がりをネット421で制限することで、中空糸膜エレメントカバー11の内面と中空糸膜17との間に隙間ができ、逆洗効果が向上したためだと考えられる。
【0116】
また、上記表2において、No.13とNo.14,No.15とを比較すると判るように、フィルム状の中空糸膜エレメントカバー511を用いることにより、逆洗効果が向上して、濾過できる水道水の水量が増えている。これは、水圧(水流)によってフィルム状の中空糸膜エレメントカバー511が変形するため、中空糸膜17の形状が不安定であっても、中空糸膜エレメントカバー11の内面と中空糸膜17との間に一定の隙間を確保できるためだと考えられる。
【0117】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1〜第3実施形態のそれぞれに記載した事項を組み合わせたものを本発明の一実施形態としてもよい。例えば、上記第2,第3実施形態の中空糸膜エレメントカバー411,511に、図7の貫通穴216と同様の貫通孔を設けてもよい。このようにする場合、上記中空糸膜エレメントカバー411,511の下端部のみに、周方向に所定の間隔を空けて貫通孔を設けてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1,401,501…浄水器用カートリッジ
2,302…カートリッジ本体
3,203,403,503…内側部材
4…中空糸膜エレメント
5,305…原水流入口
6…浄水出水口
9,309…外側部材
10…小径円筒部
11,211,411,511…中空糸膜エレメントカバー
12,212,412,512…大径円筒部
13…ポッティング材
14…原水導入用配管
15…浄水排出用配管
17…中空糸膜
20…浄水器本体
216…貫通孔
421…ネット
R1,R301…第1通路
R2…第2通路
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水器用カートリッジおよびそれを備えた浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水器用カートリッジとしては、特開2003−53160号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この浄水器用カートリッジは、複数の中空糸膜を収容し、下方に開口している下部接続口が原水導入用配管および逆洗用配管に接続されている一方、上方に開口している上部接続口が浄水排出用配管に接続されている。
【0003】
浄水時、上記原水導入用配管に設けられた弁が開放されて、原水が原水導入用配管から浄水器用カートリッジの下部接続口に流入して、中空糸膜の外側表面から内側表面に向かって透過することで浄水になる。その後、上記浄水は、浄水器用カートリッジの上部接続口から浄水排出用配管に排出される。このとき、上記逆洗用配管に設けられた弁は閉鎖されている。
【0004】
一方、逆洗時、逆洗用水が、浄水排出用配管から浄水器用カートリッジの上部接続口に流入して、中空糸膜の内側表面から外側表面に向かって透過する。これにより、上記中空糸膜の外側表面に付着した付着物が離間して逆洗用水と共に浄水器用カートリッジの下部接続口から逆洗用配管に流出する。なお、逆洗時、原水導入用配管に設けられた弁は閉鎖され、かつ、逆洗用配管に設けられた弁は開放されている。
【0005】
このように、従来の浄水器用カートリッジでは、浄水排出用配管のための上方に開口した1つの上部接続口がある一方、原水導入用配管および逆洗用配管のための下方に開口した2つの下部接続口があるため、浄水器用カートリッジの上方での上部接続口から浄水排出用配管を取り外す作業と、浄水器用カートリッジの下方での2つの下部接続口から原水導入用配管および逆洗用配管を取り外す作業とを必要とし、3つの配管の取り外し作業が必要である上に、浄水器用カートリッジの上方と下方とで取り外し作業が必要であるため、取り外し作業が煩雑であるという問題がある。
【0006】
また、上記浄水器用カートリッジの取り付け作業も同様に、上方の1つの上部接続口の1箇所と、下方の2つの下部接続口の2箇所とで、取り付け作業を行わなければならないため、取り付け作業も煩雑であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−53160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、浄水器本体への着脱にかかる手間が少なく、簡単に交換できる浄水器用カートリッジおよびそれを備えた浄水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の浄水器用カートリッジは、
一方の端部に第1開口および第2開口を有すると共に、上記第1開口に連通する第1通路と、上記第2開口に連通する第2通路とを内部に有するカートリッジ本体と、
上記第1通路から第2通路に流れる水を濾過する分離膜と、
上記第1通路と上記分離膜との間に配置されて、上記分離膜との間に隙間を持って上記分離膜を覆う分離膜カバーと
を備えたことを特徴としている。
【0010】
ここで、上記「一方の端部」とは、分離膜の一端を境界にしてこの境界よりも上記一方の側にあるカートリッジ本体の部分を意味する。
【0011】
上記構成によれば、浄水器本体に着脱する場合、第1開口および第2開口がカートリッジ本体の一方の端部にあるので、浄水器本体への着脱作業はカートリッジ本体の一方の端部に対して行えば終了する。したがって、上記浄水器本体への着脱にかかる手間が少なく、簡単に交換できる。
【0012】
また、上記浄水器用カートリッジは、上記第1開口と第2開口との2箇所を浄水器本体に接続すればよいので、従来(特開2003−53160号公報)に比べて接続箇所が少なくて、着脱が容易である。
【0013】
また、上記分離膜で浄水を生成する場合、原水をカートリッジ本体の第1開口に供給すると、原水は第1通路から第2通路へ流れる。このとき、上記分離膜が第1通路から第2通路に流れる原水を濾過して浄水にするので、カートリッジ本体の第2開口から浄水を取り出すことができる。
【0014】
また、上記分離膜を逆洗する場合、逆洗用水を第2開口に供給すると、逆洗用水が第2通路から第1通路へ流れる。これにより、上記逆洗用水が原水の流れ方向とは逆方向に分離膜を流れるので、汚れ等の付着物が分離膜から離間する。その結果、上記付着物を逆洗用水と共に流して第1開口からカートリッジ本体外へ排出できる。
【0015】
この逆洗時、第1開口および第2開口がカートリッジ本体の一方の端部にあるため、逆洗用水はカートリッジ本体内においてU字状に流れの向きを変えることになり、そのため、必然的に分離膜を局所的に流れるショートカットが生じようとするが、上記分離膜カバーが有るためショートカットが防止されるのである。このように、上記分離膜カバーを設けているから、第1開口および第2開口がカートリッジ本体の一方の端部にあって、逆洗用水の流れがU字状に向きを変える流れであっても、分離膜を局所的に流れるショートカットが防止される。もし、上記分離膜との間に隙間を持って分離膜を覆う分離膜カバーがないならば、逆洗時に抵抗が少ない分離膜の最短経路をなす一部が局所的に洗浄されて、その後は、逆洗用水が分離膜の上記一部のみに流れて他の部分を流れなくて、逆洗用水はショートカットすることになって、その他の部分が洗浄されなくて逆洗が不完全となり、また、逆洗時に大量の逆洗用水が必要となって、かつ、長時間かけて逆洗を行わなければならないという問題があるのである。
【0016】
本発明は、上記カートリッジ本体内で逆洗用水が180°向きを変えることになっても、分離膜との間に隙間を持って分離膜を覆う分離膜カバーがあるので、逆洗用水が分離膜の全体を略均等に流れることができて、逆洗用水のショートカットが生じなく、分離膜の略全体を効率良く逆洗することができる。したがって、少ない逆洗用水で短時間で逆洗を効率良く略完全に行うことができる。
【0017】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記分離膜は、上記第2通路から上記第1通路に流れる水によって洗浄可能に設けられている。
【0018】
上記実施形態によれば、上記分離膜は、第2通路から第1通路に流れる水によって洗浄可能に設けられているので、第2開口に水を供給すると、その水が第2通路から第1通路に流れて分離膜を洗浄することが可能である。
【0019】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記第1開口および第2開口は同一方向に向かって開口する。
【0020】
上記実施形態によれば、上記第1開口および第2開口が同一方向に向いて開口しているので、上記浄水器用カートリッジを一方向に移動させて、ワンタッチで浄水器用カートリッジを浄水器本体に着脱可能にすることができる。
【0021】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記分離膜は、複数の中空糸膜を有する中空糸膜エレメントであり、
上記分離膜カバーは、上記中空糸膜エレメントの周囲を覆う中空糸膜エレメントカバーである。
【0022】
上記実施形態によれば、上記中空糸膜エレメントカバーが、水の流動方向に長く延びる中空糸エレメントの周囲を覆うので、特に逆洗用水のショートカットが生じ易い長く延びる中空糸エレメントを使用しても、逆洗用水のショートカットを防止できて、略均等に逆洗用水を流すことができる。
【0023】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記第1開口は上記第2開口を取り囲むように環状に設けられている。
【0024】
上記実施形態によれば、上記第1開口は第2開口を取り囲むように環状に設けているので、第1開口および第2開口に対する配管の着脱が容易となる。
【0025】
また、上記第1開口は第2開口を取り囲むように環状に設けているので、第1開口および第2開口を密に配置して、スペースを有効に利用して、上記第1開口および第2開口の開口面積を大きくすることができる。もし、仮に、第1開口および第2開口を、互いに離間して設けると、無駄なスペースが生じて必然的に開口面積が小さくなるのである。
【0026】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記分離膜カバーの上記分離膜に対向する部分には、上記分離膜の全体に略均等に水が流れるようにするための貫通穴が設けられている。
【0027】
上記実施形態によれば、上記分離膜カバーの分離膜に対向する部分には、分離膜の全体に略均等に水が流れるようにするための貫通穴が設けられているので、分離膜カバーと分離膜の間の距離を狭くして小型化できる。
【0028】
仮に、上記貫通穴を分離膜カバーの分離膜に対向する部分に設けていないなら、分離膜カバーと分離膜の間の距離を過度に狭くすると、分離膜の全体に略均等に水が流れなくなるので、分離膜において逆洗できない部分が大きくなってしまう可能性がある。
【0029】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記分離膜カバーは、上記第2開口側から離れて行くにしたがって末広がりとなるように傾斜している。
【0030】
上記実施形態によれば、逆洗用水を第2開口に供給すると、逆洗用水が第2通路から第1通路へ流れて、汚れ等の付着物が分離膜から離間する。このとき、上記分離膜カバーが、第2開口側から離れて行くにしたがって末広がりとなるように傾斜しているので、分離膜から離間した付着物が、分離膜カバーと分離膜との間の隙間に詰まるのを防ぐことができる。したがって、上記付着物が逆洗用水と共に第1通路に流れ易くなるので、分離膜の洗浄効果を向上させることができる。
【0031】
一実施形態の浄水器用カートリッジでは、
上記分離膜カバーはフィルム状に形成されている。
【0032】
上記実施形態によれば、逆洗用水を第2開口に供給すると、逆洗用水が第2通路から第1通路へ流れて、汚れ等の付着物が分離膜から離間する。このとき、上記分離膜カバーがフィルム状であるので、逆洗用水の水圧に応じて変形する。その結果、上記分離膜カバーと分離膜との間の隙間が適切な大きさに調節される。したがって、上記逆洗用水をスムーズに流すことができるので、分離膜の洗浄効果を向上させることができる。
【0033】
また、上記分離膜カバーがフィルム状であるので、分離膜カバーと分離膜との間の隙間を確保しつつ、カートリッジ本体を小型化することができる。
【0034】
また、上記フィルム状の分離膜カバーの厚さは、例えば樹脂成型品の分離膜カバーの厚さの1/10程度にすることができる。したがって、上記分離膜カバーをフィルム状に形成することにより、分離膜カバーの材料費を低減できる。
【0035】
一実施形態の浄水器用カートリッジは、
上記分離膜の少なくとも一部を覆うネットを備える。
【0036】
上記実施形態によれば、上記逆洗用水を第2開口に供給したとき、ネットが分離膜の少なくとも一部を覆うので、逆洗用水の流れによって分離膜の形状が崩れないようにすることができる。したがって、上記分離膜カバーと分離膜との間の隙間が小さくなるのを防ぐことができる。
【0037】
また、上記浄水器用カートリッジの製造時、ネットが分離膜の少なくとも一部を覆っていれば、分離膜の形状が安定するので、第1通路と分離膜との間に分離膜カバーを容易に配置できる。
【0038】
また、上記浄水器用カートリッジの輸送時、ネットが分離膜の少なくとも一部を覆っていることにより、振動や衝撃による分離膜へのダメージを緩和できる。
【0039】
本発明の浄水器は、
浄水器本体と、
上記浄水器本体に着脱可能な本発明の浄水器用カートリッジと
を備えたことを特徴としている。
【0040】
上記構成によれば、上記浄水器本体に着脱可能な浄水器用カートリッジを備えることによって、浄水器用カートリッジを簡単に交換できるので、メンテンナンスの作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の浄水器用カートリッジによれば、カートリッジ本体が一方の端部に第1開口および第2開口を有するので、浄水器本体への着脱作業を行う箇所が少なく、この着脱作業は簡単になり、交換を容易に行うことができる。
【0042】
また、本発明の浄水器用カートリッジによれば、分離膜との間に隙間を持って分離膜を覆う分離膜カバーを備えるので、上記第1開口および第2開口がカートリッジ本体の一方の端部にあって着脱作業が簡単であるにも拘わらず、逆洗用水が分離膜を局部的に流れることがなく、逆洗用水のショートカットを防止でき、分離膜の全体に逆洗用水を略均等に流すことができて、逆洗用水の使用量を低減できて、短時間で逆洗をすることができる。
【0043】
本発明の浄水器によれば、上記浄水器本体に着脱可能な浄水器用カートリッジを備えるので、浄水器用カートリッジの交換が容易であり、メンテンナンスを作業性良く行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は本発明の第1実施形態の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【図2】図2は上記第1実施形態の浄水器用カートリッジを浄水器本体に取り付けた状態の模式断面図である。
【図3】図3は上記第1実施形態の浄水器用カートリッジにおける原水の流れを説明するための模式図である。
【図4】図4は上記第1実施形態の浄水器用カートリッジにおける逆洗用水の流れを説明するための模式図である。
【図5】図5は本発明の一比較例の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【図6】図6は上記比較例の浄水器用カートリッジにおける逆洗用水の流れを説明するための模式図である。
【図7】図7は本発明の一変形例の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【図8】図8は本発明の一変形例の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【図9】図9は本発明の第2実施形態の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【図10】図10は本発明の第3実施形態の浄水器用カートリッジの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の浄水器用カートリッジおよび浄水器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0046】
〔第1実施形態〕
図1に、本発明の第1実施形態の浄水器用カートリッジ1を側方から見た断面を模式的に示す。
【0047】
上記浄水器用カートリッジ1は、樹脂製のカートリッジ本体2と、分離膜の一例としての中空糸膜エレメント4とを備えている。
【0048】
上記カートリッジ本体2の上端部には、第1開口の一例としての原水流入口5と、第2開口の一例としての浄水出水口6とを、同一方向である上方に向いて開口するように設けている。この原水流入口5は浄水出水口6を取り囲むように環状に設けていて、原水流入口5と浄水出水口6とを略同心に配置している。
【0049】
また、上記カートリッジ本体2は、有底円筒状の外側部材9と、外側部材9の内側に配置された段付円筒状の内側部材3とからなる。上記内側部材3は、図示しない放射状のアームで外側部材9に固定している。この内側部材3の小径円筒部10の上方に向いた開口は浄水出水口6である。また、上記外側部材9の上端部と内側部材3の小径円筒部10との間の上方に向いた環状の開口は、原水流入口5である。上記小径円筒部10に連なる大径円筒部12には分離膜の一例である中空糸膜エレメント4を設けている。なお、上記内側部材3は、全体がABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂で形成されており、原水および逆洗用水の水圧で変形するようなものではない。
【0050】
上記中空糸膜エレメント4は、U字状に屈曲された複数(見易くするために1つのみ図示)の中空糸膜17を、それらの両端部の開口状態を保つように、上記両端部をポッティング材13によって集束してなる。上記原水流入口5からの原水が、上記外側部材9と内側部材3との間の第1通路R1を通った後、中空糸膜エレメント4を通って濾過されて浄水となって、上記内側部材3の内部の第2通路R2を通って浄水出水口6に向かって流れる。上記原水流入口5から中空糸膜エレメント4までの間が上記第1通路R1であり、中空糸膜エレメント4から浄水出水口6までの間が上記第2通路R2である。
【0051】
上記大径円筒部12の中空糸膜エレメント4の周り部分は、分離膜カバーの一例である中空糸膜エレメントカバー11を構成している。したがって、上記中空糸膜エレメントカバー11は、第1通路R1と中空糸膜17との間に配置されていることになる。この中空糸膜エレメントカバー11は、中空糸膜17が延びる方向に延在し、中空糸膜17のU字状の先端部つまり下端部17aの側方も覆っている。このように、上記中空糸膜エレメントカバー11が中空糸膜17の大部分の周りで上記大部分との間に隙間を持って上記大部分を覆っているので、中空糸膜エレメント4の全体に水が略均等に流れる。
【0052】
上記中空糸膜17は、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜等を例えば0.5mm〜30mm程度の太さで中が空胴の糸状に成型したものである。また、上記中空糸膜17の屈曲部の下端部17aの下端を大径円筒部12の下端よりも上側に位置させて、中空糸膜17の屈曲部が大径円筒部12から突出しないようにしている。なお、上記中空糸膜17の材質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等がある。
【0053】
図2に、上記浄水器用カートリッジ1を浄水器の浄水器本体20に取り付けた状態を側方から見た断面を模式的に示す。
【0054】
上記浄水器本体20は、浄水器用カートリッジ1に向かって原水が流れる原水導入用配管14と、浄水器用カートリッジ1から出た浄水が流れる浄水排出用配管15を備えている。上記原水導入用配管14,浄水排出用配管15の接続用端部18,19の内周面には、図示しないOリングを取り付けている。
【0055】
上記構成の浄水器用カートリッジ1を浄水器本体20に取り付ける場合、接続用端部18,19へ原水流入口5,浄水出水口6を向け、浄水器用カートリッジ1を浄水器本体20に近づく上方向に移動させて、原水導入用配管14の接続用端部18内に外側部材9の上端部を挿入すると共に、浄水排出用配管15の接続用端部19内に内側部材3の小径円筒部10を挿入する。一方、上記浄水器用カートリッジ1を取り外す場合、浄水器用カートリッジ1を浄水器本体20から離れる下方向に移動させる。
【0056】
このように、上記浄水器用カートリッジ1を浄水器本体20に着脱する場合、原水流入口5および浄水出水口6がカートリッジ本体2の上端部にあるので、カートリッジ本体2の上端部に対してのみ着脱作業を行えばよい。したがって、上記浄水器用カートリッジ1は着脱にかかる手間が少なく、簡単に交換できる。
【0057】
また、上記浄水器用カートリッジ1は、原水流入口5,浄水出水口6の2箇所を接続用端部18,19に接続すればよいので、従来(特開2003−53160号公報)に比べて接続箇所が少なくて、着脱が容易である。
【0058】
さらに、上記原水流入口5および浄水出水口6が同一方向である上方に向いて開口しているので、浄水器用カートリッジ1を一方向である上方に移動させて、ワンタッチで浄水器用カートリッジ1を浄水器本体20に取り付けることが可能である。
【0059】
また、上記原水流入口5を浄水出水口6と略同心に設けているので、芯合わせが容易で、接続作業が容易である。
【0060】
また、上記浄水器が浄水器用カートリッジ1を備えることにより、浄水器のメンテンナンスの作業が飛躍的に向上させることができる。
【0061】
上記浄水器用カートリッジ1で浄水を生成する場合、図3の矢印A1で示すように、原水流入口5からカートリッジ本体2内に原水を流す。そうすると、上記原水は、矢印A2,A3で示すように、第1通路R1を流れ、外側部材9の底部へ向う。そして、上記原水は、外側部材9の底部近傍で矢印A4,A5で示すように流れて内側部材3の大径円筒部12の先端の中空糸膜エレメントカバー11内に入って浄水出水口6に向かって流れる。ここで、上記原水は、中空糸膜17で濾過されて浄水となった後、第2通路R2を流れて、矢印A6で示すように、浄水出水口6からカートリッジ本体2外に流出する。
【0062】
このように、上記原水が内側部材3の中空糸膜エレメントカバー11の下端から浄水出水口6に向かって流れることによって、中空糸膜17の屈曲部から両端部近くまでを原水が同じように流れるので、中空糸膜17の略全部が原水の濾過に有効に寄与して、原水から効率良く浄水を生成できる。
【0063】
一方、上記浄水器用カートリッジ1を逆洗する場合、図4の矢印B1で示すように、浄水出水口6から内側部材3内に逆洗用水を入れる。そうすると、上記逆洗用水が、第2通路R2を流れて、中空糸膜エレメント4の中空糸膜17を通過することにより、中空糸膜17の孔を塞いでいた付着物が中空糸膜17から離間する。そして、上記中空糸膜17を通過した逆洗用水は、矢印B2〜B5で示すように、第1通路R1を流れた後、矢印B6で示すように、原水流入口5からカートリッジ本体2外に流出する。したがって、上記付着物も逆洗用水と共に第1通路R1を流して、原水流入口5からカートリッジ本体2外に排出できる。
【0064】
この逆洗時、上記カートリッジ本体2の上端部に原水流入口5および浄水出水口6を設けているので、浄水出水口6に流した逆洗用水は、第2通路R2をカートリッジ本体2の下端部へ向かって流れた後、その下端部近傍でUターンし、第1通路R1をカートリッジ本体2の上端部へ向かって流れる。このように、上記逆洗用水のUターン状の流れが形成される状況下において、もし仮に、上記中空糸膜エレメント4の大部分の周りに隙間を持って覆う中空糸膜エレメントカバー11を設けていなければ、逆洗時に抵抗が少ない中空糸膜17の最短経路をなす一部が局所的に洗浄されて、その後は、逆洗用水が中空糸膜17のその一部を局所的に流れて他の部分を流れなくて、逆洗用水はショートカットすることになって、中空糸膜17の略全体を効率良く洗浄できなくて、逆洗が不十分になり、逆洗で使用する逆洗用水の量が大量となり、かつ、逆洗が長時間になるという問題が起こってしまう。
【0065】
これに対して、上記浄水器用カートリッジ1は、上記カートリッジ本体2の上端部に原水流入口5および浄水出水口6を設けているため、逆洗用水がカートリッジ本体2内において180°向きを変える流れになっても、中空糸膜エレメントカバー11が中空糸膜エレメント4の大部分の周りに隙間を持って覆うので、逆洗用水を中空糸膜17の全体に略均等に流すことができて、逆洗用水のショートカットが生じなく、中空糸膜17の略全体を効率良く逆洗することができる。したがって、少ない逆洗用水で短時間で逆洗を効率良く行うことができる。
【0066】
また、上記中空糸膜エレメントカバー11が細長く延在する中空糸膜17の周囲を覆うので、特に逆洗用水のショートカットが生じ易い細長く延在する中空糸膜17を使用しても、逆洗用水のショートカットを防止でき、中空糸膜17に略均等に逆洗用水を流すことができる。
【0067】
また、上記原水流入口5は浄水出水口6を取り囲むように環状に同心に設けているので、芯合わせが容易で、原水流入口5および浄水出水口6に対する接続用端部18,19の着脱が容易となる。
【0068】
また、上記原水流入口5は浄水出水口6を取り囲むように環状に設けているので、原水流入口5および浄水出水口6を密に配置して、スペースを有効に利用して、上記原水流入口5および浄水出水口6の開口面積を大きくすることができる。もし仮に、上記原水流入口5および浄水出水口6は、互いに離間して設けると、無駄なスペースが生じて必然的に開口面積が小さくなるのである。
【0069】
図5に、本発明の一比較例の浄水器用カートリッジ101を側方から見た断面を模式的に示す。
【0070】
上記浄水器用カートリッジ101は、中空糸膜エレメントカバー11を設けていない点、つまり、図1の内側部材3とは異なる形状の内側部材103を備えている点のみが上記浄水器用カートリッジ1と異なっている。したがって、図5において、図1に示した浄水器用カートリッジ1の構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。なお、図5の102は、外側部材9および内側部材103からなるカートリッジ本体である。
【0071】
この比較例の浄水器用カートリッジ101を逆洗する場合、図6の矢印B101で示すように、浄水出水口6から内側部材103内に逆洗用水を流す。そうすると、上記カートリッジ本体102の上端部に原水流入口5および浄水出水口6を設けているので、第2通路R2を流れた後、Uターンし、中空糸膜17を通過して、矢印B102〜B105で示すように流れる。このとき、上記中空糸膜17の両端部以外の部分は大径円筒部112で取り囲まれていないので、逆洗用水が、大径円筒部112の下端近傍でUターンすることになり、中空糸膜17のポッティング材13近傍の部分を集中的に流れてしまう。つまり、上記逆洗用水の所謂ショートカットが起きてしまう。その結果、上記逆洗用水の流れは矢印B101〜B105で示すようなU字状になって、中空糸膜17のポッティング材13近傍の部分しか逆洗できない。このように、比較例では、カートリッジ本体102の上端部に同一方向に開口する原水流入口5および浄水出水口6を設けているために、逆洗用水の流れがU字状になる状況下で、図1の中空糸膜エレメントカバー11を備えていないので、抵抗が少ない中空糸膜17の最短経路をなす一部(中空糸膜17におけるポッティング材13のすぐ下側の部分)のみが局所的に洗浄されて、その後は、他の部分が洗浄されないショートカットが生じて、逆洗が不十分となり、また、逆洗で使用する逆洗用水の量が大量となり、かつ、逆洗が長時間になるという問題が起こるのである。
【0072】
これに対して、本発明の図1の第1実施形態では、中空糸膜エレメントカバー11が第1通路R1内にあるので、上記問題が起こるようなことがない。
【0073】
上記第1実施形態では、中空糸膜エレメントカバー11は、内側部材3と一体に形成したが、内側部材3と別体で形成してもよい。
【0074】
上記第1実施形態では、中空糸膜17を用いていたが、精密ろ過膜、限外ろ過膜またはナノろ過膜等からなるスパイラル膜、チューブラー膜または平膜を用いてもよい。
【0075】
上記第1実施形態では、中空糸膜17の屈曲部の下端部17aの下端を大径円筒部12の下端よりも上側に位置させていたが、中空糸膜17の屈曲部の下端部17aの下端と大径円筒部12の下端とを同じ高さにしてもよい。
【0076】
上記第1実施形態では、原水流入口5は浄水出水口6を取り囲むように環状に設けていたが、原水流入口5および浄水出水口6を互いに離間して設けてもよい。
【0077】
上記第1実施形態では、原水導入用配管14の接続用端部18の内周面にOリングを取り付けていたが、外側部材9の上端部の外周面にOリングを取り付けてもよい。
【0078】
上記第1実施形態では、浄水排出用配管15の接続用端部19の内周面にOリングを取り付けていたが、内側部材3の小径円筒部10の外周面にOリングを取り付けてもよい。
【0079】
上記第1実施形態では、大径円筒部12の内周面に螺旋状の溝を設けてもよい。この溝設けることにより、大径円筒部12内で原水を旋回させて、原水から異物を遠心力で分離できる。
【0080】
上記第1実施形態では、小径円筒部10および大径円筒部12を円筒状に形成したが、小径円筒部10および大径円筒部12の少なくとも一方を、浄水出水口6から離れるにしたがって径が大きくなるようにしてもよく、あるいは、小さくなるようにしてもよい。
【0081】
上記第1実施形態において、外側部材9および内側部材3の少なくとも一方を透明樹脂または不透明樹脂で形成してもよい。
【0082】
上記第1実施形態では、カートリッジ本体2は略円筒形であったが、箱状のカートリッジ本体を用いてもよい。
【0083】
上記第1実施形態の有底円筒状の外側部材9に換えて、有底角筒状の外側部材を用いてもよい。
【0084】
上記第1実施形態の段付円筒状の内側部材3に換えて、段付角筒状の内側部材を用いてもよい。
【0085】
上記第1実施形態の内側部材103に換えて、図7に示す内側部材203を用いてもよい。この内側部材203の大径円筒部212の一部を構成する中空糸膜エレメントカバー211には、中空糸膜17の全体に略均等に水が流れるようにするための貫通穴216を、周方向および軸方向(中空糸膜17が延びる方向)に所定の間隔を空けて複数設けている。これにより、上記大径円筒部212と中空糸膜17の間の距離が狭くても、逆洗用水を中空糸膜17の全体に略均等に流体が流せる。したがって、上記大径円筒部212と中空糸膜17の間の隙間を狭くしても、中空糸膜17において逆洗できない部分が増加するのを防ぐことができる。
【0086】
上記第1実施形態のカートリッジ本体2に換えて、図8に示すカートリッジ本体302を用いてもよい。このカートリッジ本体302の上端部には、第1開口の一例としての原水流入口305と、浄水出水口6とを、互いに離間するように設けている。また、上記カートリッジ本体302では、原水流入口305からの原水が、外側部材309と大径円筒部12との間の第1通路R301を通った後、中空糸膜エレメント4を通って濾過されて浄水となって、第2通路R2を通って浄水出水口6に向かって流れる。ここでは、上記原水流入口305から中空糸膜エレメント4までの間が上記第1通路R301であり、中空糸膜エレメント4から浄水出水口6までの間が上記第2通路R2である。
【0087】
このようなカートリッジ本体302を用いた場合でも、原水流入口305および浄水出水口6がカートリッジ本体302の上端部にあるので、カートリッジ本体302の上端部に対してのみ着脱作業を行えばよく、この着脱作業は簡単である。
【0088】
また、上記カートリッジ本体302においても、中空糸膜エレメントカバー11が細長く延在する中空糸膜17の周囲を覆うので、特に逆洗用水のショートカットが生じ易い細長く延在する中空糸膜17を使用しても、逆洗用水のショートカットを防止でき、中空糸膜17に略均等に逆洗用水を流すことができる。
【0089】
なお、図7,図8において、図1に示した浄水器用カートリッジ1の構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0090】
下表1に、上記浄水器用カートリッジ1等に係る実験結果を示す。下表1において、「筒有り」は図1の浄水器用カートリッジ1を指し、また、「筒無し」は図5の浄水器用カートリッジ101を指す。すなわち、下表1において、No.1およびNo.3は、浄水器用カートリッジ101を用いた実験の結果を示す一方、No.2は、浄水器用カートリッジ1を用いた実験の結果を示す。
【0091】
【表1】
【0092】
〔試験条件〕
(1)カオリン2.0mg/L、フミン酸ナトリウム1.0mg/Lを添加した水道水をポンプで中空糸膜エレメント4に送ることにより、水道水を濾過する。
(2)原水流入口5側と浄水出水口6側の差圧が0.1MPaで、浄水出水口6から出る浄水の流量が1.0L/minに低下した時点を、中空糸膜エレメント4の寿命が尽きた点とし、この点までに濾過できた水道水の水量を処理量とする。
〔逆洗条件〕
70Lの原水を処理するごとに、浄水出水口6から内側部材3内に逆洗用水を5分間流し続ける。
〔中空糸膜エレメント構造〕
(1)ポリプロピレン製の中空糸膜を中空糸膜17として使用する。
(2)中空糸膜17の膜面積を1.1m2とする。
(3)中空糸膜17の束の直径を約32〜34mmにする。
(4)中空糸膜エレメントカバー11の内径を37mmにする。
(5)原水および逆洗用水の水圧で変形しないようにABS樹脂で形成した内側部材を内側部材103として使用する。
【0093】
上記表1において、No.2とNo.3とを比較すると判るように、No.3よりもNo.2の方が十分に逆洗できて、濾過できる水道水の水量が増えている。
【0094】
〔第2実施形態〕
図9に、本発明の第2実施形態の浄水器用カートリッジ401を側方から見た断面を模式的に示す。また、図9において、図1に示した第1実施形態の構成部と同一構成部は、第1実施形態の構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0095】
上記浄水器用カートリッジ401は、ABS樹脂製の段付円筒状の内側部材403と、樹脂製の網目状のネット421とを備えている点が、上記第1実施形態の浄水器用カートリッジ1と異なっている。なお、上記内側部材403は、原水および逆洗用水の水圧で変形するようなものではない。
【0096】
上記内側部材403は、外側部材9の内側に位置し、図示しない放射状のアームで外側部材9に固定している。また、上記内側部材403は、小径円筒部10と、この小径円筒部10に連なる大径円筒部412とを有している。この大径円筒部412には中空糸膜エレメント4を設けており、大径円筒部412の中空糸膜エレメント4の周り部分は、分離膜カバーの一例である中空糸膜エレメントカバー411を構成している。したがって、上記中空糸膜エレメントカバー411は、第1通路R1と中空糸膜17との間に配置されていることになる。この中空糸膜エレメントカバー411は、中空糸膜17が延びる方向に延在し、中空糸膜17のU字状の先端部つまり下端部17aの側方も覆っている。このように、上記中空糸膜エレメントカバー411が中空糸膜17の大部分の周りで上記大部分との間に隙間を持って上記大部分を覆っているので、中空糸膜エレメント4の全体に水が略均等に流れる。また、上記中空糸膜エレメントカバー411は、ポッティング材13から外側部材9の底部に近づくにしたがって径が大きくなっている。すなわち、上記中空糸膜エレメントカバー411は、浄水出水口6側から離れて行くにしたがって末広がりとなるように傾斜している。
【0097】
上記ネット421は、中空糸膜17のポッティング材13から露出している部分に全周に渡って巻き付けられ、その部分を覆っている。また、上記ネット421の網目の大きさは、中空糸膜17から離間した付着物が通過できる程度であればよいが、原水および逆洗用水の流れに悪影響を及ぼさない観点上、小さすぎない方がよい。
【0098】
上記構成の浄水器用カートリッジ401を逆洗する場合、浄水出水口6から内側部材403内に逆洗用水を入れる。そうすると、上記逆洗用水が、第2通路R2を流れて、中空糸膜エレメント4の中空糸膜17を通過することにより、中空糸膜17の孔を塞いでいた付着物が中空糸膜17から離間する。このとき、上記中空糸膜エレメントカバー411は、浄水出水口6側から離れて行くにしたがって末広がりとなるように傾斜しているので、中空糸膜17から離間した付着物が、中空糸膜17と中空糸膜エレメントカバー411との間の隙間に詰まるのを防ぐことができる。したがって、上記付着物が逆洗用水と共に第1通路R1に流れ易くなるので、中空糸膜17の洗浄効果を向上させることができる。
【0099】
また、上記逆洗用水を浄水出水口6から内側部材403内に逆洗用水を入れたとき、ネット412が中空糸膜17を覆っているので、逆洗用水の流れによって中空糸膜17の形状が崩れないようにすることができる。したがって、上記中空糸膜エレメントカバー411と中空糸膜17との間の隙間が小さくなるのを防ぐことができる。
【0100】
また、上記浄水器用カートリッジ401の製造時、ネット421が中空糸膜17を覆っていれば、中空糸膜17の形状が安定するので、第1通路R1と中空糸膜17との間に中空糸膜エレメントカバー411を容易に配置できる。
【0101】
また、上記浄水器用カートリッジ401の輸送時、ネット421が中空糸膜17を覆っていることにより、振動や衝撃による中空糸膜17へのダメージを緩和できる。
【0102】
上記第2実施形態では、ネット421は、中空糸膜17のポッティング材13から露出している部分の全部を全周に渡って覆うようにしていたが、中空糸膜17のポッティング材13から露出している部分の一部を全周に渡って覆うようにしてもよい。
【0103】
上記第2実施形態のネット421に換えて、中空糸膜エレメント4の全部を覆うネットを用いてもよい。
【0104】
〔第3実施形態〕
図10に、本発明の第3実施形態の浄水器用カートリッジ501を側方から見た断面を模式的に示す。また、図10において、図9に示した第2実施形態の構成部と同一構成部は、第2実施形態の構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0105】
上記浄水器用カートリッジ501は、段付円筒状の内側部材503を備えている点が、上記第2実施形態の浄水器用カートリッジ401と異なっている。
【0106】
上記内側部材503は、外側部材9の内側に位置し、図示しない放射状のアームで外側部材9に固定している。また、上記内側部材503は、樹脂製の小径円筒部10と、この小径円筒部10に連なる大径円筒部512と、分離膜カバーの一例である中空糸膜エレメントカバー511とを有している。この大径円筒部512には中空糸膜エレメント5を設けている。なお、上記内側部材503において、中空糸膜エレメントカバー511以外の部分は、ABS樹脂で形成し、原水および逆洗用水の水圧で変形しないようにしている。
【0107】
上記中空糸膜エレメントカバー511は、PET(ポリエチレンテレフタレート)を溶融してフィルム状にした後、冷却することで得ている。また、上記中空糸エレメントカバー511の上端は大径円筒部512の下端に超音波溶着で接合されている。また、上記中空糸膜エレメントカバー511は、第1通路R1と中空糸膜17との間に配置されており、中空糸膜17が延びる方向に延在し、中空糸膜17のU字状の先端部つまり下端部17aの側方も覆っている。このように、上記中空糸膜エレメントカバー511が中空糸膜17の大部分の周りで上記大部分との間に隙間を持って上記大部分を覆っているので、中空糸膜エレメント5の全体に水が略均等に流れる。なお、上記フィルム状の中空糸エレメントカバー511は例えばブロー成型して大径円筒部512の下端に連なるようにしてもよい。
【0108】
上記構成の浄水器用カートリッジ501を逆洗する場合、浄水出水口6から内側部材503内に逆洗用水を入れる。そうすると、上記逆洗用水が、第2通路R2を流れて、中空糸膜エレメント4の中空糸膜17を通過することにより、中空糸膜17の孔を塞いでいた付着物が中空糸膜17から離間する。このとき、上記中空糸膜エレメントカバー511がフィルム状であるので、逆洗用水の水圧に応じて変形する。その結果、上記中空糸膜エレメントカバー511と中空糸膜17との間の隙間が適切な大きさに調節される。したがって、上記逆洗用水をスムーズに流すことができるので、中空糸膜17の洗浄効果を向上させることができる。
【0109】
また、上記中空糸膜エレメントカバー511がフィルム状であるので、中空糸膜エレメントカバー511と中空糸膜17との間の隙間を確保しつつ、カートリッジ本体2を小型化することができる。
【0110】
また、上記フィルム状の中空糸膜エレメントカバー511の厚さは、上記第2実施形態の中空糸膜エレメントカバー511の厚さの1/10程度にすることができる。具体的には、中空糸膜エレメントカバー511の厚さを、0.05mm〜0.30mmの範囲内の厚さにすることができる。したがって、上記中空糸膜エレメントカバー511をフィルム状に形成することにより、中空糸膜エレメントカバー511の材料費を低減できる。
【0111】
下表2に、上記浄水器用カートリッジ1等に係る実験結果を示す。なお、下表2において、「筒有り」は図1の浄水器用カートリッジ1を指し、また、「筒無し」は図5の浄水器用カートリッジ101を指し、また、「筒有り(フィルム)」は図10の浄水器用カートリッジ501を指す。すなわち、下表2において、No.11、No.12およびNo.14は、浄水器用カートリッジ1を用いた実験の結果を示すし、また、No.13は、浄水器用カートリッジ1を用いた実験の結果を示し、また、No.15は、浄水器用カートリッジ101を用いた実験の結果を示す。
【0112】
【表2】
【0113】
〔試験条件〕
(1)カオリン2.0mg/L、フミン酸ナトリウム1.0mg/Lを添加した水道水をポンプで中空糸膜エレメント4に送ることにより、水道水を濾過する。
(2)原水流入口5側と浄水出水口6側の差圧が0.1MPaで、浄水出水口6から出る浄水の流量が1.0L/minに低下した時点を、中空糸膜エレメント4の寿命が尽きた点とし、この点までに濾過できた水道水の水量を処理量とする。
〔逆洗条件〕
70Lの原水を処理するごとに、浄水出水口6から内側部材3内に逆洗用水を5分間流し続ける。
〔中空糸膜エレメント構造およびその周辺構造〕
(1)ポリプロピレン製の中空糸膜を中空糸膜17として使用する。
(2)中空糸膜17の膜面積を1.4m2とする。
(3)中空糸膜17の束の直径は約48〜50mmとする。
(4)中空糸膜エレメントカバー11,511の内径を50mmとする。
(5)原水および逆洗用水の水圧で変形しないようにABS樹脂で形成した内側部材を内側部材103として使用する。
(6)PET製の厚さ0.1mmのフィルムを中空糸膜エレメントカバー511として使用する。
【0114】
上記表2において、No.14とNo.15とを比較すると判るように、中空糸膜エレメントカバー11の内面と中空糸膜17との間に隙間が無い場合には、中空糸膜エレメントカバー11があると、逆洗効果が低下して、濾過できる水道水の水量が減っている。
【0115】
また、上記表2において、No.12とNo.14,No.15とを比較すると判るように、中空糸膜17にネット421を付けることにより、逆洗効果が向上して、濾過できる水道水の水量が増えている。これは、上記中空糸膜17の束の広がりをネット421で制限することで、中空糸膜エレメントカバー11の内面と中空糸膜17との間に隙間ができ、逆洗効果が向上したためだと考えられる。
【0116】
また、上記表2において、No.13とNo.14,No.15とを比較すると判るように、フィルム状の中空糸膜エレメントカバー511を用いることにより、逆洗効果が向上して、濾過できる水道水の水量が増えている。これは、水圧(水流)によってフィルム状の中空糸膜エレメントカバー511が変形するため、中空糸膜17の形状が不安定であっても、中空糸膜エレメントカバー11の内面と中空糸膜17との間に一定の隙間を確保できるためだと考えられる。
【0117】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1〜第3実施形態のそれぞれに記載した事項を組み合わせたものを本発明の一実施形態としてもよい。例えば、上記第2,第3実施形態の中空糸膜エレメントカバー411,511に、図7の貫通穴216と同様の貫通孔を設けてもよい。このようにする場合、上記中空糸膜エレメントカバー411,511の下端部のみに、周方向に所定の間隔を空けて貫通孔を設けてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1,401,501…浄水器用カートリッジ
2,302…カートリッジ本体
3,203,403,503…内側部材
4…中空糸膜エレメント
5,305…原水流入口
6…浄水出水口
9,309…外側部材
10…小径円筒部
11,211,411,511…中空糸膜エレメントカバー
12,212,412,512…大径円筒部
13…ポッティング材
14…原水導入用配管
15…浄水排出用配管
17…中空糸膜
20…浄水器本体
216…貫通孔
421…ネット
R1,R301…第1通路
R2…第2通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に第1開口および第2開口を有すると共に、上記第1開口に連通する第1通路と、上記第2開口に連通する第2通路とを内部に有するカートリッジ本体と、
上記第1通路から第2通路に流れる水を濾過する分離膜と、
上記第1通路と上記分離膜との間に配置されて、上記分離膜との間に隙間を持って上記分離膜を覆う分離膜カバーと
を備えたことを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜は、上記第2通路から上記第1通路に流れる水によって洗浄可能に設けられていることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記第1開口および第2開口は同一方向に向かって開口することを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜は、複数の中空糸膜を有する中空糸膜エレメントであり、
上記分離膜カバーは、上記中空糸膜エレメントの周囲を覆う中空糸膜エレメントカバーであることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記第1開口は上記第2開口を取り囲むように環状に設けられていることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜カバーの上記分離膜に対向する部分には、上記分離膜の全体に略均等に水が流れるようにするための貫通穴が設けられていることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜カバーは、上記第2開口側から離れて行くにしたがって末広がりとなるように傾斜していることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜カバーはフィルム状に形成されていることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜の少なくとも一部を覆うネットを備えたことを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項10】
浄水器本体と、
上記浄水器本体に着脱可能な請求項1から9のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジと
を備えたことを特徴とする浄水器。
【請求項1】
一方の端部に第1開口および第2開口を有すると共に、上記第1開口に連通する第1通路と、上記第2開口に連通する第2通路とを内部に有するカートリッジ本体と、
上記第1通路から第2通路に流れる水を濾過する分離膜と、
上記第1通路と上記分離膜との間に配置されて、上記分離膜との間に隙間を持って上記分離膜を覆う分離膜カバーと
を備えたことを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜は、上記第2通路から上記第1通路に流れる水によって洗浄可能に設けられていることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記第1開口および第2開口は同一方向に向かって開口することを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜は、複数の中空糸膜を有する中空糸膜エレメントであり、
上記分離膜カバーは、上記中空糸膜エレメントの周囲を覆う中空糸膜エレメントカバーであることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記第1開口は上記第2開口を取り囲むように環状に設けられていることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜カバーの上記分離膜に対向する部分には、上記分離膜の全体に略均等に水が流れるようにするための貫通穴が設けられていることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜カバーは、上記第2開口側から離れて行くにしたがって末広がりとなるように傾斜していることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜カバーはフィルム状に形成されていることを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジにおいて、
上記分離膜の少なくとも一部を覆うネットを備えたことを特徴とする浄水器用カートリッジ。
【請求項10】
浄水器本体と、
上記浄水器本体に着脱可能な請求項1から9のいずれか1つに記載の浄水器用カートリッジと
を備えたことを特徴とする浄水器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−192398(P2012−192398A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182715(P2011−182715)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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