説明

浄水器

【課題】浄水器による水道水の浄化処理を行う前に、人体に有害な影響を及ぼす程度に放射性物質が混入した水道水の使用を防止する。
【解決手段】被浄化水からの放射線を検出する放射線検出手段(放射線検出器2)と、放射線検出手段の下流側に設けられ、被浄化水を浄化する浄化手段(浄化槽5)と、放射線検出手段の下流側であって浄化手段の上流側に設けられ、放射線検出手段により被浄化水からの放射線を検出した場合、被浄化水の浄化手段への流路を遮断する流路遮断手段(遮断弁31)と、を有することを特徴とする浄水器A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料水として使用する水道水を、より安全な水にする等の目的で浄水器が使用されている。例えば、特許文献1には、取り入れた水道水等から逆浸透圧により不浄化物を採取するメンブレン・フィルタと、メンブレン・フィルタの下流側に設けた他のフィルタとを有する浄水器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−57706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水道水中に、ヨウ素131等の放射性物質が混入した場合、従来のフィルタを用いても放射性物質の除去は困難と考えられている。そのため、一般に、放射性物質が混入した水道水の使用は、人体に害を及ぼす可能性があることが指摘されている。
本発明の目的は、浄水器による水道水の浄化処理を行う前に、人体に有害な影響を及ぼす程度に放射性物質が混入した水道水の使用を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして、以下の[1]〜[6]に係る発明が提供される。
[1]請求項1に係る発明は、被浄化水からの放射線を検出する放射線検出手段と、前記放射線検出手段の下流側に設けられ、前記被浄化水を浄化する浄化手段と、前記放射線検出手段の下流側であって前記浄化手段の上流側に設けられ、当該放射線検出手段により前記被浄化水からの放射線を検出した場合、当該被浄化水の当該浄化手段への流路を遮断する流路遮断手段と、を有することを特徴とする浄水器である。
[2]請求項2に係る発明は、前記放射線検出手段により前記被浄化水からの放射線を検出した場合、当該被浄化水が排出される排出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の浄水器である。
[3]請求項3に係る発明は、前記放射線検出手段により前記被浄化水からの放射線を検出した場合、当該放射線の検出を表示する表示手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の浄水器である。
[4]請求項4に係る発明は、前記浄化手段は、光触媒を坦持した多孔質炭化ケイ素構造材を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の浄水器である。
[5]請求項5に係る発明は、さらに、前記浄化手段は、前記多孔質炭化ケイ素構造材の内部に坦持された前記光触媒に紫外線エネルギが照射可能に配置された紫外線導光体を備えることを特徴とする請求項4に記載の浄水器である。
[6]請求項6に係る発明は、さらに、前記浄化手段は、前記紫外線導光体中に紫外線エネルギが導入可能に配置された発光ダイオード(LED)を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の浄水器である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、浄水器による水道水の浄化処理を行う前に、人体に有害な影響を及ぼす程度に放射性物質が混入した水道水の使用を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施の形態が適用される浄水器の一例を説明するフローシートである。
【図2】制御部における制御ステップを説明するフローチャートである。
【図3】本実施の形態が適用される浄水器の浄化槽を構成する浄化フィルタの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0009】
図1は、本実施の形態が適用される浄水器の一例を説明するフローシートである。
図1に示すように、浄水器Aは、水道の蛇口1から流出する水道水(被浄化水)の上流から下流に沿って、水道水に含まれる放射性物質からの放射線を検出する放射線検出器2(放射線検出手段)と、放射線の検出信号に基づき開閉する電磁弁3と、水道水を浄化する浄化槽5(浄化手段)とが、配管により連結されている。
電磁弁3は、放射線検出器2により放射線を検出した場合、水道水の流路を遮断(流路遮断手段)する遮断弁31と、放射線が検出された水道水を排出する排水弁32(排出手段)とが設けられた三方弁である。また、放射線検出器2により放射線を検出した場合、その旨を表示する表示装置4(表示手段)を有している。さらに、放射線検出器2により放射線を検出した場合、電磁弁3の開閉及び表示装置4の作動を制御する制御部6を備えている。
【0010】
放射線検出器2は、特に限定されず、例えば、ガイガー=ミュラー(GM)計数管、シンチレーション検出器、比例計数管、電離箱等が挙げられる。
電磁弁3は、水道水の流路の遮断と排水の両方を兼ね備えた三方弁である。通常、水道水の浄化槽5への流路を確保するために開放状態とされているが、放射線検出器2により放射線を検出した場合、水道水の浄化槽5への流路を遮断弁31により遮断し、排水弁32を開放して放射性物質を含む水道水を排出する。
表示装置4は、特に限定されず、例えば、表示ランプ等の光による表示;ブザー等の音による表示;着色等の色による表示等が挙げられる。
浄化槽5は、内部に水道水を浄化するための浄化フィルタが設けられている。浄化フィルタとしては特に限定されず、例えば、逆浸透膜、活性炭、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ケイ素等が挙げられる。
本実施の形態では、遮断弁31と排水弁32の開閉、表示装置4の動作は、放射線検出器2による放射線の検出信号に基づき、制御部6により制御されている。
【0011】
図2は、制御部6における制御ステップを説明するフローチャートである。
先ず、水道の蛇口1が開けられ(ステップ101)、被浄化水としての水道水は、配管1aの放射線検出器2が設けられた部分を通過し(ステップ102)、放射線の検出により人体に有害な影響を与える程度の放射性物質の有無が判定される(ステップ103)。
放射線検出器2による放射線の検出の結果、放射線が検出されず人体に有害な影響を与える程度の放射性物質が存在しないと判断された場合(YES)、電磁弁3の遮断弁31が開放し(ステップ104)且つ排水弁32が閉止することにより、水道水は、配管2a→電磁弁3→配管3bを介して浄化槽5に送られ、浄化処理が行われる(ステップ105)。浄化処理後の水道水は配管5aを介して飲料水等として使用に供される。
【0012】
一方、放射線検出器2による放射線の検出の結果、人体に有害な影響を与える程度の放射性物質が存在すると判断された場合(NO)、電磁弁3の遮断弁31が閉止し水道水の流路が遮断される(ステップ106)。次いで、排水弁32が開放され(ステップ107)、同時に表示装置4により放射線検出が表示(ステップ108)された後、水道水は、配管2a→電磁弁3(排水弁32)→配管3aを介して排水される(ステップ109)。これにより、浄水器Aによる水道水の浄化処理を行う前に、人体に有害な影響を及ぼす程度に放射性物質が混入した水道水の使用を防止することができる。
【0013】
図3は、本実施の形態が適用される浄水器Aの浄化槽5(図1参照)を構成する浄化フィルタ100の一例を説明する図である。
図3に示すように、浄化フィルタ100は、光触媒30を坦持した多孔質炭化ケイ素構造材10と、紫外線導光体20と、を備えている。紫外線導光体20は、被浄化水の流れる方向(B)に略平行に配置されている。
多孔質炭化ケイ素構造材10は、炭化ケイ素(SiC)を骨格とし、フィルタとして使用する際、浄化対象の流体が通過可能な3次元多孔質構造を有している。炭化ケイ素(SiC)の骨格は、架橋太さの平均が1mm以下、気孔率が85容量%以上である。
【0014】
紫外線導光体20は、多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に坦持された光触媒30に、波長200nm〜400nmの紫外線エネルギを照射するために、多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に配置されている。紫外線導光体20には、浄化フィルタ100の外部に設けた電源(図示せず)を用い、発光ダイオード(LED)200により発生した紫外線エネルギが導入される。本実施の形態では、発光ダイオード(LED)200として、ナイトライド・セミコンダクタ株式会社製NS375L−5RLL(発光波長375nm〜380nm、発光出力8.4mW〜14.0mW)等が挙げられる。
【0015】
本実施の形態では、紫外線導光体20は、波長300nmの紫外線の光線透過率が70%以上である紫外線透過性材料から形成されることが好ましい。通常、光触媒30は、波長400nm以下の紫外線エネルギの照射により触媒作用を発揮することが知られている。このため、紫外線の光線透過率が高い材料を用いて紫外線導光体20を形成することにより、多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に坦持された光触媒30が効率よく活性化される。紫外線透過性材料としては、例えば、紫外線透過性アクリル樹脂が挙げられる。このようなアクリル樹脂としては、例えば、株式会社クラレ株式会社製メタクリル樹脂パラグラス(登録商標)、住友化学株式会社製スミペックス010等の市販品が挙げられる。
【0016】
光触媒30は、浄化対象としての汚水等の流体中に含まれる有害有機物質等を酸化分解による光触媒反応が可能な金属酸化物が挙げられ、特に限定されるものではない。例えば、二酸化チタン(特に、アナタース型二酸化チタン)、ルチル型二酸化チタン、ブルッカイト型二酸化チタン等が挙げられる。さらに、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉛、酸化第二鉄等を含んでいても良い。本実施の形態では、光触媒30としては、アナタース型二酸化チタンを50質量%以上含んでいるものが好ましい。尚、これらの化合物は、複数種を適宜混合して用いてもよい。また、光触媒30は、粉末状、塊状、粒状、平板状、繊維状等の様々な形態のものを用いることができる。本実施の形態では、平均粒径1nm〜100nmの粉末状の二酸化チタンを使用している。
多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に坦持された光触媒30の量は特に限定されない。本実施の形態では、0.01〜99.9%の範囲で調製される。
【0017】
多孔質炭化ケイ素構造材10は、例えば、以下の製造方法により製造される。
先ず、スポンジ状多孔質構造体の有形骨格に、炭素源としての樹脂とシリコン粉末を混合したスラリー(Siスラリー)を含浸させた後、約70℃で12時間程度乾燥する。このとき、スラリー液が連続気孔部を塞がない程度にスラリー液を絞ることが好ましい。
スポンジ状多孔質構造体としては、例えば、発泡ポリウレタン等が挙げられる。Siスラリーの樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、有機金属ポリマー等が挙げられる。なお、必要に応じて炭素粉末、黒鉛粉末、カーボンブラック、骨材、酸化防止剤等の添加剤を添加する。シリコン粉末としては、平均粒径が1μm〜10μm程度の微粉末が特に好ましい。Siスラリーの分散媒には、メチルアルコール、エチルアルコール等が挙げられる。
【0018】
次に、スラリー液に含浸後乾燥したスポンジ状多孔質構造体を、真空又はアルゴン等の不活性雰囲気下において、900℃〜1350℃程度の温度で炭素化する。これによって炭素化した多孔質構造体が得られる。この多孔質構造体は、フェノール樹脂の炭素化による炭素部分とシリコン粉末が混ざりあった炭素化複合体である。続いて、この炭素化した多孔質構造体は、真空又はアルゴン等の不活性雰囲気下において、1350℃以上の温度で焼成処理し、炭素とシリコンとを反応させ、炭化ケイ素が多孔質構造体の有形骨格部分に形成された多孔質構造焼結体を得る。さらに、この多孔質構造焼結体は、真空又は不活性化雰囲気下で1300℃〜1800℃程度の温度における加熱により、有形骨格上にシリコンを溶融含浸した多孔質炭化ケイ素構造材10が得られる。
なお、本実施の形態では、多孔質炭化ケイ素構造材10の製造において使用するシリコン粉末のシリコン(Si)とフェノール樹脂等の炭素(C)との混合の割合は、シリコン(Si)と炭素(C)との原子比がSi/C=0.05〜4になるように選ぶのが望ましい。
【0019】
本実施の形態において、光触媒30は、通常、以下の手順により多孔質炭化ケイ素構造材10に坦持される。即ち、上述した製造方法により調製された多孔質炭化ケイ素構造材10を、二酸化チタン(TiO)等の光触媒30を含有するスラリー(TiOスラリー)に浸漬し、乾燥後、大気中において100℃〜800℃程度の温度で焼成する。尚、TiOスラリーの分散媒として水を使用する。
本実施の形態では、TiOスラリーには、例えば、ポリビニルアルコールの水溶液中に二酸化チタン(TiO)等を添加、所定の粘度に調整する。ポリビニルアルコールはTiOを多孔質炭化ケイ素構造材10の表面に固定する結着剤としても有用である。
TiOスラリー中の二酸化チタン(TiO)の濃度は特に限定されないが、本実施の形態では、多孔質炭化ケイ素構造材10に坦持した際に、チタン(Ti)と炭素(C)のモル比(Ti/C)が0.1〜2の範囲内になるように調整されている。
【0020】
本実施の形態が適用される浄水器Aは、水道水の水を浄化槽5による浄化処理を行う前に、予め、放射線を測定することにより、人体に有害な影響を与える程度の放射性物質が存在すると判断された場合は、その水道水を排出し、飲料水等としての使用が防止される。
また、本実施の形態が適用される浄水器Aによる放射線の検出は、水道の蛇口から流出する水道水に限定されない。例えば、野菜等の洗浄に使用した水を浄水器A中に注入することにより検出が可能である。
【0021】
さらに、図示しないが、放射線検出器2による放射線の検出の結果、人体に有害な影響を与える程度の放射性物質が存在すると判断された場合、浄水器Aの制御部6により制御される動作として、例えば、以下の事項が挙げられる。
(1)自宅に供給される水道水の供給ラインを閉止する。これにより、浄水器Aと連結されていない自宅の他の蛇口等から放射性物質に汚染された水道水の使用を回避することができる。
(2)携帯電話機の端末、インターネットあるいは通信機器等へ危険情報を送信する。これにより、関係機関への自動通報が行われ、危険情報の共有化および情報の集約が可能になる。
(3)浄水器Aの再使用を停止する。これにより、浄水器Aの安全確認措置を行うことができる。
【符号の説明】
【0022】
1…蛇口、2…放射線検出器、3…電磁弁、4…表示装置、5…浄化槽、6…制御部、10…多孔質炭化ケイ素構造材、20…紫外線導光体、30…光触媒、31…遮断弁、32…排水弁、100…浄化フィルタ、200…発光ダイオード(LED)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被浄化水からの放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線検出手段の下流側に設けられ、前記被浄化水を浄化する浄化手段と、
前記放射線検出手段の下流側であって前記浄化手段の上流側に設けられ、当該放射線検出手段により前記被浄化水からの放射線を検出した場合、当該被浄化水の当該浄化手段への流路を遮断する流路遮断手段と、
を有することを特徴とする浄水器。
【請求項2】
前記放射線検出手段により前記被浄化水からの放射線を検出した場合、当該被浄化水が排出される排出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の浄水器。
【請求項3】
前記放射線検出手段により前記被浄化水からの放射線を検出した場合、当該放射線の検出を表示する表示手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の浄水器。
【請求項4】
前記浄化手段は、光触媒を坦持した多孔質炭化ケイ素構造材を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の浄水器。
【請求項5】
さらに、前記浄化手段は、前記多孔質炭化ケイ素構造材の内部に坦持された前記光触媒に紫外線エネルギが照射可能に配置された紫外線導光体を備えることを特徴とする請求項4に記載の浄水器。
【請求項6】
さらに、前記浄化手段は、前記紫外線導光体中に紫外線エネルギが導入可能に配置された発光ダイオード(LED)を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の浄水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−232263(P2012−232263A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103118(P2011−103118)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(508179615)株式会社 シリコンプラス (10)
【Fターム(参考)】