説明

浚渫搬送装置

【課題】 軟らかい堆砂から圧密された固い堆砂まで、効率良くかつ高い混砂比率で浚渫でき、回収した堆砂を離れた処理場まで直接搬送することができ、動力源が少なく、構造がシンプルで信頼性が高く、巨礫・流木も処理できる浚渫搬送装置を提供する。
【解決手段】 多関節アーム10c,10dとその先端に取り付けられたバケット11とを有し、台船9上に移動可能に載置されたバックフォー10と、多関節アームの先端アームに取り付けられた排砂ポンプ12と、排砂ポンプの吸引口とバケットに設けた吸入口とを連通する可撓性の吸引パイプ14と、排砂ポンプの吐出口と離れた処理場とを連通する可撓性の搬送パイプ16とを備える。排砂ポンプ12は、エジェクタポンプであり、エジェクタポンプに噴射する高圧水1を供給する高圧水供給装置18を台船上に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム湖等の堆砂を浚渫し処理場まで搬送する浚渫搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム湖、港湾、河川など(以下、「ダム湖等」という)において、湖底に沈殿した堆砂の浚渫には、従来から主に、サンドポンプ又はバックホーが用いられている。
【0003】
サンドポンプは、ポンプ吸入部にカッターファンと呼ぶ撹乱羽根を装備した水中ポンプであり、カッターファンを回転させ、湖底に沈殿した堆砂をカッターファンで撹乱浮遊させ、ポンプで水流とともに堆砂を吸い込み、フレキシブルパイプで所定の場所まで搬送するものである。
かかるサンドポンプは、撹乱羽根が湖底から離れた位置で回転し、発生した旋回流により堆砂を巻き上げて吸引するため吸引水に占める堆砂の混砂比率が低く、例えば10〜15%程度に過ぎない問題があった。
また堆砂が圧密されているときはカッターファンの代わりに掘削刃を用いるがこの場合でも掘削が困難であり、かつ混砂比率が低かった。
【0004】
一方、バックホーは、多関節アームの先端にバケットを備えた土木建設機械であり、圧密された固い堆砂をバケットで切り崩しながら浚渫することができる。しかし、バックホーによる浚渫では、台船上等に堆砂を回収するため、多関節アームの昇降・旋回を繰返す必要があり、能率が悪い問題があった。また、台船上等に回収した堆砂は、土運船等の別の排送装置を用いて離れた処理場まで排送する必要があった。
さらに、湖底に沈殿した比較的軟らかい堆砂を対象とする場合には、バックホーによる浚渫では、堆砂の混砂比率が低すぎる問題があった。
【0005】
そこで、堆砂の混砂比率を高めることを目的とした種々の浚渫装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
【0006】
特許文献1の「高濃度浚渫装置」は、ヘドロ等の水中に堆積している軟泥を汚濁の発生が少なくかつ高濃度で浚渫することを目的とし、図5に示すように、サンドポンプ51、サンドポンプの吸入パイプ52に連結され上部が開口している円筒パイプ53、円板54間に掻き上げ羽根55を取り付けたロータ56、ロータを回転駆動する油圧モータ57、円筒パイプ53の上半分を覆うフード58、フード内に圧縮空気を供給する供給パイプ59、等を備えたものである。
【0007】
特許文献2の「浚渫装置」は、多量の水を要することなく固めの泥土や水深が浅い湖沼や水面上の泥土を効率良く吸引除去することを目的とし、図6に示すように、台船上に門形に立設された支柱62と、支柱の基部に軸支された傾動可能なコ字形アーム64と、アームの先端に回転可能に軸支された撹拌翼61を有する回転軸63と、回転軸を回転駆動する駆動機構と、支柱に昇降可能に吊下されアーム64で囲われた内側に投入される水中サンドポンプ66とを備えたものである。
【0008】
特許文献3の「浚渫排送装置」は、水底に堆積した軟泥を高濃度で能率よく浚渫排送することを目的とし、図7(A)(B)に示すように、浚渫船70上に設備された浚渫装置80と、浚渫装置を昇降旋回させる昇降旋回装置72と、浚渫物を空気輸送する排送装置90とを備え、浚渫装置80は、バケット81、バースクリーン82、掘削ロータ83、スクリューコンベア84、等からなり、排送装置90は、加圧ポンプ91、エジェクタ92、等からなり、さらにバケット内に高圧ジェット水を噴射する注水管(図示せず)を備えるものである。
【0009】
【特許文献1】特開平5−51941号公報、「高濃度浚渫装置」
【特許文献2】特開平7−3837号公報、「浚渫装置」
【特許文献3】特開平9−264036号公報、「浚渫排送装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来のサンドポンプは、堆砂の混砂比率が低く、かつ堆砂が圧密されているときは堆砂の掘削(切崩し)が困難であった。また従来のバックホーによる浚渫は、多関節アームの昇降・旋回を繰返す必要があるため能率が悪く、回収した堆砂を別の排送装置で処理場まで搬送する必要があり、かつ軟らかい堆砂を対象とする場合、堆砂の混砂比率が低すぎる問題があった。
【0011】
また、特許文献1の装置は、電力、油圧、圧縮空気を水中深く供給する必要があり、かつ構造が複雑なため、信頼性が低い問題があった。
また、特許文献2の装置は、水中サンドポンプ6で堆砂を吸い上げるため、従来のサンドポンプと同様に、堆砂の混砂比率が低い問題があった。
さらに、特許文献3の装置は、バケットの内部にバースクリーン、掘削ロータ等を内蔵しているため、通常のバックホーとして使用できない問題があった。すなわちバケット内の実効容積が小さく、かつバースクリーンの間隙が狭いので、堆砂の回収はポンプに限定され、より大きい流木や砕石を、バケットで直接回収できない問題があった。
【0012】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、軟らかい堆砂から圧密された固い堆砂まで、効率良くかつ高い混砂比率で浚渫でき、回収した堆砂を離れた処理場まで直接搬送することができ、動力源が少なく、構造がシンプルで信頼性が高く、巨礫・流木も処理できる浚渫搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、沈殿した堆砂を浚渫して処理場まで搬送する浚渫搬送装置において、堆砂を掘削するバケットと、該バケット内の堆砂を排出する排砂ポンプとを備えたことを特徴とする浚渫搬送装置が提供される。
【0014】
また本発明によれば、多関節アームとその先端に取り付けられたバケットとを有し、台船上に移動可能に載置されたバックホーと、
前記多関節アームの先端アームに取り付けられた排砂ポンプと、
排砂ポンプの吸引口とバケットに設けた吸入口とを連通する可撓性の吸引パイプと、
排砂ポンプの吐出口と離れた処理場とを連通する可撓性の搬送パイプと、を備えたことを特徴とする浚渫搬送装置が提供される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記排砂ポンプは、エジェクタポンプであり、
さらに該エジェクタポンプに噴射する高圧水を供給する高圧水供給装置を台船上に備える。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の構成によれば、排砂ポンプの吸引口とバケットに設けた吸入口とを連通する可撓性の吸引パイプを備えたので、軟らかい堆砂ばかりでなく、堆砂が圧密により硬い場合や、巨礫・流木が堆積しているような湖底でも、バケットで掘削して取り込んだ堆砂を排砂ポンプで吸引することにより高い混砂率で排砂が行われる。
また排砂ポンプの吐出口と離れた処理場とを連通する可撓性の搬送パイプを備えたので、バケットを水上まで持ち上げなくても連続的な排砂がポンプによりでき、非常に効率の良い排砂が実現できる。
さらに、水中に埋没するのは、動力源としては排砂ポンプのみであり、構造がシンプルで信頼性が高い。
また、排砂ポンプで吸引できないような、巨礫・流木であっても、バケットを昇降させて直接回収することができる。
【0017】
特に、排砂ポンプがエジェクタポンプであり、高圧水供給装置を台船上に備えることにより、排砂ポンプを高圧水の噴射のみで駆動することができ、構造がシンプルで信頼性を高めることができ、かつ混砂率を約50%前後まで高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図1は、本発明の浚渫搬送装置の第1実施形態図であり、図2は、図1の部分拡大図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の浚渫搬送装置は、バックホー10、排砂ポンプ12、吸引パイプ14、搬送パイプ16、及び高圧水供給装置18を備える。
【0020】
バックホー10は、走行機構(クローラ等)10a上で旋回する旋回台10b、旋回台10bに軸支された多関節アーム10c,10d、その先端に取り付けられたバケット11を有し、図示しないアクチュエータ(油圧シリンダ等)で、走行機構上で旋回し、各関節を中心に揺動し、バケット11を自由に昇降・旋回できるようになっている。またこのバックホー10は、台船9上に走行機構で移動可能に載置されている。
なお、バックホー10は、多関節アームの先端にバケットを備えた周知の土木建設機械を一部改造して用いてもよく、或いは、本発明の構成を満たすかぎりで、新規に設計・製造してもよい。
【0021】
排砂ポンプ12は、多関節アーム10c,10dの先端アーム10dに取り付けられ、先端アーム10dと共に昇降・旋回する。なお、排砂ポンプ12の取付位置は、この例に限定されず、別のアームまたはバケットに取り付けてもよい。
この例において、排砂ポンプ12は、エジェクタポンプであり、高圧水1を噴射口12aから内部に噴射することにより、内部に発生する負圧により吸引口12bから堆砂2を水とともに吸引し、吐出口12cから吐出するようになっている。
なおエジェクタポンプは、図示しない空気吸入ラインを有し、後述する搬送パイプ16に空気を含むプラグ流を形成するのが好ましい。この構成により、混砂率を約50%前後まで高めることができることが実験により確認されている。
【0022】
吸引パイプ14は、排砂ポンプの吸引口12bとバケット11に設けた吸入口11aとを連通する可撓性のフレキシブルパイプである。吸入口11aは、この例では、バケット11の図で頂部に設けられバケット内に集められた排砂2を周囲の水とともに吸引パイプ14へ導くようになっている。
なお、必要に応じて、排砂ポンプが処理できない大きさの異物を吸引しないようにスクリーン等を内部に備えるのがよい。
【0023】
搬送パイプ16は、 排砂ポンプの吐出口12cと離れた処理場とを連通する可撓性のフレキシブルパイプである。この搬送パイプ16は、多関節アーム10c,10dの作動を阻害しないように、これらに沿って台車上まで案内され、そのまま岸壁等に設けられた離れた処理場までつながっている。
【0024】
高圧水供給装置18は、台船上、好ましくは旋回台10bに設けられ、高圧水用のフレキシブルパイプ18aを介して、エジェクタポンプ12に高圧水を供給するようになっている。
【0025】
図3は、本発明の浚渫搬送装置の第2実施形態図であり、図4は、図3の部分拡大図である。
この例において、バケット11の吸入口11aは、バケット11の側面に設けられバケット内に集められた堆砂2を周囲の水とともに吸引パイプ14へ導くようになっている。その他の構成は第1実施形態図と同様である。
【0026】
上述した本発明の構成によれば、排砂ポンプ12の吸引口12bとバケット11に設けた吸入口11aとを連通する可撓性の吸引パイプ14を備えたので、軟らかい堆砂ばかりでなく、堆砂が圧密により硬い場合や、巨礫・流木が堆積しているような湖底でも、バケット11で掘削して取り込んだ堆砂2を排砂ポンプ12で吸引することにより高い混砂率で排砂が行われる。
また排砂ポンプ12の吐出口12cと離れた処理場とを連通する可撓性の搬送パイプ16を備えたので、いちいちバケット11を持ち上げなくても連続的な排砂がポンプによりなされるので非常に効率の良い排砂が実現できる。
さらに、水中に埋没するのは、動力源としては排砂ポンプのみであり、構造がシンプルで信頼性が高い。
また、排砂ポンプで吸引できないような、巨礫・流木であっても、バケットを昇降させて直接回収することができる。
【0027】
特に、排砂ポンプがエジェクタポンプであり、高圧水供給装置を台船上に備えることにより、排砂ポンプを高圧水の噴射のみで駆動することができ、構造がシンプルで信頼性を高めることができ、かつ混砂率を約50%前後、場合によっては100%近くまで高めることができる。
【0028】
すなわち、本発明は、排砂ポンプの吸引パイプをバケットに取付けて、バケットで掘り起こした土砂を吸引することにより混砂率の高い水を吸引できるようにしたものである。
これにより湖底の堆砂状況がポンプによる吸引が困難な場合でも、バケット装置により強制的に掘り起こしポンプで容易に吸引できる状態を作り出して浚渫することができる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施例及び実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。例えば、バッケット内にジェット水を噴射させて利便性を向上させる等をしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の浚渫搬送装置の第1実施形態図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】本発明の浚渫搬送装置の第2実施形態図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】特許文献1の「高濃度浚渫装置」の構成図である。
【図6】特許文献2の「浚渫装置」の構成図である。
【図7】特許文献3の「浚渫排送装置」の構成図である。
【符号の説明】
【0031】
1 高圧水、2 堆砂、9 台船、
10 バックホー、10a 走行機構(クローラ等)、
10b 旋回台、10c,10d 多関節アーム、
11 バケット、11a 吸入口、
12 排砂ポンプ(エジェクタポンプ)、
12a 噴射口、12b 吸引口、12c 吐出口、
14 吸引パイプ、16 搬送パイプ、
18 高圧水供給装置、18a フレキシブルパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿した堆砂を浚渫して処理場まで搬送する浚渫搬送装置において、堆砂を掘削するバケットと、該バケット内の堆砂を排出する排砂ポンプとを備えたことを特徴とする浚渫搬送装置。
【請求項2】
多関節アームとその先端に取り付けられたバケットとを有し、台船上に移動可能に載置されたバックホーと、
前記多関節アームの先端アームに取り付けられた排砂ポンプと、
排砂ポンプの吸引口とバケットに設けた吸入口とを連通する可撓性の吸引パイプと、
排砂ポンプの吐出口と離れた処理場とを連通する可撓性の搬送パイプと、を備えたことを特徴とする浚渫搬送装置。
【請求項3】
前記排砂ポンプは、エジェクタポンプであり、
さらに該エジェクタポンプに噴射する高圧水を供給する高圧水供給装置を台船上に備える、ことを特徴とする請求項2に記載の浚渫搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−97343(P2006−97343A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285004(P2004−285004)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(593031735)株式会社小島組 (15)