説明

浚渫搬送装置

【課題】 水底に堆積した堆砂を、効率良く高い混砂比率で浚渫でき、かつ回収した堆砂を離れた処理場まで直接搬送することができる浚渫搬送装置を提供する 。
【解決手段】 多関節アーム10c,10dを有し台船9上に移動可能に載置された多関節アーム装置10と、多関節アームの先端アームに取り付けられた吸引排砂装置20と、吸引排砂装置の吐出口と離れた処理場とを連通する可撓性の搬送パイプ16とを備える。吸引排砂装置20は、排砂ポンプ22と、堆砂の吸込み口と堆砂面との距離を可変調節する可変調節吸引管30と、排砂ポンプの吸引口と可変調節吸引管とを連通する可撓性の吸引パイプ24とを有する。可変調節吸引管30は、中空吸引管32、可動吸引管34、吸引口フランジ36、及び直動アクチュエータ38からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム湖等の堆砂を浚渫し処理場まで搬送する浚渫搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム湖、港湾、河川など(以下、「ダム湖等」という)において、湖底に沈殿した堆砂の浚渫には、従来から主に、サンドポンプが用いられている。
【0003】
サンドポンプは、ポンプ吸入部にカッターファンと呼ぶ撹乱羽根を装備した水中ポンプであり、カッターファンを回転させ、湖底に沈殿した堆砂をカッターファンで撹乱浮遊させ、ポンプで水流とともに堆砂を吸い込み、フレキシブルパイプで所定の場所まで搬送するものである。
【0004】
なお、サンドポンプ又はサクションポンプを用いた浚渫手段として、例えば、特許文献1、2が既に提案されている。
【0005】
特許文献1の「採泥装置」は、水域を濁らせずに、水底の軽い有機分を選択的に浚渫することを目的とし、図3に示すように、水底54を走行する自走車(図示せず)と、開口部が水底に対向するフード56と、水底の堆積物を舞い上がらせるジェットノズル57と、フードの下部に設けられたスカート58と、吸込み口が所定の高さ位置に設けられたサンドポンプ59とを備えたものである。
【0006】
特許文献2の「浚渫工法および装置」は、浚渫された土砂を分離した排水を、放出せずに循環させて海域の汚濁を少なくすることを目的とし、図4に示すように、土砂をサクションポンプ61で浚渫し、土砂を分離手段65で分離し、排水を排水ポンプ67により還流し、還流した排水を加圧ポンプ62で昇圧して浚渫部近傍でジェットノズル66から噴出させて堆積した土砂を噴き上げ、ラッパ管63の中心に設けたエジェクトノズル64から逆噴出させてサクション効果を向上させるものである。
【0007】
【特許文献1】特開平5−311696号公報、「採泥装置」
【特許文献2】特開2002−266369号公報、「浚渫工法および装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来のサンドポンプは、 攪拌羽根が湖底から離れた水中で回転し旋回流により堆砂を巻き上げる原理を用いている。このため吸引水に占める堆砂の混砂比率は低く10〜15%程度に過ぎない問題点があった。また堆砂面が圧密されているときはファンでなく掘削刃を用いるがこの場合でも混砂比率は同程度であった。
【0009】
また、特許文献1の装置は、ジェットノズルを併用するため、ジェット水で堆積物を舞い上げることができるが、サンドポンプの吸込み口が水底から離れているため、吸引力が弱く、混砂比率を高められない問題点があった。
また、特許文献2の装置は、ジェットノズルで堆積した土砂を噴き上げることができるが、ラッパ管とエジェクトノズルで発生するサクション力が弱く、同様に混砂比率を高められない問題点があった。
【0010】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、水底に堆積した堆砂を、効率良く高い混砂比率で浚渫でき、かつ回収した堆砂を離れた処理場まで直接搬送することができる浚渫搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、沈殿した堆砂を浚渫して処理場まで搬送する浚渫搬送装置において、堆砂の吸込み口と堆砂面との距離を調節可能にしたことを特徴とする浚渫搬送装置が提供される。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記吸込み口内部の圧力に応じて、堆砂の吸込み口と堆砂面との距離を調節可能にした。
【0012】
また本発明によれば、多関節アームを有し台船上に移動可能に載置された多関節アーム装置と、
前記多関節アームの先端アームに取り付けられた吸引排砂装置と、
吸引排砂装置の吐出口と離れた処理場とを連通する可撓性の搬送パイプと、を備え、
前記吸引排砂装置は、排砂ポンプと、堆砂の吸込み口と堆砂面との距離を可変調節する可変調節吸引管と、排砂ポンプの吸引口と可変調節吸引管とを連通する可撓性の吸引パイプとを有する、ことを特徴とする浚渫搬送装置が提供される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記可変調節吸引管は、先端アームに揺動可能に取り付けられた中空吸引管と、該中空吸引管の下端に嵌合しその軸方向に移動可能な可動吸引管と、該可動吸引管の下端に取付けられ径方向に拡がる吸引口フランジと、該吸引口フランジを軸方向に移動可能な直動アクチュエータとからなり、
さらに、吸引パイプ又は中空吸引管に取り付けられその内部の圧力を検出する圧力検出器と、検出された圧力が排砂ポンプによる排砂に適した圧力範囲になるように前記直動アクチュエータを制御する圧力制御装置とを備える。
【0014】
また、堆砂の吸込み口の下方に向けてジェット水を噴射するジェットノズルを備える。
また、前記排砂ポンプは、エジェクタポンプであり、
さらに該エジェクタポンプに噴射する高圧水を供給する高圧水供給装置を台船上に備える。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明の構成によれば、吸引排砂装置が可変調節吸引管を有し、堆砂の吸込み口と堆砂面との距離を調節可能にしたので、混砂率を増やすために吸込み口と堆砂面の距離をミニマムにして排砂ポンプの吸引力により堆砂を高い混砂率で効率良く吸い込み、かつ吸込み口が堆砂面に吸着した場合は吸込み口を持ち上げて吸引不能を防止することができる。
また排砂ポンプの吐出口と離れた処理場とを連通する可撓性の搬送パイプを備えたので、吸引排砂装置を堆砂面付近に沈めたままで、連続的な排砂がポンプによりでき、非常に効率の良い排砂が実現できる。
【0016】
また、吸引パイプ又は中空吸引管に取り付けられた圧力検出器でその内部の圧力を検出し、圧力制御装置で検出された圧力が排砂ポンプによる排砂に適した圧力範囲になるように前記直動アクチュエータを制御するので、中空吸込管を適度に下ろすことにより吸入口フランジと湖底の堆砂面の間に強い水流を発生して高い混砂率で排砂を行ない、中空吸込管が下がりすぎて堆砂面と密着した場合には、吸入管の圧力が急激に低下し吐出量が減るので、これらを圧力検出器で監視し設定値以下になった場合直動アクチュエータを収縮してフランジ面を持ち上げ流れを戻すことができる。
【0017】
また、ジェットノズルからジェット水を噴射しながら吸引することにより、堆砂面が圧密されている場合でも堆砂面をジェット水で崩して高い混砂率で効率良く吸い込むことができる。
【0018】
特に、排砂ポンプがエジェクタポンプであり、高圧水供給装置を台船上に備えることにより、排砂ポンプを高圧水の噴射のみで駆動することができ、構造がシンプルで信頼性を高めることができ、かつ混砂率を約50%前後まで高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の浚渫搬送装置の第1実施形態図である。この図に示すように、本発明の浚渫搬送装置は、多関節アーム装置10、搬送パイプ16、高圧水供給装置18、及び吸引排砂装置20を備える。
【0021】
多関節アーム装置10は、走行機構(クローラ等)10a上で旋回する旋回台10b、旋回台10bに軸支された多関節アーム10c,10dを有し、図示しないアクチュエータ(油圧シリンダ等)で、走行機構上で旋回し、各関節を中心に揺動し、その先端に取り付けられた吸引排砂装置20を自由に昇降・旋回できるようになっている。またこの多関節アーム装置10は、台船9上に走行機構で移動可能に載置されている。
なお、多関節アーム装置10は、多関節アームを備えた周知の土木建設機械(例えばバックホー)を一部改造して用いてもよく、或いは、本発明の構成を満たすかぎりで、新規に設計・製造してもよい。
【0022】
搬送パイプ16は、 吸引排砂装置20を構成する排砂ポンプの吐出口と離れた処理場とを連通する可撓性のフレキシブルパイプである。この搬送パイプ16は、多関節アーム10c,10dの作動を阻害しないように、これらに沿って台車上まで案内され、そのまま岸壁等に設けられた離れた処理場までつながっている。
【0023】
高圧水供給装置18は、台船上、好ましくは旋回台10bに設けられ、高圧水用のフレキシブルパイプ18aを介して、後述するエジェクタポンプに高圧水を供給するようになっている。
【0024】
図2は、図1の部分拡大図である。この図に示すように、 吸引排砂装置20は、排砂ポンプ22、可撓性の吸引パイプ24、ジェットノズル26、及び可変調節吸引管30からなる。
【0025】
排砂ポンプ22は、多関節アーム10c,10dの先端アーム10dに取り付けられ、先端アーム10dと共に昇降・旋回する。なお、排砂ポンプ22の取付位置は、この例に限定されず、別のアームまたは可変調節吸引管に取り付けてもよい。
この例において、排砂ポンプ22は、エジェクタポンプであり、高圧水1を噴射口22aから内部に噴射することにより、内部に発生する負圧により吸引口22bから堆砂2を水とともに吸引し、吐出口22cから吐出するようになっている。
なおエジェクタポンプは、図示しない空気吸入ラインを有し、搬送パイプ16に空気を含むプラグ流を形成するのが好ましい。この構成により、混砂率を約50%前後まで高めることができることが実験により確認されている。
【0026】
吸引パイプ24は、排砂ポンプの吸引口22bと可変調節吸引管30とを連通する可撓性のフレキシブルパイプである。
【0027】
ジェットノズル26は、可変調節吸引管30の下端部に好ましくは複数取り付けられ、堆砂の吸込み口の下方に向けてジェット水を噴射し、堆砂面が圧密されている場合でも堆砂面をジェット水で崩すようになっている。
【0028】
図2において、可変調節吸引管30は、中空吸引管32、可動吸引管34、吸引口フランジ36、及び直動アクチュエータ38からなる。
中空吸引管32は、先端アーム10dに図示しないアクチュエータで揺動可能に取り付けられている。可動吸引管34は、中空吸引管32の下端に水密に嵌合し、その軸方向に自由に移動可能に構成されている。
【0029】
吸引口フランジ36は、可動吸引管34の下端に取付けられ、径方向に拡がる形状(例えば、円形、矩形)に構成されている。吸引口フランジ36は、例えば可動吸引管34の直径に対し、その2〜3倍の外径を有し、かつその外縁から可動吸引管34の下端まで水流がスムースに流れるように、滑らかな底面(例えば、円弧面)を有するのがよい。
なお、必要に応じて、排砂ポンプが処理できない大きさの異物を吸引しないようにスクリーン等を内部に備えるのがよい。
【0030】
また、上述したジェットノズル26は、吸引口フランジ36に等間隔に複数備え、圧密されている堆砂面をジェット水で崩し、かつ外縁から可動吸引管34の下端に向かう水流をより強めるように、噴射方向を内向きに設定するのがよい。
【0031】
直動アクチュエータ38は、この例ではバネ38aで復帰する単動空圧シリンダである。単動空圧シリンダの一端(この図で上端)は中空吸引管32に、他端(この図で下端)は吸引口フランジ36に取り付けられ、圧縮空気3をシリンダに供給することにより、単動空圧シリンダが伸びて可動吸引管32に取り付けられた吸引口フランジ36を軸方向に移動し、圧縮空気3を抜くことにより、バネ38aで単動空圧シリンダを縮めて復帰するようになっている。
【0032】
本発明の浚渫搬送装置は、更に圧力検出器40と圧力制御装置42を備える。
圧力検出器40は、例えばピエゾ型圧力センサであり、吸引パイプ24又は中空吸引管32に取り付けられその内部の圧力を検出し、電気信号として圧力制御装置42に入力する。
圧力制御装置42は、台船9上に設置された制御装置であり、検出された圧力が排砂ポンプ22による排砂に適した圧力範囲になるように直動アクチュエータ38に供給する圧縮空気3の圧力を制御し、これにより堆砂の吸込み口と堆砂面との距離を可変調節する。
なお、圧力検出器の代わりに、流量センサを用いて吐出量を検出し、これを制御してもよい。
【0033】
上述したように、従来、吸入口が湖底に近く水流が強いほど排砂量は増えるが、接触すると吸入口が堆砂面に吸着して吸引不能になる。逆に吸引口が湖底と離れ過ぎたり、堆砂面が圧密されていると水だけ吸引し排砂ができない。
排砂量を増やすために吸引口から吸入する水の混砂率を増やすためには、吸入口と堆砂面の距離をミニマムにして極力砂を吸い込む必要がある。そこで、本発明では、排砂ポンプの吸込み口を湖底の堆砂面に押し付けて排砂をするが、吸着した場合は自動的に吸入口を持ち上げて吸引不能を防止した。吸着の検出は排砂ポンプの吸入圧力、吐出量などをセンサで検出して行う。なお空気シリンダはスプリングリターン方式を採用し収縮したあと浚渫が進めば元の長さに自動的に戻るようになっている。
また堆砂面が圧密されている場合は堆砂面の流れだけでは吸引できない場合もあるので、ジェット水をノズルから噴出させて吸引する。
【0034】
上述した本発明によれば、排砂ポンプ22に吸引パイプ24を介して連通する中空吸引管32に直動アクチュエータ38を介して吸引口フランジ36が吊り下げられている。 吸引排砂装置20を下ろすことにより吸入口フランジ面と湖底の堆砂面の間に強い水流が発生し高い混砂率で排砂が行われる。
中空吸込管32が下がりすぎて堆砂面と密着した場合、吸引パイプ24の圧力が急激に低下し吐出量が減る。これらをセンサ(圧力検出器40)で監視し設定値以下になった場合エアシリンダを収縮してフランジ面を持ち上げ流れを戻す。流れが戻ればエアシリンダはスプリングで元の長さに戻る。
【0035】
なお、本発明は上述した実施例及び実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の浚渫搬送装置の第1実施形態図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】特許文献1の「採泥装置」の構成図である。
【図4】特許文献2の「浚渫工法および装置」の構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 高圧水、2 堆砂、3 圧縮空気、9 台船、
10 多関節アーム装置、10a 走行機構(クローラ等)、
10b 旋回台、10c,10d 多関節アーム、
16 搬送パイプ、
18 高圧水供給装置、18a フレキシブルパイプ
20 吸引排砂装置、
22 排砂ポンプ(エジェクタポンプ)、
22a 噴射口、22b 吸引口、22c 吐出口、
24 吸引パイプ、26 ジェットノズル、
30 可変調節吸引管、32 中空吸引管、
34 可動吸引管、36 吸引口フランジ、
38 直動アクチュエータ(単動空圧シリンダ)、38a バネ、
40 圧力検出器、42 圧力制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿した堆砂を浚渫して処理場まで搬送する浚渫搬送装置において、堆砂の吸込み口と堆砂面との距離を調節可能にしたことを特徴とする浚渫搬送装置。
【請求項2】
前記吸込み口内部の圧力に応じて、堆砂の吸込み口と堆砂面との距離を調節可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の浚渫搬送装置。
【請求項3】
多関節アームを有し台船上に移動可能に載置された多関節アーム装置と、
前記多関節アームの先端アームに取り付けられた吸引排砂装置と、
吸引排砂装置の吐出口と離れた処理場とを連通する可撓性の搬送パイプと、を備え、
前記吸引排砂装置は、排砂ポンプと、堆砂の吸込み口と堆砂面との距離を可変調節する可変調節吸引管と、排砂ポンプの吸引口と可変調節吸引管とを連通する可撓性の吸引パイプとを有する、ことを特徴とする浚渫搬送装置。
【請求項4】
前記可変調節吸引管は、先端アームに揺動可能に取り付けられた中空吸引管と、該中空吸引管の下端に嵌合しその軸方向に移動可能な可動吸引管と、該可動吸引管の下端に取付けられ径方向に拡がる吸引口フランジと、該吸引口フランジを軸方向に移動可能な直動アクチュエータとからなり、
さらに、吸引パイプ又は中空吸引管に取り付けられその内部の圧力を検出する圧力検出器と、検出された圧力が排砂ポンプによる排砂に適した圧力範囲になるように前記直動アクチュエータを制御する圧力制御装置とを備える、ことを特徴とする請求項3に記載の浚渫搬送装置。
【請求項5】
堆砂の吸込み口の下方に向けてジェット水を噴射するジェットノズルを備える、ことを特徴とする請求項3に記載の浚渫搬送装置。
【請求項6】
前記排砂ポンプは、エジェクタポンプであり、
さらに該エジェクタポンプに噴射する高圧水を供給する高圧水供給装置を台船上に備える、ことを特徴とする請求項3に記載の浚渫搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−97344(P2006−97344A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285007(P2004−285007)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(593031735)株式会社小島組 (15)