説明

浚渫用掘削機及びその浚渫用掘削機を用いた浚渫システム

【課題】掘削した堆積物を効率良く吸い込むことが可能で、かつ、堆積物の崩落により堆積物中に埋没しても回収可能な浚渫用掘削機及びその浚渫用掘削機を用いた浚渫システムを提供する。
【解決手段】浚渫用掘削機1は、水平軸3を中心に回転して堆積物2を掘削するためのカッター4、5と、これらのカッター4、5により掘削された堆積物2を吸引し、水上に排出するための排出装置6と、カッター4、5の上側に設けられ、カッター4、5を支持するとともに、排出装置6を格納するための躯体7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム貯水池の底に堆積した堆積物を浚渫するための浚渫用掘削機及び浚渫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なダムでは、ダム貯水池の底に堆積した泥や土砂等の堆積物を排出するための浚渫作業が適宜、実施されている。
例えば、特許文献1には、水上に浮かぶ浮遊体と、浮遊体上に敷設されたレールと、レールに沿って走行する台車と、ダム貯水池の底に堆積した堆積物を掘削する浚渫用掘削機とを備えた浚渫システムが開示されている。
【0003】
この浚渫用掘削機は、堆積物を掘削するための複数のカッターと、掘削した堆積物を浮遊体上に排出するためのポンプと、台車から吊り下ろされるとともに、カッターを支持するための躯体とから構成されており、堆積物を掘削すると同時に、掘削した堆積物をポンプで吸引して浮遊体上に排出するものである。
【0004】
そして、この浚渫用掘削機を用いた浚渫方法は、カッターを回転させながら、レールに沿って台車を移動させることにより浚渫用掘削機を水平に移動させ、堆積物を線上に掘削するものである。
【特許文献1】特開2007−146481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した浚渫システムの浚渫用掘削機では、掘削中に周囲の堆積物が崩落して浚渫用掘削機が埋没してしまったときの対策がなされていないので、堆積物中に埋没すると回収できなくなるおそれがあるという問題点があった。
【0006】
また、浚渫用掘削機に設けられているポンプの吸い込み口は、カッター間の上部に設けられているので、カッター間の上部付近に存在して、掘削された堆積物の含まれていない水を多く吸い込むものの、カッター間の下部付近に存在して、掘削された堆積物を含む水をあまり吸い込まない。したがって、掘削された堆積物の排出効率が低いという問題点があった。さらに、掘削されたにもかかわらず吸引されなかった堆積物が周囲に拡散し、ダム貯水池の透明度が低下するという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、掘削した堆積物を効率良く吸い込むことが可能で、かつ、堆積物の崩落により堆積物中に埋没しても回収可能な浚渫用掘削機及びその浚渫用掘削機を用いた浚渫システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の浚渫用掘削機は、水平軸を中心に回転可能で、ダム貯水池の底に堆積した堆積物を掘削するためのカッターと、前記カッターにより掘削された堆積物を吸引して排出するための排出装置と、前記カッターの上方に設けられ、前記カッターを支持するとともに、前記排出装置を格納するための躯体とを備えた浚渫用掘削機であって、前記カッターは、前記水平軸方向及びこれに直交する方向の端部が前記躯体より水平方向の外方に突出するように設けられるとともに、前記カッターの上部を囲うためのスカートが前記躯体の下部に取り付けられていることを特徴とする(第1の発明)。
【0009】
本発明による浚渫用掘削機によれば、カッターの水平軸方向及びこれに直交する方向の端部が躯体よりも水平方向の外方に突出するように設けられているので、躯体の幅よりも広い範囲を掘削することができる。したがって、堆積物の掘削中に、堆積物が崩落して浚渫用掘削機が堆積物中に埋没しても、カッターを回転させてカッターの水平軸に直交する方向の端部直上の堆積物を掘削し、浚渫用掘削機と堆積物との間に隙間を形成して周囲の堆積物を緩めることができるので、堆積物中から浚渫用掘削機を回収することができる。
【0010】
また、スカートが、カッターの上部を囲うように取り付けられているので、排出装置に吸い込まれる水の範囲をスカートの内側及びカッターの下部付近に限定することができる。排出装置を稼動して水を吸い込むと、スカートの外側からスカートの下方及びカッターの下部付近を通って排出装置に向かう水の流れが生じる。この状態で、カッターを回転させると、掘削された堆積物は、スカートの外側から排出装置に向かう水の流れによって運ばれて、排出装置に吸い込まれる。したがって、掘削された堆積物を効率良く吸引することができる。さらに、掘削した堆積物をほとんど吸い込むので、周囲に拡散する量が少なく、周囲の水の透明度はほとんど低下しない。
【0011】
本発明においては、前記躯体に取り付けられ、傾斜角度を測定するための傾斜計と、前記カッターの水深を測定するための深度計とを更に備えることとしてもよい。
本発明による浚渫用掘削機によれば、傾斜計を備えているので、浚渫用掘削機の傾斜角度を測定することができる。したがって、浚渫用掘削機を垂直にした状態で掘削することができる。
また、深度計を備えているので、カッターの水深を測定することができる。したがって、同一の深度を掘削することができる。
【0012】
本発明においては、前記カッターの水平位置を検出するための位置検出装置を更に備えることとしてもよい。
本発明による浚渫用掘削機によれば、位置検出装置を備えているので、カッターの水平位置を検出することができる。したがって、所定の掘削箇所を正確に掘削することができる。
【0013】
本発明の浚渫システムは、ダム貯水池の底に堆積した堆積物を掘削して排出するための浚渫システムであって、水平軸を中心に回転可能で前記堆積物を掘削するカッターの前記水平軸方向及びこれに直交する方向の端部が前記カッターを支持する躯体より水平方向の外方に突出するように設けられるとともに、前記カッターの上部を囲うためのスカートが前記躯体の下部に取り付けられた浚渫用掘削機を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明による浚渫システムによれば、カッターの水平軸方向及びこれに直交する方向の端部が躯体より水平方向の外方に突出するように設けられているので、躯体の幅よりも広い範囲を掘削することができる。したがって、堆積物の掘削中に、堆積物が崩落して浚渫用掘削機が堆積物中に埋没しても、カッターを回転させてカッターの水平軸に直交する方向の端部直上の堆積物を掘削し、浚渫用掘削機と堆積物との間に隙間を形成して周囲の堆積物を緩めることができるので、堆積物中から浚渫用掘削機を回収することができる。
【0015】
また、スカートが、カッターの上部を囲うように取り付けられているので、排出装置に吸い込まれる水の範囲をスカートの内側及びカッターの下部付近に限定することができる。排出装置を稼動して水を吸い込むと、スカートの外側からスカートの下方及びカッターの下部付近を通って排出装置に向かう水の流れが生じる。この状態で、カッターを回転させると、掘削された堆積物は、スカートの外側から排出装置に向かう水の流れによって運ばれて、排出装置に吸い込まれる。したがって、掘削された堆積物を効率良く吸引することができる。さらに、掘削した堆積物をほとんど吸い込むので、周囲に拡散する量が少なく、周囲の水の透明度はほとんど低下しない。
【0016】
本発明においては、前記浚渫用掘削機は、傾斜角度を測定するための傾斜計と、前記カッターの水深を測定するための深度計とを備えることとしてもよい。
本発明による浚渫システムによれば、浚渫用掘削機が傾斜計を備えているので、浚渫用掘削機の傾斜角度を測定することができる。したがって、浚渫用掘削機を垂直にした状態で掘削することができる。
また、浚渫用掘削機が深度計を備えているので、カッターの水深を測定することができる。したがって、同一の深度を正確に掘削することができる。
【0017】
本発明においては、前記浚渫用掘削機は、前記カッターの水平位置を検出するための位置検出装置を備えることとしてもよい。
本発明による浚渫システムによれば、浚渫用掘削機が位置検出装置を備えているので、カッターの水平位置を検出することができる。したがって、所定の掘削箇所を正確に掘削することができる。
【0018】
本発明においては、ダム貯水池の底の地形を測定するための超音波測定装置を更に備えることとしてもよい。
本発明による浚渫システムによれば、超音波測定装置を備えているので、ダム貯水池の底の地形を測定することができる。したがって、堆積物を掘削した後の掘削状況等を確認することができるので、質の高い浚渫を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による浚渫用掘削機及び浚渫システムによれば、掘削した堆積物を効率良く吸い込むことが可能で、かつ、堆積物の崩落により堆積物中に埋没しても回収可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1〜図3は、本発明の実施形態に係る浚渫用掘削機1を示す正面図、側面図及び平面図である。
【0021】
図1〜図3に示すように、ダム貯水池の底に堆積している堆積物2を掘削するための浚渫用掘削機1は、水平軸3を中心に回転して堆積物2を掘削するためのカッター4、5と、これらのカッター4、5により掘削された堆積物2を吸引し、水上に排出するための排出装置6と、カッター4、5を支持するとともに、排出装置6を格納するための躯体7とを備える。
【0022】
各カッター4、5は、水平軸3を中心に回転する円柱形状のカッタードラム8と、カッタードラム8の外周面に取り付けられる複数のビット9とから構成され、このカッタードラム8が回転してビット9が堆積物2に打設されることにより堆積物2を掘削する。
【0023】
各カッター4、5を異なる回転速度で回転させることにより、浚渫用掘削機1を所定の方向に進行させることができる。浚渫用掘削機1は、例えば、カッター4をカッター5よりも速く回転させると、図1の左方向に水平に進行し、カッター5をカッター4よりも速く回転させると、図1の右方向に水平に進行する。以下の説明では、浚渫用掘削機1が水平に進行する向きを進行方向とし、この進行方向と直交する向きを幅方向とする。
【0024】
各カッター4、5は、躯体7の本体幅の範囲内だけでなく、さらにその範囲外を掘削できるように径及び軸方向の長さが調整されており、カッター4、5の水平軸方向の端部4b、5b及び水平軸に直交する方向(以下、径方向という)の端部4a、5aが躯体7より水平方向、すなわち進行方向及び幅方向の外方に突出するように取り付けられている。
【0025】
具体的には、躯体7本体の進行方向、幅方向の幅をそれぞれ300cm、70cmとした場合に、カッター4、5の径、軸方向の長さをそれぞれ150cm、140cmとし、各カッター4、5を、その径方向の片側端部4a、5aが躯体7よりも進行方向にそれぞれ10cm突出するように取り付け、かつ、各カッター4、5の軸方向の両端部4b、5bが躯体7よりも幅方向にそれぞれ35cm突出するように取り付けた。
【0026】
なお、本実施形態においては、カッター4、5を2台設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、3台以上設けてもよく、その場合には、躯体7の進行方向両側に設けられるカッター4、5は、その径方向の端部4a、5aが、躯体7よりも進行方向に突出するように取り付けられ、かつ、カッター4、5及びこれらの間に設けられる他のカッターの軸方向の両端部4b、5bが、躯体7よりも幅方向に突出するように取り付けられる。
【0027】
排出装置6は、掘削された堆積物2を吸い込むための吸引ノズル10と、この吸引ノズル10から吸引した堆積物2を水上に排出するためのサンドポンプ11と、サンドポンプ11から排出される堆積物2を水上に送給するためのホース12とを備えている。
【0028】
吸引ノズル10は、一端がサンドポンプ11に着脱可能に接続され、他端が躯体7の下端からカッター4、5間に突出するように設けられている。
【0029】
なお、本実施形態においては、排出装置6として、サンドポンプ11を用いて堆積物2を排出する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、エアーリフトで堆積物2を排出してもよい。
【0030】
躯体7の下部には、躯体7の下方に突出するとともに、カッター4、5の上部を囲うようにスカート13が取り付けられている。このスカート13は、躯体7の幅方向の側面に設けられる幅方向用スカート部14と、躯体7の進行方向の側面に設けられる進行方向用スカート部15とから構成される。
【0031】
幅方向用スカート部14は、躯体7より外方に突出しているカッター4、5の端部4b、5b上面を覆うとともに、カッター4、5の上部側面を囲うように設けられている。
幅方向用スカート部14のカッター4、5の端部4b、5bを覆う部位は、堆積物2が沈降する際に、上面に堆積しないように傾斜している。
また、幅方向用スカート部14のカッター4、5の上部側面を囲っている部位の鉛直方向の長さは、下端が吸引ノズル10の吸引口10aよりも下方になるように調整されている。
【0032】
進行方向用スカート部15は、躯体7の下部から鉛直方向に延設するように設けられ、その鉛直方向の長さは、カッター4、5が回転しているときに、このカッター4、5に取り付けられているビット9に当たらないように調整されている。
【0033】
幅方向用スカート部14及び進行方向用スカート部15は、カッター4、5の上部を囲うように設けられているので、吸引ノズル10で吸い込む水の範囲をスカート13の内側及びカッター4、5の下部付近に限定することができる。スカート13を設けた状態でサンドポンプ11を稼動して水を揚水すると、図4及び図5に示すように、スカート13の外側からスカート13の下方及びカッター4、5の下部付近を通って吸引口10aに向かう水の流れが生じる。この状態で、カッター4、5を回転させると、掘削された堆積物2は、上述したスカート13の外側から吸引口10aに向かう水の流れによって運ばれて、吸引口10aから吸引ノズル10内に吸い込まれる。したがって、掘削された堆積物2は、ほとんどスカート13の外側に拡散しない。
【0034】
また、浚渫用掘削機1が、堆積物2を掘削中に、周囲の堆積物2の崩落によって堆積物2中に埋没しても、カッター4、5を回転させて進行方向のカッター4、5の端部4a、5aで直上の堆積物2を掘削し、掘削した堆積物2を排出装置6で排出することにより、浚渫用掘削機1とこの周囲に堆積している堆積物2との間に隙間を形成して周囲の堆積物2を緩めることができるので、浚渫用掘削機1を堆積物2中から回収できる。
【0035】
浚渫用掘削機1は、浚渫用掘削機1の傾斜角度を測定するための傾斜計21と、カッター4、5の水深位置を測定するための深度計22と、浚渫用掘削機1の水平位置を検出するためのGPSを利用した電子方位計23を備えている。
【0036】
傾斜計21で浚渫用掘削機1の傾斜角度を測定し、傾斜している場合には、浚渫用掘削機1が鉛直になるように調整する(詳細は後述する)。
【0037】
また、深度計22でカッター4、5の水深を測定し、掘削深度を確認する。深度計22で水深を測定し、カッター4、5の水深が上記所定の深度よりも浅い場合には、カッター4、5が上記所定の深度に到達するように走行手段18のワイヤーロープ18bを繰り出す。一方、深度計22で水深を測定して、カッター4、5の水深が上記所定の深度よりも深い場合には、カッター4、5が上記所定の深度に到達するように走行手段18のワイヤーロープ18bを巻取って調整する。
【0038】
図6は、本発明の実施形態に係る浚渫システム16を示す概略図であり、図7は、図6の浚渫用掘削機1及び走行手段18を拡大して示す図である。
【0039】
図6及び図7に示すように、ダム貯水池の底に堆積した堆積物2を浚渫するための浚渫システム16は、水上を移動可能で、作業用の足場となる台船17と、浚渫用掘削機1と、浚渫用掘削機1が所定の位置を掘削できるように、この浚渫用掘削機1を吊り下げて台船17上を移動する走行手段18と、浚渫用掘削機1により掘削された堆積物2を地上に運搬するための運搬船19とを備える。
【0040】
台船17には、ダム底の地形を測定するための超音波測定装置20が設置されている。超音波測定装置20でダム底の地形の測定を行い、掘削中及び掘削後の掘削状況の確認を行う。
走行手段18は、台船17上を自走可能で、伸縮ブーム18aを有するクローラクレーンを用いた。
本実施形態においては、走行手段18として、クローラクレーンを用いたが、これに限定されるものではなく、台船17の上面にレールを敷設し、このレール上を移動可能な台車を用いてもよい。
【0041】
電子方位計23で浚渫用掘削機1の水平位置を測定し、掘削位置を確認する。電子方位計23で水平位置を測定し、浚渫用掘削機1の位置が掘削予定位置から離れている場合には、走行手段18本体を移動させたり、伸縮ブーム18aを伸縮して調整する。
【0042】
浚渫用掘削機1は、クローラクレーンのワイヤーロープ18bに接続されており、このワイヤーロープ18bの巻き取り、繰り出しによって鉛直方向に移動可能である。また、クローラクレーンによる移動や伸縮ブーム18aの伸縮によって水平方向に移動可能である。
【0043】
浚渫用掘削機1が掘削した堆積物2は、一端がホース12に接続され、他端が運搬船19に接続された送泥管24によって運搬船19に送給される。
掘削された堆積物2が運搬船19に所定量だけ積載されると、運搬船19は地上等の堆積物処理施設まで堆積物2を運搬する。
【0044】
上述した浚渫システム16を用いて浚渫する方法について、以下に、作業手順にしたがって説明する。
まず、浚渫用掘削機1及び走行手段18を積載した台船17を浚渫位置付近に停泊させる。
次に、浚渫用掘削機1を吊り下げた走行手段18を移動させて、電子方位計23で浚渫用掘削機1の水平位置を測定しながら、浚渫用掘削機1を浚渫位置の真上に設置する。
そして、走行手段18のワイヤーロープ18bを繰り出して浚渫用掘削機1をダム貯水池の底の堆積物2上に降下させる。両カッター4、5が堆積物2上に到達したら、深度計22で両カッター4、5の水深を測定し、掘進開始深度とする。
【0045】
次に、両カッター4、5を同一の回転速度で回転させて、鉛直方向に掘削を開始する。
掘削開始と同時にサンドポンプ11を稼動させて、掘削した堆積物2を吸引口10aから吸い込んで、ホース12及び送泥管24を通して運搬船19に排出する。
【0046】
掘削された堆積物2は、カッター4、5の回転によってカッター4とカッター5との間の下部付近に運ばれる。このとき、サンドポンプ11の吸引によってスカート13の外側からスカート13の下方及びカッター4、5の下部付近を通って吸引口10aに向かう水の流れが生じているので、掘削された堆積物2は、この水の流れによって吸引口10aに運ばれて吸引ノズル10に吸い込まれる。
【0047】
掘削中は、傾斜計21で浚渫用掘削機1の傾斜角度を測定するとともに、深度計22でカッター4、5の水深を測定する。
【0048】
また、傾斜計21で浚渫用掘削機1の傾斜角度を測定し、浚渫用掘削機1が傾いている場合には、走行手段18のワイヤーロープ18bを巻取ったり、繰り出したりしながら、浚渫用掘削機1を鉛直にする。例えば、一方のカッター4の下方に玉石等が存在して硬く、他方のカッター5の下方は土砂等で軟らかい場合には、一方のカッター4側の掘削が遅れ、他方のカッター5側の掘削が進んで浚渫用掘削機1に傾きが生じるので、傾斜計21で傾斜角度を測定し、傾かないように浚渫用掘削機1の角度を調整しつつ、掘削する。
【0049】
また、深度計22で水深を測定し、カッター4、5が堆積物2に埋まる程度の所定の深度に達したら、一方のカッター4の回転速度をあげて、浚渫用掘削機1を所定の進行方向に水平に進行させる。
【0050】
浚渫用掘削機1の進行により掘削された堆積物2は、上述したように、カッター4、5の回転によってカッター4、5間の下部付近に運ばれて、サンドポンプ11の吸引によって生じる水の流れによって吸引ノズル10に吸い込まれる。
【0051】
浚渫用掘削機1を水平に進行させて堆積物2を掘削する際も鉛直方向の掘削と同様に、傾斜計21及び深度計22で浚渫用掘削機1の傾斜角度及び水深を測定しつつ行う。
【0052】
図8は、本発明の実施形態に係る浚渫用掘削機1が進行方向に向かって前向きに傾いている状態を示す図である。
図8に示すように、傾斜計21で傾斜角度を測定し、浚渫用掘削機1が進行方向に向かって前向きに倒れるような傾きが生じている場合には、例えば、進行方向の堆積物が硬くて、浚渫用掘削機1が予め設計等で決められた所定の速度よりも遅く進行しているにもかかわらず、台船17上の走行手段18はその所定の速度で進行方向に進み、この走行手段18が浚渫用掘削機1よりも進行方向に進んでいる状態が考えられるので、走行手段18の進行速度を遅くして浚渫用掘削機1の進行速度にあわせる。
【0053】
図9は、本発明の実施形態に係る浚渫用掘削機1が進行方向と反対側の向きに傾いている状態を示す図である。
図9に示すように、傾斜計21で傾斜角度を測定し、浚渫用掘削機1が進行方向と反対側の向きに倒れるような傾きが生じている場合には、例えば、台船17上の走行手段18が所定の速度で進行しているにもかかわらず、浚渫用掘削機1は所定の速度よりも速く進行して、浚渫用掘削機1が走行手段18よりも進行方向に進んでいる状態が考えられるので、走行手段18の進行速度を速くして浚渫用掘削機1の進行速度にあわせる。
【0054】
上述したように、浚渫用掘削機1の傾斜角度及び水深位置を調整しながら所定の範囲を掘削する。
最後に、超音波測定装置20でダム底の地形を測定し、掘削状況を確認する。掘削されずに残っている場所等があれば、再度、掘削を行う。
【0055】
以上説明した本実施形態における浚渫用掘削機1及び浚渫システム16によれば、カッター4、5の径方向端部4a、4b及び軸方向端部5a、5bがそれぞれ躯体7より進行方向及び幅方向の外方に突出するように設けられているので、躯体7の幅よりも広い範囲を掘削することができる。したがって、堆積物2の掘削中に堆積物2が崩落して浚渫用掘削機1が堆積物2中に埋没しても、カッター4、5を回転させてカッター4、5の径方向端部4a、5a直上の堆積物2を掘削し、浚渫用掘削機1と堆積物2との間に隙間を形成して周囲の堆積物2を緩めることができるので、堆積物2中から浚渫用掘削機1を回収することができる。
【0056】
また、幅方向用スカート部14及び進行方向用スカート部15は、カッター4、5の上部を囲うように設けられているので、吸引ノズル10で吸い込む水の範囲をスカート13の内側及びカッター4、5の下部付近に限定することができる。スカート13を設けた状態でサンドポンプ11を稼動して水を揚水すると、スカート13の外側からスカート13の下方及びカッター4、5間の下部付近を通って吸引口10aに向かう水の流れが生じる。この状態で、カッター4、5を回転させて堆積物2を掘削すると、掘削された堆積物2は、スカート13の外側から吸引口10aに向かう水の流れによって運ばれて、吸引口10aから吸引ノズル10内に吸い込まれる。したがって、掘削された堆積物2は、ほとんどスカート13の外側に拡散しない。さらに、掘削した堆積物2をほとんど吸い込むので、周囲に拡散する量が少なく、周囲の水の透明度はほとんど低下しない。
【0057】
そして、浚渫用掘削機1は、傾斜計21を備えているので、浚渫用掘削機1の傾斜角度を測定することができる。したがって、浚渫用掘削機1を垂直にした状態で掘削することができる。
【0058】
また、浚渫用掘削機1は、深度計22を備えているので、カッター4、5の水深を測定することができる。したがって所定の深度を正確に掘削することができる。
【0059】
さらに、浚渫用掘削機1は、電子方位計23を備えているので、カッター4、5の水平位置を検出することができる。したがって、所定の掘削箇所を正確に掘削することができる。
【0060】
また、超音波測定装置20を備えているので、ダム貯水池の底の地形を測定することができる。したがって、堆積物2を掘削した後の掘削状況等を確認することができるので、質の高い浚渫を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る浚渫用掘削機を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る浚渫用掘削機を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る浚渫用掘削機を示す平面図である。
【図4】浚渫用掘削機の下部付近の水の流れを示す図である。
【図5】浚渫用掘削機の下部付近の水の流れを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る浚渫システムを示す概略図である。
【図7】図6の浚渫用掘削機及び走行手段を拡大して示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る浚渫用掘削機が進行方向に向かって前向きに傾いている状態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る浚渫用掘削機が進行方向と反対側の向きに傾いている状態を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 浚渫用掘削機
2 堆積物
3 水平軸
4 カッター
4a 径方向の端部
4b 軸方向の端部
5 カッター
5a 径方向の端部
5b 軸方向の端部
6 排出装置
7 躯体
8 カッタードラム
9 ビット
10 吸引ノズル
10a 吸引口
11 サンドポンプ
12 ホース
13 スカート
14 幅方向用スカート部
15 進行方向用スカート部
16 浚渫システム
17 台船
18 走行手段
18a 伸縮ブーム
18b ワイヤーロープ
19 運搬船
20 超音波測定装置
21 傾斜計
22 深度計
23 電子方位計
24 送泥管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平軸を中心に回転可能で、ダム貯水池の底に堆積した堆積物を掘削するためのカッターと、前記カッターにより掘削された堆積物を吸引して排出するための排出装置と、前記カッターの上方に設けられ、前記カッターを支持するとともに、前記排出装置を格納するための躯体とを備えた浚渫用掘削機であって、
前記カッターは、前記水平軸方向及びこれに直交する方向の端部が前記躯体より水平方向の外方に突出するように設けられるとともに、前記カッターの上部を囲うためのスカートが前記躯体の下部に取り付けられていることを特徴とする浚渫用掘削機。
【請求項2】
前記躯体に取り付けられ、傾斜角度を測定するための傾斜計と、前記カッターの水深を測定するための深度計とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の浚渫用掘削機。
【請求項3】
前記カッターの水平位置を検出するための位置検出装置を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の浚渫用掘削機。
【請求項4】
ダム貯水池の底に堆積した堆積物を掘削して排出するための浚渫システムであって、
水平軸を中心に回転可能で前記堆積物を掘削するカッターの前記水平軸方向及びこれに直交する方向の端部が前記カッターを支持する躯体より水平方向の外方に突出するように設けられるとともに、前記カッターの上部を囲うためのスカートが前記躯体の下部に取り付けられた浚渫用掘削機を備えることを特徴とする浚渫システム。
【請求項5】
前記浚渫用掘削機は、傾斜角度を測定するための傾斜計と、前記カッターの水深を測定するための深度計とを備えることを特徴とする請求項4に記載の浚渫システム。
【請求項6】
前記浚渫用掘削機は、前記カッターの水平位置を検出するための位置検出装置を更に備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の浚渫システム。
【請求項7】
前記ダム貯水池の底の地形を測定するための超音波測定装置を更に備えることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載の浚渫システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−13900(P2010−13900A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177145(P2008−177145)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)