説明

浮力を利用した建物の不同沈下修正工法

【課題】 建物が不同沈下した際に、不同沈下した建物を修正するための建物の不同沈下修正工法を提供する。
【解決手段】 地下室のスラブ下部の複数箇所に水の注入口が設けられた中空状のマットを敷くと共に、送水管を注入口まで配管し、建物の不同沈下に対応して不同沈下した箇所の中空状のマットに水を注入し、水の圧力を利用して建物の不同沈下を修正した事を特徴とする浮力を利用した建物の不同沈下修正工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不同沈下した地下室付の建物を修正するための浮力を利用した建物の不同沈下修正工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物を建築するためには、まず最初に建てる土地の地盤調査をし、地耐力を計算した後、基礎や杭を設計します。つまり建物の重さより地耐力が必ず大きくなけれは建築確認がとれません。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、建物に対する必要地耐力に関しては、建物の重さプラス余裕が必要となります。このためプラス余裕をどの程度にするか、しばしば問題になります。
【0004】
もちろん堅固な地盤であれば問題はありませんが、建物の重さに対して地耐力に余裕がない場合は地盤改良や鋼管杭等の工事が必要になります。さらに、新造成地や土質不良地等の地盤においては、部分的に地耐力の低い場所が存在するため、不同沈下が発生しやすいと云う問題をかかえていた。
【0005】
このように、地耐力を十分に考慮しで建物を建築した場合であっても、経年変化により不同沈下が発生して建物が傾くと云う問題が発生していた。
【0006】
従来から、このように建物が傾いた場合は、不同沈下した建物の直近に、新しい基礎を構築しその基礎にジャッキを据付け、建物をジャッキアップさせる方法や、不同沈下した建物の直近に、鋼管杭を支持地盤まで打ち込むと共に、その鋼管杭の上部にジャッキを据付け、建物をジャッキアップさせる方法等のアンダーピニング工法が知られているが、いずれの方法も、多大な費用と長期間の補修工事が必要となる等の問題が発生していた。
【0007】
そこで、この発明は建物が不同沈下した場合の補修工法として、従来から行われてきたアンダーピニング工法に頼ることなく、建築初期に地下室のスラブ下部の複数箇所に水の注入口が設けられた中空状のマットを敷き、送水管を注入口まで配管し、建物の不同沈下に対応して注入口よりマットに水を注入し、水の浮力を利用して建物の不同沈下を修正すると共に、工期を短縮し、コストを大幅に低減できる、浮力を利用した建物の不同沈下修正工法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、地下室のスラブ下部の複数箇所に水の注入口が設けられた中空状のマットを敷くと共に、送水管を注入口まで配管し、建物の不同沈下に対応してマットに水を注入し、建物の不同沈下を修正した事を特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、地下室のスラブ下部の複数箇所に凹状に構成した防水シートを敷き、その防水シートの内側を砂で満たすと共に、凹部上端をスラブに埋設し、送水管を防水シートの内側まで配管すると共に、建物の不同沈下に対応して防水シートに水を注入し、建物の不同沈下を修正した事を特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、非透水層の地盤において、地下室のスラブ下部の複数箇所に砂場を設け、送水管をその砂場の内部まで配管すると共に、建物の不同沈下に対応して非透水層に囲まれた砂場に水を注入し、建物の不同沈下を修正した事を特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1及至3のいずれか一つに記載の工法に加え、地下室

【0012】
請求項5に記載の発明は、耐圧基礎の下部の複数箇所に水の注入口が設けられた中空状のマットを敷くと共に、送水管を注入口まで配管し、建物の不同沈下に対応してマットに水を注入し、建物の不同沈下を修正した事を特徴とする。
【0013】

形状に構成した事を特徴とする
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1叉は5記載の工法に加え、マットの内部に砂を詰めた事を特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、地下室のスラブ下部の複数箇所に水の注入口が設けられた中空状のマットを敷くと共に、送水管を注入口まで配管し、建物の不同沈下に対応してマットに水を注入し、建物の不同沈下を修正したため、従来のように、不同沈下した基礎の直近に鋼管杭を支持層まで打ち込み、上部をコンクリートで固めた上にジャッキを据付け、建物のジャッキアップを行うと云うようなアンダーピニング工法が不要となると共に、工期の短縮につながり、大幅にコストの低減を図ることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、地下室のスラブ下部の複数箇所に凹状に構成した防水シートを敷き、その防水シートの内側を砂で満たすと共に、凹部上端をスラブに埋設し、送水管を防水シートの内側まで配管すると共に、建物の不同沈下に対応して防水シートに水を注入し、建物の不同沈下を修正したため、従来のように、不同沈下した基礎の直近に鋼管杭を支持層まで打ち込み、上部をコンクリートで固めた上にジャッキを据付け、建物のジャッキアップを行うと云うようなアンダーピニング工法が不要となると共に、工期の短縮につながり、大幅にコストの低減を図ることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、非透水層の地盤において、地下室のスラブ下部の複数箇所に砂場を設け、送水管をその砂場の内部まで配管すると共に、建物の不同沈下に対応して非透水層に囲まれた砂場に水を注入し、建物の不同沈下を修正したため、従来のように、不同沈下した基礎の直近に鋼管杭を支持層まで打ち込み、上部をコンクリートで固めた上にジャッキを据付け、建物のジャッキアップを行うと云うようなアンダーピニング工法が不要となると共に、工期の短縮につながり、大幅にコストの低減を図ることができる。
【0018】

建物の四面に均等に力を加えることが可能となり、建物が不同沈下した際、不同沈下した場所を効率よく修正することが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、耐圧基礎の下部の複数筒所に水の注入口が設けられた中空状のマットを敷くと共に、送水管を注入口まで配管し、建物の不同沈下に対応してマットに水を注入し、建物の不同沈下を修正したため、従来のように、不同沈下した基礎の直近に鋼管杭を支持層まで打ち込み、上部をコンクリートで固めた上にジャッキを据付け、建物のジャッキアップを行うと云うようなアンダーピニング工法が不要となると共に、工期の短縮につながり、大幅にコストの低減を図ることができる。
【0020】

物の四面に均等に力を加えることが可能となり、建物が不同沈下した際、不同沈下した場所を効率よく修正することが可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、マットの内部に砂を詰めたため、捨てコンクリートとスラブに含まれる砕石が直接ぶつかり合うことがなくなり、マットの性能を長期間にわたって安定させる。
【実施例1】
【0022】
以下、この発明の実施の形態1について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0023】
図1及至図3には、この発明の実施の形態1を示す。
【0024】
図1aは建物1と地下室3の断面図である。地下室3を構築するためには、地表面2を地下室3を造作するために必要な所定の深さまで掘下げると共に、掘下げた底部に砕石9を入れ、その砕石9を転圧し、その上部に捨てコンクリート8を打ち込み固め、さらに捨てコンクリート8の上に、捨てコンクリート8とスラブ6とが一体にならないように、ビニールシート4を敷いたのちマット7を載せ、その上部にスラブ6を構築する。
【0025】
そして、建物1が不同沈下をおこした場合、図2に示すように、不同沈下した場所のマット7a、マット7b、マット7c、マット7dの何れかの送水管5a、送水管5b、送水管5c、送水管5dより水を注入し、水の圧力により建物の不同沈下を修正する。
【0026】
マット7は中が中空状で密封された状態で構成され、マット7の中に水を注入することにより、水の圧力にて建物の不同沈下を修正する。
【0027】
さらに、図3bに示すように、中が中空状で密封された状態のマット7の中に砂10を入れておくことにより、捨てコンクリート8とスラブ6に含まれる砕石が直接ぶつかり合うことがなくなり、マット7の性能を長期間にわたって安定させる。
【実施例2】
【0028】
以下、この発明の実施の形態2について説明する。
[発明の実施の形態2]
【0029】
図4と図5は、この発明の実施の形態2を示す。上記発明の実態の形態1ではマット7が中空状で密封された状態に構成されていたのに対して、この発明の実施の形態2では、図5bのように防水シート11を凹状に構成し、その内側を砂10で満たすと共に、防水シート11の凹部上端11eをスラブ6に埋設し、建物1が不同沈下をおこした場合、図4に示すように不同沈下した場所の防水シート11a、防水シート11b、防水シート11c、防水シート11dの何れかの送水管12a、送水管12b、送水管12c、送水管12d、より水を注入し、水の圧力により建物の不同沈下を修正する。その他の工法は、この発明の実施の形態1と同様である。
【実施例3】
【0030】
以下、この発明の実施の形態3について説明する。
[発明の実施の形態3]
【0031】
図6及び図7は、この発明の実施の形態3を示す。上記発明の実態の形態2では防水シート11を凹状に構成し、その内側を砂10で満たされた状態に構成されていたのに対して、この発明の実施の形態3では、地下室の周囲の土地が非透水層の地盤のため、防水シート11が不要となる。その他の工法は、この発明の実施の形態2と同様である。
【実施例4】
【0032】
以下、この発明の実施の形態4について説明する。
[発明の実施の形態4]
【0033】
図8は、この発明の実施の形態4を示す。上記発明の実態の形態1及至7では地下室のスラブに対応して不同沈下修正工法を述べてきたのに対して、この発明の実施の形態4では、耐圧基礎に対応して不同沈下修正工法を説明する。
【0034】
建物の耐圧基礎18を構築するためには、地表面14を耐圧基礎18を構築するために必要な所定の深さまで掘下げると共に、掘下げた底部に砕石15を入れ、その砕石15を転圧し、その上部に捨てコンクリート16を打ち込み固め、さらに捨てコンクリート16と耐圧基礎18コンクリートとが一体にならないように、ビニールシート17を敷いたのち砂19を詰めたマット20を載せ、その上部に耐圧基礎18を構築する。
【0035】
このように構成したマット20に送水管21に設けられたパイプ継手22より水を注入することにより、マット19が膨れ、水の圧力にて建物の不同沈下を修正する。なお、送水管21に高水圧をかけてマット20に水を圧送するか、もしくは送水管21の送水口を地表より高い位置に設けて高低差をつけて水圧によりマット20に水を圧送することが望ましい。その他の工法は、この発明の実施の形態1と同様である。
【0036】
以上、実施の形態に基づいて、本発明に係る浮力を利用した地下不同沈下修正工法について詳細に説明してきたが、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の改変をなしても、本発明の技術的範囲に属するのはもちろんである。
【0037】
さらに、図1bに記載のマット7はマットに限定せず、弾力性のある材料で構成された、例えば、ゴム風船のような構造でも可能である。
【0038】
また、図3b、図5b、図6に表示される砂10は、砂に限定せず、極小砕石等の細かい材料でも可能である。
【0039】
なお、図3bに砂10を用いたが、砂10以外の材料で、水を吸収すると膨張する性質のある、例えば、ゲル等を用いる事も可能である。
【0040】
また、図1bにおいて、捨てコンクリート8とスラブ6の間にビニールシート4を設けたが、ビニールシート4に限定せず、捨てコンクリート8とスラブ6とが接着しない材料であれば、例えば、スタイルフォーム等の材料を用いる事も可能である。
【0041】
図1及至図7において、地下室のスラブに対応して不同沈下修正工法を述べてきたが、この工法は図8における耐圧基礎の場合においても、同様に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の実施の形態1に係る建物と地下室の断面図である。
【図2】同実施の形態1に係る地下室のスラブ下部のマットの平面図である。
【図3】同実施の形態1に係るマットの平面図と断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る地下室のスラブ下部の防水シートの平面図である。
【図5】同実施の形態2に係る防水シートの平面図と断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る地下室の断面図である。
【図7】同実施の形態3に係る地下室の断面図である。
【図8】この発明の実施の形態4に係る建物と耐圧基礎の断面図である。
【図9】同実施の形態4に係るマットの平面図と断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 建物
2 地表面
3 地下室
4 ビニールシート
5 送水管
6 スラブ
7 マット
8 捨てコンクリート
9 砕石
10 砂
11 防水シート
12 送水管
13 建物
14 地表面
15 砕石
16 捨てコンクリート
17 ビニールシート
18 耐圧基礎
19 砂
20 マット
21 送水管
22 パイプ継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下室のスラブ下部の複数箇所に水の注入口が設けられた中空状のマットを敷くと共に、送水管を注入口まで配管し、建物の不同沈下に対応してマットに水を注入し、建物の不同沈下を修正した事を特徴とする浮力を利用した建物の不同沈下修正工法。
【請求項2】
地下室のスラブ下部の複数箇所に凹状に構成した防水シートを敷き、その防水シートの内側を砂で満たすと共に、凹部上端をスラブに埋設し、送水管を防水シートの内側まで配管すると共に、建物の不同沈下に対応して防水シートに水を注入し、建物の不同沈下を修正した事を特徴とする浮力を利用した建物の不同沈下修正工法。
【請求項3】
非透水層の地盤において、地下室のスラブ下部の複数箇所に砂場を設け、送水管をその砂場の内部まで配管すると共に、建物の不同沈下に対応して非透水層に囲まれた砂場に水を注入し、建物の不同沈下を修正した事を特徴とする浮力を利用した建物の不同沈下修正工法。
【請求項4】

れか一つに記載の浮力を利用した建物の不同沈下修正工法。
【請求項5】
耐圧基礎の下部の複数箇所に水の注入口が設けられた中空状のマットを敷くと共に、送水管を注入口まで配管し、建物の不同沈下に対応してマットに水を注入し、建物の不同沈下を修正した事を特徴とする浮力を利用した建物の不同沈下修正工法。
【請求項6】

用した建物の不同沈下修正工法。
【請求項7】
マットの内部に砂を詰めた事を特徴とする請求項1又は5に記載の浮力を利用した建物の不同沈下修正工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−8127(P2008−8127A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203894(P2006−203894)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(504196492)株式会社 ▲高▼▲橋▼監理 (33)
【Fターム(参考)】