説明

浮沈形風力深海水栄養塩汲上装置

【課題】深海水を汲み上げて海藻の育成を促進させ、海藻メタン化エネルギーおよび海藻食餌魚介類の養殖に供する深海水栄養塩汲上装置を提供する。
【解決手段】波浪・風圧および海面下沈下に耐える風車1、波浪の水粒子の衝撃に耐える二重構造の外筒5、外筒5により水粒子からの衝撃を保護される汲込管5aを備え、風車1の回転により軸流ポンプ4を駆動し、深海栄養塩水を汲み上げ、散水ホース3により海藻植栽網に深海栄養塩水を散布する浮沈形風力深海水栄養塩汲上装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は深海水を汲み上げて海藻の育成を促進させ、海藻メタン化エネルギーおよび海藻食餌魚介類の養殖分野に活用するものである。
【背景技術】
【0002】
超断崖形地形を利用した深海水汲上装置(高知県室戸岬)
小規模船に装着した栄養飲料水等に利用する深海水汲上装置(富山湾)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は長期間無人で活用する装置であるので海上および深海に至る自然条件に対応する必要があり、その条件は例えば次に掲げる如きものがある。
1)過去の資料による最大波浪
1990年経ヶ岬沖、波高8.54m、周期14,7秒、波速度23m/秒、水粒子の最大速度1.83m/秒、波長337mこの場合、資料にはないが砕波、三角波による横波を受ける。
2)汲上装置が受ける風圧
風圧は60m/秒を想定する必要がある
3)汲上装置(海藻植栽網)の海流対策参考図[図5][図6]
装置の海水による劣化、浮上部の耐候性
4)通常50m以浅の装置に付着する海藻、貝類による装置の沈下
5)想定外の衝撃等による汲上装置の脱落
【課題を解決するための手段】
【0004】
1:本発明は洋上に敷設された多数の海藻植栽装置に取り付けて活用すると共に、沿岸でも栄養塩汲上可能海域に活用されるものである。
1−1:洋上の波浪に耐えるため水面上および水面下の構造物の浅海部は二重壁パイプ構造で波の衝撃を緩和している。また、深海迄に達する長尺ホースが波高さによる構造物の上下動を吸収しきれないので、途中に伸縮性をもった可撓管を装着する等の自然現象への対策を行っている。
1−2:台風をはじめとする強力な風に耐えるための構造物の質量や形状には特別の設計を実施した。
1−3:装置の耐候性、耐海水性を調査して最適材質を配慮した。
1−4:装置への海藻や貝類の附着は他の構造物より少ない事は検討済みですが、附着物による装置の沈下量に対応する浮子材質として長年実験を行った発泡スチロールを装置殻内へ充填する。
1−5:想定外の事故による装置の海中沈下対策を講じた。
1−6:本装置の生命である装置の自然加圧に対する強度等は当然であるが、洋上に多数設置される装置の経済性を考慮した計画としている。
【発明の効果】
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の利用の一つには、エネルギー源として海藻を外洋に大規模流し網式植栽網で植栽するとき、必要数の本装置を設置させて海藻に深海栄養塩水を補給するもので、その散布方法も、例えばコンブ等の様に押し上げ成長をする海藻は水中から散布して根元近くへ、わかめやマツモなどは水上や水中からなど、海藻の種類によって使い分けを行う。日本海の場合海流の直進距離は10km程度と言われている。そのため、流し網式海藻植栽の方法であれば、海流の流れ方向が変わっても常に栄養塩水を補給する事が出来る。
【実施例】
【0006】
[図4]はイメージ図。[図1]、[図2]、[図3]は実施例を示す。
[図4]で海面より上部にある風車1)は軸を介して軸流ポンプ4)を駆動。静翼2)は風車1)とは逆向翼で汲上装置の転回を防いでいる。散水ホース3)は海中、空中いずれかから深海水を散水する。散水ホースの両端はゆとりをもったロープで海藻植栽網に結束されている。
外筒5)は[図1]汲込管5a)の水粒子に対する衝撃を二重構造によって保護すると共に、汲上装置の浮上用発泡スチロール16)を内蔵する(記・水粒子は水面に近い所で急激に弱くなって漸減し、今までの最大波では水面下−160mで動きが0になると言われている。)
可撓管6)は波高さによる汲上装置の上下動による長尺ホース7)の伸縮の連動不全を補完する。また、長尺ホース7)の最深部に深海水吸込筒8)があり、この吸込筒8)の最下部からロープ9)で8)、7)、6)、5a)、5)と浮子10)に結ばれて想定外の衝撃等による汲上パイプ、ホース部の海底沈下を防止している。
また、発泡スチロール充填による[図1]の試算では、静止翼2)迄の海面上の高さは1m超で牡蠣等の付着による耐沈下重量は約60kgである。耐海水装置用材は特殊なものが少なくないので、材質対応には留意する必要がある。
【産業上の利用の可能性】
【0007】
海藻エネルギーの日本海中間線と東北太平岸を合わせると1億5000万kw/h以上のエネルギーが得られる。更に世界の海にはこれの10数倍の海域がある、これに深海栄養塩を付加することによって得られるエネルギーは世界のCO、NO、SO、重金属を減らし地球環境改善にも貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】 本発明の上部構造図
【図2】 本発明[図1]に連結する海面下構造図
【図3】 本発明[図2]に連結する海面下構造図
【図4】 本発明のイメージ図
【図5】 気象庁1996年観測点
【図6】 気象庁1996年海流速度
【図7】 栄養塩水の海表から深海に至る濃度
【図8】 栄養塩水の散水効果を予測する深海と海表の塩分濃度
【符号の説明】
1) 風車
2) 静翼(風受面逆)
3) 散水ホース
4) 軸流ポンプ
5) 外筒
5a)汲込管
6) 可撓管
7) 長尺ホース
8) 深海水吸込筒
9) 緊急回収ロープ
10) 浮子
11) 軸受箱
12) 風車取付軸
13) 軸受
14) カラー
15) 軸受
16) 発泡スチロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮沈形風力深海水栄養塩汲上装置は、波浪・風圧および海面下沈下に耐える風車と、静止翼および波浪の水粒子の衝撃に耐える二重構造の汲上管及び可撓管、水深200m以下にある深海水吸込管下端から、長尺ホース内部を通して浮子に連結する不測要因の沈下防止ロープと、風車の回転域内で常時深海栄養塩水を汲み上げ、海藻植栽網に散布する散水ホースを備えた軸流ポンプを内蔵する浮沈形風力深海水栄養塩汲上装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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