説明

浴室壁の配管挿通構造および配管挿通部材

【課題】従来必要であった水栓固定金具が不要で、水栓固定金具が浴室壁に取り付けられる手間がかからない浴室壁の配管挿通構造および配管挿通部材を提供する。
【解決手段】浴室壁1に形成された挿通孔11に配管挿通部材3が取り付けられ、浴室壁1の壁裏側に配設される配管2が挿通孔11を介して浴室内13に引き込まれる。配管挿通部材3は、挿通孔11に連通する挿通開口40を内部に有し浴室壁1の挿通孔11の周縁部に固定される固定フランジ部4と、固定フランジ部4の挿通開口40の周縁部から浴室内13側に連接され配管2の出口51が形成される覆い部5とを備える。出口51の開口方向52は固定フランジ部4が固定された浴室壁1と略平行となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室壁の配管挿通構造および配管挿通部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴室壁の壁裏側から配管が浴室内に引き込まれ、浴室内の水栓装置に接続されるのであるが、浴室の壁裏のスペース、すなわち浴室壁と躯体の壁との間は狭いため、図4に示されるように、水栓固定金具9が取り付けられている。水栓固定金具9は、エルボ状の管部材で、浴室壁1に形成された孔10にその一端側が取り付けられ、他端側が浴室壁1と略平行になる。そして、この水栓固定金具9の他端側に、浴室壁1に沿って這わされた配管2が接続されるものである。これにより、浴室壁1と躯体の壁との間の狭いスペースを這うように配設された配管2が、浴室内に引き込まれる際に、浴室壁1に形成された孔10の部分で略直角に折曲されるのが回避され、配管2が急激に折曲されることによる損傷や耐久性の低下が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−115290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図4に示される従来例にあっては、水栓固定金具9が必要であるとともに水栓固定金具9が浴室壁1に取り付けられる手間がかかるものであった。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、従来必要であった水栓固定金具が不要で水栓固定金具が浴室壁に取り付けられる手間がかからない浴室壁の配管挿通構造および配管挿通部材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の浴室壁の配管挿通構造は、以下のような構成とする。
【0007】
浴室壁に形成された挿通孔に配管挿通部材が取り付けられ、前記浴室壁の壁裏側に配設される配管が前記挿通孔を介して浴室内に引き込まれるための浴室壁の配管挿通構造であって、前記配管挿通部材は、前記挿通孔に連通する挿通開口を内部に有し前記浴室壁の前記挿通孔の周縁部に固定される固定フランジ部と、前記固定フランジ部の前記挿通開口の周縁部から浴室内側に連接され前記配管の出口が形成される覆い部とを備え、前記出口の開口方向は前記固定フランジ部が固定された前記浴室壁と略平行となることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記配管は、合成樹脂で形成されることが好ましいものである。
【0009】
また本発明の配管挿通部材は、以下のような構成とする。
【0010】
浴室壁に形成された挿通孔に取り付けられ、前記浴室壁の壁裏側に配設される配管が前記挿通孔を介して浴室内に引き込まれるための配管挿通部材であって、前記挿通孔に連通する挿通開口を内部に有し前記浴室壁の前記挿通孔の周縁部に固定される固定フランジ部と、前記固定フランジ部の前記挿通開口の周縁部から浴室内側に連接され前記配管の出口が形成される覆い部とを備え、前記出口の開口方向は前記固定フランジ部と略平行となることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記出口の径は、挿通される前記配管の径と略同じであることが好ましいものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、従来必要であった水栓固定金具が不要で、水栓固定金具が浴室壁に取り付けられる手間がかからない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態において水栓装置を取り外した状態の要部断面図である。
【図2】同上の配管挿通部材の正面図である。
【図3】同上において水栓装置を取り外した状態の要部断面図である。
【図4】従来例の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基いて説明する。
【0015】
本実施形態では、建物の躯体の壁で囲まれたスペースに、床パンと壁パネルと天井パネルとからなる浴室ユニットが設置され、壁パネルが浴室壁となるものであるが、特にこれに限定されないものである。
【0016】
図1に示されるように、浴室壁1には挿通孔11が形成され、浴室壁1の壁裏側(浴室外12側)に配設される配管2がこの挿通孔11を介して浴室内13に引き込まれる。配管2は可撓性を有するもので、本実施形態では合成樹脂で形成されることで容易に可撓性を有することとなるが、材質は特に限定されない。
【0017】
挿通孔11の径は、配管2の径と同等以上であることは勿論であるが、2倍以上であることが好ましいものであり、本実施形態では略3倍である。そして、挿通孔11には配管挿通部材3が取り付けられる。
【0018】
配管挿通部材3は、図2に示されるように、固定フランジ部4と覆い部5とで構成される。固定フランジ部4は、挿通孔11に連通する挿通開口40を内部に有し、浴室壁1の挿通孔11の周縁部に固定されるものである。固定フランジ部4は、内フランジ41と筒状固定部42(図1、図3参照)とで構成される。
【0019】
内フランジ41は、浴室壁1の挿通孔11の周縁部の浴室内13側の面に当接する略円形の外郭をした板状部材で、内側の中央部に略円形の挿通開口40が形成されている。挿通開口40の径も挿通孔11と同様に、配管2の径と同等以上であることは勿論であるが、2倍以上であることが好ましいものであり、本実施形態では略3倍である。内フランジ41には、ビス等の固着具が挿通される固着孔44が形成されている。
【0020】
そして、挿通開口40の端縁から筒状固定部42が連設される。筒状固定部42は、内フランジ41板の挿通開口40の端縁から浴室外12側に向けて連設される筒状をしたもので、その先端部には、浴室壁1の挿通孔11の周縁部の浴室外12側の面に当接する外フランジ43が形成されている。このように、筒状固定部42と外フランジ43とで挿通孔11が覆われ、浴室壁1の挿通孔11の周縁部が損傷するのが防止される。
【0021】
覆い部5は、固定フランジ部4の挿通開口40の周縁部から浴室内13側に連接され、配管2の出口51が形成されるものである。出口51の開口方向52は、固定フランジ部4が固定された浴室壁1と略平行に(すなわち固定フランジ部4の内フランジ41と略平行に)なるように形成される。また、出口51の径は、配管2の径と略同じに形成される。
【0022】
配管挿通部材3は変形性(弾性)を有するもので、本実施形態では合成樹脂で形成されるが、材質は特に限定されない。特に本実施形態では、覆い部5と固定フランジ部4の比較において、覆い部5は軟質の材料(軟質樹脂)、固定フランジ部4は硬質の材料(硬質樹脂)で形成される。また、固定フランジ部4は、内フランジ41と筒状固定部42の比較において、筒状固定部42は内フランジ41よりも軟質の材料で形成される。
【0023】
この配管挿通部材3は、筒状固定部42が変形されて浴室壁1の挿通孔11に挿通され、開口方向52が上方を向く状態で、固定フランジ部4が浴室壁1の挿通孔11の周縁部に固定される。そして、浴室壁1の浴室外12側の面に沿って下方から上方に向けて這うように配設されている配管2が、挿通孔11および挿通開口40を介して浴室内13側に引き込まれ、図3に示されるように、配管2の先端開口に水栓装置6が接続される。水栓装置6は、本実施形態ではビスからなる固着具61により浴室壁1に固定される。また、水栓装置6と浴室壁1との間を覆う配管カバー7が装着され、浴室内13の水が挿通孔11および挿通開口40を介して壁裏側へ侵入するのが防止される。
【0024】
上記のような浴室壁1の配管2の挿通構造にあっては、従来必要であった水栓固定金具9が不要であるとともに、水栓固定金具9が浴室壁1に取り付けられる手間がかからないものである。
【0025】
また、挿通孔11および挿通開口40の径が配管2の径の2倍以上となることで、浴室壁1に沿う配管2が挿通孔11および挿通開口40を介して引き込まれる際に折曲される曲率半径Rが大きくなり、配管2が急激に折曲されることによる損傷や耐久性の低下が防止される。
【0026】
また、出口51の径が配管2の径と略同じに形成されることで、水が配管挿通部材3内に浸入するのがより確実に防止される。なお、覆い部5は弾性を有しているため、出口51の径が配管2の径よりも小さく形成されてもよく、この場合、配管2に出口51が密着して防水効果がより高まる。
【符号の説明】
【0027】
1 浴室壁
11 挿通孔
12 浴室外
13 浴室内
2 配管
3 配管挿通部材
4 固定フランジ部
40 挿通開口
41 内フランジ
42 筒状固定部
43 外フランジ
5 覆い部
51 出口
52 開口方向
6 水栓装置
61 固着具
7 配管カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室壁に形成された挿通孔に配管挿通部材が取り付けられ、前記浴室壁の壁裏側に配設される配管が前記挿通孔を介して浴室内に引き込まれるための浴室壁の配管挿通構造であって、前記配管挿通部材は、前記挿通孔に連通する挿通開口を内部に有し前記浴室壁の前記挿通孔の周縁部に固定される固定フランジ部と、前記固定フランジ部の前記挿通開口の周縁部から浴室内側に連接され前記配管の出口が形成される覆い部とを備え、前記出口の開口方向は前記固定フランジ部が固定された前記浴室壁と略平行となることを特徴とする浴室壁の配管挿通構造。
【請求項2】
前記配管は、合成樹脂で形成されることを特徴とする請求項1記載の浴室壁の配管挿通構造。
【請求項3】
浴室壁に形成された挿通孔に取り付けられ、前記浴室壁の壁裏側に配設される配管が前記挿通孔を介して浴室内に引き込まれるための配管挿通部材であって、前記挿通孔に連通する挿通開口を内部に有し前記浴室壁の前記挿通孔の周縁部に固定される固定フランジ部と、前記固定フランジ部の前記挿通開口の周縁部から浴室内側に連接され前記配管の出口が形成される覆い部とを備え、前記出口の開口方向は前記固定フランジ部と略平行となることを特徴とする配管挿通部材。
【請求項4】
前記出口の径は、挿通される前記配管の径と略同じであることを特徴とする請求項3記載の配管挿通部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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