説明

浴室用カウンター

【課題】本発明は、洗面器の滑落を確実に防止しつつ、乾燥性に優れ、かつ施工性にも優れた浴室用カウンターを提供することを目的としている。
【解決手段】本発明にかかる浴室用カウンターの代表的な構成は、カラン13の下方に浴室壁面から突出するように設けられるカウンター30であって、一端が側壁面22に到り、他端が浴槽11に到る幅を有し、ほぼ全幅に亘って奥行きがほぼ一定であって、上面にほぼ全幅に亘って浴室壁面から手前側に向かって下降する傾斜面31を有し、上面の手前側の縁部近傍に洗面器18の滑落を防止するための複数の突起32を間欠に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の水栓の下方に壁面から突出するように設けられる浴室用カウンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室において水栓の下方に洗面器を載置するためのカウンターを設ける構成が知られている。例えば特許文献1(実開昭63−058143)には、水栓の下に洗面器を載置しうる洗面台を設け、この洗面台の下に浴用椅子収納部を設けた構成が記載されている。これにより使用者は洗面器に水を汲んで使用する際に、必要以上に腰を曲げることなく、楽な姿勢で体を洗うなどの作業をすることができる。
【0003】
このような浴室用カウンターについては様々な工夫がなされており、回転して収納可能にした構成や、段差を設けて洗面器を載置する部分を段落ちさせた構成が開示されている。中でも洗面器の滑落防止は大きな課題であり、特許文献2(特開2001−061700)のようにカウンターの上面に浴室の壁面と平行な複数本のリブを設けた構成や、特許文献3(特開2001−353090)のようにカウンターの上面に浴室の壁面と垂直な複数本のリブを設けた構成などが記載されている。これらのようなリブを設けたことにより、カウンター上面を流れる湯水が洗面器を浮かせることがなく、洗面器の滑落を防止することができる。
【0004】
一方、カウンターの取り付け構造と部材の共通化も大きな課題の一つである。ここで、カウンターを水栓の下のみに設けるのであれば部材の共通化も容易であるが、使用者の利便性を考慮すればカウンターが広い方が望ましい。しかしカウンターを側壁面から浴槽に到るまで広くすれば、浴室のサイズごとにカウンターの幅も異なってしまうため、部材の共通化を図ることが難しい。
【0005】
そこで本件出願人は、特許文献4(特開2005−287530)において、両端部を切断することによって形成する洗面器置きカウンターについて開示している。これにより、洗面器置きカウンター用の1つの型を用いて、幅寸法の異なる2つのタイプの洗面器置きカウンターをコスト的に有利に製造することができる。
【特許文献1】実開昭63−058143号公報
【特許文献2】特開2001−061700号公報
【特許文献3】特開2001−353090号公報
【特許文献4】特開2005−287530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2や特許文献3のようにカウンターの上面にリブを設けることによって洗面器が移動しにくくなるとはいえ、洗面器が空であれば自重がほとんど働かない。このため湯水の勢いで滑落してしまうおそれがあり、滑落防止の確実性が低い。またカウンター上面のリブの間に水が滞留しやすく、浴室の乾燥性が悪くなるという問題がある。
【0007】
また特許文献4のように洗面器置きカウンターが水栓の下で大きく膨らんだ形状では、施工時にカウンターの両端を切断しなくてはならない。このため、施工時に手間がかかるという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、洗面器の滑落を確実に防止しつつ、乾燥性に優れ、かつ施工性にも優れた浴室用カウンターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる浴室用カウンターの代表的な構成は、水栓の下方に浴室壁面から突出するように設けられる浴室用カウンターであって、一端が側壁面に到り、他端が浴槽に到る幅を有し、ほぼ全幅に亘って奥行きがほぼ一定であって、上面がほぼ全幅に亘って浴室壁面から手前側に向かって下降する勾配を有し、上面の手前側の縁部近傍に洗面器の滑落を防止するための複数の突起を間欠に設けたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、間欠に設けられた突起によって洗面器の滑落を確実に防止しうると共に、カウンター上面に水が滞留することがないため乾燥性に優れている。また水栓の設けられた浴室壁面のほぼ全幅に亘って一定の奥行きを有していることから積載量が多く、使用者に高い利便性を提供することができる。
【0011】
複数の突起は、一定間隔に配置することが好ましい。これによりカウンター上面のいずれの位置においても確実に洗面器の滑落を防止することができる。
【0012】
浴室用カウンターは長手方向の一端を切断することによって複数のサイズの浴室に設置されるものであって、複数の突起は次式によって表される間隔で配置されていることが好ましい。
【数1】

上記構成によれば、カウンターの長手方向の一端を切断しても切断面に突起がかかることがない。このため1つの型を用いて製造したカウンターを複数のサイズの浴室に適用することができるため、生産コストの低減を図ることができる。またカウンターの一端のみを切断すれば足りるため、両端を切断する場合に比して施工性を向上させることができる。
【0013】
浴室用カウンターの切断される一端とは、側壁面側であることが好ましい。これにより浴槽側に水平面を形成し、浴槽のフランジ下面との取り合いにおいてほぼ密着させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、洗面器の滑落を確実に防止しつつ、乾燥性に優れ、かつ施工性にも優れた浴室用カウンターを提供することを目的としている。さらに1つの型を用いて製造したカウンターを複数のサイズの浴室に適用することができ、生産コストの低減を図ることができる。またカウンターの一端のみを切断すれば足りるため、施工性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明にかかる浴室用カウンターの実施形態について説明する。図1は浴室の全体構成図、図2は浴室用カウンターを説明する図、図3は浴室用カウンターと浴槽の取り合いを説明する図、図4はカウンターを複数のサイズで切断した例を示す図、図5は突起の間隔の設定例を説明する図である。なお、以下の実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0016】
図1に示すように、浴室10には、浴槽11、洗い場である床面12、水栓であるカラン13およびシャワー14、浴室用カウンター(以下、単に「カウンター30」という。)、手摺りであるサポートバー17が備えられている。
【0017】
カウンター30は洗面器などを載置するための台であって、カラン13の下方に、浴室壁面21から突出するように設けられている。カウンター30の上面は膝下程度の高さになっている。カウンター30の前面は壁面よりも浴室中央部に向かって突出した位置に配置され、カウンター30の下部は壁面に向かって後退している。
【0018】
カウンター30は一端が浴室10の側壁面22に至り、他端が浴槽11に至る幅を有している。すなわち、カウンター30は浴室壁面21の洗い場である床面12に対応する全幅に亘って配置される。そしてカウンター30は全幅に亘って奥行きが一定であって、いずれの位置においても同等の積載量を持たせている。
【0019】
図2(a)に示すように、カウンター30の上面のほぼ全幅に亘って、浴室壁面21から手前側に向かって下降する勾配を有する傾斜面31を有している。この傾斜面31の手前側の縁部近傍には、洗面器の滑落を防止するための複数の突起32を間欠に設け、かつ一定間隔に配置している。突起32の間隔は、一般的な洗面器18が滑落しない間隔に設定される。突起32の形状は矩形として図示しているが、楕円その他の形状であってもよい。突起32の奥行き及び高さの寸法は、洗面器18の滑落を防止しうるように適宜設定される。
【0020】
上記構成によれば、間欠に設けられた突起によって洗面器の滑落を確実に防止しうると共に、カウンター上面の傾斜面31に水が滞留することがないため乾燥性に優れている。またカラン13の設けられた浴室壁面21のほぼ全幅に亘って一定の奥行きを有していることから積載量が多く、使用者に高い利便性を提供することができる。また突起32は一定間隔に配置したことにより、カウンター上面のいずれの位置においても確実に洗面器の滑落を防止することができる。
【0021】
またカウンター30の両端には、勾配を有さない水平面33が形成されている。そして図3に示すように、カウンター30の水平面33は、浴槽11のフランジ11aの下側に重なるように配置される。このように、カウンター30の浴槽側の端部は、水平面33によって浴槽11のフランジ11a下面との取り合いにおいてほぼ密着させることができる。
【0022】
図2(a)に示したようにカウンター30は切断しない状態でも使用することができるが、図2(b)に示すように長手方向の一端を切断することによって幅を変えることができ、複数のサイズの浴室10に設置可能となる。切断した断面には、切断部位を隠蔽するためにパネル34が取り付けられる。このとき、側壁面22側のみを切断することでよく、浴槽側の水平面33は残すことができる。このため、浴槽11のフランジ11a下面との取り合いの密着性を確保することができる。
【0023】
さらに図4はカウンターを複数のサイズで切断した例を示す図である。図4(a)は切断しない状態であってカウンター30は1334mmの長さを有している。カラン13はカウンターの中央位置Cにあり、左右は均等に667mmとなっている。また水平面33は65mmと設定しており、傾斜面31の片方の幅は602mmとなっている。図4(b)は200mm切断して1134mm、図4(c)は350mm切断して984mmとした例である。カラン13は中央位置Cよりも突起ひとつ分の150mmだけずれており、浴室側の端部から517mmの位置にある。
【0024】
ここで、切断位置は浴室のサイズによって決定されるが、突起32が切断位置にかからないことが必要である。切断位置に突起があると外観上いかにも途中で切断したように見えるうえ、パネル34が取り付けにくいためである。突起32の間隔については、上述のように一般的な洗面器18が滑落しない間隔にするため上限に制限がある。しかしさらに、次に説明する関係式に基づいて突起の間隔を設定することにより、突起32が切断位置にかからないようにすることができる。
【0025】
図5(a)に示すように、突起の間隔をp、カウンター30の幅をw、カウンター30の端から切断する幅をa、突起の幅をdとする。ここでカウンターを最大幅で使用する場合に中央にカラン13を配置し、カラン13が両脇の突起32の間隔の中央にあるとする(図4(a)の状態)。このときの中央位置Cを基準に考えたとき、切断後に切断側に残る突起の数をnとする(図5(a)ではn=3)。すると中央位置Cから切断位置Xまでの距離w/2−aがカウンターの突起の間に入るためには、図のA位置とB位置との間に切断位置Xがくる必要があるため、次式を満たす必要がある。
【数2】

上式をpについて解けば、次の関係式が得られる。
【数3】

次に、具体的な数値を入れて実際に突起の間隔pについて検討する。
【0026】
図5(b)は、上式に実際に数値を入れて突起の間隔pを算出した例である。ここでカウンターの幅wは1334mm、切断する幅aを200mm(幅aは浴室のサイズによって決定される)、突起の幅dを34mmと仮定する。図に示されるように、例えば切断後に位置Cより切断側に2つの突起を残したいと考えた場合、突起の間隔pを160≦p≦266mmの間に設定することにより、切断位置Xに突起がかからないようにすることができる。同様に、3つの突起を残したいと考えた場合、突起の間隔pを104≦p≦146mmの間に設定することにより、切断位置Xに突起がかからないようにすることができる。
【0027】
このように、複数の突起32を上式によって表される間隔で配置することにより、カウンター30の長手方向の一端を切断しても切断面に突起32がかかることがない。このため、パネル34を取り付けやすく、また外観を損ねることがない。従って1つの型を用いて製造したカウンター30を複数のサイズの浴室に適用することができ、生産コストの低減を図ることができる。またカウンター30の一端のみを切断すれば足りるため、両端を切断する場合に比して施工性を向上させることができる。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、浴室の水栓の下方に壁面から突出するように設けられる浴室用カウンターとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】浴室の全体構成図である。
【図2】浴室用カウンターを説明する図である。
【図3】浴室用カウンターと浴槽の取り合いを説明する図である。
【図4】カウンターを複数のサイズで切断した例を示す図である。
【図5】突起の間隔の設定例を説明する図である。
【符号の説明】
【0031】
10 …浴室
11 …浴槽
11a …フランジ
12 …床面
13 …カラン
14 …シャワー
17 …サポートバー
18 …洗面器
21 …浴室壁面
22 …側壁面
30 …カウンター
31 …傾斜面
32 …突起
33 …水平面
34 …パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓の下方に浴室壁面から突出するように設けられる浴室用カウンターであって、
一端が側壁面に到り、他端が浴槽に到る幅を有し、
ほぼ全幅に亘って奥行きがほぼ一定であって、
上面がほぼ全幅に亘って浴室壁面から手前側に向かって下降する勾配を有し、
前記上面の手前側の縁部近傍に洗面器の滑落を防止するための複数の突起を間欠に設けたことを特徴とする浴室用カウンター。
【請求項2】
前記複数の突起は、一定間隔に配置したことを特徴とする請求項1に記載の浴室用カウンター。
【請求項3】
当該浴室用カウンターは長手方向の一端を切断することによって複数のサイズの浴室に設置されるものであって、
前記複数の突起は次式によって表される間隔で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の浴室用カウンター。
【数1】

【請求項4】
前記切断される一端とは、前記側壁面側であることを特徴とする請求項3に記載の浴室用カウンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−110077(P2008−110077A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294958(P2006−294958)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】