説明

浴室用椅子の脚部の取付構造及びこれを備えた浴室用椅子

【課題】全体の構成が簡易で使い勝手が良く、しかも脚部を容易且つ確実に座部に取付けることのできる浴室用椅子の脚部の取付構造及びこれを備えた浴室用椅子を提供する。
【解決手段】下部開口状の筒状部10が設けられる座部2と、前記筒状部10に一端部が着脱自在に嵌入される脚部4と、該脚部4の一端部側側面に設けられて前記筒状部10の内面に当接されるスペーサ50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高齢者、病人、身障者等が浴室内で使用する浴室用椅子の脚部の取付構造及びこれを備えた浴室用椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の浴室用椅子としては、例えば次のようなものが存在する。即ち、この従来のものは、座部と、背もたれと、脚部とから構成されている。座部の下面四隅には下向きに筒状部が形成されると共に、該筒状部の内周面及び脚部の外周面には、夫々一対の係合リブが周方向に形成されている。この係合リブの一端部には弧状面が設けられると共に、他端部にはストッパーが設けられており、更に中央部には半円状突起又は半円状凹溝が設けられている。係合リブは座部や脚部の成形後に、所定の加工を施して形成されることになる。
【0003】
そして、座部の筒状部に脚部を挿入した後に回動して両者が取付けられる。即ち、係合リブ同士の係合により両者の離脱が規制されると共に、ストッパー同士の係合及び半円状突起と半円状凹溝との嵌合により回動が規制されて、両部材の取付状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平8−10292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のものに於いては、係合リブの形成に別途加工を必要とするために、製作コストが嵩んでしまうという難点がある。しかも、その加工には、座部と脚部とのがたつきを防止すると共に、取付強度を確保するために、相当の精度が要求されることになる。このように、上記従来の脚部の取付構造は、費用面及び製作面に於いて大なる問題点を有していたのである。
【0006】
また、脚部を座部に取付けるに際しては、座部の筒状部に脚部を挿入した後に回動させる必要があり、かかる一連の取付作業は必ずしも容易なものとは言えない。
【0007】
それ故に、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、全体の構成が簡易で使い勝手が良く、しかも脚部を容易且つ確実に座部に取付けることのできる浴室用椅子の脚部の取付構造及びこれを備えた浴室用椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る脚部の取付構造は、下部開口状の筒状部が設けられる座部と、前記筒状部に一端部が着脱自在に嵌入される脚部と、該脚部の一端部側側面に設けられて前記筒状部の内面に当接されるスペーサとを備えたものである。
【0009】
このような脚部の取付構造に於いては、脚部を座部の筒状部に嵌入させて両部材が取付けられる。その際には、脚部の側面に設けられたスペーサが座部の内面に当接することになる。これにより、座部と脚部とのがたつきの発生が規制されると共に、かかる両部材の取付強度を十分に確保することができる。その結果、使用者に不安感や不快感等を与えることなく、安全で且つ快適な入浴が可能になるのである。
【0010】
また、座部と脚部とは着脱自在に嵌入されているために、その分解及び組立が可能である。これにより、各構成部材を分解した状態で保管できると共に、この状態で搬送することが可能になる。従って、保管スペースの削減や搬送費の軽減を図ることができる。
【0011】
更に、前記スペーサの前面に、前記筒状部の内面に当接される凸状部を軸方向に形成すると共に、該凸状部の一端部に一端部側程低く傾斜する傾斜部を設けても構わない。
【0012】
この場合は、スペーサの凸状部は一端部側程低く傾斜する傾斜部を備えているために、脚部の一端部を座部の筒状部に嵌入するに際して、スペーサの凸状部が支障を与えるようなことはなく、容易に脚部の一端部を前記筒状部に嵌入することができる。
【0013】
また、このようにして嵌入された脚部は、そのスペーサの凸状部が前記筒状部の内面に係合した状態で該筒状部に取付けられることになる。即ち、筒状部の内面と脚部の側面間に多少の間隙が存在するような場合であっても、前記凸状部が筒状部の内面に適切に係合するために、脚部をがたつかせることなく、座部の筒状部に強固に取付けることができる。このようにして、不当ながたつきの発生が適切に規制されるために、この両者間の取付強度を十分に確保できる。
【0014】
更に、前記スペーサには、略中央に凸状部が設けられて前記脚部に外嵌されるスペーサ本体と、該スペーサ本体の一端部側に設けられて前記脚部に形成された第1孔に係止される第1係止片と、スペーサ本体の他端部側に設けられて前記脚部に形成された第2孔に係止される第2係止片とを備えさせてもよい。
【0015】
この場合、スペーサの第1係止片を脚部の第1孔を係止させると共に、第2係止片を第2孔に係止させることにより、スペーサ本体を脚部に外嵌させた状態で、該脚部にスペーサを容易且つ確実に取付けることができる。
【0016】
また、本発明に係る浴室用椅子は、前記脚部の取付構造を備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係る浴室用椅子の脚部の取付構造及びこれを備えた浴室用椅子は、全体の構成が簡易で且つ安価に製作することができるばかりか、使い勝手が良好であり、しかも脚部を座部に容易に且つ確実に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示す浴室用椅子を示し、(a)は正面図で、(b)は側面図である。
【図2】同座部と脚部との取付状態を示す断面図である。
【図3】同脚部の側面図である。
【図4】同連結具の使用状態を示し、(a)は平面図で、(b)は断面図である。
【図5】同スペーサを示し、(a)は正面図で、(b)は側面図である。
【図6】同スペーサを示し、(a)は断面図で、(b)は図5(a)のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る脚部の取付構造の一実施形態について、図面に従って説明する。図1に示す浴室用椅子1は、上面に人が着座する座部2と、該座部2の後部側に着脱自在に取付けられる背もたれ3と、前記座部2の四隅部分に下向きに取付けられる脚部4とを備えている。座部2と背もたれ3とは、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等の合成樹脂で構成され、脚部4はステンレスやアルミニウム等の金属製パイプで構成されている。
【0020】
座部2の四隅には下部開口状の筒状部10が設けられており、同図(b)に示すように、各筒状部10の外側に位置する一側面には貫通孔11が穿設されている。座部2の上面及び背もたれ3の前面には、例えば発泡EVA等からなるパッド12、13が夫々着脱自在に取付けられる。
【0021】
脚部4の一端部は、図2に示すように座部2の筒状部10に嵌入されている。かかる脚部4は、図3に示すように、連結具20を介して伸縮自在に連結される上下一対のパイプ21、22からなる脚部本体23と、該脚部本体23の下端部に装着されたゴム製の滑り止め24とを備えている。図4に示すように、上パイプ21の内面に軸方向に沿って凸部25が形成されるよう、その外側面には凹部26が軸方向に形成されている。また、凹部26の下部側中央位置及びこれに対向する上パイプ21の一側面には、取付孔27a、27bが穿設されている。一方、下パイプ22の外側面には、上パイプ21の凸部25がスライド自在に嵌合する凹部28が軸方向に形成されており、かかる凹凸嵌合により周方向の回動が規制される。凹部28の中央位置及びこれに対向する一側面には所定間隔を有して複数の取付孔29a、29bが穿設されている。また、上パイプ21の下端部には、図3に示すように安全性を確保するため、合成樹脂製の保護用リング30が装着されると共に、図2のように下パイプ22の上端部にも保護用リング31が装着されている。
【0022】
連結具20は、図4に示すように、上パイプ21に嵌脱自在に外嵌される一対の半割体40、41と、該半割体40、41間に配される棒状体42とを備えており、該棒状体42及び半割体40、41の一端部は支軸43により回動自在に取付けられている。棒状体42を下パイプ22の所定の取付孔29a、29b及び上パイプ21の取付孔27a、27bに挿着することにより、脚部23を所望の長さに調整できるように構成されている。一方の半割体40の他端部には通孔44が形成されると共に、該通孔44に嵌合可能な嵌合凸部45が他方の半割体41の他端部に形成されており、この両者の嵌合により半割体40、41による上パイプ21の外嵌状態が維持される。尚、半割体40、41及び棒状体42は合成樹脂で構成され、支軸43は金属で構成されている。
【0023】
上パイプ21の上部側の一側面には、図2及び図3に示すようにスペーサ50が着脱自在に設けられている。また、これに対向する他側面に穿設された貫通孔34には、上パイプ21に内装されたストッパー60の突起61が出没自在に挿着されている。この突起61は外向きに付勢された状態で、上パイプ21の側面から突出しており、上パイプ21を座部2の筒状部10に嵌入した際に、該筒状部10の貫通孔11に嵌合する。これにより、座部2と上パイプ21との取付状態が維持されることになる。尚、スペーサ50及びストッパー60は合成樹脂で構成されている。
【0024】
スペーサ50は、図5及び図6に示すように、上パイプ21に外嵌される横断面略弧状のスペーサ本体51と、その前面略中央に軸方向に突設された凸状部52と、スペーサ本体51の上端部略中央に設けられた第1係止片53と、スペーサ本体51の下端部略中央に設けられた第2係止片54とを備えている。尚、第1係止片53は先端部が上を向く断面略Lの字状に形成され、第2係止片54は先端部が後方に向く断面略Lの字状に形成されている。また、凸状部52の一端部には、該一端部側程低く傾斜する傾斜部55が形成されている。スペーサ50は、図2に示すように、その第1係止片53を前記上パイプ21の一側面に穿設した第1孔32に係合させると共に、第2係止片54を上パイプ21の第2孔33に係合させて上パイプ21に取付ける。これにより、前記スペーサ本体51が上パイプ21に外嵌された状態で取付けられることになるが、かかる一連の取付作業は、非常に簡易に行うことができる。
【0025】
本実施形態に係る浴室用椅子1は、以上のように構成されている。このような浴室用椅子1に於いては、スペーサ50の凸状部52が一端部側程低く傾斜する傾斜部55を備えているために、該一端部を座部2の筒状部10に嵌入するに際して、スペーサ50の凸状部52が支障を与えるようなことはなく、脚部4の上パイプ21を前記筒状部10に容易に嵌入することが可能である。
【0026】
また、このようにして嵌入された脚部4は、そのスペーサ50の凸状部52が前記筒状部10の内面に当接した状態で該筒状部10に取付けられることになる。即ち、筒状部10の内面と脚部4の側面間に多少の間隙が存在するような場合であっても、前記凸状部52が筒状部10の内面に当接するために、脚部4をがたつかせることなく、座部2の筒状部10に強固に取付けることができる。特に、凸状部52の一端部には傾斜部55が設けられているため、前記間隙の大小に応じて適切にがたつきの防止を図ることができる。このようにして、不当ながたつきの発生が適切に規制されるために、この両者間の取付強度を十分に確保できることになる。その結果、使用者に不安感や不快感等を与えることなく、安全で且つ快適な入浴が可能になる。
【0027】
更に、座部2と脚部4とは着脱自在に嵌入されているために、その分解及び組立が可能である。これにより、各構成部材2、4を分解した状態で保管できると共に、この状態で搬送することが可能になる。従って、保管スペースの削減や搬送費の軽減を図ることができる。
【0028】
また、本実施形態に係る脚部4の取付構造は、一体成形可能な合成樹脂からなるスペーサ50を脚部4の上パイプ21に取付けて脚部4を構成すると共に、これを座部2の筒状部10に嵌入するというものであるために、全体の構成が非常に簡易なものとなって、容易に且つ安価に製作できるという実用的な利点もある。
【0029】
尚、上記実施形態に於いては、スペーサ50に傾斜部55を有する凸状部52を設けて、これを座部2の筒状部10の内面に当接させるようにしている。しかるに、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、例えばスペーサ本体51自体を前記筒状部10の内面に当接させるように構成することも可能である。従って、凸状部52や傾斜部55等は必要に応じて設ければよいものであり、省略しても構わない。
【0030】
また、スペーサ50の脚部4への取付手段も上記実施形態の如きものに限られるものではない。
【0031】
更に、本発明に係る脚部4の取付構造は、種々の浴室用椅子に対して幅広く適用可能であることは言う迄もない。
【0032】
その他、座部2、背もたれ3及び脚部4の形状等の具体的な構成も、本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0033】
1 浴室用椅子
2 座部
4 脚部
10 筒状部
50 スペーサ
51 スペーサ本体
52 凸状部
53 第1係止片
54 第2係止片
55 傾斜部
32 第1孔
33 第2孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部開口状の筒状部が設けられる座部と、
前記筒状部に一端部が着脱自在に嵌入される脚部と、
該脚部の一端部側側面に設けられて前記筒状部の内面に当接されるスペーサと、を備えてなることを特徴とする浴室用椅子の脚部の取付構造。
【請求項2】
前記スペーサの前面に、前記筒状部の内面に当接される凸状部が軸方向に形成されると共に、該凸状部の一端部に一端部側程低く傾斜する傾斜部が設けられた請求項1記載の浴室用椅子の脚部の取付構造。
【請求項3】
前記スペーサが、略中央に凸状部が設けられて前記脚部に外嵌されるスペーサ本体と、該スペーサ本体の一端部側に設けられて前記脚部に形成された第1孔に係止される第1係止片と、スペーサ本体の他端部側に設けられて前記脚部に形成された第2孔に係止される第2係止片と、を備えてなる請求項2記載の浴室用椅子の脚部の取付構造。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の浴室用椅子の脚部の取付構造を備えた浴室用椅子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−200786(P2010−200786A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46220(P2009−46220)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】