説明

浴槽装置

【課題】 入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供する
【解決手段】
本発明の一様態によれば、背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、前記第一の浴槽壁面に対向する第二の浴槽壁面を有する浴槽と、前記第二の浴槽壁面に設けられ、前記第二の浴槽壁面に足を向けて前記浴槽に入浴している入浴者の足に噴流を吐水する吐水開口を有する吐水部と、前記噴流の状態を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐水部から吐水される噴流の状態を、前記入浴者の足を屈曲させない第1の噴流状態と、前記第1の噴流状態よりも吐水流量が多く前記入浴者の足を屈曲させる第2の噴流状態と、に交互に設定し、前記吐水部は、前記第1の噴流状態において前記入浴者の足裏が当接し、且つ、前記吐水開口よりも突出する凸部を有することを特徴とする浴槽装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、浴槽装置に関し、具体的には入浴者に運動させる浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会的に健康志向が高まり、フィットネスやエクササイズなどの運動によって健康管理を行いたいという要求が高まっている。また、入浴中に手軽に運動したいという要望もある。
【0003】
例えば、特許文献1には、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術が開示されている。踏み台にはバネによって踏み込み負荷が与えられており、入浴者は座位姿勢のまま片足で踏み台を踏み込むことにより、運動することができる。しかしながら、普段から運動習慣の無い人が運動を行うには、相当な意志の力を要する。特に、入浴時はリラックスした精神状態になっているため、意志の力を発揮することは困難である。このため、浴槽内に運動器具を設置しても、運動が長続きしないことが予想される。また、同じ動作を繰り返すため、その動作に慣れたり飽きたりして、運動が長続きしないことが予想される。
【0004】
一方、特許文献2には、内部に足置き部が設けられ、この足置き部に噴流を噴出する吐出口が設けられた循環式浴槽が開示されている。特許文献2には、入浴者が足置き部に足を載せた状態で、吐出口から噴流を噴出させることにより、入浴者の足裏を刺激して、マッサージを施すことができると記載されている。しかしながら、この循環式浴槽は、入浴者が足置き部に足を載せて使用するものであり、入浴者に身体の広範囲を運動させるものではない。
【0005】
また、特許文献3には、噴出ノズルからの噴流を制御部によって噴出・停止を制御する気泡発生装置が開示されている。特許文献3には、両噴出個所により浴湯が噴出する一定のオーバーラップ時間が生じ、噴出個所の移行が円滑に行えて、入浴者に不快感を与えることがなくなると記載されている。しかしながら、この気泡発生装置は、特許文献2に開示された循環式浴槽と同様に、入浴者に身体の広範囲を運動させるものではない。
【特許文献1】特開2003−236014号公報
【特許文献2】特開2005−287541号公報
【特許文献3】特許第2710829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、入浴者に継続的に運動させることができる、あるいは身体の部位をバランスよく運動させることができる浴槽装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、前記第一の浴槽壁面に対向する第二の浴槽壁面を有する浴槽と、前記第二の浴槽壁面に設けられ、前記第二の浴槽壁面に足を向けて前記浴槽に入浴している入浴者の足に噴流を吐水する吐水開口を有する吐水部と、前記噴流の状態を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐水部から吐水される噴流の状態を、前記入浴者の足を屈曲させない第1の噴流状態と、前記第1の噴流状態よりも吐水流量が多く前記入浴者の足を屈曲させる第2の噴流状態と、に交互に設定し、前記吐水部は、前記第1の噴流状態において前記入浴者の足裏が当接し、且つ、前記吐水開口よりも突出する凸部を有することを特徴とする浴槽装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、入浴者に継続的に運動させることができる、あるいは身体の部位をバランスよく運動させることができる浴槽装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、前記第一の浴槽壁面に対向する第二の浴槽壁面を有する浴槽と、前記第二の浴槽壁面に設けられ、前記第二の浴槽壁面に足を向けて前記浴槽に入浴している入浴者の足に噴流を吐水する吐水開口を有する吐水部と、前記噴流の状態を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐水部から吐水される噴流の状態を、前記入浴者の足を屈曲させない第1の噴流状態と、前記第1の噴流状態よりも吐水流量が多く前記入浴者の足を屈曲させる第2の噴流状態と、に交互に設定し、前記吐水部は、前記第1の噴流状態において前記入浴者の足裏が当接し、且つ、前記吐水開口よりも突出する凸部を有することを特徴とする浴槽装置である。
【0010】
この浴槽装置によれば、足裏吸付き防止凸部を設けるため、足裏吸付き防止凸部の長さ程度、入浴者の足裏と吐水部の間に空間を作ることが可能となる。即ち、足裏吸付き防止凸部によって、吐水開口と足裏の間にクリアランスを作ることとなる。そのため、入浴者が足裏で吐水開口を狭めることがなく、足裏で狭めることによって吐水される水流の流速を吐水部から出た後に増加させることもない。よって、入浴者の足裏へ流速の増加に伴う負圧領域が生まれることがない。足裏吸付き防止凸部を備えることで負圧領域発生を防止し、足裏と吐水部の間の距離が近い状態でも、噴流の力を軽減させることなく、入浴者は足で噴流を受け、入浴ウォーキングのどの位相においても円滑に行うことが可能となる。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記凸部は、前記吐水開口の外側に少なくとも一つ設けられたことを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、足裏吸付き防止凸部によって足裏と吐水部間にクリアランスをとることができる。それによって、入浴者Mの足裏がもっとも吐水部に接近した状態においても足裏が吐水部に吸付くことがない。さらに、吐水開口の外部に、足裏吸付き防止凸部を設けることで、足部の屈曲伸展、そして、外転、内転角度をより積極的に使用者に与えることが出来る。これにより、入浴者は、効率よく足を動かす力を噴流より受けて脚部全体で屈伸運動させる。そして、足裏吸付き防止凸部によって、足関節周りの屈伸動作を効果的に行うことで、より高いストレッチ効果も得ることができる。
【0012】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記凸部は、前記吐水開口の内側に少なくとも一つ設けられたことを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、足裏吸付き防止凸部を吐水開口内部に設けることで、足裏吸付き防止凸部によって足裏と吐水部間にクリアランスをとることができる。また、吐水開口より吐水された水流は、足裏吸付き防止凸部に沿って噴流が、作られるため滞留による負圧領域を軽減できる。それによって、入浴者は、吐水部より吐水される噴流を効率よく受け、脚部の屈伸運動を実現することが可能となる。
【0013】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記凸部は、前記吐水開口に対して同心円上に配置されたことを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、足裏吸付き防止凸部を吐水開口内部に設けることで、足裏吸付き防止凸部によって足裏と吐水部間にクリアランスをとることができる。また、吐水開口より吐水された水流は、吐水開口と同心円上に備わった足裏吸付き防止凸部によって滞留による負圧領域を軽減する。そのため、入浴者は、吐水部を足裏で覆う状態においても噴流を効率よく足裏受けることができ、屈伸運動のどの状態でも円滑に行うことができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明は適宣省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る良くそう装置を例示する模式断面図である。
【0015】
図1に表したように、本実施形態にかかる浴槽装置1は、浴室ユニット60内に設けられている。浴室ユニット60は、防水パン61によって床が構成されており、壁パネル62によって壁が構成されており、天井パネル(図示せず)によって天井が構成された箱形の水密ユニットである。浴槽装置1は、防水パン61上に配置されている。
【0016】
浴槽装置1には、浴槽2が設けられている。浴槽2の形状は例えば略直方体形状であり、長手方向の一端部の内側面は、入浴者Mの背中m1が接触する背側面(第1の浴槽壁面)2aとなっており、長手方向の他端部の内側面は、入浴者Mが入浴姿勢をとったときにその足裏m2が対向する足側面(第2の浴槽壁面)2bとなっている。つまり、入浴者Mは、背側面2aに背をもたれることができる。また、背側面2aと足側面2bとは、底面2cを挟んで相互に対向している。
【0017】
浴槽2の足側面2bには、入浴者Mの足に噴流を吐水するノズル(吐水部)3が設けられている。ノズル3は、浴槽2の内部に向けて水流(噴流)を噴射するものであり、前記噴流を吐水するための吐水開口3aを備える。また、この噴流の方向は足側面2bから背側面2aに向かう方向である。さらに、吐水部3には、前記吐水開口よりも突出した凸部である足裏吸付き防止凸部3cが設けられている。
【0018】
浴槽2の長手方向の長さ、すなわち、浴槽2における足側面2bと背側面2aとの間の長さは、標準的な体格の入浴者Mが入浴姿勢をとったとき、すなわち、臀部を浴槽2の底面2cに接触させ、背中m1を浴槽2の背側面2aに接触させ、足裏m2を足側面2bに対向させたときに、足裏m2でノズル3を覆うことができる程度の長さである。
【0019】
また、浴槽装置1には、噴流を生成する駆動部として、ポンプ4が設けられている。このポンプ4は、ノズル3に接続されている。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。ポンプ4の吸入口7は浴槽2の内部に連通されている。これにより、ポンプ4は浴槽2内から水を汲み上げ、噴流を生成して吐出する。
【0020】
浴槽装置1には、ポンプ4の動作を制御する制御部5がさらに設けられている。この制御部5は、ポンプ4に電気的に接続され、ポンプ4の動作を制御することによりノズル3からの噴流の状態を制御できる。そして、制御部5は、ノズル3からの噴流の状態を、入浴者Mの足を屈曲させない噴流状態(第1の噴流状態)と、第1の噴流状態よりも吐水流量が多く入浴者Mの足を屈曲させる噴流状態(第2の噴流状態)と、に設定できる。
すなわち、この浴槽装置は、入浴者に他動的に運動を行わせることができる運動浴槽装置であると言える。
【0021】
第1の噴流状態のときのノズル3からの吐水流量Q1は、例えば約30リットル/分程度である。一方、第2の噴流状態のときのノズル3からの吐水流量Q2は、例えば約130リットル/分程度である。このように、第2の噴流状態のときの吐水流量Q2は、マッサージ用として噴出される噴流の吐水流量よりもかなり大きい。そのため、第2の噴流状態のときのノズル3からの噴流は、入浴者Mが背中m1を背側面2aに接触させ、足裏m2をノズル3に対向させたときに、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節を同時に屈曲させることが可能である。
【0022】
また、本実施形態にかかる浴槽装置1は、例えばリモコンなどの操作部8を備える。この操作部8は、例えば、浴室ユニット60の壁パネル62に取り付けられており、入浴者Mからの操作により制御部5へ制御信号を送信できる。そして、制御部5は、操作部8からの制御信号に基づいてポンプ4の動作を制御できる。つまり、入浴者Mは、操作部8を操作することによりポンプ4の動作を制御し、ノズル3からの噴流の状態を変更できる。
【0023】
なお、前述したように、第1の噴流状態のときの吐水流量Q1は、例えば約30リットル/分程度であり、0(ゼロ)リットル/分でない。そのため、制御部5がノズル3からの噴流を第1の噴流状態から第2の噴流状態に切り替えた場合でも、ポンプ4に対して過負荷がかかるおそれは少ない。さらに、第1の噴流状態から第2の噴流状態に切り替わる時間、すなわち吐水流量Q1から吐水流量Q2の噴流が吐水されるまでの時間を短縮することができる。
【0024】
また、入浴者Mは、浴槽2内に水(湯)Wを入れた状態で浴槽2内に入る。そして、入浴者Mは、入浴姿勢をとる(図1参照)。すなわち、入浴者Mは、臀部を浴槽2の底面2cに接触させ、背中m1を浴槽2の背側面2aに接触させ、足裏m2を足側面2bに対向させる。そして、入浴者Mは、足裏m2でノズル3を覆うように、足を配置し、ノズル3から噴出される噴流を足裏で捉える初期姿勢をとる。このとき、入浴者Mはリラックスした状態にあり、足関節、膝関節及び股関節は脱力されているものとする。この時の姿勢を、本明細書において入浴姿勢と定義する。
【0025】
図2は、入浴者Mがノズル3からの噴流を足裏に受けているときの状態を表す模式図である。 なお、図2(A)(B)は、吸付き防止凸部3cを持たない一般的なノズル3の例である。図2(C)は、ノズル3と入浴者Mの足裏間においてクリアランスを取らせる吸付き防止凸部3cを有するノズルを示している。図2は、各ノズルから噴射される水流が足裏に対してどのように流れ、足裏へ噴射力として伝えるかを模式的に示している。
【0026】
入浴者Mが、上記の入浴状態を保持してから、ポンプ4を作動させる。これにより、ポンプ4は、浴槽2内の水を吸入口7から汲み上げて噴流を生成し、ノズル3に対して供給する。そして、図1に関して前述したように、制御部5は、ノズル3からの噴流の状態を、入浴者Mの足を屈曲させない第1の噴流状態(吐水流量Q1)から、第1の噴流状態よりも吐水流量が多く入浴者Mの足を屈曲させる第2の噴流状態(吐水流量Q2)へと吐水の水量を設定する。第1の吐水状態において、入浴者の足裏は吸付き防止凸部3cに当接する。
【0027】
なお、入浴者Mは、制御部5が、ノズル3からの噴流の状態を、入浴者Mの足を屈曲させない第1の噴流状態(吐水流量Q1)から、第1の噴流状態よりも吐水流量が多く入浴者Mの足を屈曲させる第2の噴流状態(吐水流量Q2)へと吐水の水量を調節することを繰り返すことで、脚部の屈伸運動を実現する。また、脚部を屈曲させる際、入浴者Mの入浴姿勢のバランスを崩され、不安定な姿勢となる。そのため、入浴者Mは、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う。入浴者は、これによっても運動することができる。
【0028】
また、この運動は外部から与えられる他力的な他動運動(不随意運動)であり、入浴者の意志によって行われる自動運動(随意運動)ではないため、入浴者Mの意志力に依存する部分が少なく、長続きしやすい。また、この運動は入浴姿勢のまま行うことができるため、入浴者は、リラックスした状態で運動することができる。この結果、運動を継続しやすい。なお、「他動運動」とは、人が自分の筋力ではなく外力を利用して行う運動をいい、本願明細書においては、上述の如く姿勢を崩された場合の補償動作も含むものとする。
【0029】
さらに、入浴による温熱効果により、運動効果がより一層向上する。また、噴流により入浴者Mの周囲の温度境界層が常に破壊されるため、入浴者Mが温まり易く、運動効果がさらに向上する。このように、前述した運動を浴槽内で行うことにより、浴槽外で行う場合と比較して、より高い運動効果を得ることができる。
【0030】
ここで、制御部5によって、ノズル3からの噴流の状態を入浴者Mの足を屈曲させない第1の噴流状態(吐水流量Q1)から、第1の噴流状態よりも吐水水量が多く入浴者Mの足を屈曲させる第2の噴流状態(吐水流量Q2)へと吐水の水量を変更した時、入浴者Mが足裏で噴流を受けた状態を図2に示す。第1の噴流状態において入浴者Mの足裏は吸付き防止凸部3cに当接しており、第2の噴流状態になると入浴者Mの足が屈曲する、すなわち足裏は吐水開口3aから離れる方向に移動しようとする。その際、図2(A)、(B)に示すように、足裏で吐水開口3aを狭められた状態となり、ポンプ4から送られてきた噴流の速度が、吐水開口3aから吐水された後にv2へ増加し、さらに足裏に沿ってその噴流が排出されるため、入浴者Mの足裏に負圧領域が生まれている状態となる。この負圧領域が足裏に生じると、噴流によって足を屈曲させる力に無駄が生じてしまい、最適な屈伸運動を入浴者へ提供できないとの恐れがある。
【0031】
そこで、本実施形態にかかる浴槽装置1は、図2(C)に例示するノズル3のように、吸付き防止凸部3cを備えている。吸付き防止凸部3cは吐水開口3aよりも突出しているため、入浴者Mの足裏m2と吐水開口3aとの間にクリアランスを取ることができ、足裏m2で吐水開口3aを狭めることはない。また、足裏に沿った噴流の流れを減少させ、足裏に発生する負圧領域を軽減させることが可能となる。即ち、噴流によって足を屈曲させる力を効率良く入浴者Mは受けることが出来、噴流による屈伸運動を円滑に行えることとなる。
【0032】
図3は、図2の(A)、(B)、(C)に示すノズル3を用いたとき、第二の浴槽壁面2bとノズル3から離れた距離に応じて足部m2が受ける力(ニュートン)をそれぞれ例示するグラフ図である。図2(A)、(B)で示すノズルを使用した場合、ノズル3との距離が50mm以上離れると足部m2で受ける力は10〜20ニュートン程度となる。しかし、ノズル3との距離が50mm以下になると足部m2で受ける力が減少することを示している。この力の減少は、上述したように足裏に発生する負圧領域によって、力が減少していることを実験により捉えた結果である。
【0033】
これによれば、図2(C)のノズル3に図示されるような吸付き防止凸部3cを備えた浴槽装置では、吸付き防止凸部3cによって入浴者Mの足裏とノズル3の間にクリアランスをとることができる。これにより、足裏に沿って流れる噴流の流速が軽減され、足裏に発生する負圧領域が抑えられる。また、ノズル3から吐水される噴流は、吸付き防止凸部3cによって整流されるため、噴流が足部を押す力(第一の浴槽壁面に向かう力)が高まる。この二つの働きを持つことで、ノズル3と距離が近い場合においても足部m2を押し出す力が減少しないことを図3より示している。
【0034】
次に、本実施形態にかかる浴槽装置の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。まず、吸付き防止凸部3cを備えた吐水部3の具体例について、図面を参照しつつ説明する。また、図4から図9は、本具体例にかかる浴槽装置の動作を表す平面模式図である。
【0035】
本実施形態にかかる第一の具体例に関して、吐水開口3aの上部に吸付き防止凸部3cを設けた浴槽装置について図4を用いて説明する。吸付き防止凸部3cは、吐水部3において一部浴槽壁面より突出している。そして、本具体例における吸付き防止凸部は、図例えば、図4(A)から図4(D)に示すように、吐水開口3aの上部に吐水部3の形状に沿った半月状に吸付き防止凸部3cが備わっている。
【0036】
図4に図示される、吐水開口3より突出する吸付き防止突出部3cの突出長さLは、例えば10mm以上が良い。より足裏に発生する負圧領域を抑制するには、突出長さLは、20mmとすることが良く、さらに好ましくは、30mmが良い。
【0037】
入浴者は、図4(C)、(D)に例示するように、足裏前部となる足の指から母指球の範囲で、吸付き防止凸部3cに接地することとなる。即ち、入浴者Mが、足裏m2で吸付き防止凸部3cを接地すると、足裏踵は、吐水部3、吐水開口3aに対して一定のクリアランスを有することが出来る。即ち、噴流が流れる流路を確保する効果を備える。そのため、吐水開口3aを足裏で狭めることもなく、吐水される噴流の流速を増加させることで生じる負圧領域も軽減される。即ち、入浴者Mの足裏が吐水部3に近接する状態においても、足を屈曲する第二の噴流状態になれば、入浴者Mは、効率良く足を屈曲する力を噴流から受け取ることが可能となる。故に、本装置を使用することで最適な屈伸運動を入浴者へ提供することが可能となる。
【0038】
さらに、図4(A)から(D)に示されるように、吸付き防止凸部3cを吐水開口3aの上部に設けることで、吸付き防止凸部3cを支持点とすることで、足関節周りの関節可動域を確保するとともに、屈曲方向におけるストレッチ効果をより効果的に入浴者へ与えることが可能となる。
【0039】
本実施形態にかかる第二の具体例に関して、吐水開口3aの周囲に複数の吸付き防止凸部3cを設けた浴槽装置について図5を用いて説明する。本具体例における吸付き防止凸部は、図5(A)から図5(D)に例示するように、吐水開口3aの周囲に複数吸付き防止凸部3cが備わっている。複数の吸付き防止凸部3cに囲まれた領域を、噴流逃がし部3bと定義する。吸付き防止凸部3cと噴流逃がし部3bとの高低差が、足裏と吐水開口3a間におけるクリアランスを作る。
【0040】
吸付き防止凸部3cと噴流逃がし部3bによって、足裏と吐水開口間にクリアランスを作り出す図5(C)、(D)。即ち、噴流が流れる流路を確保する効果を備える。そのため、吐水開口3aを足裏で狭めることもなく、吐水される噴流の流速を増加させることで生じる負圧領域も軽減される。よって、入浴者Mの足裏が吐水部3に近接する状態においても、足を屈曲する第二の噴流状態になれば、入浴者Mは、効率良く足を屈曲する力を噴流から受け取ることが可能となる。故に、本装置を使用することで最適な屈伸運動を入浴者へ提供することが可能となる。
【0041】
さらには、複数の吸付き防止凸部3cを設けることで、足裏を複数の吸付き防止凸部3cで支持することが出来るため、入浴者Mは安定した脚部保持の状態で噴流を受けて、円滑な屈伸運動を得ることが可能となる。
【0042】
また、吐水開口3aから吐水される噴流は円柱状で吐水される。そのため複数の吸付き防止凸部3cを設ける際、同心円状に配置することによって、吐水開口3aから噴出される噴流を偏り無く排出することが可能となり、足裏に沿って流れる噴流の速度を抑えることができる。
【0043】
本実施形態にかかる第三の具体例に関して、複数の吸付き防止凸部3cを設け、さらに噴流逃げ部3bを広くした浴槽装置ついて図6を用いて説明する。吸付き防止凸部3cを設けることを図4、図5で例示した様に、吐水開口3aと入浴者Mの足裏間にクリアランスを作り出すことで、噴流によって生じる足裏への負圧領域を軽減し、最適な屈伸運動が行える。
【0044】
さらに、吸付き防止凸部3cに加えて、吐水開口3aより吐水される噴流を逃がすための領域、噴流逃がし部3bを広くする。それによって、足裏へ生じる負圧領域をさらに軽減させることが可能となる。即ち、より入浴者Mへ噴流による快適な屈伸運動を提供することが可能となる。
【0045】
本実施形態にかかる第四の具体例に関して、吸付き防止凸部3cを吐水開口3aの内部に設けた浴槽装置ついて図7を用いて説明する。吸付き防止凸部3cを吐水部3の内部に設けることで図4、図5、図6で例示した様に、吐水開口3aと入浴者Mの足裏間にクリアランスを作り出すことで、噴流によって生じる足裏への負圧領域を軽減し、最適な屈伸運動が行える。
【0046】
吸付き防止凸部3cを吐水部3の内部に設けることで、吐水開口3aと足裏間のクリアランスを取るとともに、噴流の逃げ水が、吸付き防止凸部3cによって制限されない。すなわち、吐水開口3aより吐水される噴流を逃がすための領域を広くすることが可能となる。それによって、足裏へ生じる負圧領域をさらに軽減させることが可能となり、より入浴者Mへ噴流による快適な屈伸運動を提供することが出来る。
【0047】
図8(a)で示すように、吸付き防止凸部3cを持たないと、吐水開口3aから噴流が、滞留することで、負圧領域を生むこととなる。結果、足を屈曲させる第二の噴流状態に吐水の水量が増量されても足を屈曲させる噴流の力に損失が生じ、最適な屈伸運動を入浴者へ提供できない恐れがある。しかし、吸付き防止凸部3cを吐水部3の内部に設けることで、図8(b)に示すように、吐水開口3aより吐水された後の噴流が、吸付き防止凸部3cに沿って流れていく。吐水開口3aより、出力された噴流において、滞留が抑制されれば、噴流から足を屈曲させる力を効率よく入浴者Mの足裏へ伝えることが可能となる。すなわち、最適な屈伸運動が可能となる。なお、吐水開口3aの内部に吸付き防止凸部3cを設ける場合、吸付き防止凸部3cは吐水開口3aから離れる方向に向けて窄まる形状であると、より噴流の損失が低減され好ましい。
【0048】
本実施形態にかかる第五の具体例に関して、吐水開口3aより、突出した位置に、円柱状の吸付き防止凸部3cを設けた浴槽装置について、図9を用いて説明する。図9(A)、(B)に図示されたように、吐水開口3aより突出した位置に円柱状の吸付き防止凸部3cを設ける。そして、この円柱状の吸付き防止凸部3c側面には、噴流逃がし部3bを備えている。
【0049】
図9(C)、(D)より、吸付き防止凸部3cによる効果を説明する。吐水開口3aより突出した円柱状の吸付き防止凸部3cは、入浴者Mの足裏が吸付き防止凸部3cに接地する際、吐水開口3aに対して一定のクリアランスを有することが出来る。即ち、噴流が流れる流路を確保する効果を備える。そのため、吐水開口3aを足裏で狭めることもなく、吐水される噴流の流速を増加させることで生じる負圧領域も軽減される。即ち、入浴者Mの足裏が吐水部3に近接する状態においても、足を屈曲する第二の噴流状態になれば、入浴者Mは、効率良く足を屈曲する力を噴流から受け取ることが可能となる。故に、本装置を使用することで最適な屈伸運動を入浴者へ提供することが可能となる。
【0050】
さらに、円柱状の吸付き防止凸部3cは、吐水開口3aより吐水された噴流を、整流するガイド部としての効果も有する。即ち、吐水開口3aより吐水された噴流が拡散することなく、入浴者Mの足裏に吐水することが可能となり、拡散によって噴流による足を屈曲させる力の減少が起きない。そのため、入浴者Mへ屈伸運動を行うための噴流からの力を効率よく伝えることができ、最適な屈伸運動を入浴者Mへ提供することが可能となる。
【0051】
さらに、円柱状の吸付き防止凸部3cは、入浴者Mの足裏が接地すると、図9(D)に示すように、吐水開口3aより吐水された噴流を、吸付き防止凸部3cの側面に配置された、噴流逃がし部3bより逃がす。そのため、噴流逃がし部3bより放出される噴流は、足裏から吸付き防止凸部3cの分だけ離れて流れることとなる。そのため、足裏に沿った噴流が流れないことから、足裏に負圧領域が発生しないこととなる。そのため、入浴者Mへ屈伸運動を行うための噴流からの力をより効率よく伝えることができ、最適な屈伸運動を入浴者Mへ提供することが可能となる。
【0052】
また、噴流逃がし部3bは、図10(A)、(B)、(C)に例示されたように、図10(A)スクエア形状、(B)円形状、(C)格子状などに形状を変えても同じ効果を得ることが出来る。なお、噴流逃がし部3bの形状は、足裏に沿った噴流を流して入浴者Mの足裏を吸い付けない限りにおいて、図10に例示した内容に制限されるものではない。
【0053】
図11は、上述してきた吐水状態によって、入浴者Mがとりうる動作・状態を示す。図11(a)に図示するように、入浴者Mの脚部は、吐水しない状態では、脚部を伸展する状態、すなわち吸付き防止凸部3cに足裏を当接することとなる。そして、図11(b)のように吐水部3が噴流を吐水する状態になったとき、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節は屈曲し、足部m2が、吸付き防止凸部3cから離間し、第一の浴槽壁面2aに向かって移動する。
【0054】
さらに、屈曲する状態を作る噴流は、足部を包むように流れ場を生成するため、噴流から足部が外れないように力が働く。これと同じ現象は、噴水の上にピンポン玉を載せた時にピンポン玉が噴流の中心で留まる現象である。これによって効率よく噴流によって入浴者は脚部の屈伸運動ができる。
【0055】
従って、吐水部3が交互に噴流を吐水することにより、入浴者の足部が浴槽2の長手方向に沿って交互に往復し、結果、入浴者の脚部を連続的に屈伸運動させることが可能となる。また、噴流によって脚部が屈曲伸展させられることから、入浴者は運動をしようという強い意志を必要としないため、継続的な運動を行うことができる。また、吐水部3は第二の浴槽壁面2bに設けられており、噴流を吐水していない場合は通常の浴槽同様に仕様できることから、別途運動器具を取り外しする手間も必要なく、邪魔にもならない。すなわち、本発明の一実施形態に係る浴槽装置は、入浴者を、座らせた状態にありながら、他動的に歩行を模した水中ウォーキングの運動を行わせることができる運動浴槽装置であると言える。
【0056】
脚部が絶えず動き続けている状態は、脚部の運動のみならず全身運動への波及効果をもたらすことが、筋活動を調べた実験より確認されている。図12は、吐水状態における入浴者の筋群の筋活動を示した図である。図12の縦軸はそれぞれの筋群が活動している状態を、横軸は時間を表す。図12に示すように、腓腹筋や前脛骨筋、ハムストリングス(大腿4頭筋)のような下肢の筋群の運動だけではなく、脊柱起立筋のような背部の筋や、前腕筋群(腕橈骨筋)のような腕部の筋も活動していることがわかる。このように、本発明の一実施形態にかかる運動浴槽装置は、脚部だけでなく全身の筋群を活動させており、脚部だけでなく全身の運動や筋力トレーニングにも効果がある。また、入浴者へウォーキング動作を行っているような運動感を誘発させることも主観評価より分かっている。
【0057】
図13の(a)と(b)より、具体的に、他動的な屈伸運動によって起こる筋の活動を説明する。図12の(a)は、噴流によってもたらされる他動運動によって活動する筋群を例示した図であり、図13(b)で示されている筋群の位置を示す。図13(b)は、縦軸に筋の活動量を示し、横軸に時間をとり、吐水状態に応じて脚部の異なる筋が活動していることを示す。なお、M4はハムストリングス(大腿二頭筋他)を、M5は前脛骨筋を示す。吐水のS1時間に伴う脚部の屈曲より、前脛骨筋M5が積極的に活動し始める。これは、足部が第二の浴槽壁面より離れ、第一の浴槽壁面へ移動している状態で筋の活動が起こっている事を意味する。
【0058】
そして、次にS2時間で吐水しない状態となり、入浴者の足部が第二の浴槽壁面2bへ移動し、吐水部3と第二の浴槽壁面2bに当接する。入浴者の足部が第二の浴槽壁面2bに接すると、ハムストリングスM4が活動することを図13の(b)より示している。このように、噴流の増減に伴って起こる脚部の屈伸運動は、異なる筋群を働かせることで運動効果を高める。
【0059】
図13に図示されていた前脛骨筋M5は、ヒトの身体セグメントにおける下腿部に備わった筋である。前脛骨筋M5の働きは、歩行時、地面と足部とのクリアランスをとるために働く筋肉として知られている。よって、前脛骨筋M5を活動させる運動とは、転倒予防に貢献する運動を意味する。
【0060】
同じく、図13に図示されたハムストリングスM4は、ヒトの身体セグメントにおける大腿部に備わった筋群である。ハムストリングスM4は、大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋、そして大内転筋によってなる筋群である。大腿二頭筋の働きは、主として歩行時における蹴りだす力、推進力を生成する筋として知られている。よって、ハムストリングスM4を刺激する運動とは、歩行速度の維持と歩行機能の向上に貢献できる運動を意味する。
【0061】
吐水部3から吐水する足を屈曲させる水量は、入浴者Mが背中m1を第一の浴槽壁面2bに当接させ、足裏m2を吐水部3に対向させたときに、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節を同時に屈曲させることが可能な量であり、例えば、80〜300リットル/分である。尚、噴流の大きさが80リットル/分未満であると、入浴者の足裏m2が吐水部3から離れないことがあり、300リットル/分を超えると、浴槽2から水が溢れ出すことがある。
【0062】
吐水される水量が110リットル/分を超えると吐水される噴流の押圧によって脚部移動距離が140mm以上になり、この条件を境に使用者が、噴流による屈伸運動で運動感を感じることが確認されている。尚、モニター人数35名において、110リットル/分を超えると吐水で足部が140mm以上移動し、運動感を感じることを確認している。
【0063】
さらに屈伸運動において効果的で高い運動効果を得るには、150リットル/分程度の噴流で運動を行うことが良く。さら好ましくは、180リットル/分程度の噴流による運動が効果的である。なお、この噴流の大きさは、一般家庭用浴槽を対象とした循環式浴槽において、マッサージ用に噴出される噴流の大きさよりもかなり大きい。一般的なマッサージ用ブローにおいて、一つの吐水口から吐水される水量は、20リットル/分程度である。またマッサージブローの強い強度においても、水量は多くて40リットル/分程度である。
【0064】
上述した通り、噴流の流量を増やすことで足裏を押圧する力を増加させるとともに屈伸運動の可動範囲を広くする。この噴流の増加に伴って、足裏に備わる感覚器と脚部に備わる腱器官を、より効果的に刺激する事で歩行に働く機能を効果的促進させることが可能となる。
【0065】
また、利用する浴槽の水(湯)の水温は常温でも使用できるが、水温を、36〜41℃帯域で使用するのが好ましい。例えば、温度が体温に近く、温熱の負荷が低い場合の36〜38℃では、吐水の水量を多くし屈伸運動の回動量を増やす、もしくは、吐水の周期を早くすることで屈伸運動の回数を増やすことにより運動強度を高め、効果的な運動を入浴者へ提供することが可能となる。
【0066】
一方、比較的短い時間で十分な運動を求める場合は、湯温度を高めに設定し(例えば39〜41℃)、温熱と運動の効果の相乗効果によって、湯の温度を低く設定した時に比べ、短い時間でエネルギー消費を起こし、効果的な運動を短い時間で行うことができる。
【0067】
温熱の効果と運動効果について、図14において説明する。
図14は、縦軸に脂肪の燃焼効率を示す呼吸商を示し、横軸に経過の時間を図示し、速歩と噴流による他動運動を行った際の呼吸商を比較した値を示している。条件は、陸上での時速4.3キロ程のウォーキングと、湯温39度で吐水量が160リットル/分程度の噴流を選択した本発明の一実施形態に係る運動浴槽装置を用いた入浴ウォーキングの場合を、呼吸商より比較した。結果、高い脂肪燃焼効果が得られる領域に、本発明の一実施形態に係る運動浴槽装置を用いた入浴ウォーキングが、陸上のウォーキングより早い時間帯で突入したことを示している。上記結果は、本発明の一実施形態に係る運動浴槽装置が、温熱と運動の相乗効果によって、短い時間で非常に高い運動効果を生成することを示すものである。
【0068】
本発明の一実施形態を用いた運動を、35名が体験した。その結果、入浴中の水中(入浴)ウォーキングが入浴姿勢から、噴流によって無理なく行われることがわかった。そして、継続して水中ウォーキングを行うと、運動感、筋の使用感を感じるという知見も得られた。また風呂から出たあと、足が温かい、ジョギングよりも運動感を感じる、といった運動の効果を体験者が体感していることを確認している。さらに、5分を経たずに、発汗作用が促進されることなども体感から知見を得ており、ダイエット効果にも適しておりメタボリック対策になるなどの感想も得られた。
【0069】
また、噴流を足裏で受けることによって、足裏に備わる感覚器を刺激することができる。足裏に備わる感覚器(圧受容器)は、年齢の増加にともなって感度が低下する。そのため高齢者は足裏で身体の重心位置を検地することが出来ず転等する可能性が高くなるとことは一般的に知られている。しかし、感覚器の感度などは、絶えず感覚器を刺激することによって、感覚器の感度、そして、感覚器より検出した情報を伝える神経系の処理機能を維持することが可能となることも最近の研究にて報告されている。
【0070】
本発明の一実施形態における浴槽装置は、脚部が屈曲するほどの強い噴流を足裏に当てている。そのため、第一に脚部を屈伸することで、腱や筋に備わる腱紡錘、筋紡錘といった固有感覚器を刺激する。そして第二に、噴流を足裏で直接受けることで足裏に備わる感覚器(圧受容器)が刺激される。それにより、感覚器と感覚器より検出した情報を伝える神経系の経路を促通させることが可能となり、バランス能力などを向上させることが出来る
【0071】
更に本実施形態によれば、入浴者は、両足の吐水部3L及び3Rから吐水される水量に応じて屈伸運動より得る運動感が異なる。図15に示す実線Lは、吐水部3からの噴流によって入浴者が屈伸運動を起こった時の脚部が噴流によって第二の浴槽壁面から離れて移動する距離と吐水の流量をとの関係を表している。
【0072】
実線Lに示すように、足部の移動距離と吐水の流量には相関関係があり、吐水量が多くなると脚部移動量が増える。足部の異動距離が第二の浴槽壁面より離れるのは80リットル/分程度からであり、80リットル/分程度以上の吐水量になると、足部の移動が開始され屈伸運動を行える。より効果的な運動を入浴者が行うには、吐水量を110リットル/分とするとよい。
【0073】
本実施例では、足部の移動距離は140mm程度となっていた。さらにより効果的な運動を得ようとすると、入浴者は吐水量、180リットル/分を選択し、さらに高い効果的な運動を得ようとすると、200リットル/分となるように水量を調節してもよい。その際の脚部の移動距離は250mm〜300mm程度となっていることが実験より分かっている。
【0074】
また、足部の移動距離が、140mm程度となる吐水量、例えば110リットル/分の吐水での入浴ウォーキングにおいて、モニター実施者8人中7名が入浴ウォーキング実施終了後に、脚部を中心に運動感を感じるとコメントしている。ここでの運動感とは、脚部において軽い疲労感や、使用していた筋肉の一部が温かく感じることなどが主な意見として抽出されている。
【0075】
本具体例においては、浴槽2内に水(湯)Wを溜めた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。そして、制御部5の操作ボタンを操作することにより、浴槽装置1による運動の実行時間及び屈伸運動の周期を任意に設定する。なお、制御部5の中に予め複数の種類の運動モードが設定されており、入浴者が好みの運動モードを選択するようにしてもよい。
【0076】
例えば、入浴者が、運動負荷の高いモードを選択すると、タイマーが比較的短い周期で吐水する状態、吐水しない状態へと水量を切替える制御を、制御部5から吐水駆動部4に対して出力する。又は、運動時間及び運動周期はタイマーが自動的に設定してもよい。例えば、湯の設定温度が39℃であるとき、タイマーは、1セットの運動時間を10分間に設定する。
このように、本具体例によれば、運動の負荷を入浴者の好みに応じて任意に設定することができる。本具体例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の実施形態と同様である。
【0077】
吐水駆動部4は、羽根車をモータによって回転させることで湯水を吸入し、吐水部3より吐水する噴流を作り出す回転式のポンプなどが用いられる。また、吐水駆動部4の制御には、シーケンサー、タイマー、AD/DA変換機と計算機などを用いてポンプの駆動状態を制御する。尚、回転式ポンプを想定して説明したが、本実施例は上記内容に限られるものではない。例えば、プランジャー、もしくはピストンなど容積型の電磁式往復ポンプを用いて吐水部3から噴流を作り出しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的断面図と平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的断面図と平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的断面図と平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的断面図と平面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的断面図と平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的断面図と平面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る浴槽装置の吐水部より吐水される流れを例示する模式的平面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的断面図と平面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る浴槽装置の吐水部の具体的変形例を例示する模式図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る浴槽装置の、入浴者の状態を例示する図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る浴槽装置の、入浴者の筋活動を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る浴槽装置の、入浴者の筋の場所とその活動を例示する図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る浴槽装置の、使用時の呼吸商を示した図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る浴槽装置の、流量と脚部移動量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 浴槽装置、2 浴槽、2a 足側面、2b 背側面、2c底面、3 ノズル、3a 吐水開口、3b 噴流逃げ部、3c 吸付き防止凸部、4 ポンプ、5 制御部、 7 吸入口、 8操作部、60 浴室ユニット、61 防水パン、 62 壁パネル、 M 入浴者、m1 背中、m2 足裏、m7 足部、 W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、前記第一の浴槽壁面に対向する第二の浴槽壁面を有する浴槽と、
前記第二の浴槽壁面に設けられ、前記第二の浴槽壁面に足を向けて前記浴槽に入浴している入浴者の足に噴流を吐水する吐水開口を有する吐水部と、
前記噴流の状態を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記吐水部から吐水される噴流の状態を、前記入浴者の足を屈曲させない第1の噴流状態と、前記第1の噴流状態よりも吐水流量が多く前記入浴者の足を屈曲させる第2の噴流状態と、に交互に設定し、
前記吐水部は、
前記第1の噴流状態において前記入浴者の足裏が当接し、
且つ、前記吐水開口よりも突出する凸部を有する
ことを特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記吐水開口の外側に少なくとも一つ設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記吐水開口の内側に少なくとも一つ設けられた
ことを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記吐水開口に対して同心円上に配置された
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の浴槽装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−148761(P2010−148761A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331729(P2008−331729)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】