浴槽装置
【課題】入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供する。
【解決手段】浴槽2と、前記浴槽に設けられ、背もたれ可能な第一の浴槽壁面2aと、前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面2bと、前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する第一の吐水部及び第二の吐水部3と、前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水するための吐水駆動部4と、前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水する噴流の状態を制御する制御部5と、を備え、前記制御部は、前記噴流の噴流量を所定値以上に増加させる過程で足を屈曲させることを可能とし、かつ前記噴流を減少させる過程で屈曲した足を伸展させることを可能とし、前記第一の吐水部からの噴流を減少させる過程において、所定噴流値以上の状態で前記第二の吐水部からの噴流を増加させるように制御することを特徴とする浴槽装置1。
【解決手段】浴槽2と、前記浴槽に設けられ、背もたれ可能な第一の浴槽壁面2aと、前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面2bと、前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する第一の吐水部及び第二の吐水部3と、前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水するための吐水駆動部4と、前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水する噴流の状態を制御する制御部5と、を備え、前記制御部は、前記噴流の噴流量を所定値以上に増加させる過程で足を屈曲させることを可能とし、かつ前記噴流を減少させる過程で屈曲した足を伸展させることを可能とし、前記第一の吐水部からの噴流を減少させる過程において、所定噴流値以上の状態で前記第二の吐水部からの噴流を増加させるように制御することを特徴とする浴槽装置1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽装置に関し、特に、入浴者に運動させる浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康やリラクゼーションへの関心が高まり求められている。そして、一般家庭浴槽において、水流浴機能を備える商品が広く展開されている。水流浴商品の主目的は、水流による入浴者へのマッサージ、疲労回復、そして、癒しとなっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一様流ではなく流水循環ポンプの回転数を変速可能にして、流水の吐出量及び吐出圧を制御することが記載されている。
【0004】
また、部分的なマッサージとして、特許文献2に、浴槽内部に足置き部が設けられ、この足置き部に噴流を噴出する吐出口が設けられた循環式浴槽が開示されている。
【0005】
一方、浴槽内での運動を行う提案もある。特許文献3には、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術が開示されている。踏み台にはバネによって踏み込み負荷が与えられており、入浴者は座位姿勢のまま片足で踏み台を踏み込むことにより、運動することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平3−16568号公報
【特許文献2】特開2005−287541号公報
【特許文献3】特開2003−236014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、一般家庭浴槽での水流浴では水流による入浴者へのマッサージが主流となっており、マッサージ効果のために流量を制御することを目的としている。そのため、筋力強化を目的としているものが少ない。また、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術は普段から運動習慣の無い人が運動を行うには、自ら運動しようという相当な意志の力を要する。特に、入浴時はリラックスした精神状態になっているため、意志の力を発揮することは困難である。このため、浴槽内に運動器具を設置しても、運動が長続きしないことが予想される。また、運動器具の取付・取り外しが面倒という問題もある。
本発明の目的は、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供することで
ある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一様態によれば、浴槽と、前記浴槽に設けられ、背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面と、前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する第一の吐水部及び第二の吐水部と、前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水するための吐水駆動部と、前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水する噴流の状態を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記噴流の噴流量を所定値以上に増加させる過程で足を屈曲させることを可能とし、かつ前記噴流を減少させる過程で屈曲した足を伸展させることを可能とし、前記第一の吐水部からの噴流を減少させる過程において、所定噴流値以上の状態で前記第二の吐水部からの噴流を増加させるように制御することを特徴とする浴槽装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【0011】
浴槽装置1には、浴槽2が設けられている。浴槽2の形状は例えば略直方体形状となる。そして、長手方向の一端部の内側面は、入浴者Mが入浴姿勢を保持し、入浴者の背面m1で背もたれ可能な第一の浴槽壁面2aとなっている。また、浴槽長手方向において、第一の浴槽壁面2aと対向して第二の浴槽壁面2bが設けられており、入浴者Mの足裏m2が接触する壁面となっている。第一の浴槽壁面2aと第二の浴槽壁面2bとは、底面2cと接している。
【0012】
浴槽2の長手方向の長さ、すなわち、浴槽2における第二の浴槽壁面2bと第一の浴槽壁面2aとの間の長さは、標準的な体格の入浴者Mが入浴姿勢をとった時、背中m1を浴槽2の第一の浴槽壁面2aに充てて、足裏m2を第二の浴槽壁面2bに対向させた時に、足裏m2で吐水部3を覆うことができる程度の長さである。また、臀部においては、浴槽2の底面2cに接触させるようにする。
【0013】
浴槽2の第二の浴槽壁面2bには、左脚用の吐水部3L及び右脚用の吐水部3R(以下総称して「吐水部3」とも言う)が設けられている。この吐水部3は、入浴者Mの足裏を中心とした両脚部へ噴流を交互に吐水することを可能にする吐水駆動部4と接続されている。この噴流の方向は、第二の浴槽壁面2bから第一の浴槽壁面2aに向かう方向である。これらの一対の吐水部3は、水平方向に配列されており、例えば、第二の浴槽壁面において上下方向に延びる中心線に関して対象となる位置に配置されている。
【0014】
尚、図1においては、図示の便宜上、吐水部3L及び3Rはを相互にずらして描いているが、実際には左足裏に配置された第一の吐水部3L及び右足裏側に配置された第二の吐水部3Rは同じ高さに配置されている。後述するほかの断面図におていも同様である。
【0015】
また、吐水駆動部4の吸入口4sは浴槽2の内部に連通されている。これにより、吐水駆動部4は浴槽2内から水を汲み上げ、汲み上げられた水は、吐水部3へ送られ噴流を吐水する。
【0016】
また、吐水駆動部4は、第一の吐水部3Lと第二の吐水部3Rからの吐水する水量を調節する。例えば、第一の吐水部3Lで “噴流を減少させる過程”の場合、第二の吐水部3Rにおいては、所定噴流値以上の状態で、“噴流を増加させる過程”となるように調節する。吐水駆動部4によって生成される水量は、吐水駆動部4に接続す制御部5の信号によって制御される。
【0017】
次に、本実施形態の動作について図1から図4を用いて説明する。
【0018】
図1に示すように、浴槽2内に水(湯)Wを入れた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。すなわち、入浴者Mは、臀部を浴槽2の底面2cに接触させ、背中m1を浴槽2の第一の浴槽壁面2aに当接させ、足裏m2を第二の浴槽壁面2bに対向させる。そして、入浴者Mは、両足裏m2で吐水部3L及び3Rを覆うように、足裏m2を配置し、吐水部3から吐水される水流を足裏m2で捉える初期姿勢をとる。
【0019】
このとき、入浴者Mはリラックスした状態にあるが、浮力の働きによって身体が湯水内に水没しないよう、脚部(足裏)、臀部、体幹部(背中)で浮力に抗じるため、各支持点周りの筋群は微小な筋の活動を行うこととなる。しかしながら、これら筋群の活動は微小であり、無意識に行われているため入浴者は、上述した入浴の姿勢を普段入浴する時と同様に楽に保持することが可能となる。さらに、入浴者Mは、入浴者自身に加わる浮力の働きが入浴姿勢のバランスを乱し、それに対して、入浴者は、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う。その際に身体の広い範囲で筋の活動が起こる。
【0020】
図2は、本実施形態に係る浴槽装置1の動作を例示する模式的平面図であり、左足裏に配置された第一の吐水部3L及び右足裏側に配置された第二の吐水部3Rから噴流が交互に噴出される場合を示す。
まず、吐水駆動部4及び制御部5を作動させる。これにより、吐水駆動部4が浴槽2内の水を吸入口4sから汲み上げて水流を生成する。そして、制御部5からの指令を受けて、吐水駆動部4が第一の吐水部3L及び第二の吐水部3Rより交互に噴出される水(噴流)量を調節する。
【0021】
吐水部3L及び3Rからの左右交互吐水の動作状態について説明する。t1では、第一の吐水部3Lより所定値Qa以上の水量で吐水する。そして、t2では、第一の吐水部3Lから吐水される水量は、所定値Qaから脚部が屈曲しない状態にまで水量を減少させる吐水状態Qdownとなる。次に、t3においては、第一の吐水部3Lから吐水される水量は脚部が屈曲しない状態となる、そして、t4では、第一の吐水部3Lから吐水される水量は、脚部が屈曲しない状態から水量が所定値Qa以上で吐水するように流量を増加させる状態Qupとなる。
【0022】
一方の第二の吐水部3Rでは、t1において、第二の吐水部3Rより吐水される水量は、脚部が屈曲しない状態である。次に、t2において、吐水される水量は、脚部が屈曲しない状態から所定値Qa以上となるまで水量を増加させる状態Qupとなる。そして、t3において、第二の吐水部3Rより吐水の水量は所定値Qa以上で吐水する状態となる。そして、t4において、第二の吐水部3Rから吐水の水量は所定値Qaから脚部が屈曲しない状態へ吐水の水量を減少する状態Qdownとなる。
【0023】
ここで、所定値Qaは、足が伸展した状態から屈曲した状態へ移行する、すなわち、足裏が吐水部から離れる水(噴流)量の値である。
【0024】
次に、上記吐水状態によって導かれる脚部の状態を説明する。
t1において第一の吐水部3Lから所定値Qa以上で吐水されているとき、入浴者Mの左脚の足関節、膝関節及び股関節は屈曲した状態であり、左足部が、第二の浴槽壁面2bから離れることとなる。次に、t2において、第一の吐水部3Lから吐水される水量は、減少する状態Qdownであり、入浴者Mの左脚の足関節、膝関節及び股関節は屈曲した状態から徐々に伸展する状態へと移行される。
【0025】
次に、t3において第一の吐水部3Lから吐水される水量は、脚部が屈曲しない状態となる。このとき、入浴者Mの左脚の足関節、膝関節及び股関節は伸展した状態となる。そして、t4において、第一の吐水部3Lは、水量を増加させる状態Qupで吐水し、所定値Qaに達すると、入浴者Mの左脚の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態から屈曲する状態へと移行される。
【0026】
図3の(a)から(e)は、横軸に時間をとって本実施形態に係る浴槽装置1からの吐水の水量を例示するグラフ図であり、(a)の縦軸は第一の吐水部3Lから吐水される水量を表し、(b)の縦軸は第二の吐水部3Rから吐水される水量を表す。(c)の縦軸は左足の屈曲伸展の状態を表し、(d)の縦軸は、右足の屈曲伸展の状態を表す。そして、(e)の縦軸は両吐水部から吐水される合計吐水量の理論値を表す。
【0027】
図3の(a)と(b)、(e)を用いて、吐水状態の時間変化について説明する。
ある時刻t1において、第一の吐水部3Lから、所定値Qa以上で吐水されている状態であり、第二の吐水部3Rから吐水される水量は、脚部を屈曲しない状態である。次に、t2時刻では、第一の吐水部3Lから、噴流を減少させていく過程において、第一の吐水部3Lからの吐水の水量が所定噴流値Qbになるまでに、第二の吐水部3Rから右足裏が吐水部から離れるQa以上になるように吐水される水量を増加させる。
【0028】
次に、t3時刻において、第一の吐水部3Lから吐水する水量は、脚部を屈曲しない状態となり、第二の吐水部3Rからの吐水される水量は、所定値Qa以上で吐水する状態となる。そして、t4時刻では、第二の吐水部3Rから、噴流を所定値Qaから減少させていく過程において、第二の吐水部3Rからの吐水の水量が所定噴流値Qbになるまでに、第一の吐水部3Lから、足裏が吐水部から離れる所定値Qa水量以上になるよう吐水される水量を増加させる。
【0029】
ここで、所定噴流値Qbとは、一方の足が吐水部から十分離れた屈曲状態から伸展状態へ移行し足裏が吐水部に当接する直前の間で、他方の足が吐水部から離れる所定値Qa噴流を吐水する、すなわち、両方の足が吐水部から離れている状態(以下、オーバーラップとも言う)を作り出す水(噴流)量の値である。
本実施例では、所定値Qaは、例えば、110リットル/分以上が良い。より交互脚部を連動して動かすための吐水には、所定値Qaは、150リットル/分とすることが良く、さらに好ましくは、180リットル/分が良い。
また、所定噴流値Qbは、50リットル/分とし、好ましくは、80リットル/分、さらに好ましくは、90リットル/分が良い。
【0030】
時刻t2の区間、時刻t4区間に示される通り、第一の吐水部3Lと第二の吐水部3Rから吐水される噴流の増減は、タイミングに差があるように制御するとよい。入浴者Mが足裏にて受ける噴流は、吐水駆動部4を止めても慣性の力によって、足を押圧する力が直ぐに無くならない。それゆえ、左右足を同時かつ連続して交互に振り出すには、遅れ時間を考慮して吐水する必要がある。よって、時刻t2及びt4での吐水の方法は、左右足が同時かつ連続して交互に振り出すことを実現させる手段となる。これにより使用者へ運動感を与えるとともに、座った姿勢でありながらより歩行動作に近い水中ウォーキング動作を使用者へ提供することが可能となる。
【0031】
図3(e)に示す合計の吐水量は、時刻t2の区間、時間t4区間にて増減することが示されている。この合計の吐水量の増減はポンプの回転数を制御する等で可能となる。
【0032】
次に、吐水される流量変化によって起こる入浴者Mの脚部屈伸運動を、図3の(c)と(d)、図4より説明する。
ある時刻t1では、第一の吐水部3Lが、所定値Qa以上で吐水されており、入浴者は左足裏で噴流からの押圧する力を受け、左脚部の足関節、膝関節及び股関節が屈曲した状態となる。一方、第二の吐水部3Rからは吐水されておらず、右足裏へは押圧する力が加わらないため、右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態となる。この際の入浴者Mは、図4(a)に図示された姿勢になる。
【0033】
次に、t2時刻において、第一の吐水部3Lから吐水する噴流量は、減少させていく過程となる。このとき、第一の吐水部3Lから吐水される噴流量が所定噴流値Qbになるまでに、第二の吐水部3Rから、噴流を増加させ所定値Qa以上になるようにする。
このとき、入浴者Mは、図4(b)に図示するように、左足裏を押圧する力が、水量の低下と共に弱くなるため、左脚部の足関節、膝関節及び股関節が自然に伸び、左足部は第二の浴槽壁面2bに向かって移動する状態となる。また、右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態から徐々に屈曲状態へと移行する。そして、両足裏が吐水部から離れたオーバーラップ状態となる。
【0034】
水量の低下と共に脚部が伸展する際、弱まる水流は、呼び水の如く入浴者の足部を吐水部3Rの位置近傍へ誘導する。もしくは入浴者が慣れない場合、吐水部3を覆うように足の位置を微調節することにより、足部を吐水部3の近傍に戻す。
【0035】
また、第一の吐水部3Lから噴流を減少させていく過程において、第二の吐水部3Rからの吐水は、第一の吐水部3Lから噴流が減少し始める時間よりΔt時間遅れて吐水が始まることとなる。この遅れ時間によって、入浴者Mの伸展する脚部の位相と、屈曲する脚部の位相が一致する。これにより左右脚部は同時かつ連続的に交互に屈伸運動を行うことが可能となる。
【0036】
そして、t3時刻において、図4(c)に図示されるように、第一の吐水部3Lから吐水される水量は、脚部を屈曲しない状態となり、第二の吐水部3Rは、水量が所定値Qa以上で吐水する状態となる。この時、入浴者の左脚部の足関節、膝関節及び股関節は伸展した状態となり、右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、屈曲した状態となっている。
【0037】
t4時刻では、第二の吐水部3Rから、噴流を減少させる過程において、第二の吐水部3Rからの吐水が所定噴流値Qbになるまでに、第一の吐水部3Lから、噴流を増加させ所定値Qa以上になるようにする。この時、入浴者の右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、屈曲した状態から伸展した状態へと移行し、また、左脚部の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態から徐々に屈曲状態へと移行する。
【0038】
このとき、左足裏を押圧する噴流は、増えていくことで、入浴者Mの左脚部の足関節、膝関節及び股関節が、伸展した状態から屈曲する状態へと移る。一方、右足裏を押圧する力が、水量の低下と共に弱くなるため、入浴者Mの右脚部の足関節、膝関節及び股関節が自然に伸び、屈曲した状態から伸展する状態へと移る。すなわち、右脚部は第二の浴槽壁面2bに向かって移動することとなる。入浴者Mは、図4(d)に図示された両足裏が吐水部から離れたオーバーラップ状態となる。
【0039】
さらには、第二の吐水部3Rから噴流を減少させていく過程において、第二の吐水部3Rからの吐水は、第一の吐水部3Lから噴流が減少し始める時間よりΔt時間遅れて吐水が始まる。この遅れ時間によって、入浴者Mの伸展する脚部の位相と、屈曲する脚部の位相が一致する。これにより左右脚部は同時かつ連続的に交互に屈伸運動を行うことが可能となる。
【0040】
吐水時間t1〜t4を通して脚部動作の1周期とする。例えば、吐水時間t1〜t4を、1〜2秒にすると、ウォーキング動作に近づけることができるとともに、沢山の脚部屈伸運動を実現でき、運動効果を生み出すことが可能となる。一方、吐水時間t1〜t4をゆっくりとした3〜6秒程度にすると足裏で水流を受ける時間が長くなる。すなわち、不安定な水流の中で足を保持しつつ屈伸運動を行うことでバランス能力に必要な筋群を鍛えることができる。
【0041】
以上、上述の吐水状態を左右の吐水部3L及び3Rにおいて繰り返すことにより、入浴者は、吐水部3L及び3Rから交互に吐水される噴流によって、左右脚部を交互に屈伸運動を行う。左右脚部の交互屈伸運動は、図4(a)〜(d)を繰り返すことで説明できる。
【0042】
左右脚部の交互屈伸運動をより、ウォーキング動作に近づけるためには、左右足が同時に動く図4(b)と(d)のオーバーラップ状態が、重要となる。この左右足が同時に動く状態を作るための、吐水状態について、図5(a)、(b)を用いて説明する。図5(a)は、横軸に位相をとって本実施形態に係る浴槽装置1からの吐水量を例示するグラフ図である。そして、図5(b)は、横軸に位相をとって本実施形態に係る浴槽装置1からの吐水によって動く左右足裏と第二の浴槽壁面2b間の距離(足部移動量)を例示するグラフ図である。
【0043】
図5(a)では、左足裏への吐水を減少させていく過程において、右足裏への吐水を増加させていることを示している。この時、右足裏への吐水は、左足裏への吐水が減少し始める位相より遅れて開始される。この吐水区間の遅れによって、入浴者Mの左右脚部は、連続的かつ交互に左右脚部を屈伸運動させることが可能となる。
【0044】
この時、左右足が絶えず動き続けている状態は、脚部の運動のみならず全身運動への波及効果をもたらすことが筋活動を調べた実験より確認されている(図6)。また、入浴者へウォーキング動作を行っているような運動感を誘発させることも主観評価より分かっている。
【0045】
さらに、左右足裏への同時吐水区間Xが、吐水の1周期に対して10%程度とした場合、左右足部が同時に動く区間Yは、足部の移動周期の約30%程度となることが実験より確認されている。また、左右足裏への同時吐水区間Xが、吐水の1周期に対して20%程度とした場合、左右足部が同時に動く区間Yは、足部の移動周期の約70%程度となることが実験より確認されている。
【0046】
また、屈曲する状態を作る噴流は、足部を包むように流れ場を生成するため、噴流から足部が外れないように力が働く。これと同じ現象は、噴水の上にピンポン玉を載せた時にピンポン玉が噴流の中心で留まる現象である。これによって効率よく噴流によって入浴者は脚部の屈伸運動ができる。
【0047】
従って、吐水部3L及び3Rが交互に水流を吐水することにより、入浴者の左右足部が浴槽2の長手方向に沿って交互に往復し、結果、入浴者の左右の脚部を交互に屈伸運動させることが可能となる。すなわち、本発明の装置は、座った姿勢でありながら入浴者に歩行を模した水中ウォーキングの運動を行わせることができる。
【0048】
図7の(a)と(b)より、具体的に、他動的な屈伸運動によって起こる筋の活動を説明する。図7の(a)は、水流によってもたらされる他動運動によって活動する筋群を例示した図であり、(b)で示されている筋群の位置を示す。(b)は、縦軸に筋の活動量を示し、横軸に時間をとり、吐水状態に応じて脚部の異なる筋が活動していることを示す。吐水のS1時間に伴う脚部の屈曲より前脛骨筋M5が活動し始める。足部が第二の浴槽壁面より離れ、第一の浴槽壁面へ移動している状態で筋の活動が起こっている事を意味する。
【0049】
そして、次にS2時間で吐水しない状態となり、S3時間において入浴者の足部が第二の浴槽壁面2bへ移動し、吐水部3と第二の浴槽壁面2bに当接する。入浴者の足部が第二の浴槽壁面2bに接すると、ハムストリングス(大腿二頭筋他)が活動することを図7の(b)より示している。このように、噴流量の増減に伴って起こる脚部の屈伸運動は、異なる筋群を働かせることで運動効果を高める。
【0050】
図7に図示されていた前脛骨筋M4は、ヒトの身体セグメントにおける下腿部に備わった筋である。前脛骨筋M5の働きは、歩行時、地面と足部とのクリアランスをとるために働く筋肉として知られている。よって、前脛骨筋M5を活動させる運動とは、転倒予防に貢献する運動を意味する。
【0051】
同じく、図7に図示されたハムストリングスM5は、ヒトの身体セグメントにおける大腿部に備わった筋群である。ハムストリングスは、大腿二頭筋M5、半膜様筋、半腱様筋、そして大内転筋によってなる筋群である。大腿二頭筋M5の働きは、主として歩行時における蹴りだす力、推進力を生成する筋として知られている。よって、ハムストリングスを刺激する運動とは、歩行速度の維持と歩行機能の向上に貢献できる運動を意味する。
【0052】
吐水部3から吐水する足を屈曲させる水量は、入浴者Mが背中m1を第一の浴槽壁面2bに当接させ、足裏m2を吐水部3に対向させたときに、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節を同時に屈曲させることが可能な量であり、例えば、80〜300リットル/分である。尚、水流の大きさが80リットル/分未満であると、入浴者の足裏m2が吐水部3から離れないことがあり、300リットル/分を超えると、浴槽2から水が溢れ出すことがある。
【0053】
吐水される水量が110リットル/分を超えると吐水される噴流の押圧によって脚部移動距離が140mm以上になり、この条件を境に使用者が、水流による屈伸運動で運動感を感じることが確認されている。尚、モニター人数35名において、110リットル/分を超えると吐水で足部が140mm以上移動し、運動感を感じることを確認している。
【0054】
さらに屈伸運動において効果的で高い運動効果を得るには、150リットル/分程度の水流で運動を行うことが良く。さら好ましくは、180リットル/分程度の水流による運動が効果的である。なお、この水流の大きさは、一般家庭用浴槽を対象とした循環式浴槽において、マッサージ用に噴出される水流の大きさよりもかなり大きい。
【0055】
上述した通り、噴流の流量を増やすことで足裏を押圧する力を増加させるとともに屈伸運動の可動範囲を広くする。この噴流の増加に伴って、足裏に備わる感覚器と脚部に備わる腱器官をより効果的に刺激する事で歩行に働く機能を効果的促進させることが可能となる。
【0056】
また、利用する浴槽内の水(湯)の水温は常温でも使用できるが、水温を、36〜41℃帯域で使用するのが好ましい。例えば、温度が体温に近く、温熱の負荷が低い場合の36〜38℃では、吐水の水量を多くし屈伸運動の回動量を増やす、もしくは、吐水の周期を早くすることで屈伸運動の回数を増やすことにより運動強度を高め、効果的な運動を入浴者へ提供することが可能となる。
【0057】
一方、比較的短い時間で十分な運動を求める場合は、湯温度を高めに設定し(例えば39〜41℃)、温熱と運動の効果の相乗効果によって、湯の温度を低く設定した時に比べ、短い時間でエネルギー消費を起こし、効果的な運動を短い時間で行うことができる。
【0058】
温熱の効果と運動効果について、図8において説明する。
図8は、縦軸に脂肪の燃焼効率を示す呼吸商を示し、横軸に経過の時間を図示し、速歩と水流による他動運動を行った際の呼吸商を比較した値を示している。条件は、陸上での時速4.3キロ程のウォーキングと湯温39度で吐水量が180リットル/分程度の水流を選択した本発明による水中ウォーキングの場合を呼吸商より比較した。結果、高い脂肪燃焼効果が得られる領域に本発明による装置を用いた水中ウォーキングが、陸上のウォーキングより速い時間帯で突入したことを示している。上記結果は、本装置が温熱と運動の相乗効果によって高い運動効果を生成することを示すものである。
【0059】
本実施形態の効果について説明する。
このように、本実施形態によれば、入浴者Mに運動をさせることができる。この運動は外部から与えられる他力的な他動運動となる。一般的な浴槽内で入浴姿勢をとると、実は、使用者の取り得る入浴姿勢は、浮力に抗じるように姿勢を保持するために無意識のうちに微小な筋の活動を起こす。この微小な筋活動を誘発した状態で、入浴者は、噴流を吐水部3L及び3Rより交互に受ける。その結果、入浴者Mが噴流によって座った姿勢でありながら他動的に水中ウォーキング運動を行う。そして、脚部筋群や脚部を支える体幹部に備わる筋を活動させることができる。
【0060】
さらに、入浴者Mは、吐水部3より吐水される噴流と、入浴者自身に加わる浮力の働きが入浴姿勢のバランスを乱し、それに対して、入浴者は、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う。これによっても全身の運動をすることができる。このため、入浴者の意志力に依存する部分が少なく、長続きしやすい運動を本装置によって提供することが可能となる。また、この運動は入浴姿勢のまま行うことができるため、通常の入浴から運動へと移行がし易く、生活習慣の中で無理なく行える運動となる。この結果、運動を継続しやすい。
【0061】
上述の運動を35名が体験した。その結果、入浴中の水中ウォーキングが入浴姿勢から、水流によって無理なく行われること。そして継続して水中ウォーキングを行うと運動感、筋の使用感を感じる。また風呂から出たあと、足が温かい。ジョギングよりも運動感を感じる、といった運動の効果を体験者が体感していることを確認している。さらに、5分を経たずに、発汗作用が促進されることなども体感しており、ダイエット効果にも適しておりメタボリック対策になるなどの感想も得られた。
【0062】
更に本実施形態によれば、左脚用の吐水部3Lと右脚用の吐水部3Rから左右交互に入浴者の足裏へ噴流を吐水するため、入浴者は、脚部の屈伸運動に加え骨盤を中心とした旋回運動を起こすこととなる。その結果、脚部周りの筋群への運動効果に加えて、腹直筋、腹斜筋そして背筋群などへの運動効果が得られることを確認している。このように、上述の運動を浴槽内で行うことにより、脚部のみならず身体の広い範囲に対しての運動となり、効果的な運動を入浴者が得られることができる。
【0063】
更に本実施形態によれば、入浴者は、両足の吐水部3L及び3Rから吐水される水量に応じて屈伸運動より得る運動感が異なる。図9に示す実線Lは、吐水部3からの噴流によって入浴者が屈伸運動を起こった時の脚部が噴流によって第二の浴槽壁面から離れて移動する距離と吐水の流量との関係を表している。
【0064】
実線Lに示すように、足部の移動距離と吐水の流量には相関関係があり、吐水量が多くなると脚部移動量が増える。足部の異動距離が第二の浴槽壁面より離れるのは80リットル/分程度より、足部の移動開始し屈伸運動を行える。より効果的な運動を入浴者が行うには、吐水量を110リットル/分とするとよい。
【0065】
本実施例では、足部の移動距離は140mm程度となっていた。さらにより効果的な運動を得ようとすると、入浴者は吐水量、180リットル/分を選択し、さらに高い効果的な運動を得ようとすると、200リットル/分となるように水量を調節してもよい。その際の脚部の移動距離は250mm〜300mm程度となっていることが実験より分かっている。
【0066】
本具体例においては、浴槽2内に水(湯)Wを溜めた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。そして、制御部4の操作ボタンを操作することにより、浴槽装置11による運動の実行時間及び屈伸運動の周期を任意に設定する。なお、制御部4の中に予め複数の種類の運動モードが設定されており、入浴者が好みの運動モードを選択するようにしてもよい。
【0067】
例えば、入浴者が、運動負荷の高いモードを選択すると、タイマーが比較的短い周期で吐水する状態、吐水しない状態へと水量を切替える制御を、制御部5から吐水駆動部4に対して出力する。又は、運動時間及び運動周期はタイマーが自動的に設定してもよい。例えば、湯の設定温度が39℃であるとき、タイマーは、1セットの運動時間を10分間に設定する。
このように、本具体例によれば、運動の負荷を入浴者の好みに応じて任意に設定することができる。本具体例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図10は、第1の実施形態に係る浴槽装置の変形例を例示する模式的断面図である。図10に示すように、本実施形態に係る浴槽装置11においては、前述の第1の実施形態に係る浴槽装置1(図1参照)に対して、吐水駆動部4が分配部41を備えることが異なる。吐水駆動部4に含まれる分配部41は第一の吐水部3L及び第二の吐水部3Rと接続されている。
【0069】
また、吐水駆動部4に含まれる分配部41は、第一の吐水部3Lと第二の吐水部3Rからの吐水する水量を調節する。その際、第一の吐水部3Lで“噴流を減少させる過程”の場合、所定噴流値になるまでに、第二の吐水部3Rにおいては、“噴流を増加さえる過程”となり足裏が吐水部から離れるように調節される。吐水駆動部4に含まれる分配部41の動作は、制御部5の信号によって制御される。
【0070】
図11は、本実施形態に係る浴槽装置11の動作を例示する模式的平面図であり、左足裏に配置された第一の吐水部3L及び右足裏側に配置された第二の吐水部3Rから噴流が交互に噴出される場合を示す。まず、吐水駆動部4、分配部41及び制御部5を作動させる。これにより、吐水駆動部4が浴槽2内の水を吸入口4sから汲み上げて水流を生成する。そして、吐水駆動部4に含まれる分配部41が、制御部5からの指令を受けて第一の吐水部3L及び第二の吐水部3Rより交互に噴出される噴流水量を調節する。
【0071】
吐水駆動部4に含まれる分配部41の働きによって第一の吐水部3L及び第二の吐水部3Rに水流を分配され、入浴者Mは、吐水部3L及び3Rより交互に吐水される噴流を左右足裏に受けることで水中ウォーキングを行う。また、吐水駆動部4に含まれる分配部41は、切替弁、切替バルブ、そして、電磁弁などが代用される。また、分配部41の制御には、シーケンサー、タイマーなどを用いる。
【0072】
尚、切替弁とポンプを用いて説明したが、本実施例は上記内容に限られるものではない。例えば、流路を切替える方法に、ポンプの回転方向を正転と反転させる場合もある。または、駆動部を用いずに逆支弁をつかうことで、配管を流れる噴流の抵抗を使うことで切替るものであってもよい。さらには、電磁弁やボールバルブなどをポンプの吐水口に備えることで噴流の流路を切替える機構を備えるものであっても良い。
【0073】
次に図12を用いて本実施形態の動作について説明する。
図12の(a)から(e)は、横軸に時間をとって本実施形態に係る浴槽装置1からの吐水量を例示するグラフ図であり、(a)の縦軸は第一の吐水部3Lからの吐水量を表し、(b)の縦軸は第二の吐水部3Rの吐水量を表す。(c)の縦軸は左足の伸展屈曲の状態を表し、(d)の縦軸は、右足の伸展屈曲の状態を表す。そして、(e)の縦軸は両吐水部から吐水される合計吐水量の理論値を表す。
【0074】
図12の(a)と(b)から、吐水状態の時間変化について説明する。
ある時刻t1において、第一の吐水部3Lから吐水する水量は、所定値Qa以上であり、一方、第二の吐水部3Rから吐水する水量は、脚部を屈曲させない状態である。次に、t2時刻において、第一の吐水部3Lから吐水する水量は、減少させていく過程において、第一の吐水部3Lから吐水が所定噴流値Qbになるまでに、第二の吐水部3Rから吐水する水量を増加させ、右足裏が吐水部から離れる。
【0075】
次に、t3時刻において、第一の吐水部3Lから吐水する水量は、脚部が屈曲しない状態となり、第二の吐水部3Rから吐水する水量は、所定値Qa以上で吐水する状態となる。次に、t4時刻において、第二の吐水部3Rから吐水する水量が、減少させていく過程において、第二の吐水部3Rから吐水する水量が所定噴流値Qbになるまでに、第一の吐水部3Lから、噴流を増加させ左足裏が吐水部から離れるようになる。
【0076】
時刻t2の区間、時間t4区間に示される通り、第一の吐水部3Lから噴流を増加させる過程と第二の吐水部3Rから吐水を減少させる過程、もしくは、第一の吐水部3Lから噴流を減少させる過程と第二の吐水部3Rから吐水を増加させる過程の時間間隔は、同時となる。この時刻t2及びt4での吐水の方法が、左右足が連続して交互に振り出すことを実現させる。
【0077】
時刻t2及びt4での吐水の方法が、左右足を連続して交互に振り出すことを図12の(c)と(d)より説明する。t2時刻において、第一の吐水部3Lから吐水する水量が、減少させていく過程において、第一の吐水部3Lからの吐水が所定噴流値Qb以上の状態で、第二の吐水部3Rから、噴流を増加させる。この時、入浴者の左脚部の足関節、膝関節及び股関節は、屈曲した状態から徐々に伸展状態へと移行し、入浴者の右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態から徐々に屈曲状態へと移行する。
【0078】
このとき、左足裏を押圧する力が、水量の低下と共に弱くなるため、脚部の足関節、膝関節及び股関節が自然に伸び、左足部は第二の浴槽壁面2bに向かって移動する状態となる。左足裏への吐水の水量が減少する際、水の慣性力が働くため、左足部の移動は吐水の減少過程より遅れて伸展する。一方、右足裏への吐水の水量が増加する過程では、吐水駆動部41より高い圧力で噴流が吐水されるため、吐水変化と足部の移動に差は殆どない。そのため、左右足の伸展の状態と屈曲の状態は、相反的な動きにならない(図12(c)と(d))。
【0079】
同様に、t4時刻でも、第二の吐水部3Rから、噴流を減少させていく過程において、第一の吐水部3Rからの吐水が所定噴流値Qb以上の状態で、第一の吐水部3Lから、噴流を増加させる。この時、入浴者の右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、屈曲した状態から伸展した状態へと移行し、また、左脚部の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態から徐々に屈曲状態へと移行する。その際、左右足の伸展の状態と屈曲の状態は、相反的な動きにならない。
【0080】
このような左右足の伸展の状態と屈曲の状態が、少しの遅れをもって行われる動作は、より陸上のウォーキング動作に近くなる。陸上でのウォーキング動作を考えると地面に足を支持する状態を意味する立脚期と足を振り出し空中を動いている状態を意味する遊脚期の比率は6割、4割となっていることが広く知られている。それ故、左右の伸展屈曲の動作に遅れを持たすことで、座った姿勢でありながらより歩行に近い水中ウォーキング動作を使用者へ提供することとなる。それにより、運動効果、運動のしやすさなどが向上すると考えられる。さらに図12(e)に示す合計の吐水量は、一定となることが示されている。これによりポンプの回転数の変動が少なく、低周波のうなるような騒音を小さくすることを可能にする。
【0081】
次に、第2の実施形態の変形例について説明する。
図13は、第1の実施形態に係る浴槽装置の変形例を例示する模式的断面図である。図13に示すように、本実施形態に係る浴槽装置11においては、前述の第1の実施形態に係る浴槽装置1(図1参照)に対して、第一の浴槽壁面2aと第二の浴槽壁面2b、そして、底面2cに接する浴槽側壁面2dに、浴槽手すり7が備わっていることが異なる。
【0082】
この第1の実施形態の変形例において、入浴者Mは、手すり7を握ることで第一の浴壁面2aに背中m1を接することのない入浴姿勢を保持する。この入浴姿勢において、入浴者Mは、吐水部3より吐水される噴流を受けて水中ウォーキングを行う。この際、噴流が足裏を押圧する力は、下肢を伝わり、上肢に伝達される。すなわち、手すり7を力点として前腕部、上腕部において力に抗じようと腕周りの筋群も活動することとなる。もちろん、下肢と上肢の間に位置する腹回りの筋群も活動する。よって、全身運動を可能にする。
【0083】
さらに、入浴者Mは、手すり7を使うことで、背中m1を第一の浴槽壁面2aにもたれることが出来ない場合においても、浴槽2のサイズと関係なく吐水部3L及び3Rより吐水される噴流によって、座った姿勢でありながら水中ウォーキングを行うことが可能となる。尚、手すり7に変わり浴槽リムを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図である。
【図3】本発明の本実施形態に係る浴槽装置からの時間と吐水量を例示するグラフ図である。
【図4】本発明の本実施形態に係る使用者の脚部の伸展および屈曲している状態を例示する図である。
【図5】本発明の浴槽装置によって起こされる噴流の流量変化とその噴流によって起こされる足部の移動量変化を例示する図である。
【図6】本発明の本浴槽装置によって起こされる様々な筋群の活動を説明する図である。
【図7】本発明の本浴槽装置によって起こされる筋の活動を説明する図である。
【図8】本発明の浴槽装置によって起こされる運動効果を説明する図である。
【図9】本発明の浴槽装置によって起こされる噴流の流量と脚部の移動量との関係を例示する図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図である。
【図12】本発明の本実施形態に係る浴槽装置からの時間と吐水量を例示するグラフ図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る浴槽装置の変形例を例示する模式的断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 11 21 浴槽装置、2 浴槽、2a 第一の浴槽壁面、2b 第二の浴槽壁面、2c底面、3 吐水部、3L 第一の吐水部、3R 第二の吐水部、4 吐水駆動部、41 分配部、4s 吸入口、5 制御部、60 浴室ユニット、61 防水パン、62 壁パネル、7 手すり、M 入浴者、m1 背中、m2 足、W 水
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽装置に関し、特に、入浴者に運動させる浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康やリラクゼーションへの関心が高まり求められている。そして、一般家庭浴槽において、水流浴機能を備える商品が広く展開されている。水流浴商品の主目的は、水流による入浴者へのマッサージ、疲労回復、そして、癒しとなっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一様流ではなく流水循環ポンプの回転数を変速可能にして、流水の吐出量及び吐出圧を制御することが記載されている。
【0004】
また、部分的なマッサージとして、特許文献2に、浴槽内部に足置き部が設けられ、この足置き部に噴流を噴出する吐出口が設けられた循環式浴槽が開示されている。
【0005】
一方、浴槽内での運動を行う提案もある。特許文献3には、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術が開示されている。踏み台にはバネによって踏み込み負荷が与えられており、入浴者は座位姿勢のまま片足で踏み台を踏み込むことにより、運動することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平3−16568号公報
【特許文献2】特開2005−287541号公報
【特許文献3】特開2003−236014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、一般家庭浴槽での水流浴では水流による入浴者へのマッサージが主流となっており、マッサージ効果のために流量を制御することを目的としている。そのため、筋力強化を目的としているものが少ない。また、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術は普段から運動習慣の無い人が運動を行うには、自ら運動しようという相当な意志の力を要する。特に、入浴時はリラックスした精神状態になっているため、意志の力を発揮することは困難である。このため、浴槽内に運動器具を設置しても、運動が長続きしないことが予想される。また、運動器具の取付・取り外しが面倒という問題もある。
本発明の目的は、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供することで
ある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一様態によれば、浴槽と、前記浴槽に設けられ、背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面と、前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する第一の吐水部及び第二の吐水部と、前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水するための吐水駆動部と、前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水する噴流の状態を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記噴流の噴流量を所定値以上に増加させる過程で足を屈曲させることを可能とし、かつ前記噴流を減少させる過程で屈曲した足を伸展させることを可能とし、前記第一の吐水部からの噴流を減少させる過程において、所定噴流値以上の状態で前記第二の吐水部からの噴流を増加させるように制御することを特徴とする浴槽装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【0011】
浴槽装置1には、浴槽2が設けられている。浴槽2の形状は例えば略直方体形状となる。そして、長手方向の一端部の内側面は、入浴者Mが入浴姿勢を保持し、入浴者の背面m1で背もたれ可能な第一の浴槽壁面2aとなっている。また、浴槽長手方向において、第一の浴槽壁面2aと対向して第二の浴槽壁面2bが設けられており、入浴者Mの足裏m2が接触する壁面となっている。第一の浴槽壁面2aと第二の浴槽壁面2bとは、底面2cと接している。
【0012】
浴槽2の長手方向の長さ、すなわち、浴槽2における第二の浴槽壁面2bと第一の浴槽壁面2aとの間の長さは、標準的な体格の入浴者Mが入浴姿勢をとった時、背中m1を浴槽2の第一の浴槽壁面2aに充てて、足裏m2を第二の浴槽壁面2bに対向させた時に、足裏m2で吐水部3を覆うことができる程度の長さである。また、臀部においては、浴槽2の底面2cに接触させるようにする。
【0013】
浴槽2の第二の浴槽壁面2bには、左脚用の吐水部3L及び右脚用の吐水部3R(以下総称して「吐水部3」とも言う)が設けられている。この吐水部3は、入浴者Mの足裏を中心とした両脚部へ噴流を交互に吐水することを可能にする吐水駆動部4と接続されている。この噴流の方向は、第二の浴槽壁面2bから第一の浴槽壁面2aに向かう方向である。これらの一対の吐水部3は、水平方向に配列されており、例えば、第二の浴槽壁面において上下方向に延びる中心線に関して対象となる位置に配置されている。
【0014】
尚、図1においては、図示の便宜上、吐水部3L及び3Rはを相互にずらして描いているが、実際には左足裏に配置された第一の吐水部3L及び右足裏側に配置された第二の吐水部3Rは同じ高さに配置されている。後述するほかの断面図におていも同様である。
【0015】
また、吐水駆動部4の吸入口4sは浴槽2の内部に連通されている。これにより、吐水駆動部4は浴槽2内から水を汲み上げ、汲み上げられた水は、吐水部3へ送られ噴流を吐水する。
【0016】
また、吐水駆動部4は、第一の吐水部3Lと第二の吐水部3Rからの吐水する水量を調節する。例えば、第一の吐水部3Lで “噴流を減少させる過程”の場合、第二の吐水部3Rにおいては、所定噴流値以上の状態で、“噴流を増加させる過程”となるように調節する。吐水駆動部4によって生成される水量は、吐水駆動部4に接続す制御部5の信号によって制御される。
【0017】
次に、本実施形態の動作について図1から図4を用いて説明する。
【0018】
図1に示すように、浴槽2内に水(湯)Wを入れた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。すなわち、入浴者Mは、臀部を浴槽2の底面2cに接触させ、背中m1を浴槽2の第一の浴槽壁面2aに当接させ、足裏m2を第二の浴槽壁面2bに対向させる。そして、入浴者Mは、両足裏m2で吐水部3L及び3Rを覆うように、足裏m2を配置し、吐水部3から吐水される水流を足裏m2で捉える初期姿勢をとる。
【0019】
このとき、入浴者Mはリラックスした状態にあるが、浮力の働きによって身体が湯水内に水没しないよう、脚部(足裏)、臀部、体幹部(背中)で浮力に抗じるため、各支持点周りの筋群は微小な筋の活動を行うこととなる。しかしながら、これら筋群の活動は微小であり、無意識に行われているため入浴者は、上述した入浴の姿勢を普段入浴する時と同様に楽に保持することが可能となる。さらに、入浴者Mは、入浴者自身に加わる浮力の働きが入浴姿勢のバランスを乱し、それに対して、入浴者は、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う。その際に身体の広い範囲で筋の活動が起こる。
【0020】
図2は、本実施形態に係る浴槽装置1の動作を例示する模式的平面図であり、左足裏に配置された第一の吐水部3L及び右足裏側に配置された第二の吐水部3Rから噴流が交互に噴出される場合を示す。
まず、吐水駆動部4及び制御部5を作動させる。これにより、吐水駆動部4が浴槽2内の水を吸入口4sから汲み上げて水流を生成する。そして、制御部5からの指令を受けて、吐水駆動部4が第一の吐水部3L及び第二の吐水部3Rより交互に噴出される水(噴流)量を調節する。
【0021】
吐水部3L及び3Rからの左右交互吐水の動作状態について説明する。t1では、第一の吐水部3Lより所定値Qa以上の水量で吐水する。そして、t2では、第一の吐水部3Lから吐水される水量は、所定値Qaから脚部が屈曲しない状態にまで水量を減少させる吐水状態Qdownとなる。次に、t3においては、第一の吐水部3Lから吐水される水量は脚部が屈曲しない状態となる、そして、t4では、第一の吐水部3Lから吐水される水量は、脚部が屈曲しない状態から水量が所定値Qa以上で吐水するように流量を増加させる状態Qupとなる。
【0022】
一方の第二の吐水部3Rでは、t1において、第二の吐水部3Rより吐水される水量は、脚部が屈曲しない状態である。次に、t2において、吐水される水量は、脚部が屈曲しない状態から所定値Qa以上となるまで水量を増加させる状態Qupとなる。そして、t3において、第二の吐水部3Rより吐水の水量は所定値Qa以上で吐水する状態となる。そして、t4において、第二の吐水部3Rから吐水の水量は所定値Qaから脚部が屈曲しない状態へ吐水の水量を減少する状態Qdownとなる。
【0023】
ここで、所定値Qaは、足が伸展した状態から屈曲した状態へ移行する、すなわち、足裏が吐水部から離れる水(噴流)量の値である。
【0024】
次に、上記吐水状態によって導かれる脚部の状態を説明する。
t1において第一の吐水部3Lから所定値Qa以上で吐水されているとき、入浴者Mの左脚の足関節、膝関節及び股関節は屈曲した状態であり、左足部が、第二の浴槽壁面2bから離れることとなる。次に、t2において、第一の吐水部3Lから吐水される水量は、減少する状態Qdownであり、入浴者Mの左脚の足関節、膝関節及び股関節は屈曲した状態から徐々に伸展する状態へと移行される。
【0025】
次に、t3において第一の吐水部3Lから吐水される水量は、脚部が屈曲しない状態となる。このとき、入浴者Mの左脚の足関節、膝関節及び股関節は伸展した状態となる。そして、t4において、第一の吐水部3Lは、水量を増加させる状態Qupで吐水し、所定値Qaに達すると、入浴者Mの左脚の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態から屈曲する状態へと移行される。
【0026】
図3の(a)から(e)は、横軸に時間をとって本実施形態に係る浴槽装置1からの吐水の水量を例示するグラフ図であり、(a)の縦軸は第一の吐水部3Lから吐水される水量を表し、(b)の縦軸は第二の吐水部3Rから吐水される水量を表す。(c)の縦軸は左足の屈曲伸展の状態を表し、(d)の縦軸は、右足の屈曲伸展の状態を表す。そして、(e)の縦軸は両吐水部から吐水される合計吐水量の理論値を表す。
【0027】
図3の(a)と(b)、(e)を用いて、吐水状態の時間変化について説明する。
ある時刻t1において、第一の吐水部3Lから、所定値Qa以上で吐水されている状態であり、第二の吐水部3Rから吐水される水量は、脚部を屈曲しない状態である。次に、t2時刻では、第一の吐水部3Lから、噴流を減少させていく過程において、第一の吐水部3Lからの吐水の水量が所定噴流値Qbになるまでに、第二の吐水部3Rから右足裏が吐水部から離れるQa以上になるように吐水される水量を増加させる。
【0028】
次に、t3時刻において、第一の吐水部3Lから吐水する水量は、脚部を屈曲しない状態となり、第二の吐水部3Rからの吐水される水量は、所定値Qa以上で吐水する状態となる。そして、t4時刻では、第二の吐水部3Rから、噴流を所定値Qaから減少させていく過程において、第二の吐水部3Rからの吐水の水量が所定噴流値Qbになるまでに、第一の吐水部3Lから、足裏が吐水部から離れる所定値Qa水量以上になるよう吐水される水量を増加させる。
【0029】
ここで、所定噴流値Qbとは、一方の足が吐水部から十分離れた屈曲状態から伸展状態へ移行し足裏が吐水部に当接する直前の間で、他方の足が吐水部から離れる所定値Qa噴流を吐水する、すなわち、両方の足が吐水部から離れている状態(以下、オーバーラップとも言う)を作り出す水(噴流)量の値である。
本実施例では、所定値Qaは、例えば、110リットル/分以上が良い。より交互脚部を連動して動かすための吐水には、所定値Qaは、150リットル/分とすることが良く、さらに好ましくは、180リットル/分が良い。
また、所定噴流値Qbは、50リットル/分とし、好ましくは、80リットル/分、さらに好ましくは、90リットル/分が良い。
【0030】
時刻t2の区間、時刻t4区間に示される通り、第一の吐水部3Lと第二の吐水部3Rから吐水される噴流の増減は、タイミングに差があるように制御するとよい。入浴者Mが足裏にて受ける噴流は、吐水駆動部4を止めても慣性の力によって、足を押圧する力が直ぐに無くならない。それゆえ、左右足を同時かつ連続して交互に振り出すには、遅れ時間を考慮して吐水する必要がある。よって、時刻t2及びt4での吐水の方法は、左右足が同時かつ連続して交互に振り出すことを実現させる手段となる。これにより使用者へ運動感を与えるとともに、座った姿勢でありながらより歩行動作に近い水中ウォーキング動作を使用者へ提供することが可能となる。
【0031】
図3(e)に示す合計の吐水量は、時刻t2の区間、時間t4区間にて増減することが示されている。この合計の吐水量の増減はポンプの回転数を制御する等で可能となる。
【0032】
次に、吐水される流量変化によって起こる入浴者Mの脚部屈伸運動を、図3の(c)と(d)、図4より説明する。
ある時刻t1では、第一の吐水部3Lが、所定値Qa以上で吐水されており、入浴者は左足裏で噴流からの押圧する力を受け、左脚部の足関節、膝関節及び股関節が屈曲した状態となる。一方、第二の吐水部3Rからは吐水されておらず、右足裏へは押圧する力が加わらないため、右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態となる。この際の入浴者Mは、図4(a)に図示された姿勢になる。
【0033】
次に、t2時刻において、第一の吐水部3Lから吐水する噴流量は、減少させていく過程となる。このとき、第一の吐水部3Lから吐水される噴流量が所定噴流値Qbになるまでに、第二の吐水部3Rから、噴流を増加させ所定値Qa以上になるようにする。
このとき、入浴者Mは、図4(b)に図示するように、左足裏を押圧する力が、水量の低下と共に弱くなるため、左脚部の足関節、膝関節及び股関節が自然に伸び、左足部は第二の浴槽壁面2bに向かって移動する状態となる。また、右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態から徐々に屈曲状態へと移行する。そして、両足裏が吐水部から離れたオーバーラップ状態となる。
【0034】
水量の低下と共に脚部が伸展する際、弱まる水流は、呼び水の如く入浴者の足部を吐水部3Rの位置近傍へ誘導する。もしくは入浴者が慣れない場合、吐水部3を覆うように足の位置を微調節することにより、足部を吐水部3の近傍に戻す。
【0035】
また、第一の吐水部3Lから噴流を減少させていく過程において、第二の吐水部3Rからの吐水は、第一の吐水部3Lから噴流が減少し始める時間よりΔt時間遅れて吐水が始まることとなる。この遅れ時間によって、入浴者Mの伸展する脚部の位相と、屈曲する脚部の位相が一致する。これにより左右脚部は同時かつ連続的に交互に屈伸運動を行うことが可能となる。
【0036】
そして、t3時刻において、図4(c)に図示されるように、第一の吐水部3Lから吐水される水量は、脚部を屈曲しない状態となり、第二の吐水部3Rは、水量が所定値Qa以上で吐水する状態となる。この時、入浴者の左脚部の足関節、膝関節及び股関節は伸展した状態となり、右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、屈曲した状態となっている。
【0037】
t4時刻では、第二の吐水部3Rから、噴流を減少させる過程において、第二の吐水部3Rからの吐水が所定噴流値Qbになるまでに、第一の吐水部3Lから、噴流を増加させ所定値Qa以上になるようにする。この時、入浴者の右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、屈曲した状態から伸展した状態へと移行し、また、左脚部の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態から徐々に屈曲状態へと移行する。
【0038】
このとき、左足裏を押圧する噴流は、増えていくことで、入浴者Mの左脚部の足関節、膝関節及び股関節が、伸展した状態から屈曲する状態へと移る。一方、右足裏を押圧する力が、水量の低下と共に弱くなるため、入浴者Mの右脚部の足関節、膝関節及び股関節が自然に伸び、屈曲した状態から伸展する状態へと移る。すなわち、右脚部は第二の浴槽壁面2bに向かって移動することとなる。入浴者Mは、図4(d)に図示された両足裏が吐水部から離れたオーバーラップ状態となる。
【0039】
さらには、第二の吐水部3Rから噴流を減少させていく過程において、第二の吐水部3Rからの吐水は、第一の吐水部3Lから噴流が減少し始める時間よりΔt時間遅れて吐水が始まる。この遅れ時間によって、入浴者Mの伸展する脚部の位相と、屈曲する脚部の位相が一致する。これにより左右脚部は同時かつ連続的に交互に屈伸運動を行うことが可能となる。
【0040】
吐水時間t1〜t4を通して脚部動作の1周期とする。例えば、吐水時間t1〜t4を、1〜2秒にすると、ウォーキング動作に近づけることができるとともに、沢山の脚部屈伸運動を実現でき、運動効果を生み出すことが可能となる。一方、吐水時間t1〜t4をゆっくりとした3〜6秒程度にすると足裏で水流を受ける時間が長くなる。すなわち、不安定な水流の中で足を保持しつつ屈伸運動を行うことでバランス能力に必要な筋群を鍛えることができる。
【0041】
以上、上述の吐水状態を左右の吐水部3L及び3Rにおいて繰り返すことにより、入浴者は、吐水部3L及び3Rから交互に吐水される噴流によって、左右脚部を交互に屈伸運動を行う。左右脚部の交互屈伸運動は、図4(a)〜(d)を繰り返すことで説明できる。
【0042】
左右脚部の交互屈伸運動をより、ウォーキング動作に近づけるためには、左右足が同時に動く図4(b)と(d)のオーバーラップ状態が、重要となる。この左右足が同時に動く状態を作るための、吐水状態について、図5(a)、(b)を用いて説明する。図5(a)は、横軸に位相をとって本実施形態に係る浴槽装置1からの吐水量を例示するグラフ図である。そして、図5(b)は、横軸に位相をとって本実施形態に係る浴槽装置1からの吐水によって動く左右足裏と第二の浴槽壁面2b間の距離(足部移動量)を例示するグラフ図である。
【0043】
図5(a)では、左足裏への吐水を減少させていく過程において、右足裏への吐水を増加させていることを示している。この時、右足裏への吐水は、左足裏への吐水が減少し始める位相より遅れて開始される。この吐水区間の遅れによって、入浴者Mの左右脚部は、連続的かつ交互に左右脚部を屈伸運動させることが可能となる。
【0044】
この時、左右足が絶えず動き続けている状態は、脚部の運動のみならず全身運動への波及効果をもたらすことが筋活動を調べた実験より確認されている(図6)。また、入浴者へウォーキング動作を行っているような運動感を誘発させることも主観評価より分かっている。
【0045】
さらに、左右足裏への同時吐水区間Xが、吐水の1周期に対して10%程度とした場合、左右足部が同時に動く区間Yは、足部の移動周期の約30%程度となることが実験より確認されている。また、左右足裏への同時吐水区間Xが、吐水の1周期に対して20%程度とした場合、左右足部が同時に動く区間Yは、足部の移動周期の約70%程度となることが実験より確認されている。
【0046】
また、屈曲する状態を作る噴流は、足部を包むように流れ場を生成するため、噴流から足部が外れないように力が働く。これと同じ現象は、噴水の上にピンポン玉を載せた時にピンポン玉が噴流の中心で留まる現象である。これによって効率よく噴流によって入浴者は脚部の屈伸運動ができる。
【0047】
従って、吐水部3L及び3Rが交互に水流を吐水することにより、入浴者の左右足部が浴槽2の長手方向に沿って交互に往復し、結果、入浴者の左右の脚部を交互に屈伸運動させることが可能となる。すなわち、本発明の装置は、座った姿勢でありながら入浴者に歩行を模した水中ウォーキングの運動を行わせることができる。
【0048】
図7の(a)と(b)より、具体的に、他動的な屈伸運動によって起こる筋の活動を説明する。図7の(a)は、水流によってもたらされる他動運動によって活動する筋群を例示した図であり、(b)で示されている筋群の位置を示す。(b)は、縦軸に筋の活動量を示し、横軸に時間をとり、吐水状態に応じて脚部の異なる筋が活動していることを示す。吐水のS1時間に伴う脚部の屈曲より前脛骨筋M5が活動し始める。足部が第二の浴槽壁面より離れ、第一の浴槽壁面へ移動している状態で筋の活動が起こっている事を意味する。
【0049】
そして、次にS2時間で吐水しない状態となり、S3時間において入浴者の足部が第二の浴槽壁面2bへ移動し、吐水部3と第二の浴槽壁面2bに当接する。入浴者の足部が第二の浴槽壁面2bに接すると、ハムストリングス(大腿二頭筋他)が活動することを図7の(b)より示している。このように、噴流量の増減に伴って起こる脚部の屈伸運動は、異なる筋群を働かせることで運動効果を高める。
【0050】
図7に図示されていた前脛骨筋M4は、ヒトの身体セグメントにおける下腿部に備わった筋である。前脛骨筋M5の働きは、歩行時、地面と足部とのクリアランスをとるために働く筋肉として知られている。よって、前脛骨筋M5を活動させる運動とは、転倒予防に貢献する運動を意味する。
【0051】
同じく、図7に図示されたハムストリングスM5は、ヒトの身体セグメントにおける大腿部に備わった筋群である。ハムストリングスは、大腿二頭筋M5、半膜様筋、半腱様筋、そして大内転筋によってなる筋群である。大腿二頭筋M5の働きは、主として歩行時における蹴りだす力、推進力を生成する筋として知られている。よって、ハムストリングスを刺激する運動とは、歩行速度の維持と歩行機能の向上に貢献できる運動を意味する。
【0052】
吐水部3から吐水する足を屈曲させる水量は、入浴者Mが背中m1を第一の浴槽壁面2bに当接させ、足裏m2を吐水部3に対向させたときに、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節を同時に屈曲させることが可能な量であり、例えば、80〜300リットル/分である。尚、水流の大きさが80リットル/分未満であると、入浴者の足裏m2が吐水部3から離れないことがあり、300リットル/分を超えると、浴槽2から水が溢れ出すことがある。
【0053】
吐水される水量が110リットル/分を超えると吐水される噴流の押圧によって脚部移動距離が140mm以上になり、この条件を境に使用者が、水流による屈伸運動で運動感を感じることが確認されている。尚、モニター人数35名において、110リットル/分を超えると吐水で足部が140mm以上移動し、運動感を感じることを確認している。
【0054】
さらに屈伸運動において効果的で高い運動効果を得るには、150リットル/分程度の水流で運動を行うことが良く。さら好ましくは、180リットル/分程度の水流による運動が効果的である。なお、この水流の大きさは、一般家庭用浴槽を対象とした循環式浴槽において、マッサージ用に噴出される水流の大きさよりもかなり大きい。
【0055】
上述した通り、噴流の流量を増やすことで足裏を押圧する力を増加させるとともに屈伸運動の可動範囲を広くする。この噴流の増加に伴って、足裏に備わる感覚器と脚部に備わる腱器官をより効果的に刺激する事で歩行に働く機能を効果的促進させることが可能となる。
【0056】
また、利用する浴槽内の水(湯)の水温は常温でも使用できるが、水温を、36〜41℃帯域で使用するのが好ましい。例えば、温度が体温に近く、温熱の負荷が低い場合の36〜38℃では、吐水の水量を多くし屈伸運動の回動量を増やす、もしくは、吐水の周期を早くすることで屈伸運動の回数を増やすことにより運動強度を高め、効果的な運動を入浴者へ提供することが可能となる。
【0057】
一方、比較的短い時間で十分な運動を求める場合は、湯温度を高めに設定し(例えば39〜41℃)、温熱と運動の効果の相乗効果によって、湯の温度を低く設定した時に比べ、短い時間でエネルギー消費を起こし、効果的な運動を短い時間で行うことができる。
【0058】
温熱の効果と運動効果について、図8において説明する。
図8は、縦軸に脂肪の燃焼効率を示す呼吸商を示し、横軸に経過の時間を図示し、速歩と水流による他動運動を行った際の呼吸商を比較した値を示している。条件は、陸上での時速4.3キロ程のウォーキングと湯温39度で吐水量が180リットル/分程度の水流を選択した本発明による水中ウォーキングの場合を呼吸商より比較した。結果、高い脂肪燃焼効果が得られる領域に本発明による装置を用いた水中ウォーキングが、陸上のウォーキングより速い時間帯で突入したことを示している。上記結果は、本装置が温熱と運動の相乗効果によって高い運動効果を生成することを示すものである。
【0059】
本実施形態の効果について説明する。
このように、本実施形態によれば、入浴者Mに運動をさせることができる。この運動は外部から与えられる他力的な他動運動となる。一般的な浴槽内で入浴姿勢をとると、実は、使用者の取り得る入浴姿勢は、浮力に抗じるように姿勢を保持するために無意識のうちに微小な筋の活動を起こす。この微小な筋活動を誘発した状態で、入浴者は、噴流を吐水部3L及び3Rより交互に受ける。その結果、入浴者Mが噴流によって座った姿勢でありながら他動的に水中ウォーキング運動を行う。そして、脚部筋群や脚部を支える体幹部に備わる筋を活動させることができる。
【0060】
さらに、入浴者Mは、吐水部3より吐水される噴流と、入浴者自身に加わる浮力の働きが入浴姿勢のバランスを乱し、それに対して、入浴者は、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う。これによっても全身の運動をすることができる。このため、入浴者の意志力に依存する部分が少なく、長続きしやすい運動を本装置によって提供することが可能となる。また、この運動は入浴姿勢のまま行うことができるため、通常の入浴から運動へと移行がし易く、生活習慣の中で無理なく行える運動となる。この結果、運動を継続しやすい。
【0061】
上述の運動を35名が体験した。その結果、入浴中の水中ウォーキングが入浴姿勢から、水流によって無理なく行われること。そして継続して水中ウォーキングを行うと運動感、筋の使用感を感じる。また風呂から出たあと、足が温かい。ジョギングよりも運動感を感じる、といった運動の効果を体験者が体感していることを確認している。さらに、5分を経たずに、発汗作用が促進されることなども体感しており、ダイエット効果にも適しておりメタボリック対策になるなどの感想も得られた。
【0062】
更に本実施形態によれば、左脚用の吐水部3Lと右脚用の吐水部3Rから左右交互に入浴者の足裏へ噴流を吐水するため、入浴者は、脚部の屈伸運動に加え骨盤を中心とした旋回運動を起こすこととなる。その結果、脚部周りの筋群への運動効果に加えて、腹直筋、腹斜筋そして背筋群などへの運動効果が得られることを確認している。このように、上述の運動を浴槽内で行うことにより、脚部のみならず身体の広い範囲に対しての運動となり、効果的な運動を入浴者が得られることができる。
【0063】
更に本実施形態によれば、入浴者は、両足の吐水部3L及び3Rから吐水される水量に応じて屈伸運動より得る運動感が異なる。図9に示す実線Lは、吐水部3からの噴流によって入浴者が屈伸運動を起こった時の脚部が噴流によって第二の浴槽壁面から離れて移動する距離と吐水の流量との関係を表している。
【0064】
実線Lに示すように、足部の移動距離と吐水の流量には相関関係があり、吐水量が多くなると脚部移動量が増える。足部の異動距離が第二の浴槽壁面より離れるのは80リットル/分程度より、足部の移動開始し屈伸運動を行える。より効果的な運動を入浴者が行うには、吐水量を110リットル/分とするとよい。
【0065】
本実施例では、足部の移動距離は140mm程度となっていた。さらにより効果的な運動を得ようとすると、入浴者は吐水量、180リットル/分を選択し、さらに高い効果的な運動を得ようとすると、200リットル/分となるように水量を調節してもよい。その際の脚部の移動距離は250mm〜300mm程度となっていることが実験より分かっている。
【0066】
本具体例においては、浴槽2内に水(湯)Wを溜めた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。そして、制御部4の操作ボタンを操作することにより、浴槽装置11による運動の実行時間及び屈伸運動の周期を任意に設定する。なお、制御部4の中に予め複数の種類の運動モードが設定されており、入浴者が好みの運動モードを選択するようにしてもよい。
【0067】
例えば、入浴者が、運動負荷の高いモードを選択すると、タイマーが比較的短い周期で吐水する状態、吐水しない状態へと水量を切替える制御を、制御部5から吐水駆動部4に対して出力する。又は、運動時間及び運動周期はタイマーが自動的に設定してもよい。例えば、湯の設定温度が39℃であるとき、タイマーは、1セットの運動時間を10分間に設定する。
このように、本具体例によれば、運動の負荷を入浴者の好みに応じて任意に設定することができる。本具体例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図10は、第1の実施形態に係る浴槽装置の変形例を例示する模式的断面図である。図10に示すように、本実施形態に係る浴槽装置11においては、前述の第1の実施形態に係る浴槽装置1(図1参照)に対して、吐水駆動部4が分配部41を備えることが異なる。吐水駆動部4に含まれる分配部41は第一の吐水部3L及び第二の吐水部3Rと接続されている。
【0069】
また、吐水駆動部4に含まれる分配部41は、第一の吐水部3Lと第二の吐水部3Rからの吐水する水量を調節する。その際、第一の吐水部3Lで“噴流を減少させる過程”の場合、所定噴流値になるまでに、第二の吐水部3Rにおいては、“噴流を増加さえる過程”となり足裏が吐水部から離れるように調節される。吐水駆動部4に含まれる分配部41の動作は、制御部5の信号によって制御される。
【0070】
図11は、本実施形態に係る浴槽装置11の動作を例示する模式的平面図であり、左足裏に配置された第一の吐水部3L及び右足裏側に配置された第二の吐水部3Rから噴流が交互に噴出される場合を示す。まず、吐水駆動部4、分配部41及び制御部5を作動させる。これにより、吐水駆動部4が浴槽2内の水を吸入口4sから汲み上げて水流を生成する。そして、吐水駆動部4に含まれる分配部41が、制御部5からの指令を受けて第一の吐水部3L及び第二の吐水部3Rより交互に噴出される噴流水量を調節する。
【0071】
吐水駆動部4に含まれる分配部41の働きによって第一の吐水部3L及び第二の吐水部3Rに水流を分配され、入浴者Mは、吐水部3L及び3Rより交互に吐水される噴流を左右足裏に受けることで水中ウォーキングを行う。また、吐水駆動部4に含まれる分配部41は、切替弁、切替バルブ、そして、電磁弁などが代用される。また、分配部41の制御には、シーケンサー、タイマーなどを用いる。
【0072】
尚、切替弁とポンプを用いて説明したが、本実施例は上記内容に限られるものではない。例えば、流路を切替える方法に、ポンプの回転方向を正転と反転させる場合もある。または、駆動部を用いずに逆支弁をつかうことで、配管を流れる噴流の抵抗を使うことで切替るものであってもよい。さらには、電磁弁やボールバルブなどをポンプの吐水口に備えることで噴流の流路を切替える機構を備えるものであっても良い。
【0073】
次に図12を用いて本実施形態の動作について説明する。
図12の(a)から(e)は、横軸に時間をとって本実施形態に係る浴槽装置1からの吐水量を例示するグラフ図であり、(a)の縦軸は第一の吐水部3Lからの吐水量を表し、(b)の縦軸は第二の吐水部3Rの吐水量を表す。(c)の縦軸は左足の伸展屈曲の状態を表し、(d)の縦軸は、右足の伸展屈曲の状態を表す。そして、(e)の縦軸は両吐水部から吐水される合計吐水量の理論値を表す。
【0074】
図12の(a)と(b)から、吐水状態の時間変化について説明する。
ある時刻t1において、第一の吐水部3Lから吐水する水量は、所定値Qa以上であり、一方、第二の吐水部3Rから吐水する水量は、脚部を屈曲させない状態である。次に、t2時刻において、第一の吐水部3Lから吐水する水量は、減少させていく過程において、第一の吐水部3Lから吐水が所定噴流値Qbになるまでに、第二の吐水部3Rから吐水する水量を増加させ、右足裏が吐水部から離れる。
【0075】
次に、t3時刻において、第一の吐水部3Lから吐水する水量は、脚部が屈曲しない状態となり、第二の吐水部3Rから吐水する水量は、所定値Qa以上で吐水する状態となる。次に、t4時刻において、第二の吐水部3Rから吐水する水量が、減少させていく過程において、第二の吐水部3Rから吐水する水量が所定噴流値Qbになるまでに、第一の吐水部3Lから、噴流を増加させ左足裏が吐水部から離れるようになる。
【0076】
時刻t2の区間、時間t4区間に示される通り、第一の吐水部3Lから噴流を増加させる過程と第二の吐水部3Rから吐水を減少させる過程、もしくは、第一の吐水部3Lから噴流を減少させる過程と第二の吐水部3Rから吐水を増加させる過程の時間間隔は、同時となる。この時刻t2及びt4での吐水の方法が、左右足が連続して交互に振り出すことを実現させる。
【0077】
時刻t2及びt4での吐水の方法が、左右足を連続して交互に振り出すことを図12の(c)と(d)より説明する。t2時刻において、第一の吐水部3Lから吐水する水量が、減少させていく過程において、第一の吐水部3Lからの吐水が所定噴流値Qb以上の状態で、第二の吐水部3Rから、噴流を増加させる。この時、入浴者の左脚部の足関節、膝関節及び股関節は、屈曲した状態から徐々に伸展状態へと移行し、入浴者の右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態から徐々に屈曲状態へと移行する。
【0078】
このとき、左足裏を押圧する力が、水量の低下と共に弱くなるため、脚部の足関節、膝関節及び股関節が自然に伸び、左足部は第二の浴槽壁面2bに向かって移動する状態となる。左足裏への吐水の水量が減少する際、水の慣性力が働くため、左足部の移動は吐水の減少過程より遅れて伸展する。一方、右足裏への吐水の水量が増加する過程では、吐水駆動部41より高い圧力で噴流が吐水されるため、吐水変化と足部の移動に差は殆どない。そのため、左右足の伸展の状態と屈曲の状態は、相反的な動きにならない(図12(c)と(d))。
【0079】
同様に、t4時刻でも、第二の吐水部3Rから、噴流を減少させていく過程において、第一の吐水部3Rからの吐水が所定噴流値Qb以上の状態で、第一の吐水部3Lから、噴流を増加させる。この時、入浴者の右脚部の足関節、膝関節及び股関節は、屈曲した状態から伸展した状態へと移行し、また、左脚部の足関節、膝関節及び股関節は、伸展した状態から徐々に屈曲状態へと移行する。その際、左右足の伸展の状態と屈曲の状態は、相反的な動きにならない。
【0080】
このような左右足の伸展の状態と屈曲の状態が、少しの遅れをもって行われる動作は、より陸上のウォーキング動作に近くなる。陸上でのウォーキング動作を考えると地面に足を支持する状態を意味する立脚期と足を振り出し空中を動いている状態を意味する遊脚期の比率は6割、4割となっていることが広く知られている。それ故、左右の伸展屈曲の動作に遅れを持たすことで、座った姿勢でありながらより歩行に近い水中ウォーキング動作を使用者へ提供することとなる。それにより、運動効果、運動のしやすさなどが向上すると考えられる。さらに図12(e)に示す合計の吐水量は、一定となることが示されている。これによりポンプの回転数の変動が少なく、低周波のうなるような騒音を小さくすることを可能にする。
【0081】
次に、第2の実施形態の変形例について説明する。
図13は、第1の実施形態に係る浴槽装置の変形例を例示する模式的断面図である。図13に示すように、本実施形態に係る浴槽装置11においては、前述の第1の実施形態に係る浴槽装置1(図1参照)に対して、第一の浴槽壁面2aと第二の浴槽壁面2b、そして、底面2cに接する浴槽側壁面2dに、浴槽手すり7が備わっていることが異なる。
【0082】
この第1の実施形態の変形例において、入浴者Mは、手すり7を握ることで第一の浴壁面2aに背中m1を接することのない入浴姿勢を保持する。この入浴姿勢において、入浴者Mは、吐水部3より吐水される噴流を受けて水中ウォーキングを行う。この際、噴流が足裏を押圧する力は、下肢を伝わり、上肢に伝達される。すなわち、手すり7を力点として前腕部、上腕部において力に抗じようと腕周りの筋群も活動することとなる。もちろん、下肢と上肢の間に位置する腹回りの筋群も活動する。よって、全身運動を可能にする。
【0083】
さらに、入浴者Mは、手すり7を使うことで、背中m1を第一の浴槽壁面2aにもたれることが出来ない場合においても、浴槽2のサイズと関係なく吐水部3L及び3Rより吐水される噴流によって、座った姿勢でありながら水中ウォーキングを行うことが可能となる。尚、手すり7に変わり浴槽リムを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図である。
【図3】本発明の本実施形態に係る浴槽装置からの時間と吐水量を例示するグラフ図である。
【図4】本発明の本実施形態に係る使用者の脚部の伸展および屈曲している状態を例示する図である。
【図5】本発明の浴槽装置によって起こされる噴流の流量変化とその噴流によって起こされる足部の移動量変化を例示する図である。
【図6】本発明の本浴槽装置によって起こされる様々な筋群の活動を説明する図である。
【図7】本発明の本浴槽装置によって起こされる筋の活動を説明する図である。
【図8】本発明の浴槽装置によって起こされる運動効果を説明する図である。
【図9】本発明の浴槽装置によって起こされる噴流の流量と脚部の移動量との関係を例示する図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図である。
【図12】本発明の本実施形態に係る浴槽装置からの時間と吐水量を例示するグラフ図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る浴槽装置の変形例を例示する模式的断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 11 21 浴槽装置、2 浴槽、2a 第一の浴槽壁面、2b 第二の浴槽壁面、2c底面、3 吐水部、3L 第一の吐水部、3R 第二の吐水部、4 吐水駆動部、41 分配部、4s 吸入口、5 制御部、60 浴室ユニット、61 防水パン、62 壁パネル、7 手すり、M 入浴者、m1 背中、m2 足、W 水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽に設けられ
背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、
前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面と、
前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する第一の吐水部及び第二の吐水部と、
前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水するための吐水駆動部と、
前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水する噴流の状態を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記噴流の噴流量を所定値以上に増加させる過程で足を屈曲させることを可能とし、
かつ前記噴流を減少させる過程で屈曲した足を伸展させることを可能とし、
前記第一の吐水部からの噴流を減少させる過程において、所定噴流値以上の状態で
前記第二の吐水部からの噴流を増加させるように制御することを特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記制御部の制御が、前記第一の吐水部および前記第二の吐水部に対して、交互に行われることを特徴とする請求項1に記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記左右の足を屈曲および伸展を行わせる際に、前記第一の吐水部および前記第二の吐水部から前記左右の足が同時に離間している状態を含むように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記吐水駆動部は、前記第一の吐水部と前記第二の吐水部へ噴流を分配する分配部を有し、
前記制御部の制御は、前記分配部に対して行われることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の浴槽装置。
【請求項5】
前記第一の吐水部と前記第二の吐水部が水平方向に配列された一対の吐水部であって、
前記第一の吐水部と前記第二の吐水部が水平方向に配列されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の浴槽装置。
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽に設けられ
背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、
前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面と、
前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する第一の吐水部及び第二の吐水部と、
前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水するための吐水駆動部と、
前記第一の吐水部及び前記第二の吐水部から吐水する噴流の状態を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記噴流の噴流量を所定値以上に増加させる過程で足を屈曲させることを可能とし、
かつ前記噴流を減少させる過程で屈曲した足を伸展させることを可能とし、
前記第一の吐水部からの噴流を減少させる過程において、所定噴流値以上の状態で
前記第二の吐水部からの噴流を増加させるように制御することを特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記制御部の制御が、前記第一の吐水部および前記第二の吐水部に対して、交互に行われることを特徴とする請求項1に記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記左右の足を屈曲および伸展を行わせる際に、前記第一の吐水部および前記第二の吐水部から前記左右の足が同時に離間している状態を含むように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記吐水駆動部は、前記第一の吐水部と前記第二の吐水部へ噴流を分配する分配部を有し、
前記制御部の制御は、前記分配部に対して行われることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の浴槽装置。
【請求項5】
前記第一の吐水部と前記第二の吐水部が水平方向に配列された一対の吐水部であって、
前記第一の吐水部と前記第二の吐水部が水平方向に配列されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の浴槽装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−46377(P2010−46377A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215022(P2008−215022)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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