説明

海苔網設置具及び同海苔網設置具で使用される浮動環

【課題】海苔網設置具に使用される浮動環の支柱への装着作業の作業性を向上させること。
【解決手段】本発明では、海底に立設した支柱に浮動環の本体部を昇降自在に遊嵌し、前記浮動環に形成した連結部を養殖用の海苔網に連結具を介して接続するとともに、前記浮動環に形成した取付部を前記支柱に取付具を介して接続した海苔網設置具において、前記浮動環は、開閉可能に連結した一対の本体片で前記本体部を形成するとともに、各本体片に前記取付部を形成する取付片を前記本体部に連動して開閉可能に形成することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔網設置具及び同海苔網設置具で使用される浮動環に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、海苔の養殖には、海中に設置した海苔網設置具が広く利用されている。この海苔網設置具は、海底に支柱を立設し、その支柱に浮動環の本体部を昇降自在に遊嵌し、浮動環に形成した連結部を養殖用の海苔網に連結具を介して接続するとともに、浮動環に形成した取付部を支柱に取付具を介して接続していた。
【0003】
そして、従来の海苔網設置具においては、浮動環として円環状に一体成型されたものが広く使用されていた。
【0004】
ところが、円環状に一体成型された浮動環では、支柱に装着する際に、支柱の上端部から浮動環の本体部を支柱に挿入しなければならず、浮動環の支柱への装着が満潮時に限られ、また、作業性が悪かった。
【0005】
そのため、支柱の中途部から浮動環を装着できるように浮動環の本体部を開閉可能に形成した浮動環が考案されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−8565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の浮動環では、本体部が開閉可能に形成されたことで支柱の中途部から装着できるようになっているものの、支柱に浮動環を装着した後に、浮動環の取付部に取付具を接続しなければならず、取付作業が煩雑となり、依然として取付作業の作業性が良好なものとはいえなかった。
【0008】
特に、上記従来の浮動環では、一対の本体片を開放したり閉塞したりする際に、その開放動作や閉塞動作を阻止できる構造とはなっていなかったために、開放動作時や閉塞動作時に不用意に浮動環に力が作用してしまい、浮動環が破損してしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、請求項1に係る本発明では、海底に立設した支柱に浮動環の本体部を昇降自在に遊嵌し、前記浮動環に形成した連結部を養殖用の海苔網に連結具を介して接続するとともに、前記浮動環に形成した取付部を前記支柱に取付具を介して接続した海苔網設置具において、前記浮動環は、開閉可能に連結した一対の本体片で前記本体部を形成するとともに、各本体片に前記取付部を形成する取付片を前記本体部に連動して開閉可能に形成することにした。
【0010】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記浮動環は、各取付片に前記本体部を閉塞した状態で互いに当接してさらなる閉塞動作を阻止する閉塞阻止部を形成することにした。
【0011】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記浮動環は、各取付片に前記本体部を開放した状態で前記本体片に当接してさらなる開放動作を阻止する開放阻止部を形成することにした。
【0012】
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項1〜請求項3のいずれかに係る本発明において、前記浮動環は、各本体片に前記連結部を形成する連結片を形成し、前記本体部を閉塞した状態で連通する前記連結具を接続するための連通孔を各連結片に形成することにした。
【0013】
また、請求項5に係る本発明では、養殖用の海苔網の設置に使用される浮動環であって、海底に立設した支柱に昇降自在に遊嵌される本体部と、前記海苔網に連結具を介して接続される連結部と、前記支柱に取付具を介して接続される取付部とを形成した浮動環において、開閉可能に連結した一対の本体片で前記本体部を形成するとともに、各本体片に前記取付部を形成する取付片を前記本体部に連動して開閉可能に形成することにした。
【0014】
また、請求項6に係る本発明では、前記請求項5に係る本発明において、各取付片に前記本体部を閉塞した状態で互いに当接してさらなる閉塞動作を阻止する閉塞阻止部を形成することにした。
【0015】
また、請求項7に係る本発明では、前記請求項5又は請求項6に係る本発明において、各取付片に前記本体部を開放した状態で前記本体片に当接してさらなる開放動作を阻止する開放阻止部を形成することにした。
【0016】
また、請求項8に係る本発明では、前記請求項5〜請求項7のいずれかに係る本発明において、各本体片に前記連結部を形成する連結片を形成し、前記本体部を閉塞した状態で連通する前記連結具を接続するための連通孔を各連結片に形成することにした。
【発明の効果】
【0017】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0018】
すなわち、本発明では、海苔網設置具に使用される浮動環において、開閉可能に連結した一対の本体片で本体部を形成するとともに、各本体片に取付部を形成する取付片を本体部に連動して開閉可能に形成しているために、支柱に浮動環を装着する際に浮動環の本体部を開放状態とすると同時に取付部も開放状態となり、これにより、取付部に取付具を係止でき、その後、浮動環の本体部を閉塞状態とすると同時に取付部も閉塞状態となり、これにより、本体部を支柱に装着すると同時に取付部に取付具を装着することができるので、浮動環の装着作業の作業性を向上させることができる。
【0019】
特に、各取付片に本体部を閉塞した状態で互いに当接してさらなる閉塞動作を阻止する閉塞阻止部を形成した場合には、閉塞動作時に不用意に浮動環に力が作用してしまうのを未然に防止することができ、閉塞動作時の浮動環の破損を防止することができる。
【0020】
また、各取付片に本体部を開放した状態で本体片に当接してさらなる開放動作を阻止する開放阻止部を形成した場合には、開放動作時に不用意に浮動環に力が作用してしまうのを未然に防止することができ、開放動作時の浮動環の破損を防止することができる。
【0021】
また、各本体片に連結部を形成する連結片を形成し、本体部を閉塞した状態で連通する連結具を接続するための連通孔を各連結片に形成した場合には、本体部を閉塞した状態で連結部に連結具を接続することによって浮動環の開放動作を阻止することができ、浮動環を閉塞状態に保持して支柱から外れてしまうのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明に係る海苔網設置具の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1に示すように、海苔網設置具1は、海底2に支柱3を立設し、この支柱3に概略円環形状の浮動環4を昇降自在に遊嵌し、この浮動環4に養殖用の海苔網5を連結具6を介して接続するとともに、浮動環4に支柱3を取付具7を介して接続している。
【0024】
ここで、連結具6は、海苔網5に連結した連結紐8と、連結紐8に連結した連結フック9とで構成している。また、取付具7は、支柱3の上部に取付けた上限規制体10と、支柱3の下部に取付けた下限規制体11と、これら上限規制体10と下限規制体11との間に張設した取付紐12とで構成している。
【0025】
また、浮動環4には、支柱3に昇降自在に遊嵌される本体部13と、海苔網5に連結具6を介して接続される連結部14と、支柱3に取付具7を介して接続される取付部15とを形成している。
【0026】
この浮動環4は、図2に示すように、本体部13を一対の本体片16,16で形成し、この一対の本体片16,16を回転軸17で開閉可能に連結している。図中18は軸止めである。ここでは、各本体片16を同一形状として、製造コストの低廉化を図っている。
【0027】
各本体片16は、図2及び図3に示すように、中央部を中空半円環形状に形成して浮力を発生可能に形成し、一端部に回転軸17を挿通する軸孔19を形成するとともに取付部15を形成する半円環形状の取付片20を形成し、一方、他端部に係止突起21と係止孔22とを軸孔19を中心に同心円上に形成するとともに連結部14を形成する半円板形状の連結片23を形成し、連結片23に連結具6の連結フック9を接続するための貫通状の連通孔24を形成している。
【0028】
各取付片20は、先端部に突起25を形成し、突起25の前端面には、浮動環4の本体部13を閉塞した状態(図4に一点鎖線で示す状態)で互いに当接してさらなる浮動環4の閉塞動作を阻止する閉塞阻止部26を形成しており、突起25の後端面には、浮動環4の本体部13を開放した状態(図4に実線で示す状態)で本体片16の外側面に当接してさらなる浮動環4の開放動作を阻止する開放阻止部27を形成している。
【0029】
また、連結片23に形成した連通孔24は、浮動環4の本体部13を閉塞した状態(図4に一点鎖線で示す状態)で互いに連通するようになっている。
【0030】
以上に説明したように、浮動環4は、一対の本体片16,16を回転軸17で回転自在に連結することで、図4に示すように、開閉自在となっている。
【0031】
これにより、浮動環4は、本体片16,16を回転させて本体部13を開放した状態とすることで、支柱3の中途部において浮動環4の本体部13の内側に支柱3を挿入させることができる。
【0032】
しかも、浮動環4は、回転軸17を挟んで本体片16、16の反対側に本体片16,16とは逆向きに湾曲する取付片20,20を形成しているために、本体部13の開閉に連動して取付部15も開閉するので、本体片16,16を回転させて本体部13を開放すると、それに連動して取付片20,20も回転して取付部15も開放され、この状態で取付片20,20の内側に取付具7の取付紐12の中途部を挿入させることができる。
【0033】
このときに、浮動環4は、各取付片20,20に本体部13を開放した状態で本体片16,16に当接してさらなる開放動作を阻止する開放阻止部27,27を形成しているために、浮動環4の開放動作時に不用意に浮動環4に力が作用してしまうのを未然に防止することができ、開放動作時の浮動環4の破損を防止することができる。
【0034】
その後、浮動環4は、本体片16,16を逆向きに回転させて本体部13を閉塞した状態とすることで、支柱3の中途部に浮動環4の本体部13を装着することができるとともに、それに連動して取付片20,20も逆向きに回転して取付部15も閉塞され、取付具7の取付紐の中途部に浮動環4の取付部15を装着することができる。
【0035】
このように、上記海苔網設置具1に使用される浮動環4では、開閉可能に連結した一対の本体片16,16で本体部13を形成するとともに、各本体片16,16に取付部15を形成する取付片20,20を本体部13に連動して開閉可能に形成しているために、支柱3に浮動環4を装着する際に浮動環4の本体部13を開放状態とすると同時に取付部15も開放状態となり、これにより、取付部15に取付具7を係止でき、その後、浮動環4の本体部13を閉塞状態とすると同時に取付部15も閉塞状態となり、これにより、本体部13を支柱3に装着すると同時に取付部15に取付具7を装着することができるので、浮動環4の装着作業の作業性を向上させることができる。
【0036】
このときに、浮動環4は、各取付片20,20に本体部13を閉塞した状態で互いに当接してさらなる閉塞動作を阻止する閉塞阻止部26,26を形成しているために、浮動環4の閉塞動作時に不用意に浮動環4に力が作用してしまうのを未然に防止することができ、閉塞動作時の浮動環4の破損を防止することができる。
【0037】
また、浮動環4は、各本体片16,16に連結部14を形成する連結片23,23を形成するとともに、本体部13を閉塞した状態で連通する連通孔24,24を各連結片23,23に形成しているために、浮動環4の本体部13を閉塞した状態で連結部14の連通孔24,24に連結具6の連結フック9を接続することによって浮動環4の開放動作を阻止することができ、浮動環4を閉塞状態に保持して支柱3から外れてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る海苔網設置具を示す斜視図。
【図2】浮動環を示す6面図。
【図3】本体片を示す6面図。
【図4】浮動環の動作を示す説明図。
【符号の説明】
【0039】
1 海苔網設置具 2 海底
3 支柱 4 浮動環
5 海苔網 6 連結具
7 取付具 8 連結紐
9 連結フック 10 上限規制体
11 下限規制体 12 取付紐
13 本体部 14 連結部
15 取付部 16 本体片
17 回転軸 18 軸止め
19 軸孔 20 取付片
21 係止突起 22 係止孔
23 連結片 24 連通孔
25 突起 26 閉塞阻止部
27 開放阻止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底に立設した支柱に浮動環の本体部を昇降自在に遊嵌し、前記浮動環に形成した連結部を養殖用の海苔網に連結具を介して接続するとともに、前記浮動環に形成した取付部を前記支柱に取付具を介して接続した海苔網設置具において、
前記浮動環は、開閉可能に連結した一対の本体片で前記本体部を形成するとともに、各本体片に前記取付部を形成する取付片を前記本体部に連動して開閉可能に形成したことを特徴とする海苔網設置具。
【請求項2】
前記浮動環は、各取付片に前記本体部を閉塞した状態で互いに当接してさらなる閉塞動作を阻止する閉塞阻止部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の海苔網設置具。
【請求項3】
前記浮動環は、各取付片に前記本体部を開放した状態で前記本体片に当接してさらなる開放動作を阻止する開放阻止部を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の海苔網設置具。
【請求項4】
前記浮動環は、各本体片に前記連結部を形成する連結片を形成し、前記本体部を閉塞した状態で連通する前記連結具を接続するための連通孔を各連結片に形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の海苔網設置具。
【請求項5】
養殖用の海苔網の設置に使用される浮動環であって、海底に立設した支柱に昇降自在に遊嵌される本体部と、前記海苔網に連結具を介して接続される連結部と、前記支柱に取付具を介して接続される取付部とを形成した浮動環において、
開閉可能に連結した一対の本体片で前記本体部を形成するとともに、各本体片に前記取付部を形成する取付片を前記本体部に連動して開閉可能に形成したことを特徴とする浮動環。
【請求項6】
各取付片に前記本体部を閉塞した状態で互いに当接してさらなる閉塞動作を阻止する閉塞阻止部を形成したことを特徴とする請求項5に記載の浮動環。
【請求項7】
各取付片に前記本体部を開放した状態で前記本体片に当接してさらなる開放動作を阻止する開放阻止部を形成したことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の浮動環。
【請求項8】
各本体片に前記連結部を形成する連結片を形成し、前記本体部を閉塞した状態で連通する前記連結具を接続するための連通孔を各連結片に形成したことを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれかに記載の浮動環。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−11792(P2008−11792A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186672(P2006−186672)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506233003)株式会社システムソリューション (1)
【Fターム(参考)】