説明

海藻の収穫装置とその装置を使用した収穫方法

【課題】昆布等の比較的大型の海藻類を大量に生産して燃料として活用する事が検討されている。この実現のためには機械化が進んでいない昆布等の収穫作業の機械化を進め、収穫能力の確保と収穫作業の低コスト化が必要と考えられる。
【解決手段】モータ23等の動力を利用して海水中で海藻を刈取り、移送装置4により刈取った海藻を海面上の船1に移送する。モータ23等の動力を利用して海水中で海藻を刈取るため人手が省け、低コストで大量に収穫することができる。特に海水中で刈取ができるため、昆布等の多年生海藻の場合、養殖装置を長期間にわたり海中に係留したままで収穫が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昆布等の海藻の収穫に使用する収穫装置、およびその装置を使用した収穫方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年CO2問題対策の1つとして植物資源を燃料(いわゆるバイオ燃料)として活用する動きがあり、その中で植物資源の1つとして昆布等の海底または海水中に係留された養殖部材に生育する比較的大型の海藻類を大量に生産して活用することも検討されている。海藻類の生産量を拡大し、従来の穀物を使用したバイオ燃料とは異なるバイオ燃料を作るという構想である。この構想の実現のためには海藻類の大量生産に適した多くの新しい技術が必要と考えられ、収穫方法の改良もそのひとつと考えている。
【0003】
海藻類は従来周知のように主として食物として生産されているが、生産量は植物資源として大量に供給できるほど多くはない。さらにコストも高い。コストが高い原因のひとつに収穫作業に人手がかかっていることがある。海苔の様に生産規模が比較的大きく海面近くの養殖網で生育されるものについては図7に示すように海苔摘取装置Aを海苔採取船Sに据付け、ロータリーカッター100を原動機200で駆動しながら海苔網Nの下を潜らせるように移動させ海苔を収穫する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、植物資源としての利用が有望視されている昆布等の海底又は海水中に係留された養殖部材に生育する海藻の収穫に関しては前述したような機械化は進んでいない。船上からかぎ棹ですくい上げる、又は養殖ロープを船上に引き揚げ手作業で収穫する等人手により収穫がなされている。そのため、昆布等の海藻を大量に生産しようとした場合、収穫作業に多くの人手がかかりコストが高くなること以外にも、生産量によっては収穫作業能力により生産量が制約される懸念もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−269942
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の目的は、前述したような状況を踏まえ、海底又は海水中に係留された養殖部材に生育する海藻の収穫作業の機械化を低コストで実現し、昆布等の比較的大型の海藻類を大量に生産するための収穫能力の確保と収穫作業の低コスト化を可能にする収穫装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、海水中に生育する海藻を収穫する収穫装置であって、海面上を移動可能な移動手段と、動力を利用して海藻を刈取る刈取装置を有し、刈取装置は移動手段から吊下げられるか、又は移動手段に設置された支持手段により支持され移動手段の底部よりも深い海水中の海藻を刈取ることを特徴とする海藻の収穫装置である。昆布等の海水中に生育する海藻は、前述したように船上からかぎ棹ですくい上げる、又は養殖ロープを船上に引き揚げ手作業で収穫する等人手により収穫がなされているが、本発明ではモータ等の動力を利用して海水中で海藻を刈取るため人手が省け、低コストで大量に収穫することができる。又、海面上の移動手段よりも深い海水中で刈取ができるため、移動手段の位置に関わりなく刈取装置の深さ方向の位置を変えることで多様な種類の海藻の多様な条件での刈取が可能である。
【0007】
請求項2の発明は、刈取った海藻を海面上の移動手段に移送するための移送装置を有し、移送装置の一端が刈取装置に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の収穫装置である。移送装置の一端が刈取装置に接続されていることで、刈取られた海藻が自動的に移送装置に送られ移送作業に人手を必要としない。
【0008】
請求項3の発明は、刈取装置の位置を制御する位置制御装置が海面上の移動手段に設置され、刈取装置が移動手段から所定の深さ方向位置に吊下げられるか、支持手段により支持されることにより所定の深さ方向位置に制御されることを特徴とする収穫装置である。刈取装置の深さ方向の位置を任意に制御できるため、海藻の位置に合わせ刈取る位置を任意に制御でき、必要により海藻の上部だけを刈取ることも、根に近い位置まで刈取ることもできる。
【0009】
請求項4の発明は、移送手段は揚水ポンプを有し、揚水ポンプは刈取装置又は海面上の移動手段に設置され、刈取られた海藻は揚水ポンプの水流により移送されることを特徴とする請求項1又は3に記載の収穫装置である。請求項2の発明とあわせ、刈取られた海藻が自動的に船上に送られるため移送作業に人手を必要としない。
【0010】
請求項5の発明は、刈取装置は海藻の上方一部分を切断して刈取ることを特徴とする請求項1から4に記載の収穫装置である。昆布のような葉から養分を吸収する多年生の海藻では根に近い部分をある程度残して葉の上方一部分を切断して刈取ることで、養分の吸収能力をある程度維持しつつ養殖装置を海中に係留したままで長期間収穫できることが期待できる。
【0011】
請求項6の発明は、刈取装置は複数の回転刈取刃を有し、複数の刈取刃がチェーン又はベルトにより動力が伝達され、刈取刃の数より少ない数の動力により駆動されることを特徴とする請求項1から5に記載の収穫装置である。動力であるモータ等の数を減らすことで設備コストと重量を低減できる。
【0012】
請求項7の発明は、刈取装置は回転刈取刃に対向したガイド部材を有し、ガイド部材の長手方向の長さが刈取刃の直径又は刈取刃が複数の場合直径の合計長さよりも長いことを特徴とする請求項1から6に記載の収穫装置である。ガイド部材の長手方向長さ(幅)が刈取刃の直径の合計長さより長いため、広い幅の海藻をガイド部材により狭い幅に集め直径の短い刈取刃で刈取ることができる。このため数の少ない直径の短い回転刃で広い幅を一度に刈取ることが可能であり、設備コストと重量を低減できる。
【0013】
請求項8の発明は、刈取装置のハウジングは、刈取方向の側端面は開放されており、ハウジングの中央又は開放端と逆の側端面が刈取方向に垂直な板で閉じられた空間をハウジング内に形成していることを特徴する請求項1から7に記載の収穫装置である。船の移動により海藻を前記空間内に取り込み刈取刃で切断することができる。前記空間は板で中央又は片方を閉じられているため海水は移動手段の移動後方に通り抜けることはできない。このため、刈取った海藻を前記空間外への流出損失なく移送装置に移送することができる。又、中央で前後の2つの空間に仕切った場合は船の前進と後進の両方で刈取が可能である。
【0014】
請求項9の発明は、刈取装置は刈取られた海藻の長さをさらに短く切断するための切断手段を有していることを特徴とする請求項1から8に記載の収穫装置である。海藻を移送する移送管の入口の手前で海藻をさらに細かく切断することで移送管内の海藻の移送がスムーズになると共に、後工程での移送や保管等の取り扱いが容易になる。
【0015】
請求項10の発明は、刈取装置はハウジングの下面部にガード部材又は車輪を有していることを特徴とする請求項1から9に記載の収穫装置である。底面部に設けられた車輪又はガード部材により下側の障害物との衝突時に刈取装置を守るとともに、養殖網等を切断してしまうことを防いでいる。又、海藻を根に近い部分で切断したい場合は、ガード部材又は車輪を海底につけて刈取を行うことも可能である。
【0016】
請求項11の発明は、海水中の刈取作業を監視する監視手段を有していることを特徴とする請求項1から10に記載の収穫装置である。モニタテレビ等により海水中の刈取作業を監視しながら刈取を行うことができるので、的確な作業が行うことができる。
【0017】
請求項12の発明は、海水中でのみ刈取刃が駆動される安全手段を有していることを特徴とする請求項1から11に記載の収穫装置である。間違えて刈取装置のモータの電源を入れても海面上ではモータが駆動されないため刈取刃で作業者を傷つける可能性が小さい。
【0018】
請求項13の発明は、移動手段の底面に海水側に通じる開口を有する区画を設けるとともに区画内に網又は複数の孔の開いた箱で構成され海水が容易に進入可能な収容器を設置し、開口を経由して移動手段の外部の海水と連通した収容器の内部の海面下に揚水ポンプからの吐出口を配置することを特徴とする請求項1から12に記載の収穫装置である。揚水ポンプの吐出口が移動手段外部の海水と連通した収容器内部の海水中に設定されるため揚水ポンプと移送管と吐出口とで海面の高さが等しいサイフォンが構成され、海水を移送する揚水ポンプの必要電流を低減することができる。
【0019】
請求項14の発明は、複数の収容器が重ねて移動手段内の区画内に設置され、収容器のひとつが海藻で満たされると区画から取り出され、区画内に残された別の収容器の内部に吐出口が移されることを特徴とする請求項13に記載の収穫装置である。これにより、限られた大きさの区画と複数の収容器を使用して刈取作業の中断をせず大量の海藻を収容することができる。
【0020】
請求項15の発明は、移送装置は刈取装置に着脱自在な第二収容器を有し、第二収容器を刈取装置に接続した状態で刈取った海藻を収容した後、第二収容器を刈取装置から分離して移動手段に移送することを特徴とする請求項2から12に記載の収穫装置である。刈取装置で刈取った海藻を第二収容器に収容して移動装置に移送するため移送管を廃止でき揚水ポンプの必要電流を低減できるとともに移送管で海藻が詰まる可能性もなくすことができる。さらに、揚水ポンプも廃止し、刈取装置のハウジングの上面を開放することで海藻を細かく再切断することなく第二収容器に収容することもできる。
【0021】
請求項16の発明は、移送装置は刈取装置に接続した第一収容器と、第一収容器と接続と分離が可能な第二収容器と第二収容器の台座を有し、第一収容器の上蓋は第二収容器の台座と接続した場合に開き、分離した状態では閉じることを特徴とする請求項15に記載の収穫装置である。第二収容器が刈取装置に接続していない時は海藻を第一収容器に収容できるため、第二収容器を移動装置に移送する時も刈取作業を中断せずに継続することができる。
【0022】
請求項17の発明は、第二収容器と台座は接続と分離が可能であり、第二収容器は台座から分離して移動手段に移送することができることを特徴とする請求項15又は16に記載の収穫装置である。台座と第二収容器が分離した時点で第二収容器を移動装置に移送することができ、台座には海藻が収容されていない別の第二収容器を新しく設置することができるため刈取作業を中断することなく大量の海藻を移動装置に収容することができる。
【0023】
請求項18の発明は、請求項1から17に記載された海藻の収穫装置のいずれか1項の収穫装置を使用した海藻の収穫方法である。この発明の主要な効果は、海底又は海水中に係留された養殖部材に生育する海藻の収穫作業の機械化が低コストで実現でき、昆布等の比較的大型の海藻類を大量に生産するための収穫能力の確保と収穫作業の低コスト化が可能になることである。
【発明の効果】
【0024】
昆布等の海水中に生育する海藻は、前述したように船上からかぎ棹ですくい上げる、又は養殖ロープを船上に引き揚げ手作業で収穫する等人手により収穫がなされているが、本発明ではモータ等の動力を利用して海水中で海藻を刈取るため人手が省け、低コストで大量に収穫することができる。又、海面上の移動手段よりも深い海水中で刈取ができるため、移動手段の位置に関わりなく刈取装置の深さ方向の位置を変えることで多様な種類の海藻の多様な条件での刈取が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明に係る収穫装置の全体概要説明図であり、横から見た図である。
【図1B】本発明に係る収穫装置の全体概要説明図であり、上から見た図である。
【図2A】刈取装置と移送装置の一部の詳細を示した図であり、刈取りと移送装置の縦断面図である。
【図2B】刈取装置と移送装置の一部の詳細を示した図であり、図2の〈2〉B1-〈2〉B2矢視である。
【図3A】海藻の収容方法を変更した事例(第二実施事例)の全体概要説明図であり、横から見た図である。
【図3B】海藻の収容方法を変更した事例(第二実施事例)の全体概要説明図であり、上から見た図である。
【図4A】海藻の収容方法を変更した他の事例(第三実施事例)の全体概要説明図であり、横から見た図である。
【図4B】海藻の収容方法を変更した他の事例(第三実施事例)の全体概要説明図であり、上から見た図である。
【図5A】第三実施事例の刈取装置2と移送装置4の一部の詳細図であり、側面から見た中央断面図である。
【図5B】第三実施事例の刈取装置2と移送装置4の一部の詳細図であり、刈取進行方向に見た中央断面図である。
【図6A】コーナ固定具とその周辺の説明図である。
【図6B】中央固定具とその周辺の説明図である。
【図7】従来技術の一実施例を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は収穫装置の全体概要説明図であり、図1(A)は横から見た図で、図1(B)は上から見た図である。1は移動手段である船である。船1の船尾11に後述する刈取装置2を吊下げるための支柱12が設置されている。支柱12にローラ13と船尾11の角部に丸みをつけた凹部14が設置されている。ローラ13と凹部14は刈取装置2と移送装置4の吊下位置の移動に伴うワイヤ32と移送管42の動きを滑らかにするものであり、吊下位置の移動に支障がなければローラ13は丸パイプであってもよい。ローラ13の位置は刈取装置2の移動に支障ないことと、刈取作業をしていない時に刈取装置2を船1に固定しておくために便利なことを考え設定されている。本実施例では刈取装置2を巻き上げた状態で船1に刈取装置2を引き寄せ船尾11の甲板上に固定できるようにしている。本実施例では、支柱12を船尾11側に設けているが、船首側に設けてもよい。
【0027】
15は刈取った海藻を収容するための収容器であり、金網とフレームで構成されている。刈取られた海藻は移送装置4の移送管42を経由して海水とともに船上に移送されてくる。移送管42の出口を収容器15の中に挿入しておくことで、海藻が海水とともに収容器15に流入し、海水は金網から排出され、海藻が収容器15に残ることで海藻が人手をかけずに収容器15に収容される。排出された海水は船1に設けられた排水孔などを経由して海に排出される。海藻の収容器15は本実施例に限られず船の構造、港での陸揚げ等の形態により適当な手段が選択される。
【0028】
2は刈取装置であり、ハウジング21内に、モータ23により駆動される刈取刃22を有し、刈取刃22により海藻を切断して刈取る。刈取装置2の詳細は後述するが、刈取方向(図1(A)の左方向)に対してハウジング21の両端は開放されており、下面も刈取方向に対して部分的に開放されているため船1の移動により海藻をハウジング21内の空間に取り込み、刈取刃22で切断することができる。この空間は中央を中央板21dで仕切られているため切断された海藻はこの空間を通り抜けることなく移送装置4の揚水ポンプ41により吸引される。又、刈取装置2は中央板21dに対して対称に作られているため逆の方向(船1の後進側)にも刈取ることができる。尚、中央板21dは請求項8に記載された板に相当する。
【0029】
3は位置制御装置であり、船上に設置された位置制御装置3のウインチ31により、刈取装置2を吊下げているワイヤ32の送出長さを変えることで海藻を切断する深さ方向の位置を制御する。切断する目標位置は海藻の種類、刈取頻度等により決められる。例えば昆布のような葉から養分を吸収する多年生の海藻では根に近い部分をある程度残して葉の上方一部分を切断して刈取ることで、養分の吸収能力をある程度維持しつつ養殖装置を海中に係留したままで長期間収穫できることが期待できる。
【0030】
位置制御装置3は本実施例ではウインチ31とワイヤ32により構成されているが、他の方法としては、スライド式に長さを制御できる柱状の支持手段に刈取装置を固定して用いてもよいし、クレーンに支持手段を設置したものであってもよい。
【0031】
4は移送装置であり、刈取装置2により刈取られた海藻を船上に移送するものである。詳細は後述するが、揚水ポンプ41と移送管42とで構成されている。揚水ポンプ41の一端が刈取装置2に接続され他端は移送管42に接続されているため、刈取られた海藻が自動的に移送装置4に送られ移送作業に人手を必要としない。揚水ポンプ41は切断手段を兼用した軸流ポンプであり、海藻は移送途中で軸流ポンプの羽根によりさらに細かく切断され移送管42内で目詰りせずスムーズに移送される。
【0032】
図2は刈取装置2と移送装置4の一部の詳細を示した図であり、図2(A)は刈取装置と移送装置の縦断面図であり、図2(B)は図2(A)の〈2〉B1-〈2〉B2矢視である。刈取装置はハウジング21、刈取刃22、モータ23等により構成され、モータ23により駆動される刈取刃22により海藻を切断して刈取り、ハウジング21内の流れにより切断された海藻を移送装置4に送るものである。
【0033】
ハウジング21は上面ハウジング21a、上面フレーム21b、側面板21c、中央板21d、下面フレーム21e、下面ガード21fで構成されている。上面フレーム21bと下面フレーム21eは後述する揚水ポンプ41、刈取刃22、モータ23、等を設置するための強度部材である。上面ハウジング21a、側面板21cと後述するガイド部材25は、強度部材であるとともに、刈取刃22で切断された海藻を揚水ポンプ41の移送するための空間を構成している。この空間は刈取方向の両端面と、下面のガイド部材25で覆われていない部分は開放されており、船1の移動により海藻を空間内に取り込み刈取刃22で切断することができる。又、この空間は中央板21dで2つの空間に仕切られているため海水は刈取方向に通り抜けることはできない。この空間内の海水を揚水ポンプ41により吸引するために、刈取刃22で切断された海藻は海水とともに揚水ポンプ41に吸引される。中央板21dで前後の2つの空間に仕切ったのは船の前進と後進の両方で刈取ができるようにするためで、前進側だけで刈取をする場合は中央板21dを後端に設置してもよい。
【0034】
下面ガード21fは側面板21cを延長するか別部材で作られ、外部の障害物との衝突時に刈取装置2を守るとともに、養殖網等を切断してしまうことを防いでいる。海藻を根に近い部分で切断したい場合は、下面ガード21fを海底又は養殖ロープに接触又は接近して刈取を行うことも可能である。このような用途に対しては下面ガード21fの長さを適当に設定とともに、必要により側面の下以外の下面にも下面ガード21fを設置する、又は下面ガード21f又はガイド部材25に車輪を設置することも有効である。
【0035】
刈取刃22はモータ23により駆動される回転式の刃である。本実施例ではひとつのモータの動力をチェーン24又はベルトにより伝達することで、一つのモータ23により3枚の刈取刃22が駆動されている。刈取刃22に対向して図2Bの紙面に向かって左方向の図に示されているように各刈取刃22の中心からハウジング21の刈取方向両端に向かって拡大する開口25aを有するガイド部材25が設けられている。図2Bから解るように、ガイド部材25の長手方向の長さ(幅)は刈取刃22の直径の合計長さより長く、広い幅の海藻をガイド部材25により狭い幅に集め直径の短い刈取刃22で刈取ることができる。このため数の少ない直径の短い回転刃で広い幅を一度に刈取ることが可能である。
【0036】
刈取刃22の数は1枚でも2枚でもよい。又、刈取刃22は動力により駆動されるものであれば往復動により海藻を切断するものでも、チェーンソーであってもよい。ガイド部材25にも必要により刃を設けてもよい。
【0037】
移送装置4は刈取装置2により刈取られた海藻を船1に移送するもので、揚水ポンプ41と移送管42により構成されている。揚水ポンプ41は軸流ポンプであり、ポンプハウジング41aが刈取装置2の上面ハウジング21aに接続されている。揚水ポンプ41の回転羽根41cがモータ41dにより駆動され、回転羽根41cと案内羽根41bにより刈取装置2の空間を経由して海水を吸引し、移送管42に海水を送る。この海水の流れに乗り切断された海藻が揚水ポンプ41に吸引され、回転羽根41cによりさらに短く切断され、移送管42に送られる。移送管42の入口の手前で海藻をさらに細かく切断することで移送管42内の海藻の移送がスムーズになる。
【0038】
揚水ポンプ41は渦巻ポンプ等軸流ポンプ以外の型式のものでもよい。又船1に設置してもよい。揚水ポンプ41が船に設置される場合は、移送管41の入口が必要によりモータで駆動される回転式の刃を挟んで、刈取装置2の上面ハウジング21aに接続される。
【0039】
刈取装置2の上部又は揚水ポンプ41に必要によりモニタテレビ5と水検知センサ6が設置される。モニタテレビ5により海水中の刈取り作業を監視しながら刈取を行うことができるので、的確な作業が行うことができる。
【0040】
水検知センサ6は対向する電極の間に水があると通電するセンサであり、この信号により刈取装置2のモータ23と電源との間のリレーを断続することにより、海水中でのみ刈取刃が駆動される。間違えて刈取装置2のモータ23の電源を入れても海面上ではモータが駆動されないため刈取刃22で作業者を傷つける可能性を低減できる。海水中でのみ刈取刃が駆動される安全手段は水検知センサ6による方法以外にも位置制御装置3により刈取装置2の位置を検知する等いろいろな方法が考えられる。
【0041】
図3は前記した事例(第一実施事例)の海藻の収容方法を変更した事例(第二実施事例)の全体概要説明図であり、図3(A)は横から見た図で、図3(B)は上から見た図である。図1に示した第一実施事例では、揚水ポンプ41から海藻とともに送られてくる海水を排水するため海藻の収容器15は海面よりも高い位置に設置されているため、揚水ポンプ41から送られる海水は収容器内の大気中に吐出される。このため大量に海水を送る場合には揚水ポンプ41の位置によっては大きなポンプ電流が必要となる可能性がある。第二実施事例はサイフォンの効果を利用して揚水ポンプ41の必要電流を低減することを意図したものである。以下第一実施例との変更部分について説明する。
【0042】
移動手段1の内部に区切られた区画16の底面に開口17が設けられ海水が区画16内に導入される。収容器44は網又は複数の孔が開いた箱であり、区画16の内部に配置され、揚水ポンプ41の吐出口43が収容器44の内部に配置される。揚水ポンプ41の吐出口43が開口17を経由して移動手段1の外部と連通した収容器44内部の海面下の海水中に設定されるため、結果として揚水ポンプ41と移送管42と吐出口43とで海面高さが等しいサイフォンが構成され、海水を移送する揚水ポンプ41の必要電流を低減することができる。
【0043】
収容器44は海水とともに移送された海藻を収容する。好ましくは複数の収容器44を重ねて配置し、最も内側の収容器44が海藻で一杯になった場合その収容器44をクレーン45等で別の場所に移し、次に内側に配置されていた収容器44に海藻を収容する。これにより、限られた大きさの区画16と複数の収容器44を使用して刈取作業の中断をせず大量の海藻を収容することができる。
【0044】
図4は海藻の収容方法を変更した他の事例(第三実施事例)の全体概要説明図であり、図4(A)は横から見た図で、図4(B)は上から見た図である。第一実施例及び第二実施例においては移送管42を使用して海藻を移送しているが、移送管42の長さと太さによっては配管抵抗が増え揚水ポンプ41の必要電流が増えるとともに移送管42内での海藻による詰まりの可能性も増大する。第三実施事例は移送管42を廃止して揚水ポンプ41の必要電流を低減することと移送管42内での海藻詰まりの可能性をなくすことを目的としている。
【0045】
移送装置4は揚水ポンプ41、第一収容器46、第二収容器47、台座48、クレーン45、第二ウインチ49で構成されている。第一収容器46は刈取装置2に固定されている。第二収容器47は台座48と接続と分離が自在であり、海藻を収容した後クレーン45により台座48から分離され移動手段1に移送される。台座48は第二ウインチ49によって吊下げられ、第一収容器46と着脱自在である。詳細は図5を用いて後述するが、第一収容器46の上側と台座48の下側には接続した状態で開き、分離した状態では閉じる蓋が設置され、第二収容器47の下側は台座48から分離した状態で閉じるようになっている。このため、第二収容器47が刈取装置2に接続していない時は海藻を第一収容器46に収容でき、刈取作業を中断せず、かつ海藻を外部に流出せずに海藻の移送と収容ができる。
【0046】
海藻の収容作業方法を以下に説明する。刈取装置2と第一収容室46は第一ウインチ31により吊下げた状態で海藻を刈取り揚水ポンプ41で第一収容室46に海藻を移送する。この作業は後述する第二収容器47の作業状態に関わらず連続して行われる。第二収容器47を台座48に接続して台座48とともに吊下げ、第一収容器46に接続する。第二収容器47が海藻で一杯になった時点で第二ウインチ49を巻きあげることにより第二収容器47と台座48を第一収容器46から分離して、さらにクレーン45により第二収容器47を台座48から分離する。第二収容器47はクレーン45により移動手段1に移送する。台座48を第二ウインチ49により海面上に引きあげ新しい第二収容器47を台座48に設置した後、新しい第二収容器47を台座48とともに吊下げ第一収容室46に接続する。この作業を繰り返すことにより海藻を移動手段1に収容する。この第一収容室46、第二収容室47と台座48の働きを以下詳述する。
【0047】
図5は第三実施事例の刈取装置2と移送装置4の一部の詳細図であり、図5(A)は側面から見た中央断面図、図5(B)は刈取進行方向に見た中央断面図である。第一実施事例と第二実施事例で用いられていた移送管42が廃止され、第一収容器46、第二収容器47と台座48が追加されている。
【0048】
第一収容器46のハウジング46aは孔の開いた金属板で作られ上面は開放されている。上面には回転軸46cを中心として両方向に開く上蓋46bが設置されている。上蓋46bは台座48が分離した状態ではストッパ46dの位置に閉じられているが、上蓋46の端部が回転軸46cより外側に延長されているため台座48が接続されると台座48の重さで回転軸46cを中心に回転して上方に開かれる。この結果揚水ポンプ41から送られてくる海藻は台座48が分離された時は第一収容器46に収容され、台座48が接続された時は台座48に接続した第二収容器47に送られる。このため、第二収容器47が第一収容器46に接続していない時は海藻を第一収容器46に収容できるため、第二収容器47を移動装置1に移送する時も刈取作業を中断せずに継続することができる。
【0049】
台座48は図4に示されるように第二ウインチ49により吊下げられ、第一収容器46とは独立して移動ができる。台座48のハウジング48aの上面は開放されていて、下側は第一収容器46を通す開口を有する下面48bと開口を覆う蓋48cで構成されている。蓋48cは回転軸48dを中心として上方の両側に開くことができ、台座48が第一収容器46と接続した時点で蓋48cは第一収容室46のハウジング46aによって上方に開かれる。一方、台座48が第一収容室46と分離した時点で蓋48cは台座48の下面48bによって規制される位置まで閉じられる。この結果、台座48と第一収容器46が分離した時点で海藻が流出することなく台座48と接続した第二収容器47に収容される。
【0050】
第二収容器47は一端が開放された網47aと網47aの解放端に通され解放端を開閉するロープ47bで構成されている。ロープ47bは、網47aの解放端を折り曲げて袋状に形成された部分に挿入されている。
第二収容器47を台座48に接続するため台座48の下面48bには電気アクチュエータと固定金具で構成されるコーナ固定具48eと中央固定具48fが設けてある。コーナ固定具48eは図6(A)に示すように電気アクチュエータ48gとプランジャ48hで構成され、電気アクチュエータ48gに通電するとプランジャ48hは図の上方に引きあげられる。網47aの解放端を拡げて台座48の下面48bに置いた後、電気アクチュエータ48gに通電した状態で網47aの開放端に通されたロープ47bのコーナ金具48eに近いロープ47bの一部分をハウジング48aと下面48bの角部に押し込み電流を遮断して固定することで網47aの開放端とロープ47bの各コーナ部を台座48の各コーナ部に固定する。固定を解除する場合は、通電状態でロープ47bをハウジング48aと逆の方向にクレーン45で巻き上げることで網47aの開放端とロープ47bの固定を解除することができる。中央固定具48fは図6(B)に示すようにコーナ固定具48eと同様電気アクチュエータ48iとプランジャ48jで構成され、下面48bとその凸部48kの角部に網47aを開閉するロープ47bの両端2本を固定する。結果として、コーナ金具48eと中央金具48fは網47aの解放端を開いた状態でロープ47bを台座48の下面48bにコーナ固定具48eと中央固定具48fにより押さえて固定することで第二収容器47である網47aとロープ47bを台座48に着脱自在に固定することができる。
【0051】
第二収容器47と台座48が接続された状態で第一収容器46に接続され刈取られた海藻を収容する。第二収容器47が海藻で一杯になった時点で第二収容器47と台座48とが第一収容器46と分離される。その後網47aのロープ47bをコーナ固定具48eと中央固定具47fの固定を順次解放するのに合わせてクレーン45で巻き上げることにより網47aの解放端を閉じるとともに網47aを移動手段1に移送する。この結果、台座48と第二収容器47が分離した時点で海藻が流出することなく第二収容器47を移動装置1に移送することができる。台座48には海藻が収容されていない別の第二収容器47を新しく設置することができるため刈取作業を中断することなく大量の海藻を移動装置に収容することができる。
【0052】
第三実施事例の変型として、揚水ポンプ41も廃止し、刈取装置2のハウジングの上面を開放することで海藻を細かく再切断することなく第二収容器47に収容することもできる。さらに第一収容器46と台座48を廃止し刈取装置2の上端に第二収容器47のロープ47bの固定具を設置することで刈取装置2と第二収容器47を直接接続して装置を簡素化しても良い。但し、この場合は第二収容器47の設置、移送に合わせて刈取作業の中断が必要である。又、固定具の別の方法としては、固定手段を適度な押力を持つスプリングと固定金具とで構成してロープ47bを台座48の間に挟みスプリング力で固定し、分離する場合はロープ47bを強くひくことでロープ47bを台座48から分離することもできる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・・船(移動手段)
2・・・・刈取装置
21・・・ハウジング
21d・・中央板(板)
22・・・刈取刃
23・・・モータ(動力)
24・・・チェーン
25・・・ガイド部材
3・・・・位置制御装置
4・・・・移送装置
41・・・揚水ポンプ
42・・・移送管
46・・・第一収容器
47・・・第二収容器
48・・・台座
5・・・・モニタテレビ(監視手段)
6・・・・水検知センサ(安全手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水中に生育する海藻を収穫する収穫装置であって、海面上を移動可能な移動手段と、動力を利用して海藻を刈取る刈取装置を有し、前記刈取装置は前記移動手段から吊下げられるか、又は前記移動手段に設置された支持手段により支持され前記移動手段の底部よりも深い海水中の海藻を刈取ることを特徴とする海藻の収穫装置。
【請求項2】
刈取った海藻を海面上の前記移動手段に移送するための移送装置を有し、前記移送装置の一端が前記刈取装置に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の収穫装置。
【請求項3】
前記刈取装置の位置を制御する位置制御装置が海面上の前記移動手段に設置され、前記刈取装置が前記移動手段から所定の深さ方向位置に吊下げられるか、又は前記支持手段により支持されることにより所定の深さ方向位置に制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の収穫装置。
【請求項4】
前記移送装置は揚水ポンプを有し、前記揚水ポンプは前記刈取装置又は海面上の前記移動手段に設置され、刈取られた海藻は前記揚水ポンプの水流により移送されることを特徴とする請求項2又は3に記載の収穫装置。
【請求項5】
前記刈取装置は海藻の上方一部分を切断して刈取ることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の収穫装置。
【請求項6】
前記刈取装置は複数の回転刈取刃を有し、複数の前記刈取刃がチェーン又はベルトにより前記動力が伝達され、前記刈取刃の数より少ない数の前記動力により駆動されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の収穫装置。
【請求項7】
前記刈取装置は前記回転刈取刃に対向したガイド部材を有し、前記ガイド部材の長手方向の長さが前記刈取刃の直径又は前記刈取刃が複数の場合直径の合計長さよりも長いことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の収穫装置。
【請求項8】
前記刈取装置のハウジングは、刈取方向の側端面は開放されており、ハウジングの中央又は開放端と逆の側端面が刈取方向に垂直な板で閉じられた空間をハウジング内に形成していることを特徴する請求項1から7のいずれか1項に記載の収穫装置。
【請求項9】
前記刈取装置は刈取られた海藻の長さをさらに短く切断するための切断手段を有していることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の収穫装置。
【請求項10】
前記刈取装置はハウジングの下面部にガード部材又は車輪を有していることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の収穫装置。
【請求項11】
海水中の刈取作業を監視する監視手段を有していることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の収穫装置。
【請求項12】
海水中でのみ前記刈取刃が駆動される安全手段を有していることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の収穫装置。
【請求項13】
前記移動手段の底面に海水側に通じる開口を有する区画を設けるとともに前記区画内に網又は複数の孔の開いた箱で構成され海水が容易に進入可能な収容器を設置し、前記開口を経由して前記移動手段の外部の海水と連通した前記収容器の内部の海面下に前記揚水ポンプからの吐出口を配置することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の収穫装置。
【請求項14】
複数の前記収容器が重ねて前記移動手段内の前記区画内に設置され、前記収容器のひとつが海藻で満たされると前記区画から取り出され、前記区画内に残された別の前記収容器の内部に前記吐出口が移されることを特徴とする請求項13に記載の収穫装置。
【請求項15】
前記移送装置は前記刈取装置に着脱自在な第二収容器を有し、前記第二収容器を前期刈取装置に接続した状態で刈取った海藻を収容した後、前記第二収容器を前記刈取装置から分離して前記移動手段に移送することを特徴とする請求項2から12のいずれか1項に記載の収穫装置。
【請求項16】
前記移送装置は前記刈取装置に接続した第一収容器と、前記第一収容器と接続と分離が可能な第二収容器と前記第二収容器の台座を有し、前記第一収容器の上蓋は前記第二収容器の前記台座と接続した場合に開き、分離した状態では閉じるように構成されたことを特徴とする請求項15に記載の収穫装置。
【請求項17】
前記第二収容器と前記台座は接続と分離が可能であり、前記第二収容器は前記台座から分離して前記移動手段に移送することができることを特徴とする請求項15又は16に記載の収穫装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載された海藻の前記収穫装置のいずれか1項の収穫装置を使用した海藻の収穫方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−46055(P2010−46055A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3595(P2009−3595)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(508152939)
【Fターム(参考)】