海藻類の移設方法および移設装置
【課題】海水の汚濁を抑えつつ、海藻類と一緒に回収した根本部分の土壌を崩すことなく移設して、海藻類の根付きを良好にする海藻類の移設方法および移設装置を提供する。
【解決手段】移設アタッチメント6に取付けた回収ケース1を、前面を開口したアウターケース2と、アウターケース2に挿着した前面および底面を開口したインナーケース3とで構成し、この回収ケース1をバックホウのブーム5の操作により、その前面から海藻類Wを根本部分の土壌Sとともに回収し、台船に仮置きして移送した後、バックホウのブーム5の操作により、回収ケース1を海底に近づけ、アウターケース2を後退させて固定したままのインナーケース3の底面を開口状態にして、回収した海藻類Wを土壌Sとともに移設先の海底に配置する。
【解決手段】移設アタッチメント6に取付けた回収ケース1を、前面を開口したアウターケース2と、アウターケース2に挿着した前面および底面を開口したインナーケース3とで構成し、この回収ケース1をバックホウのブーム5の操作により、その前面から海藻類Wを根本部分の土壌Sとともに回収し、台船に仮置きして移送した後、バックホウのブーム5の操作により、回収ケース1を海底に近づけ、アウターケース2を後退させて固定したままのインナーケース3の底面を開口状態にして、回収した海藻類Wを土壌Sとともに移設先の海底に配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻類の移設方法および移設装置に関し、さらに詳しくは、移設作業によって生じる海水の汚濁を抑えるとともに、海藻類と一緒に回収した根本部分の土壌を崩すことなく移設して、移設先での海藻類の根付きを良好にできる海藻類の移設方法および移設装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造物を建設する等の工事海域に多くの海藻類が生息している場合や絶滅が危惧されている海藻類が生息している場合は、環境保護等の観点から、これらの海藻類を工事海域外に移設して、保護することが行われている。
【0003】
海藻類の移設については、例えば、台船にバックホウを載置して、このバックホウのブームの先端部に取付けた回収ケースに、海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、この回収ケースを台船に仮置きして移設先に移動させた後、再度、回収ケースをバックホウのブームの先端部に取付けて、回収した海藻類を土壌とともに移設先の海底に配置する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この提案では、回収した海藻類を回収ケースから排出する際に、回収ケースを大きく傾斜させて収容物(海藻類等)を滑らせたり、収容物を強制的に押出して排出するようにしているので、回収した土壌が崩れて散乱し易いという問題があった。また、回収ケースから排出された時点で、収容物が露出状態となるので、波動が直接あたることにより、土壌が崩れ易いという問題があった。
【0005】
根本部分の土壌が崩れて土壌が少なくなった状態で移設された海藻類は、移設先の土壌で安定せず、根付きが悪いので、根本部分の土壌を崩すことなく移設でき、根付きを良好にできる海藻類の移設手段が求められていた。
【特許文献1】特開2001−218533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、移設作業によって生じる海水の汚濁を抑えるとともに、海藻類と一緒に回収した根本部分の土壌を崩すことなく移設して、移設先での海藻類の根付きを良好にできる海藻類の移設方法および移設装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の海藻類の移設方法は、台船上に載置したバックホウのブームの先端部に回収ケースを取付けて、該回収ケースに海底の海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、該回収ケースを前記台船に仮置きして移設先に移送して、前記バックホウのブームの先端部に仮置きした回収ケースを取付けて、該回収ケースに回収した海藻類を根本部分の土壌とともに移設先の海底に配置するようにした海藻類の移設方法において、前記回収ケースを前面を開口したアウターケースと、前面および底面を開口したインナーケースとで構成し、該インナーケースを前記アウターケースの前面から挿着した回収ケースの前面から前記海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、移設先の海底に配置する際には、前記アウターケースを後退させて前記インナーケースの底面を開口状態にすることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の海藻類の移設装置は、台船上に載置したバックホウと、該バックホウのブームの先端部に着脱自在に取付けた回収ケースとを備え、該回収ケースに海底の海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、該回収したケースを前記台船に仮置きして移設先に移送して、前記バックホウのブームの先端部に仮置きした回収ケースを取付けて、該回収ケースに回収した海藻類を根本部分の土壌とともに移設先の海底に配置するようにした海藻類の移設装置において、前記回収ケースが前面を開口したアウターケースと、前面および底面を開口したインナーケースとで構成され、該インナーケースを前記アウターケースの前面から挿脱可能に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の海藻類の移設方法および移設装置によれば、バックホウの操作により、インナーケースをアウターケースに挿着した回収ケースの前面の開口から海藻類を根本部分の土壌とともに回収することができる。次いで、回収ケースを台船に仮置きして、移設先に移送した後、バックホウの操作により、回収ケースを海底に移動させ、アウターケースを後退させてインナーケースの底面を開口状態にできる。
【0010】
これにより、衝撃を与えないように回収した海藻類を根本部分の土壌とともに海底に配置することができ、土壌が崩れて散乱するようなことをなくして移設することが可能になる。海底に配置してからインナーケースが引き揚げられるまで、海藻類および根本部分の土壌はインナーケースで覆われるので、直接波動があたることがなく保護される。このように、土壌を安定させ、移設先での海藻類の根付きを良好にし、移設の際の海水の汚濁も防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の海藻類の移設方法および移設装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1、図2に例示するように移設装置は、台船7に載置されたバックホウ4を有し、そのブーム5の先端部には、移設アタッチメント6を介して回収ケース1が取付られている。回収ケース1は、バックホウ4の操作によるブーム5およびシリンダロッド5aの作動で任意の位置に移動できるようになっている。
【0013】
回収ケース1は、図3に例示するように、アウターケース2とインナーケース3とで構成されている。アウターケース2は前面を開口した直方体で上面の四隅に係止突起2aが設けられている。インナーケース3は前面および底面を開口した箱状体であり、アウターケース2の前面から嵌り合うように挿脱可能となっている。インナーケース3の前面上方には、ストッパ受け3aが設けられている。両側面の前方下部は、面取りされた形状となっているが、面取りしない形状にしてもよい。
【0014】
移設アタッチメント6は、図4に示すように上部がバックホウ4のブーム5およびシリンダロッド5aに着脱可能に連結されている。前方にはストッパ6aを備え、内部に油圧シリンダ6cを有している。この油圧シリンダ6cはバックホウ4の油圧系統に接続されている。
【0015】
移設アタッチメント6の下方部にはスライドフレーム6bが配置され、その後端部が油圧シリンダ6cの作動ロッドに接続して、前後移動可能となっている。スライドフレーム6bの下面には4つの係止爪6dが突設されている。
【0016】
回収ケース1は、インナーケース3をアウターケース2に格納した状態で、アウターケース2の係止突起2aに移設アタッチメント6の係止爪6dが係止されて取付けられる。インナーケース3のストッパ受け3aには、移設アタッチメント6のストッパ6aが貫入できるようになっている。
【0017】
図4に示すように、ストッパ6aをストッパ受け3aに貫入させて、移設アタッチメント6とインナーケース3とを固定して、バックホウ4の操作により、移設アタッチメント6の油圧シリンダ6cの作動ロッドを後方移動させて伸長させると、スライドフレーム6bとともに、アウターケース2が後方に移動して、インナーケース3がアウターケース2の外部に現れるようになる。
【0018】
移設する海藻類Wを回収するには、まず、台船7上でアウターケース2にインナーケース3を挿着した状態の回収ケース1を移設アタッチメント6に取付ける。次いで、回収ケース1を海底の近くまで移動させて、図5に示すように移設アタッチメント6の後方側に移動させておいた回収ケース1をやや傾斜させて、所定の深さだけ土壌Sに埋入させる。尚、最初の回収をした後は海底に段差ができるので、2回目以降の回収に際しては、回収ケース1をほぼ水平の状態にして、所定の深さで土壌Sに埋入する。
【0019】
続いて図6に示すように回収ケース1を水平状態にして、油圧シリンダ6cの作動ロッドを前方移動させることにより収縮させて、回収ケース1の前面から海藻類Wを根本部分の土壌Sとともに回収する。この際に根本部分の土壌Sに崩すような過度の力を加えることなく、土壌Sの巻上げも抑えることができる。
【0020】
回収を行なった回収ケース1は移設アタッチメント6から取り外して、台船7の上に仮置きする。移設アタッチメント6には、新たな空の状態の回収ケース1を取付けて、上記の回収工程を繰返し実施する。この回収工程は、例えば、図2の2点鎖線で回収軌跡を示すように、回収ケース1の回収範囲が碁盤目状に間隔が密になるように行なう。
【0021】
移設する海藻類Wとして適しているのは、例えば、アマモ、リュウキュウスガモ、ウミショウブ等の砂泥地に繁茂する海藻類Wである。
【0022】
台船7上で仮置きする際には、図7に例示するように回収ケース1の前面を隣接する回収ケース1で塞ぐように配置して、回収した土壌Sを崩れにくくする。図8に示すように、アウターケース2の前面に着脱可能な前面蓋2bを装着するようにしてもよい。仮置きしている回収ケース1は、養生シートで覆って海水を適宜、散布して海藻類Wを養生する。
【0023】
仮置きした回収ケース1は台船7で移設先に移動させ、移動後に再度、移設アタッチメント6に取付ける。この際に、回収ケース1は移設アタッチメント6の前方側に配置させ、インナーケース3のストッパ受け3aにストッパ6aを貫入させて、移設アタッチメント6に固定しておく。次いで、図9に示すようにバックホウ4の操作により、回収ケース1を移動させて移設先の海底の土壌Sに近づけて略水平な状態にする。
【0024】
次いで、図10に例示するように、移設アタッチメント6の油圧シリンダ6cの作動ロッドを後方移動させて伸長させることにより、アウターケース2を後方移動させて、静止状態のインナーケース3を露出させる。これにより、インナーケース3の底面が開口状態となり、回収した海藻類Wを根本部分の土壌Sとともに海底に配置する。
【0025】
このように、回収した海藻類Wおよび根本部分の土壌Sをほとんど移動させることなく過度の力、衝撃を加わえることなく、下方に静かに自然落下させて海底に配置することができる。そのため、土壌Sが崩れて散乱するようなことをなくして十分な量の土壌Sとともに海藻類Wを移設することが可能になる。海水の汚濁も防止できる。
【0026】
海藻類Wを移設先の土壌Sに配置した後、空の状態になった回収ケース1を引き揚げて移設アタッチメント6から取り外し、台船7の上に置いておく。インナーケース3が引き揚げられるまで、配置された海藻類Wおよび根本部分の土壌Sはインナーケース3で覆われるので、直接波動があたることがなく保護される。これにより、配置した土壌Sには波動が直接当たることがないので、土壌Sを崩壊、散乱させることがない。したがって、回収した海藻類Wを根本部分の土壌Sとともに安定して移設先の土壌Sに配置でき、根付きが良好になる。
【0027】
移設アタッチメント6には、仮置きしている新たな回収ケース1を取付けて、上記した配置工程を繰返し実施する。この配置工程を、例えば、回収した時のように回収ケース1の配置範囲を碁盤目状に間隔が密になるように行なう。配置した海藻類Wどうしのすき間は、例えば、元々海藻類Wが生息していた土壌S(砂等)で間詰する。
【0028】
このように、本発明によれば潜水士による作業をなくすことができるので、より迅速に作業を行なうことができる。
【0029】
すべての回収ケース1を引き揚げて移設が完了した移設領域では、移設先の土壌Sから上方に突出している最外周の土壌Sが波や潮流で洗掘され易いので、図11に示すように移設先領域外周に洗掘防止部8を形成することが好ましい。図11では洗掘防止部8が潜堤となっているが、その他に消波ブロック等を配置してもよい。
【0030】
また、図12に示すように、洗掘防止部8を溝状にしてもよく、移設先の土壌Sを掘って溝を形成しておき、この溝領域に海藻類Wを移設する。移設先のすべての領域を掘ることは作業が大変なので、最外周となる領域を最も深くした階段状または傾斜状の溝にしてもよい。
【0031】
一度に移設する海藻類Wの量、即ち、移設する回収ケース1の数は、移設先までの移動時間、作業時間等を考慮して、仮置きしている海藻類Wが衰弱しないように決定する。したがって、広範囲の海藻類Wの移設をする場合は、複数に分けて移設作業を行なうようにする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の海藻の移設装置の全体概要を例示する側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の回収ケースを例示する斜視図である。
【図4】図1の回収ケースと移設アタッチメントとを例示する側面図である。
【図5】海藻類を回収する工程を例示する側面図である。
【図6】図5の次の工程を例示する側面図である。
【図7】図1の回収ケースを仮置きしている状態を例示する側面図である。
【図8】図7において回収ケースの変形例を示す側面図である。
【図9】回収した海藻類を移設先の海底に配置する工程を例示する側面図である。
【図10】図9の次の工程を例示する側面図である。
【図11】海藻類を移設した領域の外周部を例示する側面図である。
【図12】海藻類を移設した領域の外周部の別の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 回収ケース
2 アウターケース 2a 係止突起 2b 前面蓋
3 インナーケース 3a ストッパ受け
4 バックホウ
5 ブーム 5a シリンダロッド
6 移設アタッチメント 6a ストッパ 6b スライドフレーム
6c 油圧シリンダ 6d 係止爪
7 台船
8 洗掘防止部
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻類の移設方法および移設装置に関し、さらに詳しくは、移設作業によって生じる海水の汚濁を抑えるとともに、海藻類と一緒に回収した根本部分の土壌を崩すことなく移設して、移設先での海藻類の根付きを良好にできる海藻類の移設方法および移設装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造物を建設する等の工事海域に多くの海藻類が生息している場合や絶滅が危惧されている海藻類が生息している場合は、環境保護等の観点から、これらの海藻類を工事海域外に移設して、保護することが行われている。
【0003】
海藻類の移設については、例えば、台船にバックホウを載置して、このバックホウのブームの先端部に取付けた回収ケースに、海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、この回収ケースを台船に仮置きして移設先に移動させた後、再度、回収ケースをバックホウのブームの先端部に取付けて、回収した海藻類を土壌とともに移設先の海底に配置する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この提案では、回収した海藻類を回収ケースから排出する際に、回収ケースを大きく傾斜させて収容物(海藻類等)を滑らせたり、収容物を強制的に押出して排出するようにしているので、回収した土壌が崩れて散乱し易いという問題があった。また、回収ケースから排出された時点で、収容物が露出状態となるので、波動が直接あたることにより、土壌が崩れ易いという問題があった。
【0005】
根本部分の土壌が崩れて土壌が少なくなった状態で移設された海藻類は、移設先の土壌で安定せず、根付きが悪いので、根本部分の土壌を崩すことなく移設でき、根付きを良好にできる海藻類の移設手段が求められていた。
【特許文献1】特開2001−218533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、移設作業によって生じる海水の汚濁を抑えるとともに、海藻類と一緒に回収した根本部分の土壌を崩すことなく移設して、移設先での海藻類の根付きを良好にできる海藻類の移設方法および移設装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の海藻類の移設方法は、台船上に載置したバックホウのブームの先端部に回収ケースを取付けて、該回収ケースに海底の海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、該回収ケースを前記台船に仮置きして移設先に移送して、前記バックホウのブームの先端部に仮置きした回収ケースを取付けて、該回収ケースに回収した海藻類を根本部分の土壌とともに移設先の海底に配置するようにした海藻類の移設方法において、前記回収ケースを前面を開口したアウターケースと、前面および底面を開口したインナーケースとで構成し、該インナーケースを前記アウターケースの前面から挿着した回収ケースの前面から前記海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、移設先の海底に配置する際には、前記アウターケースを後退させて前記インナーケースの底面を開口状態にすることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の海藻類の移設装置は、台船上に載置したバックホウと、該バックホウのブームの先端部に着脱自在に取付けた回収ケースとを備え、該回収ケースに海底の海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、該回収したケースを前記台船に仮置きして移設先に移送して、前記バックホウのブームの先端部に仮置きした回収ケースを取付けて、該回収ケースに回収した海藻類を根本部分の土壌とともに移設先の海底に配置するようにした海藻類の移設装置において、前記回収ケースが前面を開口したアウターケースと、前面および底面を開口したインナーケースとで構成され、該インナーケースを前記アウターケースの前面から挿脱可能に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の海藻類の移設方法および移設装置によれば、バックホウの操作により、インナーケースをアウターケースに挿着した回収ケースの前面の開口から海藻類を根本部分の土壌とともに回収することができる。次いで、回収ケースを台船に仮置きして、移設先に移送した後、バックホウの操作により、回収ケースを海底に移動させ、アウターケースを後退させてインナーケースの底面を開口状態にできる。
【0010】
これにより、衝撃を与えないように回収した海藻類を根本部分の土壌とともに海底に配置することができ、土壌が崩れて散乱するようなことをなくして移設することが可能になる。海底に配置してからインナーケースが引き揚げられるまで、海藻類および根本部分の土壌はインナーケースで覆われるので、直接波動があたることがなく保護される。このように、土壌を安定させ、移設先での海藻類の根付きを良好にし、移設の際の海水の汚濁も防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の海藻類の移設方法および移設装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1、図2に例示するように移設装置は、台船7に載置されたバックホウ4を有し、そのブーム5の先端部には、移設アタッチメント6を介して回収ケース1が取付られている。回収ケース1は、バックホウ4の操作によるブーム5およびシリンダロッド5aの作動で任意の位置に移動できるようになっている。
【0013】
回収ケース1は、図3に例示するように、アウターケース2とインナーケース3とで構成されている。アウターケース2は前面を開口した直方体で上面の四隅に係止突起2aが設けられている。インナーケース3は前面および底面を開口した箱状体であり、アウターケース2の前面から嵌り合うように挿脱可能となっている。インナーケース3の前面上方には、ストッパ受け3aが設けられている。両側面の前方下部は、面取りされた形状となっているが、面取りしない形状にしてもよい。
【0014】
移設アタッチメント6は、図4に示すように上部がバックホウ4のブーム5およびシリンダロッド5aに着脱可能に連結されている。前方にはストッパ6aを備え、内部に油圧シリンダ6cを有している。この油圧シリンダ6cはバックホウ4の油圧系統に接続されている。
【0015】
移設アタッチメント6の下方部にはスライドフレーム6bが配置され、その後端部が油圧シリンダ6cの作動ロッドに接続して、前後移動可能となっている。スライドフレーム6bの下面には4つの係止爪6dが突設されている。
【0016】
回収ケース1は、インナーケース3をアウターケース2に格納した状態で、アウターケース2の係止突起2aに移設アタッチメント6の係止爪6dが係止されて取付けられる。インナーケース3のストッパ受け3aには、移設アタッチメント6のストッパ6aが貫入できるようになっている。
【0017】
図4に示すように、ストッパ6aをストッパ受け3aに貫入させて、移設アタッチメント6とインナーケース3とを固定して、バックホウ4の操作により、移設アタッチメント6の油圧シリンダ6cの作動ロッドを後方移動させて伸長させると、スライドフレーム6bとともに、アウターケース2が後方に移動して、インナーケース3がアウターケース2の外部に現れるようになる。
【0018】
移設する海藻類Wを回収するには、まず、台船7上でアウターケース2にインナーケース3を挿着した状態の回収ケース1を移設アタッチメント6に取付ける。次いで、回収ケース1を海底の近くまで移動させて、図5に示すように移設アタッチメント6の後方側に移動させておいた回収ケース1をやや傾斜させて、所定の深さだけ土壌Sに埋入させる。尚、最初の回収をした後は海底に段差ができるので、2回目以降の回収に際しては、回収ケース1をほぼ水平の状態にして、所定の深さで土壌Sに埋入する。
【0019】
続いて図6に示すように回収ケース1を水平状態にして、油圧シリンダ6cの作動ロッドを前方移動させることにより収縮させて、回収ケース1の前面から海藻類Wを根本部分の土壌Sとともに回収する。この際に根本部分の土壌Sに崩すような過度の力を加えることなく、土壌Sの巻上げも抑えることができる。
【0020】
回収を行なった回収ケース1は移設アタッチメント6から取り外して、台船7の上に仮置きする。移設アタッチメント6には、新たな空の状態の回収ケース1を取付けて、上記の回収工程を繰返し実施する。この回収工程は、例えば、図2の2点鎖線で回収軌跡を示すように、回収ケース1の回収範囲が碁盤目状に間隔が密になるように行なう。
【0021】
移設する海藻類Wとして適しているのは、例えば、アマモ、リュウキュウスガモ、ウミショウブ等の砂泥地に繁茂する海藻類Wである。
【0022】
台船7上で仮置きする際には、図7に例示するように回収ケース1の前面を隣接する回収ケース1で塞ぐように配置して、回収した土壌Sを崩れにくくする。図8に示すように、アウターケース2の前面に着脱可能な前面蓋2bを装着するようにしてもよい。仮置きしている回収ケース1は、養生シートで覆って海水を適宜、散布して海藻類Wを養生する。
【0023】
仮置きした回収ケース1は台船7で移設先に移動させ、移動後に再度、移設アタッチメント6に取付ける。この際に、回収ケース1は移設アタッチメント6の前方側に配置させ、インナーケース3のストッパ受け3aにストッパ6aを貫入させて、移設アタッチメント6に固定しておく。次いで、図9に示すようにバックホウ4の操作により、回収ケース1を移動させて移設先の海底の土壌Sに近づけて略水平な状態にする。
【0024】
次いで、図10に例示するように、移設アタッチメント6の油圧シリンダ6cの作動ロッドを後方移動させて伸長させることにより、アウターケース2を後方移動させて、静止状態のインナーケース3を露出させる。これにより、インナーケース3の底面が開口状態となり、回収した海藻類Wを根本部分の土壌Sとともに海底に配置する。
【0025】
このように、回収した海藻類Wおよび根本部分の土壌Sをほとんど移動させることなく過度の力、衝撃を加わえることなく、下方に静かに自然落下させて海底に配置することができる。そのため、土壌Sが崩れて散乱するようなことをなくして十分な量の土壌Sとともに海藻類Wを移設することが可能になる。海水の汚濁も防止できる。
【0026】
海藻類Wを移設先の土壌Sに配置した後、空の状態になった回収ケース1を引き揚げて移設アタッチメント6から取り外し、台船7の上に置いておく。インナーケース3が引き揚げられるまで、配置された海藻類Wおよび根本部分の土壌Sはインナーケース3で覆われるので、直接波動があたることがなく保護される。これにより、配置した土壌Sには波動が直接当たることがないので、土壌Sを崩壊、散乱させることがない。したがって、回収した海藻類Wを根本部分の土壌Sとともに安定して移設先の土壌Sに配置でき、根付きが良好になる。
【0027】
移設アタッチメント6には、仮置きしている新たな回収ケース1を取付けて、上記した配置工程を繰返し実施する。この配置工程を、例えば、回収した時のように回収ケース1の配置範囲を碁盤目状に間隔が密になるように行なう。配置した海藻類Wどうしのすき間は、例えば、元々海藻類Wが生息していた土壌S(砂等)で間詰する。
【0028】
このように、本発明によれば潜水士による作業をなくすことができるので、より迅速に作業を行なうことができる。
【0029】
すべての回収ケース1を引き揚げて移設が完了した移設領域では、移設先の土壌Sから上方に突出している最外周の土壌Sが波や潮流で洗掘され易いので、図11に示すように移設先領域外周に洗掘防止部8を形成することが好ましい。図11では洗掘防止部8が潜堤となっているが、その他に消波ブロック等を配置してもよい。
【0030】
また、図12に示すように、洗掘防止部8を溝状にしてもよく、移設先の土壌Sを掘って溝を形成しておき、この溝領域に海藻類Wを移設する。移設先のすべての領域を掘ることは作業が大変なので、最外周となる領域を最も深くした階段状または傾斜状の溝にしてもよい。
【0031】
一度に移設する海藻類Wの量、即ち、移設する回収ケース1の数は、移設先までの移動時間、作業時間等を考慮して、仮置きしている海藻類Wが衰弱しないように決定する。したがって、広範囲の海藻類Wの移設をする場合は、複数に分けて移設作業を行なうようにする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の海藻の移設装置の全体概要を例示する側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の回収ケースを例示する斜視図である。
【図4】図1の回収ケースと移設アタッチメントとを例示する側面図である。
【図5】海藻類を回収する工程を例示する側面図である。
【図6】図5の次の工程を例示する側面図である。
【図7】図1の回収ケースを仮置きしている状態を例示する側面図である。
【図8】図7において回収ケースの変形例を示す側面図である。
【図9】回収した海藻類を移設先の海底に配置する工程を例示する側面図である。
【図10】図9の次の工程を例示する側面図である。
【図11】海藻類を移設した領域の外周部を例示する側面図である。
【図12】海藻類を移設した領域の外周部の別の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 回収ケース
2 アウターケース 2a 係止突起 2b 前面蓋
3 インナーケース 3a ストッパ受け
4 バックホウ
5 ブーム 5a シリンダロッド
6 移設アタッチメント 6a ストッパ 6b スライドフレーム
6c 油圧シリンダ 6d 係止爪
7 台船
8 洗掘防止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台船上に載置したバックホウのブームの先端部に回収ケースを取付けて、該回収ケースに海底の海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、該回収ケースを前記台船に仮置きして移設先に移送して、前記バックホウのブームの先端部に仮置きした回収ケースを取付けて、該回収ケースに回収した海藻類を根本部分の土壌とともに移設先の海底に配置するようにした海藻類の移設方法において、前記回収ケースを前面を開口したアウターケースと、前面および底面を開口したインナーケースとで構成し、該インナーケースを前記アウターケースの前面から挿着した回収ケースの前面から前記海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、移設先の海底に配置する際には、前記アウターケースを後退させて前記インナーケースの底面を開口状態にする海藻類の移設方法。
【請求項2】
前記海藻類の移設先領域外周に、海藻類とともに移設した根本部分の土壌の洗掘を防止する洗掘防止部を形成する請求項1に記載の海藻類の移設方法。
【請求項3】
台船上に載置したバックホウと、該バックホウのブームの先端部に着脱自在に取付けた回収ケースとを備え、該回収ケースに海底の海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、該回収したケースを前記台船に仮置きして移設先に移送して、前記バックホウのブームの先端部に仮置きした回収ケースを取付けて、該回収ケースに回収した海藻類を根本部分の土壌とともに移設先の海底に配置するようにした海藻類の移設装置において、前記回収ケースが前面を開口したアウターケースと、前面および底面を開口したインナーケースとで構成され、該インナーケースを前記アウターケースの前面から挿脱可能に設けた海藻類の移設装置。
【請求項4】
前記アウターケースの前面を閉口する着脱可能な前面蓋を設けた請求項3に記載の海藻類の移設装置。
【請求項1】
台船上に載置したバックホウのブームの先端部に回収ケースを取付けて、該回収ケースに海底の海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、該回収ケースを前記台船に仮置きして移設先に移送して、前記バックホウのブームの先端部に仮置きした回収ケースを取付けて、該回収ケースに回収した海藻類を根本部分の土壌とともに移設先の海底に配置するようにした海藻類の移設方法において、前記回収ケースを前面を開口したアウターケースと、前面および底面を開口したインナーケースとで構成し、該インナーケースを前記アウターケースの前面から挿着した回収ケースの前面から前記海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、移設先の海底に配置する際には、前記アウターケースを後退させて前記インナーケースの底面を開口状態にする海藻類の移設方法。
【請求項2】
前記海藻類の移設先領域外周に、海藻類とともに移設した根本部分の土壌の洗掘を防止する洗掘防止部を形成する請求項1に記載の海藻類の移設方法。
【請求項3】
台船上に載置したバックホウと、該バックホウのブームの先端部に着脱自在に取付けた回収ケースとを備え、該回収ケースに海底の海藻類を根本部分の土壌とともに回収し、該回収したケースを前記台船に仮置きして移設先に移送して、前記バックホウのブームの先端部に仮置きした回収ケースを取付けて、該回収ケースに回収した海藻類を根本部分の土壌とともに移設先の海底に配置するようにした海藻類の移設装置において、前記回収ケースが前面を開口したアウターケースと、前面および底面を開口したインナーケースとで構成され、該インナーケースを前記アウターケースの前面から挿脱可能に設けた海藻類の移設装置。
【請求項4】
前記アウターケースの前面を閉口する着脱可能な前面蓋を設けた請求項3に記載の海藻類の移設装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−166961(P2007−166961A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368055(P2005−368055)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(594155975)極東建設株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(594155975)極東建設株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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