説明

海藻養殖用肥料入りロープ

【課題】施肥効果に優れ、かつ設置の作業性に優れると共に、ロープ内部に充填した肥料の取りだしが容易に行うことができる海藻養殖用肥料入りロープ及びその施肥方法を提供する。
【解決手段】芯部分が中空であるロープの中空部分に肥料が充填されており、内径が20〜60mmであり、かつ、ロープの材質が比重1未満となる素材の中から選ばれる1種以上からなることを特徴とする海藻養殖用肥料入りロープA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔、ワカメ、モズク、コンブ等の海藻養殖における、海藻の成長促進および色落ち防止・色落ち回復させるための海藻養殖用肥料入りロープに関し、更に詳しくは、海藻養殖場での設置作業性が良好で、簡単に肥料残渣の取り出しや、肥料の充填ができる海藻養殖用肥料入りロープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋環境の悪化などにより、海藻を養殖するにあたり、海水中の栄養塩の低下により、品質の良い海藻の養殖ができにくい環境になってきている。そのため、肥料液に養殖網を浸漬する方法や、肥料を溶解して養殖網や海藻養殖場に散布する方法が一部で採用されている。
【0003】
特に、大きな産業である海苔養殖において、その影響が顕著に発生しており、海苔の色落ちは大きな問題となっている。栄養塩(特に窒素・リン成分)の低下により、海苔の生育が抑制され、ひどいときには、黒い海苔が白くなるまで色落ちすることがある。
最近では、海苔養殖中に雨が少なく、また、河川からの栄養塩流入が少なくなっており、毎年色落ちする時期が早くなり、期間も長くなってきている。色落ちは、10〜15℃の水温で急激に発生し、そのまま1週間続くと海苔は死滅してしまう。従って、2〜3日のうちに色落ちを回復させる施肥を行わなければならない。
【0004】
従来より、海苔の生育に必要な肥料を施肥するために、種々の施肥方法が検討されてきている。液体肥料を希釈して大量に散布する方法や、海苔網を固定する支柱に固形肥料、被覆肥料を設置して行う方法が実施されてきている。
しかしながら、これらの方法では、すぐに希釈拡散されてしまうため、顕著な効果が認められていないである。肥料を容器に入れて固定する方法では、部分的に負荷がかかり、養殖網や養殖ロープが切れてしまうという問題も発生している。また、使用後の容器や肥料残渣が簡単に処分できにくいという問題もあり、試験的に採用されても、産業的に採用される方法ではないのが現状である。
【0005】
一方、海苔養殖等の海藻類に施肥する方法等として、例えば、肥料入りロープ状物を用いるもの(例えば、特許文献1参照)や、網目の筒中に肥料を入れて溶着により多数に区分された袋の一つ一つに肥料が入った海苔養殖を促進する肥料ロープ(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0006】
しかしながら、これらの肥料入りロープや施肥テープを用いた設置方法等は、海苔網の上部に設置する方法であり、海苔網に付着生育している海苔が摩擦で消滅したり、部分的に沈んでしまい、健全な生育ができなくなったりする状況にあり、重量の激増・養殖網の切断等の課題が発生し、産業的に使用できる方法ではなかった。また、本願発明のように、素材や浮力・廃棄方法・肥料の出し入れ等の総合的な見地からの検討は、全くなされていないものである。
【0007】
そこで、海藻養殖時において、養殖網・養殖ロープ等に固定しやすく、海面で浮遊し、海上で設置しやすい施肥技術及び方法等の開発が切望されているのが現状である。また、肥料入りロープを産業的に使用するためには、肥料が入れやすい構造であることが必要である。
更に、使い捨てで使用する場合には、分別して処分する必要があるため、残った残骸を容器等から、簡単に取り出せることも重要であり、また、リサイクルして使用する必要性もでてくるため、肥料の充填作業も簡単に行えなければならないなどの要求にも満足する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭61−74361号公報(実用新案登録請求の範囲、実施例、第1図〜第3図)
【特許文献2】実開昭60−33858号公報(実用新案登録請求の範囲、第1図、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、海藻を養殖する際に、効果的で作業性良く養殖場に簡単に設置でき、かつ使い捨てで使用する場合には、簡単に分別処分することができ、また、リサイクルして使用するにも、肥料の取りだし、充填が容易となる海藻養殖用肥料入りロープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討したところ、芯部分が中空であるロープの中空部分に肥料を充填すると共に、直径を特定の長さに設定し、かつロープの材質を特定の素材から構成することなどにより、上記目的の海藻養殖用肥料入りロープが得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) 芯部分が中空であるロープの中空部分に肥料が充填されており、内径が20〜60mmであり、かつ、ロープの材質が比重1未満となる素材の中から選ばれる1種以上からなることを特徴とする海藻養殖用肥料入りロープ。
(2) 長さが7〜25mであることを特徴とする上記(1)記載の海藻養殖用肥料入りロープ。
(3) 海水中で10〜40日で、溶出する直径1〜10mmの緩行性肥料を充填したことを特徴とする上記(1)又は(2)記載の海藻養殖用肥料入りロープ。
(4) 緩行性肥料が、被覆肥料であることを特徴とする上記(3)記載の海藻養殖用肥料入りロープ。
(5) 海藻養殖網の耳綱(端のロープ)、海藻養殖用ロープ、又は海藻養殖網を固定するロープに、上記(4)の何れか一つに記載の海藻養殖用肥料入りロープを固定することを特徴とする海藻養殖用肥料入りロープの施肥方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、施肥効果に優れ、かつ設置の作業性に優れると共に、使い捨てで使用する場合には、簡単に分別処分することができ、また、リサイクルして使用するにも、肥料の取りだし、充填が容易に行うことができる海藻養殖用肥料入りロープ及びその施肥方法料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明の海藻養殖用肥料入りロープの実施形態の一例を示す正面図、(b)は、ロープの中空部分に肥料が充填されている状態を示す横断面図である。
【図2】組紐ロープから構成された海藻養殖用肥料入りロープの使用状態の一例を部分態様で示す斜視図である。
【図3】組紐ロープから構成された海藻養殖用肥料入りロープの使用状態の他例を部分態様で示す斜視図である。
【図4】本発明の海藻養殖用肥料入りロープを、リサイクルして繰り返し使用する場合の肥料を充填する際の使用態様の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明の海藻養殖用肥料入りロープの実施形態の他例を示す部分正面図である。
【図6】本発明の海藻養殖用肥料入りロープを用いて、海苔養殖網の浮き流し漁場における施肥方法の一例を示す平面図である。
【図7】本発明の海藻養殖用肥料入りロープを用いて、海苔養殖網の浮き流し漁場における施肥方法の他例を示す平面図である。
【図8】本発明の海藻用肥料入りロープを用いて、ワカメ養殖漁場における施肥方法の一例を示す正面図である。
【図9】本発明の海藻用肥料入りロープを用いて、モズク養殖漁場における施肥方法の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の海藻養殖用肥料入りロープは、芯部分が中空であるロープの中空部分に肥料が充填されており、内径が20〜60mmであり、かつ、ロープの材質が比重1未満となる素材の中から選ばれる1種以上からなることを特徴とするものである。
【0014】
図1は、本発明の海藻養殖用肥料入りロープの実施形態の一例を示すものであり、(a)は正面図であり、(b)は、ロープの中空部分に肥料が充填されている状態を示す横断面図である。
本発明となる肥料入りロープAの中空部分の内径Rは、20〜60mmであり、ロープ内部に詰めた肥料の充填および取り出しが容易な構造となっている。このロープAの内径Rが20mm未満であると、肥料の充填および取り出しが困難となり、また、充填できる肥料の容量が十分ではないため施肥効果が弱い。一方、内径Rが60mmを超えて大きいと重くなり過ぎ設置が困難となり、かつ海中に沈んでしまい、施肥の効果も発揮しにくくなる。また、詰め替え時の作業性も悪くなる。
【0015】
この肥料入りロープAの長さXは、設置作業性、肥料充填性などの点から、7〜25mに設定することが好ましい。この長さを上記範囲(7〜25m)とすることにより、ロープ内部への肥料の充填および取り出しが容易となり、かつ漁場での設置作業性に優れたものとなる。このロープの長さXが25mを超えて長いと、肥料の充填および取り出しが困難となり、一方、7m未満となると海苔網等の海藻網に対する設置本数が増えるので、漁場での設置作業性が悪くなる。
【0016】
このロープAの材質としては、比重1未満となる素材の中から選ばれる1種以上から構成されるものであれば良く、例えば、比重が1未満となるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)等の少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合)が挙げられ、更に使用性、経済性、軽量化、浮力の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)から構成されものが好ましい。肥料入りロープAの材質を、比重1未満となる素材の中から選ばれる1種以上から構成することにより、設置時における海苔網等の海藻網への負担を減少し、また、海面に浮くことで効率よく施肥を行うことができる。
なお、ロープAの材質として比重1を超える素材、例えば、天然素材(マニラ麻:比重1.45)、ポリアミド系(ナイロン:比重1.14)、ポリエステル系(商品名「テトロン」比重1.38)、ポリビニルアルコール系(商品名「クレモナ」比重1.30)、ポリ塩化ビニル系(ポリ塩化ビニル:比重1.37)、ポリ塩化ビニリデン系(商品名「クレハロン」比重1.7)、アラミド系(商品名「ケブラー」比重1.44)、アクリル系(比重1.14〜1.17)など構成された海藻養殖用肥料入りロープでは本発明の効果を発揮できないこととなる。
【0017】
本発明で使用する芯部分が中空であるロープは、いずれの方法等で製造したものでも良いが、経済性、作業性などの点から、好ましくは組紐ロープである。
この組紐ロープを利用すれば、組紐を製造しながら肥料を充填することができるため、製造コストをかなり軽減することができる。また、ロープの厚みも一番薄くすることができる方法でもあり、使用する材料の軽減にもつながってくる。
この組紐ロープの製造は、例えば、比重が1未満となるPE、PPなどのモノフィラメント糸、マルチフィラメント糸を用いたストランド11を用いて、編組機械で編組し、製紐して組紐ロープとすることができる。
また、ストランドの繊度、網目密度、製法などは、充填する肥料が海中で溶出する日数(10〜40日)を勘案して好適に組み合わせることができる。
【0018】
ロープの中空部分に充填する肥料10としては、海藻用の肥料であれば特に限定されないが、
粒状や棒状の固形肥料やゲル状肥料などの少なくとも1種が挙げられる。肥料原料としては、硝安、硝安石灰、石灰窒素、隣硝安、隣硝安カリ、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、塩化アンモニウム、尿素等の窒素質肥料及びリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム等のリン含有物質などが挙げられる。
好ましくは、充填、取り出し作業性、施肥の持続効果の点から、海水中で10〜40日で、溶出する粒径(直径:最大径)1〜10mmの緩行性肥料が好ましい。この肥料の粒径を1〜10mmとすることにより、ロープの網目から漏れず、出し入れも容易となる。
【0019】
更に好ましくは、海流の影響や水温の影響を受けにくい被覆肥料を用いることが好ましい。
被覆剤として使用する材料としては、海藻の成長に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン一酢酸ビニル共重合物、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられるが、何ら限定されるものではない。
本発明において、肥料の充填、取り出し作業性、更に使用性、経済性、軽量化、浮力の観点からロープの材質を比重1未満とした点、ロープの長さ及び内径を限定した点、施肥の持続効果などを勘案すると、肥料の充填量としては、好ましくは、0.2〜0.8kg/mとすることが望ましい。
【0020】
本発明における肥料入りロープAにおいて、ロープ両端から0.3〜3m〔図1(a)中のY〕は肥料が入っていないロープのみの構造が好ましい。ロープの端から0.3〜3mの個所に締結部材を取り付けて肥料が出てこない構造、本実施形態ではビニールテープ等の樹脂製テープからなる締結部材を巻いて堰止め、肥料の入っていないロープ端部(図中Y部分)を形成することが好ましい。このロープ両端部を肥料が入っていないロープ(部分)とすることにより、海苔網等への取り付け作業性を容易にすることができる。
図2は、長さ12m、内径25mmのポリエチレン製(比重0.9)の組紐ロープから構成された肥料入りロープBであり、ロープ端から0.5m部分にビニールテープからなる締結部材20を巻いて堰止め、肥料の入っていないロープ端部(Y部分)を形成したものであり、最端部にもホグレ防止用のビニールテープからなる締結部材21が取り付けられている。なお、図中Z部部には肥料(緩行性肥料)が充填されている部分である。
図3は、更に、肥料の入っていないロープ端部(Y部分)の任意の箇所に、別の連結用ロープ30を連結して、海苔網等への取り付け作業性の向上、設置作業を更に強固に施してもよいものである。なお、31は、連結用ロープ30の最端部のホグレ防止用の締結部材である。
【0021】
本発明の海藻養殖用肥料入りロープでは、内部への肥料の充填および取り出しが容易であり、かつ、肥料の詰め替えが簡単に行うことができる。従って、肥料容器であるロープを繰り返し使うことができ、低コストで施肥を行うことができる。
一般的に、ロープと肥料残渣は、成分が異なるので、分別しないと産廃処分することができない。本発明の使用後の海藻養殖用肥料入りロープは、肥料残渣を簡単に取り出すことができるので、使用後のロープは、産業廃棄物として処分することが可能である。また、ロープ部は、通常のロープとしても使用することができるし、ロープを単一素材で製造しておけば、処分することなく他の製品へのリサイクルも行いやすい。
【0022】
また、本発明の海藻養殖用肥料入りロープを、リサイクルして繰り返し使用する場合には、以下の方法で行うことができる。
長さ12m、内径25mmのロープCに肥料を充填する一例を紹介する。肥料容器であるロープCへの肥料の充填は、図4に示すようにアルミパイプ40を使用して行うことができる。この時は、長さ2m、直径25mmのアルミパイプを使用して行った。
初めに、12mロープの真中(6m部分)を、例えば、紐で締めて2つに分断する(図示せず)。2mのパイプにロープを半分まで装着する。次いで、肥料の半分量1.25kgを漏斗などによりパイプの中に入れ込む。このパイプを縦(鉛直方向)に持ち、ロープをパイプから下にずらしていきながら肥料を落下させロープに肥料を充填していく。肥料の充填が終わったら、ロープの端および端から50cmの個所をビニールテープで締める(図2参照)。もう片側も同様にして肥料を充填する。これにより、12m肥料入りロープを製造(再生産)することができる。
本発明の海藻養殖用肥料入りロープとすることにより、肥料の取りだし、充填が容易に行うことができるものとなる。なお、上記充填方法(手順)は、リサイクルして繰り返し使用する場合についてのものであるが、肥料を充填しないで組紐などのロープを製造した後、肥料を充填する場合にも、上記充填方法を利用して海藻養殖用肥料入りロープ(新品)を製造することができる。
【0023】
図5は、本発明の海藻養殖用肥料入りロープの実施形態の他例を示す部分正面図である。
この形態の海藻養殖用肥料入りロープDは、海苔網等への取り付け作業性を容易にする点から 図2は、長さ12m、内径25mmのポリエチレン製(比重0.9)の組紐ロープから構成された肥料入りロープBであり、ロープ両端から0.3〜3m〔図5中のY〕に肥料が入っていないロープのみの構造とする部分となる樹脂製テープからなる締結部材を取り付けを更に容易とするための表示マーク部35を設けたものである。
表示マーク部35としては、一目で理解できる表示であれば、その表示態様、取り付け態様は特に限定されず、例えば、表示・取り付け態様としては、図5に示すように「▲▼」マークの塗布による表示などが挙げられる。また、リサイクルして再使用する場合は、表示マーク部35の存在により、再使用する際の肥料の充填、取り付け作業性などを更に向上させることができる。
【0024】
このように構成される本発明の海藻養殖用肥料入りロープを用いて、海苔、ワカメ、モズク、コンブ等の海藻養殖場での施肥方法について、以下に詳述する。
この海藻養殖用肥料入りロープの施肥方法としては、例えば、海藻養殖網の耳綱(端のロープ)、海藻養殖用ロープ、又は海藻養殖網を固定するロープに用いることにより施肥することができる。
図6は、本発明の海藻養殖用肥料入りロープを用いて、海苔養殖網の浮き流し漁場における施肥方法の一例を示す平面図である。
この実施形態は、海苔養殖網1の耳綱に沿って海藻養殖用肥料入りロープ2を設置する施肥方法である。図6中、3はアバツナ、4はフロート、5は海苔網(海苔養殖網)の耳糸部である。
図7は、本発明の海藻養殖用肥料入りロープを用いて、海苔養殖網の浮き流し漁場における施肥方法の他例を示す平面図である。
この実施形態は、海苔養殖網固定するロープ(アバツナ)3に沿って海藻養殖用肥料入りロープ1を設置する施肥方法である。
【0025】
図8は、本発明の海藻養殖用肥料入りロープを用いて、ワカメ養殖漁場における施肥方法の一例を示す正面図である。
この実施形態は、ワカメ養殖綱7に沿って海藻用肥料入りロープ2を設置する施肥方法である。図8中、6は養殖されるワカメ、8はいかり網、9はアンカートとなるコンクリートブロック、10は海面(部)である。
図9は、本発明の海藻用肥料入りロープを用いて、モズク養殖漁場における施肥方法の一例を示す斜視図である。
この実施形態は、モズク養殖網11の耳綱に沿って海藻養殖用肥料入りロープ2を設置する施肥方法である。図9中、12は支柱である。
【0026】
このように、本発明の海藻養殖用肥料入りロープは、海藻養殖場での取り扱いが良好で、簡単に設置することができ、使用中も浮力のある比重1未満となる素材を使用しているので、施肥ロープが沈むことなく設置でき、海藻の生長を促進し、かつ海藻の色を良くする効果がある。使用後は、肥料の残渣を簡単に取り出すことができ、使用後のロープは通常の縛り綱等としての再利用ができる。また、使用後のロープを洗浄乾燥した後、新しい肥料を充填して施肥ロープとして利用することも可能である。このように、本特許の海藻養殖用肥料入りロープを用いることにより、作業性が良好で、環境への負荷が小さい施肥方法を提供することができる。
【実施例】
【0027】
次に、試験例(実施例及び比較例)により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0028】
(試験例1:実施例1〜2、比較例1〜2)
長さ10mの比重0.9のポリエチレン製組紐ロープの内径を10〜80mmとして、表1に示す所定量の被覆肥料(粒径1〜6mm、肥料成分:リン硝安、被覆物質:ポリウレタン、海水中での溶出日数10日、以下同様)を充填した肥料入りロープ4本を海苔養殖網(幅1.6m、長さ20m、Y部分50cm)の両耳糸部に沿って取り付け(図6参照)、海苔の色落ち時期に施肥を行い、施肥効果、設置の作業性および肥料の詰め替え作業性について下記評価方法で評価した。
これらの評価結果を下記表1に示す。
【0029】
(施肥効果の評価方法)
海苔の色落ち時期における海苔葉体の黒さ度合を比較し、下記評価基準で施肥効果を評価した。
評価基準:色落ちによる色調低下がないか。
○:海苔葉体の色調が黒いものを良好とした。
△:海苔葉体の色調がやや低下しているものをやや良好とした。
×:海苔葉体の色調が低下し色落ちしているものを効果なしとした。
(設置作業性の評価方法)
肥料入りロープ4本を海苔養殖網の両耳糸部に沿って設置する際の作業性を比較し、下記評価基準で設置作業性を評価した。
評価基準:設置時の作業性に問題があるか。
○:作業性に全く問題のないもの。
△:作業性がやや低下(30%以下)するが使用可能なもの。
×:作業性が大きく低下(30%以上)し、使用不可なもの。
(肥料の取りだし作業性の評価方法)
乾燥した使用済み肥料入りロープから肥料を取りだす際の作業性を比較し、下記評価基準で取りだし作業性を評価した。
評価基準:取りだし作業性に問題があるか。
○:作業性に全く問題のないもの。
△:作業性がやや低下(30%以下)するが使用可能なもの。
×:作業性が大きく低下(30%以上)し、使用不可なもの。
【0030】
【表1】

【0031】
(試験例2:実施例3〜5、比較例3〜4)
内径30mmφの比重0.9のポリエチレン製組紐ロープの長さを5〜30m(Y:50cm)として、下記表2に示すように所定量(1m当たり0.25kg充填)の被覆肥料を充填した肥料入りロープを、海苔養殖網を固定するロープ(アバツナ)に沿って取り付け(図7参照)、海苔の色落ち時期に施肥を行い、上記評価方法により設置の作業性、肥料取りだし作業性及び下記評価方法により肥料の詰め替え作業性について評価した。
これらの結果を下記表2に示す。
【0032】
(肥料の詰め替え作業性の評価方法)
乾燥した使用済み肥料入りロープから肥料を取りだした後、新たな肥料を充填する際の作業性を比較し、下記評価基準で詰め替え作業性を評価した。
評価基準:詰め替え作業性に問題があるか。
○:作業性に全く問題のないもの。
△:作業性がやや低下(30%以下)するもの。
×:作業性が大きく低下(30%以上)するもの。
【0033】
【表2】

【0034】
(試験例3:実施例6〜7、比較例5〜6)
組紐ロープの素材をそれぞれポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、塩化ビニルとして長さ10m、内径20mmφの図1に準拠する組紐ロープ(Y:50cm)に被覆肥料2.5kgを充填した肥料入りロープ4本を海苔養殖網(幅1.6m、長さ20m)の両耳糸部に沿って取り付け(図6参照)、海苔の色落ち時期に施肥を行い、設置状態および上記評価方法で施肥効果について評価した。
これらの結果を下記表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
上記表1〜表3の評価結果を総合すると、本発明となる実施例6〜7は、本発明外となる比較例1〜6に較べ、肥料の取りだし作業性、詰め替え作業、設置の作業性及び施肥効果に優れることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、海苔養殖における施肥が容易に行え、海苔の色落ちを防止・回復することができる。施肥用ロープ内部に充填した肥料を簡単に取りだし、リサイクルも可能であり、詰め替え作業も容易にでき、何回も利用することもでき、コスト面にも優れた施肥が行える。
【符号の説明】
【0038】
A 海藻養殖用肥料入りロープ
X ロープ全長
10 肥料(被覆肥料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部分が中空であるロープの中空部分に肥料が充填されており、内径が20〜60mmであり、かつ、ロープの材質が比重1未満となる素材の中から選ばれる1種以上からなることを特徴とする海藻養殖用肥料入りロープ。
【請求項2】
長さが7〜25mであることを特徴とする請求項1記載の海藻養殖用肥料入りロープ。
【請求項3】
海水中で10〜40日で、溶出する直径1〜10mmの緩行性肥料を充填してなることを特徴とする請求項1又は2記載の海藻養殖用肥料入りロープ。
【請求項4】
緩行性肥料が、被覆肥料であることを特徴とする請求項3記載の海藻養殖用肥料入りロープ。
【請求項5】
海藻養殖網の耳綱(端のロープ)、海藻養殖用ロープ、又は海藻養殖網を固定するロープに、請求項1〜4の何れか一つに記載の海藻養殖用肥料入りロープを固定することを特徴とする海藻養殖用肥料入りロープの施肥方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−263815(P2010−263815A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116609(P2009−116609)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000208787)第一製網株式会社 (24)
【Fターム(参考)】