説明

海難救助用スーツ

【課題】遭難者が衣服を着用した状態で迅速にスーツに入ることができ、着装者を波、雨および風から保護する容器として機能し、低体温に対して適切に防護する海難救助用スーツを提供する。
【解決手段】海難救助用スーツ1は、遭難者の身体を収納できるゆったりした身体収納容器2を備える。この身体収納容器2は、プラスチック層によって形成され、気密空気室によって外側カバーから分離した内側カバーによって囲まれる。身体収納容器2には、展開できる頭部スリーブ3および外側スリーブ4を有する頭部開口部2bから到達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さまざまな産業技術および船舶などの交通手段に関し、海上をはじめとする水上環境で用いる海難救助装置に関する。
【0002】
詳しくは、着装者を完全に浮かんだ状態で維持し、着装者が身体収納容器内で動作できる海難救助用スーツに関し、本スーツは、水が入ってくるのを防ぎ、着装者を寒さから防護し、頭部の周辺領域を保護し、救助を待つ間に雨水を収集する。
【背景技術】
【0003】
今まで、主にスーツやワンピースなどの救助装置がいくつか知られており、船舶が難破する前の攻撃要因(火炎、高温など)および/または難破した後の攻撃要因(水中滞在、低温など)から遭難者の身体を、保護する。
【0004】
特許文献1に挙げられるスーツが知られている。このスーツは、上部または頭部の開口部と前部または胸部の拡張可能な開口部の2つの独立した開口部を備える。後者は、スーツの内側の浮袋が漏れて浸水する危険性のある窮屈なシステムに基づいている。
【0005】
特許文献2は、スーツが膨張可能な室部を備えることを示すが、このような室部はスーツ全体を覆わず、着装者の呼気で浮袋に空気を入れる領域に位置している。
【0006】
特許文献3は、部分的に拡張可能なスーツを示すが、拡張可能なスリーブを備えていない。このスーツは、頭部や顔面を覆う手段を備えず、単に垂直に浮くように作製されている。
【0007】
特許文献4は、着装者は容量が拡張可能な上部開口部から入り、顔面の周りを固く締めるスーツを示している。スーツの上端部を拡張して管状にすることができるが、実際、スリーブは管状になっていない。また、このスーツは垂直に浮かぶ。材質には、防水性があるものの、断熱性はない。また、浮揚を維持するために膨張式浮袋を必要とする。
【0008】
特許文献5は、断熱性および浮揚性がある小さい浮袋を使用しているが、このような浮袋は、恒久的に閉じず、膨らませる必要がある。このため、その機能を実施するために膨らませる必要がある。
【0009】
特許文献6は、頭部および顔面を保護するスーツについて言及し、排泄物を収集する衛生能力を備え、固形食を摂取し、液体を飲用することができ、着装者はスーツ内でわずかに動作することができる。こうした動作によって、着装者は、たとえばスリーブから腕を出し、胴体の方に脚を動かし、身体部分を摩ることができる。このような動作は、着装者がスリーブから腕を出し、胎児のような姿勢で脚を曲げることができる蛇腹または折り目、柔軟性および材質によって可能となる。このスーツでは極端な温度に対して適切に保護できず、着装者は寒さに露出することから、このような姿勢をとると考える必要がある。
【0010】
特許文献7は、壁部に2つの胞状のプラスチックシートを備える衣類を示し、プラスチックシートの間には空気室部があり、プラスチックシートはアルミニウム熱反射層を備えている。このスーツは、上部開口部に拡張可能なスリーブを備えておらず、防護具がない。
【0011】
特許文献8は、拡張可能なスリーブを備えていないが、頭部開口部に、重ねることができる外側フードおよび内側フードの2つのフードを備えるスーツを示している。
【0012】
このほかに、同じ発明者の特許文献9の耐火スーツが知られている。このスーツの壁部は胞状のプラスチック層要素を備えず、手袋がゴムとアスベストで作製され、縫い合わせて密封される。このスーツは、防水性があり、水を収集できる巻上式の防護具や拡張可能な外側スリーブを備えず、着装者の身体に適合するスーツである。
【0013】
このほかに、同じ発明者の特許文献10の耐久性のある救助用スーツが知られている。このスーツの壁部は、外層を備えず、内層を用いて絶縁気密の浮袋を形成する。また、このスーツでは、着装者はスーツに入る前にベストおよびフードがある衣服を着用する必要がある。
【0014】
一般に、従来のネオプレンスーツは、低温から着装者を適切に保護していない。外側の冷たい液体(海、湖、川などの水)は、ネオプレンを介して身体とスーツの間に存在する液体と湿度に作用し、温度は14℃となる可能性がある。液体が空気より30倍の速さで伝導することが指摘されている。
【0015】
さらに、濡れた顔面を露出すると、空気伝導が(20〜60km/h以上で)促進されるため、顔面に触れる水滴が冷却され、体温が低下する。このように寒さに露出することはきわめて悪影響を及ぼし、いくつかのスーツでは、足、手首、手およびファスナーの周辺領域が露出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第1102772号明細書
【特許文献2】米国特許第1314299号明細書
【特許文献3】米国特許第2181150号明細書
【特許文献4】米国特許第2761154号明細書
【特許文献5】米国特許第4242769号明細書
【特許文献6】米国特許第4599075号明細書
【特許文献7】米国特許第4704092号明細書
【特許文献8】米国特許第5560043号明細書
【特許文献9】アルゼンチン国特許出願第040104230号明細書
【特許文献10】アルゼンチン国特許出願第080101604号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明には、いくつかの目的があり、言わば多数の利点がある。
【0018】
本発明は、遭難者が衣服を着用した状態で迅速にスーツに入ることができ、この動作は着用している衣服または靴によって妨げを受けない。
【0019】
スーツは、迅速に着装できるため、難破船から迅速に避難することができる。
【0020】
スーツを着装するのに有用な同一の開口部には、頭部を含めて覆うのに有用な拡張可能な内側スリーブがある。この内側スリーブには、これを閉じる複数の位置があり、顔面に巻いて閉じるか、顔面で閉じて顔面全体を覆うか、首の周りを閉じて頭部を自由な状態にするフードとしての機能がある。
【0021】
外側スリーブを拡張して閉じても、内側スリーブを開いた状態することが可能であり、着装者は、外側スリーブの内側に頭部、胴体および手を入れた状態で、カヤックなどのように座ることができ、救助艇、救助船または救助ヘリコプターを視認し、救助を受けることができる。着装者が、腰に外側スリーブを密着させてカヤックなどのように座っても、スーツの外側で頭、胴体および腕を動かすことができる。
【0022】
外側スリーブを拡張して閉じても、着装者はスーツの中を見たり、スーツに備えたオールを使用したり、水を飲んだり、食物を食べたり、排泄物を捨てて衛生を保ったり、運動やマッサージをしたり、ベストを外してほかの衣服を着たり、傷口を密封したり、睡眠をとったりすることなどが可能である。
【0023】
このほか、拡張した外側スリーブは、着装者を波、雨および風から保護する容器として機能し、断水性を得ることができる。
【0024】
拡張可能なスリーブを適切に取り扱うことによって、内側の収納容器または空間から高温空気の余剰分を取り込むか、熱を蓄積し、雨が降れば、双方の拡張可能なスリーブの間に真水を収集することができる。
【0025】
双方の拡張可能なスリーブが容易かつ迅速に開けられることから、着装者が輸送機(船、ヘリコプターなど)のあらゆる救出手段に乗り込むときに、水の中でスーツを脱装することが簡便である。
【0026】
収納容器が広いため、スーツの内側で、さまざまな動作をすることができる。たとえば、スーツ脚部からスーツ主要部の方に脚を抜いたり、袖部から腕を抜いたり、快適となるようにさまざまな浮いた状態に変えたりすることができる。
【0027】
胞状のシートによって得られる浮力、気密室部および身体収納容器によって、スーツに水をほぼ完全に入れないようにし、これにより、水温が低い場合、身体が水に接触する領域を減らして、身体が寒さに露出しないようにできる。
【0028】
同時に、着装者は顔面、首、手および腕を保護し、水に対して100%気密するバリアを保持し、低体温に対して適切に防護する。その結果、着装者は冷水中に長く滞在することができる。
【0029】
周辺温度から絶縁されるのは、空気が含まれているだけでなく、一連の(カバーおよび胞状のシート内の)対流性と、(二層化が可能、言わば、各シートで2層に微細アルミ加工することによって得られる)熱透過性とが増大することによるものである。
【0030】
たとえば、対流過程では、密度がきわめて低い胞状の層を用いれば、高温環境からの熱交換速度や熱漏出速度が低くなる。胞状の層に含まれる空気には、1)対流過程があり、2)熱透過性を支配する質量密度がきわめて低い領域を有する空間が形成される。(注意:熱を屈折することも、蓄積することも、伝導することもできない質量が存在しない領域とは異なり、質量が高い鉄の場合、熱透過性を阻害したり、低下させたりする。)
【0031】
対流のさまざまな過程によって断熱性が増大し、伝導性および熱透過性が喪失している場合、着装者の身体と水との間で温度がわずかに交換され、これにより、着装者は長時間冷水に滞在でき、スーツを着装したときに濡れても、身体は正常体温に回復する。本スーツでは、浮揚性の差が著明であり、耐熱性が増大し、水との接触表面を小さく維持することから、寒さに露出する領域を減少させるために胎児のような姿勢で脚を入れる必要はない。
【0032】
本スーツは、水からほぼ全身を浮揚させ、これにより、きわめて容易に背泳ぎや平泳ぎができ(風向きおよび/または潮流に対向しても容易であり)、このほかの利点として、破裂、引裂または浸水の場合に、胞状の層、気密室部および身体収納容器の空気があるため、スーツの内側の浮袋は喪失しない。
【0033】
断熱は、空気が含まれているだけでなく、(たとえば、密度がきわめて低い胞状の層に一体化されることにより、高温環境からの熱交換速度や熱漏出速度を減少させる繊維内部および胞状構造内ならびにこのような胞状の層の間に存在する空気室部内)の一連の対流過程と、(微細アルミ加工によって得られる)熱透過性とが増強されていることにより発生する。いくつかの対流過程や熱透過過程によって断熱性が増大すると、着装者の身体と水との間の温度交換はほとんど消失する。
【0034】
本スーツには、薄膜形態のアルミニウムを含めてよく、この材料によって、遭難者の体温を維持する現象であり、中空繊維内に内部透過し、スーツ外側に熱透過し、スーツ容器内側に内部透過し、電導体のない領域内で対流し、さらには絶縁系全体に投射する、換言すれば、繊維内側では、胞状空間や胞間空間に閉じ込められた空気が環状に対流することによって層内側の内部透過過程を引き起こして断熱する現象が起きる。その結果、閉じ込められた空気は、(各胞内側の)放射と対流により作用を発揮する。
【0035】
試験は、さまざまな低温環境と着装者体温(36℃/37℃)下では、スーツ容器の温度は約33℃で一定であることを明確に示した。8時間−2℃の水に頭部スリーブが開いた(結果として、頭部開口部から熱損失があった)状態で実施した浸漬試験では、容器温度が28℃であることを明確に示した。通常、着装者が容器内で動かない状態でいる必要があるが、この温度は、生存可能な温度であるだけではなく、快適温度でもある。スーツがキャビンと同じくらい広いことから、着装者は容器の主要部に引き込んだり、冷やすように、腕や脚をスリーブから出してさらに露出したりすることができる。
【0036】
また、スーツは部分的に水から浮揚でき、容器は乾燥環境を作るという事実によって、スーツの熱容量が得られる。
【0037】
本スーツには、このほかにも、顔面を濡らさずに、平泳ぎができ、複雑な機構がなく(たとえばファスナー)、操作は安全であり、摩擦や機械的に加わる力に対して抵抗性が高い外側カバーを備え、耐火カバーなどを備えるという利点がある。
【0038】
本発明の目的を明らかにし、理解するために、限定例とはならない説明目的の実施形態の好ましい態様の1つを示すいくつかの図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本海難救助用スーツの上面図である。
【図2】いくつかの補助要素が展開した本海難救助用スーツの上面図である。
【図3】実施形態の考えうる一態様の内側浮袋の詳細な上面図であり、丸い胞状部分を示す図である。
【図4】実施形態の考えうる別の態様の内側浮袋の詳細を示す上面図であり、長方形の胞状部分を示す図である。
【図5A】図3に示すA−A線に沿った内側浮袋および外側浮袋の断面図である。
【図5B】図4に示すB−B線に沿った内側浮袋および外側浮袋の断面図である。
【図5C】実施形態の別の態様の内側浮袋および外側浮袋の断面図である。
【図6】外側スリーブが拡張した海難救助用スーツの斜視図である。
【図7】海難救助用スーツの上部斜視図であり、頭部スリーブが畳まれ、保護スリーブで囲まれていることを示す図である。
【図8】海難救助用スーツの別の上部斜視図であり、拡張した頭部スリーブが接合部によって保護スリーブに連結した状態を示す図である。
【図9】海難救助用スーツの別の上部斜視図であり、頭部スリーブの周りで外側スリーブが拡張している状態を示す。
【図10】展開した断熱装置の上面図であり、海難救助用スーツの外形と比較して示す図である。
【図11A】展開した断熱装置の上面図である。
【図11B】羽部を巻いて畳んだ未使用時の断熱装置の上面図である。
【図11C】畳んで包んだ断熱装置の上面図である。
【図12】畳んで包んだ断熱装置の上面図であり、海難救助用スーツの外形と比較して示す図である。
【図13】海難救助用スーツの別の上部斜視図であり、フード型のヘルメットを備えた拡張可能な外側頭部スリーブが拡張していることを示す図である。
【図14】防護具の配置を示す本海難救助用スーツの上面図である。
【図15】防護具の配置を示す本海難救助用スーツの背面図である。
【図16】スーツの標準アセンブリから外した防護具の上面図である。
【図17】本海難救助用スーツの背面図であり、スーツ脚部の断熱補強部の位置を示す図である。
【図18】断熱補強部の内側層および外側層配置を示すスーツ脚壁部の詳細な断面図である。
【図19】さまざまな構成要素を配置するいくつかのコンパートメントおよび/またはポケットの配置を示す本海難救助用スーツの上面図である。
【図20】コンパートメントおよび/またはポケットの位置を示すスーツの部分縦断面図である。
【図21A】容器内側に身体がある状態の着装者の位置を示す本スーツの縦断面図である。
【図21B】拡張可能な頭部スリーブの内側に頭部がある状態の着装者の位置を示す本スーツの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
異なる図面では、同じ参照番号および/または同じ文字は、同一または対応する部分を示す。
【0041】
一般に、本発明は、浮くミニキャビンとして遭難者の身体を収納できるゆったりした身体収納容器(2)を備える海難救助用スーツに関する。この身体収納容器(2)は、プラスチック層(12)(15)(14)によって形成され、気密空気室(2a)によって外側カバー(20)から分離した内側カバー(11)によって囲まれる。身体収納容器(2)には、展開できる頭部スリーブ(3)および外側スリーブ(4)を有する頭部開口部(2b)から到達する。
【0042】
詳細な説明 具体的には、本海難救助スーツ(1)は遭難者の解剖学的形態による容器(2)を備える。しかし、容器(2)の内側では、装着者が動作できるほど十分にゆったりしており、このため、浮くミニキャビンに似ていることを着想している。
【0043】
スーツ側(1)は、2つの上部拡張部が突出し、2つの閉じたミトン(la)で終端し、底部は、2つのスーツ脚部(1b)が突出し、2つの閉じた足部で終端する。
【0044】
この身体収納容器(2)は、内側カバー(11)および外側カバー(20)内にあり、気密空気室(2a)によって分離される少なくとも2つのカバー(11)(20)によって囲まれる。この身体収納容器(2)は、第3のカバーまたは保護カバー(21)を備え、その構成によって炎に対する遅延能力などの保護能力を備えることが見込まれる。
【0045】
内側カバー(11)は、第1(12)、第2(15)および第3(13)のプラスチック層を備える。第1のプラスチック層(12)の内側には、第1(12a)および第2(12b)のプラスチック層があり、この間にはアルミニウムなどの断熱材によって形成される断熱層(13)がある。
【0046】
第2のプラスチック層(15)は、胞状型のものであり、空気を満たし、密閉した複数の胞状部分(15a)を備える。このような部分は、第3のプラスチック層(14)に第1のプラスチック層(12)を連結する複数の胞状壁部(15b)によって囲まれる。この態様の実施形態では、胞状部分(15a)は円形であり、これにより、壁部では、胞間部分(15c)の形状が決まる。
【0047】
第3のプラスチック層(14)には、第3(14a)および第4(14b)のプラスチック層があり、この間にも断熱層(13)がある。別の態様の実施形態では、断熱層(13)の外側と、第4のプラスチック層(14b)の内側には、たとえば派手な色の塗料が塗装された標識層(14c)がある。
【0048】
外側カバー(20)は、1または複数の層の適切なプラスチック材によって形成されるプラスチック層を備えてもよい。
【0049】
一方、スーツ(1)の身体収納容器(2)には、頭部開口部(2b)から到達可能であり、その縁部は、展開できる頭部スリーブ(3)に突出し、展開できる外側スリーブ(4)によって囲まれ、スリーブ(3)(4)の外側部には、展開できる保護スリーブ(5)がある。
【0050】
展開できる頭部スリーブ(3)は、透明プラスチック層によって形成してもよく、頭部(3a)を把持する手段に終端部があってもよく、これにより、着装者の顔面でスリーブ縁(3)を調整することができる。言及した頭部スリーブ(3)は、着装者の頭部をさらに保護し、言及した着装者の頭部に着用するために、ヘルメット、フードまたはカバー(3b)を備えることが見込まれる。例えば、頭部と顔面の大部分を覆う「フード」型のヘルメット(3b)を備えることが見込まれる。このヘルメット(3b)は、プラスチック層、断熱層および保護層を備える多層材で構成してもよい。
【0051】
展開できる外側スリーブ(4)が頭部スリーブ(3)を囲んでいる。外側スリーブは、透明であってよく、展開して頭部スリーブ(3)の周りの隣接容器(4b)を作製してもよい。この隣接容器(4b)には、さまざまな用途がある。そのうちの1つでは、遭難者の頭部の周りに保護環境を作ることが可能である。別の用途では、雨水を収集する容器であってよい。
【0052】
外側スリーブ(4)の外側部分には、スーツ(1)の保護カバー(21)に似た繊維で作製され保護スリーブ(5)がある。この保護スリーブ(5)は、接合部(5a)を備え、詳細には、展開できる頭部スリーブ(3)に接合し、外側スリーブ(4)が畳んでいても、展開することができる。
【0053】
プラスチック層(12)(15)(14)を形成する材料に関して、直鎖状低密度ポリエチレンや2軸延伸ポリプロピレンなどの化合物の使用が見込まれる。この種類の試料を用いれば、耐水性が高く、断熱層(13)として作用する[微細アルミ加工した]金属層を形成することができる。
【0054】
一方、本スーツ(1)は防護具を備え、その帯がスーツ脚部把持部(51)、胴体部把持部(52)(53)(54)(55)、胸部固定部(30a)および背面部固定部(31)を形成する。詳細には、スーツ脚部(1b)、着装者の体幹が位置する容器(2)の中央部分、肩の周りに配置される複数の帯を備える。
【0055】
帯は、スーツ脚部把持部(51)、腰部把持部(52)、交差胸部把持部(54)のセットと、胸部把持部と背面部把持部のセットを形成する。
【0056】
胸部把持部および背面部把持部は、腰部把持部(52)と交差胸部把持部(54)に肩越しに連結する胸部把持部(53)のセットを備える。背面部把持部(55)は、腰部把持部(52)の終端部まで延伸して交差する。
【0057】
たとえば防護具(50)は、保護カバー(21)の内側部に固定してもよいことが見込まれる。
【0058】
また、防護具(50)は前部固定部(30a)(31)と背面部固定部(56)を少なくとも1セット備える。一態様の実施形態では、この背面部固定部(56)は、着装者が必要とする場合に使用できるように、十分長くして一時的に固定するスーツ(1)の前面に通常設けてもよい。
【0059】
開いたベストとして身体収納容器(2)の内側に置かれる断熱付属品(40)を用いることが見込まれる。この断熱付属品(40)は、背面部(41)を備え、背面部(41)からは、頭部羽部(43)と2つの側面カバー羽部(42)が突出している。このような側面カバー羽部(42)は、使用されない場合、巻いた位置または畳んだ位置(42a)にあってよい。使用する場合は、遭難者の身体の周りで畳み、その位置で維持するファスナー(44)で固定される。
【0060】
さまざまな補助装置が追加されることが見込まれる。たとえば、胸部コンパートメント(22)から命綱(30)、補助器具(32)などを使用できる。また、スーツ脚部(1b)、標識手段(33)などを把持するロープ(1c)の固定部をほかに備えることができる。
【0061】
また、スーツ脚部の断熱補強部(60)のセットを備えることができ、この補強部は、各スーツ脚部(1b)の背面部に位置することが見込まれる。
【0062】
補強部は、内側カバー(11)と外側カバー(20)との間に位置している断熱壁であり、着装者のひざ背面部の高さにある。補強部は、少なくとも1つの断熱層(13)を備える第1のプラスチック層(12)と、第2の胞状のプラスチック層(15)と、少なくとも1つの断熱層(13)を備える第3のプラスチック層(14)を備える。
【0063】
本発明では、特定の構成の詳細および形態が考慮されるかぎり、本願の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな改変が可能であることは明らかである。
【0064】
特に、本発明の本質を説明し、確立したように、その実現方法に従い、独占権および所有権を請求する。
【符号の説明】
【0065】
1 救助スーツ
1a スーツミトン(1)
1b スーツ脚部(1)
1c スーツ脚ベルト(1b)
2 身体収納容器
2a 気密室部
2b 頭部開口部[この部分から身体収納容器(2)に到達する]
3 拡張可能な頭部スリーブ
3a 頭部把持手段[拡張可能な頭部スリーブ(3)の開口部を密着させる]
3b 頭部ヘルメットまたは頭部カバー
3c 拡張可能な壁部
3d 視界開口部
3e 頭部標識
4 拡張可能な外側スリーブ
4a 外側把持手段[拡張可能な外側スリーブ(4)の開口部を密着させる]
4b 隣接容器[拡張可能な頭部スリーブ(3)の周りの拡張可能な外側スリーブ(4)によって形成される]
5 保護スリーブ
5a 拡張可能な頭部スリーブ(3)とカバースリーブ(5)との間の接合部
11 内側カバー
12 第1のプラスチック層
12a 第1のプラスチック層12の第1の層
12b 第1のプラスチック層12の第2の層
13 断熱層
14 第3のプラスチック層
14a 第3のプラスチック層(14)の第3の層
14b 第3のプラスチック層(14)の第4の層
14c 標識層
15 第2の胞状のプラスチック層
15a 胞状部分
15b 胞状壁部
15c 胞間部分
20 外側カバー
21 保護カバー
22 上部コンパートメント
30 命綱
30a ロープ固定部
31 巻上式前部固定部
32 救助笛
33 標識手段
40 断熱付属品
41 付属品(40)背面部
42 カバー羽部
42a 巻いた状態または畳んだ状態のカバー羽部
43 頭部羽部
44 閉じ手段
50 防護具
51 スーツ脚部の締め具
52 腰部の締め具
53 前部の締め具
54 胸部の締め具
55 交差した背面部締め具
56 背面部固定部
60 断熱補強部
61 前部コンパートメントまたはポケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に遭難者の身体を収容することを目的とし、浮力によって浸水しないように作製される海難救助用スーツであって、
前記遭難者の解剖学的形態に従って形成される容器であり、十分ゆったりしており、浮くミニキャビンのように、該容器の内側で前記遭難者が動作可能であり、
前記容器は少なくとも2つのカバーによって囲まれ、
前記カバーは、気密空気室によって分離される内側カバーおよび外側カバーを備え、
前記の内側カバーは、少なくとも1つの断熱層を備える少なくとも1つの第1のプラスチック層と、第2の胞状のプラスチック層と、少なくとも1つの断熱層を備える第3のプラスチック層とを備え、
前記外側カバーは、少なくとも1つのプラスチック層を備える容器と、
頭部カバーとして展開可能であり、把持手段を有する頭部スリーブと、
前記頭部スリーブの外側部分に展開可能であり、前記頭部スリーブの周りに周囲容器を形成できる外側スリーブとを備えることを特徴とする海難救助用スーツ。
【請求項2】
前記外側スリーブは、展開して前記頭部スリーブの周りに保護環境を形成するか、雨水を収集するのに使用可能な容器を形成可能であることを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項3】
展開可能であり、前記頭部スリーブに連結する手段により、展開すると前記頭部スリーブの外側部分を覆う保護スリーブをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項4】
保護材料で作製され、特有の側面を有する第2の外側層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項5】
固定されるか、着脱可能であり、開いたベストとして容器の内側に位置する断熱付属品であり、畳んで閉じて前記遭難者を覆うことが可能な前記付属品の壁部を有する断熱付属品をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項6】
内側に展開可能な少なくとも1つのロープがある到達可能な外側コンパートメントをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項7】
前記スーツを密着させる手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項8】
前記気密空気室は、前記内側カバーと前記外側カバーとの部分的に気密な接合部によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項9】
前記内側カバーは、前記外側カバーの内側に配置され、双方のカバーは、首部で密閉して接合され、双方のカバーの間で気密空気室が形成されることを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項10】
帯が前記スーツ脚部把持部、胴体部把持部、胸部固定部および背面部固定部を形成する防護具をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項11】
前記スーツ脚部、前記胴体部および前記肩部の周りにあり、
スーツ脚部把持部のセットと、
腰部把持部と、
前部で分離し、前記肩部を超えて突出し、前記背面部で交差した前記背面部把持部と胸部把持部のセットと、
前記背面部把持部と前記胸部把持部との間に延伸する交差胸部把持部とを形成する複数の帯を備えることを特徴とする請求項10に記載の海難救助用スーツ。
【請求項12】
前記防護具は、前記前面に到達可能であり、前記着装者の手が届く範囲に維持する前部把持手段を有する少なくとも1つの背面部巻上式固定部を備えることを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項13】
前記スーツ脚部の断熱補強部のセットを備え、各スーツ脚部の背面部にはそれぞれ、層を有する断熱壁部を備え、前記断熱壁部は、前記内側カバーと前記外側カバーとの間に位置し、前記着装者のひざ背面部の高さにあることを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項14】
少なくとも、プラスチックラミネート加工された低密度ポリエチレン(LDPE)および2軸延伸ポリプロピレン(BOPP)から成る群から選択される材料をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の海難救助用スーツ。
【請求項15】
2つの閉じたミトンで終端となる上部延伸部のセットと、2つの閉じた足部で終端となるスーツ脚部のセットとをさらに備える請求項1に記載の海難救助用スーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【公開番号】特開2011−98721(P2011−98721A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−246108(P2010−246108)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(510291529)