説明

消却対価等算出装置、消却対価等算出方法およびコンピュータプログラム

【課題】 資金調達のバリエーションとして、発行会社がエニイタイムコールを行使できる新株予約権につき、合理的に新株予約権価額およびその消却対価を算出する手法を提供する。
【解決手段】 新株予約権の発行条件関連データと予約権価値の演算式等を用いて、(1)発行会社が受け取るべきエニイタイムコール猶予期間に相当するコール・オプションのプレミアム、(2)権利行使によって新株予約権の投資家が得られる価値である新株予約権の本質的価値が、新株予約権発行の際に発行会社が投資家から受取った新株予約権の発行価額を上回った時点で、発行会社がエニイタイムコールを行使するとの前提で算定した新株予約権の価値、(3)収益率考慮プレミアム額、という3つのアプローチにより、エニイタイムコールが付された新株予約権の新株予約権価額およびその消却対価を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新株予約権において、発行会社にエニイタイムコールが付与された場合の消却対価等を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
新株予約権とは、平成13年11月の商法改正で新たに導入された概念であり、新株予約権を有する者(以下、「新株予約権者」という。)が会社に対してそれを行使したときに、会社は新株予約権者に対して、新株を発行し、または、これに代えて会社の有する自己株式を移転する義務を負うものをいう。
【0003】
新株予約権者は、あらかじめ定めた一定期間(行使期間)内であればいつでも、あらかじめ定めた一定の金額(権利行使価額)の払込みを行うことによって、発行会社の株式を取得する権利を有する。この権利を取得する対価として、新株予約権者は、新株予約権の発行に際して発行価額(以下、「プレミアム」という。)を発行会社に支払う。新株予約権者は、発行会社の株価が上昇すれば新株予約権を行使して、時価株価と権利行使価額の差額分の利益を取得することができる反面、株価が上昇しなければ、権利行使をする機会が得られず、プレミアム相当額の損失を被ることとなる。新株予約権の購入を希望する投資家は、株価が上昇しない場合にプレミアム相当額の損失を被るリスクと株価値上がりによるリターンとを勘案して、新株予約権を購入することになる。
【0004】
新株予約権は、発行会社に対して、その株式を特定の条件で発行または譲渡するよう請求する権利であり、この権利は、株式を目的としたコール・オプションの一種ということができ、新株予約権の発行価額がオプション・プレミアムに相当するということになる。
【0005】
さて、オプションは、「ヨーロピアンタイプ」と「アメリカンタイプ」に分けることができる。「ヨーロピアンタイプ」は、予め定められた満期日にのみ権利行使が可能な取引形態である。一方の「アメリカンタイプ」は、満期日までの期間であれば自由に権利行使が可能な取引形態となっている。
【0006】
前記のヨーロピアンタイプのオプション価値算出に際しては、「ブラックショールズモデル」を用いるのが一般的である。
また、アメリカンタイプのオプション価値算出に際しては、「ツリーモデル」を用いるのが一般的である。このツリーモデルは、株価が対数正規分布に従って運動し、投資家の投資価値を最大化するような点で権利行使を選択し、速やかに株価を変動させることなく売買できるという前提で価値を集計して、現時点における価値を理論値としている。
なお、「アメリカンタイプ」における満了なしオプションに対する純価格を決定するための技術として、特許文献1に開示される技術が発見された。
【0007】
【特許文献1】特表平10−509257号公報
【0008】
ところで、改正商法では、発行会社は、取締役会による新株予約権発行の決議において新株予約権を消却することができるとして定めた事由が発生したときに限り、取締役会の決議により、新株予約権を消却できる旨が規定されている。取締役会が新株予約権の消却の決議をしたときは、会社はその旨、消却されるべき新株予約権および一定の期間内(1ヵ月を下ってはならない)に新株予約権証券を提出すべき旨を公告し、かつ、新株予約権者に対して通知する。上記の提出期間満了の時に消却の効力が生ずることとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さて、資金調達を欲する株式会社(以下、「A社」と記す)としては、資金調達の種類は多いほど選択の余地があるので望ましい。前述のエニイタイムコールが付与された新株予約権の発行も資金調達の新たなバリエーションと言えよう。
A社が発行するエニイタイムコールが付与された新株予約権の購入を検討している会社(以下、「B社」と記す)としては、新株予約権の発行価額が通常のコールオプションと同水準では魅力がない。B社としては、通常のコールオプションに投資した場合には、A社株の株価が高いときにオプションを行使して新株を取得して利益を獲得できるのに対して、エニイタイムコールが付与された新株予約権に投資した場合には、A社株が上昇した時点で権利行使前に新株予約権が消却されるというリスクを負うことになるからである。
【0010】
従来のオプション取引においては、オプションの売り手がいつでもオプションを消滅させることができるというスキームのものは一般的ではなく、このようなオプションのプレミアムを算定する方法・システム・算出装置は見られなかった。
また、改正商法では、新株予約権に消却の条件を付与できる旨規定しているものの、これは、例えば、ストック・オプション目的で取締役にその地位の維持を条件として新株予約権を付与したがその者が退職した場合などに対処することを企図していたものとみられ、取締役会が適当と判断すればいつでも消却できることまでは想定していなかったものと思われる。
したがって、発行会社にエニイタイムコールが付与された新株予約権を合理的に運営するためのシステムも存在しなかった。
【0011】
本発明は、発行会社および投資家双方にメリットのある、エニイタイムコールを付与された新株予約権の取引における合理的な消却対価等を算出する技術を提供することにある。
請求項1から請求項3に記載の発明は、発行会社および投資家双方のメリットを損なうことなく、エニイタイムコールを付与された新株予約権の消却対価等を算出するシステムを提供することを目的とする。
請求項4に記載の発明は、発行会社および投資家双方にメリットのある、エニイタイムコールを付与された新株予約権の消却対価等を算出するプロセス発明を提供することを目的とする。
請求項5から請求項7に記載の発明は、発行会社および投資家双方にメリットのある、エニイタイムコールを付与された新株予約権の消却対価等を算出するコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(請求項1)
請求項1記載の発明は、投資家に対して発行会社が発行する任意の時期に発行会社が消却可能という条件であるエニイタイムコールが付された新株予約権について、新株予約権価額およびその消却対価を算出する消却対価等算出装置に係る。
すなわち、前記新株予約権に係る発行条件に関連する発行条件関連データの入力を受け付ける発行条件関連データ入力手段と、予約権価値の演算式を含む固定データを記憶している固定データ記憶手段と、前記発行条件関連データおよび前記固定データに基づいて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出する消却対価等算出手段と、その算出された新株予約権価額および消却対価を出力する出力手段とを備える。
前記消却対価等算出手段は、前記発行条件関連データと予約権価値算出の演算式とを用いて発行会社が受取るべきエニイタイムコール猶予期間に相当するコール・オプションのプレミアムたるプレミアム下限額を算出する下限プレミアム算出手段と、権利行使によって新株予約権の投資家が得られる価値である新株予約権の本質的価値が、新株予約権発行の際に発行会社が投資家から受取った新株予約権の発行価額を上回った時点で、発行会社がエニイタイムコールを行使するとの前提で算定した新株予約権の価値たるプレミアム上限額を算出する上限プレミアム算出手段とを備え、そのプレミアム上限額と前記プレミアム下限額との間になるように新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出することとした消却対価等算出装置である。
【0013】
(用語説明)
「発行条件関連データ」とは、原証券である株式の価格、権利行使により投資家が取得する株数、権利行使価格、満期、エニイタイムコール猶予期間、ボラティリティ、金利などである。
「固定データ記憶手段」とは、一般には不揮発性の記憶装置であり、ハードディスクドライブ、ROMなどがある。ただし、固定データの差し替えや変更は、随時可能であるようなものを採用することが望ましい。
「予約権価値の演算式」とは、例えば二項モデル、三項モデル、ブラックショールズモデルなどがある。演算式には、例えば「ボラティリティ」を用いるものもある。ここで「ボラティリティ」とは、対象資産の価格の変動度合を表すもので、対象資産価格の変動率の標準偏差を年率換算したものである。新株予約権については、原証券である株式の変動率の標準偏差を用い、原証券である株式の価格を入力すれば、ボラティリティが決定できるようにしている。
「下限プレミアム算出手段」は、新株予約権の満期に代えてエニイタイムコール猶予期間を用いてプレミアム下限額を算出する。通常は、エニイタイムコール猶予期間の上限(例えば、猶予期間が30日であれば「30日間」を入力する)を用いる。
「消却対価等算出手段」は、算出中の値が所定の上限や下限を越えた場合には、変動させることができる値を許容範囲内で再設定入力して計算し直せるようなアルゴリズムを用意しておき、そのアルゴリズムにしたがって、消却対価等を算出するものである。
「出力手段」とは、モニタ画面、プリンタ、他の情報機器への送信手段などが含まれる。
【0014】
(作用)
予め、固定データ記憶手段には、予約権価値の演算式を含む固定データが記憶されている。
まず、新株予約権に係る発行条件関連データ(原証券である株式の価格、権利行使により投資家が取得する株数、権利行使価格、満期、エニイタイムコール猶予期間、ボラティリティ、金利など)の入力を受け付ける。
前記発行条件関連データおよび固定データに基づいて、消却対価等算出手段が新株予約権の消却対価を算出する。ここで、消却対価算出手段は、下限プレミアム算出手段により、前記発行条件関連データと予約権価値算出の演算式とを用いて発行会社が受け取るべきエニイタイムコール猶予期間に相当するコール・オプションのプレミアムであるプレミアム下限額を算出する。また、上限プレミアム算出手段により、権利行使によって新株予約権の投資家が得られる価値である新株予約権の本質的価値が、新株予約権発行の際に発行会社が投資家から受取った新株予約権の発行価額を上回った時点で、発行会社がエニイタイムコールを行使するとの前提で算定した新株予約権の価値であるプレミアム上限額を算出する。そして、そのプレミアム上限額とプレミアム下限額との間になるように新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出する。算出された消却対価等については、出力手段を介して出力される。
出力された消却対価等は、プレミアム下限額とエニイタイムコールが行使されるリスクとが考慮された合理的な数値であり、満期以前に権利が消滅するリスクがある分、標準的な満期のオプションに比べて、低い価格でオプションの対価を設定されることとなる。したがって、新株予約権の投資家、発行会社の双方にとって、妥当な値を得ることができる。
【0015】
(バリエーション)
新株予約権の原証券である株式の銘柄が同じでも、「投資家」に提示される商品(すなわち、消却対価等が異なるもの)は複数存在することがある。
「発行条件関連データ」、「固定データ」および予約権価値算出の演算式との関係を説明する。「固定データ」には、発行条件関連データが決まれば一対一で決定されるような係数などがある場合には、当該発行条件関連データとのデータテーブルなども含まれることとしてもよい。一方、発行条件関連データが決まれば一対一で決定されるような係数などがある場合に、それを予約権価値算出の演算式として含まれることとしてもよい。
【0016】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の消却対価等算出装置を限定したものであり、
前記消却対価等算出手段には、理論収益額と期待収益率とを用いて収益率考慮プレミアム額を算出する収益率考慮プレミアム算出手段を備え、新株予約権の新株予約権価額および消却対価は、プレミアム下限額とプレミアム上限額に加えて収益率考慮プレミアム額をも用いて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出することとしたことを特徴とする。
【0017】
(作用)
請求項1記載の消却対価等算出装置では、プレミアム下限額とプレミアム上限額との間にて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を探るものであるが、請求項2記載の消却対価等算出装置では、収益率考慮後プレミアム額をも考慮された新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出できる。そのため、投資家、発行会社の双方にとって、更に妥当な値を得ることができる。
【0018】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の消却対価等算出装置を限定したものである。
すなわち、市場における株式売買高に対して売却対象株数が過大である場合にその売却によって下落する株価の割合である売却インパクトを算出する売却インパクト算出手段を備えるとともに、算出された売却インパクトをも用いて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出することとしたことを特徴とする。
【0019】
(請求項4)
請求項4に記載した発明は、投資家に対して発行会社が発行する任意の時期に発行会社が消却可能という条件が付された新株予約権についてその新株予約権価額および消却対価を算出する消却対価等算出方法に係る。
すなわち、予約権価値の演算式を含む固定データを予め記憶している固定データ記憶手順と、前記新株予約権に係る発行条件に関連する発行条件関連データの入力を受け付ける発行条件データ入力手順と、前記発行条件関連データと予約権価値算出の演算式とを用いてエニイタイムコール猶予期間に相当するコール・オプションのプレミアムであるプレミアム下限額を算出する下限プレミアム算出手順と、権利行使によって新株予約権の投資家が得られる価値である新株予約権の本質的価値が、新株予約権発行の際に発行会社が投資家から受取った新株予約権の発行価額を上回った時点で、発行会社がエニイタイムコールを行使するとの前提で算定した新株予約権の価値を算出するプレミアム上限額算出手順と、 そのプレミアム上限額とプレミアム下限額との間になるように新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出する消却対価等算出手順とを備えたことを特徴とする。
【0020】
(請求項5)
請求項5に記載した発明は、投資家に対して発行会社が発行する任意の時期に発行会社が消却可能という条件が付された新株予約権について、その新株予約権価額および消却対価を算出する消却対価等算出方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムに係る。
そのプログラムは、予約権価値の演算式を含む固定データを予め記憶している固定データ記憶手順と、前記新株予約権に係る発行条件関連データの入力を受け付ける発行条件関連データ入力手順と、前記発行条件関連データと予約権価値算出の演算式とを用いてエニイタイムコール猶予期間に相当するコール・オプションのプレミアムであるプレミアム下限額を算出する下限プレミアム算出手順と、権利行使によって新株予約権の投資家が得られる価値である新株予約権の本質的価値が、新株予約権発行の際に発行会社が投資家から受取った新株予約権の発行価額を上回った時点で、発行会社がエニイタイムコールを行使するとの前提で算定した新株予約権の価値を算出するプレミアム上限額算出手順と、そのプレミアム上限額とプレミアム下限額との間になるように新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出する消却対価等算出手順とをコンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0021】
(請求項6)
請求項6記載の発明は、請求項5に記載のコンピュータプログラムを限定したものである。
すなわち、理論収益額と期待収益率とを用いて収益率考慮プレミアム額を算出する収益率考慮プレミアム算出手順を備えるとともに、前記消却対価等算出手順は、プレミアム下限額とプレミアム上限額に加えて収益率考慮プレミアム額をも用いて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出することとしたコンピュータプログラムである。
【0022】
(請求項7)
請求項7記載の発明は、請求項5または請求項6に記載のコンピュータプログラムを限定したものである。
すなわち、市場における株式売買高に対して売却対象株数が過大である場合にその売却によって下落する株価の割合である売却インパクトを算出する売却インパクト算出手順を備えるとともに、前記消却対価等算出手順は、その算出された売却インパクトをも用いて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出することとしたコンピュータプログラムに係る。
【0023】
請求項5から請求項7に係るコンピュータプログラムは、記録媒体に保存して提供することもできるし、通信技術を用いて伝送することもできる。
ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体であり、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−R、MO(光磁気ディスク)、DVD−R、フラッシュメモリなどである。
【発明の効果】
【0024】
請求項1から請求項3に記載の発明によれば、発行会社および投資家双方のメリットを損なうことなく、エニイタイムコールを付与された新株予約権の消却対価等を算出するシステムを提供することができた。
請求項4に記載の発明によれば、発行会社および投資家双方にメリットのある、エニイタイムコールを付与された新株予約権の消却対価等を算出するプロセス発明を提供することができた。
請求項5から請求項7に記載の発明によれば、発行会社および投資家双方にメリットのある、エニイタイムコールを付与された新株予約権の消却対価等を算出するコンピュータプログラムを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本願発明を、図1から図12および実施形態に基づいて説明する。
新株予約権の発行会社(A社)とその新株予約権の割当を受けて投資をする投資会社(B社)との関係について、図1から図3に示す。
A社がエニイタイムコールが付与された新株予約権を発行し、B社は投資家としてその新株予約権を購入したとする。B社は、オプションのプレミアムに相当する新株予約権の発行価額を支払う。
【0026】
この新株予約権は、B社が権利行使価格に相当する現金を支払えば、権利行使請求期間中いつでもA社株式を買い取ることができるという権利である。
図2に示すように、B社は、証券市場において、取得したA社株式を権利行使価格を上回る株価で売却することにより、(売却株価−権利行使価格−1株当たりの新株予約権発行価額)×売却株式数の利益を得ることになる。B社には権利行使請求期間の間いつでも、そのような権利がある。
【0027】
ところが、A社は、発行した新株予約権を消却して、B社が有する上記の権利を消滅させることができる。A社としては、B社に新株予約権を行使されることを防止したい場合や、別の資金調達の目処がついたような場合に、新株予約権を消却することができる。これが「エニイタイムコール」である。
A社としては、その取締役会が承認すればエニイタイムコールに基づいて「消却」を宣言できる。エニイタイムコールが行使されると、B社は、そのエニイタイムコール後の所定期間しか新株予約権を行使できなくなる。その所定期間を「エニイタイムコール猶予期間」という。所定の猶予期間としては、ここでは営業日として「21日間」を定めている。
図3に示すように、B社は、エニイタイムコール猶予期間中に新株予約権を権利行使して新株を取得しない限り、保有する新株予約権が消滅し、その見返りにA社から消却対価を得ることとなる。A社は、B社の新株予約権を消滅させ、金融市場などで他の方法で資金を調達するといったことが可能となる。
【0028】
このエニイタイムコールが付された新株予約権の新株予約権価額および消却対価について、A社にもB社にも合理的な(あるいは魅力的な)額を決定する必要がある。消却対価等を算出して出力する様子を、図4を用いて説明する。
発行条件関連データ入力手段からは、発行条件関連データ(原証券である株式の価格、権利行使により投資家が取得する株数、ストライク(権利行使価格)、満期、エニイタイムコール猶予期間、金利など)の入力を受け付ける。また、客観性のあるボラティリティとして、当該株銘柄の株価推移などから算出されたヒストリカルなボラティリティとして「ヒストリカルボラティリティ」を入力する。この実施形態では、35%としている。
一方、固定データ記憶手段(例えばハードディスクまたはロム)には、予約権価値の算出式などの固定データを記憶しておく。この実施形態では金利が0.30%、配当コストが0.50%であると想定している。
そして、それら発行条件関連データと固定データとを用いて、消却対価等算出手段が消却対価等を算出する。その算出を極めて簡単に説明する。
【0029】
すなわち、まず、発行会社が受け取るべきプレミアム下限額を算出する。また、プレミアム上限額を算出する。そして、そのプレミアム下限額とプレミアム上限額とを用いて、その間の値を新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出するのである。
なお、図5に示すように、発行会社が受け取る上限プレミアムを算出し、プレミアム下限額とプレミアム上限額とに加えて収益率考慮プレミアム額をも用いて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出することとしてもよい。
以下、更に詳しく説明する。
【0030】
(図6)
図6は、下限プレミアム(a)を算出するためのステップを示したものである。
発行条件関連データがいくつか入力されるが、ここでは、原証券である株式の銘柄に関するヒストリカルなボラティリティデータとしてのヒストリカルボラティリティ(35%)を入力し、エニイタイムコール猶予期間を行使期間とするコールオプションの価値として下限プレミアム(a)を算出するのである。
期間が短いため、アメリカンコールオプション、ヨーロピアンコールオプションのいずれの算出方法にも差がないので、ここではブラックショールズ解析式を用いる。なお、計算方法についてのブラックショールズ解析式(場合によっては二項または三項のツリーモデル解析式)については、図4に示す固定データ記憶手段に予め記憶されている。
【0031】
(図7)
上限プレミアム(b)を算出するためのステップである。ここでは、ボラティリティとして投資家がこの水準であれば投資しても構わないと考えているであろうトレーダーボラティリティ(15%)を使用している。
上限プレミアム(b)の算出において、発行会社がある株価以上で合理的にエニイタイムコールを行使することを前提としている。なぜなら、一般的に発行会社は、特別な理由がない限り、資本充実のため早期の権利行使を望んでいるため、株価上昇にもかかわらず転換が進まない場合、株価が上記の「ある株価」以上であれば、発行会社はエニイタイムコールを行使することによって新株予約権者に権利行使を促すとみられるからである。
株価がストライク価格+消却対価の水準になった場合に、必ずエニイタイムコールが行使されるオプションの価値を計算する際には、ツリーモデルを使用し、格子点での株価が、ストライク価格+消却対価を超えると、発行会社がエニイタイムコールを行使して、自動的にエニイタイムコール猶予期間を満期とした短期オプションに移行するものとしている。ただし、新株予約権者は、権利行使をせずにエニイタイムコールに応じることによって消却対価を受け取ることもできるため、短期オプションの価値は以下のように表すことができる。すなわち、残存期間=エニイタイムコール猶予期間、ボラティリティ=トレーダーボラティリティ、として計算したアット・ザ・マネー(at the Money。以下、「ATM」という。)のオプション価値に消却対価を加えたものである。残存期間が短いので、ここでのオプション価値計算は、ツリーモデルではなく、ブラックショールズ解析式での代用を可能としている。
【0032】
(図8)
次に、アウト・オブ・ザ・マネー(out of the Money。以下、「OTM」という。)でエニイタイムコールを行使される場合のオプション価値(c)を算出するステップを、図8に示す。ここで算出されるOTMでエニイタイムコールを行使される場合のオプション価値(c)とは、前述のヒストリカルボラティリティ(35%)の代わりに中間ボラティリティ(25%)を用いて算出したものである。ここで、中間ボラティリティとは、投資家がこの水準であれば投資しても構わないと考えているであろうトレーダーボラティリティ(15%)とヒストリカルボラティリティ(35%)との間となるように算出された値である。
なお、中間ボラティリティの「25%」とは、1年後には1σ(約67%)の幅で、プラスマイナス25%の幅の中に収まると想定しているという意味である。
【0033】
中間ボラティリティ、ブラックショールズ解析式等を用いて、OTMでエニイタイムコールを行使される場合のオプション価値(c)が算出できたら、これに権利行使価額総額を乗じることによって、OTMでエニイタイムコールを行使される場合の期待収益額を算出する。
【0034】
(図9)
図9は、エニイタイムコールを行使されずに満期までオプションが存在し、ヘッジ可能な場合を想定したオプション価値を算出するものである。ここで、「ヘッジ可能な場合」とは、ヘッジを目的とした株式売却を売却インパクトなしに行うことができる場合を指す。満期までの期間が3年間と長いので、ツリーモデルを用いてオプション価値(d)を算出することとしている。ただし、ここでは売却インパクトが存在しない状態での算出とする。
【0035】
(売却インパクト)
通常のBSモデルやツリーモデルは流動性が無限に供給され、株式を売買してもそれ自体で株価は変動しない。つまり、ついている価格と同じ値で売買できることを前提にしている。しかし、流動性に比して過大な量の売買は株価を不利な方向に動かし、収益性を低める。ある銘柄をX株売れば何%下がるかは、一義的に決まるものではないが、何らかの形で定義することは可能である。そこで、銘柄をX株売った場合に下がる株価を「売却インパクト」と定義する。
【0036】
次に、算出されたオプション価値(d)に、権利行使価額総額を乗じることにより、エニイタイムコールを行使されずに満期までオプションが存在し、ヘッジ可能な場合を想定した期待収益額を算出する。
【0037】
(図10)
図10は、発行会社が、ある株価以上で合理的にエニイタイムコールを行使することを前提とした場合のオプション価値(e)を算出するものである。オプション価値(e)は、上限プレミアム(b)の算出で使用した、株価がストライク+消却対価で必ずエニイタイムコールが行使されるオプション価値算出モデルにおいて、ボラティリティをトレーダーボラティリティから中間ボラティリティに置き換えることにより算出される。
【0038】
次に、算出されたオプション価値(e)に、権利行使価額総額を乗じることにより、ATMを越えるとコールされる場合の期待収益額を算出する。
【0039】
(図11)
図11は、エニイタイムコールを行使されずに満期までオプションが存在し、ヘッジが不可能な場合のオプション価値(f)の計算手順を示したものである。
市場における株式売買高に比して過大な数量の売買が必要な場合、権利行使および株式の市場売却の過程で生じる株価下落を無視することはできない。株価を起点として権利行使と株式売却を行うとすれば、株価の下落率および行使価格以上の株価で売却できる数量に基づき実現可能な経済的価値を計算することができる。これらを集計することにより目的のオプション価値を算定することができる。
エニイタイムコールを行使されずに満期までオプションが存在し、ヘッジが不可能な場合のオプション価値を計算するに当たっては、まず、発行条件関連データおよび予め固定データ記憶手段に記憶されている売却インパクトの算出計算式を用いて売却インパクトカーブを計算する。そして、全株を売却したときの株価の下落インパクトを計算する。また、その後、満期時点から格子点毎にオプション価値の計算を開始する。格子点毎のオプション価値の計算に当っては、ストライク価格まで売却する場合の総行使株数に対する売却比率を計算する必要がある。
【0040】
次に、売却比率が100%であるか否かで場合分けをする。
100%である場合は、格子点株価ごとに全株売却時の下落インパクトの2分の1を考慮した株価とストライク価格との差に100%を掛けた値を、その点における権利行使時の価値とみなす。
100%ではない場合には、格子点ごとにおける株価とストライク価格との差を下落インパクトとみなし、その2分の1に売却比率を掛けた値を、その格子点における権利行使時の価値とみなす。
ここで売却インパクトを2分の1としているのは、計算されたインパクトが可能な株数の売却が完了した時点の株価であり、売却株数全体に適用されるものではないからである。そのため平均的には、半分のインパクトで売却株数全体を処分できるとの考えを採用している。
売却インパクトをYとすると、次式で定義される。
Y=Min(1,α×X^β)
ここで、Xは株数、αとβは銘柄等によって異なる定数である。
また、ストライク価格以上の株価で売却することができる株数の全行使株数に対する割合である売却比率をRとすると、Rは次式で定義される。
R=Min(全行使株数,[ln(株価/100)/α]^(1/β)/10000)/全行使株数
株価変動は対数正規分布を前提としているので、各格子点株価Sにおける売却インパクト考慮後の経済的価値は次式で計算する。
{S×exp(−Y/2)−ストライク価格}×売却比率R
【0041】
売却比率に基づき権利行使時の価値が算出されたら、満期時点の計算においては権利行使価値を当該格子点の価値とする。そうでない時点の計算においては、現格子点から1ステップ先へ分岐する格子点の期待値の現在価値と、権利行使価値との大きい方を、当該格子点の価値とする。そして、格子点の時間がゼロか否かを判断して場合分けをする。格子点の時間がゼロとは、ツリー上での演算が計算の基準となる時点まで遡ったことを表す。
【0042】
格子点の時間がゼロでない場合には、1ステップ分時間を遡ることとし、格子点株価ごとの売却比率の計算からやり直す。1ステップとは、ツリーモデル上で使われる時間間隔で、ここでは満期までの残存期間を指定のステップ数で割ったものに相当する。
格子点の時間がゼロの場合には、オプション価値(f)の計算を終了する。そして、オプション価値(f)より、エニイタイムコールを行使されずに満期までオプションが存在し、ヘッジが不可能な場合の期待収益額を計算する。
【0043】
(図12)
図12は、前述してきたOTMでエニイタイムコールを行使される場合のオプション価値(c), エニイタイムコールを行使されずに満期までオプションが存在し、ヘッジ可能な場合を想定したオプション価値(d),発行会社が、ある株価以上で合理的にエニイタイムコールを行使することを前提とした場合のオプション価値(e),および エニイタイムコールを行使されずに満期までオプションが存在し、ヘッジが不可能な場合のオプション価値(f)を用いて、エニイタイムコールに対する消却対価等を算出する手順を示したものである。
【0044】
前述した (c), (d),(e)および (f)の過程で得られた期待収益額に、各過程の発生確率を乗じることによって、トータルの期待収益額を算出する。そして、期待収益額から算出できる期待収益率によって、B社が支払う新株予約権価額を変更するか否かを自動判別する。なお、ここでも自動判別の代わりに、オペレータなどが判別することとしてもよい。
B社が支払う新株予約権価額を変更する場合には、期待収益率の設定によって新株予約権価額の上限を算出し、その上限が第一の下限プレミアム(a)以上であるか否かを自動判別する。下限プレミアム(a)を下回っている場合には、期待収益率を再設定する。下限プレミアム(a)以上であれば、下限プレミアム(a)を上回り、かつ、上限プレミアム(b)を下回る消却対価を入力する。
【0045】
B社が支払う新株予約権価額を変更しない場合には、行使株数を期待収益率によって変更するか否かを自動判別する。なお、ここでも自動判別の代わりに、オペレータなどが判別することとしてもよい。変更する場合には、行使株数を再設定する。行使株数を変更しない場合には、新株予約権価額に対する収益率を計算する。
【0046】
エニイタイムコールに対する消却対価は、上記算出手順で求めた新株予約権価額を下回らないように設定される。
【0047】
(トータルの期待収益額の算出)
本実施形態では、株価に関わらず(すなわちOTMで)買い戻される確率は5%(これを「A」)、ストライク価格+消却対価の時点で、エニイタイムコールされる確率が1%(これを「B」)、残りの94%が満期までエニイタイムコールされないもの、と見積もっている。
A,B以外の94%のうち、オプションとしてヘッジできる金額を「ヘッジ可能額:C」として計算する。
ヘッジ可能額はヘッジ可能株数によって決定され、総行使価額に対し、ヘッジ可能株数×行使価格に相当する金額をヘッジ可能とし、残りの(総行使株数−ヘッジ可能株数)×行使価格に相当する金額をヘッジ不可能としている。ここで、「ヘッジ可能株数」とは、売却インパクトなしに売却可能な株数と借入可能株数のうち、いずれか少ない株数を指す。ただし、入力されるヘッジ可能株数は総行使株数を超えないものとする。本形態では、ヘッジ可能額が200万株×264円=5.28億円であるので、ヘッジ不可能額は(20,000万株−200万株)×264円=522.72億円である。このヘッジ不可能の部分をDとする。、
【0048】
さて、Aの場合の期待収益率は、確率5%、価値は値(c)と消却対価の大きい方である。
まず、エニイタイムコール猶予期間が21日、中間ボラティリティが25%、株価221円を入力した場合のブラックショールズ解析式による値が、行使価格100円当り0.15円(0.15%)である。一方、受け取ることのできる消却対価は、100円当り0.30円(0.30%)であるので、Aの期待収益率はこれらのうち大きい方の0.30%とすることができる。
したがって、Aの期待収益率は、期待収益率0.30%×行使価額528億円×発生確率5%=0.079億円となる。
【0049】
Bの場合は、起きる確率が1%であり、図10のアルゴリズムにて算出される(e)から、その期待収益額は、株価がストライク価格+消却対価以上でエニイタイムコールを行使される前提のツリーモデルを用いると、0.85%と計算される。よってBの期待収益額は、期待収益率0.85%×行使価額528億円×発生確率1%=0.045億円となる。
【0050】
Cの場合は、まずヘッジ可能額が5.28億円である。期待収益率は、通常のツリーモデルを用いると8.63%と計算される。よって、Cの期待収益額は、期待収益率8.63%×行使価額5.28億円=0.45億円となる。
【0051】
Dの場合は、ヘッジ不可能額が522.72億円である。期待収益率は、売却インパクトを考慮したツリーモデルを用いると6.98%と計算される。よって、Dの期待収益額=期待収益率6.98%×行使価額522.72億円=36.49億円となる。
そして、エニイタイムコールが行使されない確率は、Aの5%とBの1%を除いた94%であるから、CとDを合わせた期待収益額は、(0.45+36.49)×0.94=34.72億円となる。
【0052】
算出される売却インパクトYは、全株売却可能の場合はツリー上の格子点株価から売却を完了した時点の価格までの下落率、部分売却の場合は同じく格子点株価からストライク価格までの下落率で表す。売却株数全体に対する平均売却コストは、その売却インパクトの半分で表せるものとしている。売却による経済的価値は、(売却インパクト考慮後の株価−ストライク価格)×売却比率で表される。ここで、経済的価値は負になることはない。
【0053】
(計算)
売却インパクトYを次式で定義する。
Y=Min(1,α×X^β)
ここで、Xは株数、αとβは銘柄や時間、株価水準等によって異なる定数である。売却インパクトは1を上回ることはない。αとβは、1万株および10万株を売却した場合に予想される株価インパクトを入力することによって決めることができる。
逆に上記インパクト式を変形すると、あるストライク価格以上の株価からストライク価格までの株価で売却できる株数の割合を計算できる。売却比率をRとすると、Rは次式で定義される。
R=Min{[ln(株価/100)/α]^(1/β)/10,000/全行使株数}
売却比率は1を上回ることはない。各格子点株価Sにおける売却インパクト考慮後の経済的価値は、以下のように計算する。
{S×exp(−Y/2)−ストライク価格}×売却比率R
【0054】
以下に、例示する。
この例示では、1万株が0.20%、10万株では0.50%の売却インパクトを想定しているので、α=0.0000512、β=0.398と求めることができる。これに従うと、20,000万株を売却する際の株価インパクトは10.3%となる。
株価が396円で、パリティが150(=396/264×100)の場合、売却比率は100%となり、行使によって得られる経済的価値は、
(150×exp(−0.103/2)−100)×100%=42.5
となる。つまり、行使価格100あたり42.5(42.5%)の利益を得られることを表している。
株価が277円で、パリティが104.9(=277/264×100)の場合、売却比率は、
Min(200000,[ln(104.9/100)/0.0000512]^(1/0.398)/10000)/20000=14.5%となり、売却インパクトは、ln(104.9/100)=4.78%となる。行使によって得られる経済的価値は、
(104.9×exp(−0.0478/2)−100)×14.5%=0.35
となる。つまり、行使価格100あたり4.78(4.78%)の利益を得られることを表している。
以上のようになる。
【0055】
(図13)
図13は、これまで説明してきたことを簡略化して図示したものである。
新株予約権の発行条件関連データと予約権価値の演算式等を用いて、(1)発行会社が受け取るべきエニイタイムコール猶予期間に相当するコール・オプションのプレミアム、(2)権利行使によって新株予約権の投資家が得られる価値である新株予約権の本質的価値が、新株予約権発行の際に発行会社が投資家から受取った新株予約権の発行価額を上回った時点で、発行会社がエニイタイムコールを行使するとの前提で算定した新株予約権の価値、(3)収益率考慮プレミアム額、という3つのアプローチにより、エニイタイムコールが付された新株予約権の新株予約権価額およびその消却対価を算出する。
すなわち、オプション条件、売却インパクトを算出することによるトレード条件、およびハードコール条件に基づいて、エニイタイムコールの顧客提示価格を、額面100あたり0.30に決定した、ということを示す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】新株の発行会社と、その新株に対する投資を行う投資会社との関係を示す概念図である。
【図2】発行会社と投資会社と、証券取引市場との関係を示す概念図である。
【図3】発行会社と投資会社と、金融市場との関係を示す概念図である。
【図4】消却対価等を出力する手順を示す概念図である。
【図5】消却対価等を出力する手順を示す概念図である。
【図6】下限プレミアムを算出するためのフローチャートである。
【図7】上限プレミアムを算出するためのフローチャートである。
【図8】OTMでエニイタイムコールを行使される場合のオプション価値を算出するためのフローチャートである。
【図9】エニイタイムコールを行使されずに満期までオプションが存在し、ヘッジ可能な場合を想定したオプション価値を算出するためのフローチャートである。
【図10】発行会社が、株価がストライク価格+消却対価以上で合理的にエニイタイムコールを行使することを前提とした場合のオプション価値を算出するためのフローチャートである。
【図11】エニイタイムコールを行使されずに満期までオプションが存在し、ヘッジが不可能な場合のオプション価値を算出するためのフローチャートである。
【図12】総合的に消却対価等を算出するためのフローチャートである。
【図13】オプション条件等に基づいて、エニイタイムコールを決定する関係を示す概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投資家に対して発行会社が発行する任意の時期に発行会社が消却可能という条件であるエニイタイムコールが付された新株予約権について、新株予約権価額およびその消却対価を算出する消却対価等算出装置であって、
前記新株予約権に係る発行条件に関連する発行条件関連データの入力を受け付ける発行条件関連データ入力手段と、
予約権価値の演算式を含む固定データを記憶している固定データ記憶手段と、
前記発行条件データおよび前記固定データに基づいて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出する消却対価等算出手段と、
その算出された新株予約権価額および消却対価を出力する出力手段とを備え、
前記消却対価等算出手段は、
前記発行条件関連データと予約権価値算出の演算式とを用いて発行会社が受取るべきエニイタイムコール猶予期間に相当するコール・オプションのプレミアムたるプレミアム下限額を算出する下限プレミアム算出手段と、
権利行使によって新株予約権の投資家が得られる価値である新株予約権の本質的価値が、新株予約権発行の際に発行会社が投資家から受取った新株予約権の発行価額を上回った時点で、発行会社がエニイタイムコールを行使するとの前提で算定した新株予約権の価値たるプレミアム上限額を算出する上限プレミアム算出手段とを備え、
そのプレミアム上限額と前記プレミアム下限額との間になるように新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出することとした消却対価等算出装置。
【請求項2】
前記消却対価等算出手段には、理論収益額と期待収益率とを用いて収益率考慮プレミアム額を算出する収益率考慮プレミアム算出手段を備え、
新株予約権の新株予約権価額および消却対価は、プレミアム下限額とプレミアム上限額に加えて収益率考慮プレミアム額をも用いて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出することとした請求項1に記載の消却対価等算出装置。
【請求項3】
市場における株式売買高に対して売却対象株数が過大である場合にその売却によって下落する株価の割合である売却インパクトを算出する売却インパクト算出手段を備えるとともに、
算出された売却インパクトをも用いて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出することとした請求項1または請求項2のいずれかに記載の消却対価等算出装置。
【請求項4】
投資家に対して発行会社が発行する任意の時期に発行会社が消却可能という条件が付された新株予約権についてその新株予約権価額および消却対価を算出する消却対価等算出方法であって、
予約権価値の演算式を含む固定データを予め記憶している固定データ記憶手順と、
前記新株予約権に係る発行条件に関連する発行条件関連データの入力を受け付ける発行条件データ入力手順と、
前記発行条件関連データと予約権価値算出の演算式とを用いてエニイタイムコール猶予期間に発行会社が受け取るべきプレミアム下限額を算出する下限プレミアム算出手順と、
権利行使によって新株予約権の投資家が得られる価値である新株予約権の本質的価値が、新株予約権発行の際に発行会社が投資家から受取った新株予約権の発行価額を上回った時点で、発行会社がエニイタイムコールを行使するとの前提で算定した新株予約権の価値を算出するプレミアム上限額算出手順と、
そのプレミアム上限額とプレミアム下限額との間になるように新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出する消却対価等算出手順とを備えたことを特徴とする消却対価等算出方法。
【請求項5】
投資家に対して発行会社が発行する任意の時期に発行会社が消却可能という条件が付された新株予約権について、その新株予約権価額および消却対価を算出する消却対価等算出方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
そのプログラムは、予約権価値の演算式を含む固定データを予め記憶している固定データ記憶手順と、
前記新株予約権に係る発行条件に関連する発行条件関連データを含む発行条件関連データの入力を受け付ける発行条件関連データ入力手順と、
前記発行条件関連データと予約権価値算出の演算式とを用いてエニイタイムコール猶予期間に発行会社が受け取るべきプレミアム下限額を算出する下限プレミアム算出手順と、
権利行使によって新株予約権の投資家が得られる価値である新株予約権の本質的価値が、新株予約権発行の際に発行会社が投資家から受取った新株予約権の発行価額を上回った時点で、発行会社がエニイタイムコールを行使するとの前提で算定した新株予約権の価値を算出するプレミアム上限額算出手順と、
そのプレミアム上限額とプレミアム下限額との間になるように新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出する消却対価等算出手順とをコンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラム。
【請求項6】
理論収益額と期待収益率とを用いて収益率考慮プレミアム額を算出する収益率考慮プレミアム算出手順を備えるとともに、
前記消却対価等算出手順は、プレミアム下限額とプレミアム上限額に加えて収益率考慮プレミアム額をも用いて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出することとしたことを特徴とする請求項5に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
市場における株式売買高に対して売却対象株数が過大である場合にその売却によって下落する株価の割合である売却インパクトを算出する売却インパクト算出手順を備えるとともに、
前記消却対価等算出手順は、その算出された売却インパクトをも用いて新株予約権の新株予約権価額および消却対価を算出することとした請求項5または請求項6のいずれかに記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−53708(P2006−53708A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234108(P2004−234108)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(302005020)野村證券株式会社 (24)