説明

消泡剤用オイルコンパウンドの製造方法及び消泡剤組成物

【課題】発泡液中でも破泡性、消泡持続性及び内添安定性が優れる消泡剤組成物を与える消泡剤用オイルコンパウンドの製造方法、この方法により得られたオイルコンパウンドを含む消泡剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン;100部、
(B)比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末;1〜30部
をコンパウンディングするに際して、
(C)シリカ表面処理剤;シリカ微粉末の0.1〜3%、
(D)水;シリカ表面処理剤の0〜50%
又は(C),(D)成分の代替として、
(E)アンモニア水;アンモニア量がシリカ微粉末の0.03〜3%
を混練する第一工程、
第一工程で得られた混練物を熱処理する第二工程、
第二工程で得られた混練物に、
(C)シリカ表面処理剤;シリカ微粉末量の5〜20%
を混練する第三工程、
第三工程で得られた混練物を熱処理する第四工程
を含む消泡剤用オイルコンパウンドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡液、特にアルカリ性の発泡液中でも破泡性、消泡持続性及び内添安定性が優れるシリコーン系の消泡剤組成物を与える消泡剤用オイルコンパウンドの製造方法、及びこの方法により得られたオイルコンパウンドを含む消泡剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーン系消泡剤は、他の消泡剤に比べて種々の優れた性質を有しているため、化学工業、食品工業、石油工業、織物工業、製紙工業、紙パルプ工業又は医薬品工業等の発泡を伴う工程において広く使用されており、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン等のシリコーンオイルを微粉末シリカと混合したオイルコンパウンド型消泡剤、これらオイルコンパウンドを界面活性剤と共に水中に分散してなるエマルジョン型消泡剤が汎用されている。しかし、このエマルジョン型消泡剤は、高温、高アルカリ性、高剪断力といった過酷な条件下では乳化粒子が破壊され、消泡能力が低下するという問題があるため、これに代わるものとしてポリオキシアルキレン基で変性されたオルガノポリシロキサンとオイルコンパウンドとを併用した自己乳化型消泡剤〔特公昭51−71886号、特公昭54−43015号、特公昭52−19836号、特公昭52−22638号、特公昭55−23084号公報(特許文献1〜5)〕が提案されている。
【0003】
しかしながら、これらのシリコーン系消泡剤は、発泡液と長時間接触することで消泡性能が低下したり、分離・沈降物が発生するなどの問題が起こることがあり、このことは発泡液がアルカリ性の場合に特に顕著である。
【0004】
また、発泡を伴う工程が長時間にわたる場合は、経時で消泡性能が初期に比べ低下するため、消泡剤を追加して添加することが必要になり、歩留まりの低下や、消泡剤の多量添加による様々な不具合が生じることがある。
【0005】
これらの問題を改善し、消泡性能をより向上させるために様々な提案がなされており、例えばオイルコンパウンドに使用するシリカを予めクロロシラン等で疎水化しておく方法(特公昭52−31836号公報:特許文献6)、シリカを窒素含有有機珪素化合物で処理する方法(特公昭51−35556号公報:特許文献7)などが挙げられるが、その特性の更なる向上が求められている。
【0006】
【特許文献1】特公昭51−71886号公報
【特許文献2】特公昭54−43015号公報
【特許文献3】特公昭52−19836号公報
【特許文献4】特公昭52−22638号公報
【特許文献5】特公昭55−23084号公報
【特許文献6】特公昭52−31836号公報
【特許文献7】特公昭51−35556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、発泡液、特にアルカリ性の発泡液中でも破泡性、消泡持続性及び内添安定性が優れるシリコーン系の消泡剤組成物を与える消泡剤用オイルコンパウンドの製造方法、及びこの方法により得られたオイルコンパウンドを含む消泡剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、
(A)25℃における粘度が10〜100,000mm2/sである本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン;100質量部、
(B)比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末;1〜30質量部
をコンパウンディングするに際して、
(C)シリカ表面処理剤;シリカ微粉末量に対して0.1〜3質量%、及び
(D)水;シリカ表面処理剤量に対して0〜50質量%
又は(C)及び(D)成分の代替として、
(E)アンモニア水;アンモニア量がシリカ微粉末量に対して0.03〜3質量%
を混練する第一の工程と、
この第一の工程で得られた混練物を熱処理する第二の工程と、
この第二の工程で得られた混練物に、
(C)シリカ表面処理剤;シリカ微粉末量に対して5〜20質量%
を混練する第三の工程と、
この第三の工程で得られた混練物を熱処理する第四の工程
を経て製造される消泡剤用オイルコンパウンドを用いることで、アルカリ性の発泡液中でも破泡性、消泡持続性及び内添安定性が優れるシリコーン系の消泡剤組成物を得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記に示す消泡剤用オイルコンパウンドの製造方法及び消泡剤組成物を提供する。
〔請求項1〕
(A)25℃における粘度が10〜100,000mm2/sである本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン;100質量部、
(B)比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末;1〜30質量部
をコンパウンディングするに際して、
(C)シリカ表面処理剤;シリカ微粉末量に対して0.1〜3質量%、及び
(D)水;シリカ表面処理剤量に対して0〜50質量%
又は(C)及び(D)成分の代替として、
(E)アンモニア水;アンモニア量がシリカ微粉末量に対して0.03〜3質量%
を混練する第一の工程と、
この第一の工程で得られた混練物を熱処理する第二の工程と、
この第二の工程で得られた混練物に、
(C)シリカ表面処理剤;シリカ微粉末量に対して5〜20質量%
を混練する第三の工程と、
この第三の工程で得られた混練物を熱処理する第四の工程
を含むことを特徴とする消泡剤用オイルコンパウンドの製造方法。
〔請求項2〕
シリカ表面処理剤が、ヘキサメチルジシラザンであることを特徴とする請求項1に記載の消泡剤用オイルコンパウンドの製造方法。
〔請求項3〕
請求項1又は2記載の方法で得られたオイルコンパウンドを含むことを特徴とする消泡剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アルカリ性の発泡液中でも破泡性、消泡持続性及び内添安定性が優れるシリコーン系消泡剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、本質的に疎水性のものである。ここで、本質的に疎水性とは、一部の官能基に親水性基を含有してもオルガノポリシロキサン全体として疎水性を示すことである。
【0012】
本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン(A)は、直鎖状のものでも分岐状のものでもよいが、特に下記平均組成式(I)で示されるものが好適である。
mSiO(4-m)/2 (I)
【0013】
上記式(I)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。Rの一価炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、スチリル基、α−メチルスチリル基等のアラルキル基など、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、水酸基等で置換したクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基等が挙げられるが、消泡性及び経済性の面から全Rの80モル%以上、特に90モル%以上がメチル基であることが好ましい。また、mは1.9≦m≦2.2、好ましくは1.95≦m≦2.15の正数である。なお、オルガノポリシロキサンの末端は、R3Si−で示されるトリオルガノシリル基で封鎖されていても、HOR2Si−で示されるジオルガノヒドロキシシリル基で封鎖されていてもよい。
【0014】
この本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン(A)のオストワルド粘度計により測定した25℃における粘度は、消泡性、作業性の面から10〜100,000mm2/sであり、好ましくは50〜30,000mm2/sである。10mm2/s未満では消泡性能が劣り、100,000mm2/sを超えるとシリコーンオイルコンパウンドの粘度が増大して作業性が悪くなる。
【0015】
(B)成分のシリカ微粉末は公知のものでよく、例えば、煙霧質シリカ、沈降シリカ、焼成シリカなどが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。シリカ微粉末の比表面積(BET法)は50m2/g以上であり、好ましくは100〜700m2/g、更に好ましくは150〜500m2/gである。比表面積が50m2/g未満では好ましい消泡性能が得られない。
【0016】
(C)成分のシリカ表面処理剤は、(B)成分の表面疎水化処理を行うと共に、(B)成分の(A)成分に対する濡れ性、分散性を向上させるものである。このシリカ表面処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−ビニルトリシラザン等のオルガノシラザンや、ジメチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルビニルシラン等のアミノ基含有オルガノシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどの有機珪素化合物が挙げられ、特にはヘキサメチルジシラザン等のヘキサオルガノジシラザンが好ましい。
【0017】
(D)成分の水は、上記(C)成分の分解を速め、(B)成分の表面処理速度を増大させる役割を担っている。(B)成分には吸着水などの水を含有する場合も考えられるため、(D)成分は必須でなくてもよい。
【0018】
(E)成分のアンモニア水は、後述する第一の工程における(C)成分と(D)成分に替わるもので、(A)成分の本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンに対する(B)成分のシリカ微粉末の濡れ性、親和性と分散性を向上させるものとして作用する。なお、(E)成分としては、アンモニア濃度が25〜30質量%程度のアンモニア水溶液が好適に用いられる。
【0019】
本発明におけるシリコーンオイルコンパウンド製造方法の特徴は、コンパウンディングが第一コンパウンディングと第二コンパウンディングの2段階で行われることにある。第一コンパウンディングは、ポリオルガノシロキサン等のポリマー成分をシリカ表面に固定化することを主な目的とし、第二コンパウンディングは、シリカ表面処理剤によるシリカ処理を主な目的としている。従って、シリカ表面処理剤は、第一コンパウンディング時より第二コンパウンディング時に多く使用することを特徴とする。
【0020】
即ち、本発明においては、このシリコーンオイルコンパウンドを、
第1の方法として、
(1)上記(A)成分;100質量部、(B)成分;1〜30質量部、(C)成分;(B)成分に対して0.1〜3質量%、及び(D)成分;(C)成分に対して0〜50質量%を混練する第一の工程、
(2)第一の工程で得られた混練物を熱処理する第二の工程
からなる第一コンパウンディングと、
(3)第二の工程で得られた混練物に、(C)成分;(B)成分に対して5〜20質量%を混練する第三の工程、並びに
(4)第三の工程で得られた混練物を熱処理する第四の工程
からなる第二コンパウンディング
によって製造するか、
あるいは、
第2の方法として、
(i)上記(A)成分;100質量部、(B)成分;1〜30質量部、及び(E)成分;(B)成分に対してアンモニア量として0.03〜3質量%を混練する第一の工程、
(ii)第一の工程で得られた混練物を熱処理する第二の工程
からなる第一コンパウンディングと、
(iii)第二の工程で得られた混練物に、(C)成分;(B)成分に対して5〜20質量%を混練する第三の工程、並びに
(iv)第三の工程で得られた混練物を熱処理する第四の工程
からなる第二コンパウンディング
によって製造する。
【0021】
この第一から第四の工程を経て製造されたシリコーンオイルコンパウンドを用いることで、発泡液、特にアルカリ性の発泡液中でも破泡性、消泡持続性及び内添安定性が優れる消泡剤組成物を得ることができる。
【0022】
この場合、第一の工程において、(A)〜(C)成分、(A)〜(D)成分又は(A),(B),(E)成分は好ましくは130℃以下、より好ましくは100℃以下の温度で混練する。特に外部より加熱する必要はなく、室温(例えば10〜30℃)で混練することができ、混練中に生じる摩擦抵抗による系内の発熱により上昇した温度を130℃以下、特に100℃以下に調整することでよい。130℃を超えて混練が行われると、(C)成分又は(E)成分が揮発し、有効に作用しなくなる場合がある。この第一の工程の処理時間は、混練装置及びスケールに大きく依存するもので一概には規定できないが、通常0.1〜3時間、特には0.5〜2時間程度が好ましい。
【0023】
(B)成分の割合は、(A)成分100質量部に対して、1〜30質量部であり、好ましくは5〜15質量部の範囲である。1質量部未満であると十分な消泡性能が得られず、30質量部を超えると得られるシリコーンオイルコンパウンドの粘度が増加して作業性が悪くなる。
【0024】
第一の工程に使用する(C)成分の使用量は、(B)成分の0.1〜3質量%であり、好ましくは0.5〜3質量%、より好ましくは1〜2.5質量%である。0.1質量%未満ではポリマー成分をシリカ表面に固定化するのに十分な効果が得られず、3質量%より多くても特にその効果はなく、経済的に好ましくない。
【0025】
(D)成分の使用量は、(C)成分の0〜50質量%であり、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは2〜40質量%である。50質量%より多くなると、第二の工程での熱処理により長時間を必要とし、効率性に劣る。なお、上述したように、(B)成分には吸着水などの水を含有していることがあり、この場合は(D)成分を配合しなくてもよい。
【0026】
(E)成分は、第一の工程において(C),(D)成分を配合しない場合に配合するものであり、この使用量は、アンモニア(NH3)として(B)成分の0.03〜3質量%であり、好ましくは0.06〜1.5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。0.03質量%未満ではポリマー成分をシリカ表面に固定化するのに十分な効果が得られず、3質量%より多くても特にその効果はなく、経済的に好ましくない。
【0027】
第二の工程は、(C)成分の分解残渣及び過剰の(D)成分、又は(E)成分を除去するための熱処理工程であり、130〜200℃、好ましくは150〜180℃で、好ましくは混練しながら熱処理する。熱処理温度が130℃未満では、(C)成分の分解残渣及び過剰の(D)成分を十分に除去できない場合があり、200℃を超える温度では(A)成分が劣化(分解)する場合がある。なお、この第二の工程の処理時間は、混練装置及びスケールに大きく依存するもので一概には規定できないが、通常0.1〜4時間、特には0.5〜2時間程度が好ましい。
【0028】
第三の工程は、第二の工程にて得られた混練物に、(C)成分を添加し、シリカ表面処理剤とシリカを均一に分散するものである。第三の工程も第一の工程と同様の理由から、130℃以下、特に100℃以下の温度で混練する必要がある。なお、この場合も、混練を室温(例えば10〜30℃)にて行うことができる。この第三の工程の処理時間も、混練装置及びスケールに大きく依存するもので一概には規定できないが、通常0.1〜3時間、特には0.5〜2時間程度が好ましい。
【0029】
第三の工程に使用する(C)成分の使用量は、(B)成分の5〜20質量%に相当する量であり、好ましくは10〜15質量%である。5質量%より少ないと(B)成分の表面処理が十分行えず、20質量%より多いと過剰となり経済的に好ましくない。
【0030】
第四の工程は、(C)成分の分解残渣を除去するための熱処理工程であり、130〜200℃、好ましくは150〜180℃で、好ましくは混練しながら熱処理する。熱処理温度が130℃未満では、(C)成分の分解残渣及び過剰の(D)成分を十分に除去できない場合があり、200℃を超える温度では(A)成分が劣化(分解)する場合がある。なお、この第四の工程の処理時間は、混練装置及びスケールに大きく依存するもので一概には規定できないが、通常0.1〜4時間、特には0.5〜3時間程度が好ましい。
【0031】
本発明の製造方法において、混練を行うために使用される混練機としては、例えばゲートミキサー、ニーダー、二軸混練機等が挙げられるが、特に限定されない。これら混練機は、第一から第四の工程のいずれにおいても用いることができる。
【0032】
上記成分を混練し、熱処理して得たシリコーンオイルコンパウンドは、そのまま使用されるか、あるいは該シリコーンオイルコンパウンドを含む消泡剤組成物、具体的には、適当な溶媒に分散した溶液型消泡剤組成物、ポリオキシアルキレン基で変性されたオルガノポリシロキサンとの併用による自己乳化型消泡剤組成物、又は周知の乳化技術によって得られるエマルジョン型消泡剤組成物等として使用することができる。
【0033】
ここで、適当な溶媒に分散した溶液型消泡剤組成物とする場合、溶媒としては、(A)成分である本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンが溶解する溶媒、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、クロロホルム、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノンなどが挙げられる。
【0034】
溶液型消泡剤組成物とする場合、シリコーンオイルコンパウンドの含有量は、消泡剤組成物全体の5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜70質量%である。シリコーンオイルコンパウンドの含有量が少なすぎると消泡剤組成物としての消泡性能が劣る場合があり、多すぎるとオイルコンパウンド成分の分散性を高めるという溶液型消泡剤組成物の主目的を満足できない場合がある。
【0035】
また、ポリオキシアルキレン基で変性されたオルガノポリシロキサンとの併用による自己乳化型消泡剤組成物とする場合、ポリオキシアルキレン基で変性されたオルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(II)で示されるものが挙げられる。
【0036】
123SiO−(R12SiO)x−(R12SiO)y−SiR123 (II)
上記式(II)中、R1は互いに同一又は異種の置換もしくは非置換の炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、スチリル基、α−メチルスチリル基等のアラルキル基など、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基等で置換したクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基等の一価炭化水素基が挙げられる。
【0037】
また、R2は下記一般式(III)で示されるポリオキシアルキレン基である。
−R4−O(CH2CH2O)a−(CH2(CH3)CHO)b−R5 (III)
上記式(III)中、R4は炭素数2〜6の二価炭化水素基であり、アルキレン基、アルケニレン基などが挙げられ、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテン基、ヘキセン基等が挙げられる。また、R5は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アセチル基又はイソシアン基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。a及びbは3≦a+b≦80、好ましくは5≦a+b≦60、かつa/b=2/8〜8/2、好ましくはa/b=2.5/7.5〜7.5/2.5を満たす正数である。
【0038】
一方、R3はR1もしくはR2と同様の基、水酸基又は炭素数1〜6のアルコキシ基であり、具体的には前記のR1及びR2として例示した基、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
なお、上記式(II)中のxは5〜200、好ましくは20〜150の整数であり、yは1〜30、好ましくは1〜20の整数である。
【0039】
このポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても、2種以上の混合物を用いてもよいが、オストワルド粘度計により測定した25℃における粘度が、10〜10,000mm2/s、好ましくは50〜8,000mm2/s、更に好ましくは500〜5,000mm2/sであるものを用いることができる。
【0040】
ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンの具体例としては、次のものが挙げられる。
(CH33SiO−[(CH32SiO]30−[(CH3)R’SiO]5−Si(CH33
R’:−C36O−(C24O)30−(C36O)10−C49
(CH33SiO−[(CH32SiO]30−[(CH3)RSiO]3−Si(CH33
R’:−C36O−(C24O)20−(C36O)20−C49
(CH33SiO−[(CH32SiO]40−[(CH3)RSiO]4−Si(CH33
R’:−C36O−(C24O)21−(C36O)7−COCH3
(CH33SiO−[(CH32SiO]50−[(CH3)R’’SiO]6−[(CH3)R’’’SiO]1−Si(CH33
R’’:−C36O−(C24O)32−(C36O)8−C49
R’’’:−C1225
【0041】
また、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンとの併用による自己乳化型消泡剤組成物には、
HO−[CH2(CH3)CHO]35−H、
HO−[CH2(CH3)CHO]70−H、
HO−(CH2CH2O)4−[CH2(CH3)CHO]30−H、
CH2=CHCH2O−(CH2CH2O)32−[CH2(CH3)CHO]8−H、
CH2=CHCH2O−(CH2CH2O)22−[CH2(CH3)CHO]22−C49
CH2=CHCH2O−(CH2CH2O)10−CH3
で例示されるようなポリオキシアルキレン重合体や、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等の非イオン性界面活性剤を用いてもよい。なお、上記に例示した組成式は一例であり、本発明を制限するものではない。
【0042】
また、自己乳化型消泡剤組成物とする場合、シリコーンオイルコンパウンドの含有量は、消泡剤組成物全体の5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜70質量%であり、更に好ましくは20〜60質量%である。シリコーンオイルコンパウンドの含有量が少なすぎると消泡剤組成物としての消泡性能が劣る場合があり、多すぎるとオイルコンパウンド成分の分散性を高めるという自己乳化型消泡剤組成物の主目的を満足できない場合がある。
【0043】
更に、エマルジョン型消泡剤組成物とする場合、公知の方法を用いることができるが、シリコーンオイルコンパウンドを乳化する乳化剤としては、上述したポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンや、ポリオキシアルキレン重合体、非イオン性界面活性剤等を使用することができる。
【0044】
エマルジョン型消泡剤組成物において、上記ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても、2種以上の混合物を用いてもよいが、その含有量は消泡剤組成物全体の0〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。含有量が30質量%を超えると組成物の消泡性能が悪くなる場合がある。
【0045】
また、エマルジョン型消泡剤組成物において、上記ポリオキシアルキレン重合体は、乳化助剤となるもので、1種単独で用いても、2種以上の混合物を用いてもよいが、その含有量は消泡剤組成物全体の0〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜20質量%である。含有量が40質量%を超えると組成物の乳化特性が悪くなる場合がある。なお、配合する場合は有効量とすることができるが、5質量%以上配合することが好ましい。
【0046】
更に、エマルジョン型消泡剤組成物において、上記非イオン性界面活性剤は、シリコーンオイルコンパウンドを水に分散させるためのものであり、1種単独で用いても、2種以上の混合物を用いてもよいが、この含有量は消泡剤組成物全体の0〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。20質量%を超えると消泡剤組成物の粘度が高くなり、作業性が悪くなる場合がある。
【0047】
また、エマルジョン型消泡剤組成物とする場合、シリコーンオイルコンパウンドの含有量は、消泡剤組成物全体の5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。シリコーンオイルコンパウンドの含有量が少なすぎると消泡剤組成物としての消泡性能が劣る場合があり、多すぎると消泡剤組成物の粘度が高くなり、作業性が悪くなる場合がある。
【0048】
エマルジョン型消泡剤組成物においては、シリコーンオイルコンパウンド、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン重合体、非イオン性界面活性剤等の各成分を乳化するのに必要な水を添加する必要があり、その量は各成分の含有割合の合計に対する残部であり、好ましくは各成分の合計100質量部に対して50〜2,000質量部、より好ましくは80〜400質量部となるように添加する。
【0049】
なお、エマルジョン型消泡剤組成物は、水以外の各成分の所定量を混合し、必要に応じて加熱しながら、公知の方法、例えばホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル等の混合・分散機により撹拌・乳化することにより調製することができるが、特に水以外の各成分の所定量を均一に混合・分散させた後、水の一部を添加し、撹拌・乳化を行った後に更に残りの水を加え、均一に撹拌・混合して調製する方法が好ましい。
【0050】
また、エマルジョン型消泡剤組成物には、防腐の目的で少量の保存料・殺菌料を任意で添加してもよい。この保存料・殺菌料の具体例としては、次亜塩素酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン類、イソチアゾリン化合物等が挙げられる。この添加量は、エマルジョン型消泡剤組成物全体の0〜0.5質量%、特に0.005〜0.5質量%が好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、%は質量%を示し、粘度はオストワルド粘度計により測定した25℃における値である。
【0052】
[実施例1]
本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンとして、粘度が10,000mm2/sの分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部、微粉末シリカとして、アエロジル(Aerosil)300[日本アエロジル社製、比表面積300m2/g]を5質量部、シリカ表面処理剤として、ヘキサメチルジシラザン0.1質量部、水0.025質量部を、ゲートミキサーを使用して室温で1時間混練した。その後、温度を150℃に昇温し、引き続き1時間混練した。130℃以下に冷却後、更にヘキサメチルジシラザン0.75質量部を添加し、1時間混練した。その後、温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混練し、シリコーンオイルコンパウンド(a−1)を得た。
このシリコーンオイルコンパウンド(a−1)30質量部に、平均組成が下記式
123SiO−(R12SiO)x−(R12SiO)y−SiR123
(但し、R1及びR3は−CH3、R2は−C36O(C24O)21(C36O)21CH3、xは135、yは15。)
で表され、且つ粘度が2,500mm2/sであるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(a−2)70質量部を室温で混合して消泡剤組成物(A)を調製した。
【0053】
[実施例2]
本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンとして、粘度が8,000mm2/sでCH3SiO3/2単位を0.01モル分率含有する分岐状の分子鎖末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部、微粉末シリカとして、ニプシル(Nipsil)HD−2[東ソーシリカ社製、比表面積300m2/g]を12質量部、アンモニア水(28%NH3)0.24質量部を、ゲートミキサーを使用して室温で1時間混練した。その後、温度を150℃に昇温し、引き続き1時間混練した。130℃以下に冷却後、更にヘキサメチルジシラザン0.75質量部を添加し、1時間混練した。その後、温度を150℃に昇温し、引き続き1時間混練し、シリコーンオイルコンパウンド(b−1)を得た。
このシリコーンオイルコンパウンド(b−1)30質量部に、平均組成が下記式
123SiO−(R12SiO)x−(R12SiO)y−SiR123
(但し、R1及びR3は−CH3、R2は−C36O(C24O)25.5(C36O)8.549、xは30、yは5。)
で表され、且つ粘度が1,000mm2/sであるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(b−2)50質量部と、平均組成が下記式
HO−(C24O)25−(C36O)35−H
で表されるポリオキシアルキレン重合体(b−3)20質量部を室温で混合して消泡剤組成物(B)を調製した。
【0054】
[実施例3]
実施例1のシリコーンオイルコンパウンド(a−1)20質量部とソルビタンモノステアレート4質量部とポリオキシエチレン(55)モノステアレート6質量部の混合物を加熱溶解後、水70質量部を加え、ホモミキサーで撹拌、乳化して消泡剤組成物(C)を調製した。
【0055】
[比較例1]
本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンとして、粘度が10,000mm2/sの分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部、微粉末シリカとして、アエロジル(Aerosil)300[日本アエロジル社製、比表面積300m2/g]を5質量部、シリカ表面処理剤として、ヘキサメチルジシラザン0.85質量部、水0.21質量部を、ゲートミキサーを使用して室温で1時間混練した。その後、温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混練し、シリコーンオイルコンパウンド(d−1)を得た。
このシリコーンオイルコンパウンド(d−1)30質量部に、平均組成が下記式
123SiO−(R12SiO)x−(R12SiO)y−SiR123
(但し、R1及びR3は−CH3、R2は−C36O(C24O)21(C36O)21CH3、xは135、yは15。)
で表され、且つ粘度が2,500mm2/sであるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(d−2)70質量部を室温で混合して消泡剤組成物(D)を調製した。
【0056】
[比較例2]
本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンとして、粘度が10,000mm2/sの分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部、微粉末シリカとして、アエロジル(Aerosil)300[日本アエロジル社製、比表面積300m2/g]を5質量部、シリカ表面処理剤として、ヘキサメチルジシラザン0.75質量部、水0.1質量部を、ゲートミキサーを使用して室温で1時間混練した。その後、温度を150℃に昇温し、引き続き1時間混練した。130℃以下に冷却後、更にヘキサメチルジシラザン0.1質量部を添加し、1時間混練した。その後、温度を150℃に昇温し、引き続き1時間混練し、シリコーンオイルコンパウンド(e−1)を得た。
このシリコーンオイルコンパウンド(e−1)30質量部に、平均組成が下記式
123SiO−(R12SiO)x−(R12SiO)y−SiR123
(但し、R1及びR3は−CH3、R2は−C36O(C24O)21(C36O)21CH3、xは135、yは15。)
で表され、且つ粘度が2,500mm2/sであるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(e−2)70質量部を室温で混合して消泡剤組成物(E)を調製した。
【0057】
[評価方法]
消泡性(初期):
水性切削油剤(ユシロ化学工業(株)製、ユシローケンFGE275)に各消泡剤サンプルを有効成分量で0.5質量%添加したものを水で20倍に希釈し、1Lビーカー中でホモミキサーにより10,000rpm×15分間撹拌した。15分間撹拌したときの液+泡の体積(mL)と、撹拌停止から完全に泡が消えるまでの時間を測定した。
【0058】
消泡性(50℃×7日後):
上記水性切削油剤に各消泡剤サンプルを有効成分量で0.5質量%添加したものを50℃で7日間保存し、その後水で20倍に希釈し、1Lビーカー中でホモミキサーにより10,000rpm×15分間撹拌した。15分間撹拌したときの液+泡の体積(mL)と、撹拌停止から完全に泡が消えるまでの時間を測定した。
【0059】
内添安定性:
上記水性切削油剤に各消泡剤サンプルを有効成分量で0.5質量%添加したものを50℃で7日間保存したときの外観を目視にて下記基準で観察した。
○:浮遊物・沈降物無し、 △:浮遊物・沈降物ややあり、 ×:浮遊物・沈降物多い
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃における粘度が10〜100,000mm2/sである本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン;100質量部、
(B)比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末;1〜30質量部
をコンパウンディングするに際して、
(C)シリカ表面処理剤;シリカ微粉末量に対して0.1〜3質量%、及び
(D)水;シリカ表面処理剤量に対して0〜50質量%
又は(C)及び(D)成分の代替として、
(E)アンモニア水;アンモニア量がシリカ微粉末量に対して0.03〜3質量%
を混練する第一の工程と、
この第一の工程で得られた混練物を熱処理する第二の工程と、
この第二の工程で得られた混練物に、
(C)シリカ表面処理剤;シリカ微粉末量に対して5〜20質量%
を混練する第三の工程と、
この第三の工程で得られた混練物を熱処理する第四の工程
を含むことを特徴とする消泡剤用オイルコンパウンドの製造方法。
【請求項2】
シリカ表面処理剤が、ヘキサメチルジシラザンであることを特徴とする請求項1に記載の消泡剤用オイルコンパウンドの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法で得られたオイルコンパウンドを含むことを特徴とする消泡剤組成物。

【公開番号】特開2009−219974(P2009−219974A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65462(P2008−65462)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】