説明

消火器設置台

【課題】 消火器を積載した消火器設置台が風などによって転倒することを防止すると同時に、初期消火に効果的である消火用水をも配置することができ、しかも容易に持ち運ぶことさえもできる消火器設置台を提供する。
【解決手段】 上記課題は、消火器2と消火用水を収容した消火用水貯留容器8とを設置する消火器設置台1であって、該消火器設置台は、前記消火器を搭載する置台3と、前記消火用水貯留容器を契合保持する契合用環状部材5と、置台及び契合用環状部材を保持する背部材4とから構成され、該背部材の一方の側面に前記置台が設置され、該背部材の他方の側面に前記契合用環状部材が設置された消火器設置台により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風などによっても転倒することのない、消火器と消火用水を収容する消火用水貯留容器とを合わせて設置した消火器設置台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
初期消火に有効な消火器は、従来、壁面に収納して設置したり、消火器格納箱に収納して設置したり、消火器設置台に載せて設置したりしている。消火器を設置するときには、誰もが見える場所に「消火器」という法定の表示を施すことが義務付けされていることから、壁面収納では壁面に「消火器」の表示がなされ、消火器格納箱を用いたときには消火器格納箱の扉にその表示がなされ、消火器設置台を用いたときには消火器設置台の上部にその表示がなされるか、或いは「消火器」と表示した表示板を消火器設置台に取り付けて表示がなされていた。また、消火器は緊急時に使用されるものであるから、誰でもが自由に消火器を持ち出すことができるようになされている。
【0003】
従来、かかる消火器の保管及び表示の手段として特許文献1が提案されている。特許文献1では、消火器を収納する壁掛収納ケースを提案しており、この壁掛収納ケースを用いることにより、壁に簡単に取り付けすることができて、消火器が置いてあることが、夜間でも遠方から一目で確認できるとしている。
【0004】
また、特許文献2には、前記特許文献1の壁面収納に加えて、消火器の離脱報知機を設けることが提案されており、消火器が無断で設置場所から持ち出されたときには、人の視覚または聴覚に消火器が存在しないことを訴えることができるとしている。
【0005】
また、暗闇でも容易に消火器の在る場所を知らせるために、特許文献3には、発光する表示板或いは照明に照らされる表示板を消火器の近傍に設置することが提案されており、夜間の火災で停電している場合や懐中電灯などの照明手段が手元にない場合でも、迅速に初期消火を行うことができるとしている。
【0006】
また、特許文献4には、簡易手段としての消火器カバーが提案されており、火災発生時には迅速且つ容易に消火器を取り出して使用することができ、平常時には消火器全体を覆って消火器の汚れを防いだり、消火器の作動部が悪戯されるのを防いだりすることができるとしている。
【0007】
また、特許文献5には、消火器を積置する基台と、この基台を支える背パネルとから構成され、消火器を基台から持ち上げたときに警報アラームを発する報知手段を備えた収納ユニットが提案されている。この収納ユニットを用いることで、消火器自体を外観露出させて設置することができ、消火器の存在を一見して視認でき、物が置かれる危惧を少なくし、たとえ物が置かれた状態であっても、収容ユニットからの上方への消火器の取り出しを可能とし、緊急時において確実に使用することができ、更に、前記報知手段により、消火器の無断持ち出しが防止され、且つ報知手段をOFF状態とする悪戯を防止できるとしている。
【0008】
また更に、特許文献6には、消火器を受積する受台と、受台に挿脱自在のポールと、ポールに挿脱自在の表示ボードとを備えた消火器設置台が提案されている。従来の消火器設置台は、木製構造体などで分解組立を考慮しておらず、一つの固体として嵩張り、輸送性及び保管性が悪く、また箱形なので前方に出っ張り、これに足を引っかけたりして邪魔になるという点が全て解消されるとしている。
【特許文献1】実開平7−18747号公報
【特許文献2】特開平9−173488号公報
【特許文献3】特開平10−133605号公報
【特許文献4】特開2002−282376号公報
【特許文献5】特開2003−180855号公報
【特許文献6】特開2005−40364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
家庭用或いは室内用の消火器であるならば、上記提案の構造及び表示の手段で構わないが、人の出入りの多い工場及び作業事務所では、消火器はその出入口や火を使用している場所近辺の定位置に置かれている。この場合、人の出入りの邪魔にならないように置かれることから、室外に置かれることが多く、その場合には上記提案による消火器の保管手段では、壁面収納の場合を別として、風による消火器の転倒が多発して見苦しく、安全面でも問題があった。つまり、特許文献3,4,5,6による方法では消火器も表示も転倒してしまう。
【0010】
また、壁面収納の場合には、室内では問題にならないものの、室外での壁面収納は雨水の侵入防止処置などが必要であり、壁面収納自体が高価な上に、より一層設置に費用が嵩むことになり、経済的問題がある。
【0011】
また、高所で作業が行われるとき、溶接などからの火災の発生を想定し、その防止のために、消火器を携帯して作業を行うことがある。この場合、高所の作業場所周りの空間に消火器などを配置して作業を行うが、風などにより消火器の転倒が生じやすく、高所であれば消火器の落下事故も予防しなければならない。上記従来技術の壁面設置以外の手段では、消火器も表示も転倒し、最悪の場合にはその落下事故も想定しなければならないという問題がある。
【0012】
また、消火器による消火は初期消火に有効であるが、初期消火においては消火用水を使用することも極めて有効である。しかしながら、上記従来技術は消火器のみを用いており、消火用水を利用することは考慮していない。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、消火器を積載した消火器設置台が風などによって転倒することを防止すると同時に、初期消火に効果的である消火用水をも配置することができ、しかも容易に持ち運ぶことさえもできる消火器設置台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための第1の発明に係る消火器設置台は、消火器と消火用水を収容した消火用水貯留容器とを設置する消火器設置台であって、該消火器設置台は、前記消火器を搭載する置台と、前記消火用水貯留容器を契合保持する契合用環状部材と、置台及び契合用環状部材を保持する背部材とから構成され、該背部材の一方の側面に前記置台が設置され、該背部材の他方の側面に前記契合用環状部材が設置されていることを特徴とするものである。
【0015】
第2の発明に係る消火器設置台は、第1の発明において、前記契合用環状部材は、前記背部材に対して水平方向から鉛直上方方向へと回転可能に取り付けられ、背部材には契合用環状部材を固定するための繋止部材が設置されていることを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明に係る消火器設置台は、第2の発明において、前記契合用環状部材は鋼製のリング体であって、前記繋止部材は磁力によってリング体を固定する磁気式接着器であることを特徴とするものである。
【0017】
第4の発明に係る消火器設置台は、第1ないし第3の発明の何れかにおいて、前記背部材の上部には、持ち運び用の取っ手が設置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る消火器設置台によれば、背部材の片側に消火器を搭載し、他方の片側に消火用水を収容した消火用水貯留容器を配置するので、消火器設置台がこれらの質量によって安定し、風などによって転倒することが防止される。また、消火器と同じ場所に消火用水を収容した消火用水貯留容器が設置されているので、火災が発生した場合には、消火器及び消火用水貯留容器、或いはどちらかの一方を手に取り、火災現場に行って消火活動を行うことができるので、初期消火が円滑に行われ、火災鎮火を効率的に実施することが可能となる。また、契合用環状部材を折りたたみ、折りたたんだ契合用環状部材を繋止部材を用いて背部材に固定した場合には、嵩張らないので、容易に消火器設置台を搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明に係る消火器設置台の概略側面図、図2は、図1のX−X’矢視による概略側面図、図3は、本発明に係る消火器設置台の概略斜視図である。尚、図3では、消火器設置台に消火器及び消火用水を収容する消火用水貯留容器を配置した状態を示している。
【0020】
図1〜3に示すように、本発明に係る消火器設置台1は、市販の消火器2を搭載する置台3と、消火用水を収容した消火用水貯留容器8を契合保持する契合用環状部材5と、これらの置台3及び契合用環状部材5を保持するための枠形状の背部材4とから構成されていて、枠形状の背部材4の一方の側面に置台3が設置され、背部材4の他方の側面に契合用環状部材5が設置されている。置台3、背部材4及び契合用環状部材5は金属、木材、合成樹脂などで作製するが、堅固で安価であることから金属製が好ましい。
【0021】
契合用環状部材5は、軸受6を介して背部材4に取り付けられており、図1及び図2の実線で示す位置から破線で示す位置まで上下方向に回転可能になっている。図1及び図2の実線で示す略水平位置から下方側には回転しないように、軸受6にはストッパー(図示せず)が備えられている。背部材4には、例えば磁気式接着器のような繋止部材7が設置されており、図1及び図2に示す破線位置まで回転した契合用環状部材5は繋止部材7によって背部材4に固定されるようになっている。繋止部材7が磁気式接着器の場合には、契合用環状部材5の先端に鋼板部材5aを設けることによって契合用環状部材5の固定をより確実に行うことができる。契合用環状部材5を破線で示す位置で固定すれば嵩張らなく、消火器設置台1の運搬に便利である。尚、繋止部材7は、契合用環状部材5を倒れないようにするためのものであり、契合用環状部材5を保持できればよく、契合用環状部材5を係止できる契合部を有する構造としても構わない。
【0022】
置台3の底部は平坦になっていて、消火器設置台1を所定の設置場所に配置したとき、置台3の底部が設置場所に密着して接触するようになっている。但し、置台3の底部は平坦であるので、前記設置場所は、水平線に対して傾斜していても構わないが、平坦である必要がある。勿論、傾斜勾配が大きくなると、消火器設置台1が滑り落ちる恐れがあることから、設置場所は水平であることが好ましい。
【0023】
消火用水貯留容器8は、契合用環状部材5に保持されたときに、消火用水貯留容器8の底部が消火器設置台1の設置場所に密着して接触するようになっている。つまり、消火用水貯留容器8の形状に応じて契合用環状部材5の大きさ及び設置高さが決定され、消火用水貯留容器8がどのような形状であっても、その底部が設置場所に密着して接触するようになっている。この場合、消火用水貯留容器8は契合用環状部材5に契合保持されるとはいえども、消火用水貯留容器8の底部が設置場所に接触したとき、消火用水貯留容器8と契合用環状部材5とは密着する必要はなく、消火用水貯留容器8と契合用環状部材5との間に10mm程度までの隙間が形成されても構わない。尚、図3では、消火用水貯留容器8としてバケツを例として用いており、契合用環状部材5はバケツの水平断面と同一の円形を呈している。契合用環状部材5の形状は、消火用水貯留容器8の水平断面形状に応じて円形、四角形、多角形などに適宜決めればよい。
【0024】
このように、本発明に係る消火器設置台1では、背部材4の一方の側の置台3に搭載された消火器2の質量と、背部材4の他方の側の契合用環状部材5に保持される、消火用水を収容した消火用水貯留容器8の質量とにより、消火器設置台1の前後左右への傾斜が抑制され、かくして消火器設置台1の転倒が防止されるようになっている。
【0025】
背部材4の高さは、消火器2の高さ寸法よりも長い寸法で構成されていて、消火器2の配置された側の消火器2よりも高い位置の背部材4の側面には、表示板9が設置されており、この表示板9に「消火器」という法定の表示が施されている。また、背部材4の上端部は取っ手10を兼ねており、人手による消火器設置台1の運搬を容易にしている。
【0026】
本発明に係る消火器設置台1はこのようにして構成されている。
【0027】
消火器2は、断面が円形で且つ縦長であり、風或いは外力などで転倒しやすい。また、従来の消火器設置台は、例えば特許文献5,6に示されるように、消火器2を収容する部位の底部で安定を図っているが、従来の消火器設置台自体が消火器2よりも更に縦長で、且つ、消火器2よりも高い位置に「消火器」という法定の表示を行っているために、風或いは外力などで転倒しやすい状態にある。
【0028】
これに対して本発明に係る消火器設置台1は、消火器2を収納する側とは反対側に、契合用環状部材5を介して消火用水を収容した消火用水貯留容器8を配置するので、従来の消火器設置台に比べて消火用水貯留容器8の質量分が余分に消火器設置台1に作用し、これが安定器の作用を果たして安定し、室外に置かれても風などによる消火器設置台1及び消火器2の転倒防止を実現する。また、高所作業においては、風が発生する或いは作業者が消火器設置台1に衝突するなどしても転倒が免れるため、作業場から下部への消火器設置台1及び消火器2の落下が防止でき、安全性を確保することができる。
【0029】
更に、初期消火では、消火器2よりも消火用水の散水の方が有効な場合もあり、本発明に係る消火器設置台1を配置することで、消火用水の散水も可能となり、初期消火活動を効果的に行うことができる。更にまた、消火器2と消火用水を収容した消火用水貯留容器8との2つを備えているため、火災現場に運ぶとき、一人でも片方ずつに一度に持てるため、運搬姿勢が安定して運びやすいという利点もある。
【0030】
尚、本発明は上記説明の範囲に限られるものではなく種々の変更が可能である。例えば、上記説明では背部材4と契合用環状部材5とは軸受6を介して接合されているが、蝶番などの他の機構を用いて取り付けても構わない。また、表示板9を背部材4の両方の側面に設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る消火器設置台の概略側面図である。
【図2】図1のX−X’矢視による概略側面図である。
【図3】本発明に係る消火器設置台の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 消火器設置台
2 消火器
3 置台
4 背部材
5 契合用環状部材
5a 鋼板部材
6 軸受
7 繋止部材
8 消火用水貯留容器
9 表示板
10 取っ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火器と消火用水を収容した消火用水貯留容器とを設置する消火器設置台であって、該消火器設置台は、前記消火器を搭載する置台と、前記消火用水貯留容器を契合保持する契合用環状部材と、置台及び契合用環状部材を保持する背部材とから構成され、該背部材の一方の側面に前記置台が設置され、該背部材の他方の側面に前記契合用環状部材が設置されていることを特徴とする消火器設置台。
【請求項2】
前記契合用環状部材は、前記背部材に対して水平方向から鉛直上方方向へと回転可能に取り付けられ、背部材には契合用環状部材を固定するための繋止部材が設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の消火器設置台。
【請求項3】
前記契合用環状部材は鋼製のリング体であって、前記繋止部材は磁力によってリング体を固定する磁気式接着器であることを特徴とする、請求項2に記載の消火器設置台。
【請求項4】
前記背部材の上部には、持ち運び用の取っ手が設置されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の消火器設置台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−300952(P2007−300952A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129226(P2006−129226)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000200334)JFEメカニカル株式会社 (48)