説明

消火器

【課題】消火装置の容器に封板を溶接するとガス漏れは少ないが、開口面積が広いため板厚を大にする必要があるが、婦女子では消火装置の使用が困難になる。
【解決手段】この消火器は容器1と開封装置2を備える。該容器は本体11、蓋リング12、封板13及びサイフォン管14を備える。該本体には消火剤と加圧ガスが充填される。該蓋リングはその透孔16が該封板で塞がれ、取付部17が突出し、該開口の縁部に溶着される。該サイフォン管の一端部は該取付部に密嵌し、他端部は該本体の底部に開口する。該開封装置はブロック体21、穿針22及び作動子23を備える。該ブロック体の軸孔24に、消火剤Lの送出口25が連通し、一面に該穿針が突出し他端部は該作動子と連動可能に該ブロック体外へ突出したラム26が、該封板に対する離反傾向を与えられて、摺嵌される。該開封装置が該容器に該蓋リングを覆って固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火器、殊に容器に消火剤と加圧ガスを充填した畜圧式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畜圧式の消火装置で加圧ガスの漏れを防ぐため、封板を本体に溶接することによって開口を密閉し、長期間保管してもガス漏れを起こさせないようにすることと、消火剤の送出を環境温度の変化を利用して自動的に行うようにしたものが、本件出願人により出願されている(例えば、特開2001−198233号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−198233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、封板15を本体11に溶接しているので、ガス漏れの恐れは極めて少ないが、本体11の開口面積は高圧ガスカートリッジのそれにくらべ、遥かに広く、封板15にかかる圧力も大きくなる。この場合、封板の板厚を大にする必要があるが、あまり厚くすると、封板を穿孔する力も大きくなり、婦女子では消火器の使用が困難になってしまう。
また、開封器2のシリンダ21は本体11に封板15を覆って着脱自在なので、改造や悪戯等によってシリンダ21が本体11から取り外されたりすると、緊急時に使用できなくなる恐れがある。
【0005】
本発明はガス漏れを効果的に防ぐとともに、婦女子でも小さな力で封板を穿孔でき、しかも緊急の際に確実に使用可能な消火器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1) 本発明にかかる消火器は、容器と、開封装置を備えている。該容器は本体、蓋リング、封板及びサイフォン管を備えている。該本体はその開口を通して消火剤と加圧ガスが充填される。該蓋リングは、その軸線上の透孔が該透孔の口縁部と一体状となった該封板により塞がれ、該軸線上に自身の一面から突き出た取付部を備え、該開口の縁部に溶着されている。該サイフォン管はその一端部が該取付部に密接に嵌合し他端部が該本体の底面近傍に開口している。該開封装置はブロック体、穿針及び作動子を備えている。該ブロック体は軸孔が貫通し、該軸孔に消火剤の送出口が連通し、該軸孔には自身の一端面から該穿針が突出し他端部は該作動子と連動可能に該本体外へ突出したラムが、該穿針を該封板から離す方向への移動傾向を与えられて、摺動自在に挿入されている。そして、該開封装置が該容器に該蓋リングを覆って固着される。
【0007】
容器は通常のように、アルミ、ステンレス、鉄又は樹脂等で構成される。そして、その開口を通して内部に粉末、アルカリ液、酢等の消火剤が入れられ、更にこの消火剤を容器外へ送り出すための窒素、窒素+ヘリウムガス、窒素+アルゴンガス等の加圧ガスが充填される。次に、欠酸素雰囲気中で容器の開口の縁部に、該開口と同心にかつ取付部を容器内へ向けて、蓋リングを溶接する。溶接にはプロジェクション方式やロウ付け方式等が採用される。
【0008】
該容器の開口は、自身の軸線上の透孔が該透孔の口縁部と一体状となった該封板により塞がれた蓋リングをこの開口の縁部に溶着して、塞がれているので、ガス漏れが長期にわたって起こらず、現状の蓄圧式消火器はパッキンシール部があるためゲージ圧の日常的な点検による確認が欠かせないが、本発明ではパッキンシール部がなくゲージも不要なのでメンテナンスフリーとなり、容器と開封装置はそれぞれ別体に構成したものを結合するので、製作が容易である。
【0009】
(請求項2)該封板は該蓋リングより薄くかつ軟質の材料で構成され、両者は接合面で融着していてもよい。
こうすると、該封板の穿孔に大きな力は必要でなく婦女子でも容易に開封でき、該封板は該蓋リングとピンホール無しに一体化されるので、ガス漏れは生じない。
【0010】
(請求項3)該サイフォン管の一端部の外周面は該取付部の内面に密接に嵌合し、該一端部と該蓋リングの該一面間に該封板を支持していてもよい。
こうすると、封板が確実に支持され、消火器が転倒したりして動揺しても、該封板がずれることがなく、ガス漏れ等の発生を防げる。
【0011】
(請求項4)該サイフォン管の一端部の内周面は該取付部の外面に密接に嵌合していてもよい。
こうすると、加圧ガスがサイフォン管と取付部の間を通って漏れ出ることはなく、確実な消火剤放出を果たせる。
【0012】
(請求項5)該加圧ガスは窒素、窒素+ヘリウム(5%)又は窒素+アルゴンガス(5%)の内の一種類であってもよい。
こうすると、何れも不活性ガスなので、容器の開口の縁部に蓋リングを溶接する作業を安全に行え、ガス漏れ検知も容易かつ確実に行った上で出荷することができるので、その後の業者や個人等によるメンテナンスが不要となる。
【0013】
(請求項6)該開封装置の該ブロック体は樹脂製となっていてもよい。
こうすると、軽量となり、コストも低下でき、容器との溶着や接着も容易に行える。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る消火器によれば、容器の開口は、自身の軸線上の透孔が該透孔の口縁部と一体状となった該封板により塞がれた蓋リングをこの開口の縁部に溶着して、塞がれているので、封板を厚くする必要がなく、従って、重量化を防げ、婦女子でも簡単に開封でき、ガス漏れが長期にわたって起こらず、容器と開封装置はそれぞれ別体に構成したものを結合するので、製作が容易である。
【0015】
請求項2によれば、該封板の板圧を厚くする必要がないので、該蓋リングの重量化が防げ、該封板の穿孔に大きな力は必要でなく婦女子でも容易に開封でき、該封板は該蓋リングとピンホール無しに一体化されるので、ガス漏れは生じない。
【0016】
請求項3によれば、該サイフォン管の一端部の外周面は該取付部の内面に密接に嵌合し、該一端部と該蓋リングの該一面間に該封板を支持しているので、消火器が転倒したりして動揺しても、該封板は確実に支持され、ガス漏れ等の発生を防げる。
【0017】
請求項4によれば、該サイフォン管の一端部の内周面は該取付部の外面に密接に嵌合しているので、加圧ガスが該サイフォン管と該取付部の間を通って漏れ出ることはなく、確実な消火剤放出を果たせる。
【0018】
請求項5によれば、該加圧ガスは窒素、窒素+ヘリウム(5%)又は窒素+アルゴンガス(5%)の内の一種類なので、ガス漏れ検知を容易かつ確実に行って出荷することができ、その後の業者や個人等によるメンテナンスが不要となる。
【0019】
請求項6によれば、該開封装置の該ブロック体は樹脂製となっているので、軽量化を果たせ、コストも低下でき、容器と一体化するための溶着や接着も可能かつ容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる消火器の具体例で、サイフォン管外嵌型を示す縦断面図である。
【図2】図1の容器と開封装置の結合部分の拡大図である。
【図3】図2と同様の拡大図で、サイフォン管内嵌型である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して、説明する。
(請求項1) 図1は本発明にかかる消火器の縦断面図、図2は図1の容器1と開封装置2の結合部分の拡大図である。この消火器は、容器1と、開封装置2を備えている。
この容器1は本体11、蓋リング12、封板13及びサイフォン管14を備えている。本体11はその開口15を通して消火剤Lと加圧ガスGが充填される。蓋リング12は、その軸線X上の透孔16がこの透孔16の口縁部16aと一体状となった封板13により塞がれる。蓋リング12はまたこの軸線X上に自身の一面12aから突き出た取付部17を備え、開口15の縁部15aに溶着15cされている。サイフォン管14はその一端部14aが取付部17に密接に嵌合し、他端部14bが本体11の底面近傍に開口している。
【0022】
開封装置2はブロック体21、穿針22及び作動子23を備えている。ブロック体21は軸孔24が貫通し、この軸孔24に消火剤Lの送出口25が連通し、軸孔24には、自身の一端面から穿針22が突出し他端部は作動子23と連動可能にブロック体21外へ突出したラム26が、穿針22を封板13から離す方向への移動傾向を、バネ27等で与えられて、摺動自在に挿入されている。
【0023】
このバネ27がコイルバネの場合は、軸孔24に穿針22を巡ってラム26と封板13間に装入される。作動子23の揺動でラム24がブロック体21に押し込まれ、穿針22が封板13を突き破った場合、穿針22が封板13の切断面と圧接して両者間に流体の流出間隙が十分確保されない場合がある。バネ27は穿針22を封板13から引き戻す力をラム26に与える。
【0024】
このバネ27は、図1のように、棒バネとし、基部を作動子23の枢軸Yに巻きかけ、各端を作動子23とブロック体21に係止するようにしてもよい。
この開封装置2が容器1に蓋リング12を覆って固着され、消火器が構成される。この固着には、溶着3の他、蝋付け、鋲止め等、適宜の手法が採用される。
【0025】
図3は請求項4に関連した構成で、サイフォン管14の一端部14aの外周面は取付部17の内面に密接に嵌合し、この一端部14aの端面14cと蓋リング12の一面12a間に封板13を支持している。蓋リング12と封板13の溶接はしなくてもよいが、溶着させれば、封止が一層確実となる。
【0026】
この場合、封板13が確実に支持され、消火器が転倒したりして動揺しても、封板13がずれることがなく、ガス漏れ等の発生を防げる。
【0027】
(請求項2)図2で、封板13は蓋リング12より薄くかつ軟質の材料で構成され、両者は接合面19で融着している。
この場合、封板13の板圧を厚くする必要がないので、蓋リング12の重量化が防げ、封板13の穿孔に大きな力は必要でなく婦女子でも容易に開封でき、封板13は蓋リング12とピンホール無しに一体化されるので、ガス漏れは生じない。
【0028】
(請求項3)図3で、サイフォン管14の一端部14aの外周面は取付部17の内面に密接に嵌合し、この一端部14aの端面14cと蓋リング12の一面12a間に封板13を支持している。
この場合、封板13が確実に支持され、消火器が転倒したりして動揺しても、封板13がずれることがなく、ガス漏れ等の発生を防げる。
【0029】
(請求項4)図2で、サイフォン管14の一端部14aの内周面は取付部17の外面に密接に嵌合している。
この場合、加圧ガスがサイフォン管14と取付部17の間を通って漏れ出ることはなく、確実な消火剤放出を果たせる。
【0030】
(請求項5)図1及び2で、加圧ガスGは窒素、窒素+ヘリウム(5%)又は窒素+アルゴンガス(5%)の内の一種類である。
この場合、何れも不活性ガスなので、容器1の開口15の縁部15aに蓋リング12を溶接する作業を安全に行え、ガス漏れの検査も容易かつ確実に行ってから出荷することが出来る為、その後の業者や個人によるメンテナンスが不要となる。
【0031】
(請求項6)図1〜3で、開封装置2のブロック体21は樹脂製となっている。
この場合、ブロック体21は軽量となり、コストの低下も可能で、容器1との接着や溶着もできるので、両者の確実かつ長期的な一体化が果たせる。
【符号の説明】
【0032】
1 容器
2 開封装置
11 本体
12 蓋リング
12a 一面
13 封板
14 サイフォン管
14a 一端部
14b 他端部
14c 端面
15 開口
L 消火剤
G 加圧ガス
16 透孔
17 取付部
21 ブロック体
22 穿針
23 作動子
24 軸孔
25 送出口
26 ラム
27 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(1)と、開封装置(2)を備え、
該容器(1)は本体(11)、蓋リング(12)、封板(13)及びサイフォン管(14)を備え、
該本体(11)はその開口(15)を通して消火剤(L)と加圧ガス(G)が充填され、
該蓋リング(12)は、その軸線(X)上の透孔(16)が該透孔(16)の口縁部(16a)と一体状となった該封板(13)により塞がれ、該軸線(X)上に自身の一面(12a)から突き出た取付部(17)を備え、該開口(15)の縁部(15a)に溶着(15c)され、
該サイフォン管(14)はその一端部(14a)が該取付部(17)に密接に嵌合し、他端部(14b)が該本体(11)の底面近傍に開口し、
該開封装置(2)はブロック体(21)、穿針(22)及び作動子(23)を備え、
該ブロック体(21)は軸孔(24)が貫通し、該軸孔(24)に消火剤( L)の送出口(25)が連通し、該軸孔(24)には自身の一端面から該穿針(22)が突出し他端部は該作動子(23)と連動可能に該ブロック体(21)外へ突出したラム(26)が、該穿針(22)を該封板(13)から離す方向への移動傾向を与えられて、摺動自在に挿入され、
該開封装置(2)が該容器(1)に該蓋リング(12)を覆って固着される
ことを特徴とする消火器。
【請求項2】
該封板(13)は該蓋リング(12)より薄くかつ軟質の材料で構成され、両者は接合面(19)で融着している請求項1に記載の消火器。
【請求項3】
該サイフォン管(14)の該一端部(14a)の外周面は該取付部(17)の内面に密接に嵌合し、該一端部(14a)の端面(14c)と該蓋リング(12)の該一面(12a)間に該封板(13)を支持している請求項1に記載の消火器。
【請求項4】
該サイフォン管(14)の該一端部(14a)の内周面は該取付部(17)の外面に密接に嵌合している請求項1又は2に記載の消火器。
【請求項5】
該加圧ガス(G)は窒素、窒素+ヘリウム(5%)又は窒素+アルゴンガス(5%)の内の一種類である請求項1〜4の一つの項に記載の消火器。
【請求項6】
該開封装置(2)の該ブロック体(21)は樹脂製となっている請求項1〜5の一つの項に記載の消火器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−147527(P2011−147527A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9848(P2010−9848)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(390009818)日本炭酸瓦斯株式会社 (11)