説明

消火方法

【課題】地中において発生した火災について、被害の拡大を抑え、効果的に消火を行うことを可能とした、消火方法を提案する。
【解決手段】地表から火災源Fまでボーリング孔1を削孔し、このボーリング孔1を介して火災源Fに消火材2を噴射することにより地中の火災を消火する方法であって、ボーリング孔1には、消火材2を噴射する噴射部を備えたケーシング11が挿入されており、このケーシング11を上下にさせることにより、噴射部の高さが火災源Pの下端面から上端面の間で上下させながら消火材2を火災源Pの全体に噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中で発生した火災や廃棄物火災の消火方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場に埋め立てられた廃棄物や、中間処理場等に仮置きされた廃棄物は、地中(廃棄物中)において、火災を起こす虞がある。このような、火災の原因としては、以下に示す事項が考えられる。
(1)廃棄物に付着した有機物が嫌気条件で生分解を起こす際にメタンを発生し、火花や不始末火を契機として発火すること
(2)有機物の生分解反応が、断熱温度条件により60〜80℃まで上昇することで、油分やアルコール類等の発火点の低い物質のものから順に、連鎖的に引火して燃焼すること
(3)不適切に埋め立てられた廃棄物がせん断応力や圧縮応力を受けることで発熱し、この熱により熱分解が生じて可燃性ガスが発生し、この可燃性ガスに火花や不始末火等が引火すること
【0003】
地中(廃棄物中)で生じた火災は、表面が土や廃棄物等により覆われているため、出火の発見が遅れることで規模が大きくなる虞がある。また、火災源が地中の深い場所にある場合は、迅速かつ確実に消火を行うことができない場合がある。さらに、地中の火災源の消火に手間取れば、廃棄物中に含まれる有害物質が大気中に放出される虞もある。
【0004】
従来、地中(地下に埋め立てられた廃棄物中や野積みされた廃棄物中を含む)の火災の消火方法としては、次に示すような消火方法により行われていた。
(1)開削工法等により、地中から火災源を除去する方法。
(2)地中に発生した火災源の上面を発泡モルタルの層で覆うことで、火災源への酸素の供給を遮断する方法(例えば、特許文献1参照)。
(3)火災源に水を供給することで、水の気化熱により火災源周囲の温度を低下させる方法。
【特許文献1】特開平6−296707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記従来の消火方法は、期待された消火効果を得ることができないことや、周辺環境への悪影響を与える虞があった。
例えば、(1)の火災源を除去する方法では、開削により火災源となる廃棄物を掘り起こす際に、この火災源に一挙に酸素が供給されることで、火災が瞬時に広がり、被害規模が拡大する虞がある。
【0006】
また、(2)の酸素を遮断する方法は、もともと酸素供給が限られた地中や廃棄物中において持続している火災であるため、効果的に酸素を遮断することが困難であり、大きな効果が期待できないという問題点を有していた。
【0007】
さらに、(3)の温度を低下させる方法では、地中に過剰な水を用いることにより、廃棄物間隔や埋め立て底部に余剰の水が残留する場合があるが、この残留した水分に、廃棄物中の有害物質が溶け出して拡散すると、周辺の環境を汚染する虞がある。このような汚染の拡大を防止するためには、排水処理施設を構築する必要があるが、コストが高くなってしまう。
【0008】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、地中(埋め立てられた廃棄物中や仮置きされた廃棄物中等を含む)において発生した火災について、被害の拡大を抑え、効果的に消火を行うことを可能とした、消火方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明は、地中で発生した火災の消火方法であって、前記火災の火災源に向けて掘削孔を形成し、該掘削孔を介して前記火災源に消火材を供給することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の他の地中で発生した火災の消火方法は、前記火災の火災源を囲うように、複数本の掘削孔を形成し、前記各掘削孔を介して前記火災源に消火材を供給することを特徴としている。
【0011】
かかる消火方法は、火災源に向けて、地中に形成された掘削孔を介して直接的あるいは間接的に火災源の冷却や酸素の供給の遮断を行うことで効果的に消火を行うものである。
【0012】
また、前記消火方法において、前記消火材を、噴射することにより前記火災源に供給してもよい。消火材を噴射することで、消火材が気化されやすくなるので、地中に消火材が過剰に供給されることがない。
【0013】
また、前記消火方法において、前記掘削孔には、前記消火材を地中に供給する供給部を備えたケーシングが挿入されており、該ケーシングを上下に動かしながら前記消火材を噴射すれば、より効果的に火災源の消火を行うことが可能となる。つまり、ケーシングを上下に動かすことにより、供給部から供給された消火材が、火災源全体にいきわたるように消火作業を行うことが可能となる。
【0014】
また、消火材の供給後に、前記火災源に固化材を供給すれば、消火後の廃棄物について、出火の原因となる有機物の生分解を抑止すること、廃棄物に作用する応力を軽減すること、空隙率の低下により酸素供給量を減少させることが可能となるため、再燃を防止することが可能となる。
【0015】
また、前記ケーシングが先端に温度計測センサーを備えていれば、該温度計測センサーの計測結果に応じて、ボーリング孔の削孔、消火材の噴射等の制御を行うことが可能となる。つまり、ボーリング孔の削孔時の温度を確認することで、削孔を中断して退避することが可能となる。また、消火材の噴射による効果を確認することで、噴射作業の終了のタイミングや噴射条件の変更等を図ることが可能となる。
【0016】
前記消火材が、水、不活性ガス、若しくは、脱酸素空気、または、これらのうち少なくとも2つを混合した混合体であれば、火災源の冷却や酸素供給の遮断を効果的に行うため、好適である。
ここで、不活性ガスの種類に制限はないが、窒素、二酸化炭素、アルゴンのいずれか、又は窒素、二酸化炭素、アルゴンのうち複数の混合物等が好適に使用可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、地中において発生した火災について、被害の拡大を抑え、かつ、効果的に消火を行うことが可能となった。また、再燃防止のための後処理を連続的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
ここで、図1は、本実施形態に係る消火方法の概要を示す正面図である。また、図2は、本実施形態に係る消火方法の装置を示す模式図である。また、図3は、本実施形態に係る消火方法の概要を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。さらに、図4は、本実施形態に係る消火方法の変形例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【0019】
本実施形態に係る消火方法は、図1に示すように、地表から地下の火災源Fまでボーリング孔(掘削孔)1を削孔し、このボーリング孔1を利用して火災源Fに消火材2を噴射することにより、地下の火災源Fを消火する方法である。そして、消火材2の噴射によって、火災源Fの消火を行った後に、消火材2を噴射した地中(廃棄物中)に固化材を噴射することで、火災の再燃を防止する。
【0020】
本実施形態では、ボーリングマシン3を利用して地表から鉛直方向にボーリング孔1を削孔するとともに、ボーリング孔1にケーシング11を挿入する。そして、このケーシング11を介して水等の消火材2を地中に噴射することにより火災源Fの消火を行う。なお、消火材2は、圧送管14aを介して連結されたポンプ14により、ケーシング11に圧送される。つまり、本実施形態に係る消火方法は、既存の高圧噴射攪拌工法において使用する設備を利用することにより、地中で生じた火災の消火及び再燃の防止を行うものである。
なお、本実施形態では、ボーリング孔1を地表から鉛直方向に削孔するものとするが、ボーリング孔1の角度等は限定されるものではなく、例えば、立坑等を利用して水平方向に削孔したり、斜め方向に削孔したりしてもよい。また、本実施形態では、ボーリング孔1の削孔を、ボーリングマシン3を利用して行うものとしたが、ボーリング孔1の削孔方法は限定されるものではない。
【0021】
本実施形態の消火方法に用いる消火装置10は、図2に示すように、噴射部(図示省略)を備え、ボーリング孔1に挿入されたケーシング11と、消火材2を構成する水Wを貯留するタンク12と、消火材2を構成する窒素ガスNを貯留するボンベ13と、水Wと窒素ガスNとを同時にケーシング11に圧送するポンプ14と、ケーシング11の先端部に設置された温度センサー16と、ロータリーエンコーダ17と、演算部18と、固化材Cを貯留する貯留槽15と、を備えている。
なお、噴射部とは、ケーシング11の先端部に形成されて、火災源に消火材2を供給するための供給部である。噴射部は、噴射孔や噴射ノズル等であって、地中への消火材2の噴射が可能であれば、その形式や形状等は限定されるものではない。また、本実施形態では、噴射部をケーシング11の先端(下端)部に形成するものとするが、ケーシング11における噴射部の形成箇所は限定されるものではない。また、噴射部は、横方向に消火材の噴射が可能となるように形成するものとするが、噴射方向は限定されるものではない。さらに、噴射部は、一方向に噴射可能に形成されていても、多方向に噴射可能に形成されていてもよい。
【0022】
この消火装置10は、ポンプPを介してタンク12からポンプ14に圧送された水Wと、ボンベ13からポンプ14に供給された窒素ガスNと、をこのポンプ14により同時に圧送することで、ポンプ14の内部において水Wと窒素ガスNとが混合されることで生成された消火材2がボーリング孔1に挿入されたケーシング11に圧送される。ケーシング11に圧送された消火材2は、ケーシング11に形成された噴射部から、火災源Fに噴射される。なお、水Wと窒素ガスNの混合方法は、前記の方法に限定されるものではなく、例えば、ラインミキサーを介して圧送管14a内において混合するなど、適宜、公知の方法から選定して採用してもよい。
なお、消火材2の噴射圧は、地中(廃棄物中)の状況(例えば、埋め立て密度や廃棄物の種類)等に応じて適宜設定すればよく、限定されるものではないが、本実施形態では0.1〜40MPaの範囲内、好ましくは20〜40MPaの範囲内で噴射するものとする。また、消火材2の突出量も限定されるものではないが、本実施形態では10〜500L/minの範囲内、好ましくは50〜500L/minの範囲内で供給するものとする。
【0023】
ケーシング11の先端部には、温度センサー16が設置されており、ボーリング孔11の削孔時の温度測定、消火材2の噴射時の温度測定等を行う。また、ケーシング11は、ロータリーエンコーダ17により、その角度および深度が測定可能に構成されており、所望の位置にケーシング11(噴射部)を配置することで、地下の消火を効果的に行うことが可能に構成されている。
【0024】
また、ケーシング11は、貯留槽15からポンプPを介して圧送された固化材Cを輸送する送液管15aが接続可能に構成されており、消火材2による火災源Fの消化後、消火材2を噴射した個所に固化材Cの注入が可能に構成されている。
【0025】
なお、消火装置10の構成は、前記のものに限定されるものではなく、適宜設定すればいいことはいうまでもない。
例えば、本実施形態では、消火材2として、水Wと窒素ガス(不活性ガス)Nを使用するものとし、タンク12およびボンベ13を配置するものとしたが、タンク12およびボンベ13は、消火材2を構成する材料に応じて省略することも可能である。また、チャンバ等により、水Wと窒素ガスNを混合して消火材2を生成した後、この消火材2をポンプ14により圧送してもよい。
【0026】
本実施形態の消火方法は、地表から地下の火災源Fあるいは火災源Fの近傍までボーリング孔1を削孔する削孔工程と、このボーリング孔1を利用して火災源Fに向けて消火材2を噴射する消火材噴射工程と、火災源Fの消火後に固化材Cを噴射攪拌(注入)する固化材注入工程とを含んでいる。
【0027】
削孔工程は、図1に示すように、火災源Fの直上の地表に配置されたボーリングマシン3を利用して、地表から、火災源Fの下端付近までボーリング孔1を削孔する工程である。ここで、本実施形態では、ボーリング孔1を、図3(a)および(b)に示すように、火災源Fの略中心を貫通するように形成する。
【0028】
ボーリング孔1の削孔では、削孔とともにケーシング11を当該ボーリング孔1に挿入することにより行う。このケーシング11の先端には、図2に示すように、温度計測センサー16が設置されており、ボーリング孔1の削孔は、この温度センサー16で地中(廃棄物中)の温度を測定しながら行う。温度センサー16により測定された結果は、リニアライザ16aにより温度変化が直線化されたデータとともの演算部18に送られて、処理される。演算部18の処理データにより、ボーリング孔1の温度が、消火装置10の耐熱警戒温度を超えるような場合や、ボーリング孔1の温度勾配が急激に上昇するような場合には、演算部18に危険信号が表示または発信されるため、ボーリング孔1の削孔を中断し、退避する。そして、ボーリング孔1の設置箇所を移動して、再度、削孔を行う。
【0029】
消火材噴射工程は、ポンプ15により圧送された消火材2をケーシング11の噴射部から火災源Fに噴射する工程である。
消火材2の噴射は、火災源Fの中心を貫通するように形成されたボーリング孔1に挿入されたケーシング11を、ケーシング11の中心を軸に回転させつつ、噴射部が火災源Fの下端付近から上端付近の間で上下するように、上下させながら行う。
【0030】
消火材2の噴射に伴い、ケーシング11に設置された温度センサー16による温度測定を行う。そして、演算部18により、所望の温度低下(温度変化)が認められるまで、ケーシング11を上下させながら、消火材2の噴射を繰り返し行う。なお、温度計測結果により、所望の効果が得られた場合には、ケーシング11を上下されることなく、消火材の噴射を終了させてもよい。
また、消火材2の噴射は、温度センサー16による計測結果に応じて、噴射量を制御することで、余浄水の削減を図る。また、消火材2の噴射は、ケーシング11を回転させて全方向に行ってもよいし、回転させることなく1方向に向かって行ってもよい。
【0031】
なお、消火材2の噴射は、演算部18により自動的に制御することも可能である。つまり、演算部18の処理結果に基づいて、演算部18が、消火材2の注入量の調整、ケーシングの上下動の速度調整、または、注入の停止指示等を自動的に行う構成としてもよい。また、演算部18の処理結果に基づいて人力にて、消火材2の注入の制御を行ってもよいことはいうまでもない。
【0032】
演算部18を利用した消火作業の制御は、例えば、次のように行われる。演算部18は、温度センサー16の計測結果に基づいて、火災源Fの温度と、温度変化の勾配を算出する。そして、火災源Fの温度が、所望の温度以下(例えば、再び発火する虞のない温度)となった場合、または、温度変化が所定の角度よりも急勾配で低下する場合は、消火作業による効果が得られた旨の信号が発信される。この信号に基づき、噴射作業を終了、噴射圧を弱める、噴射量を低下させる等の調整を行う。一方、火災源Fの温度が変化しない場合や温度低下の勾配が緩やかな場合には、消火作業による所望の効果が得られていない旨の信号を発信されるため、この信号に基づいて、消火材2の噴射量の増加や消火材の供給の継続等の調整を行う。さらに、火災源Fの温度が上昇するような場合には、消火作業による効果が得られていないため、消火材2の噴射停止の信号が発信される。
【0033】
固化材注入工程は、消火材噴射工程において、ケーシング11を介して、火災源Fに向けて消火材2を噴射することにより、火災源Fの消火に所望の効果がれられた後、このケーシング11を利用して、セメントミルクなどの固化材Cを噴射攪拌(注入)する工程である。固化材Cの噴射攪拌は、火災源F全体に固化材Cが行き渡るように、ケーシング11の中心軸まわりに回転させつつ、火災源Fの下端付近から上端付近まで引き上げながら行う。
【0034】
固化材注入工程において地中(廃棄物中)に噴射される固化材Cは限定されるものではないが、再燃を防止することを目的として、有機物の生分解の抑制、廃棄物に作用する圧力の軽減を行うことが可能な公知の材料から適宜選定して使用する。なお、有機物の生分解を抑制する観点からすれば、高pH条件とすることが可能なセメントミルクの注入が効果的である。廃棄物地盤は、通常自然地盤と比較して間隙が非常に大きいため、注入した固化材が流出する虞がある。そのため、セメントミルクの配合は、粘性が高く、早期に強度を発現するものであることが望ましい。
【0035】
以上、本実施形態に係る消火方法によれば、埋め立てられた廃棄物中や仮置きされた廃棄物中等の地中において発生した火災について、被害の拡大を抑え、かつ、効果的に消火を行うことが可能となる。
【0036】
つまり、火災源に直接消火材を噴射することにより、効果的に消火を行うことができる。この消火材として、水と窒素ガスの混合物を使用するため、水の気化熱により火災源の熱を低下させるとともに、窒素ガスにより火災源への酸素の供給を遮断する効果を得ることにより、効果的に消火を行う。
【0037】
また、消火材(水)を噴射することにより、消火材の比表面積を大きくしているため、気化されやすく、地中(廃棄物中)に余浄水が残留することがない。そのため、地盤の強度を弱めることや、余浄水に有害物質が溶け出すことで汚染が拡散することなどが防止される。
【0038】
また、温度センサーを利用して、消火材の噴射による効果を確認しながら、消火作業を行うため、必要に応じた消火材の量を噴射することが可能となり、排水処理が不要となることや、経済性の向上が可能となることや、有害物質の漏出を防止することが可能となるため、好適である。
【0039】
消火装置として、ボーリングマシンを主とした、既存の簡易な設備のみで構成することが可能なため、新たな装置を構成する必要がなく、経済的である。
また、同一の機械を用いて、火災の消火から再燃防止の後処理まで行うため、連続的に効率よく作業を行うことが可能である。
【0040】
また、消火材による消火後に、固化材を噴射することで、出火の原因となる有機物の生分解の抑止、廃棄物に作用する応力の軽減、空隙率の低下による酸素供給量の減少等により、廃棄物の再燃を防止することが可能となる。
また、火災の拡大や汚染物質の流出を抑止するため、生活環境上の支障を取り除くことを可能としている。
【0041】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、前記各実施形態では、消火材として、水と窒素ガスを使用するものとしたが、消火材を構成する材料は限定されるものではなく、火災の原因や火災源として燃焼している物質に応じて、適宜公知の材料から選定して使用すればよい。例えば、水、不活性ガス、若しくは、脱酸素空気のいずれか、または、これらのうち少なくとも2つ以上を混合した混合体であってもよい。
【0042】
前記実施形態では、火災源の中心を貫通するようにボーリング孔を削孔した場合について説明したが、ボーリング孔は、火災源を貫通するように形成することに限定されるものではない。例えば、図4(a)および(b)に示すように、複数(図4では5箇所)のボーリング孔を火災源を取り囲むように形成し、火災源に対して周囲から消火材を噴射する構成としてもよい。この構成によれば、ケーシング等が直接火災源に挿入されることがないため、消火装置に火災の熱による損傷が生じることがない。
【0043】
また、ボーリング孔を、火災源の上端面または上方まで削孔することで、火災の熱により消火装置に損傷が生じることを防止する構成としてもよい。この場合において、消火材は、火災源の上端面または上方から噴射または浸透させることで、火災源に供給する構成とする。
また、ボーリング孔の削孔を、火災源を貫通することなく、火災源の中央部で止めても、消火材を供給することで、火災を消火することが可能である。
【0044】
また、火災源の消火において、火災源から離れた場所にボーリング孔を形成し、消火材を噴射することで、所望の効果を得られた後、さらに火災源に近い個所にボーリング孔を形成し、このボーリング孔を利用して消火を行う作業を繰り返すことで、消火装置の破損を防止してもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、消火材を噴射することにより火災源に供給するものとしたが、消火材の供給方法は噴射に限定されるものではない。例えば、注入孔(供給部)が形成されたケーシングを利用して、消火材を地中に高圧で注入することにより、消火材を火災源に供給する構成としてもよい。この時の消火材の注入圧力は、地中(廃棄物中)の状況に応じて適宜設定すればよく、限定されるものではないが、0.1〜40MPaの範囲内、好ましくは20〜40MPaの範囲内であれば、地中に効果的に浸透するため、好適である。
【0046】
前記実施形態では、後処理として、消火後の地盤(廃棄物中)に固化材を注入するものとしたが、固化材の注入は必要に応じて行えばよい。
【0047】
また、掘削孔の形成方法は、ボーリングによるものに限定されるものではなく、適宜公知の方法から選定して形成すればよい。
さらに、前記実施形態では、ボーリング孔(掘削孔)に挿入されたケーシングを介して消火材を火災源に供給する構成としたが、必ずしも、ケーシングを利用する必要はない。
【実施例】
【0048】
次に、本発明に係る消火方法による廃棄物火災に必要な消火材の量、設備等の算定例について説明する。なお、本実施例の算定例は一例であって、本発明に係る消火材の量や設備数等の算定は、適宜変更してもよい。
【0049】
本実施例では、廃棄物火災が、地下20m〜40mにおいて60m×60mの範囲で起きた場合について算定する。算定に使用する、その他の廃棄物の条件は、下記の通りである。
廃棄物の種類 :プラスチック類(総発熱量5000kcal/kg)
廃棄物の燃焼率:全熱量の50%
埋め立て密度 :ρ=1t/m
【0050】
また、消火材の噴射条件は下記の通りである。
吐出量:500L/min
吐出圧:30MPa
【0051】
(1) 放水量の算定
本実施例における廃棄物火災の消火に必要な放水量を算出する。
まず、発熱範囲に存在する廃棄物量を、下式(式1)により算出する。
60m×60m×(40m−20m)=72000m
72000m×1t/m=72000t …(式1)
【0052】
次に、72000tの廃棄物の発熱量を下式(式2)により算出する。
72000t×5000kcal/kg×50%
=1.8×1011kcal…(式2)
【0053】
次に、発熱量を利用して、水の気化熱により、発熱を奪うために必要な放水量を式3により算出する。
1.8×1011kcal÷582.8cal/g=3.1×10t…(式3)
ここで、水の気化熱は582.8cal/g
したがって、廃棄物火災の消火に必要な放水量は、最大で3.1×10tである。
【0054】
(2)工期の算定
本実施例における火災源の消火に要する工期を算出する。
ポンプによるボーリング孔あたりの消火材噴射量は、式4に示すとおりである。
500L/min=8.3kg/s …(式4)
【0055】
次に、ボーリング孔配置数を5箇所とした場合による、火災源の消火に要する工期を、式5により算出する。
3.1×10t÷(5箇所×500L/min×60min/hr×24hr)
=86.1日≒90日 … (式5)
したがって、本実施例における廃棄物火災の消火には最大で90日かかる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る消火方法の概要を示す正面図である。
【図2】本発明の好適な実施の形態に係る消火方法の装置を示す模式図である。
【図3】本発明の好適な実施の形態に係る消火方法の概要を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図4】本発明の好適な実施の形態に係る消火方法の変形例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ボーリング孔(掘削孔)
2 消火材
10 消火装置
11 ケーシング
C 固化材
F 火災源
N 窒素ガス(不活性ガス)
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中で発生した火災を消火する方法であって、
前記火災の火災源に向けて掘削孔を形成し、該掘削孔を介して前記火災源に消火材を供給することを特徴とする、
消火方法。
【請求項2】
地中で発生した火災を消火する方法であって、
前記火災の火災源を囲うように、複数本の掘削孔を形成し、前記各掘削孔を介して前記火災源に消火材を供給することを特徴とする、
消火方法。
【請求項3】
前記消火材を、噴射することにより前記火災源に供給することを特徴とする、
請求項1または請求項2に記載の消火方法。
【請求項4】
前記掘削孔には、前記消火材を地中に供給する供給部を備えたケーシングが挿入されており、
該ケーシングを上下に動かしながら前記消火材を供給することを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の消火方法。
【請求項5】
前記消火材の供給後に、前記火災源に固化材を供給することを特徴とする、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の消火方法。
【請求項6】
前記ケーシングの先端に温度計測センサーを備えていることを特徴とする、
請求項4乃至請求項5のいずれか1項に記載の消火方法。
【請求項7】
前記消化材が、水、不活性ガス、若しくは、脱酸素空気、または、これらのうち少なくとも2つを混合した混合体であることを特徴とする、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の消火方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−168059(P2008−168059A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6120(P2007−6120)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)