説明

消火液

【課題】 本発明の目的は、低毒性で環境に悪影響を与えず、防錆効果の高い消火液を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】飽和脂肪酸およびその塩、不飽和脂肪酸およびその塩、飽和ジカルボン酸およびその塩、トリカルボン酸およびその塩、トリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール、を含む水溶液であることを特徴とする消火液であり、さらに水酸化物を含む消火液である。また、飽和脂肪酸およびその塩1重量%〜30重量%、不飽和脂肪酸およびその塩0.5重量%〜10重量%、飽和ジカルボン酸およびその塩0.05重量%〜5重量%、トリカルボン酸およびその塩0.5重量%〜10重量%、トリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール0.05重量%〜2重量%、を含む水溶液であることを特徴とする消火液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火液に関し、より詳しくは水溶性の消火液に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には消火液は、炭酸カリウムの濃厚水溶液を主成分とするものが用いられている(例えば、特許文献1参照)が、これは強いアルカリ性を示すので、金属容器中で長期間保存す場合、容器の腐食の点で好ましくない。また、この消火液が人体や被服に付着すると、皮膚や被服を損傷し、特に消火作業中に目に入った場合には、速やかに洗眼が必要になるなど、取り扱いが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
[特許文献1] 特開平9−253231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、低毒性で環境に悪影響を与えず、防錆効果の高い消火液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の消火液は、飽和脂肪酸およびその塩、不飽和脂肪酸およびその塩、飽和ジカルボン酸およびその塩、トリカルボン酸およびその塩、トリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール、を含む水溶液である。
【0006】
本発明の消火液は、さらに水酸化物を含む場合がある。
【0007】
本発明の消火液は、飽和脂肪酸およびその塩1重量%〜30重量%、不飽和脂肪酸およびその塩0.5重量%〜10重量%、飽和ジカルボン酸およびその塩0.05重量%〜5重量%、トリカルボン酸およびその塩0.5重量%〜10重量%、トリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール0.05重量%〜2重量%、を含む水溶液であり得る。
【0008】
上記飽和脂肪酸は、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸からなる群より選択される少なくとも1つであり得る。
上記不飽和脂肪酸は、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0009】
上記飽和ジカルボン酸は、ドデカン二酸、セバチン酸、セバシン酸からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0010】
上記水酸化物は、水酸化カリウムであり得る。また、水酸化物の濃度は、0.1重量%〜5重量%であり得る。
【0011】
上記脂肪酸の塩は、脂肪酸のカリウム塩を含み得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、低毒性で環境に悪影響を与えない消火液が提供される。また、本発明によると、防錆効果の高い組成物として調製された消火液が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の飽和脂肪酸およびその塩、不飽和脂肪酸およびその塩、飽和ジカルボン酸およびその塩、トリカルボン酸およびその塩、トリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール、を含む水溶液は、通常の蒸留水、脱イオン水、水道水等に、少なくとも、飽和脂肪酸およびその塩、不飽和脂肪酸およびその塩、飽和ジカルボン酸およびその塩、トリカルボン酸およびその塩、トリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾールを溶解させた水溶液である。
【0014】
本発明の消火液は、さらに、水酸化物を加えて調製することもできる。
【0015】
本発明の消火液における飽和脂肪酸およびその塩、不飽和脂肪酸およびその塩、飽和ジカルボン酸およびその塩、トリカルボン酸およびその塩、トリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾールのそれぞれの含有量は、特に限定されないが、飽和脂肪酸およびその塩1重量%〜30重量%、好ましくは、5重量%〜15重量%、不飽和脂肪酸およびその塩0.5重量%〜15重量%、好ましくは、1重量%〜15重量%、飽和ジカルボン酸およびその塩0.05重量%〜5重量%、好ましくは、0.1重量%〜5重量%、トリカルボン酸およびその塩0.5重量%〜10重量%、好ましくは、1重量%〜10重量%、およびトリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール0.05重量%〜2重量%、好ましくは、0.1重量%〜0.5重量%、を含む水溶液であることが好ましい。
【0016】
本発明の消火液の調製に用いられる飽和脂肪酸は、特に限定されず、当業者に公知のいずれの飽和脂肪酸でもあり得る。好ましくは、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0017】
本発明の消火液の調製に用いられる不飽和脂肪酸は特に限定されず、当業者に公知のいずれの不飽和脂肪酸でもあり得る。好ましくは、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0018】
本発明の消火液の調製に用いられる飽和ジカルボン酸は、特に限定されず、当業者に公知のいずれの飽和ジカルボン酸でもあり得る。好ましくは、ドデカン二酸、セバチン酸、セバシン酸からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0019】
本発明の消火液の調製に用いられるトリカルボン酸は特に限定されず、当業者に公知のいずれのトリカルボン酸でもあり得る。好ましくは、クエン酸、イソクエン酸、トリカルバリル酸である。なかでもクエン酸が好ましい。
【0020】
本発明の消火液の調製に用いられる脂肪酸の塩は、特に限定されず、当業者に公知のいずれの脂肪酸金属塩でもあり得る。特に好ましくは、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウムなどである。
【0021】
飽和脂肪酸およびその塩、不飽和脂肪酸およびその塩、飽和ジカルボン酸およびその塩、トリカルボン酸およびその塩、トリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール、から調製した水溶液は、そのまま、従来の消火液の代替として様々な用途に用いることができるが、さらにpH調整作用を有する水酸化物などの化合物を加えることが好ましい。この場合に用いられる化合物は、特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムなど、当業者に公知のいずれの水酸化物でもあり得る。
【0022】
本発明の消火液は毒性が低い。また、消火弾に収納するなどしても防錆性に優れ、かつ優れた消火効果を発揮する。
【0023】
本発明の消火液を用いた実施例を示すが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。
次に、本発明に係る消火液の製造方法、およびそれを用いた消火の試験についての実施例を説明する。
【実施例】
【0024】
本発明の消火液を調製した。蒸留水656ccに、市販の水酸化カリウム(旭硝子株式会社製)60gを蒸留水120ccで希釈したカリ水140cc、カプリル酸(日本油脂株式会社製)110g、市販のオレイン酸50g、市販のドデカン酸2g、市販のクエン酸50g、トリルトリアゾール(城北化学工業株式会社製)3g、市販のセバシン酸2g、炭酸ナトリウム1gを混合して消火液を調製した。得られた消火液をフライパン中の発火したテンプラ油にスプレー状にかけたところ約5秒で消火することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和脂肪酸およびその塩、不飽和脂肪酸およびその塩、飽和ジカルボン酸およびその塩、トリカルボン酸およびその塩、トリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール、を含む水溶液であることを特徴とする消火液。
【請求項2】
さらに水酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の消火液。
【請求項3】
飽和脂肪酸およびその塩1重量%〜30重量%、不飽和脂肪酸およびその塩0.5重量%〜10重量%、飽和ジカルボン酸およびその塩0.05重量%〜5重量%、トリカルボン酸およびその塩0.5重量%〜10重量%、トリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール0.05重量%〜2重量%、を含む水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の消火液。
【請求項4】
前記飽和脂肪酸が、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の消火液。
【請求項5】
前記不飽和脂肪酸が、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の消火液。
【請求項6】
前記飽和ジカルボン酸がドデカン二酸、セバチン酸、セバシン酸からなる群より選択される少なくとも1つであるであることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の消火液。
【請求項7】
前記トリカルボン酸がクエン酸であることを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の消火液。
【請求項8】
前記脂肪酸の塩が脂肪酸のカリウム塩を含むことを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の消火液。

【公開番号】特開2012−5730(P2012−5730A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145779(P2010−145779)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(597150865)
【Fターム(参考)】