説明

消火設備

【課題】
建物が大きな道路に面しておらず、道路から奥まった位置にあると、消防車から放水できない場合があり、戸建住宅や小規模社会福祉施設等に水道管直結型スプリンクラ消火設備または連結散水設備を備えて、設備の消火配管に連結して外部からの送水を受ける送水口を設けていても、消防車からの送水を受けられない場合がある。
【解決手段】
水道管直結型スプリンクラ消火設備または連結散水設備の連結用配管を延伸し、送水口を建物外であって消防車が通行可能な幅員の道路に面した位置に設ける。また、連結用配管を近隣建物に設置された消火配管にも接続し、送水口を共用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道管直結型スプリンクラ消火設備というものがある。これは、給水源として水道を利用し、水道管から分岐した消火配管に消火ヘッドを設けているスプリンクラ消火設備であり、防火水槽や加圧送水装置といった高価な設備を要せず、設備予算が限られた戸建住宅や小規模社会福祉施設に設置できる簡易スプリンクラ消火設備である。
【0003】
一般に水道の水圧は0.5MPa程度であり、加圧送水装置によって高圧水を供給する従来のビル用スプリンクラ消火設備よりも水道管直結型スプリンクラ消火設備の給水能力は低い。そこで火災時には別の水源から消火配管に消火用水を供給して消火能力を高めようと、連結用の配管と送水口を設けたものがある。(特許文献参照)
また、公設消防隊による屋外からの消火活動が困難な地下室などに設けられる、連結散水設備というものがある。この設備は消火対象に設けた消火ヘッドを消火配管に接続し、この消火配管を屋外に設けた連結送水口に接続したものであり、消防車から延ばした消防用ホース等を連結送水口に接続して消火活動を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−66065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物が大きな道路に面しておらず、道路から奥まった位置にあると、その建物が火災となった時に消防車が放水を行えない場合がある。また、水道管直結型スプリンクラ消火設備または連結散水設備を設置した小規模社会福祉施設や住宅等の建物外に、消火配管へ連結する送水口を設けても、上記のような立地であると、消防車がその送水口の位置まで進入できないために送水口が消防車からの給水を受けられない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る消火設備は、建物内に配置され、消火ヘッドが設けられた消火配管と、該消火配管に接続され外部から給水する連結用配管と、該連結用配管に外部からの給水ホースが接続される送水口を備えた消火設備において、前記連結用配管を延伸し、前記送水口を前記建物外であって消防車が通行可能な幅員の道路に面した位置に設けることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る消火設備は、建物内に配置され、消火ヘッドが設けられた消火配管と、該消火配管に接続され外部から給水する連結用配管と、該連結用配管に外部からの給水ホースが接続される送水口を備えた消火設備において、前記送水口の二次側に減圧手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る消火設備は、前記消火配管の基端側が水道管に接続されたスプリンクラ消火設備であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る消火設備は、前記連結用配管が接続される位置よりも基端側の前記消火配管と、前記連結用配管とに、それぞれ逆流防止手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る消火設備は、前記連結用配管は、前記建物近隣の建物に設置された消火配管にも接続され、前記連結用配管に設ける前記逆流防止手段を前記建物毎に備え、前記連結用配管は前記建物に共通の前記送水口を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る消火設備は、請求項1の構成によると、建物が大きな道路に面しておらず、道路から奥まった位置にあっても、消防車から送水口を介して消火配管へ給水を受けることができる。
【0012】
本発明に係る消火設備は、請求項2の構成によると、送水口から高圧の消火用水を給水されても、消火設備が高圧水によって破損することがない。
【0013】
本発明に係る消火設備は、請求項3の構成によると、水道水を水源として消火を行うことができ、さらに、建物が大きな道路に面しておらず、道路から奥まった位置にあっても、消防車から送水口を介して消火配管へ給水を受けることができ、また、送水口から高圧の消火用水を給水されても、消火設備が高圧水によって破損することがない。
【0014】
本発明に係る消火設備は、請求項4の構成によると、連結用配管10から給水される消火用水と水道水とが混ざることがない。このため、水道水は衛生状態を保つことができ、さらに、連結用配管10に水道水が流出することはない。
【0015】
本発明に係る消火設備は、請求項5の構成によると、近隣の建物で共通の一つの送水口を用いるので、送水口の設置に要する土地は最小限で済む上、地域単位での防災設備が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1に係るスプリンクラ消火設備の構成図である。
【図2】実施の形態2に係るスプリンクラ消火設備の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態1]
図1に基づいて、本発明の実施の形態に係る消火設備の構成を説明する。本実施の形態は、消火配管としてのスプリンクラ配管11が充水される湿式スプリンクラ消火設備として説明する。
【0018】
建物AおよびBは、共に水道管直結型スプリンクラ消火設備を備えた近隣の建物である。各建物のスプリンクラ配管11に接続される連結用配管10は、外部からの消火用水の供給を受けるための給水ホースが接続される、各建物に共通の送水口7に接続される。送水口7は建物AおよびBに限らず、同様に水道管直結型スプリンクラ消火設備を備えた近隣建物と共通化してもよく、送水口7を地域単位で用いることもできるので、地域単位での防災設備が可能となる。また、各建物のスプリンクラ消火設備へ分岐して接続する連結用配管10は、送水口7から各建物へ分岐するまでの本管について、各建物へ所定の送水量で送水できるだけの内径と強度を備えれば、前記本管部分を各建物で共通化することもできる。
【0019】
水道本管1から建物AおよびBに引き込まれた水道管は水道メータ2を介して建物内に導入される。水道管は水道メータ2の二次側で分岐し、一方は一般給水器具へ接続され、他方は消火用のスプリンクラ配管11へ接続される。
【0020】
建物内に配置されたスプリンクラ配管11には消火ヘッドとしてのスプリンクラヘッド3が設けられ、スプリンクラヘッド3は火災時に内部の弁体が火災の熱によって開放して散水する閉鎖型ヘッドである。なお、消火ヘッドとは、前記閉鎖型ヘッドや開放型ヘッドを総称するものである。前記スプリンクラ配管11の基端側は水道メータ2の二次側に接続され、他端は末端給水栓4に接続される。末端給水栓4は常用する給水器具、例えば水洗トイレ等に接続され、前記スプリンクラ配管11内の水が滞留しないようにし、水道水としての衛生状態を維持している。
【0021】
前記スプリンクラ配管11には外部から給水する連結用配管10が接続される。前記連結用配管10から給水される消火用水が水道水に混入しないように、前記連結用配管10が接続される位置よりも基端側の前記スプリンクラ配管11であって、水道メータ2の二次側に、逆流防止手段としての逆止弁5を備える。また、前記連結用配管10に前記スプリンクラ配管11からの水道水が流れ込まないように、前記連結用配管10に逆流防止手段としての逆止弁6を建物毎に備える。
【0022】
前記連結用配管10は、建物外の送水口7に接続される。建物AまたはBのいずれか、または双方が、建物が大きな道路に面しておらず道路から奥まった位置にあるような場合は、前記連結用配管10を延伸して、送水口7を消防車が通行可能な幅員の道路に面した位置に設ける。
【0023】
なお、前記逆流防止手段としての逆止弁5および6は、スプリンクラ配管11に向かって送水する方向のみに通水するような他の手段を用いても良い。
極端な場合、手動で開閉操作を行う手動開閉弁であっても良いが、前記逆止弁5に用いる手動開閉弁は常時開、前記逆止弁6に代えて用いる手動開閉弁は常時閉として、平常時に衛生上の問題がある水道水の滞留が起きないようにしつつ、スプリンクラ消火設備による自動消火の機能を損なわないようにせねばならない。さらに、火災が拡大して住民が避難するような段階で、消防車からの送水を受けて連結用配管10を介して送水口7からスプリンクラ配管11へ送水する場合には、前記逆止弁5に代えて用いる手動開閉弁は閉止し、前記逆止弁6に代えて用いる手動開閉弁は開放する操作が不可欠となるので、止む無く上記手動開閉弁を用いる場合は建物外に設けねばならない。このように前記逆流防止手段として手動開閉弁を用いると、火災発生の非常時に適切な操作が要求され、しかも操作を誤ると消火活動が適切に行えないことがあるので、先に示したように、前記逆流防止手段としては、人の操作に依らない逆止弁等が適している。
【0024】
次に、本発明に係るスプリンクラ消火設備の動作について説明する。
【0025】
火災が発生してスプリンクラヘッド3が作動すると、スプリンクラ配管11内の水がスプリンクラヘッド3から建物内に散水され、初期消火および火災抑制を行う。
【0026】
火災の通報を受けた消防車が到着したときに未だ鎮火していない場合は、消防車の消防ホースを送水口7に接続して消防車より送水を行う。これによって連結用配管10に加圧された消火用水が流れ込み、スプリンクラ配管11を介して作動したスプリンクラヘッド3から水量を増して散水され、火災の消火および抑制を行う。
【0027】
なお、水道の水圧は0.5MPaよりも低く、水道直結型スプリンクラ消火設備は水道の低い水圧(例えば0.1MPa)で動作するように設計されているので、消防ホースからの送水圧力が過大過ぎると、スプリンクラ消火設備や水道設備を破損してしまう場合がある。例えば送水口7が1MPa以上の高圧の消火用水を受けるもの等については、送水口7の二次側に減圧手段としての減圧弁8を備える。減圧弁8は、水道の水圧よりも高く、水道設備やスプリンクラ消火設備を破損しない程度まで水圧を下げるようにする。
【0028】
[実施の形態2]
図2に基づいて、本発明の実施の形態に係る消火設備の構成を説明する。図2において実施の形態1と同一部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0029】
本実施の形態2に係る消火設備としてのスプリンクラ消火設備が実施の形態1と異なる点は、実施の形態1に示した湿式スプリンクラ消火設備ではなく、乾式スプリンクラ消火設備であることにある。
【0030】
以下、変更点について詳細に説明する。
火災を感知したときに開放される電動弁91の二次側スプリンクラ配管11は、平常時は充水されず、火災時に充水されるように制御される。
【0031】
コンシールド型スプリンクラヘッド31は、スプリンクラヘッドの散水部を覆って保護するドーム型カバーであるコンシールド部を備えている。該コンシールド部は、スプリンクラヘッドの弁体が開放する温度よりも低い温度で落下するものであり、コンシールド部の落下によって火災を感知し、接点による火災信号を送出する。なお、スプリンクラヘッド31はコンシールド型として説明したが、スプリンクラヘッドの作動によってスプリンクラヘッド本体から接点等によって火災信号を送出するものであっても良い。また、コンシールド型スプリンクラヘッド31をコンシールド部を有さない通常のスプリンクラヘッドとし、別途火災感知器を備えて火災信号を得るように構成しても良い。
【0032】
前記火災信号を制御盤92が受信すると、警報ブザー93を鳴動させて火災が発生したことを警報し、電動弁91を開放する。電動弁91が開放されると、電動弁91の一次側の消火用水が、電動弁91の二次側に接続されたスプリンクラ配管11に流れ込み、スプリンクラヘッド31から散水を行う。
平常時、水道水は電動弁1次側までしか充水されないので滞留水が発生することがなく、実施の形態1に設けた末端給水栓4を設ける必要がなく、削除されている。
【0033】
このように構成された、水道管直結型の乾式スプリンクラ消火設備は、平常時にはスプリンクラ配管11が充水されていないので、配管の破損やスプリンクラヘッドの破損程度で散水することはなく、水損を起こし難いという特徴がある。スプリンクラヘッド31のコンシールド部落下による火災警報、および、スプリンクラヘッド31の熱による弁体開放、の条件が揃って散水を開始するものである。
【0034】
その他の構成および作用は、実施の形態1と同様である。
【0035】
[実施の形態3]
図示しないが、消火ヘッドと、消火配管と、連結用配管と、連結送水口と、で構成され、スプリンクラ消火設備と違って独自の水源や送水設備を有しない連結散水設備にも、実施の形態1または2で開示した発明を適用することができる。
【0036】
そのように構成した連結散水設備は、建物が大きな道路に面しておらず道路から奥まった位置にあっても、消防車から送水口を介して消火配管へ給水を受けることができ、また、送水口から高圧の消火用水を給水されても高圧水によって破損することがなく、さらに、近隣の建物で共通の一つの送水口を用いるので、送水口の設置に要する土地は最小限で済む上、地域単位での防災設備が可能となる。
【0037】
また、消火ヘッドを火災の熱で開栓する閉鎖型ヘッドとすることにより、火災となった建物だけに消火のための散水を行うことができる。
【符号の説明】
【0038】
1 水道本管、 2 水道メータ、 3 スプリンクラヘッド、
31 コンシールド型スプリンクラヘッド、
4 末端給水栓、 5 逆止弁、 6 逆止弁、
7 連結送水口、 8 減圧弁、
91 電動弁、 92 制御盤、 93 警報ブザー、
10 連結用配管、 11 スプリンクラ配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に配置され、消火ヘッドが設けられた消火配管と、該消火配管に接続され外部から給水する連結用配管と、該連結用配管に外部からの給水ホースが接続される送水口を備えた消火設備において、
前記連結用配管を延伸し、前記送水口を前記建物外であって消防車が通行可能な幅員の道路に面した位置に設けることを特徴とする消火設備。
【請求項2】
建物内に配置され、消火ヘッドが設けられた消火配管と、該消火配管に接続され外部から給水する連結用配管と、該連結用配管に外部からの給水ホースが接続される送水口を備えた消火設備において、
前記送水口の二次側に減圧手段を備えたことを特徴とする消火設備。
【請求項3】
前記消火配管の基端側が水道管に接続されたスプリンクラ消火設備であることを特徴とする請求項1または2に記載の消火設備。
【請求項4】
前記連結用配管が接続される位置よりも基端側の前記消火配管と、前記連結用配管とに、それぞれ逆流防止手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の消火設備。
【請求項5】
前記連結用配管は、前記建物近隣の建物に設置された消火配管にも接続され、前記連結用配管に設ける前記逆流防止手段を前記建物毎に備え、前記連結用配管は前記建物に共通の前記送水口を備えることを特徴とする請求項4に記載の消火設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−200359(P2012−200359A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66593(P2011−66593)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】